【文献】
Ludovic Clarion et al.,,Oxaphosphinanes: new therapeutic perspectives for glioblastoma,Journal of Medicinal Chemistry,2012年,(2012), 55(5), 2196-2211
【文献】
Cristau, Henri-Jean et al.,,First synthesis of P-aryl-phosphinosugars, organophosphorus analogues of C-arylglycosides,Tetrahedron Letters,2005年,(2005), 46(21), 3741-3744
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
最近の統計学によると、癌は、先進工業国において心血管疾患に次いで第二位の死因である。癌に起因する疾患に立ち向かうために展開される手段には、早期診断の強化だけではなく医学的治療の改善が含まれる。健常細胞に比較して腫瘍細胞に対する特異性が完全である新規なオリジナル分子を見つけることができれば、新規療法の開発が可能になろう。
【0003】
癌治療の治療法を選択するためには、一定数のパラメータ:癌のタイプ(肉腫、黒色腫など)、罹患器官、癌の進行度、全ての予後因子および患者に特有の特徴(年齢、全身状態、精神状態など)を調査しなければならない。これらのデータから、局所性または全身性いずれかである療法を選択できる。最も有効な治療は、手術および/または放射線療法を含む局所療法である。局所療法は、広範には進行していない病変を治療し、限局性癌の大半を治癒させる。全身性療法、化学療法および/またはホルモン療法は、一般に緩和的または補助的治療である。これらの治療は、限局性ではあるがより広範に進行した癌の症例で使用される。これらの治療は、限られた数の広汎性癌を治癒させることはできるが、患者の平均余命を改善することはない(例えば、Capdeville R.,Buchdunger E.,Zimmermann J.,Matter A.,Nature Rev.Drug Discov.,2002,1,493;Eisenberg B.L.,Von Mehren M.,Expert Opin Pharmacother.,2003,6,869;Gilman A.,Philips F.S.,Science,1946,103,409;Gingras D,Beliveau R.Med.Sci.,1997,13,1428−35を参照されたい)。
【0004】
転移現象は、癌細胞が原初部位(原発腫瘍)を離れて身体の他の部分に遊走する間の一連の複雑な過程である。癌細胞は、実際に原発腫瘍から離れてしまうことがあり、免疫系が癌細胞を検知できないと、リンパ管や血管内に侵入し、その後に身体の他の部分へ循環して新規腫瘍を形成する(「転移する」)ことになる。これは続発性もしくは転移性腫瘍と呼ばれる。
【0005】
転移の形成は、多数の因子による影響を受け、特に癌のタイプと攻撃性に左右される。転移のリスクは、身体内に原発腫瘍が存在する期間に伴って増大し、癌を他の組織や器官へ伝播して潜在的致死性疾患にさせる能力である。癌が原因で死亡する人々の大多数は死亡時に転移を有しており、転移性播種は癌患者の最も頻度の高い死因である。
【0006】
最も頻度の高い癌(例えば、前立腺癌、乳癌、腸癌および肺癌)は、手術により完全または部分的に切除できる器官において発生する。手術は、原発癌が転移していなければ患者を治癒させることができる。これらの癌の重篤な結果の大多数は、癌が身体の他の部分へ伝播するために発生する。特定の症例では、癌の最も重篤な作用は、身体の特に主要部分への伝播である。他の症例では、多数の器官における伝播および増殖は、極めて多数の癌細胞を作り出すので、それにより生体の正常な代謝が深刻に崩壊させられる。
【0007】
一般に、原発腫瘍を見つけることができれば、医師は続発性病巣を探し出すことができる。だが現在利用できる手段が高精度であるにもかかわらず作成された医学的評価は依然として陰性のままであるが、他方で数カ月もしくは数年後における可視転移の発生は転移が存在していたが以前は極めて小さくて「潜在的」であったことを示している。癌は、一般に特定容積に達した場合にしか検出できない:癌が細胞約10億個に相当する直径1cmに達する前に検出できることは希である。
【0008】
このため癌の治療は、原発腫瘍を治療すること(局所性抗増殖性治療)のみではなく、特に癌転移のリスクが高い場合は完全および長期の寛解を期待できるように、極めて頻回に予防的転移抑制治療を併用しなければならない。詳細には、化学療法による治療中には、抗増殖有効成分の作用は細胞に高い遊走能を生じさせる。治療に対するこの細胞応答は、環境変化に順応した応答を生じさせる分子可塑性を有する(幹細胞タイプの)細胞部分母集団に関する。転移抑制治療の目的は、遊走によって治療を回避するこの適応応答を遮断することである。
【0009】
特定の症例では、原発腫瘍は、極めて小さくて目に見えないままであるか、転移性病巣の原因となる悪性細胞を遊離させた後に自然消失してしまったかのいずれかのために検出されない。
【0010】
公知の抗癌剤の使用に関連する限界はそれらの高い毒性に関連しており、それらの毒性は、患者の死亡さえ引き起こす可能性がある多数の副作用の原因である。癌を治療するために使用される化学兵器は、健常細胞を傷つけずに癌細胞を破壊すると考えられている。しかし、選択性は極めて相対的であり、化学療法に使用される医薬品の大多数は、相当に大きな血液学的毒性を有する。有害な副作用、特に重篤な医学的および生理学的結果を伴う副作用を低減させることは、特定の医薬品の有効性の改良を試みることと全く同様に重要である。全体としてみると、現在の化学療法兵器庫は依然として旧式の細胞毒性の高い薬品から構成され、公知の抗癌剤の大多数は既に数十年を経過しており、少なくとも細胞に関して標的化が不良で、耐性現象への代替策を全く提供することができていない。そこで、化学療法に使用できる、および理想的には癌細胞だけを標的として転移抑制特性を有する新規な抗癌分子に対する必要が存在する。
【0011】
糖は、生物界に偏在する生体分子ファミリーを表し、極めて様々な構造および機能を備えており、療法において肥満や糖尿病を撲滅するだけではなく、抗ウイルス薬、抗生物質および抗癌剤としても多数の用途を有する。糖アナログもしくはグリコミメティックの合成は、これらの化合物が糖を含む様々な受容体もしくは酵素、特に特定分子、複合糖質の生合成もしくはエネルギー機構、および細胞間接着の機構を妨害できるために興味深い。
【0012】
環式糖アナログを調製する分野では、2つの主要なアプローチ:アノマー位置でのヒドロキシル基の炭素系基との置換(C−アリールグリコシド)、および環内酸素原子とまた別のへテロ原子との置換(リン糖酸、ホスファ糖、イミノ糖、チオグリコシド)が既に開発されている。
