(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記容器を製造する際のヒートシール温度には製造者により、あるいは製造機器の特性により機械の部位や操作時間によるばらつきがあることが知られている。したがって、安定したイージーピール性を発現するためには、ヒートシール温度依存性の小さいイージーピール性を有する樹脂組成物の開発が不可欠である。かかる事情に鑑み、本発明は、ヒートシール温度依存性の小さいイージーピール性を有するシーラントを与える樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは鋭意検討の結果、特定のポリプロピレン組成物と特定の低密度ポリエチレンを含む樹脂組成物により前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、前記課題は以下の本発明により解決される。
[1](1)以下の成分からなるポリプロピレン組成物を50〜95重量%
(1a)0〜5重量%のエチレンを含むプロピレン(共)重合体20〜85重量%、および
(1b)プロピレン、ブテン−1、およびこれらの組合せから選択されるα−オレフィン含量が15〜35重量%であるエチレン−α−オレフィン共重合体15〜80重量%、ならびに
(2)低密度ポリエチレンを5〜50重量%、
(3)0〜5重量%のエチレンを含むプロピレン(共)重合体を、前記成分(1)と(2)の合計100重量部に対して0〜150重量部、
含む樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物中の成分(1b)の含有量が15〜29重量%であり、
成分(1)の25℃におけるキシレン可溶分の極限粘度(XSIV)が0.8〜2.0dl/g、
成分(2)の190℃、荷重21.18Nにおけるメルトフローレートが1〜20g/10分、
前記樹脂組成物の230℃、荷重21.18Nにおけるメルトフローレートが1〜10g/10分、である、樹脂組成物。
[2]前記成分(1b)におけるα−オレフィンがブテン−1である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記樹脂組成物100重量部に対して0重量部を超えかつ0.5重量部以下のスリップ剤を含む、[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記樹脂組成物100重量部に対して0重量部を超えかつ1重量部以下の防曇剤を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物を含むフィルム。
[6]基材、および
当該基材の上に設けられた[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物を含むヒートシール層を含む、積層体。
[7]第1基材、
当該第1基材の上に設けられた[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物を含むヒートシール層、および
当該シートの上に設けられた第2基材を含み、
前記ヒートシール層と接している前記第1基材の表面または第2基材の表面が、ポリプロピレンを含む、積層体。
[8]前記[7]に記載の積層体の製造方法であって、
前記成分(1)および成分(2)と、前記第1基材とを、共押出成形あるいは押出ラミネート成形して、当該基材の上に積層された[1]に記載の樹脂組成物を含むヒートシール層を備える第1積層体を調製する工程、ならびに
当該第1積層体のヒートシール層と、前記第2基材とを、ヒートシールによって接着する工程を備え、
前記ヒートシール層と接着している第2基材の表面がポリプロピレンを含む、
製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によりヒートシール温度依存性の小さいイージーピール性を有するシーラントを与える樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明において「〜」はその両端の値を含む。すなわち、「X〜Y」はXおよびYの双方を含む。また、「XまたはY」はXおよびYのいずれか一方、あるいは両方を含む。
【0009】
1.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は50〜95重量%の特定のポリプロピレン組成物、および5〜50重量%の特定の低密度ポリエチレンを含む。
(1)ポリプロピレン組成物
