(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水平可動部は、X,Y方向の変位量を測定可能な水平変位測定部を備え、前記垂直可動部は、Z方向の変位量を測定可能な垂直変位測定部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車体フローティング装置。
前記水平可動部は、リニアガイドによりX,Y方向に可動自在とし、前記垂直可動部は、電動シリンダによりZ方向に可動自在としたことを特徴とする請求項1または2に記載の車体フローティング装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の技術によれば、完成体である自動車の車体のみならず、ホワイトボディーに対しても適用できる点で優れている。
【0008】
しかしながら、修正機上で車体を水平となるように調整するには、車体下部のロッカーパネルに繋がる4箇所のジャッキアップポイント各々にジャッキを設置し、複数人で長時間の調整作業を行なわなければならず非常に煩雑で効率の悪い作業となっていた。
【0009】
また、車体は、左右前輪側の一方を除いた3箇所が修正機に支持されているため、左右前輪側の一方に対してZ方向の負荷を付与しても、支持された3箇所の変位量は得られないため車体全体の捻じれ剛性を精緻に測定することはできなかった。
【0010】
しかも、車体が修正機に支持された状態で負荷を与えても、各測定箇所XYZの3次元で測定できていないため、精緻な測定・評価・解析ができなかった。
【0011】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、自動車等の車体に対して各種試験を行なうために車体を疑似的に浮かすことができ、車体全体を対象とした試験結果(荷重と座標の連続データ)を得ることができる車体フローティング装置、及び車体フローティング装置を備えた車体剛性試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上のような目的を達成するために、本発明は以下のようなものを提供する。
【0013】
請求項1に係る発明では、車体に対して各種試験を行なうために、車体底部の所定箇所に複数設置して車体を疑似的に浮かす車体フローティング装置であって、車体載置部と、前記車体載置部を少なくともXYZ3次元座標系においてX,Y方向に可動自在とする水平可動部と、前記車体載置部をZ方向に可動自在とする垂直可動部と、前記所定箇所の車体荷重を測定可能な荷重測定部と、を備えたことを特徴とする車体フローティング装置を提供せんとする。
【0014】
請求項2に係る発明では、前記水平可動部は、X,Y方向の変位量を測定可能な水平変位測定部を備え、前記垂直可動部は、Z方向の変位量を測定可能な垂直変位測定部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車体フローティング装置を提供せんとする。
【0015】
請求項3に係る発明では、前記水平可動部は、リニアガイドによりX,Y方向に可動自在とし、前記垂直可動部は、電動シリンダによりZ方向に可動自在としたことを特徴とする請求項1または2に記載の車体フローティング装置を提供せんとする。
【0016】
請求項4に係る発明では、前記車体フローティング装置は自動計算機を備え、前記自動計算機と接続され、前記自動計算機は、前記車体に強制的な負荷が付与されないときは、複数の前記車体フローティング装置が載置する前記車体底部の各箇所を同一面で、しかも、水平面に位置するように複数の前記車体フローティング装置の各前記垂直可動部を自動制御するように構成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車体フローティング装置を提供せんとする。
【0017】
請求項5に係る発明では、請求項4に記載の前記車体フローティング装置と、前記車体にZ方向の負荷を付与する負荷発生機と、を備え、前記負荷発生機は、前記車体に接続自在の車体接続部と、負荷としての荷重を測定可能な負荷測定部と、Z方向に可動する垂直負荷付勢部と、Z方向の変位量を測定可能な垂直負荷変位測定部と、で構成し、前記自動計算機は、前記負荷発生機とも接続され、前記負荷発生機により前記車体に所定量の負荷を自動で付与し、更に
