(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フランジ部の厚さが基部側から先端側に向かって漸減せしめられており、該フランジ部の先端側部分が、前記膜振動部とされている請求項1に記載の車両用樹脂製外装品。
前記板状本体の周囲に他の車両用部品が配置されており、該板状本体の該他の車両用部品との距離が大きい部位に形成された前記貫通孔の開口面積が、該板状本体の該他の車両用部品との距離が小さい部位に形成された前記貫通孔の開口面積よりも大きくされている請求項1又は請求項2に記載の車両用樹脂製外装品。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の代表的な実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0016】
先ず、
図1及び
図2には、本発明に従う構造を有する車両用樹脂製外装品の一実施形態としての自動車のフェンダーライナーが、それぞれ、平面形態又は断面形態において示されている。ここでは、かかるフェンダーライナー10の全体が、ポリエチレン等の樹脂材料を用いて形成されており、車両の走行時に生ずる風圧等によって変形しない十分な剛性と、タイヤが跳ね上げる小石等の衝突により損傷しない十分な強度とを備えて構成されている。
【0017】
より詳細には、フェンダーライナー10は、側面視で略円弧状の湾曲板形状を呈する、板状本体としてのホイールアーチ部12を有している。ホイールアーチ部12の長さ方向(
図1及び
図2における左右方向)両端部には取付片部14、14が一体的に形成されている。なお、ホイールアーチ部12及び取付片部14、14には、フェンダーライナー10を車両へ取り付ける際に、ボルトやスクリュグロメット等の締結具を挿通するための挿通孔16が複数個形成されている。
【0018】
ホイールアーチ部12の長さ方向の一方側の略半分の部分、ここでは、後述する車両への取付状態で車両後方側となる略半分の部分には、ホイールアーチ部12を厚さ方向(板厚方向)に貫通する多数の貫通孔18(小径孔18a及び大径孔18b)が形成されている。それら多数の貫通孔18は、何れも円孔状を呈し、それぞれが互いにホイールアーチ部12の長さ方向と幅方向とに間隔を隔てて、縦横に並んで位置するように配置されている。
【0019】
そのようにフェンダーライナー10のホイールアーチ部12に形成された多数の貫通孔18は、孔径(開口面積)が異なる二種類の貫通孔である小径孔18a及び大径孔18bから構成されている。即ち、
図3に示されるように、多数の貫通孔18のうち大径孔18bの孔径:d2が、小径孔18aの孔径:d1よりも大きくされているのである。
【0020】
そして、フェンダーライナー10においては、
図1及び
図2に明らかにされているように、ホイールアーチ部12の貫通孔18が形成されている部分において、小径孔18aが、ホイールアーチ部12の長さ方向両側部分(以下、小径孔形成部分20、20とも称する)に、それぞれ形成されている一方、大径孔18bが、そのような小径孔形成部分20、20に挟まれた中間部分(以下、大径孔形成部分22とも称する)に形成されている。
【0021】
また、
図2及び
図3に示されるように、フェンダーライナー10においては、各貫通孔18(18a及び18b)の周縁部から、それぞれ、一体的に所定高さで立ち上がる略円筒形状のフランジ部24が形成されているのである。それらフランジ部24の内径は、それぞれ、対応する貫通孔18a、18bの内径と略同一とされている。
【0022】
さらに、
図3に詳細に示されるように、そのようなフランジ部24は、その厚さが、基部側(ホイールアーチ部12側)から先端側に向かって漸減せしめられている。これにより、フランジ部24の先端側部分に、ホイールアーチ部12の板厚よりも薄い厚さの膜振動部26が形成されているのである。かかる膜振動部26は、薄肉で、且つ先端部が自由端とされていることにより、音圧によって振動可能に構成されている。
【0023】
なお、フランジ部24の基部側部分は、膜振動部26の厚さよりも厚さの厚い厚肉部28とされている。かかる厚肉部28は、膜振動部26と比較して剛性が高くされており、音圧によって振動し難くされている。
【0024】
そして、かくの如き構造を有する本実施形態のフェンダーライナー10は、
