(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、原糸は繊維集合体のため空隙が多く、その大きさはばらついており、さらには、原糸の厚さや巾もばらつくため、ローラーとブレードの隙間調整のみによっては巻き取られたトウプリプレグの樹脂含有量(Rc値:塗布樹脂重量/トウプリプレグ重量)を所望の値に収束させるのが難しい。また、樹脂を含浸させるために樹脂温度を上げて、ローラー部材へ樹脂供給を行うが、樹脂含浸前にローラー部材からの樹脂垂れ後の滴下やスクレーバーに付着した樹脂垂れ後の滴下などが起こり、これによってもRc値を一定に保つことが困難であった。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、トウプリプレグの樹脂含有量を、巻き取られるトウプリプレグの全体に亘って所望の値に収束させることのできるトウプリプレグ製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係るトウプリプレグ製造装置は、強化繊維の原糸に樹脂を塗布するトウプリプレグ製造装置において、所定の回転数で回転しながら樹脂の供給を受けるオイリングローラーと、前記オイリングローラー上に供給された樹脂の形状を整形するスクレーパーと、前記オイリングローラーに樹脂を供給する樹脂溜めと、前記樹脂溜めに樹脂を吐出させるチューブポンプと、前記樹脂溜めより供給される樹脂の量が一定となるよう前記チューブポンプを制御すると共に、巻き取られたトウプリプレグの樹脂含有量が目標とする樹脂含有量になるよう前記オイリングローラーの回転数を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、オイリングローラー上の樹脂の量を、オイリングローラーの回転数により制御することができるので、巻き取られたトウプリプレグの樹脂含有量と、目標とする樹脂含有量とに基づいてオイリングローラーの回転数をフィードバック制御することで、原糸に塗布される樹脂の量を一定の値に収束させることができる。これにより、安定した品質のトウプリプレグを供給することが可能となる。
【0009】
また、本発明の請求項2に係るトウプリプレグ製造装置は、請求項1に記載のトウプリプレグ製造装置において、前記樹脂溜め内の液面を検出する液面センサを更に備え、前記制御部は、前記樹脂溜め内の液面高さが一定値になるよう、前記液面センサより出力される液面情報に基づいて、前記チューブポンプの駆動量を制御することを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、樹脂溜めの液面高さに基づいて樹脂の吐出量をフィードバック制御することとしたので、樹脂溜め内の樹脂量制御を正確かつ自動的に実行することができる。
【0011】
また、本発明の請求項3に係るトウプリプレグ製造装置は、請求項1に記載のトウプリプレグ製造装置において、前記制御部は、前記オイリングローラーから原糸への樹脂供給量が、目標とする樹脂含有量に収束させることのできる樹脂量になるよう、巻き取られたトウプリプレグの樹脂含有量と目標とする樹脂含有量とに基づいて、前記オイリングローラーの回転数を制御することを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、オイリングローラーの回転数を可変させることで原糸への樹脂の塗布量を調整することとしたので、巻き取られたトウプリプレグの樹脂含有量を正確に制御することが可能となる。
【0013】
また、本発明の請求項4に係るトウプリプレグ製造装置は、請求項1に記載のトウプリプレグ製造装置において、前記チューブポンプより吐出された樹脂の重量を検出する第1の重量測定器と、前記オイリングローラーより滴下する樹脂の重量を検出する第2の重量測定器と、を更に備え、前記制御部は、巻き取られたトウプリプレグに塗布された樹脂量を、前記第1の重量測定器、及び前記第2の重量測定器の出力値に基づいて算出し、巻き取られたトウプリプレグの樹脂含有量を、トウプリプレグの巻取り長、及び前記巻き取られたトウプリプレグに塗布された樹脂量に基づいて算出することを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、巻き取られたトウプリプレグの樹脂含有量を、原糸に実際に塗布された樹脂量に基づいて算出することとしたので、巻き取られたトウプリプレグの樹脂含有量を正確に算出することができ、オイリングローラーの回転数制御を正確に実行することができる。