、前記車体を載置する前記車体フローティング装置の前記荷重測定部で測定された荷重が全体として相殺されるように前記垂直可動部により前記車体載置部のZ方向の位置が自動制御されるように構成したことを特徴とする車体剛性試験装置を提供せんとする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明によれば、車体フローティング装置は、車体に対して各種試験を行なうために、車体底部の所定箇所に複数設置して車体を疑似的に浮かす車体フローティング装置であって、車体載置部と、車体載置部を少なくともXYZ3次元座標系においてX,Y方向に可動自在とする水平可動部と、車体載置部をZ方向に可動自在とする垂直可動部と、所定箇所の車体荷重を測定可能な荷重測定部と、を備えたことにより、複数の車体フローティング装置を介して車体を載置でき、更に、車体の高さや傾きを任意に制御でき、しかも、各車体フローティング装置が受ける車体荷重に応じて各車体フローティング装置の高さを制御できるので、車体を疑似的に浮かすことができる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、水平可動部は、X,Y方向の変位量を測定可能な水平変位測定部を備え、垂直可動部は、Z方向の変位量を測定可能な垂直変位測定部を備えたことにより、車体に対する各種試験において各車体フローティング装置が位置する各車体載置部の変位を得ることができるので、例えば、車体剛性試験における車体の捻じれ量等を具体的な数値として精度よく算出することができる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、水平可動部は、リニアガイドによりX,Y方向に可動自在とし、垂直可動部は、電動シリンダ等によりZ方向に可動自在としたことにより、例えば、車体剛性試験において変位量が少ないX,Y方向についてはリニアガイドを用いることで安価に構成でき、しかも、実質的に車体を支え、重力方向でもあり変位量も多いZ方向については電動シリンダにより最適な高さへと精度よく移動させることができ、試験精度を向上させることができる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、車体フローティング装置は自動計算機を備え、自動計算機と接続され、自動計算機は、車体に強制的な負荷が付与されないときは、複数の車体フローティング装置が載置する車体底部の各箇所を同一面で、しかも、水平面に位置するように複数の車体フローティング装置の各垂直可動部を自動制御するように構成したことにより、車体に対する各種試験前に、車体を短時間で容易に水平状態にセットすることができるので、各種試験の作業性を大幅に向上させることができる。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、請求項4に記載の車体フローティング装置と、車体にZ方向の負荷を付与する負荷発生機と、を備え、負荷発生機は、車体に接続自在の車体接続部と、負荷としての荷重を測定可能な負荷測定部と、Z方向に可動する垂直負荷付勢部と、Z方向の変位量を測定可能な垂直負荷変位測定部と、で構成し、自動計算機は、負荷発生機とも接続され、負荷発生機により車体に所定量の負荷を自動で付与し、更に
、車体を載置する車体フローティング装置の荷重測定部で測定された荷重が全体として相殺されるように垂直可動部により車体載置部のZ方向の位置が自動制御されるように構成したことにより、各車体フローティング装置により疑似的に浮いた車体は、捻じれに逆らうことなく捻じれた状態をそのまま現出させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態に係る車体フローティング装置の要旨は、車体に対して各種試験を行なうために、車体底部の所定箇所に複数設置して車体を疑似的に浮かす車体フローティング装置であって、車体載置部と、車体載置部を少なくともXYZ3次元座標系においてX,Y方向に可動自在とする水平可動部と、車体載置部をZ方向に可動自在とする垂直可動部と、所定箇所の車体荷重を測定可能な荷重測定部と、を備えたことを特徴とする。すなわち、自動車等の車体に対して各種試験を行なうために車体を疑似的に浮かすことができ、車体全体を対象とした試験結果(荷重と座標の連続データ)を得ることができる車体フローティング装置の提供、及び車体フローティング装置を備えた車体剛性試験装置の提供を図ろうとするものである。
【0025】
以下、本発明に係る車体フローティング装置、及び車体フローティング装置を備えた車体剛性試験装置について図面を参照しながら説明する。また、本説明中において左右同一又は左右対称の構造や部品については、原則として同一の符号を付し、左右何れか一方のみを説明して、他方については説明を適宜省略する。
