特許第6588263号(P6588263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6588263拡散板、表示装置、投影装置及び照明装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588263
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】拡散板、表示装置、投影装置及び照明装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20191001BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20191001BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20191001BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20191001BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20191001BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20191001BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20191001BHJP
   F21V 3/06 20180101ALI20191001BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   G02B5/02 C
   G02B13/18
   G02F1/13357
   G03B21/00 D
   G03B21/14 A
   F21V3/00 530
   F21V5/00 530
   F21V5/00 320
   F21V3/00 320
   F21V3/06 110
   F21V5/00 600
   F21V5/04 200
   F21V5/04 550
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-141908(P2015-141908)
(22)【出願日】2015年7月16日
(65)【公開番号】特開2017-26662(P2017-26662A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花島 直樹
【審査官】 後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−500621(JP,A)
【文献】 特表2004−505306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00−5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の表面に位置する単レンズ群からなるマイクロレンズアレイ型の拡散板であって、
前記単レンズ群を構成するそれぞれの単レンズが有する曲率半径は、前記単レンズ群全体としてばらつきがあり、かつ、前記それぞれの単レンズの頂点位置は、不規則に配置されており、
前記単レンズ群における前記単レンズのレンズ表面形状は、双曲面であり、かつ、以下の式1及び式2を満足する、拡散板。
【数1】
ここで、上記式1及び式2において、
z:単レンズの高さ方向の頂点を通り、かつ、単レンズのレンズ光軸に対して直交する面である基準面との高さの差
c:単レンズの曲率半径の逆数
x:単レンズのレンズ光軸からの離隔距離
k:コーニック係数
である。
【請求項2】
それぞれの前記単レンズは、互いに隣接するように配置される、請求項1に記載の拡散板。
【請求項3】
互いに隣接する単レンズ間の境界は、曲線を含む、請求項2に記載の拡散板。
【請求項4】
前記単レンズの曲率半径は、前記単レンズ群における単レンズ間ピッチの最大値よりも大きく、かつ、単レンズに外接する外接円を考えた際の前記単レンズ群における当該外接円の直径の最小値は、前記単レンズ間ピッチの最大値よりも大きい、請求項1〜3の何れか1項に記載の拡散板。
【請求項5】
前記単レンズ群を構成するそれぞれの前記単レンズは、
単レンズが規則的に配設しているとした際の各単レンズの頂点の位置を基準として、半径Δrの範囲内で頂点位置が不規則に配置されており、
単レンズに外接する外接円を考えた際の各単レンズにおける当該外接円の直径をaとすると、Δr/a≠0を満足する、請求項1〜4の何れか1項に記載の拡散板。
【請求項6】
前記単レンズ群を構成するそれぞれの前記単レンズは、単レンズが規則的に配設しているとした際の各単レンズの頂点の位置を基準として、半径Δrの範囲内で頂点位置が不規則に配置されており、
前記単レンズの頂点位置の規則的な頂点位置からの最大のズレ量Δrmaxは、0μm超過50μm以下であり、
隣り合う前記単レンズ間の平均レンズ間ピッチは、30μm以上100μm以下であり、
前記曲率半径のばらつきの最大値Rmaxは、±20%以内である、請求項1〜5の何れか1項に記載の拡散板。
【請求項7】
前記透明基板は、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、又は、白板ガラスの何れかである、請求項1〜の何れか1項に記載の拡散板。
【請求項8】
請求項1〜の何れか1項に記載の拡散板を備える、表示装置。
【請求項9】
請求項1〜の何れか1項に記載の拡散板を備える、投影装置。
【請求項10】
請求項1〜の何れか1項に記載の拡散板を備える、照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散板、表示装置、投影装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入射光を様々な方向へと散乱させる拡散板は、例えば、ディスプレイ等の表示装置や、プロジェクタ等の投影装置や、各種の照明装置等といった様々な装置に広く利用されている。かかる拡散板における入射光の拡散機構は、拡散板の表面形状に起因する光の屈折を利用するものと、バルク体の内部に存在する、周囲とは屈折率の異なる物質による散乱を利用するものと、に大別される。表面形状に起因する光の屈折を利用した拡散板のひとつに、数十μm程度の大きさのマイクロレンズをバルク体の表面に複数配置した、いわゆるマイクロレンズアレイ型の拡散板がある。