図4に概略的に示されるようにして、車両前部に配置されるようになっている。ここでは、フェンダーライナー10は、多数の貫通孔18a、18bが形成されたホイールアーチ部12が、車両30のホイールハウス内においてタイヤ32を上側から覆うように配置された状態で、車体に装着されている。そのようなフェンダーライナー10の車両30への取付状態においては、ホイールアーチ部12に形成された貫通孔18a、18bが、車体の外側(路面側)に露出せしめられていると共に、フランジ部24が、車体の内側に向かって延出せしめられている。
【0025】
また、フェンダーライナー10のホイールアーチ部12の周囲には、他の車両用部品が配置されており、
図4には、そのような他の車両用部品として、フェンダーライナー10の上方に配設される金属製のエプロン34、及びフェンダーライナー10の後方に配設される金属製のフェンダープロテクタ36が、それぞれ概略的に示されている。それらエプロン34及びフェンダープロテクタ36は、フェンダーライナー10と所定の距離を隔てて配置されている。これによって、フェンダーライナー10(ホイールアーチ部12)とエプロン34及びフェンダープロテクタ36との間には、空間(背後空気層38)が形成されている。
【0026】
ここで、車両30においては、各車両用部品の形状や配置といった設計要因等により、ホイールアーチ部12とエプロン34及びフェンダープロテクタ36との間の距離(背後空気層38の大きさ)が、部位によって異なるものとなっている。本実施形態においては、
図4に示されるように、ホイールアーチ部12の大径孔形成部分22とエプロン34との間の距離:S2が、ホイールアーチ部12の車両前方側の小径孔形成部分20とエプロン34との間の距離:S1、及びホイールアーチ部12の車両後方側の小径孔形成部分20とフェンダープロテクタ36との間の距離:S3よりも大きくなっている。換言すれば、ホイールアーチ部12の大径孔形成部分22とエプロン34との間に形成される背後空気層38の大きさが、ホイールアーチ部12の小径孔形成部分20、20とエプロン34又はフェンダープロテクタ36との間に形成される背後空気層38の大きさよりも大きくなっているのである。
【0027】
このようにして車両30に取り付けられたフェンダーライナー10に対しては、
図4に細線矢印にて模式的に示されているように、車外騒音としての、車両30の走行時にタイヤ32と路面との接触によって発生する音(ロードノイズ)(N1)や、路面で反射されるエンジン音(N2)等が入力されることとなる。そして、そのような音に対して、フェンダーライナー10における種々の吸音作用が発揮されることとなる。なお、以下において、「音」とは、「音波」や「振動せしめられた空気」をも含む意味において用いることとする。
【0028】
先ず、フェンダーライナー10に入力された音が貫通孔18a、18bを通過する際に、振動せしめられた空気と貫通孔18a、18bの内周面との摩擦等により音のエネルギの一部が熱エネルギとして消費されることによって、音のエネルギが低減されることとなる。なお、貫通孔18a、18b内で空気の流速が上がることで、摩擦により消費されるエネルギが増大することや、貫通孔18a、18bを通過した後に空気の流れが瞬間的に広がり渦流が発生することで、瞬間的にエネルギが損失せしめられること等によっても、有利に音のエネルギが低減される。
【0029】
また、多数の貫通孔18a、18bが形成されたホイールアーチ部12と、かかるホイールアーチ部12とエプロン34及びフェンダープロテクタ36との間に形成された背後空気層38とを組み合わせて構成される吸音構造による吸音作用も発揮される。即ち、フェンダーライナー10に対して音が入力されると、貫通孔18a、18bの内部の空気が、背後空気層38のバネ的作用によって何度も貫通孔18a、18bの内部を往復せしめられることとなり、以て、貫通孔18a、18bの内周面との摩擦が発生し、音のエネルギが、熱エネルギに変換されて低減され得るようになっているのである。
【0030】
さらに、本実施形態のフェンダーライナー10においては、フェンダーライナー10に入力された音が貫通孔18a、18bを通ってフランジ部24を通過する際に、膜振動部26がその音圧により振動せしめられることとなるのである。そして、そのような膜振動部26の振動によって、音のエネルギが、運動エネルギとして変換されると共に、膜振動部26の内部摩擦による熱エネルギとしても消費されて、低減され得るようになっているのである。
【0031】
以上の説明から明らかなように、本実施形態では、貫通孔18(18a、18b)の周縁部から一体的に所定高さで立ち上がるフランジ部24が形成されており、その一部に、音圧により振動せしめられる膜振動部26が形成されているところから、そのような膜振動部26の振動による吸音作用によって、車外騒音の原因となる音が有利に吸収されることとなる。即ち、上述せる如き貫通孔18a、18bによる吸音作用に加え、膜振動部26による吸音作用が発揮されることとなり、それらが組み合わされることによって、車外騒音が有利に低減されることとなるのである。