【0026】
なお、本説明中におけるXYZ3次元座標系においてX方向とY方向とは、略水平方向である同一平面内において互いに直交する各々の方向を意味し、Z方向とは、X−Y平面に直交する方向を意味している。
【0027】
[車体フローティング装置の実施形態]
まず、本発明の実施形態に係る車体フローティング装置1は、
図1〜
図4に示すように、車体Cに対して各種試験を行なうために、車体底部fの所定箇所に複数設置して車体Cを疑似的に浮かす装置であって、車体載置部2と、車体載置部2を少なくともXYZ3次元座標系においてX,Y方向に可動自在とする水平可動部10と、車体載置部2をZ方向に可動自在とする垂直可動部50と、所定箇所の車体荷重を測定可能な荷重測定部60と、を備えている。
【0028】
また、水平可動部10は、X,Y方向の変位量を測定可能な水平変位測定部11を備え、垂直可動部50は、Z方向の変位量を測定可能な垂直変位測定部51を備えている。
【0029】
更に、水平可動部10は、リニアガイド19,19yによりX,Y方向に可動自在とし、垂直可動部50は、電動シリンダ52によりZ方向に可動自在としている。
【0030】
このように車体フローティング装置1を構成することで、複数の車体フローティング装置1により車体Cを保持して任意の角度に車体Cを可動でき、しかも、各荷重測定部60で測定された荷重に応じて各車体フローティング装置1のZ方向の高さを可変できるので、車体Cに負荷を与えた際に車体Cに生じる歪みを荷重の変化として検出しつつ増減した荷重を全体として相殺するようにZ方向の高さを可変することで車体Cの捻じれを現出させることができる。
【0031】
更に、現出したX,Y,Z方向の車体Cの捻じれを水平変位測定部11と垂直変位測定部51とで得ることができるので、各種試験における車体Cの挙動を数値として正確に算出することが可能となる。
【0032】
つまり、本発明の実施形態に係る車体フローティング装置1では、車体Cを疑似的に浮かすことができ、車体Cに対する各種試験に幅広く用いることができる。
【0033】
以下、各部の具体的な構成について図面を用いて詳述する。
【0034】
本実施形態に係る車体フローティング装置1は、
図2〜
図4に示すように、上部に車体載置部2を配設し、その下方に車体載置部2と連設する水平可動部10を配設し、更にその下方に水平可動部10と連設する垂直可動部50を配設してこれらを一体に構成している。
【0035】
すなわち、車体載置部2と水平可動部10は、垂直可動部50により昇降自在に形成されている。なお、本実施形態ではこのような配置構成としているが、これに限定されるものではなく、例えば、水平可動部10を垂直可動部50の下方に配設する等、本発明の要旨の範囲内において種々の変形・変更が可能である。
【0036】
また、本実施形態に係る車体フローティング装置1は、
図3に示すように、垂直可動部50のピストンロッド53の軸線58上に車体載置部2と水平可動部10の中心g1,g2,g3が位置するように構成している。
【0037】
車体載置部2は、両端及び上方開口の断面視略V字状の溝で形成されたロッカー挿入溝4を上部に有する矩形ブロック状に形成している。このように、ロッカー挿入溝4を断面視略V字状に形成することで、車体底部fに垂設する板状のロッカー(図示せず)が案内され、ロッカー挿入溝4へのロッカーの挿入が容易となる。また、ロッカー挿入溝4の溝深さはロッカーの下端部がロッカー挿入溝4の底部5に到達しない程度に形成している。従って、車体底部fと当接して車体Cを支えるのは、ロッカー挿入溝4の上側が開口する車体載置部2の上面6となる。
【0038】
車体載置部2の材質は、車体底部fとの密着性を向上させ、車体Cに負荷が付与された際に車体載置部2の上面6で滑ることがないように硬質ゴム材等の可撓性材料を用いている。
【0039】
また、車体載置部2は、水平可動部10と連結するための矩形板状の第一連結プレート8とボルトを介して連結している。第一連結プレート8の上面の中央部に、車体載置部2が固定されている。
【0040】
なお、第一連結プレート8は、車体載置部2と水平可動部10とを連結するものであり、第一連結プレート8を介さずに車体載置部2を水平可動部10に直接連結してもよい。
【0041】
水平可動部10は、上部に配設したX方向可動部17と、下部に配設したY方向可動部43とで構成しており、いずれの可動部17,43もリニアガイド19,19yにより各方向に摺動する。
【0042】
なお、リニアガイド19,19yは、レール20,20yと、レール20,20y上を移動自在なスライダ21,21yとで構成され、レール20,20yに当接しながらスライダ21,21y内部を転動する複数のボールベアリングを備えたものである。
