(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588248
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】実装構造及びパッケージ
(51)【国際特許分類】
H05K 7/12 20060101AFI20191001BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
H05K7/12 E
H01L23/02 H
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-123780(P2015-123780)
(22)【出願日】2015年6月19日
(65)【公開番号】特開2017-11059(P2017-11059A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】301072650
【氏名又は名称】NECスペーステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 寿俊
(72)【発明者】
【氏名】田中 英樹
【審査官】
三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−110309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/54−23/26
H05K 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を入出力する信号端子の突出する面の前記信号端子の周辺にネジ止め用の加工部が設けられるパッケージと、
前記加工部に対応して電子部品を実装する実装対象に設けられた貫通穴と、
を有し、
前記信号端子の周辺において前記パッケージを前記実装対象に接する面側からネジ止めする実装構造であって、
前記パッケージは、さらに貫通穴を有し、
前記実装対象は、前記パッケージの貫通穴に対応するネジ止め用の加工部をさらに有し、
前記信号端子の周辺において前記パッケージを前記パッケージ側から前記実装対象にネジ止めする、実装構造。
【請求項2】
高周波信号を入出力する信号端子の突出する面の前記信号端子の周辺にネジ止め用の加工部が設けられるパッケージと、
前記加工部に対応して電子部品を実装する実装対象に設けられた貫通穴と、
を有し、
前記信号端子の周辺において前記パッケージを前記実装対象に接する面側からネジ止めする実装構造であって、
前記信号端子の周辺に設けられた加工部は、タップであり、前記パッケージを貫通せず且つ、前記タップのネジ径以上の長さをもつ、実装構造。
【請求項3】
前記パッケージは、さらに貫通穴を有し、
前記実装対象は、前記パッケージの貫通穴に対応するネジ止め用の加工部をさらに有し、
前記信号端子の周辺において前記パッケージを前記パッケージ側から前記実装対象にネジ止めする、請求項2に記載の実装構造。
【請求項4】
前記パッケージは、前記信号端子の周辺において部分的に厚い構造をもつ
請求項1から3のいずれかに記載の実装構造。
【請求項5】
高周波信号を入出力する信号端子と、
前記信号端子の突出する面の前記信号端子の周辺にネジ止め用の加工部が設けられる構造と、
を有するパッケージであって、
前記信号端子の周辺に設けられた加工部は、タップであり、前記パッケージを貫通せず且つ、前記タップのネジ径以上の長さをもつ、パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高周波用のハイブリッドIC(Integrated Circuit:集積回路、以下、HIC)のように、高周波信号を入出力する電子部品の実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、信号用ピンによって高周波信号を入出力するHICを、筐体に搭載する場合、HICを構成するパッケージの面精度によって僅かな凹凸が生じることがある。このため、信号用ピンの周辺において筐体とパッケージとの間にわずかに隙間ができ、高周波信号(RF(Radio Frequency)信号とも呼ばれる。)が漏洩してしまうことがあった。
【0003】
このような問題を解決するために、例えば、特許文献1には、IC(Integrated Circuit)パッケージの上面に取り付け金具を被せ、取り付け金具のICパッケージの端面から外れた四方の部分に配置した取り付けネジ等により、取り付け金具をハウジング筐体の実装面に締め付けることが開示されている。また、ICパッケージの信号用ピンの周囲を突起部とし、ハウジング筐体の実装面の対応する位置に皿もみ加工された穴を備えることが開示されている。
【0004】
また特許文献2には、ネジを、整流回路基板の半田面側から、整流回路基板に設けられた挿通孔およびブリッジダイオードに設けられた挿通孔に挿通させ、放熱板に設けられたネジ孔に螺合させることにより、ブリッジダイオードを放熱板にネジ止めすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−012758号公報
