(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水は、イオンクロマトグラフ法により、Naイオンが検出されると共にMgイオン及びCaイオンが検出されず、26℃における表面張力が、65mN/m以上であり、油性液体と混合して撹拌したときに乳化する性質を有する乳化性の水であって、
前記水流入口は、前記燃料タンク外に設けられて前記乳化性の水を保持する水タンクに連結された水供給配管に接続され、
前記燃料油は、ガソリンであることを特徴とする請求項1記載の内燃機関への燃料供給装置。
前記容器体の前記開口は、前記燃料油タンクの底面に接し、又は、前記底面の近傍に配置され、前記リターン路の前記出口側端部の径と同じかそれより大きな径を有していることを特徴とする請求項3記載の内燃機関への燃料供給装置。
前記燃料配管には、前記混合手段の下流に、前記混合手段で生成された前記混合燃料を混合して前記混合燃料の分散の度合いを向上させる第二の混合手段を備えることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の内燃機関への燃料供給装置。
前記送出工程において、余剰の前記混合燃料を、前記燃料油タンク内の前記液体を前記燃料油タンク外の前記内燃機関に送出する燃料配管の前記ポンプ下流側において、前記内燃機関に接続される主配管と分岐して設けられたリターン路を通じて、戻り油として前記燃料油タンク内に戻すリターン工程と、
前記リターン路の出口側端部に対向して設けられた開口を有する容器体を通じて、前記燃料油タンク内の前記液体を、前記混合手段の前記燃料油流入口に供給することを特徴とする請求項7記載の内燃機関への燃料供給方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において、「融和」とは、水性液体と油性液体とが混合されて相互に混じり合い、水性液体と油性液体とが混合されて部分的に分散し、部分的に分散していない状態をいい、「不完全エマルジョン」の状態と同義である。
なお、本明細書の実施形態及び実施例は、融和燃料を供給する例を記載しているが、水性液体と油性液体が完全に又はほぼ完全に分散した完全エマルジョン燃料又はエマルジョン燃料にも適用可能である。
本明細書において、「混合手段」「混合燃料」は、「融和手段」「融和燃料」の上位概念であって、エマルジョン生成手段、エマルジョン燃料を含む意味で用いる。
以下、本発明の一実施形態に係る内燃機関への燃料供給装置及びその供給方法について、自動車に適用して具体化したものを、
図1〜
図10を参照しながら説明する。
【0019】
<内燃機関への燃料供給装置S>
図1は、本実施形態の内燃機関への燃料供給装置Sを示す概念構成図である。
内燃機関とは、熱機関の一種であって、燃料の燃焼が機関の内部で行われ、燃焼ガスを動作ガスとして熱エネルギーを機械的エネルギーに変える原動機である。本実施形態において、内燃機関であれば、ディーゼルエンジン等、どのようなものでも用いることができるが、ガソリンエンジンであると好適である。
また、燃料油としては、ガソリン、軽油、灯油、重油、植物油、廃油等を用いることができるが、ガソリンを用いると好適である。
本実施形態の内燃機関への燃料供給装置Sは、例えば、自動車に搭載して、ガソリンエンジンに燃料を供給するために使用することができる。
本実施形態の内燃機関への燃料供給装置Sは、
図1で示すように、燃料油タンクとしての燃料タンク1と、燃料タンク1内の液体の微小な異物を除去する公知のフィルタ2と、フィルタ2が先端に取付けられた燃料配管3と、原水から
図4の加工水処理器Wで処理した乳化性の水としての加工水が貯蔵される水タンクとしての加工水タンク21と、燃料油と加工水とを撹拌・混合して融和燃料を生成する混合手段としての融和器5,7と、ポンプとしてのフューエルポンプ8と、融和燃料をインジェクタ31へ送出する主配管11と、混合燃料としての融和燃料のうち余剰の戻り油を燃料タンク1に戻すリターン路9と、不図示の内燃機関(エンジン)の各気筒に対して融和燃料を噴射するインジェクタ31と、を主要構成要素とする。
【0020】
燃料タンク1には、燃料油が貯留されるが、燃料供給装置Sを一旦使用した後は、リターン路9を介して戻された戻り油が燃料タンク1内に混入するため、燃料油と微量の融和燃料の戻り油が混合したものが貯留されることとなる。以下、燃料タンク1内の燃料油と微量の融和燃料の戻り油が混合したものを、燃料タンク1内の液体と称する。
【0021】
燃料タンク1には、燃料油内に浸かった状態で燃料配管3が配置され、燃料配管3の上流側端部には、公知のフィルタ2が連結されている。
フィルタ2は、
図1に示すように一方の端部が開口13aとなった中空の容器体13内に配置されている。容器体13は、開口13aが、リターン路9の端部9aに対向し、開口13aが燃料タンク1の底面1bに接するように、又は、底面1bの近傍に、配置されている。
【0022】
容器体13を備えているので、リターン路9の端部9aから吐出される融和燃料の戻り油が、直接フィルタ2に流入し易く、融和燃料に由来し、燃料タンク1内に残留する加工水の比率を減少させることができる。また、容器体13の開口13aが燃料タンク1の底面1bに接するように、又は底面1bの近傍に配置されるため、燃料油よりも比重が大きく、燃料タンク1の底面1b近傍に貯まる加工水を、優先的にフィルタ2から吸い上げることが可能となり、燃料タンク1内に残留する加工水の比率を減少させることができる。
