特許第6588330号(P6588330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588330
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】静止誘導機器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/04 20060101AFI20191001BHJP
【FI】
   H01F27/04 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-251515(P2015-251515)
(22)【出願日】2015年12月24日
(65)【公開番号】特開2017-117929(P2017-117929A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高井 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】池田 翔大
(72)【発明者】
【氏名】樋口 達也
(72)【発明者】
【氏名】塩田 広
【審査官】 秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−114919(JP,U)
【文献】 特開2006−211765(JP,A)
【文献】 特開昭55−019813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配線を有する静止誘導機器本体が収納された収納容器と、
前記収納容器に設けられたものであって、複数の引出し孔を有するブッシング座板と、
前記ブッシング座板に設けられたものであって、前記引出し孔を通して前記収納容器内に挿入された部分および前記収納容器外に突出する部分を有すると共に前記収納容器内で前記配線に接続された複数のブッシングと、
前記複数の配線間を前記収納容器内で連結するものであって、前記引出し孔の並び方向に沿う細長な配線連結部材を備え、
前記複数の配線は、前記引出し孔を通してその先端を前記収納容器の外部に引き出せる長さを有し、
前記配線連結部材は、前記引出し孔の並び方向に沿って隣接する前記配線間を前記引出し孔間のピッチに応じた間隔で連結することを特徴とする静止誘導機器。
【請求項2】
前記複数のブッシング間を前記収納容器外で連結するブッシング連結部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載の静止誘導機器。
【請求項3】
前記ブッシング座板には、前記ブッシングが嵌め込まれる複数の凹部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の静止誘導機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施例は静止誘導機器に関する。
【背景技術】
【0002】
静止誘導機器には収納容器を備えたものがある。この収納容器は静止誘導機器本体が収納されたものであり、ブッシングポケットを有している。このブッシングポケットには複数のブッシングが設けられており、複数のブッシングのそれぞれは収納容器内で静止誘導機器本体に配線を介して接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−30948号公報
【特許文献2】実開昭61−30223号公報
【特許文献3】実開昭61−119315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の静止誘導機器の場合にはブッシングポケットに開口部が設けられている。この開口部は作業者がブッシングポケット内に対して出入りするためのものであり、複数の配線のそれぞれは作業者がブッシングポケット内で接続作業を行うことに応じてブッシングに接続される。従って、ブッシングポケットが開口部の分だけ大形になり、しかも、ブッシングポケットに開口部を開閉するカバーを装着する必要性もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施例の静止誘導機器は、複数の配線を有する静止誘導機器本体が収納された収納容器と、前記収納容器に設けられたものであって複数の引出し孔を有するブッシング座板と、前記ブッシング座板に設けられたものであって前記引出し孔を通して前記収納容器内に挿入された部分および前記収納容器外に突出する部分を有すると共に前記収納容器内で前記配線に接続された複数のブッシングと、前記複数の配線間を前記収納容器内で連結するものであって前記引出し孔の並び方向に沿う細長な配線連結部材を備えたものであり、前記複数の配線は、前記引出し孔を通してその先端を前記収納容器の外部に引き出せる長さを有し、前記配線連結部材は前記引出し孔の並び方向に沿って隣接する前記配線間を前記引出し孔間のピッチに応じた間隔で連結する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施例1を示す図(タンクの外観を示す図)
図2】配線をタンク内から示す図
図3】ブッシングポケットの外観を示す図
図4】ブッシング座板を示す図(aはXa視図、bはXb線に沿う断面図)
図5】ブッシング座板を高圧ブッシングの装着状態で示す図
図6】高圧ブッシングの取付け手順を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0007】