ポリプロピレン組成物は、(1a)0〜5重量%のエチレンを含むプロピレン(共)重合体20〜85重量%、および(1b)プロピレン、ブテン−1、およびこれらの組合せから選択されるα−オレフィン含量が15〜35重量%であるエチレン−α−オレフィン−共重合体15〜80重量%からなる。
【0010】
(1a)プロピレン(共)重合体
成分1aはプロピレン単独重合体、あるいは0重量%を超え5重量%以下のエチレンとプロピレンの共重合体である。1.0重量%のエチレンを含むプロピレンの共重合体とは、エチレン由来のユニットとプロピレン由来のユニットとの重量比が1.0:99.0である共重合体である。他の共重合体についても同様である。エチレン含有量の上限値は5重量%であるが、上限値を超えると、重合体の製造が困難となる。
【0011】
(1b)エチレン−α−オレフィン共重合体
エチレン−α−オレフィン共重合体は、プロピレン、ブテン−1、およびこれらの組合せから選択されるα−オレフィンとエチレンとからなる共重合体である。α−オレフィンの含有量は15〜35重量%である。α−オレフィン含有量が上限値を超えるとヒートシール強度が過大となりイージーピール性が低下し、下限値未満であるとヒートシール強度が過小となり接着性が低下する。優れたシール性とイージーピール性のバランスを与える観点からα−オレフィンとしてはブテン−1が好ましい。すなわち、エチレン−α−オレフィン共重合体はエチレン−ブテン−1共重合体であることが好ましい。
【0012】
(2)低密度ポリエチレン
低密度ポリエチレンとは一般に0.910以上かつ0.930g/cm
3未満の密度を有するポリエチレンである。本発明においては市販品、例えば、高圧法低密度ポリエチレンを使用できる。
【0013】
(3)0〜5重量%のエチレンを含むプロピレン(共)重合体
本発明の樹脂組成物における(1b)エチレン−α−オレフィン共重合体の含有量と組成物のメルトフローレートを調整する目的で、必要に応じて0〜5重量%のエチレンを含むプロピレン(共)重合体(成分(3))をさらに添加できる。当該プロピレン(共)重合体の組成は、成分(1a)と同様であってよい。また、当該プロピレン(共)重合体のMFRは、樹脂組成物としての前記MFRを満たすように適宜選択してよい。
【0014】
(4)組成比
本発明の樹脂組成物において、ポリプロピレン組成物(成分(1))と低密度ポリエチレン(成分(2))の組成比は50〜95重量%:5〜50重量%である。成分(1)の量が上限を超えるとヒートシール強度が過大となり、下限未満であるとヒートシール強度が過小となる。この観点から、前記配合比は60〜90重量%:40〜10重量%が好ましい。
本発明の樹脂組成物中の成分(1b)の含有量は15〜29重量%である。(1b)の量が上限を超えるとヒートシール強度が過小となり、下限未満であるとヒートシール強度が過大となる。樹脂組成物中の成分(1b)の前記範囲を満たすように、成分(1)と(2)の配合量は前記範囲内で調整される。
【0015】
しかしながら、成分(1b)の含有量が多い成分(1)を用いる場合、樹脂組成物中の成分(1b)の前記含有量を達成することが困難になることがある。このような場合、成分(3)を添加して樹脂組成物中の成分(1b)の量を調整できる。この観点から、成分(3)の配合量は、(1)と(2)の合計量100重量部に対して150重量部以下である。上限値は適宜調整してよいが120重量部が好ましい。成分(3)を含む場合の下限値は適宜調整してよいが10重量部が好ましい。
【0016】
(5)特性
1)樹脂組成物のメルトフローレート
本発明の樹脂組成物の230℃、荷重21.18Nにおけるメルトフローレート(以下「MFR」ともいう)は1〜10g/10分である。MFRがこの上限値を超えると成形体のフィッシュアイ(FE)および剥離感が悪化し、下限値未満であると加工時のトルクが上昇し、いずれの場合もフィルム成形が困難になることがある。この観点から、前記MFRは好ましくは2〜6g/10分である。
【0017】
2)低密度ポリエチレン(成分(2))のメルトフローレート
低密度ポリエチレンの190℃、荷重21.18NにおけるMFRは1〜20g/10分である。MFRがこの上限値を超えるとシール強度が過小となる。下限値未満であると成形体のフィッシュアイ(FE)および剥離感が悪化する。この観点から、前記MFRは好ましくは2〜10g/10分である。
【0018】
3)ポリプロピレン組成物(成分(1))のXSIV
ポリプロピレン組成物の25℃でのキシレン可溶分の極限粘度(XSIV)は0.8〜2.0dl/gであり、好ましくは1.0〜1.5dl/gである。キシレン可溶分は結晶性を持たない成分であり、XSIVはその成分の分子量の指標である。キシレン可溶分の主体はエチレン−α−オレフィン共重合体(成分(1b))に由来する。XSIVは25℃のキシレンに可溶な成分を得て、当該成分の固有粘度を定法にて測定することで求められる。XSIVの値が上限値を超えると成形体のフィッシュアイ(FE)および剥離感が悪化し、下限値未満であるとヒートシール強度が過小となり、また糸曳き性が悪くなる。