【特許文献2】特開2008−271756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1の実装構造では、ICパッケージの端面から外れた四方の部分に配置した取り付けネジにより取り付け金具をハウジング筐体の実装面に締め付けるため、ICパッケージの信号ピンと取り付けネジが離れており、取り付け面が平坦ではない場合は、信号端子の周辺においてはICと筐体間の面圧が十分強くできないおそれがある。また特許文献2の実装構造では、ダイオードの信号ピンと挿通孔が離れており、信号端子の周辺においてはダイオードと放熱板間の面圧が十分強くできないおそれがある。
【0007】
電子部品の信号端子の周囲を突起させず、筐体との取り付け面が平坦な場合には、搭載面の面精度によっては、信号端子の周辺において電子部品と筐体間の面圧が十分強くないと、RF信号の漏洩のおそれがある。取り付け面が平坦の場合に、信号端子周辺におけるRF信号の漏えい量を抑えることができる実装構造は、特許文献1,2には開示されていない。
【0008】
本発明は、筐体とパッケージとの取り付け面の面圧を高くすることができ、信号端子周辺におけるRF信号の漏えい量を抑えることができる実装構造及びパッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実装構造は、高周波信号を入出力する信号端子の突出する面の前記信号端子の周辺にネジ止め用の加工部が設けられるパッケージと、前記加工部に対応して電子部品を実装する実装対象に設けられた貫通穴と、を有し、前記信号端子の周辺において前記パッケージを実装対象に接する面側からネジ止めする。
【0010】
本発明のパッケージは、高周波信号を入出力する信号端子と、前記信号端子の突出する面の前記信号端子の周辺にネジ止め用の加工部が設けられる構造とを有している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、信号端子周辺においてパッケージと筐体間の面圧を高くすることができ、信号端子の周辺におけるRF信号の漏えい量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態のHICをRF信号端子側から見た平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態のHICを筐体に実装した構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のパッケージ部の変形例の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態のHICをRF信号端子側から見た平面図である。
【0014】
HIC1は、高周波信号を入力または出力する。HIC1は、高周波信号を入力または出力するのであれば、ハイブリッドICに限定されない。
【0015】
HIC1は、
図1に示すように、入力側RF信号端子11aおよび出力側RF信号端子11bと、パッケージ12と、を備えている。
【0016】
入力側RF信号端子11aおよび出力側RF信号端子11bは、パッケージ12に収容されている電子回路に電気的に接続されている。入力側RF信号端子11aは、外部で発生した高周波信号をパッケージ12に収容されている電子回路に入力する。出力側RF信号端子11bは、パッケージ12に収容されている電子回路で発生する高周波信号を外部へ出力する。なお、以下の説明では、入力側RF信号端子11aおよび出力側RF信号端子11bを入力側と出力側に分けて説明する必要がない場合には、入力側RF信号端子11aおよび出力側RF信号端子11bを包括的にRF信号端子11として説明する。
【0017】
パッケージ12は、矩形状の板状に形成されている。パッケージ12は、例えば、樹脂成型品などによって構成される。
【0018】
また本実施形態のHIC1のパッケージ12には、
図1に示されるように、RF信号端子11の周辺に、例えばRF信号端子11を挟んで2か所に貫通穴13が設けられている。この貫通穴13は、HIC1を筐体2にネジ3によって実装する際に用いられる。
【0019】
また、本実施形態のHIC1には、
図1に示すように、パッケージ12のRF信号端子11が突出しているRF信号端子側の面において、RF信号端子11の周辺部にネジ止め用の加工部14、例えば、タップが設けられる。加工部14とRF信号端子11の距離は、RF信号端子11に対応して後述の筐体2に設けられる貫通穴22の外側にネジ3が配置できるように設定される。また加工部14は、例えばRF信号端子11を中心として貫通穴13のある角度からずらした角度に設けられる。例えば、
図1に示すように、貫通穴13が2つで、2つの加工部14を配置する場合には、貫通穴13とは直角方向に設けられてよい。また、加工部14は、RF信号端子11の周囲に、貫通穴22の周囲にネジ3が配置可能なように、また筐体2を十分圧接できるよう加工部14からRF信号端子11までの距離は同じとしてよい。加工部14は、パッケージ12を貫通せず且つ、ネジ3の径以上の長さが望ましい。
【0020】
図2は、本発明の第1の実施形態のHICを筐体に実装した構成を示す断面図である。
【0021】
