特許第6588331号(P6588331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588331
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】一時染毛剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/898 20060101AFI20191001BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   A61K8/898
   A61Q5/06
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-252624(P2015-252624)
(22)【出願日】2015年12月24日
(65)【公開番号】特開2017-114815(P2017-114815A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】飯久保 理奈
(72)【発明者】
【氏名】小原 周一郎
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−1480(JP,A)
【文献】 特開2010−163390(JP,A)
【文献】 特開2013−23465(JP,A)
【文献】 特開平07−133352(JP,A)
【文献】 特開平09−100221(JP,A)
【文献】 特開2012−102066(JP,A)
【文献】 特開2010−100543(JP,A)
【文献】 特開2009−24114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)〜(C)を含有し、成分(B)と成分(C)との質量比(B)/(C)が1以上5以下である一時染毛剤組成物。
成分(A):顔料
成分(B):主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、下記一般式(1);
【化1】
〔式中、R1は水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、アラルキル基又はアリール基を示し、nは2又は3を示す。〕
で表される繰り返し単位からなるポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントが結合してなるオルガノポリシロキサンであって、
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメント(a)と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(b)との質量比(a/b)が48/52以上73/27以下であり、
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量が15,000以上80,000以下である、
オルガノポリシロキサン
成分(C):主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、上記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントが結合してなるオルガノポリシロキサンであって、
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメント(a)と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(b)との質量比(a/b)が82/18以上98/2以下であり、
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量が50,000以上150,000以下である、
オルガノポリシロキサン
【請求項2】
成分(B)及び成分(C)の合計と成分(A)との質量比[(B)+(C)]/(A)が、0.5以上20以下である請求項1に記載の一時染毛剤組成物。
【請求項3】
成分(A)の含有量が、0.5質量%以上20質量%以下である請求項1又は2に記載の一時染毛剤組成物。
【請求項4】
成分(B)と成分(C)との合計含有量が、5.5質量%以上30質量%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の一時染毛剤組成物。
【請求項5】
成分(B)のオルガノポリシロキサンに結合するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの数平均分子量が、800以上3,500以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の一時染毛剤組成物。
【請求項6】
水の含有量が10質量%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の一時染毛剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一時染毛剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
染毛剤は、酸化染料を用いて頭髪中で発色させることで着色する永久染毛剤(ヘアカラー等)、直接染料を頭髪に浸透吸収させることで着色する半永久染毛剤(ヘアマニキュア等)、頭髪上の着色剤(主として顔料)を含む着色皮膜を形成させることで着色する一時染毛剤(ヘアマスカラ等)等に分類される。このうち、一時染毛剤は、頭髪へのダメージが少なく、洗髪により容易に除去でき、簡便に用いることができることから、気軽に毛染めを楽しむことができるものとして好まれている。従来の一時染毛剤としては、着色剤を着色皮膜として頭髪上に固着させるとともに、この着色皮膜に耐水性を付与し、また皮膚や衣類への色移りを防止するため、皮膜形成ポリマーを含有させた組成物等が知られている。