【0019】
(5)添加剤
1)スリップ剤
本発明の樹脂組成物は、当該樹脂組成物100重量部に対して0重量部を超えかつ0.5重量部以下のスリップ剤を含んでいてもよい。スリップ剤とは樹脂を加熱成型加工する際に、金属や樹脂同士間での粘着防止または摩擦低減のために用いられる添加剤である。スリップ剤としては、限定されないが、脂肪酸アマイド、金属石鹸、親水性シリコーン、パラフィン等が挙げられる。本発明においては脂肪酸アミドが好ましい。本発明においてスリップ剤は、イージーピール性を向上する機能も奏するが、量が多すぎると表面にブリードアウトしやすくなり、成形品の外観を損なう恐れがある。この観点から、スリップ剤を使用する場合は、その添加量は0.1〜0.3重量部が好ましい。
【0020】
2)防曇剤
本発明の樹脂組成物は、当該樹脂組成物100重量部に対して0重量部を超えかつ〜1重量部以下の防曇剤を含んでいてもよい。防曇剤とは、水滴の付着等によりフィルムが曇ることを防止するために使用される添加剤である。防曇剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミン脂肪酸エステルなどが挙げられる。中でもアルキルジエタノールアミン脂肪酸エステルが好ましい。アルキルジエタノールアミン脂肪酸エステルとしては、ラウリルジエタノールアミンモノステアレート、ミリスチルジエタノールアミンモノオレエート、ラウリルジエタノールアミンモノステアレート、パルミチルジエタノールアミンモノステアレート、ステアリルジエタノールアミンモノステアレートまたはオレイルジエタノールアミンモノステアレート等が挙げられる。本発明において防曇剤はイージーピール性を向上する機能も奏するが、量が多いとコストアップとなる。この観点から、防曇剤を使用する場合、その添加量は0.1〜0.6重量部が好ましい。
【0021】
3)その他
さらに本発明の樹脂組成物には、成分(1)、成分(2)以外のオレフィン系共重合体、造核剤、酸化防止剤、塩素吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、内部滑剤、外部滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、難燃剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、発泡剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物、油展および他の有機および無機顔料などのオレフィン重合体に通常用いられる慣用の添加剤を添加してもよい。各添加剤の添加量は公知の量としてよい。
【0022】
2.樹脂組成物の製造方法
本発明の樹脂組成物は任意の方法で製造してよいが、ポリプロピレン組成物(成分(1))と低密度ポリエチレン(成分(2))を準備して、両者を溶融混練する等により製造することが好ましい。
【0023】
(1)ポリプロピレン組成物(成分(1))の製造方法
成分1aの原料モノマーおよび成分1bの原料モノマーを、(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および電子供与体化合物を含有する固体触媒、(B)有機アルミニウム化合物、ならびに(C)外部電子供与体化合物を含む触媒を用いて重合する工程を含む方法で得ることが好ましい。
【0024】
1)固体触媒(成分A)
固体触媒は、公知の方法、例えばマグネシウム化合物とチタン化合物と電子供与体化合物を相互接触させることにより調製できる。マグネシウム化合物とチタン化合物については公知の物を使用できる。電子供与体化合物は一般には「内部電子供与体」と称される。内部電子供与体としては、フタレート系化合物、スクシネート系化合物が挙げられ、本発明においてはいずれも使用できる。
【0025】
2)有機アルミニウム化合物(成分B)
成分Bの有機アルミニウム化合物としては、公知の物を使用できる。
【0026】
3)電子供与体化合物(成分C)
成分Cの電子供与体化合物は、一般に「外部電子供与体」と称される。本発明においては、公知の物を用いてよいが有機ケイ素化合物が好ましい。
【0027】
4)重合
成分(1a)の原料モノマーおよび成分(1b)の原料モノマーを、2つ以上の反応器を用いて重合することが好ましい。重合は、液相中、気相中または液−気相中で実施してよい。重合圧力は、液相中で行われる場合には好ましくは33〜45barの範囲であり、気相中で行われる場合には5〜30barの範囲である。連鎖移動剤(たとえば、水素又はZnEt