【0032】
しかも、フェンダーライナー10にあっては、貫通孔18a、18bが板状本体としてのホイールアーチ部12に直接形成されていると共に、膜振動部26を備えるフランジ部24が貫通孔18a、18bの周縁部から一体的に形成されている、即ち、フランジ部24が板状本体としてのホイールアーチ部12に一体的に形成されているところから、有利な吸音作用を発揮するフェンダーライナー10が、部品点数を増加させることなく、簡略な構造において構成されているのである。
【0033】
なお、このようなフェンダーライナー10における、貫通孔18a、18bの吸音効果は、貫通孔18a、18bの孔径(開口面積)を調整することにより、吸音される音の周波数帯域を適宜に調整することが可能である。
【0034】
また、フェンダーライナー10は、全体が樹脂製であるところから、軽量で形状自由度が高く、材料コストも安価であるという利点がある。また、樹脂材料は比較的柔軟性に優れるところから、音圧により振動する膜振動部26を容易に形成し、その吸音作用を効果的に発揮させることが可能になる。
【0035】
さらに、フェンダーライナー10にあっては、フランジ部24の厚さが基部側から先端側に向かって漸減せしめられており、かかるフランジ部24の先端側部分が、膜振動部26とされている。換言すれば、薄肉の膜振動部26が、フランジ部24の基部側部分に形成された厚肉部28を介して、ホイールアーチ部12に一体的に形成されている。そのため、フランジ部24が基部側において破損してしまうことや、膜振動部26がフェンダーライナー10から脱落してしまうようなことが、有利に防止される。
【0036】
また、従来から、板状本体の板厚を変えることで、吸音される音の周波数帯域を調整すること、特に、板状本体の板厚を厚くする、即ち、貫通孔の内周面の長さを長くすることで、吸音される音の周波数帯域が低周波数側に移行することが知られている。しかしながら、フェンダーライナー10において、板状本体としてのホイールアーチ部12の板厚を一様に厚くすると、フェンダーライナー10自体の重量増加や材料コストの増大を招くという問題を生じる。これに対し、本実施形態のフェンダーライナー10にあっては、フランジ部24の基部側部分を厚肉部28とすることで、実質的に、ホイールアーチ部12の板厚を大きくしたのと同様の効果を得ることが出来る。従って、このような厚肉部28の存在によって、
図3に示されるように、貫通孔18(18a、18b)の実質的な内周面の長さ:Lを、ホイールアーチ部12の板厚:tよりも長く構成することにより、吸音される音の周波数帯域を適宜に調整することが可能となるのである。
【0037】
ところで、本実施形態においては、上述せるように、フェンダーライナー10の車両30への取付状態で、多数の貫通孔18a、18bが形成されたホイールアーチ部12と、かかるホイールアーチ部12とエプロン34及びフェンダープロテクタ36との間に形成される背後空気層38とを組み合わせて構成される吸音構造による、吸音作用も発揮されるのである。
【0038】
ここで、従来から、そのように貫通孔が形成された板状部材と背後空気層とを組み合わせた吸音構造の吸音特性は、所定の周波数を中心(ピーク)とした山型の特性を示すことが知られている。そして、本発明者等が、一般的に、車両において吸音すべき音の周波数帯域の範囲、及び各車両用部品間において設定され得る距離(背後空気層の大きさ)の範囲内で、貫通孔の孔径(開口面積)及び背後空気層をそれぞれ変化させた場合の吸音特性の変化に着目した結果、貫通孔の開口面積を一定にして背後空気層を大きくすると、吸音のピークが低周波数側に移行すること、及び背後空気層の大きさを一定にして貫通孔の開口面積を大きくすると、吸音のピークが高周波数側に移行することが、見出されたのである。即ち、車両用樹脂製外装品において、所望の周波数帯域における吸音性能を有利に得るためには、背後空気層が大きくなる部位において、相対的に、貫通孔の開口面積を大きくすることが好ましいことが、明らかとなったのである。
【0039】
