(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588340
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】窒化物パワーデバイスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20191001BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20191001BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20191001BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20191001BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20191001BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20191001BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20191001BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20191001BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/06 301D
H01L29/06 301F
H01L29/48 D
H01L29/48 F
H01L29/50 M
H01L29/78 301B
H01L29/78 301W
H01L29/86 301D
H01L29/86 301F
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-556386(P2015-556386)
(86)(22)【出願日】2014年1月27日
(65)【公表番号】特表2016-510514(P2016-510514A)
(43)【公表日】2016年4月7日
(86)【国際出願番号】CN2014071559
(87)【国際公開番号】WO2014121710
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2015年10月7日
【審判番号】不服2017-14097(P2017-14097/J1)
【審判請求日】2017年9月22日
(31)【優先権主張番号】201310049854.4
(32)【優先日】2013年2月7日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515217292
【氏名又は名称】蘇州晶湛半導体有限公司
【氏名又は名称原語表記】ENKRIS SEMICONDUCTOR,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】程凱
【合議体】
【審判長】
飯田 清司
【審判官】
加藤 浩一
【審判官】
小田 浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−217049(JP,A)
【文献】
特開平11−330489(JP,A)
【文献】
特開平3−235348(JP,A)
【文献】
特開2007−158143(JP,A)
【文献】
特開2012−156320(JP,A)
【文献】
特開2007−294769(JP,A)
【文献】
特開2007−250721(JP,A)
【文献】
特開2012−231003(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/054123(WO,A1)
【文献】
特開2005−217049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/336-21/338
H01L27/095-27/098
H01L29/775-29/778
H01L29/78
H01L29/80-29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物パワーデバイスであって、
空間電荷空乏領域を形成することが可能な半導体ドーピング複数層構造を内部または裏面に形成し、表面が半導体ドーピング構造ではないシリコン表面を有するシリコン基板と、
上記半導体ドーピング構造ではないシリコン表面上におけるエピタキシャル複数層構造と、
前記エピタキシャル複数層構造上に形成される電極と、を含み、
上記エピタキシャル複数層構造は、窒化物核形成層と、前記窒化物核形成層上に形成される窒化物バッファ層と、前記窒化物バッファ層上に形成される窒化物チャネル層と、を含み、