【0015】
また、本発明の請求項5に係るトウプリプレグ製造装置は、請求項1に記載のトウプリプレグ製造装置において、前記樹脂溜めは、前記オイリングローラーに当接する側壁を備える箱状部材よりなり、前記樹脂溜めの底面の一部と、前記側壁との間に形成される溝部より前記オイリングローラーに樹脂を供給することを特徴とする。
【0016】
かかる構成によれば、オイリングローラーと樹脂溜めとの間に形成される空間領域に樹脂を溜め置き、この溜め置かれた樹脂をオイリングローラーに供給することとしたので、樹脂溜め内の樹脂の量を制御することができ、これにより、オイリングローラーに供給する樹脂量を安定させることができる。さらに、オイリングローラーへの樹脂の供給前においても、オイリングローラーに十分な量の樹脂を接触させることができるので、オイリングローラーに安定的に樹脂を付着させることができる。
【0017】
また、本発明の請求項6に係るトウプリプレグ製造装置は、請求項5に記載のトウプリプレグ製造装置において、前記樹脂溜めの底面は、前記側壁に挟まれた並行部分の横幅が段階的に幅狭化されていることを特徴とする。
【0018】
かかる構成によれば、樹脂溜め内において、オイリングローラーへ供給される樹脂の流れを整流することができるので、安定した樹脂供給を行うことができる。
【0019】
また、本発明の請求項7に係るトウプリプレグ製造装置は、請求項4に記載のトウプリプレグ製造装置において、前記オイリングローラー以降のトウプリプレグの走行経路において滴下する樹脂の重量を検出するn個の重量測定器を更に備え、前記制御部は、巻き取られたトウプリプレグに塗布された樹脂量を、前記第1の重量測定器、前記第2の重量測定器、及び前記n個の重量測定器の出力値に基づいて算出することを特徴とする。
【0020】
かかる構成によれば、巻き取られたトウプリプレグの樹脂含有量をより正確に算出することができ、オイリングローラーの回転数制御をより正確に実行することができる。
【0021】
また、本発明の請求項8に係るトウプリプレグ製造方法は、樹脂溜めより樹脂の供給を受けるオイリングローラー上に強化繊維の原糸を走行させて、該原糸に樹脂を塗布するトウプリプレグ製造方法において、オイリングローラーに供給する樹脂の量を一定に保つ樹脂吐出制御と、巻き取られたトウプリプレグの樹脂含有量が目標とする樹脂含有量に収束するよう前記オイリングローラーの回転数を制御して、前記オイリングローラーから原糸へ供給される樹脂の量を調整するオイリングローラー回転数制御と、を並行して実行することを特徴とする。
【0022】
かかる構成によれば、原糸に塗布される樹脂の量を、オイリングローラーの回転数のみにより制御することができるので、巻き取られたトウプリプレグの樹脂含有量と、目標とする樹脂含有量とに基づいてオイリングローラーの回転数をフィードバック制御することで、原糸に塗布される樹脂の量を一定の値に収束させることができる。これにより、安定した品質のトウプリプレグを供給することが可能となる。
【0023】
また、本発明の請求項9に係るトウプリプレグ製造方法は、請求項8に記載のトウプリプレグ製造方法において、前記樹脂吐出制御は、前記樹脂溜めに貯留された樹脂の液面高さを検出するステップと、検出された液面高さが一定値になるよう、前記樹脂溜めに吐出する樹脂量を制御するステップと、を備える ことを特徴とする。
【0024】
かかる構成によれば、樹脂溜めの液面高さに基づいて樹脂の吐出量をフィードバック制御することとしたので、樹脂溜め内の樹脂量制御を正確かつ自動的に実行することができる。
【0025】
また、本発明の請求項10に係るトウプリプレグ製造方法は、請求項8に記載のトウプリプレグ製造方法において、前記オイリングローラー回転数制御は、巻き取られたトウプリプレグの樹脂含有量を算出するステップと、前記オイリングローラーから原糸への樹脂供給量が、目標とする樹脂含有量に収束させることのできる樹脂量になるよう、前記巻き取られたトウプリプレグの樹脂含有量と目標とする樹脂含有量とに基づいて、前記オイリングローラーの回転数を制御するステップと、を備えることを特徴とする。