【0023】
加工水タンク21は、燃料タンク1外に設けられ、
図4の加工水処理器Wで処理した乳化性の水としての加工水が貯留され、加工水タンク21は、水供給配管としての加工水供給管25により、融和器5の連結部51bに連結されている。加工水供給管25の加工水タンク21と融和器5の連結部51bとの間には、加工水流量計22,電磁弁23,流量調整バルブ24が連結されている。
【0024】
融和器5の構成を、
図2に示す。
融和器5は、加工水供給管25から送られた加工水と燃料配管3から送られた燃料油の混合物を、細孔から太い径の空間に噴出させることによりエマルジョン化する装置である。
融和器5は、
図2に示すように、ハウジング51,54,57が直列に連結された略筒状長尺体からなる。
ハウジング51は、略円筒体からなり、上流側の軸方向端部に、上流側の燃料配管3に連結されるための燃料油流入口としての筒状の連結部51aが形成されている。また、上流側の軸方向側部に、加工水供給管25の下流端に連結するための水流入口としての筒状の連結部51bが形成されている。
また、下流側の軸方向端部に、端部を閉塞する閉塞部53と、閉塞部53を軸方向に対して斜めに貫通する貫通孔及び細孔部としての一対の細孔53aが形成されている。
【0025】
細孔53aは、ハウジング51の軸方向に対して垂直な幅方向において、隣り合って一対形成され、下流側が相互に近くなるように、傾斜して形成されている。このように、下流側が相互に近くなるように傾斜して形成されているため、細孔53aを通って大径空間52に噴出する2本の液体の流れが、相互にぶつかり合い、液体の拡散がより促進される。
一対の細孔53aは、ハウジング51の中心軸を通る面を中心として、相互に対称になるように形成されている。
なお、細孔53aは、一対に限られず、4つなど、3つ以上の複数設けられていてもよい。
連結部51aと閉塞部53との間は、細孔53aよりも大径筒状の大径部としての大径空間52が形成されている。
【0026】
ハウジング54は、連結部54aが閉塞部53の外周に連結可能に形成されていることと、側部に加工水を供給する連結部が形成されていないことを除いては、ハウジング51と略同じ形状からなる。
ハウジング57は、下流側の軸方向端部に、下流側の燃料配管3が連結される連結部58bを備えることを除いては、ハウジング54と略同じ形状からなる。
【0027】
融和器5は、フューエルポンプ8によって、連結部51a及び51bから大径空間52に、燃料油と加工水がそれぞれ供給され、大径空間52で合流した燃料油と加工水が、細孔53aを通って大径空間55に噴射される。このとき、細孔53aから大径空間55に噴射されて拡散されることによって、部分的にエマルジョン化され分散される。また、同様の拡散が、細孔56aから大径空間58に噴射されたときに生じ、再度部分的なエマルジョン化が促進される。2度の噴射拡散が行われることにより、燃料油と加工水の混合物は、部分的に分散,懸濁した融和燃料となる。
【0028】
融和器5の燃料配管3下流に設けられた融和器7を、
図3に示す。融和器7は、最も上流側のハウジング51が、軸方向側部に連結部51bを備えていない点を除いては、融和器5と同様の構成からなる。
融和器7には、
図1に示すように、上流側の連結部51aに、燃料配管3から、融和器5で融和された融和燃料が供給され、細孔53aから大径空間55までと、細孔56aから大径空間58までとの2度の噴出拡散を経ることにより、エマルジョン化の度合いが高められて、下流側の連結部58bから燃料配管3へ、分散,懸濁の度合いが高められた融和燃料が供給される。
融和器5,7のそれぞれの上流には、燃料油又は融和燃料が上流側に向かって逆流することを防ぐ公知の逆止弁4,6が配置されている。
【0029】
図1のフューエルポンプ8は、燃料タンク1内に装着し、燃料内に沈み込むようにした公知のインタンク式燃料ポンプからなる。
燃料配管3は、フューエルポンプ8の下流で、インジェクタ31に接続された主配管11と、燃料タンク1の底部に向かって延びるリターン路9に分岐している。
主配管11は、フューエルポンプ8によりインジェクタ31に融和燃料を供給するための流路である。
リターン路9には、公知のプレッシャレギュレータ10が設けられている。プレッシャレギュレータ10は、フューエルポンプ8から吐出された融和燃料を導入し、導入された融和燃料を燃料タンク1の内圧に対して一定に調圧して、余った融和燃料を、リターン路9から端部9aを通じて燃料タンク1へ戻す。
このように、リターン路9及びプレッシャレギュレータ10を備えていることにより、燃料タンク1内で融和燃料をリターンさせ、内燃機関が消費する分量のみを一定燃圧で供給可能となる。これにより、内燃機関を通過して加熱された融和燃料が燃料タンク1に戻ることがなくなり、燃料タンク1内のエバポレーションガスの発生を抑えることが可能となる。
【0030】
本実施形態で用いられる加工水は、イオンクロマトグラフ法により、Naイオンが検出されると共にMgイオン及びCaイオンが検出されず、26℃における表面張力が、65mN/m以上であり、油性液体と混合して撹拌したときに乳化する性質を有する乳化性の水である。