【0043】
また、水平可動部10は無負荷状態において車体載置部2が常に定位置に復帰するように構成しており、本実施形態ではバネの付勢力によりこれを実現している。
【0044】
X方向可動部17は、
図3、
図5(a)、
図6(a)に示すように、矩形板状の第二連結プレート41上において、リニアガイド部18と連結ステー部28と付勢部31とで構成している。リニアガイド部18は、互いに平行に配された一対のリニアガイド19,19と各リニアガイド19,19のスライダ21,21を互いに連結する連結ガイド24とで構成している。連結ステー部28は、スライダ21のスライド方向に互いに対向する略矩形板状の一対の連結ステー29,29で構成している。また、付勢部31は、一対のガイド軸32,32と一対の圧縮バネ36,36とで構成している。
【0045】
具体的には、X方向可動部17は、一対のリニアガイド19,19と一対の連結ステー29,29を各々対峙させ、各端部同士を連結して平面視矩形枠状に形成し、各スライダ21,21の内側壁22間に平面視H字状の連結ガイド24を介設している。連結ガイド24は両端側部に取付けプレート25,25を形成し、取付けプレート25と直交するセンタリングプレート26を両取付けプレート25,25の中央部間に形成している。
【0046】
また、連結ガイド24により一体となった2つのスライダ21,21は、その上部に連設する第一連結プレート8とボルトにより連結される。
【0047】
センタリングプレート26の中央部には、リニアガイド19のガイド方向にガイド軸挿通孔27を貫設している。ガイド軸挿通孔27は、ガイド軸32の外径よりも大きな内径でガイド軸32が挿通自在となるように穿設している。また、ガイド軸32の軸先端33がガイド軸挿通孔27に向かうように、ガイド軸32をリニアガイド19と平行として連結ステー29の内周壁30に突設している。
【0048】
すなわち、一対のガイド軸32,32は、リニアガイド19,19と連結ステー29,29とでなす矩形枠内において軸先端33,33が近接対峙し、しかも、軸先端33がガイド軸挿通孔27の両開口から内部に挿通された状態で近接対峙している。
【0049】
ガイド軸32の後端部35にはガイド軸32と直交する板状のフランジ34を有し、該フランジ34を介して連結ステー29と連結している。また、ガイド軸32には圧縮バネ36と円盤状のバネストッパ37を挿通し、軸先端33に螺設した雌ネジ(図示せず)にナット39を螺着することでフランジ34とバネストッパ37との間に圧縮バネ36を付勢状態で取り付けている。
【0050】
バネストッパ37の外径は圧縮バネ36の外径、及びガイド軸挿通孔27の内径よりも大きく形成しており、圧縮バネ36がフランジ34とバネストッパ37との間で安定し、しかも、連結ガイド24を圧縮バネ36の付勢力に抗して移動させることができるように構成している。
【0051】
このように、圧縮バネ36を有するガイド軸32を対峙して配設した付勢部31は、バネストッパ37がセンタリングプレート26を挟持する付勢力、すなわち、水平可動部10の略中央部において連結ガイド24と連結するスライダ21と連設する車体載置部2をX方向可動部17の中心g2に位置させる力となり、連結ガイド24に他の負荷が付与されない限り車体載置部2を定位置(中心g2)に留まらせることができる。
【0052】
また、
図6(b)に示すように、車体載置部2のX方向への負荷はX方向への変位となり、センタリングプレート26の一方の側面が一方のバネストッパ37を介して一方の圧縮バネ36を圧縮させながら変位する。
【0053】
以上、説明した車体載置部2を定位置に復帰可能とする機構はバネに限定されず、また、リニアガイドに限定されるものではなく、例えば、X方向やY方向への可動を上下プレートの間に複数のボールベアリングを配したり、電動シリンダ等により行い、同様の機能を発揮するように構成してもよい。
【0054】
なお、リニアガイドの替わりに電動シリンダを用いる場合、電動シリンダと一体となったエンコーダによるパルス制御が可能となるので位置制御が自在となる。しかも、電動シリンダにロードセルを付加することで荷重制御も自在となる。
【0055】
X方向の変位量は、
図2、
図3に示すように、水平変位測定部11として精密変位計である反射型のレーザセンサ11により測定自在としている。具体的には、一方の連結ステー29を伸延して延長片12を形成し、延長片12側のスライダ21の外側面23に延長片12の内測定面13に向けて照射自在としたレーザセンサ11を貼着している。また、レーザセンサ11の入出力信号等を伝送するセンサ配線14はコンピュータ70と接続される。
