(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電圧センサで検知された前記バッテリの電圧が第2所定電圧以上であることを条件に前記ジェネレータによる発電を前記車両の減速時に限定して行なう回生制御手段を備え、
前記第2所定電圧は、前記所定電圧と等しいか或いは前記所定電圧よりも高い
請求項1〜5の何れか1項に記載の車両の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
【0024】
[1.全体システム構成]
図1は、本実施形態に係る車両の駆動系と制御系を示す構成図である。なお、
図1において、細線の実線矢印は信号の流れを示し、太線矢印は信号の電力を示し、白抜き矢印及び細破線の矢印は作動油の流れを示す。
【0025】
図1に示すように、車両の駆動系は、エンジン(内燃機関)1と、トルクコンバータ2と、前後進切替機構3と、自動変速機構としてのベルト式無段変速機構(バリエータとも言う)4と、終減速機構5と、駆動輪6,6とを備えている。なお、トルクコンバータ2と前後進切替機構3とベルト式無段変速機構4と終減速機構5とを図示しないトランスミッションケース内に収納することによりベルト式無段変速機100(以下、CVT100という)が構成される。
【0026】
エンジン1には、スロットルバルブ開閉動作や燃料カット動作等により出力トルク制御を行う出力トルク制御アクチュエータ10が装備される。これによって、エンジン1は、ドライバによるアクセル操作による出力トルクの制御以外に、外部からのエンジン制御信号による出力トルクの制御も可能になっている。
【0027】
また、エンジン1の出力軸11には、ベルト&プーリ機構等の動力伝達機構102を介してジェネレータ(オルタネータ)104が接続されており、出力軸11の回転によってジェネレータ104による発電が行なわれる。このジェネレータ104による発電電力によってバッテリ106を充電するようになっている。
【0028】
トルクコンバータ2は、トルク増大機能を有する発進要素であり、トルク増大機能を必要としないとき、エンジン出力軸11(=トルクコンバータ入力軸)とトルクコンバータ出力軸21とを直結可能なロックアップクラッチ20を有する。このトルクコンバータ2は、エンジン出力軸11にコンバータハウジング22を介して連結されたポンプインペラ23と、トルクコンバータ出力軸21に連結されたタービンライナ24と、ケースにワンウェイクラッチ25を介して設けられたステータ26とを構成要素とする。
【0029】
また、ロックアップクラッチ20は、車両の状態や運転状態に応じてロックアップ状態(クラッチ完全係合状態)と、アンロックアップ状態(クラッチ完全解放状態)との何れかに、切り替え制御される。なお、ロックアップ状態とアンロックアップ状態との間に、スリップロックアップ状態(クラッチ滑り係合状態、つまり、ロックアップクラッチの入力側の回転部材の回転数と、出力側の回転部材に差回転があるが、入力側から出力側へトルクが伝達されている状態)が設けられても良い。
【0030】
この切り替え制御と、ロックアップ状態やスリップロックアップ状態でのクラッチ係合力、即ち、クラッチのトルク伝達容量の制御は、ロックアップクラッチ20へ供給する供給油圧の制御により行なう。この供給油圧とは、ロックアップクラッチ20の前後の図示しない二つの油室の差圧、即ち、アプライ室のトルクコンバータ供給圧Paとレリーズ室のトルクコンバータ解放圧Prの差圧(ロックアップ差圧)ΔP(=Pa−Pr)である。
【0031】
前後進切替機構3は、ベルト式無段変速機構4への入力回転方向を前進走行時の正転方向と後退走行時の逆転方向とで切り替える機構である。この前後進切替機構3は、ダブルピニオン式遊星歯車30と、複数のクラッチプレートから成る前進クラッチ31(前進側摩擦係合要素)と、複数のブレーキプレートから成る後退ブレーキ32(後退側摩擦係合要素)とを有する。
【0032】
