(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シートクッションとシートバックのうちの一方に取り付けられ、円周方向に間隔をおいて設けられた複数のガイド壁部を有するガイドブラケットと、前記シートクッションと前記シートバックのうちの他方に取り付けられるインターナルギヤと、前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤの一方の外周面に周面部が固定される取付リングとを有し、前記ガイドブラケット及び前記インターナルギヤが相対回転することにより、前記シートバックを前記シートクッションに対してリクライニング可能に支持するシート用リクライニング装置であって、
前記ガイドブラケットに設けられた隣接する各ガイド壁部間のガイド溝部に、半径方向に動作可能に配設され、外周面に前記インターナルギヤの内歯に噛合する外歯が形成されたロックプレートを有するロック機構と、
前記ガイドブラケットのガイド溝部と前記ロックプレートとの各対向面間に設けられ、前記ロックプレートの外歯と前記インターナルギヤの内歯とが噛合するロック時に、前記ガイドブラケットと前記インターナルギヤを相対回転させる力によって、前記ロックプレートを、前記ガイド壁部との作動クリアランスが低減する方向と、前記積層配設される各部材の積層方向の作動クリアランスが低減する方向との両方向に強制する転動部材と
を備えることを特徴とするシート用リクライニング装置。
前記転動部材の配設位置が、前記ガイド溝部を挟んで隣接する一方のガイド壁部の外端縁と他方のガイド壁部の内端縁とを結ぶ線と、一方のガイド壁部の内端縁と他方のガイド壁部の外端縁とを結ぶ線との交点よりも外周側である請求項1記載のシート用リクライニング装置。
前記各対向面に形成される各保持溝のうちの一方は、前記転動部材の半径方向及び円周方向の変位を許容するように、半径方向及び円周方向共に前記転動部材の直径を超える長さを有している請求項3記載のシート用リクライニング装置。
前記半径方向及び円周方向共に前記転動部材の直径を超える長さを有している一方の保持溝の溝底面に、前記転動部材の初期配設位置となる断面略V字状の溝が形成されている請求項4又は5記載のシート用リクライニング装置。
前記半径方向及び円周方向共に前記転動部材の直径を超える長さを有している一方の保持溝に対向する他方の保持溝における半径方向に沿った溝幅が、円周方向中央付近よりも各端部側が狭く形成されている請求項4〜6のいずれか1に記載のシート用リクライニング装置。
前記ロックプレートが複数設けられ、そのうちの1以上のロックプレートとそれに対応する前記各ガイド溝部との各対向面間に、それぞれ前記転動部材が配設されている請求項1〜7のいずれか1に記載のシート用リクライニング装置。
前記ガイドブラケットと前記インターナルギヤとが相対回転する回転中心を挟んで対向する位置に設けられた2個一対のロックプレートと、それに対応する前記各ガイド溝部との各対向面間に、それぞれ前記転動部材が配設されている請求項8記載のシート用リクライニング装置。
前記取付リングは、前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤが臨む内周円を備えたリング状底面部を備えており、前記リング状底面部が、周面部側から内方に向かって曲成された内方折り曲げ部を有し、この内方折り曲げ部の内周端面が、前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤの対向傾斜面に斜め方向に対向すると共に、この対向傾斜面に、他の部位よりも近接又は当接する部位を部分的に有する構成である請求項1〜9のいずれか1に記載のシート用リクライニング装置。
前記取付リングは、前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤが臨む内周円を備えたリング状底面部を備えており、前記リング状底面部が、周面部側から内方に向かって曲成された内方折り曲げ部を有し、この内方折り曲げ部の内周端面が、前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤの外面周縁部の面に略直角に当接する部位を部分的に有する請求項1〜9のいずれか1に記載のシート用リクライニング装置。
前記リング状底面部の内方折り曲げ部と、この内方折り曲げ部に径方向に対向する前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤの径方向対向面との間に、所定のクリアランスが設けられ、前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤが前記取付リングに対して径方向に固定されていない構成である請求項11記載のシート用リクライニング装置。
前記取付リングは、前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤが臨む内周円を備えたリング状底面部を備えており、前記リング状底面部が、周面部側から内方に向かって曲成された内方折り曲げ部を有し、この内方折り曲げ部の内周端面が、前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤの対向傾斜面に斜め方向に対向すると共に、この対向傾斜面に、他の部位よりも近接又は当接する部位を部分的に有し、かつ、
前記内方折り曲げ部の内周端面が、前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤの外面周縁部の面に略直角に当接する部位を部分的に有する請求項1〜9のいずれか1に記載のシート用リクライニング装置。
前記取付リングと、前記取付リングに対して相対回転する前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤのうちの一方との間に、両者間の摩擦抵抗を小さくする手段が施されている請求項1〜13のいずれか1に記載のシート用リクライニング装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2においては、中心部に渦巻きばねで付勢されるカムを配設し、円周方向に所定間隔をおいてガイドブラケットに設けた隣接するガイド壁部間のガイド溝部に複数枚のロックプレートを配設し、渦巻きばねの弾性力によるカムの回動によってロックプレートを半径方向外方に摺動させてロックプレートの外歯をインターナルギヤの内歯に噛み合わせている。これにより、シートバックのシートクッションの傾斜角は所定の角度で維持される。一方、操作レバーを操作してカムを渦巻きばね弾性力に抗して逆方向に回転させると、カムがロックプレートに係合してロックプレートを半径方向内方に摺動させてロックを解除し、シートバックの傾動を可能にしている。
【0005】
ロックプレートの半径方向の摺動は、上記のようにガイドブラケットに設けた隣接するガイド壁部間のガイド溝部に沿ってなされるが、ガイド壁部とロックプレートとの間には、僅かな作動クリアランスが設けられている。この作動クリアランスは、ロックプレートの動きを円滑にするために必須であるが、僅かであってもロック時において、この作動クリアランスに相当する分、ロックプレートが円周方向に動いてガタつき、また、ガイド壁部の側面に接触することで異音が生じることがある。また、作動クリアランスは、製造時のプレス工程や熱処理工程における各構成部品の製造誤差により必ずしも設計通りとはならず、ばらつきがあり、この点も、ロックプレートのガタつきや異音が発生する要因となっている。