本実施形態では、
図4で示す加工水処理器Wで生成した加工水を用いると好適である。
【0031】
加工水処理器Wは、
図4に示すように、第1の軟水生成器110と第2の軟水生成器112とイオン生成器114と黒曜石収納器116とが、連絡管118a,118b,118cを介して、順に直列に連結された軟水製造装置100と、軟水製造装置100の下流に接続された表面張力向上器140と、からなる。
軟水製造装置100は、原水から軟水を製造する装置である。
軟水とは、硬度が100mg/l未満の水をいう。硬度とは、水に含まれるCa濃度及びMg濃度で表される指標であり、硬度=Ca濃度(mg/l)×2.5+Mg濃度(mg/l)×4.1で算出される。
【0032】
本実施形態では、硬度が100mg/l未満の水であって、Caイオン,Mgイオン,Feイオンが除去された水を用いると好適である。
第1の軟水生成器110には、例えば水道のような圧力のある原水が水供給管120から連絡管122を介して内部に導入される。
但し、原水として、湧き水、井戸水、雨水、川の水を、公知の水浄化用の濾過フィルタ,殺菌装置等により浄化,消毒処理を施したものや、清浄な湧き水、井戸水を用い、不図示のポンプで水供給管120、連絡管122を介して第1の軟水生成器110に導入してもよい。
水供給管120と連絡管122との間には、蛇口のような入口用開閉弁124が備えられ、連絡管122の途中には逆止弁126が備えられる。黒曜石収納器116の出口側には吐出管128aが取り付けられ、吐出管128aの先端または途中に出口用開閉弁130aが備えられる。
【0033】
第1の軟水生成器110と第2の軟水生成器112の内部には、粒状のイオン交換樹脂132が充填されている。なお、2つの軟水生成器110,112を1つにまとめて、1つの軟水生成器にすることも可能である。
【0034】
イオン交換樹脂132は、原水に含まれているCa
2+やMg
2+やFe
2+等の金属イオンを除去して、原水を軟水にするためのものであり、特に原水の硬度をゼロに近い程度に低くするためのものである。イオン交換樹脂132としては、例えば、スチレン・ジビニルベンゼンの球状の共重合体を均一にスルホン化した強酸性カチオン交換樹脂(RzSO
3Na)を用いる。
【0035】
RzSO
3Naを用いた場合のイオン交換樹脂132によるイオン交換反応は、次の通りである。
2RzSO
3Na + Ca
2+ → (RzSO
3)
2Ca + 2Na
+
2RzSO
3Na + Mg
2+ → (RzSO
3)
2Mg + 2Na
+
2RzSO
3Na + Fe
2+ → (RzSO
3)
2Fe + 2Na
+
即ち、イオン交換樹脂132を通すことによって、原水に含まれているCa
2+やMg
2+やFe
2+等が除去され、Na
+が発生する。
【0036】
一方、原水は、イオン交換樹脂132を通ることによって、以下のように、水酸化イオン(OH
−)とヒドロニウムイオン(H
3O
+)が発生する。
H
2O → H
+ + OH
−
H
2O + H
+ → H
3O
+
【0037】
このように、原水が硬水であった場合に、イオン交換樹脂132を通過することによって、原水からCa
2+やMg
2+やFe
2+等の金属イオンが除去されて軟水となる。また、原水の中にNa
+とOH
−とヒドロニウムイオン(H
3O
+)とが発生する。しかし、水道水に含まれている塩素はイオン化しないでそのまま通過する。
【0038】
イオン生成器114は、不図示のカートリッジに、平均粒径5〜15μmのトルマリン粉末又はトルマリン粉末を他のセラミック材料と混合して焼成したペレット状のトルマリンペレットを充填し、複数個同じ配置で上下に連続して直列に連結したものである。なお、トルマリン粉末又は粒状のトルマリンに、金属板を混合したものを、カートリッジに充填してもよい。
トルマリンは、プラスの電極とマイナスの電極とを有し、このプラスの電極とマイナスの電極によって、水に4〜14ミクロンの波長の電磁波を持たせ、かつ水のクラスターを切断してヒドロニウムイオン(H
3O
+)を発生させる。4〜14ミクロンの波長の電磁波が持つエネルギーは、約0.004watt/cm
2である。
【0039】
イオン交換樹脂132を通過させて水を硬度がゼロに近い軟水にして、その軟水の中でトルマリン同士をこすり合わせる。硬度がゼロに近い軟水では、トルマリンのマイナスの電極にMgイオンやCaイオンが付着するのを防ぐことができ、トルマリンのプラスとマイナスの電極としての働きを低下させることを防ぐことができる。
【0040】
金属板としては、アルミニウム、ステンレス、銀の少なくとも1種類の金属を用いる。この金属としては、水中で錆を発生させたり水に溶けたりしない金属が望ましい。アルミニウムは殺菌作用や抗菌作用と共に漂白作用を有しており、ステンレスは殺菌作用や抗菌作用と共に洗浄向上作用を有しており、銀は殺菌作用や抗菌作用を有している。
トルマリンと金属板との重量比は、10:1〜1:10が望ましい。その範囲を超えると、一方の素材が多くなりすぎ、両方の素材の効果を同時に発揮することができない。
【0041】