前記窒化物パワーデバイスがトライオード構造である場合、前記電極は、ソースおよびドレイン、並びに、ソースとドレインとの間のゲートを含み、
前記窒化物パワーデバイスがダイオード構造である場合、前記電極は、正極および負極を含む窒化物パワーデバイス。
【請求項2】
前記半導体ドーピング複数層構造は、1層のn型半導体層および1層のp型半導体層で構成されるpn接合であり、1つの空間空乏領域を含み、もしくは、n型半導体層およびp型半導体層を交互に繰り返すことにより構成される複数層構造であり、複数のpn接合、即ち、複数の空間空乏領域を含むことを特徴とする請求項1に記載の窒化物パワーデバイス。
【請求項3】
前記半導体ドーピング複数層構造におけるn型半導体層およびp型半導体層の単層の厚さが2nmより大きく、該半導体ドーピング複数層構造におけるn型半導体層およびp型半導体層がそれぞれn−型半導体およびp−型半導体であり、半導体ドーピング複数層構造全体の層数、厚さ、およびドーピング濃度は、耐えるべき電圧に応じて形成されることを特徴とする請求項2に記載の窒化物パワーデバイス。
【請求項4】
前記窒化物チャネル層上には、さらに窒化物バリア層が設けられており、窒化物チャネル層と窒化物バリア層との界面において、二次元電子ガスが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の窒化物パワーデバイス。
【請求項5】
前記窒化物バリア層上には、さらに誘電体層が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の窒化物パワーデバイス。
【請求項6】
前記誘電体層は、SiN、SiO2、SiON、Al2O3、HfO2 、HfAlOxのうちの1つを含み、もしくは、それらの任意の組み合わせであることを特徴とする請求項5に記載の窒化物パワーデバイス。
【請求項7】
上記窒化物バリア層上における窒化ガリウムキャップ層をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の窒化物パワーデバイス。
【請求項8】
上記窒化物バリア層と上記窒化物チャネル層との間におけるAlN挿入層をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の窒化物パワーデバイス。
【請求項9】
上記窒化物バッファ層と上記窒化物チャネル層との間におけるAlGaNバックバリア層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の窒化物パワーデバイス。
【請求項10】
前記ゲートの下方には、さらに絶縁誘電体層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の窒化物パワーデバイス。
【請求項11】
前記ゲートおよび/またはソースは、フィールドプレート構造を有することを特徴とする請求項1に記載の窒化物パワーデバイス。
【請求項12】
窒化物パワーデバイスの製造方法であって、
空間電荷空乏領域を形成することが可能な半導体ドーピング複数層構造を表面が半導体ドーピング構造ではないシリコン表面を有するシリコン基板の内部または裏面に導入するステップと、
上記半導体ドーピング構造ではないシリコン表面上にエピタキシャル複数層構造を成長させるステップと、
上記エピタキシャル複数層構造上に電極を形成するステップと、を含み、
上記半導体ドーピング構造ではないシリコン表面上にエピタキシャル複数層構造を成長させるステップは、
上記シリコン表面上に窒化物核形成層を成長させ、
上記窒化物核形成層上に窒化物バッファ層を成長させ、
上記窒化物バッファ層上に窒化物チャネル層を成長させ、
前記窒化物パワーデバイスがトライオード構造である場合、前記電極は、ソースおよびドレイン、並びに、ソースとドレインとの間のゲートを含み、前記窒化物パワーデバイスがダイオード構造である場合、前記電極は、正極および負極を含む、
ことを特徴とする窒化物パワーデバイスの製造方法。
【請求項13】
前記半導体ドーピング複数層構造の製作方法がエピタキシャル成長またはイオン注入であることを特徴とする請求項12に記載の窒化物パワーデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロエレクトロニクス技術分野に属し、窒化物パワーデバイスおよび該窒化物パワーデバイスの製造方法に関し、特に、厚い空間電荷空乏領域を形成することが可能な半導体ドーピング複数層構造をSi基板に導入することにより、大きな印加電圧に耐えることが可能になり、デバイスの破壊電圧を向上させる。
【背景技術】
【0002】