【0003】
特許文献1では、特定範囲のポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性オルガノポリシロキサンを含有する一時染毛剤が開示されている。この一時染毛剤は、着色性と色移りのし難さに優れるほか、着色皮膜の耐水性、乾燥後の頭髪の柔らかな感触、高いセット性とその崩れにくさにも優れるものである。
【0004】
特許文献2では、特許文献1で用いられているものとは変性比率等が異なるポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性オルガノポリシロキサンを含有する一時染毛剤が開示されている。このものは、着色性、耐水性、色移りのし難さに優れるほか、着色毛髪の感触の良さ、べたつきのなさ、毛髪上への塗布性にも優れるものである。
【0005】
一方、ヘアスタイリング剤の分野では、2種類以上のポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性オルガノポリシロキサンを混合して使用することも知られており、特許文献3では変性比率等の異なる2種のポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性オルガノポリシロキサンを特定比率で配合した毛髪化粧料が開示されている。この毛髪化粧料は、細く絡まりやすい毛髪に対し、ふんわりとしたボリュームを与えかつ長時間維持すると共に、柔軟な感触と見た目に自然な仕上がり感を与えることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-163390号公報
【特許文献2】特開2012-1480号公報
【特許文献3】特開2013-23465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、仕上がりの外観をより高めようとした場合、特にファッション性を求める場合や、お洒落が目的の場合は、着色のみならず、着色して乾燥した毛髪に対して更にスタイリング行動を行って髪型をアレンジしたいという要求があるが、特許文献1及び2に記載の一時染毛剤は、着色後にアレンジをするといった目的に対しては効果が不十分であった。
【0008】
例えば、特許文献1に記載の一時染毛剤では、塗布して乾燥する前に整髪をした場合に高いセット性を有するが、乾燥後の毛髪のベタつきが強いため、乾燥後に櫛や手を通して毛髪を更にアレンジすることが困難な場合があった。
【0009】
また、特許文献2に記載の一時染毛剤では、べたつきはなく髪は扱いやすいが、くしや手を通すと摩擦によって着色皮膜の剥離が生じ、スタイリング時の色落ちの原因となる場合があった。更に、元髪からの大きく色を変化させる場合、特に青や赤などの鮮明な色に変化させる場合には、週末のみや1日間だけに使用したいという要望があり、洗髪により確実に着色剤を洗い流せる必要があるが、特許文献1、2に記載の一時染毛剤では、耐水性を高めた結果、黒髪に対し鮮やかな発色を付与することができるだけの十分量の一時染毛剤を毛髪に塗布するとシャンプーによる洗い落ち性が不十分であった。
【0010】
したがって本発明は、毛髪着色後もべたつかずに毛束が扱いやすいためスタイリング性を損なわず、くし通り性が良く、摩擦時の色落ちや着色皮膜の剥離を伴わず耐摩擦性に優れ、更に黒髪に鮮やかな発色を付与するために十分量塗布した場合でも洗い落ち性に優れる一時染毛剤組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、変性比率等の異なる2種のポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性オルガノポリシロキサンを特定の比率で含有することで上記要求を満たす一時染毛剤組成物が得られることを見いだした。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の成分(A)〜(C)を含有し、成分(B)と成分(C)との質量比(B)/(C)が1以上5以下である一時染毛剤組成物を提供するものである。
成分(A):顔料
成分(B):主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、下記一般式(1);
【0013】
【化1】
【0014】
〔式中、R1は水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、アラルキル基又はアリール基を示し、nは2又は3を示す。〕
で表される繰り返し単位からなるポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントが結合してなるオルガノポリシロキサンであって、
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメント(a)と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(b)との質量比(a/b)が48/52以上73/27以下であり、
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量が15,000以上80,000以下である、
オルガノポリシロキサン
成分(C):主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、上記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントが結合してなるオルガノポリシロキサンであって、