【0006】
特許文献2では、ガイドブラケットのガイド壁部の1つを揺動可能に設け、この可動ガイド壁部と所定間隔をおいて設けられた固定ガイド壁部との間に、ロックプレートと同様に半径方向に移動可能な板状くさびを設けている。また、可動ガイド壁部と板状くさびは、半径方向に対して所定角度傾斜した傾斜側面同士が当接するように設けられている。従って、板状くさびが半径方向に摺動すると、可動ガイド壁部が円周方向に押圧されて揺動し、可動ガイド壁部に隣接して配置されたロックプレートの側面に押し付けられる。これにより、ロック時において、両者間の作動クリアランスを消滅させ、ロックプレートのガタつきを抑制している。
【0007】
しかし、特許文献2の場合、ガイドブラケットのガイド壁部のいずれかを揺動可能に設けなければならないと共に、揺動可能な可動ガイド壁部と固定ガイド壁部との間に、所定形状に加工した板状くさびを配設しなければならず構造が複雑で、製造コストが増す。また、ロックプレートとガイド壁部との円周方向のガタつきを解消することはできるが、ロックプレートとガイドブラケット若しくはインターナルギヤといった積層配設されている各部材間の積層方向(軸方向)の作動クリアランスを解消することはできない。また、渦巻きばねの弾性力によってロックプレートだけでなく板状くさびも半径方向に動作させ、板状くさびによって可動ガイド壁部をロックプレート方向に押し付けるため、ロックプレートの半径方向動作の円滑性が損なわれる可能性がある。さらに、板状くさび及び可動ガイド壁部によってロックプレートが円周に沿って同じ方向のみに押し付けられるため、外歯とインターナルギヤの内歯との噛み合いが円滑になされずに不十分となる状態、いわゆる擬似ロック(ハーフロック)となる可能性もある。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、簡易な構造でありながら、ロックプレートとガイドブラケットのガイド壁部との円周方向のガタつきのみならず、ガイドブラケット若しくはインターナルギヤとの積層方向におけるガタつきも解消でき、さらに、ロックプレートの半径方向への摺動の円滑性を高め、外歯と内歯との擬似ロック(ハーフロック)の発生も抑制できるシート用リクライニング装置及び該シート用リクライニング装置が組み込まれたシートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
シートクッションとシートバックのうちの一方に取り付けられ、円周方向に間隔をおいて設けられた複数のガイド壁部を有するガイドブラケットと、前記シートクッションと前記シートバックのうちの他方に取り付けられるインターナルギヤと、前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤの一方の外周面に周面部が固定される取付リングとを有し、前記ガイドブラケット及び前記インターナルギヤが相対回転することにより、前記シートバックを前記シートクッションに対してリクライニング可能に支持するシート用リクライニング装置であって、
前記ガイドブラケットに設けられた隣接する各ガイド壁部間のガイド溝部に、半径方向に動作可能に配設され、外周面に前記インターナルギヤの内歯に噛合する外歯が形成されたロックプレートを有するロック機構と、
前記ガイドブラケット、前記インターナルギヤ及び前記ロックプレートを含む積層配設される各部材間の少なくとも1箇所に設けられ、前記ロックプレートの外歯と前記インターナルギヤの内歯とが噛合するロック時に、前記ガイドブラケットと前記インターナルギヤを相対回転させる力によって、前記ロックプレートを、前記ガイド壁部との作動クリアランスが低減する方向と、前記積層配設される各部材の積層方向の作動クリアランスが低減する方向との両方向に強制する転動部材と
を備えることを特徴とする。
【0010】
前記転動部材が、前記ガイドブラケットのガイド溝部と前記ロックプレートとの各対向面間の少なくとも1箇所に配設されていることが好ましい。
前記転動部材の配設位置が、前記ガイド溝部を挟んで隣接する一方のガイド壁部の外端縁と他方のガイド壁部の内端縁とを結ぶ線と、一方のガイド壁部の内端縁と他方のガイド壁部の外端縁とを結ぶ線との交点よりも外周側であることが好ましい。
前記転動部材が配設される少なくとも1箇所の前記ガイドブラケットのガイド溝部と前記ロックプレートとの各対向面に、それぞれ保持溝が形成され、
前記転動部材が前記各保持溝によって保持され、ロック時に前記ガイドブラケットと前記インターナルギヤとを相対回転させる力が付与されると、前記各保持溝のいずれかの部位に押し付けられて動きが規制される構成であることが好ましい。
【0011】
前記各対向面に形成される各保持溝のうちの一方は、前記転動部材の半径方向及び円周方向の変位を許容するように、半径方向及び円周方向共に前記転動部材の直径を超える長さを有していることが好ましい。
【0012】
前記半径方向及び円周方向共に前記転動部材の直径を超える長さを有している一方の保持溝の溝底面に、傾斜面が形成されていることが好ましい。
前記半径方向及び円周方向共に前記転動部材の直径を超える長さを有している一方の保持溝の溝底面に、前記転動部材の初期配設位置となる断面略V字状の溝が形成されていることが好ましい。
前記半径方向及び円周方向共に前記転動部材の直径を超える長さを有している一方の保持溝に対向する他方の保持溝における半径方向に沿った溝幅が、円周方向中央付近よりも各端部側が狭く形成されていることが好ましい。
【0013】
前記ロックプレートが複数設けられ、そのうちの1以上のロックプレートとそれに対応する前記各ガイド溝部との各対向面間に、それぞれ前記転動部材が配設されていることが好ましい。
前記ガイドブラケットと前記インターナルギヤとが相対回転する回転中心を挟んで対向する位置に設けられた2個一対のロックプレートと、それに対応する前記各ガイド溝部との各対向面間に、それぞれ前記転動部材が配設されていることが好ましい。
前記取付リングは、前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤが臨む内周円を備えたリング状底面部を備えており、前記リング状底面部が、周面部側から内方に向かって曲成された内方折り曲げ部を有し、この内方折り曲げ部の内周端面が、前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤの対向傾斜面に斜め方向に対向すると共に、この対向傾斜面に、他の部位よりも近接又は当接する部位を部分的に有する構成であることが好ましい。
前記取付リングは、前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤが臨む内周円を備えたリング状底面部を備えており、前記リング状底面部が、周面部側から内方に向かって曲成された内方折り曲げ部を有し、この内方折り曲げ部の内周端面が、前記ガイドブラケットることが好ましい。