【0003】
上記のようなマイクロレンズを規則的に複数配置したマイクロレンズアレイ型の拡散板は、拡散板の拡散特性に着目した場合に、平坦な拡散角度分布特性を得やすいという特徴がある一方で、規則的に配置されたマイクロレンズが回折格子のような機能を発現してしまい、高次回折成分が大きくなってしまうという問題があった。
【0004】
このような高次回折成分の増加を抑制するために、バルク体の表面に位置するマイクロレンズの配置を不規則にしたり、各マイクロレンズの直径や表面粗さや曲率半径にばらつきを持たせたりすることが、各種提案されている。
【0005】
例えば下記の特許文献1では、複数のマイクロレンズが、互いに隣接するマイクロレンズの頂点間隔を全て等間隔Lとした基本パターンとは異なるように、不規則に又は確率分布的な規則性をもって配置される旨が開示されている。より詳細には、この特許文献1では、全てのマイクロレンズの頂点位置が基本パターンにおける頂点位置を中心とした0.3L以下の半径を有する円内に位置するように、各マイクロレンズを配置するか、又は、互いに隣接するマイクロレンズの頂点間隔Pが0.4L≦P≦1.6Lとなるように、各マイクロレンズを配置する旨が開示されている。
【0006】
また、例えば下記の特許文献2では、マイクロレンズアレイを構成するマイクロレンズの直径を100μm以上1000μm以下とし、マイクロレンズの表面粗さ(Ra)を0.1μm以上10μm以下とする旨が開示されている。
【0007】
また、例えば下記の特許文献3では、透明基材上に、頂部が球面の一部をなし、底部の最長部の長さLが5μm〜100μm、高さが5μm〜100μmである錐状の凸部、又は、凹部が無数に配列して形成された凹凸部を設け、頂部の球面の曲率半径rの、底部の最長部の長さLに対する比r/Lを、0.01〜0.6とする旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003− 4907号公報
【特許文献2】特開2004−145330号公報
【特許文献3】特開2010− 97034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1〜特許文献3に開示されたような方針に則して、マイクロレンズの配置やマイクロレンズの直径及び表面粗さや曲率半径を不規則にすると、高次回折成分は抑制できるものの、各マイクロレンズからの拡散光の角度にばらつきが生じてしまう。その結果、マイクロレンズアレイ型の拡散板の特徴である、平坦な拡散角度分布特性が損なわれてしまうという問題があった。このように、高次回折成分の抑制と、平坦な拡散角度分布特性の実現とは、トレードオフの関係となっている。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、高次回折成分を抑制しつつ、平坦な拡散角度分布特性を実現することが可能な拡散板、表示装置、投影装置及び照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、透明基板の表面に位置する単レンズ群からなるマイクロレンズアレイ型の拡散板であって、前記単レンズ群を構成するそれぞれの単レンズが有する曲率半径は、前記単レンズ群全体としてばらつきがあり、かつ、前記それぞれの単レンズの頂点位置は、不規則に配置されており、前記単レンズ群における前記単レンズのレンズ表面形状は、双曲面であり、かつ、以下の式1及び式2を満足する、拡散板が提供される。
【0012】
【数1】
【0013】
ここで、上記式1及び式2において、
z:単レンズの高さ方向の頂点を通り、かつ、単レンズのレンズ光軸に対して直交する面である基準面との高さの差
c:単レンズの曲率半径の逆数
x:単レンズのレンズ光軸からの離隔距離
k:コーニック係数
である。
【0014】
それぞれの前記単レンズは、互いに隣接するように配置されることが好ましい。
【0015】
互いに隣接する単レンズ間の境界は、曲線を含んでもよい。
【0016】
前記単レンズの曲率半径は、前記単レンズ群における単レンズ間ピッチの最大値よりも大きく、かつ、単レンズに外接する外接円を考えた際の前記単レンズ群における当該外接円の直径の最小値は、前記単レンズ間ピッチの最大値よりも大きいことが好ましい。
【0017】
前記単レンズ群を構成するそれぞれの前記単レンズは、単レンズが規則的に配設しているとした際の各単レンズの頂点の位置を基準として、半径Δrの範囲内で頂点位置が不規則に配置されており、単レンズに外接する外接円を考えた際の各単レンズにおける当該外接円の直径をaとすると、Δr/a≠0を満足することが好ましい。
また、前記単レンズ群を構成するそれぞれの前記単レンズは、単レンズが規則的に配設しているとした際の各単レンズの頂点の位置を基準として、半径Δrの範囲内で頂点位置が不規則に配置されており、前記単レンズの頂点位置の規則的な頂点位置からの最大のズレ量Δrmaxは、0μm超過50μm以下であり、隣り合う前記単レンズ間の平均レンズ間ピッチは、30μm以上100μm以下であり、前記曲率半径のばらつきの最大値Rmaxは、±20%以内であることが好ましい。
【0018】
前記透明基板は、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、又は、白板ガラスの何れかであってもよい。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記の拡散板を備える表示装置が提供される。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、上記の拡散板を備える投影装置が提供される。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、上記の拡散板を備える照明装置が提供される。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、高次回折成分を抑制しつつ、平坦な拡散角度分布特性を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態に係る拡散板を模式的に示した説明図である。
図2】レンズの表面形状を表わす表面形状関数を説明するための説明図である。
図3】コーニック係数とレンズの表面形状との間の関係の一例を示したグラフ図である。