【0026】
かかる構成によれば、オイリングローラーの回転数を可変させることで原糸への樹脂の塗布量を調整することとしたので、巻き取られたトウプリプレグの樹脂含有量を正確に制御することが可能となる。
【0027】
また、本発明の請求項11に係るトウプリプレグ製造方法は、請求項8に記載のトウプリプレグ製造方法において、前記オイリングローラー回転数制御は、前記樹脂溜めに吐出された樹脂の重量を検出するステップと、前記オイリングローラーより滴下する樹脂の重量を検出するステップと、巻き取られたトウプリプレグの巻取り長を検出ステップと、を備え、巻き取られたトウプリプレグに塗布された樹脂量を、前記樹脂溜めに吐出された樹脂の重量と、前記オイリングローラーより滴下する樹脂の重量とに基づいて算出し、巻き取られたトウプリプレグの樹脂含有量を、前記巻き取られたトウプリプレグの巻取り長と、前記巻き取られたトウプリプレグに塗布された樹脂量とに基づいて算出する、ことを特徴とする。
【0028】
かかる構成によれば、巻き取られたトウプリプレグの樹脂含有量を、原糸に実際に塗布された樹脂量に基づいて算出することとしたので、巻き取られたトウプリプレグの樹脂含有量を正確に算出することができ、オイリングローラーの回転数制御を正確に実行することができる。
【0029】
また、本発明の請求項12に係るトウプリプレグ製造方法は、請求項8に記載のトウプリプレグ製造方法において、側壁と底壁とに囲まれた溝を有する箱状部材を前記オイリングローラーに当接させて、前記オイリングローラーと前記箱状部材との間に樹脂を貯留する空間を形成し、前記溝と前記オイリングローラーとの間に形成されるスリット状の開口より樹脂を前記オイリングローラー上に供給することを特徴とする。
【0030】
かかる構成によれば、オイリングローラーと樹脂溜めとの間に形成される空間領域に樹脂を溜め置き、この溜め置かれた樹脂をオイリングローラーに供給することしたので、樹脂溜め内の樹脂量を制御することができ、これにより、オイリングローラーに供給する樹脂量を安定させることができる。さらに、オイリングローラーへの樹脂の供給前においても、オイリングローラーに十分な量の樹脂を接触させることができるので、オイリングローラーに安定的に樹脂を付着させることができる。
【0031】
また、本発明の請求項13に係るトウプリプレグ製造方法は、請求項12に記載のトウプリプレグ製造方法において、前記箱状部材の底面形状の横幅を段階的に幅狭化させて、前記オイリングローラーに供給する樹脂の流れを整流することを特徴とする。
【0032】
かかる構成によれば、オイリングローラーへ供給される樹脂の流れを整流することができるので、安定した樹脂供給を行うことができる。
【0033】
また、本発明の請求項14に係るトウプリプレグ製造方法は、請求項11に記載のトウプリプレグ製造方法において、前記オイリングローラー以降のトウプリプレグの走行経路において滴下する樹脂の重量を検出するステップを更に備え、巻き取られたトウプリプレグに塗布された樹脂量を、前記樹脂溜めに吐出された樹脂の重量と、前記オイリングローラーより滴下する樹脂の重量と、前記オイリングローラー以降のトウプリプレグの走行経路において滴下する樹脂の重量と、に基づいて算出することを特徴とする。
【0034】
かかる構成によれば、巻き取られたトウプリプレグの樹脂含有量をより正確に算出することができ、オイリングローラーの回転数制御を更に正確に実行することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、オイリングローラーに供給する樹脂の量が一定になるよう樹脂の吐出量を制御しながら、巻き取られるトウプリプレグのRc値が目標とするRc値に収束するよう、オイリングローラーの回転数を制御して原糸へ供給する樹脂量を調整することとしたので、トウプリプレグの樹脂含有量を、巻き取られるトウプリプレグの全体に亘って一定の値に収束させることができ、一定品質のトウプリプレグを供給することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1に係るトウプリプレグ製造装置1000の全体構成を示す図である。