要するに、本実施形態においては、ホイールアーチ部12において、他の車両用部品であるエプロン34との距離が大きい部位(ここでは、大径孔形成部分22)に形成された貫通孔である大径孔18bの開口面積(孔径:d2)が、ホイールアーチ部12において、他の車両用部品であるエプロン34又はフェンダープロテクタ36との距離が小さい部位(ここでは、小径孔形成部分20、20)に形成された貫通孔である小径孔18aの開口面積(孔径:d1)よりも大きくされている。これにより、ホイールアーチ部12の大径孔形成部分22において、エプロン34との間の距離(背後空気層38)が大きくなることで低周波数側に移行しようとする吸音のピークを、貫通孔18bの孔径を相対的に大きくすることで高周波数側へと矯正し、以て、各貫通孔18a、18bにおける吸音のピークが所望の周波数から著しく外れてしまうことを阻止して、所望の周波数帯域における吸音性能を有利に維持することが可能となるのである。
【0040】
なお、フェンダーライナー10において、貫通孔18a、18bの孔径は、1mm〜2mm程度の範囲とされていることが、好ましい。これは、孔径が1mmよりも小さいと、乱反射による音の入射が減り、貫通孔18a、18bによる吸音作用が効果的に発揮され難くなったり、貫通孔18a、18bの形成工程(孔開け加工)や膜振動部26を備えるフランジ部24の形成工程が困難になる等の恐れがある一方、孔径が2mmを超えると、貫通孔18a、18bからの異物の侵入や、雪が貫通孔18a、18bの中に侵入して固着・堆積することにより着氷評価が満足出来なくなる等といった問題が生じるからである。
【0041】
以上、本発明の代表的な実施形態について詳述してきたが、それは、あくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。
【0042】
図5及び
図6には、本発明に従う構造を有する車両用樹脂製外装品の別の実施形態としての自動車のフロアカバーが、車両に取り付けられた状態で、部分断面形態又は断面形態において、それぞれ示されている。なお、それら
図5及び
図6に示されるフロアカバー40において、先の実施形態に係るフェンダーライナー10と対応する構造の部分には、同一の符号を付して、詳細な説明は省略することとする。
【0043】
フロアカバー40は、略平板形状を呈する板状本体としてのカバー本体部42を有しており、かかるカバー本体部42には多数の貫通孔18(後述する18c、18d、18e)が形成されている。そのようなフロアカバー40は、車両30の下部(床下)を覆うように配置され、各貫通孔18が車体外側に露出せしめられると共に、
図6に詳細に示されるように、各貫通孔18のそれぞれから車体内側に向かって、先端側部分が膜振動部26とされたフランジ部24が形成されている。
【0044】
このようなフロアカバー40には、
図5において細線矢印にて模式的に示されているように、車外騒音の原因となる音(N3)が入力されることとなる。これに対し、フロアカバー40においては、カバー本体部42に形成された多数の貫通孔18による吸音作用が発揮されると共に、フランジ部24の膜振動部26による吸音作用が発揮され、以て、車外騒音を有利に低減することが可能となるのである。
【0045】
また、
図5及び
図6に概略的に示されるように、フロアカバー40の上方(車両内側)には他の車両用部品としてフロアパネル44が配置されている。そのようなフロアパネル44は、略平板形状を呈するパネル本体部46を有しており、かかるパネル本体部46とフロアカバー40のカバー本体部42とが、向き合うようにして配置されている。
【0046】
ここで、より詳細には、
図6に示されるように、フロアカバー40のカバー本体部42には、車体の下方(床下)を流れる走行風の整流や、フロアカバー40自体の補強を目的として、凹凸形状(ビード形状)が形成されている。また、フロアパネル44にも、その強度やレイアウト上の要求等に対応するための凹凸形状が形成されている。これにより、フロアカバー40(カバー本体部42)とフロアパネル44(パネル本体部46)との間の距離、即ち、フロアカバー40とフロアパネル44との間に形成される背後空気層38の大きさが、部位によって異なるものとなっている。
【0047】
そして、フロアカバー40においては、カバー本体部42とフロアパネル44との間の距離:S4、S5、及びS6に対応するように、貫通孔18c、18d、及び18eの孔径が、それぞれ設定されているのである。具体的には、カバー本体部42とフロアパネル44との間の距離が、S4、S5、及びS6の順に大きくなっているのに対応して、貫通孔18cの孔径:d3、貫通孔18dの孔径:d4、及び貫通孔18eの孔径:d5が、その順で大きくされているのである。
【0048】
従って、本実施形態のフロアカバー40にあっては、背後空気層38の大きさの違いにより吸音のピークが所望の周波数から著しく外れてしまうことを阻止して、所望の周波数帯域における吸音性能を有利に維持することが可能となるのであり、以て、車外騒音を有利に低減することが可能となるのである。