【0013】
近年、特許出願の国際公開第2009/004096号パンフレットおよび論文のClarion L.et al.,J Med.Chem.2012,2196−2211では、ホスフィノ糖のファミリーが抗癌特性を有することが証明されている。このファミリーの多数の代表的化合物の構造を下記の図式に示す:
【化1】
【0014】
このファミリーの化合物は、数種の癌細胞系に対する抗増殖活性(低用量での細胞毒性)を示すが、健常(非腫瘍)細胞に対してはそれらが抗癌活性を有する用量では細胞毒性を示さない。
【0015】
驚くべきことに、本発明者らは今では、糖アナログであるこれらの複素環式ホスフィン化合物が、転移抑制特性もまた有することを見いだした。用語「転移抑制特性」は、癌に罹患した患者における転移の発生もしくは伝播を低減もしくは予防する特性を意味する。これは、治療の非存在下で見いだされる状態に比較した転移形成の排除または転移のサイズおよび/または転移の部位数の減少によって反映される可能性がある。
【0016】
本発明の目的のためには、続発性もしくは転移性癌腫瘍の抗増殖性治療(例えば、確定された転移の退行を誘発する、または潜在転移からマクロ転移への転換を阻害する)は、本発明による化合物の転移抑制特性に関係する転移抑制治療であるとは見なされない。
【0017】
本発明による化合物は、原発腫瘍もしくは転移腫瘍の増殖を妨害することにより癌細胞の増殖を標的とする(抗増殖性治癒作用)だけではなく、それらの移動性もまた標的とし、さらに転移の形成を阻害する、または最低限でも低減する(予防作用)。
【0018】
何らかの理論によって拘束することを望まなくても、本発明者らは、本発明による化合物が転移の発生の分子過程を阻害もしくは低減させる、およびそこで原発腫瘍からの転移の発生を予防もしくは低減させると考えている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
リン原子を組み込んでいる6員環(ホスフィナン環)を含むホスフィノ糖化合物のファミリー、典型的には1,2−オキサホスフィナン2−オキシドのファミリーは、本発明によって特に転移抑制特性があるために提供される。
【0025】
化学化合物の説明では、これらの用語は一般にそれらの通常の意味で使用される。
【0026】
本特許出願では、用語「アルキル」は、1〜25個の炭素原子を含有する、特に1〜8個の炭素原子を含有する非環式基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基およびn−ヘキシル基、好ましくは3〜7個の炭素原子を含有するシクロアルキル基、好ましくは4〜8個の炭素原子を含有するシクロアルキルメチル基を含む直鎖状もしくは分岐鎖状の飽和もしくは不飽和炭化水素系ラジカルを意味する。
【0027】
用語「置換アルキル」基は、sp
3炭素原子を介して結合され、1つ以上のアリール基で置換された、および/または1個以上のヘテロ原子、例えばN、SもしくはOを含む上記に規定したアルキル基を意味する。言及する例には、アリールアルキル基、例えばトリチル基(−CPh
3)、Bnもしくは4−メトキシベンジル基と記されるベンジル基、アルコキシアルキル基、特にジアルコキシメチル基、例えばジエトキシメチルもしくはジメトキシメチル基、CH
2CO
2R
11基(式中、R
11は、任意選択的に置換されたアルキル基もしくはアリール基を表す)が含まれる。
【0028】
用語「アルコキシ」は、1個の酸素原子を介して分子の残余に結合されたアルキル基、例えばエトキシ基、メトキシ基もしくはn−プロポキシ基を意味する。
【0029】
用語「アリールオキシ」は、1個の酸素原子を介して分子の残余に結合されたアリール基、例えばベンゾキシ基を意味する。
【0030】
用語「アシル」は、ヒドロキシル基の欠失によりカルボン酸に由来する、好ましくは式−C(O)R
8(式中、R
8は、任意選択的に置換されたアリール基もしくはアルキル基、例えばアセチル基、プロピオニル基、オレオイル基、ミリストイル基、ベンゾイル基もしくはトリフルオロアセチル基を意味する)を有するラジカルを意味する。
【0031】
用語「スルホニル」は、ヒドロキシル基の欠失によりスルホン酸に由来する、好ましくは式−SO
2R
9(式中、R
9は、任意選択的に置換されたアリール基もしくはアルキル基、例えばCF
3基を意味する)を有するラジカルを意味する。
【0032】
用語「スルフィニル」は、ヒドロキシル基の欠失によりスルフィン酸に由来する、好ましくは式−SOR
10(式中、R
10は、任意選択的に置換されたアリール基もしくはアルキル基を意味する)を有するラジカルを意味する。
【0033】
用語「ジチオカーボネート」は、式−OC(S)SR
9c(式中、R
9cは、任意選択的に置換されたアリール基もしくはアルキル基を意味する)の基を意味する。
【0034】
用語「カーボネート」は、式−OC(O)OR
9d(式中、R
9dは、任意選択的に置換されたアリール基もしくはアルキル基を意味する)の基を意味する。
【0035】
用語「エステル基」は、式−C(O)OR
10’(式中、R
10’は、任意選択的に置換されたアリール基もしくはアルキル基を意味する)の基を意味する。
【0036】
用語「アミド基」は、式−C(O)NR
9’R
9’’(式中、R
9’は、任意選択的に置換されたアリール基もしくはアルキル基を表し、R
9’’は、任意選択的に置換されたアリール基もしくはアルキル基または水素原子を表す)の基、例えば−C(O)NHPh)の基を意味する。
【0037】
用語「チオアミド基」は、式−C(S)NR
9aR
9b(式中、R
9aは、任意選択的に置換されたアリール基もしくはアルキル基を表し、R
9bは、任意選択的に置換されたアリール基もしくはアルキル基または水素原子を表す)の基を意味する。
【0038】
用語「スルホンアミド基」は、式−SO
2NR
11’R
11’’(式中、R
11’は、任意選択的に置換されたアリール基もしくはアルキル基を表し、R
11’’は、任意選択的に置換されたアリール基もしくはアルキル基または水素原子を表す)の基を意味する。
【0039】
用語「アリール」は、任意選択的に1つ以上の基、例えば制限なく、アルキル(例えば、メチル)基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、ハロ(フルオロ、ブロモ、ヨードもしくはクロロ)基、ニトロ基、アルキルチオ基、アルコキシ(例えば、メトキシ)基、アリールオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヒドロキシスルホニル基、アルコキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、テトラゾリル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基もしくはジアルキルカルバモイル基で置換されていてよい、1個だけの環(例えば、フェニル基)または数個の縮合環(例えば、ナフチル基もしくはテルフェニル基)を含む芳香族一価炭素環式ラジカルを意味する。または、芳香環の2つの隣接位置は、メチレンジオキシ基またはエチレンジオキシ基で置換されてよい。