前進クラッチ31は、Dレンジ(ドライブレンジ)等の前進走行レンジの選択時に前進クラッチ圧Pfcにより係合される。後退ブレーキ32は、後退走行レンジであるRレンジの選択時に後退ブレーキ圧Prbにより係合される。なお、前進クラッチ31及び後退ブレーキ32は、Nレンジ(ニュートラルレンジ,非走行レンジ)の選択時、前進クラッチ圧Pfcと後退ブレーキ圧Prbとをドレーンすることで、いずれも解放される。
【0033】
ベルト式無段変速機構4は、プーリに対するベルト接触径の変更により変速機入力回転数と変速機出力回転数との比である変速比(すなわち、変速機入力回転数/変速機出力回転数)を無段階に変化させる無段変速機能を備え、プライマリプーリ42と、セカンダリプーリ43と、ベルト44とを有する。プライマリプーリ42は、固定プーリ42a及びスライドプーリ42bにより構成され、スライドプーリ42bは、プライマリ圧室45に導かれるプライマリ圧Ppriに応じて軸方向に移動する。セカンダリプーリ43は、固定プーリ43a及びスライドプーリ43bにより構成され、スライドプーリ43bは、セカンダリ圧室46に導かれるセカンダリ圧Psecに応じて軸方向に移動する。
【0034】
プライマリプーリ42の固定プーリ42a及びスライドプーリ42bの各対向面であるシーブ面、及び、セカンダリプーリ43の固定プーリ43a及びスライドプーリ43bの各対向面であるシーブ面は、何れもV字形状をなし、ベルト44の両側のフランク面はこれらの各シーブ面と接触する。スライドプーリ42b,43bの移動に応じて、プライマリプーリ42及びセカンダリプーリ43へのベルト44の巻付き半径が変更することにより、変速比が変更される。
【0035】
終減速機構5は、ベルト式無段変速機構4の変速機出力軸41からの変速機出力回転を減速すると共に差動機能を与えて左右の駆動輪6,6に伝達する機構である。この終減速機構5は、変速機出力軸41と左右のドライブ軸51,51との間に介装され、変速機出力軸41に設けられた第一ギヤ52と、アイドラ軸50に設けられた第二ギヤ53及び第三ギヤ54と、最終減速ギヤ55と、差動機能を持つディファレンシャルギヤ56とを有する。
【0036】
車両の制御系は、
図1に示すように、CVT100の制御系として、油圧コントロールユニット7と、CVT電子コントロールユニット8(自動変速制御装置(ATCU)、以下、CVTECU8ともいう)とを備え、エンジン1の制御系として、エンジン電子コントロールユニット9(以下、エンジンECU9という)を備え、さらに、ジェネレータ104を制御するジェネレータ電子コントロールユニット108(以下、ジェネレータECU108という)を備えている。CVTECU8とエンジンECU9とは情報を授受する。
【0037】
なお、各電子コントロールユニット(ECU:Electronic Control Unit)8,9,108は、入出力装置,多数の制御プログラムを内蔵した記憶装置(ROM,RAM等),中央処理装置(CPU),タイマカウンタ等を備えて構成される。また、各ECU8,9,108は、バッテリ106の電力を受けて作動し、後述の油圧コントロールユニット7に備えられた各ソレノイド72〜77は、CVTECU8によって制御されたバッテリ106からの電力を受けて作動する。
【0038】
油圧コントロールユニット7は、プライマリ圧室45に導かれるプライマリ圧Ppriと、セカンダリ圧室46に導かれるセカンダリ圧Psecと、前進クラッチ31への前進クラッチ圧Pfcと、後退ブレーキ32への後退ブレーキ圧Prbとを作り出す制御ユニットである。この油圧コントロールユニット7は、オイルポンプ70と油圧制御回路71とを備え、油圧制御回路71は、ライン圧ソレノイド72と、プライマリ圧ソレノイド73と、セカンダリ圧ソレノイド74と、前進クラッチ圧ソレノイド75と、後退ブレーキ圧ソレノイド76と、ロックアップソレノイド77とを有する。
【0039】