【0049】
なお、本発明に従う構造を有する車両用樹脂製外装品としては、上述の如きフェンダーライナーやフロアカバーに限られるものではなく、例えば、本発明の構造は、エンジンアンダーカバーや車両後方側に配置されるリアフロアカバー等においても適用可能である。ところで、近年、主にパワーユニット系騒音の低減が進められてきた結果、相対的にタイヤと路面との接触部において生ずる騒音の低減が重要になってきている。かかる状況下、車外騒音の効果的な低減を図るため、本発明に従う構造を有する車両用樹脂製外装品は、特に、車両下部に配設されるフェンダーライナーやフロアカバーとして有利に用いられ得ることとなる。
【0050】
また、上述せる如きフェンダーライナー10やフロアカバー40は、例えば、ポリエチレン材料等の公知の樹脂材料を用いて押出成形された樹脂パネル(樹脂シート)に対して真空成形や圧空成形を行なうことや、そのような樹脂パネルを加熱して圧縮成形を行なうことによって、板状本体としてのホイールアーチ部12やカバー本体部42を形成した後、ピンによる孔開け加工を行なうこと等により貫通孔18及びフランジ部24を形成することで、容易に製造され得るものである。
【0051】
特に、ピンによる孔開け加工を実施した場合には、貫通孔18を形成すると共に、樹脂材料の伸びを利用して、厚さが基部側から先端側に向かって漸減せしめられてなる、先端側部分が膜振動部26とされたフランジ部24を、容易に形成することが出来る。また、このような製造方法の採用により、従来、見た目や他部品との関係で、後工程において除去されていたバリ形状を除去することなく、そのまま製品形状(フランジ部24)として利用することも可能となるのであり、車両用樹脂製外装品の製造コストを有利に削減することが出来るという利点もある。
【0052】
なお、車両用樹脂製外装品の製造方法としては、射出成形等の公知の手法を採用することも可能であり、板状本体と貫通孔とフランジ部とを同時に一体成形することも可能である。また、貫通孔18の形成手法としても、上述の如きピンを用いた孔開け加工に限られるものではなく、ドリルによる孔開け加工や、下孔を形成してからのバーリング加工等、公知の手法が何れも採用され得る。
【0053】
さらに、貫通孔18は、例示の如き円孔状のものに何等限られるものではなく、例えば、多角形の孔とされていてもよい。なお、貫通孔18を形成するための工具(ピンやドリル等)としては、円孔に対応したものの方がコストが安いという利点があり、孔開け加工自体も円孔の方が容易である。
【0054】
また、上記の実施形態においては、フランジ部24の厚さが先端側に向かって漸減せしめられており、かかるフランジ部24の一部(先端側部分)に膜振動部26が形成されていた。これに対し、
図7に示されるように、フランジ部24の全体を音圧により振動せしめられる厚さで形成して、フランジ部24の全部が膜振動部26となるように形成してもよい。
【0055】
さらに、車両用樹脂製外装品においては、全体が膜振動部26とされたフランジ部24と、一部(先端側部分)が膜振動部26とされた厚肉部28を有するフランジ部24とを混在させてもよい。例えば、孔径(開口面積)をそれ以上小さくすることが出来ない貫通孔18に対しては、厚肉部28を有するフランジ部24を設けて、貫通孔18の長さを実質的に延長することにより、背後空気層38との関係で高周波数側に移行しようとする吸音のピークを低周波数側に矯正すると共に、膜振動部26による吸音作用を発揮させる一方、適切な孔径(開口面積)を設定可能な貫通孔18に対しては、膜振動部26のみからなるフランジ部24を設けることにより、膜振動部26による吸音作用を発揮させ、以て、車両用樹脂製外装品全体として、所望の周波数帯域において有利な吸音性能を発揮させることが可能となるのである。
【0056】
また、本実施形態においては、貫通孔18(18aと18b、又は18cと18dと18e)の孔径(開口面積)を、背後空気層38の大きさに対応させて、二段階又は三段階と段階的に設定したが、このような態様に限らず、全ての貫通孔18の開口面積を略一定とすることも可能であるし、逆に、それら貫通孔18の開口面積を、背後空気層38の大きさに応じて、更に多くの段階で設定することも可能である。
【0057】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、そして、そのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。