前記リング状底面部の内方折り曲げ部と、この内方折り曲げ部に径方向に対向する前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤの径方向対向面との間に、所定のクリアランスが設けられ、前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤが前記取付リングに対して径方向に固定されていない構成であることが好ましい。
前記取付リングは、前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤが臨む内周円を備えたリング状底面部を備えており、前記リング状底面部が、周面部側から内方に向かって曲成された内方折り曲げ部を有し、この内方折り曲げ部の内周端面が、前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤの対向傾斜面に斜め方向に対向すると共に、この対向傾斜面に、他の部位よりも近接又は当接する部位を部分的に有し、かつ、
前記内方折り曲げ部の内周端面が、前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤの外面周縁部の面に略直角に当接する部位を部分的に有することが好ましい。
前記取付リングは、前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤが臨む内周円を備えたリング状底面部を有し、前記摩擦抵抗を小さくする手段が、前記リング状底面部と、前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤとの間に設けられる摺動リングであることが好ましい。
前記取付リングは、前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤが臨む内周円を備えたリング状底面部を有し、前記摩擦抵抗を小さくする手段が、前記リング状底面部と、前記ガイドブラケット又は前記インターナルギヤとの間に、円周方向に略等間隔で複数箇所に配置されるボール部材を備えてなることが好ましい。
【0014】
また、本発明のシートは、シートクッションとシートバックとを備えたシートにおいて、上記いずれかのシート用リクライニング装置が、前記シートクッションと前記シートバックとの間に配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガイド壁部間で半径方向に動作するロックプレートと、ガイドブラケットのガイド溝部との対向面間に転動部材を配設している。そのため、ロックプレートの外歯とインターナルギヤの内歯とが噛合するロック時に、ガイドブラケットとインターナルギヤを相対回転させる力が付与されると、転動部材が円周方向と積層方向(軸方向)とに相対的に変位しようとする。しかしながら、各部材間には極めて僅かな作動クリアランスしか設けられていないため、転動部材は、極めて僅かに変位した後、変位限界位置でくさびとして機能する。これにより、ロックプレートをガイド壁部の側面に当接する方向に押圧して、両者間の作動クリアランスを低減させ、ロックプレートの円周方向のガタつきを抑制すると共に、ガイド溝部とロックプレートとの各対向面間を相対的に押圧し、ロックプレートとガイドブラケットとの積層方向の作動クリアランス、ロックプレートとインターナルギヤとの積層方向の作動クリアランスも低減する。すなわち、円周方向だけでなく、ロックプレートの積層方向のガタつきも抑制する。その一方、転動部材を有しているため、ロックプレートがガイド溝部を外方に摺動する際は、転動部材の転動によって摩擦が小さく、ロックプレートの半径方向への摺動の円滑性を高めることができる。また、ロックプレートの外歯がインターナルギヤの内歯に噛み合う際には、転動部材の転動によって噛み合いやすいいずれかの方向にロックプレートが僅かに揺動するため、外歯と内歯の噛み合い作用の確実性を高め、擬似ロック(ハーフロック)の発生も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(a)は、本発明の一の実施形態に係るシート用リクライニング装置をガイドブラケット側から見た平面図であり、
図1(b)は、
図1(a)の側面図であり、
図1(c)は、
図1(a)の背面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一の実施形態に係るシート用リクライニング装置の分解斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明の一の実施形態に係るシート用リクライニング装置であって、
図3(b)のA−A線に沿った断面図であり、
図3(b)は、インターナルギヤを省略して示した平面図であり、
図3(c)は、
図3(b)のB−B線断面図であり、
図3(d)は、
図3(b)のC−C線断面図である。
【
図4】
図4(a)は、本発明の一の実施形態に係るシート用リクライニング装置で用いた、インターナルギヤとの対向面側から見たガイドブラケットの平面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のD−D線断面図であり、
図4(c)は、
図4(a)のE−E線断面図である。
【
図5】
図5(a)〜(c)は、一の例に係るプレート側保持溝を備えたロックプレートと転動部材との配設関係を示した図であり、このうち(a)はロックプレートの平面図、(b)はロックプレートの側面図、(c)は斜視図である。
図5(d)〜(f)は、他の例に係るプレート側保持溝を備えたロックプレートと転動部材との配設関係を示した図であり、このうち(d)はロックプレートの平面図、(e)はロックプレートの側面図、(f)は斜視図である。
【
図6】
図6(a),(b)は、本発明の一の実施形態に係るシート用リクライニング装置の作用を説明するための図であり、(a)は断面図、(b)はインターナルギヤを省略して示した平面図である。
【
図7】
図7は、転動部材の好ましい配設位置を説明するための図である。
【
図8】
図8は、本発明の他の実施形態に係るシート用リクライニング装置の分解斜視図である。
【
図9】
図9(a)は、本発明の他の実施形態に係るシート用リクライニング装置であって、
図9(b)のA−A線に沿った断面図であり、
図9(b)は、インターナルギヤを省略して示した平面図であり、
図9(c)は、
図9(b)のB−B線断面図であり、
図9(d)は、
図9(b)のC−C線断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の他の実施形態に係るシート用リクライニング装置の作用を説明するための断面図である。
【
図11】
図11(a)は、本発明の他の実施形態に係るシート用リクライニング装置のロックプレートと転動部材の作用を説明するための平面図であり、
図11(b)は、転動部材が
図11(a)のD−D線上に位置している状態を示した図であり、
図11(c)は、転動部材が
図11(a)のE−E線上に位置している状態を示した図である。
【
図12】
図12は、本発明のさらに他の実施形態に係るシート用リクライニング装置の分解斜視図である。
【
図13】
図13(a)は、本発明のさらに他の実施形態に係るシート用リクライニング装置の平面図であり、
図13(b)は、
図13(a)のA−A線断面図であり、
図13(c)は、
図13(a)のB−B線断面図である。
【
図14】
図14(a)は、本発明のさらに他の実施形態に係るシート用リクライニング装置で用いた、インターナルギヤとの対向面側から見たガイドブラケットの平面図であり、