ライン圧ソレノイド72は、CVTECU8から出力されるライン圧指示に応じ、オイルポンプ70から圧送される作動油を、指示されたライン圧PLに調圧する。
プライマリ圧ソレノイド73は、CVTECU8から出力されるプライマリ圧指示に応じ、ライン圧PLを元圧として指示されたプライマリ圧Ppriに減圧調整する。
セカンダリ圧ソレノイド74は、CVTECU8から出力されるセカンダリ圧指示に応じ、ライン圧PLを元圧として指示されたセカンダリ圧Psecに減圧調整する。
【0040】
前進クラッチ圧ソレノイド75は、CVTECU8から出力される前進クラッチ圧指示に応じ、ライン圧PLを元圧として指示された前進クラッチ圧Pfcに減圧調整する。
後退ブレーキ圧ソレノイド76は、CVTECU8から出力される後退ブレーキ圧指示に応じ、ライン圧PLを元圧として指示された後退ブレーキ圧Prbに減圧調整する。
【0041】
ロックアップソレノイド77は、CVTECU8からの指示により、ロックアップコントロールバルブ78への指示信号圧としてのソレノイド圧Psolを作り出す。
また、ロックアップコントロールバルブ78は、ソレノイド圧Psolを作動信号圧として、ロックアップクラッチ20のクラッチ前後油室の差圧であるロックアップ差圧ΔP(ΔP=Pa−Pr)がCVTECU8からの指示に基づく値となるようにトルクコンバータ供給圧とトルクコンバータ解放圧とを作り出す。
【0042】
CVTECU8は、スロットル開度等に応じた目標ライン圧を得る指示をライン圧ソレノイド72に出力するライン圧制御、車速やスロットル開度等に応じて目標変速比を得る指示をプライマリ圧ソレノイド73及びセカンダリ圧ソレノイド74に出力する変速油圧制御、前進クラッチ31と後退ブレーキ32の係合/解放を制御する指示を前進クラッチ圧ソレノイド75及び後退ブレーキ圧ソレノイド76に出力する前後進切替制御を行なうと共に、ロックアップソレノイド77に指示を出力してロックアップクラッチ20の係合,解放,スリップ係合等の制御を行なう。
【0043】
CVTECU8には、プライマリ回転センサ80,セカンダリ回転センサ81,セカンダリ圧センサ82,油温センサ83,インヒビタースイッチ84,ブレーキスイッチ85,アクセル開度センサ86,プライマリ圧センサ87,スロットル開度センサ88,ライン圧センサ89,車速センサ90,電圧センサ91,エンジン回転センサ92等の各種センサが接続され、これらセンサで検出されたセンサ情報やスイッチ情報が入力される。
【0044】
なお、スロットル開度センサ88は、エンジン負荷に相当するスロットル開度TPを検出する負荷センサである。また、電圧センサ91は、車載機器類の電源であるバッテリ106の電圧(端子間電圧)BVを検出する。
また、各ECU8,9,108ではセンサ情報をノイズ除去フィルタで処理して、ノイズの影響を低減して各制御に使用する。
【0045】
このCVTECU8は、本車両の制御装置において特徴的な機能要素として、車速センサ90で検知された車速及びスロットル開度センサ88で検知されたスロットル開度(エンジン負荷)に基づいてロックアップクラッチ20の締結と解放とを制御するロックアップクラッチ制御部(ロックアップクラッチ制御手段)8aと、ロックアップ制御用運転領域を電圧センサ91で検知されたバッテリ106の電圧(端子間電圧)に基づいて変更するロックアップ制御用運転領域変更部(ロックアップ制御用運転領域変更手段)8bとを備えている。
【0046】
本実施形態の車両の制御装置は、車速センサ90,電圧センサ91,エンジン回転センサ92といったセンサ類と、ロックアップクラッチ制御部8a,ロックアップ制御用運転領域変更部8b及び後述のジェネレータECU108に設けられた回生制御部(回生制御手段)108aとを備えて構成される。
以下、ロックアップクラッチの制御(ロックアップ制御)及びジェネレータ104による発電制御について詳述する。
【0047】
[ロックアップ制御]