HIC1のパッケージ12に貫通穴13が設けられ、筐体2には貫通穴13に対応する位置にネジ止め用の加工部14、例えば、タップが設けられ、RF信号端子11の周辺においてHIC1を筐体2にネジ止めして実装する。それとともに、筐体2に接する裏面でかつRF信号端子11の周辺に、加工部14が設けられ、加工部14に対応して筐体2に貫通穴21が設けられ、RF信号端子11の周辺において筐体側からもHIC1を筐体2にネジ止めしている。
【0022】
パッケージ部12は、加工部14の長さを確保するために、
図2に示すように、HIC1のパッケージ12の全体の厚みを厚くした構造としてもよい。また、パッケージ12は、部分的に厚くした構造としてもよい。
【0023】
パッケージ部12の筐体側の面と反対側の面には、個別部品15が収容されている。
【0024】
次にパッケージの変形例の構成について説明する。
図3は、パッケージの変形例の構成を示す図である。
図3に示すように、信号端子11の周辺部においてパッケージ16を厚くして加工部14の長さを確保した構造とし、信号端子11の周辺部以外においてはパッケージ16の厚さを薄くしている変形例である。
【0025】
また、信号端子11の周辺部においてパッケージ16に収容される個別部品15を背の低い部品としてパッケージ16の個別部品15が収容される側の面を部分的に底上げした構造としてもよい。そして、信号端子11の周辺部以外においてはパッケージ16の個別部品15が収容される側の面を部分的に下げ、個別部品15の上面の高さが概略揃う程度に個別部品15を背の高い電気部品としてもよい。そして信号端子11の周辺部の底上げした箇所に加工部14を設ける構造としてもよい。
【0026】
以上、説明したように第1の実施形態によれば、HIC1の高周波信号を入出力するRF信号端子11の突出する面が平坦で、この面のRF信号端子11の周辺にネジ止め用の加工部14が設けられ、RF信号端子11の周辺においてパッケージ12を筐体2に接する裏面側から筐体2にネジ止めする。このような実装構造にすることでパッケージ12と筐体2の間の面圧が高くなるため、RF信号端子11の周辺と筐体2との密着が良好となり、RF信号端子11の周辺と筐体2間の隙間が無くなる。これにより信号(電波)の漏えい量が抑圧されるなどRF性能改善効果が期待できる。
【0027】
次に第2の実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態のHICをRF信号端子側から見た平面図である。本実施形態のHIC4には、RF信号端子11の周辺にネジ止め用の加工部14、例えばタップのみが設けられ、貫通穴が設けられていない点で第1の実施形態と異なる。本実施形態のパッケージ12の筐体に接する面の側からネジ止めするための加工部14の本数は、
図4に示すように、1つのRF信号端子11の周囲に例えば3本としてよい。左右の3つの加工部14の配置は、
図4に示すようにパッケージ12の中心線に対して線対称に配置してもよい。なお、3つの加工部14からRF信号端子11までの距離は同じとしてよい。第1の実施形態と同様に、加工部14とRF信号端子11の距離は、RF信号端子11に対応して筐体2に設けられる貫通穴22の外側にネジ3が配置できるように設定される。また加工部14は、例えばRF信号端子11を中心として貫通穴13のある角度からずらした角度に設けられる。例えば、
図1に示すように、貫通穴13が2つで、2つの加工部14を配置する場合には、貫通穴13とは直角方向に設けられてよい。また、加工部14は、RF信号端子11の周囲に、貫通穴22の周囲にネジ3が配置可能なように、また筐体2を十分圧接できるよう加工部14からRF信号端子11までの距離は同じとしてよい。なお加工部14の本数は3本以上としてもかまわない。
【0028】
本実施形態によれば、RF信号端子11の周辺近傍で3か所以上ネジ止めすることでパッケージ12と筐体2の間の面圧が高くなるため、RF信号端子11の周辺と筐体2との密着が良好となり、RF信号端子11の周辺と筐体2間の隙間が無くなる。これにより信号(電波)の漏えい量が抑圧されるなどRF性能改善効果が期待できる。
【0029】
なおHIC1は、マイクロ波を使用した装置で使用される信号端子付きハイブリッドICのみならず、他の高周波用途で使用される信号端子付きハイブリッドIC全般へも応用可能である。
【0030】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0031】
例えば、上記の実施形態において、RF信号端子11の周辺部に設けられるネジ止め用の加工部14がタップの例について説明したが、これに限られるものではない。ネジ止め用の加工部14は、例えば、ネジ加工されていない孔や、溝としてもよい。この場合、タッピングネジを用いてHIC1を筐体2にネジ止めするようにしてもよい。またネジ止め用の加工部14は、ネジ加工されたピンとしてもよい。この場合、ナットを用いてHIC1を筐体2にネジ止めするようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、マイクロ波通信用及びその他の高周波信号を入出力する信号端子を有するハイブリッドIC並びにそれを用いた装置に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1、4 HIC
2 筐体
3 ネジ
11 RF信号端子
12、16 パッケージ
13、21 貫通穴
14 加工部
15 個別部品