図4】コーニック係数とレンズの拡散特性との間の関係の一例を示したグラフ図である。
図5】拡散板における単レンズの頂点位置について説明するための説明図である。
図6】単レンズの外径の大きさについて説明するための説明図である。
図7】隣接する単レンズ間の境界の形状について説明するための説明図である。
図8】単レンズの頂点位置のばらつき及び曲率半径のばらつきに伴う拡散板の拡散特性の変化を示したグラフ図である。
図9】コーニック係数の変化に伴う拡散板の拡散特性の変化を示したグラフ図である。
図10A】単レンズの頂点位置、曲率半径及びコーニック係数を変化させた場合の光強度の拡散角度分布の一例を示したグラフ図である。
図10B】単レンズの頂点位置、曲率半径及びコーニック係数を変化させた場合の光強度の拡散角度分布の一例を示したグラフ図である。
図11】単レンズ群における頂点位置の関係を模式的に示した説明図である。
図12】単レンズ群の断面形状プロファイルの一例を示したグラフ図である。
図13】単レンズ群の断面形状プロファイルの一例を示したグラフ図である。
図14A】同実施形態に係る拡散板について説明するための説明図である。
図14B】同実施形態に係る拡散板について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0025】
(拡散板について)
以下では、図1図14Bを参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る拡散板1について詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る拡散板1を模式的に示した説明図であり、本実施形態に係る拡散板1の上面図及び側面図となっている。図2は、レンズの表面形状を表わす表面形状関数を説明するための説明図である。図3は、コーニック係数とレンズの表面形状との間の関係の一例を示したグラフ図であり、図4は、コーニック係数とレンズの拡散特性との間の関係の一例を示したグラフ図である。図5は、拡散板における単レンズの頂点位置について説明するための説明図であり、図6は、単レンズの外径の大きさについて説明するための説明図であり、図7は、隣接する単レンズ間の境界の形状について説明するための説明図である。図8は、単レンズの頂点位置のばらつき及び曲率半径のばらつきに伴う拡散板の拡散特性の変化を示したグラフ図であり、図9は、コーニック係数の変化に伴う拡散板の拡散特性の変化を示したグラフ図である。図10A及び図10Bは、単レンズの頂点位置、曲率半径及びコーニック係数を変化させた場合の光強度の拡散角度分布の一例を示したグラフ図である。図11は、単レンズ群における頂点位置の関係を模式的に示した説明図である。図12及び図13は、単レンズ群の断面形状プロファイルの一例を示したグラフ図である。図14A及び図14Bは、本実施形態に係る拡散板について説明するための説明図である。
【0026】
本実施形態に係る拡散板1は、基板上に複数のマイクロレンズ(以下、「単レンズ」とも称する。)が配置された、マイクロレンズアレイ型の拡散板である。かかる拡散板1は、図1に模式的に示したように、透明基板10と、透明基板10の表面に形成された単レンズ群20と、を有している。
【0027】
<透明基板10について>
透明基板10は、本実施形態に係る拡散板1に入射する光の波長帯域において、透明とみなすことが可能な材質からなる基板である。かかる基板の材質については、特に限定するものではないが、例えば、公知の樹脂を透明基板10として用いることも可能であるし、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、白板ガラス等といった公知の光学ガラスを用いることも可能である。図1では、透明基板10が矩形である場合を例に挙げて図示を行っているが、透明基板10の形状は矩形に限定されるものではなく、例えば拡散板1が実装される表示装置、投影装置、照明装置等の形状に応じて、任意の形状を有していても良い。
【0028】
<単レンズ群20について>
透明基板10の表面には、複数の単レンズ21からなる単レンズ群20が形成されている。本実施形態に係る拡散板1において、単レンズ群20は、図1に模式的に示したように、複数の単レンズ21が互いに隣接するように(換言すれば、単レンズ21間に隙間(平坦部)が存在しないように)形成されることが好ましい。透明基板10上に単レンズ21を隙間なく配置させる(換言すれば、単レンズの充填率が100%となるように配置させる)ことで、入射光のうち拡散板表面で散乱せずにそのまま透過してしまう成分(以下、「0次透過光成分」ともいう。)を抑制することが可能となる。その結果、複数の単レンズ21が互いに隣接するように配置された単レンズ群20では、拡散性能を更に向上させることが可能となる。
【0029】
また、本実施形態に係る単レンズ群20では、図1に模式的に示したように、各単レンズ21は、規則的に配置されているのではなく、不規則に(ランダムに)配置されている。ここで、「不規則」とは、拡散板1における単レンズ群20の任意の領域において、単レンズ21の配置に関する規則性が実質的に存在しないことを意味する。従って、任意の領域での微小領域において単レンズ21の配置にある種の規則性が存在したとしても、任意の領域全体として単レンズ21の配置に規則性が存在しないものは、「不規則」に含まれるものとする。なお、本実施形態に係る単レンズ群20における単レンズ21の不規則な配置方法については、以下で改めて詳述する。
【0030】
複数の単レンズ21が互いに隣接するように設けられ、かつ、単レンズ21が透明基板10上に不規則に形成されることで、それぞれの単レンズ21の外形は、互いに同一の形状とはならず、図1に模式的に示したように様々な形状を有するようになる。
【0031】
図1に示した例では、単レンズ群20を構成する単レンズ21は、凸レンズとなっている。本実施形態に係る単レンズ群20では、各単レンズ21の表面形状に非球面成分が含まれている。
【0032】
[レンズの非球面性に伴う光強度分布の変化について]
本実施形態に係る各単レンズ21の表面形状や、複数の単レンズ21の配置は、以下で詳述するレンズの非球面性、及び、レンズの曲率半径及びレンズ配置の不規則性に関する知見に基づき、設定されている。そこで、以下では、本実施形態に係る単レンズ群20及び単レンズ21について詳細に説明するに先立ち、まず、一般的なレンズの表面形状について説明する。
【0033】