図1のタンク1は密閉されたものであり、周板2と天板3と底板4を有している。周板2は上面および下面のそれぞれが開口する四角筒状をなすものであり、天板3は周板2の上面を閉鎖する平板状をなし、底板4は周板2の下面を閉鎖する平板状をなしている。このタンク1は収納容器に相当する。
【0008】
タンク1内には変圧器鉄心が収納されている。この変圧器鉄心は複数の脚間を継鉄によって接続した形状をなすものであり、複数の脚のそれぞれの外周部には変圧器巻線が装着されている。これら変圧器鉄心および複数の変圧器巻線は変圧器本体を構成するものであり、タンク1内には変圧器本体を冷却するための絶縁油が充填されている。この変圧器本体は静止誘導機器本体に相当する。
【0009】
タンク1の周板2には、図2に示すように、開口部5が形成されている。この開口部5は横長な長方形状をなすものであり、高さ寸法が横幅寸法に比べて小さく設定されている。このタンク1の周板2には、図1に示すように、ブッシングポケット6の基端部が固定されている。このブッシングポケット6はタンク1の周板2から水平に外側へ突出するものであり、基端側の端面および先端側の端面のそれぞれが開口する四角筒状をなしている。このブッシングポケット6は周板2の開口部5を取囲むものであり、図2に示すように、ブッシングポケット6の基端側の端面は開口部5を介してタンク1内に通じている。
【0010】
ブッシングポケット6には、図3に示すように、ブッシング座板7が固定されている。このブッシング座板7は横長な長方形状をなすものであり、ブッシングポケット6の先端側の端面を閉鎖している。このブッシング座板7には、図4に示すように、3つの引出し孔8が形成されている。これら3つの引出し孔8のそれぞれは円形状をなすものであり、水平方向に等ピッチPで一列に配列されている。
【0011】
ブッシング座板7には、図4に示すように、3つの凹部9が形成されている。これら3つの凹部9のそれぞれはブッシング座板7の表面に対してブッシングポケット6側へ窪むものであり、引出し孔8を取り囲む円環状をなしている。これら3つの凹部9のそれぞれの外周部には6つのネジ穴10が配置されている。これら各組の6つのネジ穴10のそれぞれはブッシング座板7に形成された有底なものであり、円周方向に等ピッチで配列されている。
【0012】
ブッシング座板7には、図5に示すように、3つの高圧ブッシング11が固定されている。これら3つの高圧ブッシング11のそれぞれはブッシングに相当するものであり、ブッシング本体12およびブッシングフランジ13を有している。これら3つのブッシングフランジ13のそれぞれは円環状をなすものであり、6つの貫通孔を有している。これら各ブッシンフランジ13の6つの貫通孔内のそれぞれにはブッシングポケット6とは反対側からネジ14が挿入されており、3つの高圧ブッシング11のそれぞれは6つのネジ14をブッシング座板7のネジ穴10内に螺合することでブッシング座板7に接合されている。
【0013】
3つのブッシング本体12のそれぞれは、図6に示すように、ブッシングフランジ13の内周面に固定されたものであり、ブッシングポケット6内に挿入された容器内部およびブッシングポケット6外へ突出する容器外部を有している。これら3つのブッシング本体12のそれぞれはタンク1内の変圧器本体からタンク1外へ送電するためのものであり、中心部に高圧導体が挿入されている。
【0014】
3つのブッシングフランジ13のそれぞれには、図6に示すように、凸部15が形成されている。これら3つの凸部15のそれぞれはブッシングフランジ13からブッシングポケット6側へ突出するものであり、円環状をなしている。これら3つの凸部15のそれぞれはブッシング座板7の凹部9内に嵌め込まれており、3つの高圧ブッシング11のそれぞれは凸部15が凹部9に嵌め込まれることに応じてブッシング本体12およびブッシングフランジ13のそれぞれが引出し孔8に対して同心となる目標位置に配置されている。
【0015】
3つのブッシング本体12のそれぞれには、図6に示すように、容器内部に位置して接続端子16が固定されている。これら3つの接続端子16のそれぞれはL字板状をなすものであり、ブッシングポケット6内に収納されている。これら3つの接続端子16のそれぞれには配線17の圧着端子18が接続されており、3つの配線17のそれぞれはタンク1内で変圧器巻線に接続されている。
【0016】
3つの配線17には、図2に示すように、配線連結部材19が固定されている。この配線連結部材19は高圧ブッシング11の配列方向に沿う横長なものであり、3つの配線17のそれぞれは配線17の先端から長さLの位置で配線連結部材19に結束バンド20を介して結束されている。この配線連結部材19は水平方向に隣接する配線17間をピッチWで連結するものであり、配線17間のピッチWは引出し孔8間のピッチPに等しく設定されている。
【0017】
3つのブッシングフランジ13には、図5に示すように、2つのブッシング連結部材21が固定されている。これら2つのブッシング連結部材21のそれぞれは横長なものであり、6つの貫通孔を有している。これら各ブッシング連結部材21の6つの貫通孔内のそれぞれにはネジ14が挿入されており、2つのブッシング連結部材21のそれぞれは6つのネジ14をブッシング座板7のネジ穴10内に螺合することに応じて3つのブッシングフランジ13と共にブッシング座板7に固定されている。これら2つのブッシング連結部材21のうち一方は3つのブッシングフランジ13間を上端部で連結しており、他方は3つのブッシングフランジ13間を下端部で連結している。
【0018】
次に3つの高圧ブッシング11の取付け手順について説明する。