2)などの当該分野で公知の慣用の分子量調節剤を用いてもよい。
【0028】
また、モノマー濃度や重合条件の勾配を有する重合器を用いてもよい。このような重合器では、例えば、少なくとも2つの重合領域が接続されたものを使用し、気相重合でモノマーを重合することができる。具体的には、触媒の存在下、上昇管からなる重合領域にてモノマーを供給して重合し、上昇管に接続された下降管にてモノマーを供給して重合し、上昇管と下降管とを循環しながら、ポリマー生成物を回収する。この方法は、上昇管中に存在する気体混合物が下降管に入るのを全面的または部分的に防止する手段を備える。また、上昇管中に存在する気体混合物とは異なる組成を有する気体または液体混合物を下降管中に導入する。上記の重合方法として、例えば、特表2002−520426号公報に記載された方法を適用することができる。
【0029】
(2)低密度ポリエチレン(成分(2))の製造方法
低密度ポリエチレンは前述のとおり、高圧法にて製造することが好ましい。高圧法とは、酸素またはラジカル開始剤を触媒とし、1,000〜4,000気圧および100〜350℃程度の条件下でエチレンを重合する方法である。
【0030】
(3)溶融混練
本発明の樹脂組成物は、成分(1)および(2)(必要に応じて(3))、ならびに必要に応じて添加剤を溶融混練して製造してよい。しかしながら、本発明の樹脂組成物は、これらの成分をドライブレンドし、基材と共に押出成形して基材上に形成することができる。このため、安価に大量生産が可能であるという利点を有する。さらに、本発明の樹脂組成物はリサイクル性に優れるポリオレフィン系材料の組合せから実質的に構成されるので、環境適合性にも優れている。
【0031】
3.フィルムおよび積層体
本発明の樹脂組成物はシーラント用フィルムとして有用であり、本発明の樹脂組成物を押出成形することでフィルムを製造できる。本発明においてフィルムとは、厚みが800μm以下のシート状の成形品をいう。優れたイージーピール性を発現するために、フィルムの厚さは1〜300μmが好ましく、3〜200μmがより好ましい。
【0032】
本発明の樹脂組成物は、イージーピール性を有するので、当該フィルムをシーラント層として備える積層体としても有用である。積層体とは複数の基材または層が積層された構造体である。本発明の樹脂組成物は特にポリプロピレンに対して優れたイージーピール性を有する。よって、本発明の樹脂組成物はポリプロピレンを含む部材とポリプロピレンを含まない部材とをヒートシールするためのヒートシール層として特に有用である。具体的に本発明の積層体は、第1基材、当該第1基材の上に設けられた本発明の樹脂組成物を含むヒートシール層、および当該シートの上に設けられた第2基材を含み、前記ヒートシール層と接している前記第1基材の表面または第2基材の表面が、ポリプロピレンを含む。ヒートシール層の厚さは、前記フィルムの厚さであることが好ましい。また、ヒートシール温度は170〜230℃が好ましい。
【0033】
ポリプロピレンを含む部材としては、ホモポリプロピレン、ポリプロピレンとエチレンまたはα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。また、プロピレン単独重合体または共重合体とエチレン−α−オレフィン共重合体との重合ブレンドが挙げられる。ポリプロピレンを含まない部材としては、金属、PET等のポリエステル等が挙げられる。
【0034】
本発明の樹脂組成物からなるシーラント層が優れたイージーピール性を示す理由は限定されないが、マトリックスであるポリプロピレンに相溶しないポリエチレンやエチレン−α−オレフィン共重合体のドメインが、シーラント層表面に配向性を持って引き伸ばされた状態で存在することにより、表面におけるポリエチレンやエチレン−α−オレフィン共重合体のドメインの面積が増大し、ポリプロピレンを含む基材との適度な接着強度が得られるためであると推察される。
【0035】
当該積層体は、前記成分(1)および成分(2)と、前記第1基材とを、共押出成形あるいは押出ラミネート成形して、当該基材の上に積層された請求項1に記載の樹脂組成物を含むヒートシール層を備える第1積層体を調製する工程、ならびに
当該第1積層体のヒートシール層と、前記第2基材とを、ヒートシールによって接着する工程を経て製造できる。ただし、前記ヒートシール層と接着している第2基材の表面はポリプロピレンを含む。以下、図面を参照して本発明の積層体を詳細に説明する。
【0036】