一般的なレンズの表面形状は、以下の式101のようなレンズの表面形状を表わす表面形状関数を用いて表現される。
【0034】
【数2】
【0035】
ここで、上記式101に示した表面形状関数で用いられている座標系を、図2を参照しながら簡単に説明する。
式101に示した表面形状関数では、表面形状関数で表わされる表面形状を有するレンズの光軸方向をZ軸方向としている。また、図2に模式的に示したように、レンズの高さ方向の頂点(レンズの高さが最大となる位置)を原点Oとし、かかる頂点を通り、かつ、レンズの光軸方向(Z軸方向)に対して直交する平面を、基準面としている。この基準面の広がり方向の一つが、X軸方向に対応しており、X軸方向は、レンズの径方向と考えることができる。
【0036】
上記式101におけるxは、図2に示したように、レンズ光軸(Z軸)からの離隔距離に対応しており、上記式101におけるzは、図2に示したように、位置xにおける基準面からの高さの差に対応している。この基準面からの高さの差は、サグ量とも呼ばれる。また、上記式101におけるcは、レンズの頂点における曲率である。
【0037】
また、上記式101におけるパラメータkは、コーニック係数又は円錐係数とも呼ばれ、レンズの表面形状を規定するパラメータである。k=0である場合、上記式101で表わされる表面形状関数をZ軸の周りに回転させることで得られる回転体の表面形状(すなわち、レンズの表面形状に対応する。)は、非球面成分を含まない球面となる。また、−1<k<0である場合には、レンズの表面形状は、楕円面となり、k=−1である場合には、レンズの表面形状は、放物面となり、k<−1の場合には、レンズの表面形状は、双曲面となる。すなわち、コーニック係数kの値が負の値となる場合に、対応するレンズの表面形状は、非球面成分を含むものとなる。
【0038】
また、上記式101に含まれるレンズの曲率cは、レンズの曲率半径rの逆数であるが、レンズの曲率半径rは、以下の式103で与えられる。ここで、下記式103において、fは、レンズの焦点距離であり、aは、レンズの外径であり、θは、拡散角度(半角)であり、nは、レンズに用いる材料の屈折率である。
【0039】
【数3】
【0040】
いま、拡散角度θ=2.5度であり、レンズの外径a=100μmであり、レンズに用いる材料の屈折率n=1.5であるとすると、上記式103から求められる曲率半径r=570μmとなる。この場合に、上記式101で与えられるサグ量zと、離隔距離xとの関係を求めると、図3に示したようになる。図3では、コーニック係数k=0である場合(球面である場合)、及び、k=−60である場合(双曲面である場合)の双方の演算結果を、あわせて示している。
【0041】
図3から明らかなように、コーニック係数kの絶対値が大きい場合には、曲面がやや平坦になる挙動が見て取れる。また、レンズの外径a=100μmとした場合には、k=0の場合のサグ量zと、k=−60の場合のサグ量zと、の差は、X=±60μmの付近において最大となり、約300nm程度となっている。
【0042】
次に、コーニック係数によるレンズ形状の違いによって、レンズの拡散角度特性がどのように変化するかを確かめるために、公知の光線追跡シミュレータであるZemaxを用いて、上記2つの条件についてシミュレーションを行った。かかるシミュレーションにより、1つのレンズに一様な強度分布の光が入射した場合における、出射光の強度の角度分布を検証した。かかるシミュレーションによって得られた結果を、図4に示した。なお、図4では、簡単のために、半径方向(X方向)の1次元の分布を示している。
【0043】
図4において、横軸は、レンズの光軸方向(Z軸方向)を0度とした場合の、出射光の角度(すなわち、拡散角度)であり、縦軸は、出射光の強度である。図4から明らかなように、コーニック係数k=0であり、レンズの表面形状が球面である場合には、拡散角度が−2度から2度の範囲において、出射光の強度はほぼ一定となっており、光軸を中心とした所定の拡散角度の範囲内で出射光の強度分布が略平坦となる、いわゆるトップハット型の光強度分布が実現されていることがわかる。また、コーニック係数k=−60である場合には、拡散角度±2度の近傍にそれぞれ光強度のピークが存在し、拡散角度が0度の付近は光強度が極小となっており、いわゆる双峰状の分布となっていることがわかる。従って、コーニック係数k=−60の場合には、図2に示したような基準面内での光強度の分布は、円環状となる。
【0044】
この結果から明らかなように、球面からなる一般的なレンズの表面形状に対して、コーニック係数k<0である非球面成分を付加すると、レンズの周縁部の光強度が大きくなる円環状の光強度分布が実現される。
【0045】
[レンズの曲率半径及びレンズ配置の不規則性に伴う光強度分布の変化について]
続いて、レンズの曲率半径及びレンズ配置の不規則性が光強度分布に与える影響を考察する。以下では、コーニック係数k=0である球面レンズが多数配置されたマイクロレンズアレイについて着目する。
【0046】
マイクロレンズアレイに入射した光の拡散の様子は、多数の単レンズからの拡散光の重ね合わせとなるため、全ての単レンズの形状が同一であれば、図4に示したようなレンズ形状と拡散強度分布との関係が、そのまま成立する。一方で、先だって言及したような高次回折成分の抑制のためには、レンズの配置や曲率半径をばらつかせて、全ての単レンズの形状や配列等が同一とならないようにすることが好ましい。
【0047】
以下では、図5及び図6を参照しながら、レンズ配置に関する不規則性の実現方法について、具体的に説明する。
【0048】
まず、不規則性を有するレンズ配置の基準となる、規則性を有するレンズ配置に着目する。このような規則性を有するレンズ配置としては、単レンズの頂点位置が正方形状に配置される四角配置や、正六角形の頂点及び正六角形の中心に対応する位置に単レンズの頂点位置が配置される六角配置等がある。図5では、単レンズの頂点位置が六角配置される場合を、基準となるレンズ配置として黒丸で示している。その上で、規則的な単レンズの頂点位置を初期値として、この初期値の位置から半径Δrの範囲内で、単レンズの頂点位置をランダムに変位させる。この配置方法によれば、基準となる位置からの単レンズの頂点位置のズレ方向と、基準となる位置からの単レンズの頂点位置のズレ量と、に対して、2つの不規則性が導入されることとなる。この際、許容されるズレ方向は、基準となる位置を中心とした全ての方向とし、ズレ量に関しては、最大のズレ量|Δrmax|を規定した上で、0<|Δr|≦|Δrmax|の範囲で任意に選択されるようにする。このような不規則性を、マイクロレンズアレイを構成する全ての単レンズに対して適用する。このような不規則性をマイクロレンズアレイに対して導入することで、各単レンズの間隔(すなわち、互いに隣り合う頂点位置間の距離であり、図5におけるpで表わされる距離)が一定の範囲内に収まるようになる。その結果、各単レンズからの集光拡散光束を一定の範囲に収めることが可能となる。