【0056】
このように構成されたレーザセンサ11は、
図6(a)に示すように、照射光Xを延長片12の内測定面13に向けて照射し、反射光Wを受光することで戻り時間を計測して換算することでX方向の距離(変位量)を測定することができる。従って、
図6(b)に示すように、X方向可動部17が右側に移動した場合、レーザセンサ11から照射された照射光X´を反射光W´として受光することでX方向可動部17の移動量(変位量)を測定することができる。
【0057】
なお、本実施形態では水平変位測定部11をレーザセンサで構成しているが、これに限定されるものではなく、精密変位計であるエンコーダを用いた接触型のセンサやその他の方式の測定機器であってもよく、また、メジャーを貼着して目視による変位量の測定を行うようにしてもよい。なお、水平変位測定部11は、後述するY方向の変位量の測定においても同様に様々な方法を採用することができる。
【0058】
このように構成されたX方向可動部17は、Y方向可動部43と連結するための矩形板状の第二連結プレート41とボルトを介して連結している。
【0059】
なお、第二連結プレート41は、X方向可動部17とY方向可動部43とを連結するものであり、第二連結プレート41を介さずにX方向可動部17をY方向可動部43に直接連結してもよい。また、X方向可動部17とY方向可動部43の上下の配置は逆であってもよい。
【0060】
Y方向可動部43は、
図5(b)に示すように、X方向可動部17と同様の構成であり、リニアガイド19の進行方向(ガイド方向)をX方向可動部17における同方向に対してX−Y平面において直角にずらしたものであるため説明を省略するが、図中における符号についてはX方向可動部17の各部の符号の後に「y」を付して識別するものとする。
【0061】
従って、Y方向の変位量においても、
図2、
図3に示すように、水平変位測定部11yとして反射型のレーザセンサ11yにより測定自在とし、延長片12y側のスライダ21yの外側面23yに延長片12yの内測定面13yに向けて照射自在としたレーザセンサ11yを貼着している。また、レーザセンサ11の入出力信号等を伝送するセンサ配線14yはコンピュータ70と接続される。
【0062】
Y方向可動部43は、
図3、
図4に示すように、矩形板状の第三連結プレート45を介して垂直可動部50と連設している。第三連結プレート45は、その上面においてY方向可動部43とボルトにより連結し、下面において垂直可動部50とボルトにより連結している。
【0063】
垂直可動部50は、Z方向に可動自在でZ方向の変位量を測定可能な垂直変位測定部51を備えた電動シリンダ52で構成している。
【0064】
電動シリンダ52は、略J字状に形成しており、垂直方向の長尺部分にはボールネジ(56)により昇降するピストンロッド53を内包し、垂直方向の短尺部分には軸線方向を鉛直方向としたサーボモータ(54)を配設し、これらボールネジ(56)とサーボモータ(54)を下部側のケース内でタイミングベルト(55)を介して連動連設している。すなわち、電動シリンダ52は、サーボモータ(54)の動力をタイミングベルト(55)を介してボールネジ(56)に伝達し、ボールネジ(56)の回転運動によりピストンロッド53が上下する、所謂サーボシリンダを構成している。
【0065】
サーボモータ(54)にはエンコーダが内蔵されているため、ピストンロッド53の突出量(変位量)をZ方向の変位量として入・出力自在となっており、これを垂直変位測定部51としている。
【0066】
また、本実施形態に係る垂直可動部50では、ピストンロッド53の先端に荷重測定部60としての円柱状のロードセル61を装着している。ロードセル61の着力点をなす上方に突出したロードボタン62には雄ネジが螺刻されており、第三連結プレート45と螺着固定されている。
【0067】
従って、ロードセル61は垂直可動部50よりも上方に位置する車体載置部2や水平可動部10、及び第一・第二・第三連結プレート8,41,45の合計重量を初期値とし、初期値からの増減を垂直荷重(負荷)として得ることができる。
【0068】
また、車体フローティング装置1の下底部には、
図2に示すように、垂直可動部50を定盤J上に載置固定するための矩形板状のフローティング用基台64を備えている。フローティング用基台64の四隅には、座繰りを形成したボルト挿通孔として平面視三角形状に穿設され中央部で連通する定盤固定用孔65を形成している。