図14(b)は、
図14(a)のC−C線断面図であり、
図14(c)は、
図14(a)のD−D線断面図である。
【
図15】
図15は、試験例1、試験例2及び比較例1の荷重−変位特性の測定方法を説明するための図である。
【
図16】
図16は、試験例1と比較例1の荷重−変位特性の測定結果を示した図である。
【
図17】
図17は、試験例1と試験例2の荷重−変位特性の測定結果を示した図である。
【
図18】
図18は、試験例1と試験例2の曲げモーメントの測定結果を示した図である。
【
図19】
図19は、本発明のさらに他の実施形態に係るシート用リクライニング装置の斜視図である。
【
図20】
図20(a)は、
図19に示したシート用リクライニング装置の側面図であり、
図20(b)は、ガイドブラケット側から見た平面図である。
【
図22】
図22は、本発明のさらに他の実施形態に係るシート用リクライニング装置のインターナルギヤ側から見た平面図である。
【
図23】
図23(a)は、
図22に示したシート用リクライニング装置のガイドブラケット側から見た平面図であり、
図23(b)は、
図23(a)のD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に示した実施の形態に基づき本発明をさらに詳細に説明する。
図1〜
図6は、本発明の一の実施形態に係るシート用リクライニング装置10を示したものである。シート用リクライニング装置10は、シートクッションフレームのサイドフレームと、シートバックフレームのサイドフレームとの間に取り付けられる。
図1〜
図6に示したように、シート用リクライニング装置10は、ガイドブラケット20とインターナルギヤ30とを備えており、例えば、ガイドブラケット20がシートクッションフレームのサイドフレームの後部付近に固定され、インターナルギヤ30がシートバックフレームのサイドフレームの下部付近に固定される。
【0018】
ガイドブラケット20は、円盤状に形成されていると共に、外面に外方に突出する連結突起21,21がガイドブラケット20及びインターナルギヤ30の回転中心を挟んで180度対向する位置に形成され、この連結突起21,21が例えばシートクッションフレームのサイドフレームに連結される。中心には、渦巻きばね40を配置するための所定径の配置孔22が貫通形成されている。配置孔22の内周面には、係合溝22aが少なくとも1箇所に設けられ、いずれかの係合溝22aに渦巻きばね40の外端部41が係合される。
【0019】
ガイドブラケット20は、その内面(インターナルギヤ30に対向する面)に、
図2〜
図4等に示したように、円周方向に等間隔で4つのガイド壁部23a〜23dが突設されており、隣接する各ガイド壁部23a及び23b間、23b及び23c間、23c及び23d間、並びに、23d及び23a間の4つのガイド溝部23f〜23iに、後述のロックプレート60A〜60Dが配置され、各ガイド溝部23f〜23iに沿って半径方向に摺動する。
【0020】
インターナルギヤ30は、
図2及び
図3等に示したように、平面視で円形に形成されると共に断面略凹状に形成され、凹状部31の内周面に内歯32が形成され、凹状部31をガイドブラケット20の内面に対向させて配置される。インターナルギヤ30の外面には、外方に突出する円形大径突起33が設けられていると共に、この円形大径突起33の外面からさらに外方に突出する連結突起34が円周方向に複数形成されている。この連結突起34を介して例えばシートバックフレームのサイドフレームに連結される。
【0021】
ガイドブラケット20及びインターナルギヤ30は、ガイドブラケット20の内面とインターナルギヤ30の凹状部31を対向させ、凹状部31の周壁31aの端面をガイドブラケット20の内面に付き合わせ、取付リング70によって位置決めされる。取付リング70は、平面視で円形のリング状に形成され、リング状底面部71と、リング状底面部71の外周縁から立ち上がる周面部72を有している。
【0022】
取付リング70は、ガイドブラケット20の内面とインターナルギヤ30の凹状部31を対向させ、その内部空間に渦巻きばね40、カム50及びロックプレート60A〜60Dを含むロック機構を収容した状態で、本実施形態では、インターナルギヤ30の外面側から周面部72がインターナルギヤ30及びガイドブラケット20の各外周面に位置するように装着される(
図1及び
図2参照)。このとき、リング状底面部71の内周円71aの内径は、インターナルギヤ30の円形大径突起33の外径とほぼ同じ大きさであって、円形大径突起33が挿通可能な大きさに形成されているため、このように組付けると、円形大径突起33が内周縁71aの外方に露出する。取付リング70はこのようにして装着した後、その周面部72がガイドブラケット20の外周面に溶接固定される。従って、ガイドブラケット20の連結突起21を例えばシートクッションのサイドフレームに固定連結し、インターナルギヤ30の連結突起34を例えばシートバックのサイドフレームに固定連結した状態で、シートバックがシートクッションに対して相対的に回転すると、ガイドブラケット20及びインターナルギヤ30が相対的に回転する。このとき、インターナルギヤ30の半径方向の動きは取付リング70の周面部72によって規制され、インターンルギヤ30の軸方向の動きはリング状底面部71によって規制されて円滑な回転運動がなされる。
【0023】
なお、リング状底面部71には、インターナルギヤ30側に突出する突起71bが円周方向に所定間隔毎に設けられている(
図6(a)参照)。これにより、インターナルギヤ30の外面側周縁30aは、リング状底面部71に面接触するのではなく、突起71bに接することになるため、インターナルギヤ30の取付リング70に対する回転運動が円滑になる。
【0024】
カム50は、
図2及び
図3等に示したように、本実施形態では4枚配設されるロックプレート60A〜60Dに対応して、円周方向に等間隔に、
図3(b)の反時計回りに斜め外方であって、略円弧状で角状に延びる係合突起51,51が4つ設けられている。また、係合突起51,51を除いたカム50の本体部52には、各係合突起51,51の基部から
図3(b)の反時計回りに所定角度隔てた位置に外径が大きくなるように膨出する段差部52b,52bが4箇所に形成されている。カム50の中心には、リクライニング操作用の操作部材の軸部が挿通される扁平中心孔52aが貫通形成されており、操作部材を正逆いずれかに回転操作すると、カム50はこれに追従して同方向に回転する。
【0025】
カム50は、ガイドブラケット20に対向する面において扁平中心孔52aの周囲からガイドブラケット20側に突出する第1軸部53が設けられている(
図1(a),
図3(b)参照)。第1軸部53は、渦巻きばね40の内径よりも小さな外径で形成されていると共に、第1軸部53には、外周面から中心方向に向かって係合溝53aが切り欠き形成されている。渦巻きばね40は、第1軸部53の外周に配置され、その内端部42が第1軸部53の係合溝53aに係合され、第1軸部53と共にガイドブラケット20の配置孔22内に配置される。そして、渦巻きばね40は、上記のように外端部41がガイドブラケット20の配置孔22の内周面に形成された係合溝22aに係合される。このため、内端部42を係合溝53aに係合すると、カム50を