図1において、トウプリプレグ製造装置1000は、炭素繊維原糸の引取り、樹脂の塗布、及び生成されたトウプリプレグの巻取りを実行するトウプリプレグ生成ユニット100と、生成されたトウプリプレグのRc値が目標値となるよう原糸への樹脂の塗付量を制御するオペレーションユニット200とより構成される。
【0038】
以下、まず、トウプリプレグ生成ユニット100の構成について説明する。
図1において、101は、原糸を供給する給糸パッケージである。給糸パッケージ101には、トウで巻き取られた炭素繊維の原糸が巻回されている。102は、原糸に含浸させる樹脂を貯蔵する樹脂タンクである。樹脂タンク102は、図示しないヒーターにより、使用する樹脂の粘度特性に応じた最適温度に保温されている。103は、樹脂タンク102内の樹脂を送出するチューブである。
【0039】
104は、チューブ103内の樹脂を吐出させるチューブポンプである。チューブポンプ104は、任意の速度で回転する複数のローラー部材によりチューブ103内の樹脂を押し出すことで樹脂を吐出させている。チューブポンプ104の回転数は、オペレーションユニット200内の制御部220により制御されており、制御部220より出力される制御信号C
1を介してチューブポンプ104の回転数を任意に設定することができる。なお、制御部220の詳細については後述する。
【0040】
105は、樹脂タンク102の重量を検出する第1の重量測定器である。第1の重量測定器105の測定値Tは、所定のサンプリング周期毎に制御部220に出力される。106は、原糸に樹脂を塗布するオイリングローラーである。オイリングローラー106は、任意に設定された速度で矢印の方向に回転しながら、その表面上に樹脂の供給を受けており、原糸がオイリングローラー106の表面上を走行することで、原糸の片面に樹脂が塗布される。107は、オイリングローラー106を駆動させるオイリングローラー駆動部107である。オイリングローラー駆動部107は、制御部220により制御されており、制御部220より出力される制御信号C
2を介して、オイリングローラー106の回転数を任意に設定することができる。
【0041】
108は、チューブ103より吐出される樹脂をオイリングローラー106上に供給する樹脂溜めである。樹脂溜め108は、オイリングローラー106に当接する箱状部材であり、オイリングローラー106の表面と樹脂溜め108の内壁面との間に、樹脂を貯留する空間を形成している。
【0042】
図2は、樹脂溜め108の斜視図である。
図3、及び
図4は、樹脂溜め108の平面図、及び右側面図をそれぞれ表している。また、
図5は、オイリングローラー106と樹脂溜め108とを当接させた状態の正面図を表している。
【0043】
図2において、樹脂溜め108は、平面視において矩形状の外縁をなす底壁108Aと、底壁108Aの外縁に沿って垂直に立ち上がる側壁108B、及び後壁108Cとにより構成される。
【0044】
図3に示すように、底壁108Aの内側面、すなわち、樹脂溜め108の内側底面は、幅Wd1の第1のストレート領域108As
1と、第1のストレート領域108As
1の幅Wd1を幅Wd2まで漸減させるテーパー領域108Atと、テーパー領域108Atの幅狭端側より再度矩形状に延伸する第2のストレート領域108As
2とより構成される。このように、樹脂溜め108の内側底面は、側壁108B、及び後壁108に囲まれた矩形領域が、テーパー領域を介して多段的に絞り込まれる形状をなしている。
【0045】
側壁108Bは、
図4に示すように、側面視において矩形状の一角を円弧形状に切り取った外縁形状をなしており、側壁108Bの上辺は、円弧の一端から水平線が延びる形状となる。円弧形状の半径rは、オイリングローラー106の半径と同一径であり、円弧形状の円弧長は、オイリングローラー106の外周の20〜30%、好ましくは20〜25%の長さである。また、円弧形状の下端は、底壁108Aの内側面からスクレーパー110とオイリングローラー106との隙間長に0.1〜0.5mm程度のクリアランスを与えた長さhだけ上側に位置している。
【0046】
側壁108Bは、水平方向においては、上述した底壁108Aの内側縁辺と外側縁辺とにそれぞれ沿うように、また垂直方向においては、上述した側壁108Bの上辺形状に沿うように立ち上がっており、このように構成される側壁108Bには、