【0069】
以上、説明したように本実施形態に係る車体フローティング装置1は構成している。従って、例えば、
図1に示すように、定盤J上においてジャッキアップポイントである車体底部fの4箇所に車体フローティング装置1を配置すれば、車体Cに対する各種試験を行なうことができる。
【0070】
すなわち、車体フローティング装置1は、車体載置部2と、車体載置部2を少なくともXYZ3次元座標系においてX,Y方向に可動自在とする水平可動部10と、車体載置部2をZ方向に可動自在とする垂直可動部50と、所定箇所の車体荷重を測定可能な荷重測定部60と、を備えたことにより、複数の車体フローティング装置1を介して車体Cを載置でき、更に、車体Cの高さや傾きを任意に制御でき、しかも、各車体フローティング装置1が受ける車体荷重に応じて各車体フローティング装置1の高さを制御できるので、車体Cを疑似的に左右対称方向に同期して捻じり、浮かすことができる。
【0071】
また、水平可動部10は、X,Y方向の変位量を測定可能な水平変位測定部11を備え、垂直可動部50は、Z方向の変位量を測定可能な垂直変位測定部51を備えたことにより、車体Cに対する各種試験において各車体フローティング装置1が位置する各車体載置部2の変位を得ることができるので、例えば、車体剛性試験における車体Cの捻じれ量等を具体的な数値として精度よく算出することができる。
【0072】
更に、水平可動部10は、リニアガイド19,19yによりX,Y方向に可動自在とし、垂直可動部50は、電動シリンダ52によりZ方向に可動自在としたことにより、例えば、車体剛性試験において変位量が少ないX,Y方向についてはリニアガイド19,19yを用いることで安価に構成でき、しかも、実質的に車体Cを支え、重力方向でもあり変位量も多いZ方向については電動シリンダ52により最適な高さへと精度よく移動させることができ、試験精度を向上させることができる。
【0073】
このように、実際に車体Cの高さや傾きを任意に制御して車体Cを疑似的に浮かすことができるようにするためには、
図7に示すように、車体フローティング装置1を自動計算機であるコンピュータ70と入出力自在に接続する必要がある。車体フローティング装置1と、車体フローティング装置1の装置本体に接続されたコンピュータ70とにより、車体フローティングシステムが構成されている。
【0074】
コンピュータ70には、車体フローティング装置1の水平変位測定部11をなすレーザセンサ11,11yと、垂直可動部50と、垂直変位測定部51をなす電動シリンダ52と、荷重測定部60をなすロードセル61とがセンサ配線14,14y、配線71〜74により接続されている。このような構成により、水平可動部10の位置データの取得や、電動シリンダ52のピストンロッド53の位置制御や昇降動作、車体底部fの各箇所の荷重データの取得と電動シリンダ52へのフィードバック等が可能となり、様々な制御を行なうことができる。
【0075】
このように、車体フローティング装置1はコンピュータ70を備え、コンピュータ70と接続され、コンピュータ70は、車体Cに強制的な負荷が付与されないときは、複数の車体フローティング装置1が載置する車体底部fの各箇所を同一面で、しかも、水平面に位置するように複数の車体フローティング装置1の各垂直可動部50を自動制御するように構成されている。つまり、車体Cに外部からの負荷が付与されていない状態において、コンピュータ70は、車体Cに対して4箇所に配置された車体フローティング装置1による車体Cの各支持位置のZ方向の位置が共通の位置となるように各垂直可動部50を制御する。このような構成により、車体Cに対する各種試験前に、車体Cを短時間で容易に水平状態にセットすることができるので、各種試験の作業性を大幅に向上させることができる。
【0076】
次に、上述した車体フローティング装置1を備えた車体剛性試験装置80の構成について説明する。
【0077】
[車体剛性試験装置]
本実施形態に係る車体剛性試験装置80は、
図8〜
図12に示すように、上述した車体フローティング装置1と、車体CにZ方向の負荷を付与する負荷発生機81とを備え、負荷発生機81は、車体Cに接続自在の車体接続部82と、負荷としての荷重を測定可能な負荷測定部92と、Z方向に可動する垂直負荷付勢部96と、Z方向の変位量を測定可能な垂直負荷変位測定部97と、で構成し、コンピュータ70は配線71〜74,110を介して、車体フローティング装置1と負荷発生機81に接続され、負荷発生機81により車体Cに所定量の負荷を自動で付与し、更に、負荷により生じた車体Cの捻じれが車体Cを載置する車体フローティング装置1の荷重測定部60で測定された荷重が全体として相殺されるように垂直可動部50により車体載置部2のZ方向の位置が自動制御されるように構成している。