イオン生成器114の各カートリッジにおいては、底面の多数の穴を通過した水が、下から上に向けてトルマリン粉末又はトルマリンペレットに噴射するように設定されている。ここで、水道水は高い水圧を有するので、その水圧を有する水がカートリッジ内のトルマリン粉末又はトルマリンペレットに勢いよく衝突し、その水の勢いでトルマリン粉末又はトルマリンペレットがカートリッジ内で攪拌されるように、穴の大きさ並びに個数を設定する。水をトルマリンに噴射してトルマリンを攪拌するのは、その攪拌によってトルマリンと水とに摩擦を生じさせ、トルマリンからプラスとマイナスの電極が水に溶け出して水のクラスターを切断し、ヒドロニウムイオン(H
3O
+)を大量に発生させるためである。
【0042】
トルマリン同士がこすり合うことでプラスの電極とマイナスの電極が生成し、その電極に水が接触することで、水中のマイナスイオンが増加する。なお、水のクラスターを切断し、ヒドロニウムイオン(H
3O
+)を大量に発生させたい場合には、カートリッジ内にトルマリンのみを充填しても良い。
【0043】
トルマリンは、プラス電極とマイナス電極とを有するため、トルマリンが水で攪拌されると、水は水素イオンと水酸化イオンに解離する。
H
2O → H
+ + OH
−
更に、水素イオンと水とによって、界面活性作用を有するヒドロニウムイオン(H
3O
+)が発生する。イオン生成器114におけるヒドロニウムイオンの発生量は、イオン交換樹脂132によって発生する量よりはるかに多い。
H
2O + H
+ → H
3O
+
発生したヒドロニウムイオンの一部は、水と結びついてヒドロキシルイオン(H
3O
2−)と水素イオンになる。
H
3O
+ + H
2O → H
3O
2− + 2H
+
【0044】
イオン交換樹脂132を通過した水を、イオン生成器114を通過させることによって、ヒドロニウムイオン(H
3O
+)とヒドロキシルイオン(H
3O
2−)とH
+とOH
−とが発生する。なお、イオン交換樹脂132を通過した塩素、イオン交換樹脂132で発生したNa
+は、そのままイオン生成器114を通過する。
【0045】
イオン生成器114を通過した水を、次に、粒径5mm〜50mm程度の黒曜石を収納する黒曜石収納器116の内部を通過させる。黒曜石は、産地を問わない。
【0046】
この黒曜石収納器116に、イオン生成器114を通過した水を通過させると、水にe
−(マイナス電子)が加えられる。この結果、水道水に含まれている塩素はマイナス電子によって、塩素イオンとなる。
Cl
2 + 2e
− → 2Cl
−
このCl
−と前記Na
+とはイオンとして安定した状態になる。安定した状態とは、イオン状態が長期間保たれることを意味する。また、ヒドロキシルイオンもイオンとして安定した状態になる。水が黒曜石を通過することによって、イオン生成器114を通過した水と比べて、ヒドロニウムイオンが更に発生し、かつヒドロキシルイオンも水素イオンも更に発生する。
【0047】
H
2O + H
+ → H
3O
+
H
3O
+ + H
2O → H
3O
2− + 2H
+
水が黒曜石を通過することによって、その他に、以下の反応も発生する。
OH
− + H
+ → H
2O
2H
+ + 2e
− → 2H
2
更に、水が黒曜石収納器116を通過すると、黒曜石のマイナス電子によって、水の酸化還元電位が+340mVから−20〜−240mVになる。更に、黒曜石を通過した水は、溶存酸素や活性水素を大量に含む。
【0048】
本実施形態の軟水製造装置100は、第1の軟水生成器110、第2の軟水生成器112、イオン生成器114、黒曜石収納器116を備えているが、これに限定されるものではなく、原水からCaイオン,Mgイオン,Feイオンを除去する装置であればよい。
また、水を、イオン生成器114、黒曜石収納器116に通過させる順序を逆にして、黒曜石収納器116に通過した後の水をイオン生成器114に通過させてもよい。
【0049】
軟水製造装置100の下流には、軟水製造装置100の吐出管128aの出口用開閉弁130a連絡管118dが連結されることにより、表面張力向上器140が連結されている。
表面張力向上器140は、軟水製造装置100で原水から生成された軟水を、トルマリン粉末又はトルマリンペレット及び/又は黒曜石収納器116を通過させることにより、軟水の表面張力を向上させると共に、軟水中の原子状水素の量を増加させる装置である。
【0050】
本実施形態の表面張力向上器140は、
図4に示すように、黒曜石収納器116を直列に連結されてなるが、これに限定されるものでなく、複数のイオン生成器114を直列に連結して構成してもよいし、イオン生成器114と黒曜石収納器116を直列に連結して構成してもよい。
表面張力向上器140を構成するイオン生成器114及び/又は黒曜石収納器116の構成は、軟水製造装置100に含まれるものと同様である。
もっとも下流の黒曜石収納器116の出口側には吐出管128bが取り付けられ、吐出管128bの先端または途中に出口用開閉弁130bが備えられており、表面張力向上器140で生成された加工水を吐出させるための不図示の蛇口が連結される。
本実施形態では、この不図示の蛇口より加工水を吐出させて、
図1の加工水タンク21に加工水を貯留させる。
【0051】
原水が、軟水製造装置100を通過した後、表面張力向上器140を通過したものが加工水である。
加工水には、Na
+と、Cl
−と、H