第3世代の半導体材料である窒化ガリウム(GaN)は、大きなバンドギャップ、高い電子の飽和ドリフト速度、高い破壊電界強度、良い熱伝導性能などの特性を有するため、現在の研究のホットスポットとなっている。電子デバイスにおいて、シリコンおよびヒ化ガリウムよりも、窒化ガリウム材料が、高温、高周波、高電圧、およびハイパワーのデバイスの製造に好適であるため、窒化ガリウム基電子デバイスは、良い応用の見通しを持っている。
【0003】
従来から、窒化ガリウムパワーデバイスは、サファイアまたは炭化ケイ素基板上において製作され、窒化ガリウムヘテロ接合の導電チャネルの特殊性およびプロセスの難しさの制限で、窒化ガリウムパワーデバイスは、基本的に平面構造であり、基板が厚く且つ破壊電界が高いため、デバイスは、横方向の破壊が一般的であり、例えば、フィールドプレート構造、ゲートとドレインとの距離の増加などのような幾つかの平面最適化技術によって、デバイスの破壊電圧を向上させることができる。しかし、サファイアおよび炭化ケイ素基板材料は、高価であり、且つ、大きいサイズの基板材料およびエピタキシャル層を実現しにくいので、窒化ガリウムパワーデバイスは、コストが高く、市場化が難しい。
【0004】
現在、大きいサイズのシリコン基板上に窒化ガリウムパワーデバイスを成長させる技術は、成熟しつつあり、且つ、コストが低く、窒化ガリウムパワーデバイスの市場化を推進する主流方向であり、トライオード構造の窒化ガリウムパワーデバイスを例として、その構成は、
図1Aに示すように、シリコン基板1と、窒化物核形成層2と、窒化物バッファ層3と、窒化物チャネル層4と、窒化物バリア層5と、誘電体パッシベーション層9と、ソース6、ドレイン7、およびゲート8が含まれる3つの電極と、を含む。シリコン材料自体の導電性および低い臨界電界に起因して、シリコン基窒化ガリウムパワーデバイスは、いずれも、飽和破壊電圧を有し、この飽和破壊電圧は、シリコン基板上に成長させた窒化物エピタキシャル層の厚さによって決まる。また、デバイスにおける静電気の蓄積によるESD(静電気放電)を避け、および、回路において電圧のマッチングを実現するために、基板接地は、必ず避けられない選択であり、これにより、
図1Bに示すように、シリコン基窒化ガリウムパワーデバイスは、基板が接地される場合の破壊電圧Vbr1が、浮動接地の場合の破壊電圧Vbr2より半分に減少し、高抵抗FZシリコンを用いても、その電気抵抗率は、通常、10
4Ohm.cmを超えず、窒化物の電気抵抗率(>10
9Ohm.cm)より遥かに小さく、分圧の働きをすることができない。そこで、シリコン基板上の窒化物パワーデバイスの破壊電圧を向上させることは、現在、すぐに解決すべき課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エピタキシャル層の厚さを増加させることによって、シリコン基板窒化物高電圧デバイスの破壊電圧を向上させることができ、現在、シリコン材料上に窒化物エピタキシャル層を成長させる技術は成熟しつつあるが、シリコン材料と窒化物との間に巨大な格子不整合および熱的不整合が存在しているため、成長する窒化物エピタキシャル層の厚さが大幅に制限され、一般的に、約2μmから4μm程度であり、厚すぎる窒化物エピタキシャル層を成長させるには、もっと長い時間が必要となり、コストを増大させ、スループットを低下させることになるうえに、エピタキシャル層の品質が悪くなり、反りまたはクラックが発生しやすく、プロセスの難しさを増大させ、歩留まりを低下させるなどに至る。
【0006】
基板が接地されると、デバイスの破壊電圧も縦方向の破壊で影響される。この縦方向の破壊電圧は、エピタキシャル層の耐えることが可能な電圧、およびシリコン基板の耐えることが可能な電圧によって決まる。従って、全体の縦方向の破壊電圧は、シリコン基板の耐電圧性の改善によって向上することができる。
【0007】
シリコン基板の厚さは、一般的に一定であり、厚すぎると、コストを増大させるとともに、シリコン上の窒化物エピタキシャル層の品質に影響し、プロセスの難しさも増大させるので、基板の厚さを増加させることによりシリコン基板の耐電圧性を向上させることは、実行可能ではない。
【0008】