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメント(a)と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(b)との質量比(a/b)が82/18以上98/2以下であり、
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量が50,000以上150,000以下である、
オルガノポリシロキサン
【発明の効果】
【0015】
本発明の一時染毛剤組成物は、着色性が良く元の髪色を十分に隠蔽することができ、塗布後のべたつきがなく、毛束の滑りが良好で、乾燥後のくし通りが良く、櫛を通せば毛束が容易にばらける。また、塗布後の毛束や、塗布後に一度櫛をとおした髪に対して摩擦を与えても色落ちや着色皮膜の剥離がない。更に、洗い落ち性に優れており、強く発色するために十分な量を塗布した場合でも、シャンプーで洗えば元の髪色に戻すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔成分(A):顔料〕
成分(A)の顔料は、成分(B)及び成分(C)と組み合わせて用いることにより、頭髪に顔料を含む皮膜を形成し、頭髪表面を着色被覆するために配合されるものであり、化粧料に一般に用いられるものであれば特に制限はない。
【0017】
顔料としては、その形状(球状、針状、板状等)や粒子径、粒子構造(多孔質、無孔質等)を問わず、いずれのものも使用することができ、例えば無機顔料、有機顔料、パール顔料、金属粉末顔料、光輝性粉体等が挙げられる。
【0018】
無機顔料としては、具体的には、カーボンブラック、黒酸化鉄、黒酸化チタン等の無機黒色系顔料;酸化鉄(べんがら)、水酸化鉄、チタン酸鉄等の無機赤色系顔料;γ−酸化鉄等の無機褐色系顔料;黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料;群青、紺青等の無機青色系顔料;マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色系顔料;酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料;酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の無機白色系顔料等が挙げられる。これらのうち、カーボンブラック、黒酸化鉄、黒酸化チタン、酸化鉄(べんがら)、黄酸化鉄、群青、紺青が好ましい。
【0019】
有機顔料としては、赤色201号、赤色202号、赤色203号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色207号、赤色208号、赤色219号、赤色220号、赤色221号、赤色228号、赤色404号、赤色405号、だいだい色203号、だいだい色204号、だいだい色401号、黄色205号、黄色401号、青色404号等が挙げられ、このうち、赤色202号、赤色404号、黄色205号、黄色401号、青色404号が好ましい。
【0020】
パール顔料としては、パール粉末、オキシ塩化ビスマス、雲母、金属酸化物被覆雲母(例えば、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、黒酸化鉄被覆雲母、黒酸化鉄被覆雲母チタン、黄酸化鉄被覆雲母、酸化鉄・黒酸化鉄被覆雲母チタン、紺青被覆雲母チタン、酸化鉄・紺青被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン等)、金属酸化物被覆アルミナフレーク、金属酸化物被覆シリカフレーク、多層コートパール顔料(例えば、TiO2-SiO2-TiO2-Mica等)等が挙げられる。
【0021】
金属粉末顔料としては、金粉、銀粉、銅粉、アルミニウム粉、真鍮粉等が挙げられる。
光輝性粉体としては、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層体、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム体等が挙げられる。
【0022】
成分(A)の顔料は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。一時染毛剤組成物中における成分(A)の含有量は、黒髪でも金髪でも元の髪色に関わらず、元の髪色を隠蔽し、かつ元の髪色とは全く異なる赤や青等の鮮やかな色を発色する点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上である。また、毛髪の感触を損なわず、スタイリング時に毛髪を扱いやすい点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下である。
【0023】
〔成分(B):第一のオルガノポリシロキサン〕
成分(B)のオルガノポリシロキサンは、以下に示すポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性オルガノポリシロキサン(以下、単に「第一のオルガノポリシロキサン」とも称する)である。
【0024】
成分(B)は、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、下記一般式(1);
【0025】
【化2】
【0026】
〔式中、R1は水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、アラルキル基又はアリール基を示し、nは2又は3を示す。〕
で表される繰り返し単位からなるポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントが結合してなるオルガノポリシロキサンであって、