図2あるいは
図3に示すように、オイリングローラー106に当接するローラー当接面108Bcが形成される。また底壁108Aの第2のストレート領域108As
2と側壁108Bとの間には、高さhの溝部が形成される。
後壁108Cは、側壁108Bと同じ高さまで底壁108Aより垂直に立ち上がっており、後壁108Cには、チューブ103が挿入されるアダプター(図示せず)が接続される。
【0047】
以上のように構成される樹脂溜め108を、オイリングローラー106に密接させた状態で固定金具(図示せず)を用いてトウプリプレグ生成ユニット100に固定すると、オイリングローラー106の表面、底壁108A、側壁108B、及び後壁108との間に、樹脂を貯留可能な空間が形成される。さらに、
図5に示すように、オイリングローラー106と第2のストレート領域108As
2との間には、高さhのスリットSLが形成される。そして、樹脂がスリットSLよりオイリングローラー106上に少量ずつ流出することにより、オイリングローラー106上には高さhの厚みを持つ樹脂膜が形成される。
【0048】
このように、樹脂溜め108に貯留された樹脂は、スリットSLの方向に向けて流下しながら、最終的にスリットSLよりオイリングローラー106上に供給されるのであるが、底壁108Aの内面の第1のストレート領域108As
1の幅Wd1を、第2のストレート領域As
2の幅Wd2に変移させる場合、その幅をテーパー領域により連続的に変化させると、樹脂溜め108内部の中央部分と側壁側部分とで樹脂の流速に差異が生じ、樹脂の流出ムラが生じる。この点、本発明による樹脂溜め108では、第1のストレート領域108As
1の幅Wd1を、テーパー領域108Atを介して幅Wd2に一旦幅狭化させた後に、再度、第2のストレート領域108As
2を経由させて樹脂を流出させるので、第2のストレート領域108As
2に向けて流下する樹脂の流れを整流することができる。これにより、樹脂の流出ムラを防止することができ、樹脂をオイリングローラー106上に均一に供給することが可能となる。
【0049】
また、オイリングローラー106と当接するローラー当接面108Bcの円弧の長さを、オイリングローラー106の周長の20〜30%程度、好ましくは20〜25%程度にすることで、樹脂塗布後のオイリングローラー106に十分な量の樹脂を接触させておくことができ、樹脂をオイリングローラー106上に安定的に付着させることができる。特に、本発明によるトウプリプレグ生成ユニット100では、後述するように、樹脂溜め108内の液面が一定に保たれていることより、樹脂塗布後のオイリングローラー106に一定量の樹脂を常時接触させることができる。
なお、本実施の形態においては、樹脂溜め108の内側底面の幅を1段階のステップで短縮させているが、テーパー領域を複数箇所設けて複数段階のステップで短縮させてもよい。
【0050】
次に
図1に戻り、109は、樹脂溜め108内部の樹脂の液面高さを検出する液面センサである。液面センサ109は、センサ内部に延在する電極に流した電気信号に基づいて樹脂溜め108内の液面を検出しており、検出された液面高さFは制御部220に出力される。
【0051】
110は、オイリングローラー106上に塗布された樹脂を一定の厚みに延ばすスクレーパーである。樹脂溜め108からオイリングローラー106に塗布された樹脂の形状は、スクレーパー109に達するまでに樹脂垂れ等により変形する場合があり、スクレーパー109は、この樹脂垂れ変形形状を最終的に整形する役割をも担う。スクレーパー110は、オイリングローラー106に対して所定長離れた位置に固定されており、原糸の厚みに応じて原糸厚みの1〜3倍程度の範囲内でオイリングローラー106に対する固定位置を変更するのが望ましい。
【0052】
111は、樹脂溜め108、オイリングローラー106、及びスクレーパー110より滴下する樹脂の重量を検出する第2の重量測定器である。第2の重量測定器111はオイリングローラー106の下部に設置されており、第2の重量測定器111には、滴下する樹脂を受け取るトレーが載置されている。第2の重量測定器111の測定値Sは、所定のサンプリング周期毎に制御部220に出力される。