図1は積層体の一態様を示す。積層体1は、基材5p、その上に積層された本発明の樹脂組成物を含むシーラント層9、およびその上に積層された基材7を備える。基材5pはポリプロピレンの基材、またはポリプロピレンを表層にした多層積層体であってよいが、シーラント層9と接着している基材5pの表面はポリプロピレンを含んでいる。基材7は、ポリプロピレンを含まない基材、ポリプロピレンを含まない基材とポリプロピレンフィルムの積層体、またはポリプロピレンフィルムのみで構成された単層および多層フィルムであってよい。積層体1は内部に物体を保持できる空間を有するので容器でもある。基材7とシーラント層9は共押出成形あるいは押出ラミネート成形によって得られるため、シーラント層9がポリプロピレンフィルムと接していても両者は良好な接着性を有する。この理由は、共押出成形等で形成されたシーラント層9と基材7の積層体におけるシーラント層9の基材7界面にはポリエチレン等のドメインが配向して存在しないため、両者の接着を阻害しないためと推察される。一方、基材5pとシーラント層9の界面はヒートシールにより接着されるのでイージーピール性を有する。したがって基材7を剥離する際には、シーラント層9の内部で凝集剥離を生じるか、シーラント層9と基材5pとの界面で剥離が生じるか、あるいは凝集剥離と界面剥離が共存する状態にて、基材7とシーラント層9の積層体10が、積層体1から容易に剥離される(
図1b)。
【0037】
図2は積層体の別の態様を示す。積層体2は、基材5、その上に積層された本発明の樹脂組成物からなるシーラント層9、およびその上に積層された基材7pを備える。基材7pはポリプロピレンを含まない基材とポリプロピレンフィルムの積層体、またはポリプロピレンフィルムのみで構成された単層および多層フィルムであってよいが、シーラント層9と接着している基材7pの表面はポリプロピレンを含んでいる。基材5はポリプロピレンを含まない基材、ポリプロピレンの基材、またはポリプロピレンを表層にした多層積層体であってよい。積層体2は、共押出成形によって接着した基材5とシーラント層9のシート原反を真空成形、真空圧空成形、熱板成形などによって容器に成形し、基材7pをヒートシールして得ることができる。基材7pを剥離する際には、シーラント層9の内部で凝集剥離を生じるか、基材7pとシーラント層9との界面で剥離が生じるか、凝集剥離と界面剥離が共存する状態にて、基材7pが、積層体2から容易に剥離される(
図2b)。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を挙げ本発明についてさらに説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されない。
【0039】
[MFR]
JIS K 7210に準じ、荷重21.18Nの条件下で測定した。樹脂組成物に関しては230℃で、成分(2)に関しては190℃で測定した。
[成分(1a)中のエチレン濃度および成分(1b)中のα−オレフィン濃度]
1、2、4−トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、日本電子社製JNM LA−400(
13C共鳴周波数100MHz)を用い、
13C−NMR法で測定を行った。
[成分(2)の密度]
JISK7112に準じて測定した。
【0040】
[キシレン可溶分の採取]
ポリプロピレン組成物(成分1)2.5gを、o−キシレン(溶媒)を250mL入れたフラスコに入れ、ホットプレートおよび還流装置を用いて、135℃で、窒素パージを行いながら、30分間、攪拌し、組成物を完全溶解させた後、25℃で1時間、冷却を行った。得られた溶液を、濾紙を用いて濾過した。濾過後の濾液を100mL採取し、アルミカップ等に移し、窒素パージを行いながら、140℃で蒸発乾固を行い、室温で30分間静置し、キシレン可溶分を得た。
[XSIV]
上記のキシレン可溶分を試料とし、ウベローデ型粘度計(SS−780−H1、柴山科学器械製作所製)を用いて135℃テトラヒドロナフタレン中で極限粘度の測定を行った。
【0041】
[ヒートシール強度]
実施例および比較例で製造した積層体からCPPフィルムを速度300mm/minで180°剥離して、剥離強度を測定した。強度の値から以下のようにイージーピール性等を評価した。
【0042】
[イージーピール性(易開封性)]
良好:170〜220℃のシール温度範囲において、10〜18N/15mmのヒートシール強度を達成できる場合
不良:170〜220℃のシール温度範囲において、10〜18N/15mmのヒートシール強度を達成できない場合
【0043】
[剥離感]
良好:CPPフィルムを剥離する際の感触が滑らかな場合
不良:CPPフィルムを剥離する際に間欠的衝撃を感じる場合
【0044】
[糸曳き性]
