(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
それぞれボルト挿通孔を有する一対のプレートと、相対する前記プレート間にそれぞれ配置され、前記ボルト挿通孔に対応する貫通孔をそれぞれ有する一対のゴム状弾性体とを有し、
前記ゴム状弾性体の間に配管を挟持した状態で前記プレート間に亘ってボルト締めされることによって、前記配管を固定保持する配管固定部材であって、
前記プレートは、長さ方向の少なくとも一方の端部に、相対する前記プレートに向けて突出する係合部を有し、
前記ゴム状弾性体は、前記プレートの前記係合部に対応する位置に、該係合部を嵌合させる嵌合溝を有し、
前記ゴム状弾性体は前記長さ方向及び前記長さ方向と交差する幅方向において前記プレートよりも長く形成され、
前記嵌合溝に前記係合部が嵌合することによって、前記プレートと前記ゴム状弾性体の相互の抜け止めがなされる第1の抜け止め部が形成され、
前記ゴム状弾性体に前記プレートが組み付けられた状態において、前記長さ方向及び前記幅方向において前記ゴム状弾性体が前記プレートよりも突出することを特徴とする配管固定部材。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンルームには、燃料配管やオイル配管等の多数の配管が配設されており、これら配管が周辺部品と接触したり、車両走行時やエンジン駆動時の振動を長期に亘って受け続けることによって疲労破損したりすることを防止するため、配管をゴム状弾性体で挟み込んでハウジング等の所定の配設箇所に固定する配管固定部材(クリップ又はクランプともいう。)が使用されている。
【0003】
この種の配管固定部材としては、金属製のプレートの内面にゴム状弾性体を加硫接着したものが用いられている。これを2組使用してゴム状弾性体の間に配管を挟み込み、プレート間に亘って全体をボルト締めすることにより、配管を所定箇所に強固に固定保持することができる。
【0004】
しかし、ゴム状弾性体をプレートに加硫接着した配管固定部材は、製品形状や成形上、加硫時に流動したゴム状弾性体が、プレート表面に回り込むゴム回りの発生を避けられない。プレート表面はボルト座面や相手ハウジング等との当接面であるため、プレート表面にゴム回りがあると、回り込んだゴム状弾性体の使用に伴うヘタリや摩滅によってボルトの締め付けトルクが低下するおそれがある。このため、加硫後にゴム回りを除去するための仕上げを施す必要があり、配管固定部材の製造に際して非常に手間がかかる問題がある。
【0005】
従来、配管を上下から挟み込む一対のクリップ片の全体を樹脂製としてプレートをなくした配管固定部材も知られているが(特許文献1)、ボルトで樹脂製のクリップ片を直接挟着して締結するため、ボルト座面のヘタリ等が発生し易く、ボルトの締め付けトルクが低下する問題の根本的な解決にはならない。
【0006】
そこで、従来、別途成形したゴム状弾性体をプレートに対して後嵌めするようにした後嵌め式の配管固定部材が提案されている(特許文献2、3)。
【0007】
特許文献2記載のものは、ゴム状弾性体に差込み突起を形成し、この差込み突起をプレートに形成した差込み穴に挿入することにより、ゴム状弾性体がプレートに装着されるようにしている。
【0008】
また、特許文献3記載のものは、プレートのボルト挿通孔の周囲にスペーサを突設し、ゴム状弾性体に形成した貫通孔にスペーサを貫通させることにより、ゴム状弾性体をプレート内面に配置させるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2記載のものは、ゴム状弾性体をプレートに対して差込み固定するだけで両者の抜け止めを図ることができる。このため、ゴム状弾性体とプレートとを一体物として取り扱うことができるので、一体物としての部品管理が容易であると共に、配管を固定する際の作業性も良好になるという利点がある。
【0011】
しかし、差込み突起がプレートの差込み穴からプレート表面に突出する構造であるため、配管固定部材の配設面が平面に限られる場合等では、プレート表面から突出する差込み突起が邪魔になることがあり、配設箇所が限られてしまう問題がある。
【0012】