【0040】
用語「アリール」にはさらに、「ヘテロアリール」基、すなわち芳香環の1個以上の炭素原子が例えば窒素、酸素、リンもしくは硫黄などのへテロ原子で置換されている芳香環が含まれる。ヘテロアリール基は、1個以上の芳香環を含有する構造、または1個以上の非芳香環と結合した1個以上の芳香環を含有する構造であってよい。数個の環を有する構造では、環は、例えばメチレン基、エチレン基もしくはカルボニル基などの共通二価基を介して縮合、共有結合または結合されていてよい。ヘテロアリール基の例は、チオフェン(2−チエニル、3−チエニル)基、ピリジン(2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル)基、イソキサゾール基、フタルイミド基、ピラゾール基、インドール基、フラン基およびそれらのベンゾ縮合アナログ、フェニルピリジルケトン基、キノリン基、フェノチアジン基、カルバゾール基、ベンゾピラノン基である。
【0041】
本明細書で使用する用語「サッカリル基」は、ヒドロキシル基もしくは水素原子(好ましくはヒドロキシル基)の欠失により天然もしくは合成、保護もしくは非保護炭水化物または糖に由来する全てのラジカルに及ぶ。サッカリル基には、モノサッカリル基およびオリゴサッカリル基、例えばジサッカリル基が含まれる。サッカリル基、例えばグリコシル基もしくはマンノシル基は、例えば、制限なく、グルクロン酸、ラクトース、スクロース、マルトース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、フルクトース、トレオース、エリトロース、β−D−N−アセチルガラクトサミン、β−D−N−アセチルグルコサミン、フコース、シアル酸、N−アセチルノイラミン酸、N−アセチルムラミン酸、グルコサミン、ガラクトサミン、ラムノースおよび例えばアシル基、アルキル基、アリール基、ハロ基もしくはアミノ基で保護もしくは置換されたそれらのアナログならびにさらにそれらのデオキシアナログなどの糖に由来してよい。用語「オリゴサッカリル基」は、好ましくは1〜3個の糖単位を含む少なくとも2つの共有結合単糖類に由来するサッカリル基を意味する。好ましいサッカリル基は、モノサッカリル基である。式(1)の化合物では、R
2aが−X−R
2(式中、R
2は、サッカリル基である)を表す場合、このサッカリル基は、好ましくはOもしくはNH、好ましくはOを表すX基を介して結合されている。糖タイプの構造の説明については、書籍‘‘Essentials of Glycobiology’’,Varki et al.Eds.,chapter 2(Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1999)を参照されたい。
【0042】
用語「糖」は、単糖もしくはオリゴ糖を意味する。Bnはベンジル基を表し、Acはアセチル基を表す。
【0043】
本発明の特定の化合物は、溶媒和形および非溶媒和形の両方で、例えば水和物形で存在してよい。一般に、溶媒和形は非溶媒和形と同等であり、本発明の範囲内に含まれる。本発明の特定の化合物は、複数の結晶形または非晶質形で存在してよい。一般に、全ての物理的形態は本発明によって想定される使用のために同等であり、本発明の範囲内に含まれる。
【0044】
本発明による化合物は、数個の不斉(光学的)中心を有しており、したがってエナンチオマーまたはジアステレオ異性体が存在する可能性がある。本発明は、式(1)の化合物の全てのエナンチオマーおよびジアステレオ異性体ならびにそれらの混合物、特にラセミ化合物を含むと理解されている。言い換えると、本発明による化合物は、精製エナンチオマーの形態またはエナンチオマーの混合物の形態で使用することができる。様々な異性体は、当業者には公知の方法によって、特にシリカゲルクロマトグラフィまたは分別結晶化によって分離することができる。
【0045】
式(1)の好ましい化合物は、式中、Y=Z=Oである化合物、すなわち1,2−オキサホスフィナン2−オキシドである。
【0046】
本発明による化合物では、置換基R
1は、それが水素原子を意味しない場合は、1個の炭素原子を介して環内リン原子に常に結合されている。
【0047】
好ましい基R
1は、H基、アルキル基、例えば2−ベンジルオキシエチル基、エチル基、n−ブチル基、3ーフェニルプロピル基もしくはn−オクチル基、ジアルコキシメチル基、例えばジエトキシメチル基もしくはジメトキシメチル基、アリール基、例えばフェニル基、4−メチルフェニル基、4−ニトロフェニル基、4−アミノフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2−チエニル基、4−フルオロフェニル基、4−ビフェニル基、3−メチルフェニル基もしくは3−メトキシフェニル基およびさらに以下の基である:
【化3】
【0048】
好ましいR
2基は、H基、アリールスルホニル基、メチルスルホニル基、トリクロロアセトイミデート基、ベンジル基、サッカリル基およびアリール基、例えばフェニル基、4−メチルフェニル基、4−ニトロフェニル基、4−アミノフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基および3,4−ジニトロフェニル基である。
【0049】
好ましいX−R
2基は、O−アリール基、OH基、NH
2基、NH−アリール基、S−アリール基、ジチオカーボネート基、NHCH
2CO
2R
11基(式中、R
11は、上記に規定した意味を有する)、NHC(O)R
12基(式中、R
12は、任意選択的に置換されたアルキル基もしくはアリール基を表す)、O−SO
2R
9基(式中、R
9は上記に規定した意味を有する)、NH−Bn基、O−サッカリル基、OC(=NH)CCl
3基、ホスホン酸基、ホスフィンサン基もしくはホスフィンオキシド基、ウレア基、チオウレア基、カルバメート基もしくはカーボネート基である。
【0050】
好ましくは、R
3およびR
4は、相互から独立して、水素原子、ベンジル基、ベンゾイル基もしくはアセチル基を表す、または一緒にまとめて、好ましくはイソプロピリデン基を表す式−R
3−R
4−の二価ラジカルを形成する。
【0051】
本発明の好ましい実施形態によると、R
5は、化合物(1)が式(2)もしくは(3):
【化4】
(式中、R
1、R
2a、R
3、R
4、YおよびZは、上記と同一の意味を有し、R
14、R