CPPフィルムを剥離した後の痕跡を目視観察し、糸曳きの有無を観察した。
【0045】
[製造例1]材料Aの製造
MgCl
2上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを担持させた固体触媒を、欧州特許第728769号公報の実施例5に記載された方法により調製した。次いで、上記固体触媒と、有機アルミニウム化合物としてトリエチルアルミニウム(TEAL)と、外部電子供与体化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を用い、固体触媒に対するTEALの重量比が20、TEAL/DCPMSの重量比が10となるような量で、12℃において24分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃にて5分間保持することによって予備重合を行った。得られた予備重合物を、二段の重合反応器を直列に備える重合装置の一段目の重合反応器に導入し、プロピレンの液相状態にてプロピレン単独重合体を製造し、二段目の気相重合反応器でエチレン・ブテン−1共重合体を製造した。重合中は、温度と圧力を調整し、水素を分子量調整剤として用いた。
重合温度と反応物の比率は、一段目の反応器では、重合温度、水素濃度が、それぞれ70℃、0.04モル%、二段目の反応器では、重合温度、H2/C2、C4/(C2+C4)が、それぞれ80℃、0.24モル比、0.52モル比であった。また、共重合体成分の量が30重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した。得られたポリプロピレン重合体に、酸化防止剤として、BASF社製B255を0.2重量%、中和剤として、淡南化学(株)製カルシウムステアレートを0.05重量%配合し、ヘンシェルミキサーで1分間攪拌、混合した後、ナカタニ機械(株)製NVCφ50mm単軸押出機で、シリンダ温度230℃で押出し、ストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットし、ペレット状のポリプロピレン樹脂組成物を得た。
【0046】
[製造例2]材料Bの製造
一段目の反応器に0.84モル%のエチレンを加えて水素濃度を0.06モル%とし、二段目の反応器のH2/C2、C4/(C2+C4)を、それぞれ0.26モル比、0.48モル比とし、共重合体成分の量が18重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した以外は、製造例1と同様に実施した。
【0047】
[製造例3]材料Cの製造
MgCl
2上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを担持させた固体触媒を、欧州公開特許出願第674991号公報の実施例に記載された方法により調製した。次いで、上記固体触媒と、有機アルミニウム化合物としてトリエチルアルミニウム(TEAL)と、外部電子供与体化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を用い、TEAL/Tiのモル比が65、TEAL/DCPMSの重量比が約15となるような量で、−5℃において5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃にて20分間保持することによって予備重合を行った。得られた予備重合物を、二段の気相重合反応器を直列に備える重合装置の一段目の気相重合反応器に導入してプロピレン単独重合体を製造した。一段目の反応器で製造されたプロピレンホモポリマーを、未反応モノマーを取り除いた後、二段目の気相重合反応器でエチレン・ブテン−1共重合体を製造した。重合中は、温度と圧力を調整し、水素を分子量調整剤として用いた。
重合温度と反応物の比率は、一段目の反応器では、重合温度、H2/C3が、それぞれ70℃、0.0052モル比、二段目の反応器では、重合温度、H2/C2、C4/(C2+C4)が、それぞれ80℃、0.20モル比、0.35モル比であった。また、共重合体成分の量が70重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した。得られたポリプロピレン重合体から製造例1と同様にしてペレット状のポリプロピレン樹脂組成物を得た。
【0048】
[製造例4]材料Dの製造
一段目の反応器の水素濃度を0.93モル%、二段目の反応器のH2/C2、C4/(C2+C4)を、それぞれ0.26モル比、0.40モル比とし、共重合体成分の量が27重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した以外は、製造例1と同様に実施した。