図3(b)において時計回りに付勢する。
【0026】
インターナルギヤ30の中心には、カム50側に突出する第2軸部35が設けられており、この第2軸部35がカム50に形成された軸受け孔54に挿入され、該カム50が回転可能に支持される(
図2参照)。
【0027】
ロックプレート60A〜60Dは、本実施形態では4枚用いられる。4枚のロックプレート60A〜60Dは、カム50に形成した角状の4つの係合突起51,51に対応して、それぞれ、幅が、隣接するガイド壁部23a,23b間、23b及び23c間、23c及び23d間、並びに、23d及び23a間にできるだけ小さな作動クリアランスをもって収まり、ガイド壁部23a〜23dにおける隣接する側面でそれぞれガイドされ、ガイドブラケット20の半径方向に沿ってガイド溝部23f〜23i上を摺動可能となっている。
【0028】
ロックプレート60A〜60D及びカム50は、渦巻きばね40の弾性によるカム50の一方向(
図6(b)では時計回り)への回転によって、ロックプレート60A〜60Dが半径方向外方に付勢され、操作部材によるカム50の逆方向(
図6(b)では反時計回り)への回転によってロックプレート60A〜60Dを中心方向に変位させることができることを満足できる形状であればよい。本実施形態では、各ロックプレート60A〜60Dを平面視で略長方形に形成する一方、カム50に角状の係合突起51,51を形成しているため、各ロックプレート60A〜60Dには、内周面から
図6(b)の反時計回りに略円弧状に切り欠かれた被係合溝61,61を設けている。カム50が
図6(b)の反時計回りに回転すると、各係合突起51,51が各被係合溝61,61に係合して、ロックプレート60A〜60Dを中心方向に引き寄せる。カム50が渦巻きばね40に付勢されて
図6(b)の時計回りに回転すると、各係合突起51,51及び段差部52b,52bが、ロックプレート60A〜60Dを半径方向外方に押圧する。ロックプレート60A〜60Dの外周面には外歯63,63が形成されており、半径方向外方に押圧されるとインターナルギヤ30の内歯32に係合し、ガイドブラケット20とインターナルギヤ30とが相互回転不能にロックされる。
【0029】
ここで、4つのロックプレート60A〜60Dのうち、本実施形態では、ガイドブラケット20及びインターナルギヤ30の回転中心を挟んで180度対向する2つのロックプレート60A,60Cの一方の対向面(本実施形態では、ガイドブラケット20のガイド溝部23f,23hとの対向面)に、保持溝(プレート側保持溝)60A1,60C1が形成されている(
図3(a),(c)、
図5参照)。ガイドブラケット20のガイド溝部23f,23hにおいては、プレート側保持溝60A1,60C1に対向する位置に、保持溝(ブラケット側保持溝)23f1,23h1が形成されている(
図2〜
図4参照)。
【0030】
プレート側保持溝60A1,60C1とブラケット側保持溝23f1,23h1に挟まれて、転動部材80が配設されている。転動部材80は、半径方向と円周方向に転動可能であればよいが、好ましくは、いずれの方向にも転動しやすい金属製の球体(金属球)が用いられる。また、いずれか一方の保持溝、本実施形態では、ブラケット側保持溝23f1,23h1を、半径方向及び円周方向共に転動部材80の直径より大きく形成し、ブラケット側保持溝23f1,23h1内で適宜の方向に変位できるようになっている。また、ブラケット側保持溝23f1,23h1の溝底面は、該ブラケット側保持溝23f1,23h1の円周方向の略中央部から一方の端部側に向かって盛り上がる傾斜面23f2,23h2が形成されている。なお、傾斜面23f2,23h2は、組付け時において、シートバックに後方に荷重がかかった際に、転動部材80が該傾斜面23f2,23h2を押し付けない向きに、すなわち、ブラケット側保持溝23f1,23h1の円周方向の略中央部からシートバックの回転方向前方寄りの端部側に向かって傾斜するように形成されることが好ましい。シートバックの回転方向後方寄りの端部側に向かって傾斜するように形成することも可能であるが、その場合、乗員着座時におけるシートバックへの繰り返し荷重により、傾斜面23f2,23h2に転動部材80の圧痕が発生しやすくなり、くさび効果の低下が早期に生じる可能性がある。
【0031】
一方、プレート側保持溝60A1,60C1は、転動部材80の一部が外方に突出し、ブラケット側保持溝23f1,23h1の溝底面上を転動し得る形状で形成されている。例えば、
図5(a)〜(c)に示すように、円周方向に沿った長さが転動部材80の直径よりも長く、半径方向の溝幅D1が、転動部材80の直径未満で形成され、転動部材80がプレート側保持溝60A1,60C1の周縁部に点接触しながら転動させることができる形状、あるいは、
図5(d)〜(f)に示すように、転動部材80よりも直径の小さな円形に形成され、転動部材80がプレート側保持溝部60A1,60C1の周縁部に線接触しながら転動させることができる形状等に形成される。
【0032】
転動部材80のブラケット側保持溝23f1,23h1内における相対位置が、傾斜面23f2,23h2に対応する位置になると、ロックプレート60A,60Cとガイドブラケット20との積層方向であるシート用リクライニング装置1の軸方向に力を作用させ、両者間にくさび状に挟み込まれる。
【0033】
本実施形態によれば、ロック時においては、上記のように、カム50が渦巻きばね40に付勢されて
図3(b)の時計回りに回転し、各ロックプレート60A〜60Dが隣接するガイド壁部23a〜23dにガイドされてガイド溝部23f〜23i上を半径方向外方に押圧され、該ロックプレート60A〜60Dの外歯63,63がインターナルギヤ30の内歯32に噛合する。ロックプレート60A,60Cとガイド溝部23f,23hとの各対向面間には、転動部材80が配置されているため、外歯63,63が内歯32に噛み合う際には、転動部材80の転動によって噛み合いやすい方向にロックプレート60A,60Cが揺動することになり、いわゆる擬似ロック(ハーフロック)の発生を抑制できる。なお、2枚のロックプレート60A,60Cにおける外歯63,63が内歯32に確実に噛み合えば、円周方向に所定間隔をおいて配置された他の2枚のロックプレート60B,60Dの外歯63,63も、内歯32に擬似ロックを生じることなく噛合する。
【0034】
ロック時においては、上記のように、渦巻きばね40により、ロックプレート60A,60Cには、外歯63,63と内歯32とを噛み合わせる半径方向の力P1と、ガイド壁部23b,23dの側面に押し付けられる力P2が作用する(
図3(b)参照)。この力P2によって転動部材80が傾斜面23f2,23h2に押し付けられてくさび効果を発揮する。すなわち、傾斜面23f2,23h2に対して略直角方向(ロックプレート60A,60Cとガイドブラケット20との積層方向(シート用リクライニング装置1の軸方向)の分力と、力P2の作用方向の逆方向の分力との合力の方向)に反力P3が作用する(
図6(a)参照)。この反力P3によってロックプレート60A,60Cがシートバックの後倒方向に位置するガイド壁部23a,23cの各側面に円周方向に片寄せされ、