また、差込み突起の先端には大径頭部が形成され、差込み穴に差し込んだ後の抜け止めを図るようにしているが、このような抜け止め構造では、差込み方向に所定の遊びが必要となるため、プレートとゴム状弾性体との間に大きな隙間が発生し易く、配管の保持力の低下につながるため、保持力を維持する観点では課題を有している。
【0013】
一方、特許文献3記載のものは、プレート表面に突起物が形成されることはないが、ゴム状弾性体をプレートに対して固定する手段を持たないため、プレートとゴム状弾性体とを一体物として取り扱うことが難しい。このため、プレートとゴム状弾性体を別々の部品として管理しなくてはならない煩わしさがあり、また、配管を固定する際の作業性も悪くなるという問題がある。
【0014】
そこで、本発明は、プレート表面に突起物を形成することなくゴム状弾性体をプレートに対して抜け止め装着できるようにすることにより、ゴム状弾性体とプレートとを一体物とすることができる後嵌め式の配管固定部材を提供することを課題とする。
【0015】
また本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0017】
1.それぞれボルト挿通孔を有する一対のプレートと、相対する前記プレート間にそれぞれ配置され、前記ボルト挿通孔に対応する貫通孔をそれぞれ有する一対のゴム状弾性体とを有し、
前記ゴム状弾性体の間に配管を挟持した状態で前記プレート間に亘ってボルト締めされることによって、前記配管を固定保持する配管固定部材であって、
前記プレートは、長さ方向の少なくとも一方の端部に、相対する前記プレートに向けて突出する係合部を有し、
前記ゴム状弾性体は、前記プレートの前記係合部に対応する位置に、該係合部を嵌合させる嵌合溝を有し、
前記ゴム状弾性体は前記長さ方向及び前記長さ方向と交差する幅方向において前記プレートよりも長く形成され、
前記嵌合溝に前記係合部が嵌合することによって、前記プレートと前記ゴム状弾性体の相互の抜け止めがなされる第1の抜け止め部が形成され
、
前記ゴム状弾性体に前記プレートが組み付けられた状態において、前記長さ方向及び前記幅方向において前記ゴム状弾性体が前記プレートよりも突出することを特徴とする配管固定部材。
【0018】
2.前記プレートの内面に、ボルト締め時の前記ゴム状弾性体の圧縮量を規制するスペーサ部材をそれぞれ有し、
前記ゴム状弾性体は、前記貫通孔の内面に突起部を有し、該貫通孔に前記スペーサ部材が挿通して前記突起部が該スペーサ部材の外側面に対して圧接することによって、前記プレートと前記ゴム状弾性体の相互の抜け止めがなされる第2の抜け止め部が形成されていることを特徴とする前記1記載の配管固定部材。
【0019】
3.前記スペーサ部材は、前記プレートと別体に形成され、前記プレートに対して固定されていることを特徴とする前記2記載の配管固定部材。
【0020】
4.前記プレートは、前記ボトル挿通孔と同心状の溝部を有し、
前記スペーサ部材は、前記溝部に圧入嵌合されることによって固定されていることを特徴とする前記3記載の配管固定部材。
【0021】
5.前記係合部は、先端からさらに延出して前記ゴム状弾性体の前記嵌合溝を貫通することにより、該ゴム状弾性体の表面から突出した回り止め部を有し、
相対する前記プレートの前記回り止め部同士が互いに当接することで、ボルト締め時の前記プレート相互の回り止めがなされることを特徴とする前記1〜4の何れかに記載の配管固定部材。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、プレート表面に突起物を形成することなくゴム状弾性体をプレートに対して抜け止め装着できるようにすることにより、ゴム状弾性体とプレートとを一体物とすることができる後嵌め式の配管固定部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0025】
図1は、配管を挟み付けた状態の本発明に係る配管固定部材の一例を示す斜視図、
図2はその断面図、
図3はその側面図、
図4は、
図1に示す配管固定部材におけるゴム状弾性体を示し、(a)はプレートと接する面側から見た斜視図、(b)は配管と接する面側から見た斜視図、
図5(a)は、
図4に示すゴム状弾性体を配管と接する側から見た平面図、(b)は(a)中の(b)-(b)線に沿う断面図、
図6は、プレートにスペーサ部材を装着する様子を説明する斜視図、
図7(a)(b)は、プレートにゴム状弾性体を装着する様子を説明する斜視図、