15およびR
16は、相互から独立して、水素原子、任意選択的に置換されたアリール基もしくはアルキル基、トリクロロアセトイミデート基、アシル基、アシル基、ホルミル基、スルホニル基、スルフィニル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、アリル基、エステル基、アミド基、チオアミド基、スルホンアミド基もしくはサッカリル基を表し、またはR
15およびR
16は、一緒にまとめて、式−R
15−R
16−(式中、−R
15−R
16−は、好ましくはイソプロピリデン基、ベンジリデン基、ジフェニルメチリデン基もしくはシクロヘキシルメチリデン基およびそれらの置換アナログを表す)の二価ラジカル、例えば4−メトキシベンジリデン基または直鎖状アルキレン基、例えばエチレン基を形成する)に対応する基である。)
【0052】
R
5基は、それが水素原子を表さない場合は、好ましくは1〜25個の炭素原子、好ましくは1〜20個の炭素原子、いっそう好ましくは1〜10個の炭素原子、およびいっそうより好ましくは1〜8個の炭素原子を含む。R
5基は、好ましくは酸素、硫黄および窒素から選択される1個以上のヘテロ原子、いっそうより好ましくは酸素原子を含む任意選択的に置換されたアルキル基であってよい。好ましいR
5基は、アルコキシアルキル基、例えばベンジルオキシメチル(−CH
2OBn)基、−CH
2OH基、2,2−ジメチル[1,3]ジオキソラン−4−イル基および1,2−ジヒドロキシエチルCH(OH)CH
2OH基であり、これは式(2)および(3)において、R
14=HもしくはBnおよびR
15=R
16=Hである、またはR
15およびR
16は、一緒にまとめて、イソプロピリデンラジカルを形成することによって反映されている。
【0053】
式(1)の化合物を調製するための様々な方法は、参照して本明細書に組み込まれる特許出願の国際公開第2009/004096号パンフレットおよび論文のClarion L.et al.J Med.Chem.2012,2196−2211の中に詳細に記載されている。
【0054】
化合物(1)の好ましいファミリーの例は、以下の一般式(式中、R
1およびR
2aは、上記に規定したとおりである)を有するファミリーである:
【化5】
【0055】
一般式(18)の1,2−オキサホスフィナンの中では、式(19)および(20)(式中、R
1およびR
3〜R
5は、上記に規定したとおりであり、R
1は、好ましくはアリール基、水素原子、任意選択的に置換されたアリール基、例えばジアルコキシメチル基を表す)の化合物が好ましい。
【化6】
【0056】
本発明による第二に好ましいクラスの化合物(1)は、一般式(21):
【化7】
(式中、R
1およびR
3〜R
5は、上記と同一の意味を有し、R
18およびR
19は、相互から独立して、水素原子、アリール基、任意選択的に置換されたアルキル基、トリクロロアセトイミデート基、アシル基、ホルミル基、スルホニル基、スルフィニル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、アリル基、エステル基、アミド基、チオアミド基もしくはスルホンアミド基を表し、R
18は、好ましくは水素原子を表す)の1,2−オキサホスフィナンに相当する。これらの窒素性ホスフィノ糖の中では、C
3位でアミノ基(R
18=R
19=H)、C
3位でベンジルアミノ基(R
18=H、R
19=Bn)またはC
3位でアセチルアミノ基(R
18=H、R
19=Ac)を含むホスフィノ糖を挙げることができる。化合物(21)の中では、式(22)および(23)の化合物が好ましく、このときR
1およびR
19は上記に規定した意味を有し、R
1は、好ましくはアリール基、水素原子もしくはジアルコキシメチル基を表し、R
19は、好ましくはアリール基もしくはアシル基を表す。
【化8】
【0057】
第三のクラスの好ましい化合物(1)は、下記の式(24)の化合物に相当するが、このとき様々な置換基は上記で規定した意味を有し、R
20は、サッカリル基、好ましくはモノサッカリル基を意味する。
【化9】
【0058】
式(24)の化合物の中では、好ましい化合物は下記の式(27)、(27a)および(27b)の疑似二糖類(マンノースもしくはグルコース誘導体との結合に由来する)(式中、R
19a、R
19b、R
19c、R
19d、R
19e、R
19fおよびR
19gは、相互から独立して、水素原子もしくはベンジル基を意味する、R
19hは、水素原子もしくはメチル基を意味する、他の置換基は上記に規定したとおりである)である。
【化10】
【0059】
また別の好ましいクラスの化合物(1)は、下記の式(24a)(式中、様々な置換基は上記に規定した意味を有する)の化合物に相当する。これらの化合物の中では、式(24b)および(24c)の化合物が好ましい。
【化11】
【0060】
化合物(28)と記載した化合物(1)(式中、R
1は、水素原子である)および化合物(30)(式中、R
21は、アリール基を表す)もまた好ましい化合物であり、このときアリール基はフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,4−ジニトロフェニル基もしくは4−ニトロフェニル基などの様々な基を表す可能性がある。
【化12】
【0061】
本発明によるホスフィノ糖(1)はそれらのヒドロキシル基が保護されている形態で入手できるが、本発明は、決してこの実施形態には限定されず、それらの全てのヒドロキシル基またはそれらの一部だけが脱保護されている形態で入手されるホスフィノ糖(1)もまた含んでいる。本発明のこの他の実施形態に対応する好ましいポリヒドロキシホスフィノ糖およびさらに他の好ましいホスフィノ糖は、下記の式(式中、R
1、R
2a、YおよびZは、上記に規定した意味を有し、R
22は、CF
3基もしくはアリール基、例えば4−トリル基(R
2aは、好ましくは上記に規定したOSO
2R
22基、N
3基もしくはハロゲン原子、好ましくはフッ素原子を表す)を意味し、ならびにR
30およびR
31は、相互から独立して、炭化水素系基もしくは水素原子を意味する)に対応する。
【化13】
【0062】
式(39)では、R
1は、上記に規定した意味を有し、R
32は、R
19基について上記で規定した置換基と同一置換基から選択される。R
32は、好ましくはアシル基、好ましくはベンゾイル基を表す。式(38)では、R
30およびR
31は、好ましくは、相互から独立して、アルキル基もしくはアリール基または水素原子を表す。好ましいのは、式(38)(式中、R
30基およびR
31基の一方は水素原子であり、炭化水素系基中の他方は、よりいっそう好ましくは、R
30=HおよびR