本実施形態にかかる制御装置では、ロックアップクラッチ20の係合,解放にかかる制御を、バッテリ106の電圧BVの状態に応じて異なる特性で実施する。つまり、ロックアップクラッチ20の係合,解放はマップに基づいて行なうが、バッテリ106の電圧BVが第1所定電圧(単に、所定電圧とも称する)BV
1以上の場合には通常時マップを用い、電圧BVが第1所定電圧BV
1未満の場合にはロックアップクラッチ20を解放する領域を拡張した低電圧時マップを用いるようにしている。なお、第1所定電圧BV
1は、バッテリ106の残存容量下限値(適正電圧範囲の下限値)よりも大きな値に設定されている。
【0048】
ただし、低電圧時マップを用いる条件(制御入り条件)は、
図2に示すように、バッテリ106の電圧BVに関する条件(バッテリ電圧条件)に加えて、エンジン回転数(エンジン回転速度)Neが所定エンジン回転数(所定回転速度)Ne
12以上であることというエンジン回転数Neに関する条件(エンジン回転数条件)が設けられている。また、制御入りと制御抜けとで切り替える際にハンチングが生じないように、制御入り条件と制御抜け条件とにヒステリシスが設けられている。
【0049】
つまり、制御入り条件(制御抜け状態から制御入り状態に切り替える条件)を判定するために、制御入り判定用第1所定電圧BV
11及び制御入り判定用所定エンジン回転数Ne
12が設けられ、制御抜け条件(制御入り状態から制御抜け状態に切り替える条件)を判定するために、制御抜け判定用第1所定電圧BV
12(BV
12>BV
11)及び制御抜け判定用所定エンジン回転数Ne
11(Ne
11<Ne
12)が設けられている。
【0050】
そして、制御入り条件は、電圧BVが制御入り判定用第1所定電圧BV
11未満で且つエンジン回転数Neが制御入り判定用所定エンジン回転数Ne
12以上の場合であることとし、制御抜け条件は、電圧BVが制御抜け判定用第1所定電圧BV
12以上又はエンジン回転数Neが制御抜け判定用所定エンジン回転数Ne
11以下の場合であることとしている。
【0051】
このような低電圧時マップを使用する制御の目的は、ロックアップクラッチ20の解放領域を拡張しロックアップクラッチ20をオフとしたコンバータ状態となる頻度を高めることによってエンジン1の回転速度が上昇する頻度を高めて、ジェネレータ104での発電量を増加させ、バッテリ106の電圧BVの低下を回避して、バッテリ電圧の低下に起因したCVT100のソレノイドバルブの不安定な挙動の発生を回避するためである。
【0052】
したがって、バッテリ106の電圧BVが高い(第1所定電圧BV
11又はBV
12以上である)場合には低電圧時マップを使用する制御は不要であり、このため、バッテリ電圧条件が設けられている。また、エンジン回転数条件に関する所定エンジン回転数Ne
11,Ne
12は、エンジン1の始動にかかるクランキング時を想定したもので、クランキング時には、バッテリ106の電圧BVが大きく変動するので、本来のバッテリ106の電圧BVが十分に高い場合であっても、バッテリ106の電圧BVが低い(第1所定電圧BV
11又はBV
12未満である)と判定され、バッテリ電圧条件から制御入り判定されることがある。このような状況を回避するために、エンジン回転数条件が設けられている。
【0053】
[ロックアップ制御マップ]
次に、ロックアップクラッチ20の係合,解放に用いるロックアップ制御マップ、即ち、通常時マップ及び低電圧時マップを説明する。
図3に示すように、ロックアップ制御マップは、車速VSとエンジン負荷としてのスロットル開度TPとをパラメータとしており、車速VS及びスロットル開度TPから決定される運転点がマップ上のどの領域にあるかを判断し、ロックアップクラッチ20の解放(ロックアップオフ)と係合(ロックアップオン)とを切り替える。
【0054】
図3において、細線の実線及び破線は通常時マップの切替線を示し、太線の実線及び破線は低電圧時マップの切替線を示す。また、各実線は、ロックアップオフからロックアップオンへの切替線(オン切替線)であり、各破線は、ロックアップオンからロックアップオフへの切替線(オフ切替線)である。各実線と各破線との間の領域は保持領域であり、ロックアップのオフとオンとで切り替える際にハンチングが生じないように、オン切替線とオオフ切替線とにヒステリシスが設けられている。