図6(b)における180度対称位置のb部−b部の2点で当接し、ロックプレート60A,60Cとガイド壁部23a,23cとの作動クリアランスがなくなる。また、反力P3によってロックプレート60A,60Cがインターナルギヤ30方向に片寄せされるため、ロックプレート60A〜60Dとインターナルギヤ30との間の作動クリアランスを初めとして、積層配設された各部材間の作動クリアランスがなくなる。その結果、円周方向及び積層方向のいずれにおいてもガタが解消される。シートバックが前方に動こうとすると、転動部材80が傾斜面23f2,23h2方向に変位しようとして再びくさび状に食い込む。これにより、前方への変位も抑えられる。すなわち、本実施形態によれば、前後いずれの回転方向でもガタが抑制されると共に、ロックプレート60A〜60D、ガイドブラケット20及びインターナルギヤ30を含む積層配設される部材の積層方向でのガタも抑制され、それらを要因とする異音の発生が抑制される。
【0035】
一方、ロック解除の際は、操作部材を操作してカム50を上記と逆方向(
図6(b)では反時計回り)に回転させる。これにより、カム50の各係合突起51,51が各ロックプレート60A〜60Dの各被係合溝61,61に係合して、各ロックプレート60A〜60Dが中心方向に引き寄せられ、外歯63,63と内歯32とが噛合しなくなり、ロックが解除される。本実施形態では、2つのロックプレート60A,60Cにおいて転動部材80を配設しているため、これら2つのロックプレート60A,60Cは、摺動抵抗ではなく転がり抵抗を受けながら変位することになる。その結果、転動部材80を全く配設せずに、全てのロックプレートを摺動抵抗を受けながら変位させていた従来の構造と比較して、2つのロックプレート60A,60Cの変位時の抵抗が小さくなる分、4つのロックプレート60A〜60Dを合わせた全体の抵抗も小さくなって動きがスムースになる。そのため、操作部材を操作した際の抵抗も小さくなって操作感が向上する。なお、転動部材80を4つのロックプレート60A〜60Dの全てに対応して設け、さらに操作時の抵抗を小さくすることも可能である。
【0036】
また、ロック解除時における転動部材80の転がり抵抗を受けながらのロックプレート60A,60Cの変位をよりスムースにするため、転動部材80の配設位置は、
図7に示したように、ガイド溝部23f,23hを挟んで隣接する一方のガイド壁部23a,23cの外端縁23a2,23c2と他方のガイド壁部23b,23dの内端縁23b1,23d1とを結ぶ線と、一方のガイド壁部23a,23cの内端縁23a1,23c1と他方のガイド壁部23b,23dの外端縁23b2,23d2とを結ぶ線との交点Q1,Q2よりもいずれも外周側であることが好ましい。換言すれば、ロックプレート60A,60Cのプレート側保持溝60A1,60C1と、ガイドブラケット20のブラケット側保持溝23f1,23h1は、転動部材80をこの交点Q1,Q2よりも外周側に位置させることができる位置にそれぞれ形成されることが好ましい。
【0037】
ロック解除時において、ロックプレート60A,60Cは、その内周寄りに位置する各被係合溝61,61に、カム50の各係合突起51,51が作用して引き寄せられる。そのため、転がり運動の支点となる転動部材80は、各係合突起51,51の作用点である各被係合溝61,61との接触点からより離間している位置に配設されている方が、ロックプレート60A,60Cの中心方向への運動がより安定する。これにより、ロック解除時の抵抗もさらに小さくなり、より小さな力でのロック解除が可能となって操作感のさらなる向上に資する。
【0038】
なお、ガイドブラケット20は、熱処理等の表面硬化処理を施さないことが好ましい。転動部材80の転動による負荷がかかった際に、軸方向でたわみ、表面硬化処理されていない該ガイドブラケット20の弾性作用で受けることができ、シートバックに入力される高周波振動の減衰に寄与できる。
【0039】
図8〜
図11は、本発明の他の実施形態を説明するための図である。本実施形態では、ブラケット側保持溝23f1,23h1を、半径方向及び円周方向共に転動部材80の直径よりも大きく形成している点は上記実施形態と同様であるが、その溝底面には傾斜面を設けておらず、平坦面で形成している。プレート側保持溝60A1,60C1は、
図11に示したように、円周方向中央付近における半径方向に沿った溝幅D1が、転動部材80の直径未満であると共に、円周方向端部付近の溝幅D2はD1よりもさらに狭い幅となる形状で形成されている。従って、転動部材80は、プレート側保持溝部60A1,60C1に対しては、その全てが溝内に位置するのではなく、該プレート側保持溝部60A1,60C1の周縁部に点接触で支持されることになる。そして、転動部材80のプレート側保持溝部60A1,60C1における相対位置が、円周方向中央付近よりも円周方向端部付近に近づくに従って、溝幅がD1からD2へと狭くなるため、周縁部に点接触している位置が次第に浅くなり、転動部材80は相対的にブラケット側保持溝23f1,23h1の溝底面を押し付ける方向に、すなわち、ロックプレート60A,60Cとガイドブラケット20との積層方向であるシート用リクライニング装置1の軸方向に変位しようとして、両者間にくさび状に挟み込まれる。
【0040】
本実施形態によれば、ロック時においては、上記実施形態と同様に、渦巻きばね40により、ロックプレート60A,60Cには、外歯63,63と内歯32とを噛み合わせる半径方向の力P1と、ガイド壁部23b,23dの側面に押し付けられる力P2が作用する(
図9(b)参照)。このため、転動部材80はロックプレート60A,60Cとの相対位置が、
図11に示したように、転動部材80の中心位置で、
図11(a)のD−D線の位置からE−E線の位置へと矢印c方向に変化するため、
図11(b)及び
図11(c)に示したように、転動部材80は、積層方向(軸方向)においては、プレート側保持溝60A1,60C1から離脱する
図10の矢印d方向に僅かに変位する。それにより、ロックプレート60A,60Cが円周方向に片寄せされ、ガイド壁部23a,23cとの作動クリアランスが低減される。同時に、転動部材80の中心とロックプレート60A,60C間の距離が、L1(例えば0.87mm)からL2(例えば0.91mm)へと大きくなり、転動部材80がロックプレート60A,60C及びガイドブラケット20のガイド溝部23f,23hの間にくさび状に挟み込まれるため、
図10の矢印d方向に、すなわちロックプレート60A,60Cがインターナルギヤ30方向に片寄せされ、各部材の積層方向(軸方向)の作動クリアランスも低減される。従って、本実施形態の構成でも、上記実施形態と全く同様に、円周方向及び積層方向のいずれのガタがなくなり、異音の発生が抑制される。但し、本実施形態の場合、ブラケット側保持溝23f1,23h1内に傾斜面を形成する必要がない点で加工が容易である。
【0041】
なお、本発明では、金属球からなる転動部材80を挿入配設する構成であるが、製造誤差等により、転動部材80とガイドブラケット20及びインターナルギヤ30との間に遊びがあるとくさび作用によるガタつき解消効果が低減する。そのため、取付リング70のリンク状底面71とガイドブラケット20とにより、それらの間に配置される転動部材80、ロックプレート60A〜60D及びインターナルギヤ30等をできるだけ強く挟み込むようにして配設することが望ましい。その一方、強く挟んだ際の取付リング70に対するインターナルギヤ30の回転時の摩擦抵抗を小さくし、スムーズな回転を確保するため、
図12〜