31=アリール基、理想的にはフェニル基である)の化合物である。1H[1,2,3]トリアゾリル置換基を含む式(38)の化合物は、特別には、対応するアジドを(例えば、銅(I)を用いて触媒されるアジド−アルキン付加環化反応によって)アルキンと反応させることによって入手できる。式(38)の好ましい化合物は、以下の構造(38a)を有する。
【化14】
【0063】
式(35)の好ましい化合物の1つは、以下の構造(35a)を有する。
【化15】
【0064】
式(1)(式中、R
2aは、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素、塩素もしくは臭素)は、対応するトリフレート(R
2a=OSO
2CF
3(これ自体が式中R
2a=OHである化合物から入手される)から、適切なハロゲン化物塩の存在下での求核置換によって入手できる。特別には、アンモニウム塩n−Bu
4N
+X
−(式中、X=F、Cl、Br、I)を利用できる。さらに、式(1)(式中、R
2a=OHである)の化合物を、カストロ試薬(Ph
3PX
2(式中、X=Cl、Br、Iである))またはアッペル試薬(Ph
3P、CX
4(式中、X=Cl、Br、Iである))との反応によって対応するハロ誘導体に直接的に変換させることも可能である。
【0065】
下記のクラスの式(1)の化合物は、リン原子上に芳香核を有する化合物、および/または位置C1αでリン原子に置換されたヘテロ原子を有する、および/または非アノマー位置でヒドロキシル基の保護を有するマンノース誘導体が好ましい。
【0066】
1つの実施形態によると、下記の化合物は、本発明の生成物および/または方法から除外される。
【化16】
【0067】
本発明による式(1)の化合物を含む組成物
本明細書において既に上記で述べたように、式(1)の化合物は、抗増殖性抗癌活性の他に、それらが癌細胞の遊走を阻害もしくは低減させるという意味での転移抑制活性を有するので、そこで任意のタイプの抗癌組成物中に使用できる有効成分を構成する。
【0068】
本発明は、癌に罹患した患者における転移の発生を低減もしくは予防する目的で、ヒト医学または獣医学使用のための医薬品として使用するための本明細書に規定した式(1)の化合物に関する。
【0069】
詳細には、式(1)の化合物は、癌(転移性もしくは原発性)、すなわち癌細胞を治療することが意図される、ヒト医学または獣医学使用のための、または癌の発生を予防するための(例えば、式(38)の化合物)、特に癌に罹患した患者における転移の発生を低減もしくは予防するための医薬組成物中の有効成分として有用である。患者が転移癌に罹患している症例では、式(1)の化合物は、特に、追加の転移の発生を低減もしくは予防することに向けられる。
【0070】
本明細書では、患者とは、動物、特に非ヒト動物およびヒトの両方を意味する。用語「癌に罹患した患者」は、宣告された癌(原発性もしくは転移性)と潜在癌、すなわち目には見えず、その存在が例えば転移の検出によって明らかになった癌との両方を意味する。
【0071】
本発明の主題はさらに、ヒト医学または獣医学において使用するための、特に癌に罹患した患者における転移の発生を低減もしくは予防する目的で、本明細書において規定した式(1)の少なくとも1つの化合物を1種以上の医薬上許容される賦形剤および/またはビヒクルと好ましくは組み合わせて含む医薬組成物である。
【0072】
本特許出願では、癌細胞とは、癌を引き起こす細胞の典型的な特徴、例えば無制御増殖、不死性、転移能、急成長および高速増殖ならびに特定の特異的な形態学的特徴を有する細胞を意味する。癌細胞は、腫瘍の形態にあることが多いが、そのような細胞は身体内に単独で存在することがある、または例えば白血球などの非腫瘍形成癌細胞の場合もある。癌細胞は、制限なく、白血病、リンパ腫、黒色腫、神経芽細胞腫、肝臓癌、卵巣癌、脳腫瘍、肺癌、腸癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、精巣癌、食道癌、子宮癌、子宮頸癌、腎臓癌、胃癌、膀胱癌、脳脊髄癌もしくは結腸直腸癌を含む非常に多くのタイプの癌と関連する可能性がある。本発明の医薬組成物は、上に挙げた癌の少なくとも1つの治療的処置のために使用できる。
【0073】
本発明による化合物が転移抑制治療の状況で使用される場合、患者は「原発」癌に罹患している。この癌は、制限なく、黒色腫、多形性膠芽腫、肺癌、特に非小細胞肺癌、腸癌もしくは結腸直腸癌、乳癌、前立腺癌、精巣癌、子宮頸癌、腎臓癌、好ましくは多形性膠芽腫、乳癌もしくは非小細胞肺癌であってよい転移可能な癌である。本発明の化合物は特に、多形性膠芽腫に罹患している患者における転移リスクに対応するために適合する。現在では、一般に膠芽腫として公知の多形性膠芽腫(GBM)は、全身性病理を発生させる転移能を備える癌の可能性があると認識されている(Schoensteiner,S.S.et al.,Journal of Clinical Oncology 2011,29,23,668−671)。膠芽腫を起源とする癌細胞は、血液脳関門を有効に横断することができ、神経外転移を樹立する場合がある。報告されている神経外転移の部位は、肺、胸膜、肝臓、頸部リンパ節、骨および骨髄である。
【0074】
本発明によるヒト医学または獣医学用医薬組成物は、特にその有効性を増加させるために、式(1)の化合物とは異なる、1つ以上の他の抗癌性(抗増殖性および/または転移抑制性)化合物を含む1種以上の他の有効成分をさらに含むことができる。本発明による医薬組成物中に含めることのできる他の有効成分としては、特に、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、殺菌剤もしくは局所麻酔薬を挙げることができる。
【0075】
本発明の1つの実施形態によると、本発明による組成物は、抗癌性有効成分として式(1)の化合物だけを含有する。
【0076】
本発明の他の実施形態によると、本発明による組成物は、追加の抗癌剤、例えばタキサン(例えば、パクリタキセルもしくはドセタキセル)、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、テモゾロミド、5−フルオロウラシルおよび/または血管形成阻害剤(例えば、ベバシズマブ)を含有する。
【0077】
または、もしくは追加して、本発明による組成物は、他の治療的処置と組み合わせて、特に個別に投与される追加の抗癌治療、例えば上記で言及した追加の抗癌剤の1つを使用する、例えば癌細胞の増殖および/または血管形成を標的とする治療と組み合わせて使用することができる。
【0078】
そこで、本発明はさらに、癌を治療するための、同時もしくは別個に使用するため、または経時的に展開される使用のための併用製剤であって、少なくとも1つの(上記の癌の増殖を治療することを意図する)細胞毒性化合物と転移の発生を低減もしくは予防するための本発明による少なくとも1つの式(1)の化合物とを含む併用製剤に関する。