【0049】
以上のようにして不規則性を導入したマイクロレンズアレイに対し、一様な強度分布の光を入射させた場合について、市販の光線追跡シミュレーション用アプリケーションを利用して、解析を行った。
【0050】
なお、かかるシミュレーションでは、屈折率n=1.5であり、コーニック係数k=0であり、レンズの外径a=100μmであり、かつ、曲率半径r=570μmである単レンズに着目し、この単レンズが隙間なく配置されたマイクロレンズアレイをモデルとした。この際、上記|Δrmax|を、20μm、40μm、50μmの3種類として各単レンズの配置に不規則性を持たせ、それぞれの場合をシミュレートした。また、かかるシミュレーションでは、単レンズの曲率半径r自体にもばらつきを持たせ、曲率半径のばらつきの最大値Rmax=±10%となるようにした。すなわち、本シミュレーションでは、マイクロレンズアレイを構成する単レンズは、(570μm−10%=513μm)から(570μm+10%=627μm)までの何れかの値の曲率半径をランダムに有しているものとした。なお、単レンズの配置に不規則性を持たせた場合、単レンズの外形は正多角形とはならなくなるが、この場合のレンズの外径aは、図6に示したように、単レンズに外接する外接円の直径として取り扱うことができる。
【0051】
単レンズの曲率半径r自体にもばらつきを持たせることで、隣接する単レンズにおいて曲率半径が互いに異なる場合が多くなり、図7に模式的に示したように、単レンズAでは曲率半径がrであるのに対し、単レンズBでは曲率半径がr(≠r)となるという状況も多く生じるようになる。隣接する単レンズの曲率半径が異なる場合、隣接する単レンズ間の境界は直線のみで構成されるのではなく、その少なくとも一部に曲線を含むようになる。単レンズ間の境界の少なくとも一部に曲線が含まれることで、単レンズ間の境界での配置の規則性が更に崩れることとなり、回折成分を更に低減することが可能となる。
【0052】
以上のようなシミュレーションにより得られた結果を、図8にまとめて示した。図8において、横軸は、図2に示したX座標であり、縦軸は、マイクロレンズアレイを透過した光の強度(単位:a.u.)である。かかるシミュレーションでは、曲率半径のばらつきの最大値Rmaxは3つの場合で共通としているため、図8に示した3つのシミュレーション結果における拡散特性の違いは、単レンズの配置のばらつき度合い(すなわち、Δr)に起因すると考えることができる。図8から明らかなように、レンズの配置の不規則性(すなわち、|Δrmax|の大きさ)が、20μm→40μm→50μmと増すにつれて、拡散特性は、周囲部にピークが2つ存在する双峰状から、X=0度付近に1つのピークが存在する単峰状へと推移していることがわかる。かかる結果は、個々の単レンズからの拡散特性がばらつくことによって、結果として重ね合わされたマイクロレンズアレイ全体の拡散特性が、単峰状になっていくことを示している。
【0053】
[単レンズ群20におけるレンズ形状及びレンズ配置について]
以上、図3図8に示したような考察結果から、以下のような知見を得ることができる。すなわち、マイクロレンズアレイを構成する単レンズの配置や、単レンズの曲率半径に対して、マイクロレンズアレイ全体としてばらつきを与えることで、高次回折成分を抑制可能であるものの、拡散特性においては、拡散中心(すなわち、拡散角度0度付近)の強度は増大してしまい、拡散特性は、いわゆるトップハット型の形状から、単峰状へと変化してしまう。一方、マイクロレンズアレイを構成する単レンズの表面形状に対して、非球面成分を付加することで、拡散特性の周縁部(拡散角度の絶対値が大きな値となる部分)の強度が増大し、双峰状の拡散特性を示すようになる。
【0054】
本発明者は、上記の知見に基づき、例えば拡散角度30度以下という比較的小さな拡散角では無視することのできない、高次回折成分による拡散特性の劣化を、マイクロレンズアレイを構成する単レンズの配置及び曲率半径にばらつきを与えて抑制するとともに、かかるばらつきによって生じる拡散特性の単峰化を、単レンズの表面形状に非球面成分を付加することによる拡散特性の双峰化によって補償することに想到した。これにより、従来では困難であった、高次回折成分の抑制と平坦な拡散角度分布特性の実現とを両立させることが可能となる。
【0055】
本発明者は、上記の知見を検討するために、図8の最下段に示したシミュレーション条件を共通の条件とし、かつ、マイクロレンズアレイを構成する各単レンズに対して、非球面成分を付加しながらシミュレーションを行い、拡散特性について検証した。この際、コーニック係数kの値は、0(図8の最下段と同じ条件)、−20、−40、−60の4通りとし、各単レンズ間で同一とした。すなわち、コーニック係数k=−20の場合のシミュレーションであれば、全ての単レンズは、コーニック係数k=−20を有するものとした。
【0056】
得られた結果を、図9にまとめて示した。図9において、横軸は、図2に示したX座標であり、縦軸は、マイクロレンズアレイを透過した光の強度(単位:a.u.)である。図9から明らかなように、コーニック係数kの絶対値が大きくなるにつれて、レンズの周縁部の強度が大きくなっていき、拡散特性を示す強度分布の外形は、単峰状(k=0)からほぼ平坦状(k=−20〜−40)となり、更には双峰状(k=−60)へと変化していくことがわかる。このような挙動は、図4に示した、不規則性を導入しない場合における単レンズのシミュレーション結果と同様のものとなっている。
【0057】
図9に示したような結果から、コーニック係数kの値を適切な範囲に設定することで、高次回折成分の抑制と平坦な拡散角度分布特性の実現との両立が可能になると考えられる。そこで、本発明者は、コーニック係数kの範囲を、シミュレーションによって確認することとした。
【0058】