図8は、
図1に示す配管固定部材を用いて配管を固定する様子を説明する断面図である。
【0026】
配管固定部材1は、配管100、100を所定の配設箇所において上下から挟み付ける一対の配管固定部材半体10、10によって構成されている。具体的には、一対のプレート2、2と、各プレート2、2の内面にそれぞれ固定される一対のスペーサ部材3、3と、プレート2、2間に配置され、配管100、100を直接挟着している一対のゴム状弾性体4、4とを有している。
【0027】
これら一対のプレート2、2同士、一対のスペーサ部材3、3同士及び一対のゴム状弾性体4、4同士はいずれも同一構成であるため、以下のプレート2、スペーサ部材3及びゴム状弾性体4の説明は、一対のプレート2、2、一対のスペーサ部材3、3及び一対のゴム状弾性体4、4に共通するものである。
【0028】
プレート2は、例えばステンレス、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム合板等の金属によって形成され、平板状の平板部21と、この平板部21の長さ方向の両端部からそれぞれ相対するプレート2に向けて直角方向に折り曲げられることにより、詳細には後述するように、ゴム状弾性体4を抜け止めして装着するための係合部22、22とを一体に有している。平板部21の中央部には、ボルト200の軸部201を挿通させるボルト挿通孔23が設けられている。
【0029】
本実施形態に示す係合部22、22は、プレート2の両端部をそれぞれ同一方向に折り曲げるだけで形成できるため、構造簡単で製作も容易である。係合部22の折り曲げ部位は図示するように角部がとれたアール状にしてもよいし、L字型に屈曲形成したものであってもよい。また、係合部22、22は、例えばプレート2の両端部の内面2aからそれぞれ立設される構造であってもよい。
【0030】
各係合部22の先端には回り止め部221、221が形成されている。回り止め部221、221は、配管100、100を挟着するために一対のプレート2、2が互いに向かい合わされた際に、相手側の回り止め部221、221と係わり合うことができるように、ボルト挿通孔23を中心にして点対称の位置となるように形成されている。これにより、ボルト締結時の一対のプレート2、2相互間の回り止めがなされるようになっている。本実施形態に示す回り止め部221は、プレート2の幅方向の約半分の幅がさらに延出することによって形成されているが、ボルト締結時のプレート2、2相互間の回り止めがなされるものであれば具体的な形状は何ら問わない。
【0031】
スペーサ部材3は、ボルト締結時の一対のプレート2、2間の間隔を規制してゴム状弾性体4、4の圧縮量を規制する部材であり、軸部201を挿通させる挿通孔31を形成する例えば円筒状の管部材によって構成されている。スペーサ部材3は一般に金属製とされるが、具体的な材質は特に問わない。本実施形態に示すスペーサ部材3はプレート2とは別体に形成されているため、プレート2とスペーサ部材3とを別々に作製することができ、例えばプレート2を金属製、スペーサ部材3を樹脂製というように、それぞれ異なる材質を用いて作製することも可能である。
【0032】
プレート2の内面2a(係合部22の折り曲げ方向の面)には、円形状の溝部24が所定の深さで、ボルト挿通孔23と同心状に設けられている。溝部24の直径は、ボルト挿通孔23よりも大きく、スペーサ部材3の外径とほぼ同一となるように形成されており、スペーサ部材3の一端部が溝部24内に圧入嵌合(締り嵌め)されることによって、プレート2とスペーサ部材3とが一体に固定されている。これにより、プレート2のボルト挿通孔23とスペーサ部材3の挿通孔31とが連通し、プレート2の内面に該プレート2のボルト挿通孔23と同心状にスペーサ部材3が突出形成される。
【0033】
スペーサ部材3は、ボルト締結時に相手側のスペーサ部材3と当接して一対のプレート2、2間で締め付けられるため、スペーサ部材3のプレート2に対する固定状態は、配管100の支持作業時や輸送時等の振動では脱落しない程度のものであればよい。従って、作業者による手作業でも容易に圧入嵌合して固定することができる。
【0034】