シリコン半導体デバイスにおいて、シリコン材料で製作されたPNダイオードは、高い逆方向の印加電圧に耐えることができる。一般的に、シリコン基板において、ドーピングによってN型ドープ領域およびP型ドープ領域を形成し、2つのドープ領域の内部に1つのPN接合が形成され、空間電荷空乏領域が形成され、空間電荷領域は、内部の導電電子および空穴がゼロに近似するまで非常に少なく、高抵抗領域に類似するものであり、破壊電界が高く、一定の印加電圧に耐えることができる。空間電荷領域は、耐えることが可能な電圧がその幅に関係し、空間電荷領域が広いほど、耐えることが可能な電圧が大きくなり、即ち、PNダイオードの破壊電圧が大きくなる。空間電荷領域の幅は、ドーピング濃度および印加電圧による影響を受け、一般的に、印加電圧の増加につれて、空間電荷領域の幅が次第に大きくなり、ドーピング濃度が高い場合、空間電荷領域が狭いことに対し、同様の電圧下、ドーピング濃度が低い場合、空間電荷領域の幅が広く、より高い印加電圧に耐えることができる。N型ドープ領域およびP型ドープ領域の内部の電子および空穴がまったく空乏になると、空間電荷領域の幅は拡張することなく、印加電圧を引き続いて増加させると、空間電荷領域が破壊されてしまうことになる。シリコンドーピングプロセスが成熟して安定するものであり、異なる構成、異なる濃度のドーピング分布を形成することが可能であるので、異なる電圧に耐えることが可能なPNダイオードが生じている。
【0009】
これに鑑み、エピタキシャルドーピングまたはイオン注入によって、シリコン基板の内部に、厚さが薄い横方向のP型ドープ半導体層およびN型ドープ半導体層を導入することができる。P型ドープ半導体層およびN型ドープ半導体層の内部に空間電荷領域が形成され、空間電荷領域の内部の導電電子および空穴がまったく空乏になり、空間電荷領域は、基本的に絶縁であり、高抵抗領域に近似するものであり、破壊電界が高く、一定の印加電圧に耐えることができる。空間電荷領域は、耐えることが可能な電圧が空間電荷領域の幅に関係し、空間電荷領域が広いほど、耐えることが可能な電圧が大きい。逆方向の印加電圧の増加につれて、空間電荷領域は、絶えず広くなり、耐えることが可能な電圧も絶えず大きくなり、半導体ドーピング層が薄いため、ドープ半導体層全体の内部の電子および空穴がまったく空乏になり、ドープ半導体領域全体は、高抵抗領域となり、高い印加電圧に耐えることが可能になる。複数層のN型半導体層およびP型半導体層がある場合、複数層の空間電荷空乏領域が形成され、且つ、1つの厚い空間電荷空乏領域が構成され、とても高い印加電圧に耐えることができ、実際には、デバイスの耐えるべき電圧に応じて、ドープ半導体層の具体的な構造を決定することができる。
【0010】
シリコン基板に導入されたP型ドープ半導体層およびN型ドープ半導体層によって形成された空間電荷領域は、導電シリコン基板に1つの耐高電圧層が挿入されることに相当し、シリコン基板の耐電圧性を向上させ、さらに、デバイス全体の破壊電圧を向上させ、特に、シリコン基板が接地される場合に、ドレインと基板電極との間の縦方向の破壊電圧を大幅に向上させる。
【0011】
本発明は、空間電荷空乏領域を形成することが可能な半導体ドーピング複数層構造をシリコン基板に導入することにより実現可能な、高い破壊電圧に耐える窒化物パワーデバイスを提供することを目的とする。この半導体ドーピング複数層構造は、薄いn型シリコン層およびp型シリコン層を交互に繰り返すことにより構成され、一定の印加電圧下で、半導体ドーピング層の各層ごとに空間電荷空乏領域が生じ、半導体ドーピング複数層構造全体で1つの厚い空間電荷空乏領域を形成し、大きな印加電圧に耐えることができ、半導体ドーピング複数層構造が厚いほど、形成される空間電荷領域が厚くなり、耐えることが可能な電圧降下が高くなる。また、本発明は、上記窒化物パワーデバイスの製造方法も提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一局面によれば、窒化物パワーデバイスが提供され、前記窒化物パワーデバイスは、空間電荷空乏領域を形成することが可能な半導体ドーピング複数層構造を含むシリコン基板と、上記シリコン基板上におけるエピタキシャル複数層構造と、前記エピタキシャル複数層構造上に形成される電極と、を含み、該エピタキシャル複数層構造は、少なくとも、窒化物核形成層と、前記窒化物核形成層上に形成される窒化物バッファ層と、前記窒化物バッファ層上に形成される窒化物チャネル層と、を含み、前記窒化物パワーデバイスがトライオード構造である場合、前記電極は、ソースおよびドレイン、並びに、ソースとドレインとの間のゲートを含み、前記窒化物パワーデバイスがダイオード構造である場合、前記電極は、正極および負極を含む。
【0013】
好ましくは、上記窒化物パワーデバイスにおいて、上記半導体ドーピング複数層構造は、1層のn型半導体層および1層のp型半導体層で構成されるpn接合であってよく、1つの空間空乏領域を含み、もしくは、n型半導体層およびp型半導体層を交互に繰り返すことにより構成される複数層構造であってもよく、複数のpn接合、即ち、複数の空間空乏領域を含む。
【0014】
シリコン基板が接地される場合、窒化物パワーデバイスには、正方向のバイアス電圧を印加してもよいし、逆方向のバイアス電圧を印加してもよい、ということを考慮すると、単層のn型半導体および単層のp型半導体で、双方向の電圧降下を引き受けることができない。このため、実用の基板構造は、複数層のn型およびp型半導体層で構成する必要がある。