かかるシミュレーションでは、拡散板として機能するマイクロレンズアレイである単レンズ群20が、以下のような複数の単レンズ21によって構成されるものとした。すなわち、規則的に頂点位置を配置した場合の頂点間隔(図5における黒丸間の距離)が100μmとなる六角配置を考え、かかる六角配置の頂点位置から所定の範囲内(Δrmax=50μm)に、単レンズ21の頂点位置が設定されるモデルとした。単レンズ21のレンズ材料は光学ガラスを想定し、屈折率n=1.5とした。平均単レンズ間ピッチ(図5における単レンズ間ピッチpの単レンズ群20全体における平均値)を100μmとし、拡散角度は、±2.5度とした。このように単レンズ21のパラメータを設定した場合、上記式103より、曲率半径rは、570μmとなる。そこで、本シミュレーションでは、曲率半径r=570μmが平均値となるような、曲率半径のばらつきRmaxが±10%の場合と±20%の場合の2つの場合を想定した。また、単レンズ群20に入射する光のサイズは、φ600μmとした。このような設定のもとで、市販の光線追跡シミュレーション用アプリケーションを利用して、解析を行った。
【0059】
得られた結果を、図10A及び図10Bに示した。図10Aは、曲率半径のばらつきの最大値Rmaxが±10%である場合の結果であり、図10Bは、曲率半径のばらつきの最大値Rmaxが±20%である場合の結果である。また、図10A及び図10Bにおいて、横軸は、拡散角度(半角)であり、縦軸は、拡散光の強度である。また、拡散特性を示す光強度分布は、レンズの径方向にほぼ対称となっているため、図10A及び図10Bでは、簡単のために1次元方向(図2におけるX軸方向)のみの分布を示している。
【0060】
図10A及び図10Bの双方において、コーニック係数k=0の場合は、拡散特性を示す光強度分布が単峰状の分布となっており、コーニック係数k=−60の場合は、光強度分布が双峰状(3次元分布では、円環状)の分布となっていることがわかる。また、コーニック係数kが、−40≦k≦−20の範囲にある場合に、ほぼ平坦な光強度分布が得られることがわかる。
【0061】
この結果から、上記のようなモデルにおける単レンズ21の形状では、コーニック係数kの値を、−40≦k≦−20の範囲内とすることで、高次回折成分の抑制と平坦な拡散角度分布特性の実現とを両立させることが可能となる。
【0062】
なお、上記のようなコーニック係数kの範囲は、単レンズ21の曲率半径や、平坦角度範囲(図10A及び図10Bの場合では、±2.5度の範囲)によっても変化する。しかしながら、互いに相似の関係にあるレンズの表面形状は同じ拡散特性を示すという点を鑑みると、相似関係が成立するためには、上記式101において、レンズの径方向の大きさX、レンズの高さZ、曲率半径r(=1/c)をそれぞれA倍とすることになり、この場合のコーニック係数kの値は、不変量となる。
【0063】
従って、本実施形態に係る単レンズ21では、コーニック係数kの値を、以下の式105で表わされる範囲として、単レンズ群20を構成する単レンズ21に対して非球面成分を導入する。なお、式105で表わされるコーニック係数の値からも明らかなように、本実施形態に係る単レンズ21の表面形状は、双曲面となっている。なお、本実施形態に係る単レンズ21におけるコーニック係数の値は、好ましくは、−35≦k≦−25であり、より好ましくは、−33≦k≦−27である。
【0064】
【数4】
【0065】
ここで、上記のようなコーニック係数kと単レンズ21の表面形状との関係をより具体的に示すために、上記のシミュレーションで用いたモデルにおける具体的な断面プロファイルの一部を示すこととする。上記モデルにおける単レンズ群20の一部の上面図を模式的に示すと、図11のように表わすことができる。なお、図11では、図面作成における便宜上、隣接単レンズ間の境界を直線で表わしているが、実際のモデル形状では、境界の一部に曲線が含まれていた。
【0066】
図11に示したモデルにおける単レンズA〜単レンズDの各単レンズ21は、その配置に不規則性を含んでいるため、各単レンズにおける頂点位置(高さZが最大となる位置)は、一直線上には並んでいない。以下では、図11に示した各単レンズA〜Dの頂点位置を結んだ面を基準面とし、単レンズBの頂点位置と単レンズCの頂点位置とを結ぶ直線を、X軸とした。
【0067】
コーニック係数kが0である場合と、−60である場合の双方について、得られた断面プロファイルを、図12に示した。単レンズA及び単レンズDでは、X軸の位置が各単レンズにおける頂点位置からずれているために、頂点のZ値は、ゼロとなっていない。図12から明らかなように、コーニック係数kの影響は、互いに隣接する単レンズの境界付近において、より大きく現れることがわかる。
【0068】
図13は、図12と同様にして基準面及びX軸を設定した場合において、コーニック係数kが−20の場合と、−40である場合の双方について、球面形状でのサグ量zとの差を算出したものである。コーニック係数kが−40≦k≦−20の範囲内である場合、図13から明らかなように、コーニック係数k=0である球面形状からのサグ量zの差は、最大で100nmにも達することがわかる。なお、図13に示したような球面形状からのサグ量zの差の最大値は、単レンズの曲率半径や単レンズ間ピッチによっても変化する。また、実際の単レンズ境界付近は、単レンズ製作における制約からも曲面となることが考えられ、かかる作製上の制約からサグ量zの最大値が「なまる」ことが考えられる。このような「なまり」を考慮すると、コーニック係数kの−40≦k≦−20という範囲に相当するサグ量zの差は、概ね30nm〜100nm程度と考えられる。
【0069】
なお、本実施形態に係る単レンズ群20では、図5に示したような、各単レンズ21の頂点位置の規則的な頂点位置からの最大のズレ量Δrmaxを、単レンズ間ピッチの半分程度の大きさとすることが好ましい。具体的には、最大のズレ量Δrmaxを、0μm超過〜50μm程度とすることが好ましく、30μm〜50μm程度とすることがより好ましく、40μm〜50μm程度とすることが更に好ましい。各単レンズ21の頂点位置の最大のズレ量Δrmaxを上記のような範囲とすることで、かかる単レンズ群20から構成される拡散板の拡散特性を、より確実にほぼ平坦なものとすることが可能となる。
【0070】
また、本実施形態に係る単レンズ群20では、図6に示したような各単レンズ21の外接円の直径をaとした場合に、各単レンズ21の頂点位置の規則的な頂点位置からのズレ量Δrを、Δr/a≠0を満たすように設定することが好ましい。このような条件を満たすように各単レンズ21を配置するということは、全ての単レンズ21の頂点位置を、規則的な頂点位置から変位させることを意味している。このようにすることで、単レンズ群20における単レンズ21の配置に関して、より確実に不規則性を導入することが可能となる。