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメント(a)と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(b)との質量比(a/b)が48/52以上73/27以下であり、
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量が15,000以上80,000以下である、オルガノポリシロキサンである。
【0027】
成分(B)において、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントは、オルガノポリシロキサンセグメントを構成する任意のケイ素原子に、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して少なくとも2つ結合することが可能であるが、両末端を除く1以上のケイ素原子に上記アルキレン基を介して結合していることが好ましく、両末端を除く2以上のケイ素原子に上記アルキレン基を介して結合していることがより好ましい。
【0028】
オルガノポリシロキサンセグメントとポリ(N-アシルアルキレンイミン)との結合において介在するヘテロ原子を含むアルキレン基としては、窒素原子、酸素原子及び/又はイオウ原子を1〜3個含む炭素数2〜20のアルキレン基が挙げられる。その具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0029】
【化3】
【0030】
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントを構成するN-アシルアルキレンイミン単位は前記一般式(1)で表されるものであるが、一般式(1)において、R1の炭素数1〜22のアルキル基としては、例えば、炭素数1〜22の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が例示され、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ドコシル基等が例示される。中でも、炭素数1〜10、更には炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
【0031】
アラルキル基としては、例えば、炭素数7〜15のアラルキル基が例示され、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、トリチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基等が例示される。中でも、炭素数7〜14、更には炭素数7〜10のアラルキル基が好ましい。
【0032】
アリール基としては、例えば、炭素数6〜14のアリール基が例示され、具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基等が例示され、中でも、炭素数6〜12、更には炭素数6〜9のアリール基が好ましい。
【0033】
これらの中でも、R1としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
【0034】
成分(B)におけるオルガノポリシロキサンセグメント(a)と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(b)との質量比(a/b)は、48/52以上であって、50/50以上が好ましく、また、73/27以下であって、71/29以下が好ましい。
【0035】
なお、本明細書において、質量比(a/b)は、成分(B)又は成分(C)のオルガノポリシロキサンを重クロロホルム中に5質量%溶解させ、核磁気共鳴(1H-NMR)分析により、オルガノポリシロキサンセグメント中のアルキル基又はフェニル基と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント中のメチレン基の積分比より求めた値をいう。
【0036】
また、成分(B)において、隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(MWg)は、着色後にベタつかず、毛束が扱いやすい観点から、好ましくは1,500以上、より好ましくは1,800以上、更に好ましくは2,000以上であり、好ましくは3,500以下、より好ましくは3,200以下、更に好ましくは3,000以下である。
【0037】
本明細書において、「隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメント」とは、下記式(2)に示すように、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントのオルガノポリシロキサンセグメントに対する結合点(結合点A)から、これに隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの結合点(結合点B)までの2点間において破線で囲まれた部分であって、1つのR2SiO単位と、1つのR6と、y+1個のR22SiO単位とから構成されるセグメントをいう。また、「ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント」とは、上記R6に結合する−Z−R7をいう。
【0038】
【化4】
【0039】
上記一般式(2)中、R2はそれぞれ独立に炭素数1〜22のアルキル基又はフェニル基を示し、R6はヘテロ原子を含むアルキレン基を示し、R7は重合開始剤の残基を示し、−Z−R7はポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントを示し、yは正の数を示す。
【0040】