【0078】
負荷発生機81の車体接続部82は、
図9、
図10に示すように、板状で角部が面取りされた略正三角形状の接続基準板83と3つのボルト84及びナット85とで構成している。接続基準板83は略正三角形状における角部近傍に各々ボルト挿通孔86を貫設しており、中央部において押圧棒89先端の雄ネジ部(図示せず)を突出させるための押圧棒取付孔87を貫設している。
【0079】
接続基準板83は、
図11に示すように、本来であればサスペンションの上端部が接続される車体Cのサスペンションタワー(サスペンション支持部)Sに下方側から接続している。接続基準板83に穿設されたボルト挿通孔86は、サスペンションタワーSの円形の開口部Shの周縁に穿設された3つのサスペンション取付孔hと連通連設するように形成しており、ボルト84とナット85により螺着固定される。
【0080】
車体接続部82の下方には、先端部(上端部)に雄ネジを螺刻し、後端部(下端部)に雌ネジ孔を形成した丸棒状の押圧棒89を配設している。車体接続部82の先端部の雄ネジ部は車体接続部82に形成された押圧棒取付孔87に下方から挿貫され、ナット90により車体接続部82と螺着固定される。
【0081】
押圧棒89の下方には、負荷測定部92としての円柱状のロードセル93を連設している。ロードセル93の着力点をなす上方に突出したロードボタン94には雄ネジが螺刻されており、押圧棒89の後端部に形成された雌ネジ孔に螺着して押圧棒89と一体となる。
【0082】
従って、ロードセル93は、上方に位置する車体接続部82や押圧棒89の合計重量を初期値とし、初期値からの増減を垂直荷重(負荷)として得ることができる。
【0083】
また、ロードセル93は下底部においてボルトにより垂直負荷付勢部96と連設している。
【0084】
垂直負荷付勢部96は、Z方向に可動自在でZ方向の変位量を測定可能な垂直負荷変位測定部97を備えた電動シリンダ
98で構成している。
【0085】
電動シリンダ
98は、略J字状に形成しており、垂直方向の長尺部分にはボールネジ(102)により昇降するピストンロッド99を内包し、垂直方向の短尺部分には軸線方向を鉛直方向としたサーボモータ(100)を配設し、これらボールネジ(102)とサーボモータ(100)を下部側のケース内でタイミングベルト(101)を介して連動連設している。すなわち、電動シリンダ
98は、サーボモータ(100)の動力をタイミングベルト(101)を介してボールネジ(102)に伝達し、ボールネジ(102)の回転運動によりピストンロッド99が上下する、所謂サーボシリンダを構成している。電動シリンダ
98のピストンロッド99は、ロードセル93を介して押圧棒89と同軸心配置されている。
【0086】
サーボモータ(100)にはエンコーダが内蔵されているため、ピストンロッド99の突出量(変位量)をZ方向の変位量として入・出力自在となっており、これを垂直負荷変位測定部97としている。
【0087】
また、負荷発生機81の下底部には、
図9に示すように、負荷発生機81を定盤J上に載置固定するための矩形板状の負荷用基台104を備えている。負荷用基台104の四隅には、座繰りを形成したボルト挿通孔が平面視三角形状に穿設され中央部で連通した定盤固定用孔105を形成している。
【0088】
以上、説明したように本実施形態に係る車体剛性試験装置80の負荷発生機81は構成している。従って、例えば、
図8、
図12に示すように、定盤J上においてジャッキアップポイントである車体底部fの4箇所に車体フローティング装置1を配置し、前輪側の一方のサスペンションタワーSに負荷発生機81を設置すれば、車体Cに対し前側左右を逆方向へ同期して負荷付勢し車体剛性試験を行なうことができる。
【0089】
具体的には、コンピュータ70に予め記録されたソフトウェアプログラムを稼働させて各種の試験用パラメータを入力し、車体剛性試験を開始することで負荷発生機81や各車体フローティング装置1を入・出力制御することができる。
【0090】
例えば、コンピュータ70から負荷発生機81に対して上方に向かう所定量の負荷を発生させる信号を電送させる。これにより負荷発生機81のピストンロッド99は上昇を開始し、ロードセル93の測定値が連続的にコンピュータ70に電送され、指示された所定量の負荷がコンピュータ70に電送されるとピストンロッド99の上昇が停止する。この場合、電動シリンダ98が内蔵する垂直負荷変位測定部97の信号がコンピュータ70に電送されることでピストンロッド99の上方への変位量、すなわち、サスペンションタワーSの変位量が算出される。