[1]1つの配線17をブッシングポケット6内から引出し孔8を通してブッシングポケット6外に引出す(図6参照)。この引出し作業は配線連結部材19の装着状態で行われるものであり、残りの2つの配線17のそれぞれは配線連結部材19を介して1つの配線17と共に移動することに応じて引出し孔8からブッシングポケット6外へ引出される。これら3つの配線17のそれぞれの引出し作業は配線連結部材19がブッシングポケット6に接触することで停止するものであり、配線連結部材19は3つの配線17のそれぞれのブッシングポケット6外への引出し量を上限値Lに制限する。
[2]3つの配線17のそれぞれの圧着端子18をブッシングポケット6外で高圧ブッシング11の接続端子16に接続する。
[3]3つのブッシングフランジ13のそれぞれの凸部15をブッシング座板7の凹部9内に嵌め込む。
[4]3つのブッシングフランジ13のそれぞれについて、水平方向に対向する2つの貫通孔内のそれぞれにネジ14を挿入し、計6つのネジ14のそれぞれをブッシング座板7のネジ穴10内に螺合することに応じて3つの高圧ブッシング11のそれぞれをブッシング座板7に仮止めする。
[5]2つのブッシング連結部材21のそれぞれについて、6つの貫通孔内のそれぞれにネジ14を挿入し、計12のネジ14のそれぞれをブッシングフランジ13の貫通孔を通してブッシング座板7のネジ穴10内に螺合することに応じて3つの高圧ブッシング11および2つのブッシング連結部材21をブッシング座板7に固定する。
【0019】
上記実施例1によれば次の効果を奏する。
3つの配線17のそれぞれをブッシングポケット6内から引出し孔8を通してブッシングポケット6外へ引出し、ブッシングポケット6外で高圧ブッシング11に接続した。このため、作業者がブッシングポケット6内で高圧ブッシング11および配線17間の接続作業を行う必要がなくなるので、ブッシングポケット6に作業者が出入りするための開口部を設ける必要がなくなる。従って、ブッシングポケット6が開口部の廃止分だけ小形になり、しかも、開口部を開閉するカバーも不要になる。
【0020】
3つの配線17間をブッシングポケット6内で配線連結部材19によって連結し、配線17間に引出し孔8間のピッチPに応じた間隔を形成したので、1つの配線17をブッシングポケット6内から引出し孔8を通してブッシングポケット6外へ引出すことに応じて残りの2つの配線17のそれぞれが引出し孔8を通してブッシングポケット6外へ引出される。従って、作業者がブッシングポケット6外に居ながらも3つの配線17を一挙にブッシングポケット6外へ引出すことが可能になるので、3つの配線17の引出し作業が簡単になる。しかも、配線連結部材19がブッシングポケット6に接触することに応じて3つの配線17の引出し操作が停止するので、作業者が3つの配線17を高圧ブッシング11の接続作業を行うために充分な必要量Lだけ簡単に引出すことができる。
【0021】
3つの高圧ブッシング11間をブッシングポケット6外で2つのブッシング連結部材21によって連結したので、1つの高圧ブッシング11を交換する場合であっても2つのブッシング連結部材21をブッシング座板7から取外す必要性が生じる。このため、3つの高圧ブッシング11の取外し状態で1つの高圧ブッシング11の交換作業が行われる確率が高くなり、2つの高圧ブッシング11の取付け状態で1つの高圧ブッシング11の交換作業が行われる確率が低くなる。従って、1つの高圧ブッシング11の交換作業時に残りの2つの高圧ブッシング11の配線17が配線連結部材19を介して引っ張られることを防止できるので、残りの2つの高圧ブッシング11の配線17がブッシングポケット6内で折れ曲がることを防止できる。
【0022】
高圧ブッシング11の凸部15をブッシング座板7の凹部9内に嵌め込んだので、高圧ブッシング11がブッシング座板7に対して目標位置に仮止めされる。従って、高圧ブッシング11を位置決め状態でブッシング座板7にネジ14で接合することができるので、高圧ブッシング11が確実且つ簡単に目標位置に接合される。
【0023】
上記実施例1においては、ブッシングポケット6を廃止しても良い。この場合にはタンク1の周板2にブッシング座板7を直接的に接合すれば良い。
上記実施例1においては、3つの高圧ブッシング11間を1つのブッシング連結部材21によって連結しても良い。
【0024】
上記実施例1においては、3つの高圧ブッシング11のそれぞれをブッシング座板7に固定する専用の2つのネジ14を廃止し、2つのブッシング連結部材21がブッシング座板7から取外されることに応じて3つの高圧ブッシング11がブッシング座板7から取外される構成としても良い。
【0025】
上記実施例1においては、配線17間のピッチWを引出し孔8間のピッチPと異なる値に設定しても良い。要は1つの配線17を引出し孔8から引出すことに応じて残りの2つの配線17のそれぞれが引出し孔8から引出される値に設定すれば良く、好ましくは「P−R<W<P+R」である。ここでRは引出し孔8の直径寸法である。
【0026】
上記実施例1においては、本発明を変圧器とは異なるリアクトル等の静止誘導機器に適用しても良い。
以上、本発明の実施例を説明したが、この実施例は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施例やその変形は発明の範囲や要旨に含まれると共に特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
1はタンク(収納容器)、7はブッシング座板、8は引出し孔、9は凹部、11は高圧ブッシング(ブッシング)、17は配線、19は配線連結部材、21はブッシング連結部材である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6