MWgは、上記一般式(2)において破線で囲まれた部分の分子量であるが、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント1モル当たりのオルガノポリシロキサンセグメントの質量(g/mol)と解することができ、原料化合物である変性オルガノポリシロキサンの官能基がポリ(N-アシルアルキレンイミン)で100%置換されると、変性オルガノポリシロキサンの官能基当量(g/mol)と一致する。
【0041】
また、原料化合物である変性オルガノポリシロキサンの官能基当量(g/mol)が分かっている場合には、MWgは、その官能基がポリ(N-アシルアルキレンイミン)で100%置換されなかった場合であっても、以下の式で算出することができる。
【0042】
MWg=[変性オルガノポリシロキサンの官能基当量(g/mol)]÷[置換率(%)/100(%)]
【0043】
また、変性オルガノポリシロキサンの官能基当量が分からない場合、MWgは、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの含有率(Csi)とポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの分子量(MWox)を用いて、下記式により求めることができる。
【0044】
【数1】
【0045】
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの分子量(MWox)は、N-アシルアルキレンイミン単位の分子量と重合度とから算出する方法又は後述するゲルパーミエションクロマトグラフィ(GPC)測定法により測定することが可能であるが、本発明においてはGPC測定法により測定される数平均分子量をいうものとする。成分(B)のMWoxは、摩擦時の色落ちや着色皮膜の剥離を伴わず耐摩擦性に優れる観点から、好ましくは800以上、より好ましくは850以上、更に好ましくは900以上であり、また好ましくは3,500以下、より好ましくは3,200以下、更に好ましくは3,000以下である。
【0046】
成分(B)において、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(MWsi)は、摩擦時の色落ちや着色皮膜の剥離を伴わず耐摩擦性に優れる観点から、15,000以上であって、好ましくは20,000以上、より好ましくは25,000以上であり、また、黒髪に鮮やかな発色をするために十分量塗布しても洗い落ち性に優れる観点から、80,000以下であって、好ましくは70,000以下、より好ましくは60,000以下である。主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントは、原料化合物である変性オルガノポリシロキサンと共通の骨格を有するため、MWsiは、原料化合物である変性オルガノポリシロキサンの重量平均分子量と略同一である。なお、原料化合物である変性オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、下記測定条件によるGPCで測定し、ポリスチレン換算したものである。
【0047】
カラム :Super HZ4000+Super HZ2000(東ソー株式会社製)
溶離液 :1mMトリエチルアミン/THF
流量 :0.35mL/min
カラム温度:40℃
検出器 :UV
サンプル :50μL
【0048】
成分(B)のオルガノポリシロキサンの重量平均分子量(MWt)は、好ましくは18,000以上、更に好ましくは24,000以上、更に好ましくは37,000以上であり、また、好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下、更に好ましくは120,000以下、更に好ましくは92,000以下、更に好ましくは80,000以下、更に好ましくは75,000以下である。これにより、十分な皮膜強度を有し、摩擦時にも剥がれ落ちることなく顔料を毛髪上に固定できる。また、十分な耐水性を有しながら、活性剤等に対しては溶解し、洗い落ち性が優れるようになる。本明細書において、MWtは、原料化合物である変性オルガノポリシロキサンの重量平均分子量と、前述の質量比(a/b)とから求めることができる。
【0049】
成分(B)のオルガノポリシロキサンは、例えば特開2009-024114号公報や国際公開2011/062210号パンフレットで開示されている方法のような公知の製造方法により、製造することができる。
【0050】
成分(B)のオルガノポリシロキサンとしては、ポリ(N-ホルミルエチレンイミン)オルガノシロキサン、ポリ(N-アセチルエチレンイミン)オルガノシロキサン、ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)オルガノシロキサン等が挙げられる。
【0051】
成分(B)のオルガノポリシロキサンは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。成分(B)を2種以上組み合わせる場合には、以下の成分(B-1)及び(B-2)の2種を少なくとも含有することが好ましい。
【0052】
成分(B-1): 成分(B)のうち、オルガノポリシロキサンセグメント(a)と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(b)との質量比(a/b)が48/58以上55/45以下であるオルガノポリシロキサン
【0053】
成分(B-2): 成分(B)のうち、オルガノポリシロキサンセグメント(a)と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(b)との質量比(a/b)が65/35以上73/27以下であるオルガノポリシロキサン