【0053】
112は、生成されたトウプリプレグを巻き取る巻取りボビンである。113は、巻取りボビン112に巻き取られたトウプリプレグの巻取り長を測定する測長ローラーであり、巻取りボビン112の前段においてトウプリプレグに掛架されている。114は、測長ローラー113に電気的に接続された巻取りカウンタ114であり、トウプリプレグの巻取り長Wを制御部220に出力する。115は、給糸パッケージ101より引き出された原糸や、原糸に樹脂が塗布されたトウプリプレグの走行を安定して送るための回転ローラーである。
【0054】
トウプリプレグ生成ユニット100は以上のように構成されており、給糸パッケージ101より引き出された原糸は、走行経路上に配置されたローラー部材によるアシストを受けながら、オイリングローラー106に送り出される。オイリングローラー106の回転数は、後述するように、制御部220によるフィードバック制御のもと、目標Rc値となる最適量の樹脂が原糸に供給されるよう制御されており、原糸がオイリングローラー106上を走行することで、全長に亘って目標Rc値に収束したトウプリプレグが生成される。
【0055】
次に、オペレーションユニット200について説明する。
【0056】
図1において、オペレーションユニット200は、各種の設定値I
nの入力を外部より受け付ける入力部210と、原糸に塗布される樹脂量が目標Rc値に収束するよう、オイリングローラー106から原糸に供給される樹脂の量を制御する制御部220と、制御部220からの制御信号C
3を受けてトウプリプレグ生成ユニット100の制御状態をリアルタイムに表示する表示部230とを備える。
【0057】
次に、オペレーションユニット200の概略動作を説明する。オペレーションユニット200は、生成されたトウプリプレグのRc値が目標値となるように原糸への樹脂の塗布量を最適化するものである。ここで、原糸への樹脂の塗布量は、オイリングローラー106から原糸へ供給される樹脂の量により決定される。具体的には、スクレーパー110とオイリングローラー106との距離、オイリングローラー106へ吐出される樹脂量、及びオイリングローラー106の回転速度、の3つの要素により決定される。
【0058】
この3つの要素のうち、本発明によるトウプリプレグ製造装置1000では、オイリングローラー106とスクレーパー110との距離を固定値とし、オイリングローラー106へ吐出される樹脂量を一定に保つよう制御しながら、巻き取られるトウプリプレグのRc値が目標とするRc値に収束するよう、オイリングローラー106の回転数を制御してオイリングローラー106から原糸へ供給される樹脂の量を調整するものとしている。すなわち、樹脂溜め108に貯留された樹脂量が一定に保たれるよう、チューブポンプ104による樹脂の吐出量を制御する「樹脂吐出制御」と、オイリングローラー106の回転数を変化させてオイリングローラー106から原糸へ供給される樹脂量を所望の値に変化させる「オイリングローラー回転数制御」とを、制御部220により並行して実行している。
【0059】
以下、制御部220による樹脂吐出制御と、オイリングローラー回転数制御の詳細について説明する。
図6は、樹脂吐出制御を説明するためのブロック図である。
図6において、I
1は、入力部210を介して制御部220に設定される樹脂溜め108の基準液面値である。基準液面値I
1は任意の値とすることができる。C
1は、チューブポンプ104の回転数の増減を指示する制御信号であり、制御部220よりチューブポンプ104に出力される。Fは、液面センサ109により検出された樹脂溜め108の液面高さ情報である。
【0060】
樹脂吐出制御の初期設定として、基準液面値I
1が入力部210を介して制御部220に設定される。また、一定量の樹脂が樹脂溜め108に注入される。以上の初期設定がなされた後に、トウプリプレグ生成ユニット100を駆動させると、樹脂溜め108の底面に形成されるスリットSLより樹脂がオイリングローラー106上へ供給され、樹脂吐出制御が開始する。
【0061】
図7は、樹脂吐出制御の動作を説明するためのフローチャートである。まず、樹脂溜め108の液面高さFが、液面センサ109より制御部220へ入力される(ステップ701、以下「S701」という。)。次に、制御部220は、樹脂溜め108の基準液面値I