【0079】
本発明による抗癌化合物を含む医薬組成物は、好ましさを考えなければ、固体形(乾燥粒子)または液体形にある。液体形では、水性懸濁液もしくは非水性懸濁液の形態にある、または油中水型もしくは水中油型エマルジョンの形態にある医薬組成物が好ましいと思われる。
【0080】
本発明による医薬組成物中では、より特別には経口、局所、非経口、経鼻、静脈内、経皮(皮膚を通して)、皮下、経直腸、経舌もしくは呼吸器投与のために適合する医薬組成物ならびに特に単純な錠剤もしくは糖衣錠、舌下錠、ゲルカプセル、ロゼンジ剤、坐剤、クリーム剤、軟膏、皮膚用ゲルおよび飲用もしくは注射用バイアルを挙げることができる。
【0081】
用量は、患者の性別、年齢および体重にしたがって、投与経路にしたがって、および癌のタイプ、癌の進行状態、特にその患者において転移が検出されているかどうかにしたがって変動する。用量はさらに、併用される抗癌治療のタイプによって変動することがある。
【0082】
一般に、本発明において規定した式(1)の化合物は、1回以上の用量摂取において、24時間当たり好ましくは0.001mg/kg(患者または動物の体重)〜1g/kg(患者または動物の体重)の範囲内の量で使用される。好ましくは、上記の量は、少なくとも0.01mg/kg、およびいっそうより好ましくは少なくとも0.05mg/kgと等価である。好ましくは、上記の量は、500mg/kg以下、およびいっそうより好ましくは100mg/kg以下である。
【0083】
経口投与のためには、本発明による医薬組成物は、錠剤、ゲルカプセル、ウエハーカプセル、糖衣錠、シロップ剤、懸濁剤、液剤、散剤、顆粒剤、エマルジョン剤、マイクロスフェアもしくはナノスフェアの懸濁剤、様々なポリマーをベースとする脂質ベシクルもしくはベシクルの懸濁剤の形態にあってよい。
【0084】
経口投与のためには、本発明による医薬組成物は、式(1)の少なくとも1つの化合物を例えば微結晶セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウムもしくはグリシンなどの様々な賦形剤と組み合わせて含む固形組成物から製造できる錠剤の形態にあってよい。例えばデンプン(コーンスターチ、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、その他のデンプン)、アルギン酸またはケイ酸塩などの様々な錠剤崩壊剤が使用されてよい。例えばポリビニルピロリドン、スクロース、ゼラチンまたはアカシアなどの結合剤が使用されてよい。例えばステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムまたはタルクなどの潤滑剤が使用されてよい。粉末の形態にあるそのような固形組成物は、ゼラチンカプセルを製造するために使用することができる。固形組成物のためには、ラクトースまたは高分子量ポリエチレングリコールもまた使用されてよい。
【0085】
経口投与のための液体組成物を製造するために、式(1)の化合物は、例えば水、エタノール、プロピレングリコール、グリセロールなどの希釈液と組み合わせて、様々な甘味料、香味料、着色料、さらに任意選択的に乳化剤もしくは懸濁化剤またはこれらの賦形剤の任意の組み合わせと組み合わせられてよい。
【0086】
非経口投与のためには、本発明による医薬組成物は、潅流用もしくは注射用の液剤もしくは懸濁剤の形態にあってよい。
【0087】
非経口投与のためには、特に油性もしくは水性溶液、または懸濁剤、エマルジョン剤もしくは坐剤を含むインプラントが使用されてよい。例えば、式(1)の化合物は、注射用医薬製剤を調製するために慣習的に使用される、例えば生理的食塩水または5重量%のデキストロースを含有する食塩液などの中に液体ビヒクル中に分散させることができる。
【0088】
腸内投与のためには、徐放性組成物、例えば中性もしくは塩基性媒質と接触すると(腸溶コーティング層)、または水性媒質と接触すると(水中で分解する可溶性ポリマーを含むコーティング層)、式(1)の化合物が様々に分解する、複数のコーティング層によって外部媒質から保護された組成物を使用することができる。
【0089】
本発明の医薬組成物は、非経口、表面もしくは局所投与のため、ならびに予防的および/または治療的に使用することができる。そこで、本発明による抗癌化合物は、例えば液体形もしくは凍結乾燥形で、選択された投与タイプに適合する形態で調製される。
【0090】
本発明による抗癌化合物を含む医薬組成物は、液体もしくは固体、例えば水性の医薬上許容される賦形剤および/またはビヒクルを含有してよい。多数の医薬上許容される賦形剤および/またはビヒクル、例えば、溶媒もしくは希釈剤;適切であればプロピレングリコールもしくはポリエチレングリコール、緩衝水、食塩液、グリシン溶液およびそれらの誘導体との混合液としての水、特に例えばエタノール、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)および/またはジメチルホルムアミド(DMF)などの溶媒を含む非水溶液、およびさらに生理的条件を複製するために必要な物質、例えば緩衝剤およびpH調整剤、例えばSolutol(登録商標)HS15、Tween(登録商標)80、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどの界面活性剤または例えばCremophor EL(登録商標)などのビヒクルを使用できるが、このリストは限定的ではない。さらに、医薬組成物は、当業者には周知の滅菌技術によって滅菌することができる。式(1)の化合物を溶解させるために少なくとも1種の有機溶媒および少なくとも1種の界面活性剤、好ましくはエタノール、ジメチルアセトアミドおよび少なくとも1種の界面活性剤の混合物を使用するのが好ましい。
【0091】
不活性、非毒性の医薬上許容されるビヒクル、アジュバントもしくは賦形剤としてはさらに、非限定的指針として、溶媒以外の可溶化剤、保存料、湿潤剤、乳化剤、分散剤、結合剤、膨潤剤、錠剤崩壊剤、カプセル封入剤、遅延剤、潤滑剤、吸収剤、懸濁剤、着色剤、香味料、安定剤、増粘剤を挙げることができる。そのような化合物は、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース系物質、カカオ脂などである。
【0092】
一般に、本発明による医薬組成物は、上記組成物の総重量に比較して、0.01重量%〜99重量%および有益には1重量%〜90重量%の式(1)の化合物を含む。投与される化合物(1)の1日量は、一般に0.5〜50mg/kgおよび好ましくは1〜20mg/kgの範囲に及ぶ。一般に、本発明による医薬組成物は、1重量%〜99.99重量%および有益には10重量%〜99重量%の医薬上許容される賦形剤および/またはビヒクル(もしくは希釈剤)または医薬上許容される賦形剤および/またはビヒクルの組み合わせを含む。