【0054】
更に、成分(B-1)は、隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(MWg)が、2,000以上3,000以下であることが好ましく、また、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの分子量(MWox)が1,600以上3,500以下であることが好ましい。
【0055】
更に、成分(B-2)は、隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(MWg)が、2,000以上3,000以下であることが好ましく、また、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの分子量(MWox)が800以上1,600以下であることが好ましい。
【0056】
本発明の一時染毛剤組成物中における成分(B)の含有量は、顔料を毛髪上に固定化して摩擦時にも顔料が剥がれ落ちることなく、更に十分な耐水性を有する観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは9質量%以上であり、また、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは18質量%以下である。
【0057】
〔成分(C):第二のオルガノポリシロキサン〕
成分(C)のオルガノポリシロキサンは、成分(B)のオルガノポリシロキサンと同様に、前記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントが、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して結合したポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性オルガノポリシロキサン(以下、単に「第二のオルガノポリシロキサン」とも称する)である。
【0058】
したがって、成分(B)と成分(C)とは相互に類似した構造を有しており、共にINCI名で「ポリシリコーン-9」と称されるものであるが、成分(C)のオルガノポリシロキサンは、下記の点において、成分(B)のオルガノポリシロキサンと相違する。
【0059】
i)オルガノポリシロキサンセグメント(A)と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(B)との質量比(a/b)が、82/18以上98/2以下であること。
成分(C)のa/bは、べたつかず、かつ滑らかな感触に優れたものとし、くし通りや指のすべり通りを向上させる観点から、好ましくは84/16以上、より好ましくは85/15以上、更に好ましくは86/14であり、また、好ましくはより97/3以下、より好ましくは95/5以下である。
【0060】
ii)主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(MWsi)が、50,000以上150,000以下であること。
成分(C)のMWsiは、毛髪表面に適度な連続の皮膜を形成して、なめらかな感触とべたつきのなさを同時に満たし、加えて、くし通りや指のすべり通りを向上させ、更には毛髪に処理した一時染毛剤が耐水性に優れると同時にシャンプーによって洗い流せる観点から、好ましくは70,000以上、より好ましくは90,000以上であり、また130,000以下、より好ましくは110,000以下である。
【0061】
iii)隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(MWg)が、好ましくは10,000以上40,000以下であること。
成分(C)のMWgは、べたつかず、かつ滑らかな感触に優れたものとし、くし通りや指のすべり通りを向上させる観点から、より好ましくは15,000以上、更に好ましくは18,000以上であり、また、より好ましくは35,000以下、更に好ましくは32,000以下である。
【0062】
iv)ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの数平均分子量(MWox)が、好ましくは500以上4,000以下であること。
成分(C)のMWoxは、毛髪表面に適度な連続の皮膜を形成して、べたつかず、かつ滑らかな感触に優れたものとし、くし通りや指のすべり通りを向上させる観点から、より好ましくは800以上、更に好ましくは1,000以上であり、また、より好ましくは3,500以下、更に好ましくは3,000以下である。
【0063】
また、成分(C)のオルガノポリシロキサンの重量平均分子量(MWt)は、好ましくは60,000以上、より好ましくは80,000以上、更に好ましくは9,0000以上、更に好ましくは100,000以上であり、また、好ましくは160,000以下、より好ましくは140,000以下、更に好ましくは120,000以下である。これにより、べたつかず、かつ滑らかな感触がより一層向上したものとし、加えて毛髪に処理した一時染毛剤が耐水性に優れると同時にシャンプーによって洗い流せるようになる。
【0064】
成分(C)のオルガノポリシロキサンは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の一時染毛剤組成物中における成分(C)の含有量は、べたつかず、かつ滑らかな感触に優れたものとし、くし通し性や指のすべり通りが優れる観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、また10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6以下質量%である。
【0065】