なお、プレート2とスペーサ部材3との固定手段は、このような圧入嵌合構造に限らず、例えば溝部24に雌ねじ、スペーサ部材3の端部に雄ねじを形成することによって螺着構造としてもよいし、接着剤を用いた接着構造としてもよい。しかし、圧入嵌合による固定は簡単な作業で固定でき、配管固定部材1又は配管固定部材半体10の組立作業の省力化を図ることができるために好ましい。
【0035】
スペーサ部材3の軸方向の長さは、
図2に示すように、一対のゴム状弾性体4、4間に配管100、100を配置させ、ゴム状弾性体4、4が配管100、100に対して適度な圧縮力を作用させることによって該配管100、100を振動しない程度に挟着した状態で、上下のスペーサ部材3、3の先端面同士が互いに当接する程度に設定されている。このようにスペーサ部材3、3同士が当接することにより、ボルト締結時のゴム状弾性体4、4の圧縮量が規制され、配管100、100の過度の締め付けが抑制される。
【0036】
本実施形態において、一対のスペーサ部材3、3は同一のものを使用している。これにより、1本の長尺のスペーサ部材を使用する場合に比べて、部品管理が簡単で済む。すなわち、1本のスペーサ部材のみを使用する場合、一対のプレート2、2のうちのいずれか一方のみに長尺のスペーサ部材(本実施形態に示すスペーサ部材3、3を軸方向に繋げた長さ)が固定される形となるため、スペーサ部材が固定されるプレート2と固定されないプレート2との2種類の部品を用意しなくてはならない。また、1本の長尺のスペーサ部材は、一方のプレート2の内面から長尺に突出する形となるため、スペーサ部材が固定されたプレート2は、固定されないプレート2に比べて部品保管、収容スペースも多く必要となる。本実施形態に示すように一対のスペーサ部材3、3で同一のものを使用することにより、それぞれスペーサ部材3を固定したプレート2の1種類の部品だけを用意すれば済み、また、プレート2の内面からのスペーサ部材3の突出量も小さくなるため、部品保管、収容スペースも縮小できる。
【0037】
ゴム状弾性体4は、一対のプレート2、2の間で配管100、100を直接挟着する部材であり、例えばニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、シリコンゴム等によって、プレート2とは別体に成形されている。ゴム状弾性体4は、これらのゴムを単独で使用してもよいし、これらのうちの何れか二種以上のゴムを含む合成ゴム(発泡ゴムを含む。)であってもよい。
【0038】
ゴム状弾性体4の外形形状は、プレート2の長さ方向に延びる帯板状に形成されているが、本実施形態では、ゴム状弾性体4の長さは、プレート2の平板部21の長さ方向よりも長く、係合部22、22よりも長さ方向に延出する程度の長さとされている。また、幅方向は、プレート2の幅よりも幅広とされている。プレート2の内面2aと接するゴム状弾性体4の一方の面4aには、
図1、
図5及び
図6に示すように、プレート2の両係合部22、22に対応する位置に、該係合部22、22を嵌合させるための嵌合溝41、41が設けられている。
【0039】
これら嵌合溝41、41にプレート2の各係合部22、22が嵌合することにより、プレート2とゴム状弾性体4との相互の抜け止めがなされる第1の抜け止め部5、5を形成している。これにより、プレート2に対してゴム状弾性体4の抜け止めがなされるため、従来のようにプレート2表面に突起物を形成することなくゴム状弾性体4をプレートに対して抜け止め装着でき、プレート2とゴム状弾性体4とを一体物とすることができる。
【0040】
また、従来のように差込み突起を形成する必要もないため、プレート2とゴム状弾性体4との間に遊びを設ける必要がなく、プレート2とゴム状弾性体4との間に大きな隙間が発生しにくくなり、配管100の保持力の低下を招くおそれもない。
【0041】
本実施形態に示す嵌合溝41、41は、プレート2の係合部21、21の周囲全体をゴム状弾性体4で取り囲むようにして嵌合させるように形成されている。これは、嵌合によってプレート2の係合部21、21を保持する力を強くすることができ、確実な抜け止めを図ることができるために好ましい。
【0042】
また、この第1の抜け止め部5、5は、プレート2の長さ方向の両端部に配置されているため、プレート2とゴム状弾性体4との間でボルト200を中心とする回転方向のずれが生じにくくなり、配管100の挟着作業及びボルト締結作業も良好となる効果もある。
【0043】