【0071】
更に、本実施形態に係る単レンズ群20では、単レンズ21間の平均レンズ間ピッチは、単レンズ21の高さに対応するサグ量が1μm〜5μm程度となるように設定することが好ましい。具体的には、単レンズ21間の平均レンズ間ピッチは、30μm〜100μm程度とすることが好ましく、70μm〜100μm程度とすることが更に好ましい。単レンズ21間の平均レンズ間ピッチを上記のような範囲とすることで、サグ量が小さくなりすぎることに起因する作製の難しさを回避でき、また、入射光のサイズが小さい場合であっても、入射位置による拡散特性のばらつきを低減することが可能となる。
【0072】
また、本実施形態に係る単レンズ21では、曲率半径のばらつきの最大値Rmaxを、±20%とすることが好ましく、±10%とすることが更に好ましい。単レンズ21の曲率半径のばらつきRmaxを上記のような範囲とすることで、かかる単レンズ21から構成される拡散板の拡散特性を、より確実にほぼ平坦なものとすることが可能となる。
【0073】
なお、本実施形態に係る単レンズ群20では、先だって言及したように、複数の単レンズ21が互いに隣接するように(換言すれば、単レンズ21間に隙間が存在しないように)形成されることが好ましい。そこで、本実施形態に係る単レンズ群20では、単レンズ21の曲率半径rを、単レンズ群20における単レンズ間ピッチの最大値よりも大きく、かつ、単レンズ21に外接する外接円を考えた際の単レンズ群20における当該外接円の直径aの最小値を、単レンズ間ピッチの最大値よりも大きくすることが好ましい。曲率半径r及び外接円の直径aを、単レンズ間ピッチの最大値に対して上記のような関係とすることで、比較的小さな拡散角度の拡散板1を実現する場合であっても、より確実に隙間なく単レンズ21を配置させることが可能となる。これにより、本実施形態に係る単レンズ群20において、0次透過光を抑制することが可能となる。
【0074】
本実施形態に係る拡散板1では、以上説明したような単レンズ群20を透明基板10上に形成することで、例えば拡散角度が全角で30度以下という比較的小さな拡散角であっても、高次回折成分を抑制しつつ、平坦な拡散角度分布特性を実現することができる。なお、本実施形態に係る拡散板1における拡散角度は、特に限定されるものではないが、例えば、全角で20度以下であっても良いし、10度以下であってもよい。上記説明から明らかなように、拡散角度(全角)が5度程度という拡散角度が極めて小さい場合であっても、高次回折成分の抑制と平坦な拡散角度分布特性の実現とが両立されている以上、より大きな拡散角度においても、上記と同様の設計指針に基づいて単レンズ群20を形成することで、高次回折成分の抑制と平坦な拡散角度分布特性の実現とを両立させることが可能である。
【0075】
以上、図2図13を参照しながら、本実施形態に係る単レンズ群20について、詳細に説明した。
なお、上記説明では、図14Aに示したように、単レンズ21の形状が上側に凸となる場合(すなわち、凸レンズ型のマイクロレンズアレイである場合)を例に挙げた。しかしながら、図14Bに示したように、単レンズ21の形状が下側に凸となる場合(すなわち、凹レンズ型のマイクロレンズアレイである場合)であっても、焦点の位置が透明基板10の内部に位置するという違いだけで、上側に凸となる場合と同様の機能を得ることが可能となる。従って、凹レンズ型のマイクロレンズアレイにおいても、上記のような平坦な拡散特性と非球面形状に関する議論は、同様に取り扱うことができる。
【0076】
以上、図1図14Bを参照しながら、本実施形態に係る拡散板1について、詳細に説明した。
【0077】
なお、以上説明したような本実施形態に係る拡散板1は、その機能を実現するために光を拡散させる必要がある装置に対して、適宜実装することが可能である。機能を実現するために光を拡散させる必要がある装置としては、例えば、ディスプレイ等の表示装置や、プロジェクタ等の投影装置や、各種の照明装置等を挙げることができる。また、機能を実現するために光を拡散させる必要がある装置は、上記の例に限定されるものではなく、光の拡散を利用する装置であればその他の公知の装置に対しても、本実施形態に係る拡散板1を適用することが可能である。
【0078】
(拡散板の製造方法について)
続いて、以上説明したような本実施形態に係る拡散板1の製造方法の一例を、簡単に説明する。本実施形態に係る拡散板1は、例えば以下のような方法を用いることで、製造することが可能である。
【0079】
まず、所定のガラス基板にフォトレジストを塗布し、露光〜現像という公知の工程を経て、レジストによって、単レンズ群20における単レンズ21の表面形状のレプリカを作製する。この際、用いるフォトレジストがネガ型の場合には、単レンズ21の高さZに比例した露光量、ポジ型である場合には、高さZに反比例した露光量となるように、露光工程を制御する。
【0080】
なお、本実施形態に係る単レンズ21のような曲面を形成するパターニングでは、グレイスケールマスク、複数のフォトマスクの重ね合わせによる多重露光、レーザ描画によるスキャン露光など、各種の方法を適用することが可能である。
【0081】
続いて、作製したレプリカをエッチングマスクとして用い、例えば反応性イオンエッチングを行う。この際、用いる透明基板10とレジストとのエッチング選択比を1:1とすることで、エッチング後の透明基板10の表面形状を、レジストの表面形状とほぼ同一のものとすることができる。
【0082】
以上のような工程を経ることで、本実施形態に係る拡散板1を製造することが可能である。以上、本実施形態に係る拡散板1の製造方法について、簡単に説明した。
【実施例】
【0083】
続いて、実施例及び比較例を示しながら、本発明に係る拡散板について、具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、あくまでも本発明に係る拡散板の一例にすぎず、本発明に係る拡散板が下記の例に限定されるものではない。
【0084】
(試験例)
透明基板10として、ホウケイ酸ガラス基板を用い、かかるホウケイ酸ガラス基板上に、上記の製造方法に則して凸形状の単レンズ群20を形成することで、マイクロレンズアレイ型の拡散板1を作製した。作製した拡散板1を利用して、コーニック係数k、曲率半径のばらつきRmax、規則的な頂点位置からの単レンズの頂点位置のばらつき(以下、単に「頂点位置のばらつき」と称する。)Δrmaxによる拡散特性への影響を確認した。