【0055】
なお、本実施形態では、通常時マップのオフ切替線及びオン切替線は、スロットル開度TPが小さな領域では判定用の基準車速(第1基準車速)VS
11,VS
12は低く設定されるが、スロットル開度TPが大きな領域では判定用の基準車速(第1基準車速)VS
11,VS
12は高く設定される。これは、できるだけロックアップオン領域を広げたいが、スロットル開度TPが大きい場合には、車速VSがある程度高まるまではロックアップオフとしてトルクコンバータ2のトルク増大機能を利用できるようにするためである。
【0056】
一方、低電圧時マップのオフ切替線及びオン切替線は、スロットル開度TPに関わらずそれぞれ一定の車速基準車速(第2基準車速)VS
21,VS
22に設定される。これは、上述のように、低電圧時マップを使用するのは、ロックアップクラッチ20の解放領域を拡張しエンジン1の回転速度を高めてジェネレータ104での発電量を増加させるためで、バッテリ106の電圧BVを高めるのに必要なエンジン回転数となるように、スロットル開度TPに関わらず設定される。これにより、低電圧時マップを選択している間、スロットル開度TPにより不要にエンジン回転数が高くなったり、バッテリ106の電圧BVを高めるのに必要なエンジン回転数が得られなくなったりする不具合を回避することができる。
【0057】
なお、本実施形態では、
図4に太線の実線及び破線で示すように、低電圧時マップのオン切替線及びオフ切替線は、バッテリ106の電圧BVによらず一定としているが、
図4に細線の実線及び破線で示すように、低電圧時マップのオン切替線及びオフ切替線を、バッテリ106の電圧BVに応じて、電圧BVが低いほど高車速側に、電圧BVが高いほど低車速側に可変に設定しても良い。これにより、バッテリ106の電圧BVが低いほどロックアップクラッチ20の解放領域が拡張し、バッテリ106の電圧BVを速やかに高めることができる。また、バッテリ106の電圧BVが高いほどロックアップクラッチ20の解放領域の拡張を抑えてその係合領域を確保し、燃費向上を図ることができる。
【0058】
[回生制御]
ジェネレータECU108は、ジェネレータ104の作動を制御する。特に、ジェネレータECU108には、回生制御(オルタネータ回生制御)を行なう回生制御部108aが備えられている。この回生制御は、ジェネレータ104による発電を、アクセルペダルが
解放されて(アクセルオフ)、エンジン1への燃料噴射がカットされる車両の減速時に走行エネルギを回収しながらジェネレータ104を駆動する回生発電のみに限定して行ない、車両の力行時等では、ジェネレータ104の界磁電流を遮断操作して発電を停止する。これによって、エンジン1の発電負荷が軽減され、エンジン1の出力トルクを車両の駆動により多く用いて車両の走行性能を確保することができ、燃費の向上を促進することもできる。なお、回生制御の際には、ロックアップクラッチ20は係合(ロックアップオン)とする。
【0059】
ただし、この回生制御は、後述のフローチャート(
図7)に図示するが、バッテリ106の電圧BVが第2所定電圧BV
21,BV
22以上あることを条件に実施され、バッテリ106の電圧BVが第2所定電圧BV
21,BV
22未満になったら、回生制御は禁止されて、エンジン1の出力トルクを利用してジェネレータ104を駆動する発電を実施する。電圧BVは、バッテリ106の残存容量(SOC:State of Charge)に対応し、第2所定電圧BV
21,BV
22は残存容量に関する発電制限下限値に対応する。この発電制限下限値は、バッテリ106の残存容量下限値(適正電圧範囲の下限値)よりも大きな値に設定され、バッテリ106の残存容量が残存容量下限値に接近したら、ジェネレータ104による発電でバッテリ106を充電し、残存容量下限値以下にはならないように残存容量を確保する。