ゴム状弾性体4と係合部22、22との嵌合は、ゴム状弾性体4の弾性を利用して弾性的に嵌合させるようにすることが好ましい。弾性的な嵌合としては、例えばゴム状弾性体4における両嵌合溝41、41間の距離を、プレート2の両係合部21、21間の距離よりも小さく又は大きく形成することが挙げられる。これにより、嵌合溝41、41に係合部22、22を嵌合させる際、ゴム状弾性体4を長さ方向に若干伸ばしながら又は縮めながら嵌合させることで、弾性的に嵌合させることができる。また、嵌合溝41の幅を、係合部22の幅よりも僅かに幅狭となるように形成することによって弾性的に嵌合させるようにしてもよいし、これらの方法を併用してもよい。これにより、両係合部22、22をゴム状弾性体4の嵌合溝41、41に弾性的に圧入して嵌合させることができ、プレート2とゴム状弾性体4との相互の抜け止めをより確実にすることができ、より強固に一体化できる。
【0044】
各嵌合溝41、41の内部には、該嵌合溝41の約半分の幅でゴム状弾性体4を表裏に貫通する貫通部411、411が形成されている。この貫通部411により、
図7に示すように、各嵌合溝41、41にプレート2の係合部22、22を嵌合させて該プレート2の内面にゴム状弾性体4を装着した際に、各係合部22、22の回り止め部221、221がゴム状弾性体4の他方の面4bから突出するようになっている。これにより、
図3に示すように、上下に相対するプレート2、2の回り止め部221、221同士が互いに当接して係わり合うことで、ボルト締結時のプレート2、2相互の回り止めがなされるようになっている。
【0045】
ゴム状弾性体4の長さ方向の中央部には、プレート2のボルト挿通孔23に対応する位置に、スペーサ部材3の外径よりも大径に形成された貫通孔42が形成されている。本実施形態に示す貫通孔42は、スペーサ部材3に対して抜け止めを行うための2つの突起部43、43が形成された好ましい態様を例示している。
【0046】
突起部43、43は、相互の離間距離がスペーサ部材3の外径よりも小さくなるように、貫通孔42の内面に互いに対向するように一体に突出形成されている。これにより、
図7に示すように、スペーサ部材3が固定されたプレート2の内面にゴム状弾性体4を装着する際、各突起部43、43が、貫通孔42内に挿通されたスペーサ部材3の外側面に対して圧接することで、スペーサ部材3の部位においても、ゴム状弾性体4の強固な抜け止めがなされ、第2の抜け止め部6を形成するようになっている。従って、上述した嵌合溝41による第1の抜け止め部5、5と併せて、プレート2とゴム状弾性体4との抜け止めをより一層確実にできると共に、より強固に一体化することができるようになっている。
【0047】
なお、突起部43の具体的な形状、数及び配置は、貫通孔42内でスペーサ部材3に対して圧接して相互の抜け止めがなされるものであればよく、図示するものに限定されない。
【0048】
また、突起部43を形成することに代えて、貫通孔42の内径をスペーサ部材3の外径よりも僅かに小径に形成することで、貫通孔42がスペーサ部材3に圧接する構成とすることもできるが、突起部43を形成する方が、スペーサ部材3やゴム状弾性体4の寸法精度のばらつきを吸収できるために好ましい。
【0049】
ゴム状弾性体4の他方の面4b(相対するゴム状弾性体4、4同士が対向する面)には、ゴム状弾性体4の幅方向に亘る配管支持溝44が形成されている。本実施形態では、貫通孔42を挟んでその両側に1本ずつの配管支持溝44、44を形成したものを例示しているが、配管支持溝44の数は配管固定部材1によって支持すべき配管100の本数に応じて適宜設定され、例えば1本のみでもよく、3本以上であってもよい。
【0050】
次に、かかる配管固定部材1の組立作業について説明する。
【0051】
まず、
図6に示すように、プレート2の内面の溝部24にスペーサ部材3の一端部を圧入嵌合させて固定する。スペーサ部材3の固定は単純な圧入嵌合であるため、作業者の手作業により簡単に行うことができる。
【0052】
次いで、
図7(a)(b)に示すように、プレート2の内面2aにゴム状弾性体4を装着する。具体的には、ゴム状弾性体4の貫通孔42にスペーサ部材3を挿通させると共に、プレート2の両係合部22、22をゴム状弾性体4の嵌合溝41、41にそれぞれ嵌合させる。このとき、両係合部22、22の回り止め部221、221が、嵌合溝41内の貫通部411から突出する。