【0093】
錠剤形にある固形組成物が調製される場合、主要有効成分は、例えばゼラチン、デンプン、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、アラビアガムなどの医薬ビヒクルと混合される。
【0094】
錠剤は、スクロースもしくは他の適切な出発物質でコーティングすることができる、またはそれらが持続性もしくは遅延性活性を有するように、およびそれらが規定量の有効成分を持続的に遊離するように処理することができる。
【0095】
ゲルカプセルのような製剤は、有効成分を希釈剤と混合し、得られた混合物を軟質もしくは硬質ゲルカプセルに注入する工程によって得られる。
【0096】
シロップ剤もしくはエリキシル剤形にある医薬組成物は、有効成分を甘味料、好ましくはノンカロリー甘味料、防腐剤としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベンならびにさらに風味を与える物質および適切な着色料と組み合わせて含有することができる。
【0097】
水分散性散剤もしくは顆粒剤は、有効成分を分散剤もしくは湿潤剤もしくは懸濁剤、例えばポリビニルピロリドンと、および同様に甘味料もしくは調味料との混合物として含有することができる。
【0098】
有効成分は、任意選択的に1つ以上の支持体もしくは添加物とともに、マイクロカプセルの形態で処方することもできる。
【0099】
一般に、本発明による医薬組成物を製造するためには、当業者は、有利には欧州薬局方の最新版、例えば2005年1月に発行された欧州薬局方第5版、または2007年6月に一般に利用可能な欧州薬局方第6版を参照できる。
【0100】
本発明による医薬組成物を調製するための技術は、当業者であれば、例えば書籍Remmingston’s Pharmaceutical Sciences,Mid.Publishing Co,Easton,PA,USAの中で容易に見いだすことができる。
【0101】
生理的に許容できるビヒクルおよび賦形剤(もしくはアジュバント)は、さらにまた‘‘Handbook of Pharmaceutical Excipients’’と題する書籍(Second edition,American Pharmaceutical Association,1994)にも記載されている。
【0102】
本発明による医薬組成物を調剤するためには、当業者であれば、有益にも欧州薬局方または米国薬局方の最新版(米国薬局方、特にUSP30−NF25版)を参照できる。
【0103】
有益には、上記に規定した医薬組成物は、経口、非経口または静脈内投与のために適合する。
【0104】
本発明による医薬組成物が少なくとも1種の医薬上もしくは生理学上許容される賦形剤を含む場合は、その賦形剤は特に、本組成物の経口投与のために適合する賦形剤または本組成物の非経口投与のために適合する賦形剤である。
【0105】
本発明はさらに、患者における癌の発生を予防もしくは治療するため、および/または癌に罹患した患者における転移の発生を低減もしくは予防するための治療的処置法であって、その間に治療有効量の本明細書に規定した式(1)の化合物または上記の式(1)の化合物を含有する医薬組成物がその患者に投与される方法に関する。
【0106】
本発明による転移抑制治療は、一般に、主治療に補完的もしくは補助的である抗癌治療である。この補助的治療は、一般に、初期治療後に治療補完を促す情報が収集された場合の第二期に適用される。しかし、特定の症例では、この補助的治療は、この補完的治療が有利である適応が最初から公知である場合は、最初に適用されてよい。実施された分析が生体内での顕微的播種の仮説を実証する場合は、転移が発生する前にこの全身化を治療するために、本発明による化合物を使用した化学療法による全身性治療が正当化される。
【0107】
本発明は、他の治療用式、例えばホルモン療法、手術、凍結療法、ハイパーサーミア、放射線療法、追加の化学療法などと併用して実施されてよい。有益にも、本発明による治療は、癌細胞の増殖および/または血管形成を標的とする治療と併用することができる。
【0108】
以下では、本発明をさらに実施例により例示するが、それらによって限定されることはない。
【実施例】
【0109】
a)材料
他に特に指示しない限り、NMRスペクトルは、CDCl
3中で400.13MHz(
1H)で作動するBrueker Avance 400分光計上で記録した。化学シフトは、
1Hおよび
13Cについてppm/TMSで表示した;結合定数
nJはHzで表示した。スペクトルが一次である場合、または一次であると見なせる場合、信号は文字s(一重項)、d(二重項)、t(三重項)、q(四重項)、m(多重項)およびこれらの文字の組み合わせによって表示した。広帯域信号は、文字bが先行するこれらの文字の1つで表示した。
【0110】
高分解能質量スペクトル(HR MS)は、Jeol JMS DX−300装置上でマトリックスとしてp−ニトロベンジルアルコール(NBA)を用いるポジティブFABイオン化モードで記録した。
【0111】
感湿性もしくは酸素感受性化合物は、シュレンク技術を使用して窒素雰囲気下で取り扱った。無水溶媒は、適切な乾燥剤を用いて窒素雰囲気下で蒸留した。フラッシュクロマトグラフィによる生成物の分離は、15〜40μmまたは30〜75μmのシリカゲルのMerck製カラム上で実施した。
【0112】
R.Janvier繁殖センターから供給された、平均体重25mg、4〜5週齢の雌ヌードマウスを使用した。これらのマウスは、無菌環境で飼育し、飼料および飲用水を任意に摂取させた。実験は、マウスを1週間かけて新しい環境に順化させた後に開始した。
【0113】
数種の癌細胞系をin vivoまたはin vitro生物学試験で使用した:
− SNB75は、一次培養由来の、つまり原発性悪性癌腫瘍由来のヒト膠芽腫細胞系である。この細胞系は、NCIに寄託された一群の59種の癌細胞系の一部を形成する。Welcome Trust Sanger研究所によって発行されたCosmic寄託番号は905982である。この細胞系は、Mr.Souhgheng Ning(スタンフォード大学医療センター放射線腫瘍学科のM.D.Ph.D)から供給された。この細胞系は、10%ウシ胎児血清を補給したHam’s F−12およびDMEM(1/1)中で培養した。実験は、指数増殖期にある細胞を用いて実施した。
− Gli4(またはGli4F11)およびGli7は、ヒト膠芽腫由来の癌系統細胞の培養(一次培養)である。これらの細胞系は、動物において多能性および腫瘍原性であるCD133
+、CD15
+である。これらの細胞系はJ.P.Hugnotによって樹立され(INM INSERM U−1051 Eq.4)、Guichet,P.O.et al,Glia 2013,61(2),225−239に記載されている。