+と、OH
−と、H
2と、ヒドロニウムイオン(H
3O
+)と、ヒドロキシルイオン(H
3O
2−)と、活性水素(原子状水素)と、溶存酸素とを多く含む。
但し、原水が、軟水製造装置100を通過した軟水であって、表面張力向上器140を通過していないものを、加工水として用いてもよい。
【0052】
軟水製造装置100を通過後に表面張力向上器140を通過した加工水は、軟水製造装置100を通過したが表面張力向上器140を通過していないものよりも、高エネルギーな活性の原子状水素の量が多くなり、エネルギーが高い。つまり、燃焼させたときにより多くのエネルギーを発生する。
軟水製造装置100を通過後に表面張力向上器140を通過した加工水に多く含まれるヒドロキシルイオン(H
3O
2−)は、燃焼時において、イオン中に含まれる2つのOがO
2となり、3つのHが活性な原子状水素となり、これがHガスとなって燃焼する。
【0053】
軟水製造装置100で原水(水道水)が軟水化された後、表面張力向上器140を用いて、トルマリン及び黒曜石の少なくとも一方を通過させる処理を、30分以上数時間繰り返して行うことによって得た本実施形態の加工水は、Mgイオン、Caイオン、Feイオンの量が、イオンクロマトグラフ法の検出下限値以下であり、Naイオン濃度が、原水の3倍以上、好ましくは、3.5倍以上に高められている。
また、表面張力は、原水(水道水)よりも高く、超純水と同等の水準まで高められている。
このように、本実施形態の加工水処理器Wで処理された加工水は、Mgイオン、Caイオン、Feイオンを含有せず、Naイオン濃度が高いため、油と加工水を混合して撹拌すると、Naイオンと油に含まれるトリグリセライドが加水分解して脂肪酸を遊離し、Naイオンと化合して、界面活性剤である脂肪酸ナトリウムを生成する。従って、本実施形態の加工水は、乳化剤を用いることなく、燃料油と混合して撹拌することにより、部分的に分散,懸濁した融和状態にすることが可能である。
【0054】
従って、本実施形態の加工水と燃料油が部分的に分散,懸濁し、部分的にエマルジョン化して得られる融和状態の不完全エマルジョンは、融和燃料として利用される。
本実施形態の融和燃料は、乳化剤無添加で、本実施形態の加工水と燃料油を不完全エマルジョン化したものであり、表面張力向上器140によって表面張力が高められ、原子状水素を含む加工水を用いていることから、原料となる燃料油よりも、燃焼による発熱量が多く、燃焼効率がよい。
【0055】
<内燃機関への燃料供給方法>
本実施形態の融和燃料は、以下の燃料供給方法により、製造され、不図示のガソリンエンジンに供給される。
まず、原水から加工水を調整する原水加工工程を行う。
原水加工工程では、
図4の加工水処理器Wに、水道のような圧力のある原水を供給する。
第1の軟水生成器110と第2の軟水生成器112の強酸性カチオン交換樹脂等からなるイオン交換樹脂132を通過させて、原水に含まれているCa
2+やMg
2+やFe
2+等の金属イオンを除去して、原水を軟水にすると共に、原水の中にNa
+とOH
−とヒドロニウムイオン(H
3O
+)とを発生させる。
【0056】
次いで、第1の軟水生成器110と第2の軟水生成器112を通過した水を、イオン生成器114に供給し、平均粒径5〜15μmのトルマリン粉末又はトルマリン粉末を他のセラミック材料と混合して焼成したトルマリンペレット中を通過させる。これにより、水に4〜14ミクロンの波長の電磁波を持たせ、かつ水のクラスターを切断してヒドロニウムイオン(H
3O
+)とヒドロキシルイオン(H
3O
2−)とH
+とOH
−とを発生させる。
【0057】
水を、粒径5mm〜50mm程度の黒曜石を収納する黒曜石収納器116の内部を通過させる。水が黒曜石を通過することによって、イオン生成器114を通過した水と比べて、ヒドロニウムイオンが更に発生し、かつヒドロキシルイオンも水素イオンも更に発生する。以上の処理で、軟水が生成される。
その後、軟水を、イオン生成器114及び黒曜石収納器116の少なくとも一方を、通過させて、加工水を生成する。つまり、イオン生成器114のみ、又は黒曜石収納器116のみ、又はイオン生成器114及び黒曜石収納器116の双方の循環時間は、30分以上とする。
【0058】
但し、内燃機関への燃料供給方法には、原水加工工程を含めなくてもよく、予め調製された加工水を用いてもよい。例えば、街中に、加工水を供給するサービスを行う加工水サービスステーションを設置し、このステーションで加工水を製造してもよい。この場合、ユーザは、ステーションで、自動車に搭載された加工水タンク21に、加工水を給水する。
【0059】
原水加工工程の後、加工水を、
図1の加工水タンク21に供給する。また、ガソリンスタンド等で、燃料油を燃料タンク1に供給する。
【0060】
次いで、電磁弁23を閉じたままフューエルポンプ8を駆動し、燃料油だけを、燃料タンク1から、フューエルポンプ8の圧力により、燃料配管3を経て主配管11及びリターン路9に吐出する。主配管11に吐出された燃料油は、デリバリパイプ31pに所定の圧力をもって達し、デリバリパイプ31pは、燃料油を各インジェクタ31へ分配する。各インジェクタ31は、不図示の内燃機関(エンジン)の各気筒に対して燃料油を噴射する。