1と、現在の液面高さFとの差分を求め、現在の液面高さFが基準液面値I
1より低いか否かを判定する(S702)。現在の液面高さFが基準液面値I
1を下回る場合は、制御部220はチューブポンプ104の回転数を増加させる制御信号C
1を出力する(S702)。
【0062】
一方、S702において現在の液面高さFが基準液面値I
1を下回っていない場合は、制御部220はさらに、現在の液面高さFが基準液面値I
1より高いか否かを判定する(S704)。S704において液面が基準液面値I
1よりも高い場合は、制御部220は、チューブポンプの回転数を低下させる制御信号C
1を出力する(S705)。一方、S704において液面が基準液面値I
1よりも高くない場合は、液面高さFが基準液面値I
1であると判断してS701に帰還し、S701以降のフローを継続して実行する。
【0063】
S703あるいはS705以降は、いずれもS701に帰還し、制御部220は入力される液面高さFに基づいて、樹脂溜め108内の液面が基準液面値I
1となるまでチューブポンプ104の回転数をフィードバック制御する。そして、トウプリプレグの巻取りが完了するまでS701ないしS705のステップが継続的に行われることで、樹脂溜め108の液面は一定に保たれるよう制御され、樹脂溜め108からは一定量の樹脂が供給され続ける。
【0064】
次に、オイリングローラー回転数制御について説明する。
図8は、オイリングローラー回転数制御を説明するためのブロック図である。
図8において、221は、巻き取られたトウプリプレグのRc値を演算するRc値演算部である。Rc値演算部221は制御部220を構成する機能ブロックの一つである。Rc値演算部221には、オイリングローラー回転数制御の初期設定として、Rc値の演算に必要な設定値I
2が入力部210を介して入力される。設定値I
2としては、単位長さあたりの原糸重量:Texと、仕上がり全長:Eが入力される。ここで、Texは、「給糸パッケージの重量/パッケージングされている原糸長」により算出され、給糸パッケージ101を交換するごとに、入力部210を介してRc演算部221に設定される。仕上がり全長Eは、巻取りボビン112に巻き取るトウプリプレグの目標長さであり、最終製品の長さ仕様に応じて入力される。
【0065】
また、Rc値演算部221には、第1の重量測定器105により計測された樹脂タンク102の重量測定値Tと、第2の重量測定器110により計測された滴下樹脂の重量測定値Sと、巻取りカウンタ114により計測されたトウプリプレグの巻取り長Wとが、随時Rc値演算部221に入力される。
【0066】
次に
図8において、222は、オイリングローラー106の回転数を制御するオイリングローラー制御部である。オイリングローラー制御部222は制御部220を構成する機能ブロックの一つである。オイリングローラー制御部222には、目標Rc値I
3が入力部210を介して設定される。また、オイリングローラー制御部222には、Rc値演算部221により算出されたRc値が入力される。オイリングローラー制御部222は、目標Rc値I
3となる最適量の樹脂がオイリングローラー106上に供給されるよう、目標Rc値I
3と現在のRc値とに基づいてオイリングローラー106の回転数をサンプリングタイム毎にPID制御する。ここで、PID制御とは、出力値と目標値の乖離差に比例した修正制御量と、かつ、それまでの乖離差の積分値の修正制御量と、かつ、乖離差が増えるか減るかの傾向を減らす修正制御値を算出し、その結果を入力値としてフィードバックコントロールする一般的な制御方法である。この制御方法を用いることにより、オイリングローラー制御部222からは、オイリングローラー106の回転数を制御する駆動信号C
2がオイリングローラー駆動部107に出力される。
【0067】
オイリングローラー回転数制御の初期設定としてTex、仕上がり全長E及び目標Rc値I
3を設定した後に、トウプリプレグ生成ユニット100を駆動させると、樹脂溜め108の底面開口より樹脂がオイリングローラー106上へ供給され、オイリングローラー回転数制御が開始する。
【0068】