【0049】
[製造例5]材料Gの製造
2段目の重合反応器にブテン−1の代わりにプロピレン導入して共重合体(エチレン・プロピレン共重合体)を重合させた。一段目の反応器の水素濃度を0.10モル%、二段目の反応器の水素濃度、C2/(C2+C3)を、それぞれ1.33モル%、0.25モル比とし、共重合体成分の量が27.5重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した以外は、製造例1と同様に実施した。
【0050】
[他の材料]
他の材料に関しては、以下の市販品を用いた。
材料E:サンアロマー株式会社製PL400A(市販グレード)
材料F:日本ポリエチレン株式会社製 ノバテックLD400(市販グレード、密度0.919g/cm
3)
材料H:日本ポリエチレン株式会社製 ノバテックLF128(市販グレード、密度0.922g/cm
3)
材料I:日本ポリエチレン株式会社製 ノバテックLJ803(市販グレード、密度0.921g/cm
3)
材料J:日本ポリエチレン株式会社製 ノバテックUJ960(市販グレード、密度0.935g/cm
3)
材料K:日本ポリエチレン株式会社製 ノバテックHJ360(市販グレード、密度0.951g/cm
3)
【0051】
[実施例1]
低密度ポリエチレンとしてLD400(日本ポリエチレン株式会社製、前記測定法によるMFR=2g/10分)を準備した。25mmφ二種二層シート成形機(吉井鉄工社製)を用いて、材料AとLD400との90:10(重量比)混合物(ドライブレンド)およびホモポリプロピレン(サンアロマー株式会社製 PL400A)を、200℃で共押出ししてホモポリプロピレン層(厚さ500μm)の上に樹脂組成物からなるシーラント層(100μm)を備える二層シートを製造した。次いで、PL400A製のCPPフィルム(50μm)を準備し、前記二層シートのシーラント層面と当該フィルムをヒートシールして積層体を得た。ヒートシール温度は170〜220℃、圧力は0.2MPa、加圧時間は1秒とした。こうして得た積層体を前述のとおり評価した。
【0052】
[実施例2]
材料Aの代わりに材料Bを用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を製造し、評価した。
[実施例3]
材料AとLD400との重量比を70:30にした以外は、実施例1と同様にして積層体を製造し、評価した。
【0053】
[実施例4]
スリップ剤としてエルカ酸アマイド(日油株式会社製、アルフローP−10)、防曇剤としてジエタノールアミンエステル(東邦化学工業株式会社製、アンステックスSA−300F)を表1に示す量で加えた以外は、実施例1と同様にして積層体を製造し、評価した。
[実施例5]
材料Aの代わりに材料Cと材料Eを使用し、材料Cと材料EとLD400との重量比を38.5:51.5:10にした以外は、実施例1と同様にして積層体を製造し、評価した。
【0054】
[比較例1]
材料Aのみを用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を製造し、評価した。
[比較例2]
材料AとLD400との重量比を30:70にした以外は、実施例1と同様にして積層体を製造し、評価した。
[比較例3]
材料Aの代わりに材料Cを用いた以外は、実施例3と同様にして積層体を製造し、評価した。
[比較例4]
材料Aの代わりに材料Dを用いた以外は、実施例3と同様にして積層体を製造し、評価した。
【0055】
[比較例5]
材料Aの代わりに材料Gを用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を製造し、評価した。
[比較例6]
材料Fの代わりに材料Hを用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を製造し、評価した。
[比較例7]
材料Fの代わりに材料Iを用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を製造し、評価した。
[比較例8]
材料Fの代わりに材料Jを用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を製造し、評価した。
[比較例9]
材料Fの代わりに材料Kを用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を製造し、評価した。
材料の特性を表1に、積層体の評価結果を表2に示す。
【0056】
【表1】
【表2】
【0057】
表2に示すとおり、本発明の樹脂組成物からなるシーラント層は、優れたイージーピール性を有する。