【0015】
好ましくは、上記窒化物パワーデバイスにおいて、上記半導体ドーピング複数層構造におけるn型半導体層およびp型半導体層の厚さが2nmより大きく、該半導体ドーピング複数層構造におけるn型半導体層およびp型半導体層がそれぞれn−型半導体およびp−型半導体であり、半導体ドーピング複数層構造全体の層数、厚さ、およびドーピング濃度は、耐えるべき電圧に応じて調節することができる。
好ましくは、上記窒化物パワーデバイスにおいて、上記半導体ドーピング複数層構造の製作方法がエピタキシャル成長またはイオン注入である。
【0016】
好ましくは、上記窒化物パワーデバイスにおいて、上記半導体ドーピング複数層構造は、シリコン基板のトップ層、または内部、または裏面、あるいは、それらの任意の組み合わせに形成することが可能である。
【0018】
好ましくは、上記窒化物パワーデバイスにおいて、上記窒化物チャネル層上に窒化物バリア層が設けられており、窒化物チャネル層と窒化物バリア層との界面に二次元電子ガスが形成されている。
好ましくは、上記窒化物パワーデバイスには、上記バリア層上における誘電体層をさらに含む。
【0019】
好ましくは、上記窒化物パワーデバイスにおいて、上記誘電体層は、SiN、SiO
2、SiON、Al
2O
3、HfO
2、HfAlOxのうちの1つを含み、もしくは、それらの任意の組み合わせである。
好ましくは、上記窒化物パワーデバイスには、上記バリア層上における窒化ガリウムキャップ層をさらに含む。
【0020】
好ましくは、上記窒化物パワーデバイスには、上記バリア層と上記チャネル層との間におけるA
lN挿入層をさらに含む。
好ましくは、上記窒化物パワーデバイスには、上記バッファ層と上記チャネル層との間におけるA
lGaNバックバリア層をさらに含む。
好ましくは、上記窒化物パワーデバイスにおいて、上記ゲートの下に誘電体層を有する。
【0021】
好ましくは、上記窒化物パワーデバイスにおいて、上記ゲートはゲートフィールドプレートを有し、および/または、上記ドレインはドレインフィールドプレートを有する。
【0022】
本発明の一局面によれば、窒化物パワーデバイスを製造するための方法が提供され、前記方法は、空間電荷空乏領域を形成することが可能な半導体ドーピング複数層構造をシリコン基板に導入するステップと、上記半導体ドーピング複数層構造を含むシリコン基板上に窒化物核形成層を成長させるステップと、上記窒化物核形成層上に窒化物バッファ層を成長させるステップと、上記窒化物バッファ層上に窒化物チャネル層を成長させるステップと、上記窒化物チャネル層上に接触電極を形成するステップと、を含み、前記窒化物パワーデバイスがトライオード構造である場合、前記電極は、ソースおよびドレイン、並びに、ソースとドレインとの間のゲートを含み、前記窒化物パワーデバイスがダイオード構造である場合、前記電極は、正極および負極を含む。
【0023】
好ましくは、上記の窒化物パワーデバイスを製造するための方法において、上記半導体ドーピング複数層構造の製作方法がエピタキシャル成長またはイオン注入である。
【0024】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明の上述した特徴、利点、および目的をもっと良く了解させることが可能になると信じる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】従来のSi基板上の窒化物パワーデバイスの構成を示す図である。
【
図1B】シリコン上の窒化物パワーデバイスの、浮動接地の場合および基板接地の場合での破壊電圧である。
【
図2A】本発明の第1実施形態の窒化物パワーデバイスの構成を示す図である。
【
図2B】本発明の第1実施形態の1つの変形構成である。
【
図2C】本発明の第1実施形態の他の変形構成である。
【
図3】本発明の第1実施形態の1つの変形構成である。
【
図4】本発明の第1実施形態の他の変形構成である。
【
図5】本発明の第1実施形態の他の変形構成である。
【
図6】本発明の第2実施形態のシリコン基板上の窒化物パワーデバイスの構成を示す図である。
【
図7】本発明の第3実施形態のシリコン基板上の窒化物パワーデバイスの構成を示す図である。
【
図8】本発明の第4実施形態のシリコン基板上の窒化物パワーデバイスの構成を示す図である。
【
図9】本発明の第5実施形態のシリコン基板上の窒化物パワーデバイスの構成を示す図である。
【
図10】本発明の第6実施形態のシリコン基板上の窒化物パワーデバイスの構成を示す図である。
【
図11】本発明の第7実施形態のシリコン基板上の窒化物パワーデバイスの構成を示す図である。