【0060】
なお、ここでは、回生制御の禁止と許可との判定にハンチングが生じないように、第1所定電圧BV
11,BV
12と同様に、第2所定電圧にも、禁止判定用第2所定電圧BV
21と許可判定用第2所定電圧BV
22(BV
22>BV
21)とが設けられている。また、ここでは、第2所定電圧BV
21,BV
22は、第1所定電圧BV
11,BV
12と等しい値に設定されている。つまり、禁止判定用第2所定電圧BV
21は制御入り判定用第1所定電圧BV
11と等しい値に設定され、許可判定用第2所定電圧BV
22は制御抜け判定用第1所定電圧BV
12と等しい値に設定されている。
【0061】
[作用及び効果]
本実施形態にかかる車両の制御装置は、上述のように構成されているので、例えば、
図5,
図6の各フローチャートに示すようにロックアップ制御を行なうことができ、
図7,
図8の各フローチャートに示すように回生制御を行なうことができる。なお、
図5〜
図8の各フローチャートは、車両のキースイッチがオンになるとキースイッチがオフになるまで、所定の制御周期で繰り返される。
【0062】
[ロックアップ制御]
ロックアップ制御では、まず、ロックアップ制御用運転領域変更部8bが、
図5に示すように、ロックアップクラッチ20の係合,解放を決定するための制御マップを、通常時マップと低電圧時マップとの何れ一方に適宜変更する。なお、
図5,
図6において、フラグF1は、通常時マップを用いている制御抜け状態の場合には0となり、低電圧時マップを用いている制御入り状態の場合には1となる制御フラグであり、初期値は0とする。
【0063】
図5に示すように、まず、電圧センサ91で検出されたバッテリ106の電圧(電源電圧)BVと、エンジン回転センサ92で検出されたエンジン1の回転速度(エンジン回転数)Neと、その時点のフラグF1を読み込む(ステップA10)。そして、フラグF1が0であるか否かを判定し(ステップA20)、フラグF1が0であれば、制御入り条件が成立しているかを判定し(ステップA30)、フラグF1が1であれば、制御抜け条件が成立しているかを判定する(ステップA50)。
【0064】
ステップA30の制御入り条件の判定では、電圧BVが制御入り判定用第1所定電圧BV
11以下で、且つ、エンジン回転数Neが制御入り判定用所定エンジン回転数Ne
12以上であるか否かを判定する。ここで、肯定判定がされればフラグF1を1にセットし(ステップA40)、否定判定がされればフラグF1を0のまま継続する。
【0065】
一方、ステップA50の制御抜け条件の判定では、電圧BVが制御抜け判定用第1所定電圧BV
12以上であるか、又は、エンジン回転数Neが制御抜け判定用所定エンジン回転数Ne
11以下であるか否かを判定する。ここで、肯定判定がされればフラグF1を0にセットし(ステップA60)否定判定がされればフラグF1を1のまま継続する。
【0066】
このようにして、ロックアップ制御の制御マップとして、通常時マップを用いるか(フラグF1=0)、低電圧時マップを用いるか(フラグF1=1)が設定され、ロックアップクラッチ制御部8aが、
図6に示すように、選択された制御マップに基づいて、ロックアップクラッチ20の係合,解放を制御する。
【0067】
図6に示すように、まず、車速センサ90で検出された車速VSと、スロットル開度センサ88で検出されたスロットル開度TPと、その時点のフラグF1を読み込む(ステップB10)。そして、フラグF1が0であるか否かを判定し(ステップB20)、フラグF1が0であれば、通常時マップを選択し(ステップB30)、フラグF1が1であれば、電圧低下時マップを選択する(ステップB40)。
【0068】