【0053】
これにより、係合部22と嵌合溝41との嵌合による第1の抜け止め部5、5が形成されることにより、ゴム状弾性体4はプレート2の内面2aに抜け止め装着される。ゴム状弾性体4の抜け止めのために、従来のような差込み突起を用いる必要がないため、プレート2の表面に突起物が形成されることもない。また、プレート2、スペーサ部材3及びゴム状弾性体4を一体物として取り扱うことができ、部品管理も楽であると共に、後述するように、配管100を固定する際の作業性も良好となる。
【0054】
また、これ同時に、貫通孔42内の突起部43、43が、スペーサ部材3の外側面に圧接することによって第2の抜け止め部6を形成するので、ゴム状弾性体4は、貫通孔42の内面においても、プレート2に固定されたスペーサ部材3を介して、該プレート2に対して抜け止めされてしっかりと保持される。従って、本実施形態に示すプレート2とゴム状弾性体4は、それぞれ第1の抜け止め部5、5に加えて、第2の抜け止め部6を形成することによって、いずれか一方のみで抜け止めを行う場合に比べてより強固な抜け止めを図ることができる。
【0055】
以上によって、プレート2の内面2aにスペーサ部材3とゴム状弾性体4とがしっかりと装着保持された配管固定部材半体10が作製される。配管固定部材1は、この配管固定部材半体10の状態で保管、輸送される。各配管固定部材半体10は同一構造であるため、配管固定作業前の保管、管理が容易である。また、本実施形態に示すスペーサ部材3は、各々のプレート2に固定されるため、全てのプレート2に対してゴム状弾性体4を一体化できる。しかも、スペーサ部材3がプレート2から長尺状に突出することもないため、保管時に嵩張ることがなく、保管スペースも省スペース化できる。
【0056】
次に、配管100の挟着作業について説明する。
【0057】
配管100を支持する場合は、全く同様にして作製された一対の配管固定部材半体10、10を、
図8に示すように、支持すべき配管100、100の上側及び下側にそれぞれ配置させ、ゴム状弾性体4の各配管支持溝44で配管100、100を弾性的に挟み付ける。配管固定部材半体10、10は同一構造であり、いずれが上側、下側であってもよく、配管固定作業時の方向性も持たないため、作業性が良好となる。
【0058】
その後、上側のプレート2のボルト挿通孔23、スペーサ部材3、3の挿通孔31、31及び下側のプレート2のボルト挿通孔23に亘ってボルト200の軸部201を挿通させて締結することにより、所定の配設箇所に配管100、100を固定支持する。
【0059】
ボルト200を締め付けていくことによってゴム状弾性体4、4が圧縮され、これによって配管100、100は弾性的に挟着されていくが、やがてスペーサ部材3、3の先端面同士が当接してそれ以上の圧縮が規制されるため、配管100、100が過度に挟着されることはない。
【0060】
また、上下のプレート2、2の回り止め部221、221同士が、
図3に示すように互いに係わり合うことにより、ボルト200の回転に伴うプレート2、2間の回転も阻止される。
【0061】
以上の説明では、プレート2にスペーサ部材3を固定した後にゴム状弾性体4を装着するようにしたが、プレート2にゴム状弾性体4を装着した後に、ゴム状弾性体4の貫通孔42を通してプレート2にスペーサ部材3を固定するようにしてもよい。ゴム状弾性体4は、嵌合溝41、41がプレート2の係合部22、22と嵌合するだけでもプレート2に対してしっかりと抜け止め装着できるためである。
【0062】
また、第2の抜け止め部6を形成した場合は、スペーサ部材3はプレート2に対して固定されない構造としてもよい。この場合、プレート2にゴム状弾性体4を装着した後に、ゴム状弾性体4の貫通孔42を通してプレート2にスペーサ部材3を挿入すれば、突起部43の圧接によってスペーサ部材3をゴム状弾性体4から抜け止め装着することができる。これによれば、溝部24にスペーサ部材3を圧入嵌合させる必要がなく、また、プレート2に溝部24を形成する必要がなくなるため、プレート2の作製が簡単になり、コストを抑えることができる。
【0063】
ボルト200の片側のみで配管100を支持する場合は、例えば
図9に示すように、プレート2の一方の端部のみに係合部22を形成するだけでもよい。従って、嵌合溝41もゴム状弾性体4の長さ方向の一方の端部のみに形成すればよい。