【
図12】本発明の第8実施形態のシリコン基板上の窒化物パワーデバイスの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
背景技術に記載されたように、従来のシリコン基板窒化物パワーデバイスは、シリコン基板が接地された後、デバイス全体の縦方向の破壊電圧が元の半分に減少するため、デバイスの電圧破壊の確率を大幅に増大させる。
【0027】
本発明では、従来技術の欠陥に基づき、高い破壊電圧に耐えることが可能な窒化物パワーデバイスを提供している。この窒化物パワーデバイスでは、シリコン基板において、p型シリコン層およびn型シリコン層を交互に配列したpn接合が製作される。印加電圧が窒化物パワーデバイスに印加される場合、pn接合ごとに、1つの空間電荷空乏領域が形成され、1つまたは複数の空間電荷空乏領域の重ね合わせによって、デバイス全体の破壊電圧を大幅に向上させ、デバイスが電圧により破壊されるリスクを低減させる。
以下、図面を参照して、本発明の解決手段を詳しく説明する。
【0028】
図2Aを参照されたい。
図2Aは、本発明の第1実施形態のシリコン基板上の窒化物パワーデバイスの構成を示す図である。本実施形態では、トライオード構造を有する電界効果トランジスタを用いて説明する。この窒化物パワーデバイスは、空間電荷空乏領域を形成することが可能な半導体ドーピング複数層構造10を含むシリコン基板1と、上記シリコン基板1上におけるエピタキシャル複数層構造と、を含む。該エピタキシャル複数層構造は、窒化物核形成層2と、GaNまたはA
lNまたは他の窒化物を含み、基板材料と高品質窒化物エピタキシャル層とをマッチングする働きをして、上方の窒化ガリウム/窒化アルミニウムガリウムからなるヘテロ接合の結晶体品質、表面トボグラフィ、および電気的性質などのパラメータに影響するバッファ層3と、バッファ層3上に成長させ、アンドープGaN層を含むチャネル層4と、チャネル層4上に成長させ、AlGaNまたは他の窒化物を含み、チャネル層4とともに半導体ヘテロ接合構造を構成して、界面において高濃度の二次元電子ガスを形成し、GaNチャネル層のヘテロ接合の界面において導電チャネルを生じさせるバリア層5と、バリア層5上に堆積され、材料表面をパッシベーションするための、SiN、SiO
2、SiON、Al
2O
3、HfO
2、HfAlOxのうちの1つを含み、もしくは、それらの任意の組み合わせである誘電体層9と、を含む。ソース6とドレイン7との間の領域において、誘電体層がエッチングされてノッチを形成し、その後、金属を堆積してゲート8が形成される。本発明では、シリコン基板において、空間電荷空乏領域を形成することが可能な半導体ドーピング複数層構造10が導入され、この半導体ドーピング複数層構造10は、本発明の革新的なものであり、p型半導体層およびn型半導体層で構成されるpn接合、もしくは、複数層のp型半導体層およびn型半導体層を交互に繰り返すことにより構成される複数のpn接合である。半導体層は薄く、厚さが一般的に2nmより大きく、エピタキシャル成長またはイオン注入によって形成することができる。半導体ドーピング複数層構造全体の層数、厚さ、およびドーピング濃度は、耐えるべき電圧に応じて調節することができ、n型およびp型半導体のドーピング濃度が低いように、即ち、n−型およびp−型半導体が形成されるようにしてもよい。ドレインに正方向の電圧が印加されて、基板が接地される場合、pn接合ごとに空間電荷空乏領域が生じ、半導体ドーピング複数層構造全体で1つの厚い空間電荷空乏領域を形成し、大きな電圧降下に耐えることが可能になる。このような方法によって、デバイスの破壊電圧が大幅に向上する。説明すべきものとして、本実施形態で例示しているパワーデバイスが電界効果トランジスタであるので、基板上におけるエピタキシャル複数層構造には、チャネル層上におけるバリア層、およびバリア層の表面における誘電体層などが含まれるが、パワーデバイスは、他の機能を有する半導体デバイスであってもよい。このため、本発明として、エピタキシャル複数層構造は、特定の機能を有する半導体デバイスの実現のみを目的とする場合、少なくとも、核形成層と、バッファ層と、窒化物チャネル層と、を含む。
【0029】
(参考例)
図2Bは、本発明の第1実施形態の1つの変形であり、
図2Aと異なる点がシリコン基板1にある。該シリコン基板1は、低濃度ドープのP−シリコンおよびn型シリコンで構成される。ドレインに正方向の電圧が印加されて、基板が接地される場合、該シリコン基板1は、逆バイアスのPN接合に類似するものであり、空間電荷空乏領域が形成され、一定の電圧降下に耐えることが可能になり、デバイスの破壊電圧を向上させる。
【0030】
(参考例)