そして、現在、ロックアップオン(LUオン)、即ち、ロックアップクラッチ20が係合状態であるか否かが判定される(ステップB50)。このステップB50で、ロックアップオンの肯定判定がなされれば、ステップB30又はB40で選択された制御マップを用いて、車速VS及びスロットル開度TPに関する運転点が、ロックアップオフ(LUオフ)の領域内に所定時間継続して入っているか否かを判定する(ステップB60)。このステップB60で肯定判定がなされれば、ロックアップオフに切り替え(ステップB70)、ステップB60で否定判定がなされれば、ロックアップオンを継続する。
【0069】
一方、ステップB50でロックアップオフの否定判定がなされれば、ステップB30又はB40で選択された制御マップを用いて、車速VS及びスロットル開度TPに関する運転点が、ロックアップオン(LUオン)の領域内に所定時間継続して入っているか否かを判定する(ステップB80)。このステップB80で肯定判定がなされれば、ロックアップオンに切り替え(ステップB90)、ステップB80で否定判定がなされれば、ロックアップオフを継続する。
【0070】
このようにして、バッテリ106の電圧BVが低い場合(BV<BV
11)には、低電圧時マップを使用してロックアップ制御をするため、ロックアップクラッチ20の解放領域が拡張されて、ロックアップクラッチ20をオフとしたコンバータ状態となる頻度を高めることができる。これによって、エンジン1の回転速度が上昇する頻度を高めることができ、ジェネレータ104での発電量を増加させ、バッテリ106の電圧BVの低下を回避することができる。
【0071】
バッテリ106の電圧BVの低下を回避できると、この電圧BVの低下に起因したCVT100のソレノイドバルブ(ライン圧ソレノイド72、プライマリ圧ソレノイド73、セカンダリ圧ソレノイド74)の不安定な挙動の発生を回避することができ、CVT100の油圧系の油振の発生を防止することができる。
【0072】
油振の発生自体を回避することができるので、油振に起因して発生するベルトスリップの発生を回避できるだけでなく、油振に起因する車両挙動の変化(例えば、ジャダーと呼ばれる車体振動)の発生も回避することができ、両挙動の変化により運転者に違和感を与えるおそれも解消することができる。
しかも、油余剰圧を加える手法ではないので、オイルポンプ等の油圧供給系統の負担を増やすことなくベルトスリップの発生や車両挙動の変化の発生を回避することができる。
【0073】
[回生制御]
また、本制御装置で実施する回生制御では、回生制御部108aが、
図7に示すように、回生制御が許可されているか禁止されているかを判定する。なお、
図7,
図8において、フラグF2は、回生制御が許可されている場合には0となり、回生制御が禁止されている場合には1となる制御フラグであり、初期値は0とする。
【0074】
図7に示すように、電圧センサ91で検出されたバッテリ106の電圧(電源電圧)BVと、その時点のフラグF2を読み込む(ステップC10)。そして、フラグF2が0であるか否かを判定し(ステップC20)、フラグF2が0(回生制御が許可)であれば、回生制御の禁止条件が成立しているかを判定し(ステップC30)、フラグF2が1(回生制御が禁止)であれば、回生制御の許可条件が成立しているかを判定する(ステップC40)。
【0075】
ステップC30の回生制御の禁止条件の判定では、電圧BVが禁止判定用第2所定電圧BV
21未満であるか否かを判定する。ここで、肯定判定がされればフラグF2を1にセットして回生制御を禁止し(ステップC50)、否定判定がされればフラグF2を0のままとして回生制御の許可を継続する。
【0076】
一方、ステップC40の回生制御の許可条件の判定では、電圧BVが許可判定用第2所定電圧BV
22以上であるか否かを判定する。ここで、肯定判定がされればフラグF2を0にセットして回生制御を許可し(ステップC60)、否定判定がされればフラグF2を1のままとして回生制御の禁止を継続する。
【0077】