図9は、オイリングローラー回転数制御を説明するためのフローチャートである。まず、ステップS901において、樹脂タンク102の重量測定値T、オイリングローラー106より滴下する樹脂の重量の測定値S、及び測長ローラー113により検出されるトウプリプレグの巻取り長Wが、Rc値演算部221に入力される。
【0069】
次に、Rc値演算部221は、S901で測定された検出値と初期設定で入力された設定値I
2とに基づいて、現在のトウプリプレグのRc値を演算する(S902)。具体的な演算方法は以下の通りである。すなわち、樹脂タンク102の初期重量T
0、樹脂タンク102の現在重量T、第2の重量測定器に載置された受皿の初期重量S
0、及び受皿の現在重量Sに基づいて、現在の樹脂塗布重量Cを、下記(式1)に基づいて算出する。
樹脂塗布重量:C=(T
0−T)−(S−S
0) ・・・(式1)
次に、巻取りボビン112に巻き取られた巻取り繊維重量FFを、下記(式2)に基づいて算出する。
巻取り繊維重量:FF=Tex×W ・・・(式2)
そして、(式2)より得られた巻取り繊維重量FFと、(式1)より得られた塗布樹脂重量Cとより、巻き取られたトウプリプレグの現在のRc値を下記(式3)に基づいて算出する。
Rc値:Rc=C/(FF+C)×100 ・・・(式4)
次にS903において、Rc値演算部221により算出されたRc値がオイリングローラー制御部222に入力され、現在のRc値が目標Rc値I
3となるよう、オイリングローラー106の回転数がPID制御される。
【0070】
そして、現在のトウプリプレグの巻取り長Wが仕上がり全長Eに達したか否かを判断し(S904)、巻取り長Wが仕上がり全長Eに達した場合は、オイリングローラー回転数制御を終了させる。一方、S904において、巻取り長Wが仕上がり全長Eに達していないと判断した場合はS901に帰還し、以降、トウプリプレグの巻取りが完了するまで、S901ないしS904の各ステップが繰り返し実行され、巻き取られたトウプリプレグのRc値が目標Rc値E
3に収束するよう、オイリングローラー106の回転数が制御される。
【0071】
以上のように、本発明によるトウプリプレグ製造装置1000では、スクレーパー109の位置を固定し、オイリングローラー106に供給する樹脂量が一定になるよう、チューブポンプによる樹脂の吐出量を、原糸に実際に塗布された樹脂量に基づいてフィードバック制御することとしたので、原糸に塗布される樹脂の量を、オイリングローラー106の回転数によって制御することができる。
【0072】
そして、かかる樹脂吐出制御と並行して、オイリングローラー106から原糸に供給される樹脂量が目標Rc値に収束する最適樹脂量になるよう、オイリングローラー106の回転数を、巻き取られたトウプリプレグのRc値に基づいてフィードバック制御することとしたので、原糸に塗布する樹脂量をトウプリプレグの全長に亘って所望の値に保つことができ、これにより、トウプリプレグの品質を一定に保つことが可能となる。
【0073】
また、樹脂溜め108の底面形状のストレート領域の幅を多段的に短縮させることとしたので、樹脂溜め108の内部を流れる樹脂を整流させることができ、樹脂溜め108から供給される樹脂の流出ムラを防止することができる。これにより、スクレーパー110による樹脂の最終整形前においても、オイリングローラー106上の樹脂厚みを一定に保つことができるので、スクレーパー110において確実に樹脂厚を整形することができ、トウプリプレグのRc値のバラツキを抑えることが可能となる。
【0074】
なお本実施の形態1においては、第2の重量測定器111によって、原糸の走行経路から滴下した樹脂の重量を測定するものとしているが、必要に応じて複数(n個)の重量測定器により、トウプリプレグ製造装置より滴下する樹脂の重量を測定してもよい。
【0075】
例えば、オイリングローラー106から巻取りボビン112までのトウプリプレグの走行経路に重量測定器を設置し、オイリングローラー106以降の経路間で滴下する樹脂重量を測定して制御部220へ出力してもよい。この場合は、追加した重量測定器に載置した受皿の現在重量と初期重量との差分値を、上述した式1において求めた樹脂塗布重量よりさらに減算することにより、オイリングローラー回転数制御において用いる樹脂塗布重量Cとすることができる。かかる構成によれば、より精度の高いオイリングローラー回転数制御を行うことが可能となる。