内燃機関(エンジン)の駆動が安定した後、電磁弁23を開き、燃料配管3を通る燃料油に、融和器5の大径空間52において加工水を混合させる。加工水と燃料油との比率は、加工水の流量を調整する流量調整バルブ24で調整する。
加工水と燃料油の混合物は、融和器5,7の細孔53a,56aから大径空間55,58に噴出されて、加工水と燃料油が部分的に分散,不完全エマルジョン化された融和燃料が生成される。
【0061】
融和燃料は、フューエルポンプ8の圧力により、燃料配管3を経て主配管11及びリターン路9に吐出する。プレッシャレギュレータ10はフューエルポンプ8から吐出された融和燃料を導入し、燃料タンク1の内圧に対して一定に調圧して、余った融和燃料を、リターン路9の端部9aを通じて戻り油として燃料タンク1に戻す。
戻り油の融和燃料は、燃料タンク1内の燃料油内に、吐出されるが、容器体13の開口13aが端部9aに対向して配置されているため、容器体13内部に向かって吐出されることとなる。従って、戻り油の融和燃料は、周囲の燃料油よりも優先して、容器体13内のフィルタ2からフューエルポンプ8によって吸い上げられる。
また、フィルタ2によって吸い上げられなかった融和燃料は、燃料油よりも加工水の比重が大きいことから、燃料タンク1の底部に貯まり、燃料タンク1の底部に接して、又は低部近傍に設けられた容器体13を介してフューエルポンプ8により優先して吸い上げられる。従って、燃料タンク1内に残存する融和燃料又は加工水の量は、非常に少ない量に抑えられる。
【0062】
加工水と燃料油との比率は、2:8〜5:5、好ましくは、2.5:7.5〜5:5とすると好適である。
加工水と燃料油の比率が3:7である融和燃料を供給した場合の不図示のガソリンエンジンの回転数は、加工水を混ぜていない燃料油100%を供給した場合と同等程度であり、加工水を分散させても、同等程度のエネルギーが得られる。
【0063】
上記実施の形態では、フューエルポンプ8から吐出される融和燃料のうち、余剰の融和燃料をリターン路9から燃料タンク1内に戻しているが、これに限定されるものではなく、
図5のように、フューエルポンプ8下流の主配管11の途中から分岐するリターン路9´を形成し、戻り油をフューエルポンプ8のすぐ上流に配置された融和器7´に戻してもよい。
図5では、フューエルポンプ8下流の主配管11の途中から分岐するリターン路9´と、リターン路9´に設けられたプレッシャレギュレータ10と、を備えている。融和器7´には、
図6に示すように、最下流のハウジング57の軸方向側部に、リターン路9´に連結するための筒状の連結部57b´が形成されている。
このように構成しているため、プレッシャレギュレータ10は、フューエルポンプ8から吐出された融和燃料を導入し、導入した融和燃料を、融和器7´の内圧に対して一定に調圧して、余った融和燃料をリターン路9´を通じて融和器7´のハウジング57に戻す。
図5では、加工水を含む融和燃料が燃料タンク1に戻らないため、燃料タンク1に混入する水の量を極めて少量に抑制でき、燃料タンク1を正常な状態に保持可能となる。
【0064】
また、本発明者の鋭意研究により、完全に水相と油相が乳化した完全なエマルジョン状態よりも、水と燃料油が部分的に分散した融和燃料の方が、内燃機関における出力効率が上がることが明らかとなったため、本実施形態では、水と燃料油が部分的に分散した融和燃料を生成する融和手段を用いることにより、内燃機関に供給される融和燃料が完全なエマルジョンになることを抑制して、出力効率のよい融和燃料を供給可能としたものである。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を、実施例に基づき更に具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
<試験例1〜7 加工水の特性分析>
試験例1〜7では、本発明で用いられる加工水の特性分析を行った。
(試験例1 加工水の乳化安定性)
図4の軟水製造装置100に、水道水を供給して通過させた後、イオン生成器114及び黒曜石収納器116を、それぞれ、30分ずつ通過させて、実施例1の加工水を得た。
実施例1の加工水と、水道水、蒸留水、及び超純水を、それぞれ、ビーカーに入れ、2.7重量%、3重量%、5重量%のA重油をそれぞれ添加し、スターラーで撹拌して、それぞれのエマルジョンを調製した。調整直後、3時間後、1日後、3日後に、それぞれのサンプルの乳化状態を観察した。
【0066】
その結果、調整直後においては、3重量%のサンプルでは、加工水のみにおいて、水相と分離した油相が観察されず、蒸留水、超純水において、水相と分離した油相が観察された。
5重量%のサンプルでは、加工水、蒸留水、超純水のすべてで、水相と分離した油相が観察されたが、油相の厚みは、蒸留水>超純水>加工水の順であった。
【0067】
2.7重量%の加工水、水道水、超純水の調整後3時間後、1日後、3日後のサンプルでは、乳化による白濁が、超純水>加工水>水道水の順で濃く観察され、超純水>加工水>水道水の順で、乳化後の安定度が高いことが分かった。
【0068】
また、実施例1の加工水と、蒸留水、及び超純水に3重量%のA重油を添加して撹拌したサンプルにおいて、調整後30分後、40分後、60分後に、粒子径測定装置を用いてエマルジョン粒子の粒径を測定した。粒子の平均径及び標準偏差を、
図7に示す。