図14に示したように、インターナルギヤ30の外面側周縁30aと取付リング70のリング状底面部71との間に、摩擦抵抗の小さい素材からなる摺動リング90を介在配設することが好ましい。このような摺動リング90としては、例えば、樹脂と金属を組み合わせた複合素材からなる無給油タイプのリング状部材、ドライコーティングしたワッシャ、ステンレス製ワッシャ等を挙げることができる。また、両者間の摩擦抵抗を小さくする手段としては、このような摺動リング90を配設する手段のほか、摺動リング90を配設するか否かに拘わらず、インターナルギヤ30の外面側周縁30aと取付リング70のリング状底面部71における対向する摺動面にドライコーティングを施す手段を採用することもできる。
【0042】
また、金属球からなる転動部材80の組付け時において、ガイドブラケット20のブラケット側保持溝23f1,23h1とロックプレート60A,60Cのプレート側保持溝60A1,60C1との間に位置させようとすると、転動部材80が容易に転がるため、組付け性を損なう可能性がある。そこで、
図12〜
図14に示したように、ブラケット側保持溝23f1,23h1の溝底面に、断面略V字状の浅い溝(V字溝)23f3,23h3を形成しておくことが好ましい。組付け時には、初期配設位置であるこのV字溝23f3,23h3に転動部材80を配設しておくこで、容易に組付けることができる。
【0043】
(荷重試験)
ここで、
図15に示したように、インターナルギヤ30の連結突起34をシートバックに相当する所定長さのバック側剛体治具1000に溶接し、ガイドブラケット20の連結突起21をシートクッションを想定したクッション側剛体治具1100に溶接することにより、両者間にシート用リクライニング装置10を配設し、バック側剛体治具1000の上部(
図15の負荷点の位置)を前後に押圧して荷重−変位特性を測定した。変位量は、バック側剛体治具1000の略中間部の所定位置で測定した。
図16がその測定結果を示し、金属球からなる転動部材80を配設した本実施形態のシート用リクライニング装置10を用いた測定結果が「試験例1」であり、本実施形態のシート用リクライニング装置10から転動部材80を除いた構造の測定結果が「比較例1」である。
図16から、比較例1では、後方へ変位方向において変位量−0.2mmから+0.2mm付近まで荷重値がほとんど変化しないガタがあり、前方への変位方向において変位量+0.1mmから−0.1mm付近まで荷重値がほとんど変化しないガタがある。これに対し、試験例1では、荷重値が変化しない領域がいずれの方向でもなく、ばね感に変わっており、ガタがないことがわかる。よって、本実施形態のシート用リクライニング装置10のように転動部材80を配設することが、ガタつきの抑制に高い効果を示すことがわかる。
【0044】
次に、本実施形態のシート用リクライニング装置10を組み立て、さらに取付リング70の周面部72に半径方向内方に突出する凸部をダボ加工により形成した試験例2に係るシート用リクライニング装置を用いて、
図16と同様の荷重−変位特性を測定した。結果を
図17に示す。このようなダボ加工は、転動部材80を配設しない構造の従来のシート用リクライニング装置において、取付リング70の周面部72のうちの例えばシート前方側の面のみからポンチングしてインターナルギヤ等を片寄せするもので、ガタ対策の一つとして知られている。
図17から明らかなように、試験例2のように、転動部材80を配設した上でダボ加工を行うと、いずれの変位方向においても、変位量+0.2mmから+0.4mmの範囲付近において荷重値がほとんど変化しない領域が存在する。これは、転動部材80を配設することにより解消されるべきガタが、ダボ加工を行うことによって転動部材80の配置バランスが崩れくさび効果が低減してしまうことによるものと考えられる。従って、試験例1との比較から、転動部材80を配設する場合には、取付リング70の周面部72に半径方向内方に突出する凸部をダボ加を施すことは、さらなるガタ抑制効果につながるとは限らないことがわかった。但し、試験例2も、転動部材80を配設しない比較例1と比べれば、ガタつきは抑制されている。
【0045】
(曲げモーメントに関する試験)
図15に示したシート用リクライニング装置10を配設したバック側剛体治具1000の負荷点に、シート用リクライニング装置10が破壊されるまで荷重をかけて測定した。結果を
図18に示す。
図18において、本実施形態のシート用リクライニング装置10を用いた測定結果が「試験例1」であり、本実施形態のシート用リクライニング装置10から転動部材80を除いた構造の測定結果が「比較例1」である。
【0046】
まず、試験例1の場合、円周方向及び積層方向のいずれの方向についてもガタが小さくなっているため、負荷によってガイドブラケット20とインターナルギヤ30との相対回転した際に、ロックプレート60A〜60Dがガイド壁部23a〜23dを回転方向(せん断方向)に沿って押圧し、積層方向に逃げることなくガイド壁部23a〜23dが力を受けることになる。そのため、試験例1では、変位量10mm以下の初期変位では500Nmを超える荷重を受けることができるのに対し、比較例1では、初期変位ではその半分程度の荷重値となっている。その後は、ガイド壁部23a〜23dの変形によって、せん断方向の力と積層方向に逃げる曲げ応力とが作用していく。このように両者の合力によって破壊が進展してく過程の変位量と荷重値の関係は、試験例1及び比較例1共に類似しているが、変位量約40〜50mmの範囲及び120mm以降の範囲において、試験例1特有のばね定数値となる変化が見られる。これらにより、試験例1の耐荷重値は比較例1よりも約500Nm向上していると共に、変位量も約20mm伸びており、強度が向上していることがわかる。
【0047】
図19〜
図21は、本発明のさらに他の実施形態に係るシート用リクライニング装置100を示した図である。このシート用リクライニング装置100におけるガイドブラケット20、インターナルギヤ30、渦巻きばね40、カム50、ロックプレート60A〜60D、転動部材80の各構造については、
図12〜
図14に示したものと同様であるが、取付リング700の構造が異なる。
図12〜
図14では、取付リング70に対するインターナルギヤ30の回転時の摩擦抵抗を小さくし、スムーズな回転を確保するため、インターナルギヤ30の外面側周縁30aと該取付リング70のリング状底面部71との間に、摩擦抵抗の小さい摺動リング90を介在配設させているが、本実施形態では、両者間の摩擦抵抗を小さくする手段として上記摺動リング90に代え、金属球からなるボール部材95を配設している。具体的には、
図21(a),(b)に示したように、取付リング700のリング状底面部710を、周面部720側から内方に向かって、インターナルギヤ30の外面側周縁30aと該リング状底面部71との間でボール部材95を抱え込むような形状となるように形成している。ボール部材95の配設数は限定されるものではないが、円周方向に略等間隔で複数箇所(本実施形態では、円周方向に略等間隔で3箇所)に配置することが好ましい。そして、リング状底面部710のうち、各ボール部材95を挟んだ円周方向両側において、外面から内方に向かって突出する凸部710a,710aをダボ加工によって形成し、各ボール部材95の円周方向の転動範囲を規制している。
【0048】