フラグF2が0にセットされ回生制御が許可されていれば、ジェネレータ104による発電を、エンジン1への燃料噴射がカットされる車両の減速時に走行エネルギを回収しながらジェネレータ104を駆動する回生発電のみに限定して行ない、車両の力行時等では、ジェネレータ104の界磁電流を遮断操作して発電を停止する。これによって、エンジン1の発電負荷が軽減され、エンジン1の出力トルクを車両の駆動により多く用いて車両の走行性能を確保することや、燃費の向上を促進することができる。
【0078】
また、フラグF2が1にセットされ回生制御が禁止されていれば、エンジン1の出力トルクを利用しながらジェネレータ104を常時駆動して発電を実施し、この発電電力によってバッテリ106を充電することにより、バッテリ106のSOCを回復することができ、バッテリ106のSOC低下による不具合を回避することができる。バッテリ106のSOCを回復することは、バッテリ106の電圧BVを回復することになり、電圧BVの低下に起因したCVT100のソレノイドバルブの不安定な挙動の発生を回避することができ、CVT100の油圧系の油振の発生を防止することができる。
【0079】
なお、回生制御による回生発電の際には、ロックアップオン(LUオン)とするので、回生制御を考慮したロックアップは、
図8に示すように行われる。つまり、フラグF2が0であるか否かを判定し(ステップD10)、フラグF2が0であれば、アクセルオンかオフかを判定し(ステップD20)、アクセルオンならば、
図6のロックアップ制御を行なう(ステップD30)。アクセルオフならば、ロックアップオン(LUオン)とする(ステップD40)。そして、エンジン1への燃料噴射をカットし車両の減速に伴って走行エネルギを回収しながらジェネレータ104を駆動する回生発電を実施する。
【0080】
前述のように、バッテリ106の電圧BVが所定電圧BV
11未満に低下したらロックアップを
解放状態とする解放運転領域を広げる制御を行なうので、バッテリ106の電圧BVの回復が早まり、バッテリ106の電圧BVが所定電圧BV
12以上となる頻度を高めることにもなるため、頻度も高まり、回生制御による車両の走行性能の確保や燃費の向上を促進することができる。
【0081】
[その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形したり、一部を採用したりして実施することができる。
【0082】
例えば、上記実施形態では、解放運転領域を広げる制御に加えて回生制御を行なっているが、回生制御は必須ではない。バッテリ106の電圧BVが所定電圧BV
11未満に低下したらロックアップを
解放状態とする解放運転領域を広げる制御のみを行なうだけで、電圧BVの低下が抑制され、電圧BVの低下に起因した油圧脈動(油振)の発生自体を抑制するという本発明の目的を達成することができる。この場合、上記実施形態で用いた
図5,
図6をそのまま使用して制御を実行することができる。
【0083】
解放運転領域を広げる制御の制御入り条件のバッテリ106の第1所定電圧BV
1(ヒステリシスを与える場合、電圧BV
11,BV
12)と回生制御の制御禁止条件のバッテリ106の第2所定電圧BV
2(ヒステリシスを与える場合、電圧BV
21,BV
22)とを同一の値にしてシンプルな制御構成にしているが、第1所定電圧BV
1と第2所定電圧BV
2とを一致させなくても良い。
【0084】
ただし、回生制御の際には、発電は回生に制限され且つロックアップクラッチ20は係合(ロックアップオン)とされるので、解放運転領域を広げる制御の制御域と回生制御の制御域とがオーバラップしないようにすることが必要であり、第1所定電圧BV
1と第2所定電圧BV
2とを一致させない場合には、第2所定電圧BV
2を第1所定電圧BV
1よりも高い値に設定することになる。
【0085】
また、上記実施形態では、低電圧時マップを用いる条件(制御入り条件)に、バッテリ電圧条件に加えてエンジン回転数条件を設けているが、例えば、本制御を、エンジン1の始動時にクランキングが完了したことを条件として開始するように構成すればエンジン回転数条件は省略することができる。