図7の結果より、調整後1時間経過の時点では、加工水と、蒸留水、及び超純水との間で、エマルジョン粒子径のばらつきには、殆ど差がなかった。エマルジョン粒子の平均径は、加工水よりも蒸留水、超純水の方が若干小さいが、殆ど差がなかった。
【0069】
(試験例2 異なる条件で処理した加工水の表面張力)
図4の軟水製造装置100に、水道水を供給して通過させた後、イオン生成器114を30分、1時間、3時間循環させた実施例2〜4の加工水と、
図4の軟水製造装置100に、水道水を供給し、軟水製造装置100を通過させた後、黒曜石収納器116を、30分、1時間、3時間、4時間、5時間循環させた実施例5〜9の加工水を得た。
実施例2〜9の加工水と、超純水について、測定時の試料温度26.0℃の表面張力を測定した。
結果を、
図8に示す。
図8の結果より、イオン生成器114を30分、1時間、3時間循環させた実施例2〜4の加工水、黒曜石収納器116を、30分、1時間、4時間循環させた実施例5、6、8の加工水の表面張力は、超純水と同水準にあった。
【0070】
(試験例3 異なる条件で処理した加工水の表面張力)
図4の軟水製造装置100に、水道水を供給して通過させた後、黒曜石収納器116を、5時間通過させた実施例10の加工水を得た。
【0071】
また、
図4の軟水製造装置100に、水道水を供給し、軟水製造装置100を通過させた後、イオン生成器114、黒曜石収納器116をそれぞれ通過させた実施例11の加工水を得た。
実施例10,11の加工水と、超純水、実施例10,11の調整に用いた原水(水道水)、この原水(水道水)に、界面活性剤を添加した界面活性剤添加水道水について、測定時の試料温度26.0℃の表面張力を、測定した。
結果を、
図9に示す。
図9の結果より、実施例10,11の加工水の表面張力は、原水よりも高く、超純水よりも低い値を示した。界面活性剤添加水道水は、他のサンプルよりも大幅に低い表面張力値を示し、10,11の加工水の表面張力は、界面活性剤添加水道水よりも大幅に高い、超純水、原水と同じレベルの値であった。
図8,
図9の結果より、実施例2〜11の加工水は、超純水に近い表面張力値を示し、極めて清浄な水であることが示された。
【0072】
(試験例4 エマルジョンのゼータ電位)
試験例1で調整した実施例1の加工水と、超純水、陰イオン交換樹脂を通過させたイオン交換水、蒸留水のそれぞれに、A重油を添加して撹拌して各サンプルのエマルジョンを得た。これらのエマルジョンのゼータ電位を、ゼータ電位測定装置を用いて測定した。
測定結果を、表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1の結果より、加工水のゼータ電位は、絶対値で33mVであり、他と対比して大きな差はなかったが、他のサンプルの粒子表面電荷が正であったのに対して、粒子表面電荷が負になっていた。このことより、加工水には、マイナスイオンが存在することが分かった。
【0075】
(試験例5 イオンクロマトグラフ)
試験例1で調整した実施例1の加工水と、この加工水の原水(水道水)を、イオンクロマトグラフィを用いて、アニオン分析用イオンクロマトグラフ法、カチオン分析用イオンクロマトグラフ法を行った。
測定結果を、
図10に示す。
図10の各グラフの上段は、加工水の測定結果、下段は、原水の測定結果を示している。
図10の測定結果より、実施例1の加工水では、原水(水道水)と対比すると、Mgイオン、Caイオンが除去され、Naイオンが4倍に増加していた。
【0076】
(試験例6 加工水の界面活性測定試験)
図4の軟水製造装置100に、水道水を供給して通過させた後、イオン生成器114及び黒曜石収納器116を、順次5分ずつ通過させた対比例1、イオン生成器114及び黒曜石収納器116を、順次15分ずつ通過させた実施例12の加工水を得た。
【0077】
準備した各試料水と水道水(原水)に、2重量%のサラダオイル(オレイン酸のトリグリセリド)を添加し、1分間震盪撹拌した後、5分間経過させてから、フーリエ変換型核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製 JNM−EX−400型FT−NMR)を用いて、測定温度22℃、測定周波数400MHzにおいて、
1H−NMRスペクトルを測定し、各試料水に溶け込んだサラダ油の量を算出した。濃度の基準物質として、1mMolのTSP−d
4(トリメチルシリルプロピオン酸)を加えた。
実施例12の加工水は、測定値が、127.0であり、水に溶け込んだサラダ油の量は、20.06mMolで、水道水に対比すると、2.5倍の量のサラダ油を溶かした。それに対し、対比例1の加工水は、測定値が、74.9であり、水に溶け込んだサラダ油の量は、11.83mMolで、水道水に対比すると、1.5倍の量のサラダ油を溶かした。
【0078】
(試験例7 溶存酸素量等の測定試験)
図4の軟水製造装置100に、水道水(日本国上田市営水道)を供給して通過させた後、イオン生成器114及び黒曜石収納器116を、それぞれ、30分ずつ循環させた実施例1の加工水と、
図4の軟水製造装置100に、水道水(上田市営水道)を供給して通過させた後、イオン生成器114を30分循環させた実施例2の加工水と、