本実施形態のようにボール部材95を配設することにより、インターナルギヤ30と取付リング700との間の回転時の摩擦抵抗が小さくなり、スムーズな回転を確保しつつ、各部材の積層方向のガタをより小さくする機能も果たす。また、ボール部材95を抱え込むように加工したリング状底面部710の内方折り曲げ部711は、数十度(例えば30度から60度)の折り曲げ角度を有しているが、インターナルギヤ30には、その外面側周縁30a付近と、それよりも内側の位置から外方に突出する外方突出部の外側面30a2との間に、内方折り曲げ部711の先端面である内周端面711aに対向する数十度(例えば30度から60度)の傾斜角度を有する傾斜対向面30a1を形成しておく。そして、内方折り曲げ部711の内周端面711aと、インターナルギヤ30の傾斜対向面30a1とのクリアランス(
図21(c)参照)を、通常箇所で0.3〜0.5mm程度で設定する一方で、内周端面711の円周方向において、部分的に、傾斜対向面30a1方向に突出し、クリアランスが0.1〜0.3mm程度か、0.1m以下(0mmも含む)で実質的にクリアランスのない箇所を設ける(
図21(d)参照)。
【0049】
内方折り曲げ部711の内周端面711aと傾斜対向面30a1をこのように数十度(例えば30度から60度)の角度をもって対向させ、かつ部分的にクリアランスを狭小にし、さらには当接可能としてクリアランスが実質的にゼロとなる構成とすると、インターナルギヤ30に対して、その厚さ方向(部材の積層方向)と径方向との2方向にガタつきを抑制する機能が作用する。すなわち、0.1〜0.3mmの極めて狭小なクリアランスを設定した場合には、2方向のガタつきが最大でもその狭小なクリアランス範囲に抑制され、実質的にゼロにした場合には2方向へのガタつきがほとんどなくなる。取付リング700の内方折り曲げ部711の内周端面711aと、インターナルギヤ30の傾斜対向面30a1とのクリアランスの狭小な部位(クリアランスがゼロの場合も含む)は、円周方向に2〜3箇所設けることが好ましく、ボール部材95を上記のように円周方向に3箇所設ける場合には、隣接するボール部材95,95間の円周方向略中間部に、クリアランスの狭小な部位を設けることがより好ましい。それにより、ボール部材95の機能と、内周端面711aにおけるクリアランスの狭小な部位による機能とが円周方向にバランスのとれた位置で発揮される。すなわち、摩擦係数を下げる機能も有しているボール部材95と内周端面711aとにより2種類のガタ抑制機能が作用することになる。しかも、ボール部材95としては鉄製の金属球を用いることができるため、低コストで採用できるガタつき抑制手段である。
【0050】
また、
図19〜
図21に示した取付リング700に代えて、
図22〜
図24に示した取付リング7000を用いることもできる。この取付リング7000は、
図19〜
図21に示した取付リング700と同様に、リング状底面部7100のうち、ダボ加工により形成した内方に突出する凸部7110,7110を有し、一対の凸部7110,7110間にボール部材95が装填されている。
【0051】
取付リング7000のリング状底面部7100は、ボール部材95を周面部7200側から内方に向かって抱え込むように曲成されているが、ボール部材95の装填位置では、
図23(b)及び
図24(a)に示すように、リング状底面部7100の内方折り曲げ部7111の内周端面7111aと、対向するインターナルギヤ30の外面側周縁30a付近の対向傾斜面30a1との間に0.3〜0.5mm程度の通常のクリアランスXが存在する形状となっている。ボール部材95の装填位置では、リング状底面部7100の内方折り曲げ部7111は、ボール部材95の外面に当接するまで数十度傾斜した折り曲げ角度になっているが(
図24(a)参照)、
図24(b),(c)に示したように、ボール部材95の装填位置以外では、内方折り曲げ部7111の内周端面7111aが、外面側周縁30aの面に略直角に当接するように折り曲げられている。このうち、ボール部材95の装填位置以外の内方折り曲げ部7111は、その円周方向に部分的に、本実施形態では、隣接するボール部材95,95間の円周方向略中間部である3箇所において、内周端面7111aが外面側周縁30aに当接し(
図24(b)参照)、それ以外の部分では、若干のクリアランスYを有している。
【0052】
本実施形態によれば、リング状底面部7100は、内方折り曲げ部7111の内周端面7111aの一部が、インターナルギヤ30の外面側周縁30aの面に略直角に突き当たっている。この結果、インターナルギヤ30は、ボール部材95に加えて、リング状底面部7100の内方折り曲げ部7111によっても押さえ付けられることになり、インターナルギヤ30の厚さ方向(各部材の積層方向)におけるガタつきをさらに低減できる。また、インターナルギヤ30の厚さ方向への押さえ付けを、リング状底面部7100に例えばダボ加工により突出させた凸部により行うのではなく、内方折り曲げ部7111の折り曲げ角度を調整して内周端面7111aをインターナルギヤ30の外面側周縁30aに略直角に当てて押さえ付けているため、押さえ付けの機能を果たしている部分の断面係数がダボ加工により突出させた凸部等と比較して高く、インターナルギヤ30の相対回転による押さえ付け機能の低下も生じにくい。なお、この点は、同じく内方折り曲げ部711の内周端面711aを傾斜対向面30a1に近接ないし当接させる
図19〜
図21の実施形態でも同様である。
【0053】
本実施形態では、内方折り曲げ部7111が、インターナルギヤ30の外方突出部の外側面(内方折り曲げ部7111に径方向に対向する径方向対向面)30a2に対して、所定のクリアランスZを有する構成としている。このクリアランスZ及びボール部材95の装填位置における上記のクリアランスXにより、インターナルギヤ30が取付リング7000に対して、径方向に固定されず、若干の遊びを有する。この点が、
図19〜
図21に示した内方折り曲げ部711の内周端面711aが、30度から60度の傾斜角度で対向傾斜面30a1に近接又は当接して、厚さ方向及び径方向の2方向のガタを抑制する構成と異なる。インターナルギヤ30が取付リング7000に対して径方向にも固定され、径方向への遊びが実質的にない構成とすると、各部材の寸法誤差を吸収できず、円滑な作動を妨げる可能性もあることから、
図22〜
図24に示した本実施形態は、この点を考慮して径方向に若干の遊びを設けた構成としている。但し、各部材の寸法精度が所定以上の場合には、
図19〜
図21に示した構成であっても何ら問題ない。
【0054】
また、取付リングとしては、
図19〜
図21に示した内方折り曲げ部711の内周端面711aを、30度から60度の角度で傾斜させて対向傾斜面30a1に0.3mm以下の狭小なクリアランスで対向させるか実質的に当接させた構造と、
図22〜
図24に示した内方折り曲げ部7111をインターナルギヤ30の外面側周縁30aに略直角に当接させた構造との両方を備えた構造とすることもできる。この場合、30度から60度の角度で対向傾斜面30a1に対向する内方折り曲げ部711によって、厚さ方向及び径方向の2方向のガタを抑制できると共に、外面側周縁30aに略直角に当接する内方折り曲げ部7111により、厚さ方向のガタをさらに抑制できる。両者を組み合わせることによりガタ抑制効果がより高くなる。従って、積層方向のガタ抑制に用いられるボール部材95を配設しない構成とすることも可能である。