図2Cは、本発明の第1実施形態の他の変形であり、
図2Aおよび
図2Bと異なる点がシリコン基板1にある。該シリコン基板1は、3層構造を有し、高濃度ドープのp+シリコン、低濃度ドープのp−シリコン、およびn型シリコンで構成される。該シリコン基板1の機能は、
図2Aおよび
図2Bにおけるシリコン基板1の機能と同様であり、ここで説明を省略する。
【0031】
(参考例)
図3は、本発明の第1実施形態の1つの変形であり、直接にシリコン基板のトップ層にエピタキシャル成長またはドーピングのプロセスを行うことにより、半導体ドーピング複数層構造がシリコン基板のトップ層に位置するようにし、窒化物核形成層2およびバッファ層3などを直接に半導体ドーピング複数層構造上に成長させることができ、
図2におけるシリコン基板の内部に位置する半導体ドーピング複数層構造に比べると、この構造の製造プロセスが相対的に簡単化される。
【0032】
図4は、本発明の第1実施形態の他の変形であり、直接にシリコン基板の裏面にエピタキシャル成長またはドーピングのプロセスを行うことにより、半導体ドーピング複数層構造がシリコン基板の裏面に位置するようにし、
図3におけるシリコン基板のトップ層に位置する半導体ドーピング複数層構造に比べると、窒化物核形成層2およびバッファ層3などを直接に半導体ドーピング複数層構造上に成長させるプロセスの難しさを低減させる。
【0033】
図5は、本発明の第1実施形態の他の変形である。一般的に、半導体ドーピング複数層構造の層数および厚さは、耐えるべき電圧によって決まり、印加電圧が高くない場合、半導体ドーピング複数層構造は、厚すぎることが必要ではなく、プロセスは、簡単化することができる。
図5に示すように、該半導体ドーピング複数層構造10は、1層のn型半導体および1層のp型半導体で構成される。ここで、n型半導体層は、最もトップ層に位置し、窒化物エピタキシャル層に接近する。n型半導体層は、厚い低濃度ドープ半導体層であってもよく、p型半導体層は、薄い高濃度ドープ半導体層であってもよい。ドレインに正方向の電圧が印加されて、基板が接地される場合、該半導体ドーピング双層構造は、逆バイアスのPN接合に類似するものであり、空間電荷空乏領域が形成され、一定の電圧降下に耐えることが可能になり、デバイスの破壊電圧を向上させる。該半導体ドーピング双層構造は、シリコン基板のトップ層または裏面に位置してもよい。
該第1実施形態の窒化物パワーデバイスの製造において、
【0034】
空間電荷空乏領域を形成することが可能な半導体ドーピング複数層構造をシリコン基板に導入するステップと、上記半導体ドーピング複数層構造を含むシリコン基板上に窒化物核形成層を成長させるステップと、上記窒化物核形成層上に窒化物バッファ層を成長させるステップと、上記窒化物バッファ層上に窒化物チャネル層を成長させるステップと、上記窒化物チャネル層上に接触電極を形成するステップと、を含む。
【0035】
半導体ドーピング複数層構造については、エピタキシャル成長またはイオン注入によって、該半導体ドーピング複数層構造をシリコン基板の内部、トップ表面、または裏面に製作し、所要の破壊電圧の多少に応じて、該半導体ドーピング複数層構造の層数および厚さを決定することができる。
【0036】
(参考例)
図6は、本発明の第2実施形態のシリコン基板上の窒化物パワーデバイスの構成を示す図である。該実施形態では、ダイオード構造を有するダイオードデバイスを用いて説明する。窒化物ダイオードデバイスのシリコン基板に半導体ドーピング複数層構造を導入することにより、ダイオードの逆方向の破壊電圧を向上させることができる。ここで、電極8は、ショットキー接合であり、ダイオードの正極とされ、電極7は、オーム接触であり、ダイオードの負極とされる。
【0037】
図7は、本発明の第3実施形態のシリコン基板上の窒化物パワーデバイスの構成を示す図である。該実施形態では、他のトライオード構造のMOSFETデバイスを用いて説明する。該MOSFETデバイスは、窒化物nチャネルMOSFETデバイスであり、該デバイスのシリコン基板に半導体ドーピング複数層構造を導入することにより、デバイスの破壊電圧を大幅に向上させる。窒化物チャネル層のソースおよびドレインの下方の領域は、n型高濃度ドープ領域であり、一般的にシリコンがドーピングされ、ゲートの下方の領域は、p型低濃度ドープであり、一般的にマグネシウムがドーピングされ、ゲート金属の下の誘電体層は、一般的に、SiO
2、SiN、AlN、Al
2O
3、または他の絶縁誘電体層である。
【0038】