本発明の一時染毛剤組成物中における成分(B)及び成分(C)の質量比(B)/(C)は、染毛後に毛髪を擦ったり櫛をとおした際に色がはがれにくく、くし通り後の色移りのなさ、及び洗い落ち性に優れる点から、1以上であって、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上であり、指へのまとわりつきを抑制しスタイリング性に優れ、くし通り性が優れる点から、5以下であって、好ましくは4.5以下、より好ましくは4以下である。
【0066】
また、本願発明の一時染毛剤組成物中における成分(B)と成分(C)の合計量は、毛髪を被覆するのに十分な量の顔料を十分に毛髪上に固定化し、摩擦時にはがれにくくする観点から、好ましくは5.5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは12質量%以上がである。また、毛髪の自然な感触を損なわず指へのまとわりつきを抑制し、洗い落ち性に優れる観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0067】
更に、本願発明の一時染毛剤組成物中における成分(B)及び成分(C)の合計と成分(A)との質量比[(B)+(C)]/(A)は、染毛後に毛髪を擦ったり櫛を通した際に色がはがれにくく、くし通り後の色移りを抑制する観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上である。また、指へのまとわりつきを抑制する点、及び洗い落ち性に優れる観点から、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは6以下である。
【0068】
〔溶媒〕
本発明の一時染毛剤組成物は、塗布後に衣類等への色移りを防止する点、感触を良好にする観点から、水と低級アルコールの混合物又は低級アルコールを溶媒とすることが好ましい。低級アルコールとしては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等の炭素数2〜4の一価のアルコールが挙げられ、中でもエタノール、2-プロパノールが好ましく、更にはエタノールが好ましい。
【0069】
本発明の一時染毛剤組成物中における低級アルコールの含有量は、調製時の溶解性促進、顔料分散性、塗布後の速乾性等の点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは97質量%以下である。
【0070】
また、水と低級アルコールの混合物を溶媒として使用する場合には、本発明の一時染毛剤組成物中における水の含有量は、乾燥時間が速く所望の部分以外への色移りをしない点より、35質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0071】
〔任意成分〕
本発明の一時染毛剤組成物中には、上記成分のほかに、本発明の効果を妨げない限度内で、商品価値を高めるために香料や色素、組成物の経日的変質防止のために防腐剤や酸化防止剤を添加することができ、また、更に必要に応じて、界面活性剤、硬化剤、帯電防止剤、消泡剤、分散剤、増粘剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、有色染料、染料定着剤、噴射剤等を添加することもできる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0073】
合成例1:オルガノポリシロキサンA
硫酸ジエチル6.17g(0.04モル)と2-エチル-2-オキサゾリン93.8g(0.947モル)を脱水した酢酸エチル203gに溶解し、窒素雰囲気下8時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)を合成した。数平均分子量をGPCにより測定したところ、2500であった。ここに、側鎖一級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量30,000、アミン当量2,000)100gの33%酢酸エチル溶液を一括して加え、10時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、N-プロピオニルエチレンイミン・ジメチルシロキサン共重合体を淡黄色固体(190g、収率95%)として得た。最終生成物のオルガノポリシロキサンセグメントの含有率は50質量%、重量平均分子量は60,000であった。溶媒としてメタノールを使用した塩酸による中和滴定の結果、約20モル%のアミノ基が残存していることがわかった。
【0074】
合成例2:オルガノポリシロキサンB
硫酸ジエチル6.5g(0.042モル)と2-エチル-2-オキサゾリン34.4g(0.36モル)を脱水した酢酸エチル87gに溶解し、窒素雰囲気下8時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)を合成した。数平均分子量をGPCにより測定したところ、1000であった。ここに、側鎖一級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量50,000、アミン当量2,000)100gの33%酢酸エチル溶液を一括して加え、10時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、N-プロピオニルエチレンイミン・ジメチルシロキサン共重合体を淡黄色固体(138g、収率98%)として得た。最終生成物のオルガノポリシロキサンセグメントの含有率は71質量%、重量平均分子量は70,000であった。溶媒としてメタノールを使用した塩酸による中和滴定の結果、約20モル%のアミノ基が残存していることがわかった。
【0075】
合成例3 オルガノポリシロキサンC