図4の軟水製造装置100に、水道水(上田市営水道)を供給し、軟水製造装置100を通過させた後、黒曜石収納器116を30分循環させた実施例5の加工水と、
図4の軟水製造装置100に、水道水(上田市営水道)を供給して通過させた対比例2の加工水と、実施例1,2,5及び対比例2の加工水の原水である対比例3の水道水(上田市営水道)について、上水試験方法(2011年版)により、pH,溶存酸素量,Naイオン濃度,酸化還元電位を測定した。
結果を、表2に示す。
【0079】
【表2】
【0080】
純水の飽和溶存酸素量は、1気圧、13℃の条件下では、10.2mg/L、1気圧、14℃の条件下では、9.98mg/L、1気圧、23℃の条件下では、8.38mg/L、1気圧、24℃の条件下では、8.25mg/Lである。
従って、対比例2,3では、溶存酸素量が、純水の飽和溶存酸素量より若干低い値を示した。それに対し、実施例1,2,5では、いずれも、溶存酸素量が、純水の飽和溶存酸素量より高い値を示しており、本発明の加工水が、純水の飽和溶存酸素量よりも多い酸素が溶解していることが分かった。
【0081】
(試験例1〜7の考察)
本発明の実施例に適用された加工水は、蒸留水、超純水よりも乳化し易く、ゼータ電位でマイナスの符号を示していた。また、Mgイオン、Caイオンを有さず、Naイオンが増加していた。
これらの結果より、油の成分と結合するMgイオン、Caイオンが存在しないため、加工水と油との混合時には、Naイオンと油に含まれるトリグリセライドが加水分解して脂肪酸を遊離し、Naイオンと化合して、界面活性剤である脂肪酸ナトリウムを生成することが分かった。
また、本発明の実施例に適用された加工水は、超純水に近い表面張力を有しており、高い表面張力を持ちながら、別途界面活性剤を無添加の状態で、油と混合されたときに、界面活性剤を自ら合成して、油と乳化する能力を持つという、特殊な性質を有することが分かった。
更に、本発明の実施例に適用された加工水は、純水の飽和溶存酸素量よりも多い量の酸素が溶解していることが分かった。溶存酸素は、燃料油とエマルジョン化したエマルジョン燃料の燃焼効率を向上させる要因となる。
【0082】
(試験例8 燃料油及び融和燃料を用いたガソリンエンジン車走行試験)
図1の内燃機関への燃料供給装置Sを搭載したロータリーエンジン車(マツダRX8)を用いて、燃料油供給及び融和燃料供給走行試験を行い、燃料油供給時及び融和燃料供給時の性能比較を行った。
本試験では、
図1の内燃機関への燃料供給装置Sにおいて、まず、燃料油としてガソリンを用い、電磁弁23を閉めて、フューエルポンプ8を駆動させてガソリンのみを主配管11を通じてインジェクタ31に噴出させ、ガソリンのみでの走行を行う対比例1の走行試験を行った。走行は、日本国内の国道で、走行,停止の繰返し運転による通常の街中走行とした。測定項目は、エンジン性能に関する代表項目,つまり、エンジン回転数,ノッキング遅角量,点火時期,エンジン負荷,燃料噴射パルス,オルタネータ出力とし、計測器として、インターサポート社製のG-scan2を用いた。測定項目のデータは、走行試験中、1秒ごとにデータログを取得した。このデータログを用いて、5分間平均値を算出した。
【0083】
対比例1のガソリンのみでの走行のデータを取得した後、電磁弁23を開け、加工水流量計22(キーエンス社製FD-SS02A)で加工水の流量をチェックしながら流量調整バルブ24を調整して、ガソリン:加工水の比率が7:3となるように加工水を入れて、同様に街中走行を行う実施例13の走行試験を行った。同様の測定項目についてデータを取得した。
基油であるガソリンに対して30%前後の加水量とすることにより、50%前後の基油削減率となる。
その後、電磁弁23を閉めて、燃料タンク1内の燃料油と戻り油のみにより、同様に街中走行を行う実施例14の走行試験を行った。同様の測定項目についてデータを取得した。
試験の結果を、表3に示す。表3には、それぞれの項目の最高値,最低値と、5分間の平均値を示す。
【0084】
【表3】
【0085】
表3の結果より、実施例13のエンジン回転数,点火時期,エンジン負荷,燃料噴射パルス、オルタネータ出力の平均値は、対比例1の同項目の平均値に対して、それぞれ、0.4%減,3.6%増,15.1%減,13.4%減,5.1%増であった。従って、実施例13では、ガソリンの30%を加工水に置換したにも関わらず、これらの項目では、略同等の値が得られており、エンジンのパワー,トルク,レスポンス等が関与するエンジンの出力効率や、運転状況は、ガソリンのみの対比例1に対して遜色ない水準が得られることが分かった。
なお、本試験例において、対比例1の計測地点が、実施例13の計測地点に比べて、比較的上り坂の多い地点であったことから、エンジン回転数,エンジン負荷,燃料噴射パルスの値が、対比例1において、実際よりも若干高くなる傾向がみられたと考えられる。
【0086】
実施例13,14の測定結果において、いずれも、ノッキング遅角量が0であったことから、ガソリンを30%の加工水で置換した場合(実施例13)、及び
図1の燃料タンク1内に残存した加工水含有戻り油を含むガソリンを用いた場合(実施例14)においても、不図示のエンジンの燃焼室内(筒内)の燃焼圧力等の条件に問題を生じず、実施例13の融和燃料及び実施例14の戻り油を含むガソリンが、基油である対比例1のガソリンと同等に用いることができることが分かった。