図8は、本発明の第4実施形態のシリコン基板上の窒化物パワーデバイスの構成を示す図である。バリア層上にGaNキャップ層11を成長させることにより、AlGaNバリア層の材料表面は、欠陥状態密度および表面状態密度が大きいため、多くの電子が捕獲され、チャネルにおける二次元電子ガスに影響を与え、デバイスの特性および信頼性を低減する。バリア層の表面に1層のGaNを成長させて保護層とすることにより、バリア層の材料表面の欠陥状態および表面状態によるデバイスの特性への影響を効果的に減少することができる。
【0039】
図9は、本発明の第5実施形態のシリコン基板上の窒化物パワーデバイスの構成を示す図である。バリア層とチャネル層との間にAlN挿入層12を導入することにより、A
lNのバンドギャップが非常に高いので、より効果的に電子をヘテロ接合のポテンシャル井戸に制限することができ、二次元電子ガスの濃度を向上させ、また、AlN挿入層によれば、導電チャネルとAlGaNバリア層とが分離され、バリア層による電子への散乱効果が低減され、これにより、電子移動度を高めて、デバイス全体の特性を向上させることができる。
【0040】
図10は、本発明の第6実施形態のシリコン基板上の窒化物パワーデバイスの構成を示す図である。
バッファ層とチャネル層との間にAlGaNバックバリア層13が導入される。一定の印加電圧下では、チャネル内の電子がバッファ層に入ることになり、特に、短チャネルデバイスにおいて、このような現象がより深刻になることで、ゲートによるチャネル電子への制御が相対的に弱くなり、短チャネル効果が発生し、加えて、バッファ層における欠陥や不純物が多いため、チャネル内の二次元電子ガスに影響を与え、例えば、電流コラプスを生じる。AlGaNバックバリア層を導入することにより、チャネル電子とバッファ層とを分離し、二次元電子ガスをチャネル層に効果的に制限し、短チャネル効果および電流コラプス効果を改善することができる。
【0041】
図11は、本発明の第7実施形態のシリコン基板上の窒化物パワーデバイスの構成を示す図である。ゲートの下方に絶縁誘電体層14を挿入して、MISFET構造を形成する。この1層の絶縁誘電体は、デバイスのパッシベーション層とされるとともに、ゲート絶縁層であり、ゲートのリーク電流を効果的に低減することができる。絶縁誘電体層14は、SiN、SiO
2、SiON、Al
2O
3、HfO
2、HfAlOxのうちの1つを含み、もしくは、それらの任意の組み合わせである。
【0042】
図12は、本発明の第8実施形態のシリコン基板上の窒化物パワーデバイスの構成を示す図である。該窒化物パワーデバイスのゲート8および/またはソース6上には、さらにゲートフィールドプレート15および/またはソースフィールドプレート16が設けられている。ゲートおよび/またはソースにフィールドプレート構造を導入することにより、ゲートのドレインに接近する側の電界強度を低減し、ゲートのリーク電流を減少し、デバイスの破壊電圧をさらに向上させることができる。
【0043】
本発明を基にして、シリコン基板上の窒化物チャネル層またはバリア層の構成、あるいはデバイスの製造プロセスを変更することによっても、窒化物パワーデバイスの強化型デバイスを実現することができ、例えば、フッ素イオンでゲート金属の下方の材料領域を衝撃することにより、強化型デバイスなどを形成することができる。
【0044】
上記をまとめると、本発明では、シリコン基板上の窒化物パワーデバイスおよびその製造方法が提供され、n型シリコン層およびp型シリコン層を交互に繰り返すことにより構成される半導体ドーピング複数層構造をシリコン基板に導入することにより、空間電荷空乏領域が形成され、デバイスの破壊電圧を向上させ、デバイスが電圧により破壊されるリスクを低減させる。
【0045】
上記は、例示的な実施例を介して、本発明の窒化物パワーデバイス、および窒化物パワーデバイスを製造するための方法を詳しく説明しているが、上述したこれらの実施例は、取り尽くされたものではなく、当業者は、本発明の精神および範囲内で、様々な変更および修正を実現することができる。従って、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲のみに従う。例えば、上記は、シリコン基板においてn型シリコン層およびp型シリコン層を交互に繰り返すことにより構成される半導体ドーピング複数層構造を例として説明しているが、理解すべきものとして、基板の耐電圧性を向上させるために、当業者に公知の他の構造または材料を使用することができ、これについて、本発明は、何らかの制限もない。
【符号の説明】
【0046】
1 シリコン基板
2 窒化物核形成層
3 窒化物バッファ層
4 窒化物チャネル層
5 窒化物バリア層
6 ソース
7 ドレイン
8 ゲート
9 誘電体パッシベーション層
10 半導体ドーピング複数層構造
11 GaNキャップ層
12 A
lN挿入層
13 A
lGaNバックバリア層
14 絶縁誘電体層
15 ゲートフィールドプレート
16 ソースフィールドプレート