【0091】
従って、サスペンションタワーSには意図する正確な負荷が付与され、しかも、負荷による変位量を正確に得ることができる。
【0092】
また、サスペンションタワーSを上方へ変位させる負荷に伴い車体Cは捻じれようとするため、車体Cを保持する4つの車体フローティング装置1にもZ方向の負荷に変化が生じる。例えば、
図8に示すように、負荷発生機81と対角に位置する車体フローティング装置1には車体剛性試験前に比して負荷が増加し、逆に、他の3つの車体フローティング装置1は車体剛性試験前に比して負荷が軽減される。
【0093】
この場合、各車体フローティング装置1のロードセル61の測定値は連続的にコンピュータ70に電送され、各車体フローティング装置1の各電動シリンダ52には負荷発生機81による負荷が付与される前の荷重に戻るよう各ピストンロッド53を上下動させる信号が電送される。
【0094】
すなわち、負荷発生機81により生じた車体Cの捻じれが車体Cを載置する車体フローティング装置1の荷重測定部(ロードセル)60で測定された荷重が全体として相殺されるように垂直可動部50(電動シリンダ52)により車体載置部2のZ方向の位置が自動制御されるように構成している。
【0095】
また、車体フローティング装置1の電動シリンダ52が内蔵する垂直変位測定部51の信号がコンピュータ70に電送されることでピストンロッド53の上下方への変位量、すなわち、車体底部fのロッカー部分の変位量が算出される。
【0096】
従って、車体CのZ方向の捻じれ量を正確に得ることができる。しかも、車体フローティング装置1の水平可動部10が備える水平変位測定部11のレーザセンサ11,11yによる測定値がコンピュータ70に電送されることで、4箇所のロッカーのX,Y方向への変位量も得ることができる。
【0097】
なお、本実施形態においては水平変位測定部11を精密変位計である反射型のレーザセンサ11,11yで構成しているが、その他の精密変位計を用いたり、X・Y方向可動部17,43を電動シリンダで構成したり、目盛りが付されたX・Y方向用メジャーで構成してもよい。
【0098】
このように、本実施形態に係る車体剛性試験装置80では、定盤J上の車体フローティング装置1に車体Cを載置させ、負荷発生機81を接続した後は、自動的に車体Cを水平状態に保持し、負荷発生機81が車体Cに負荷を与え、負荷に応じた車体Cの捻じれが現出するように車体フローティング装置1が可動するよう構成している。
【0099】
また、負荷の値や各変位量を自動的に取得できるので、車体剛性試験における解析精度を飛躍的に向上させることができる。
【0100】
なお、本実施形態では前輪側の一方のサスペンションタワーSに負荷発生機81を設置しているが、他方側のサスペンションタワーにも別途の負荷発生機を設置し、互いに上下逆方向の負荷を与えた車体剛性試験を行なうこともでき、更に、後輪側のサスペンションタワーに負荷発生機を設置する等、様々な組み合わせで車体剛性試験を行なうことができる。
【0101】
以上のように、本実施形態に係る車体剛性試験装置80は、車体フローティング装置1と、車体CにZ方向の負荷を付与する負荷発生機81とを備え、負荷発生機81は、車体Cに接続自在の車体接続部82と、負荷としての荷重を測定可能な負荷測定部92と、Z方向に可動する垂直負荷付勢部96と、Z方向の変位量を測定可能な垂直負荷変位測定部97と、で構成し、コンピュータ70は、負荷発生機81とも接続され、負荷発生機81により車体Cに所定量の負荷を自動で付与し、更に、負荷により生じた車体Cの捻じれが車体Cを載置する車体フローティング装置1の荷重測定部60で測定された荷重が相殺されるように垂直可動部50により車体載置部2のZ方向の位置が自動制御されるように構成したことにより、各車体フローティング装置1により疑似的に浮いた車体Cは、捻じれに逆らうことなく捻じれた状態をそのまま現出させることができる。
【0102】
なお、本実施形態では車体フローティング装置1を車体剛性試験に用いた実施形態を示しているが、車体フローティング装置1の用途はこれに限定されるものでないことは言うまでもない。
【0103】
また、本実施形態に係る車体フローティング装置1や車体剛性試験装置80は、完成体である自動車やホワイトボディーのいずれにも適用できる装置である。
【0104】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。