【0085】
なお、以下の各実施例及び比較例における共通の条件として、曲率半径r=570μm、ガラス基板の屈折率n=1.5、単レンズ間ピッチp=100μmとした。
【0086】
<実施例1>
コーニック係数k=−20とし、曲率半径のばらつきRmax=±10%とし、頂点位置のばらつきΔrmax=50μmとして、単レンズ群20を形成した。
【0087】
<実施例2>
コーニック係数k=−40とし、曲率半径のばらつきRmax=±10%とし、頂点位置のばらつきΔrmax=50μmとして、単レンズ群20を形成した。
【0088】
<実施例3>
コーニック係数k=−20とし、曲率半径のばらつきRmax=±20%とし、頂点位置のばらつきΔrmax=50μmとして、単レンズ群20を形成した。
【0089】
<実施例4>
コーニック係数k=−40とし、曲率半径のばらつきRmax=±20%とし、頂点位置のばらつきΔrmax=50μmとして、単レンズ群20を形成した。
【0090】
<比較例1>
コーニック係数k=0とし、曲率半径のばらつきRmax=±10%とし、頂点位置のばらつきΔrmax=20μmとして、単レンズ群を形成した。
【0091】
<比較例2>
コーニック係数k=0とし、曲率半径のばらつきRmax=±10%とし、頂点位置のばらつきΔrmax=40μmとして、単レンズ群を形成した。
【0092】
<比較例3>
コーニック係数k=0とし、曲率半径のばらつきRmax=±10%とし、頂点位置のばらつきΔrmax=50μmとして、単レンズ群を形成した。
【0093】
<比較例4>
コーニック係数k=0とし、曲率半径のばらつきRmax=±20%とし、頂点位置のばらつきΔrmax=50μmとして、単レンズ群を形成した。
【0094】
<比較例5>
コーニック係数k=−60とし、曲率半径のばらつきRmax=±10%とし、頂点位置のばらつきΔrmax=50μmとして、単レンズ群を形成した。
【0095】
<比較例6>
コーニック係数k=−60とし、曲率半径のばらつきRmax=±20%とし、頂点位置のばらつきΔrmax=50μmとして、単レンズ群を形成した。
【0096】
(評価方法)
上記のようにして作製した各拡散板に対して、略ガウス形状の青色レーザ光を入射させて、光の強度分布を変角光度計で測定した。横軸に拡散角度をとり、縦軸に透過した光の強度(すなわち、拡散強度)をとった、拡散特性を示すグラフを作製し、得られた拡散特性を示すグラフの拡散強度形状を評価した。
【0097】
なお、拡散特性を示すグラフは、所定の拡散角度範囲での形状に応じて、「平坦」、「単峰」、「双峰(円環)」の3種類に分類し、得られた結果を、以下の表1にまとめて示した。
【0098】
なお、上記3区分の評価基準は、以下の通りである。
平坦:拡散特性を示すグラフでのリップルが強度最大値の20%以下であるもの
単峰:拡散特性を示すグラフにリップルが存在しないもの
双峰(円環):拡散特性を示すグラフでのリップルが強度最大値の20%以上であるもの
【0099】
【表1】
【0100】
(評価結果の詳細)
<実施例1>
実施例1の拡散板の拡散強度形状は、±2.5度の拡散角度において、図10Aに示したような平坦な形状となり、高次回折成分を抑制しつつ、平坦な拡散角度分布特性を実現することができた。
【0101】
<実施例2>
実施例1に係る拡散板の非球面成分をk=−40と大きくした実施例2では、拡散強度形状は、±2.5度の拡散角度において図10Aに示したような平坦な形状となり、高次回折成分を抑制しつつ、平坦な拡散角度分布特性を実現することができた。
【0102】
<実施例3>
実施例1に係る拡散板の曲率半径のばらつきを±20%と大きくした実施例3では、拡散強度形状は、±2.5度の拡散角度において図10Bに示したような平坦な形状となり、高次回折成分を抑制しつつ、平坦な拡散角度分布特性を実現することができた。
【0103】
<実施例4>
実施例2に係る拡散板の曲率半径のばらつきを±20%と大きくした実施例4では、拡散強度形状は、±2.5度の拡散角度において図10Bに示したような平坦な形状となり、高次回折成分を抑制しつつ、平坦な拡散角度分布特性を実現することができた。
【0104】
<比較例1>
球面レンズを採用した単レンズ群において、曲率半径にばらつきを与え、頂点位置のばらつきを実施例1よりも小さくした比較例1では、拡散強度形状は、図8最上段に示したような双峰(3次元では、円環)の形状となり、平坦な拡散角度分布特性を実現することができなかった。
【0105】
<比較例2>
比較例1における頂点位置のばらつきを40μmに大きくした比較例2では、拡散強度形状は、図8中段に示したような双峰(3次元では、円環)の形状となり、平坦な拡散角度分布特性を実現することができなかった。
【0106】
<比較例3>
比較例1における頂点位置のばらつきを50μmに大きくした比較例3では、拡散強度形状は、図8最下段に示したような単峰形状となり、平坦な拡散角度分布特性を実現することができなかった。
【0107】
<比較例4>
比較例3における曲率半径のばらつきを±20%に大きくした比較例4では、拡散強度形状は、図10Bに示したような単峰形状となり、平坦な拡散角度分布特性を実現することができなかった。
【0108】
<比較例5>
実施例1に係る拡散板の非球面成分をk=−60と大きくした比較例5では、拡散強度形状は、拡散強度形状は、図10Aに示したような双峰(3次元では、円環)の形状となり、平坦な拡散角度分布特性を実現することができなかった。
【0109】
<比較例6>
比較例5における曲率半径のばらつきを±20%と大きくした比較例6では、拡散強度形状は、拡散強度形状は、図10Bに示したような双峰(3次元では、円環)の形状となり、平坦な拡散角度分布特性を実現することができなかった。
【0110】
以上の結果から明らかなように、本発明に係る単レンズ群20の形成された拡散板1を用いることで、高次回折成分を抑制しつつ平坦な拡散角度分布特性を実現可能であることが明らかとなった。
【0111】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0112】
1 拡散板
10 透明基板
20 単レンズ群
21 単レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14A
図14B