合成例1と同様の方法により、硫酸ジエチル19.0g(0.12モル)と2-エチル-2-オキサゾリン81.0g(0.82モル)を脱水した酢酸エチル203gに溶解し、窒素雰囲気下8時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)を合成した。数平均分子量をGPCにより測定したところ、800であった。ここに、側鎖一級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量50,000、アミン当量2,000)300gの33%酢酸エチル溶液を一括して加え、10時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、N-プロピオニルエチレンイミン−ジメチルシロキサン共重合体を、淡黄色ゴム状固体(390g、収率97%)として得た。最終生成物のシリコーンセグメントの含有率は75質量%、重量平均分子量は67,000であった。溶媒としてメタノールを使用した塩酸による中和滴定の結果、約20モル%のアミノ基が残存していることがわかった
【0076】
合成例4 オルガノポリシロキサンD
硫酸ジエチル0.77g(0.005モル)と2-エチル-2-オキサゾリン12.9g(0.13モル)を脱水した酢酸エチル28gに溶解し、窒素雰囲気下8時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)を合成した。数平均分子量をGPCにより測定したところ、2700であった。ここに、側鎖一級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量100,000、アミン当量20,000)100gの33%酢酸エチル溶液を一括して加え、10時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、N-プロピオニルエチレンイミン・ジメチルシロキサン共重合体を無色固体(108g、収率95%)として得た。最終生成物のオルガノポリシロキサンセグメントの含有率は88質量%、重量平均分子量は114,000であった。溶媒としてメタノールを使用した塩酸による中和滴定の結果アミノ基は残存していないことがわかった。
【0077】
〔実施例1〜7,比較例1〜5〕
表1に示す一時染毛剤組成物を常法によって調製し、以下に示す評価用毛束に対し、各組成物0.4gを毛束の根元から毛先にかけて塗り伸ばした。室温で1分放置し、毛束を乾燥させた。その後、以下の方法及び基準に従って性能評価を行った。
【0078】
<評価用毛束>
化学的処理履歴の無い日本人直毛で長さ25cm、重さ1gの毛束を作製した。この毛束を、以下に処方を示すモデルシャンプーで洗浄した。タオルドライを行った後にドライヤー(ソリス社製、ソリスドライヤー315)で1分間乾かした後の毛束を評価に用いた。
【0079】
モデルシャンプーの組成
(質量%)
ポリオキシエチレン(2.5)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 15.50
ラウリン酸ジエタノールアミド 2.28
エデト酸二ナトリウム 0.10
安息香酸ナトリウム 0.50
オキシベンゾン 0.03
リン酸 0.075
ジブチルヒドロキシトルエン 0.01
塩化ナトリウム 0.80
赤色106号 0.00012
香料 0.26
精製水 バランス
【0080】
<黒髪への着色性>
各着色毛束の着色性について、パネラー5名による4段階視覚評価を行った。
4点:元髪の色が隠蔽され、十分に着色している
3点:元髪の色がやや隠蔽され、着色している
2点:元髪の色があまり隠蔽されず、あまり着色していない
1点:全く着色していない
【0081】
<乾燥後のくし通り性>
乾燥した着色毛束にくし(貝印社製、HK0103 B's セットコームL)を1秒間に1回、合計10回通した際のくし通りをパネラー5人によって評価した。
4点:簡単にくしで梳かして毛束をバラけさせられる
3点:やや簡単にくしで梳かして毛束をバラけさせられる
2点:ややくし通りが悪く毛束をバラけさせにくい
1点:くしが通らず毛束をバラけさせられない
【0082】
<くし通し後の耐剥離性>
5cm四方の黒色画用紙を半分に折りたたんだ間に、乾燥後のくし通り性を評価した毛束の根本を挟み、200gの重りを載せた。重りを載せたまま、毛束を3秒間で引き抜き、試験後の黒色画用紙を観察し、紙に残る着色毛束の顔料を目視で観察することで200g荷重環境下での耐剥離性を評価した。観察はパネラー5名による4段階視覚評価で行った。
4点:全く色移りしない
3点:剥離膜の断片がやや付着するが、ほとんど色移りしない
2点:剥離膜がすじ状に付着し、やや色移りする
1点:色移りする
【0083】
<指へのまとわり付きのなさ>
乾燥後のくし通り性を評価した毛束を指で触り、以下の基準で指へのまとわり付きのなさを評価した。評価はパネラー5名による4段階評価で行った。
4点:ベタつきを感じず、すべりが良い
3点:べたつきをほとんど感じず、ややすべりが良い
2点:ややべたつきを感じ、ややすべりが悪い
1点:べたつきを感じ、すべりが悪い
【0084】
<洗い落ち性>
乾燥後のくし通り性を評価した毛束を40℃の水道水で10秒間濡らした後、前掲のモデルシャンプーを0.5g塗布し、30秒間泡立てた後、40℃の水道水で15秒間すすぐことを2回行った。その後タオルドライを行った後にドライヤー(ソリス社製、ソリスドライヤー315)で1分間乾かした後の毛束の色を観察した。観察はパネラー5名による4段階視覚評価で行った。
4点:完全に洗い落とすことができ、着色部分が全くない
3点:ほぼ完全に洗い落とすことができ、着色部分がほとんどない
2点:ほぼ洗い落とすことができているが、着色部分がわずかにある
1点:洗い落とすことができておらず、着色部分が顕著にある
【0085】
【表1】