− C6は、ラット膠芽腫細胞系である。この細胞系は、寄託番号CCL−107を付してATCCに寄託されている。
− MDAMB−435は、乳房黒色腫由来の黒色腫細胞系である。この細胞系は、NCIに寄託された一群の59種の癌細胞系の一部を形成する。この細胞系は、寄託番号HTB−129を付してATCCに寄託されている。この細胞系は、10%ウシ胎児血清を補給したHam’s F−12およびDMEM(1/1)中で培養した。実験は指数増殖期にある細胞を用いて実施した。
【0114】
b)オキサザホスフィナンの性質を備える化合物の調製
b.1)化合物3.48a(4,5−ビス−ベンジルオキシ−6−ベンジルオキシメチル−2−フェニル−2−オキソ−2λ
5−[1,2]オキサホスフィナン−3−オール)
500mg(0.9mmol)の特許出願の国際公開第2009/004096号パンフレットに記載されたP−H結合を含む式3.47のジアステレオマーの混合物、125mgのテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.09mmol、0.1当量)、5mlの無水トルエン、ヨードベンゼンもしくはブロモベンゼン(0.9mmol、1当量)および365μlのトリエチルアミン(2.7mmol、3当量)は、凝縮器を装備した窒素雰囲気下の三つ口フラスコ内へ連続的に導入した。反応媒質は、磁気攪拌装置を用いて4時間にわたり70℃で維持した。反応媒質をセライトに通してろ過し、そこで得られたろ液を減圧下で蒸発させた。油性残留物はその後、81/19のモル比で得られた2つのジアステレオマー3.48aおよび3.48bの分離を可能にするために、シリカゲルクロマトグラフィ(100/0〜50/50のCH
2Cl
2/EtOAc勾配)によって精製した。ジアステレオ異性体3.48aは、総収率60%で、無色固体の形態で得られた(C
32H
33O
6P、M=544.59g/mol)。この化合物を調製するためにより効率的な方法は、刊行物J.Med.Chem.2012,55,2196−2211に記載されている。
【化17】
1H NMR(400,13MHz,CDCl
3):δ3.68(dd,1H,
3J
H−H=1.9Hz,
2J
H−H=11.1Hz,
5CH
2a),3.86−3.91(m,2H,
5CH
2b+
4CH),3.94(bd,1H,
2J
P−H=9.6Hz,
1CH),4.11(m,1H,
3CH),4.44−4.63(m,4H,2CH
2OBn),4.80−4.84(m,2H,CH
2OBn),4.89(dd,1H,
3J
P−H=11.3Hz,
3J
H−H=4.7Hz,
2CH),7.12−7.74(m,20H,CH
Ar).
HRMS
+(NBA):理論質量545.2093;試験質量545.2104.
【0115】
b.2)化合物4.2a(S
PRSRR)−3−ベンゾエート−4−(2,2−ジメチル−[1.3]ジオキソラン−4−イル)−2,2−ジメチル−2−オキソ−2−フェニル−テトラヒドロ−2λ
5−[1.2]オキサホスフィナン)
安息香酸無水物(132mg、0.58mmol)、ピリジン(25μL、0.39mmol)およびDMAP(4.8mg、0.039mmol)を窒素雰囲気下で、無水CH
2Cl
2(3ml)中の特許出願の国際公開第2009/004096号パンフレットに記載された化合物3.3aの溶液(150mg、0.39mmol)に加えた。反応混合液を室温で一晩攪拌した。有機溶液を水および飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。結合有機相を硫酸ナトリウムの上方に通して乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮した。残留物を最小必要量のCH
2Cl
2中に溶解させ、ヘキサンから再沈降させた。化合物4.2aは、無色固体の形態で、総収率78%(149mg)で得られた。
【化18】
31P NMR(161.97MHz,DMSOd
6):δ=25.02ppm.
1HNMR(400.13MHz,DMSOd
6):δ=1.30(s,3H),1.33(s,3H),1.38(s,3H),1.56(s,3H),3.86(dd,1H,J=5.8Hz),4.06(dd,1H,J=7.8Hz),4.31(dd,1H,J=12.6Hz),4.70(d,1H,J=8Hz),4.86(d,1H,J=6Hz),4.98(ddd,1H,J=24,8,4Hz),6.00(d,1H,J=4Hz),7.53−7.97(m,10H)ppm.
13CNMR(100.61MHz,DMSOd
6):δ=24.39,25.16,25.62,26.28,65.48,67.16(d,J=105.3Hz),73.41(d,J=8.05Hz),73.46(d,J=6Hz),73.93(d,J=8.05Hz),75.72(d,J=8.05Hz),108.79,109.92,128.29,128.68(d,J=13.2Hz),129.18(d,J=51.2Hz),130.78(d,J=10.2Hz),131.28(d,J=134.7Hz),132.73(d,J=2.4Hz),134.04,164.78ppm.HRMS(ESI)m/zC
25H
30O
8P(M+H)
+に対して計算:489.1678;実測値:489.1669.
【0116】
b.3)5,6−ジ−O−イソプロピリデン−N−ベンジル−D−マンノシラミンの合成
【化19】
10gの保護D−マンノース(特許出願の国際公開第2009/004096号パンフレットに記載された[2,3,5,6]−ジ−O−イソプロピリデン−D−マンノース;38mmol)、100mlのエタノール、10gの硫酸マグネシウムおよび7.5mlの蒸留ベンジルアミン(57mmol、1.5当量)を三つ口フラスコ内に配置した。媒質を48時間、還流させながら撹拌した。媒質をセライトに通してろ過し、そこで得られたろ液を減圧下で蒸発させた。油性残留物は、100/0〜50/50の勾配で、ジクロロメタン/酢酸エチル系を用いるシリカゲルカラム上で直接精製した。生成物は、黄色油の形態で得られた。Yld58%.
1H NMR(400.13MHz,CDCl
3):δ1.19(s,3H,CH
3),1.24(s,3H,CH
3),1.30(s,3H,CH
3),1.38(s,3H,CH
3),3.30(dd,1H,
3J
H−H=3.3Hz,
3J
H−H=7.6Hz,
4CH),3.67(dd,1H,
3J
H−H=5.9Hz,
3J
H−H=7.2Hz,
5CH),3.81(dd,1H,
2J
H−H=3.8Hz,
3J
H−H=2.0Hz,
2CH),3.97(m,2H,
6CH
2),4.29(td,1H,
3J
H−H=3.3Hz,
3CH),4.48(ddd,2H,
2J
H−H=41.8Hz,
3J
H−H=6.3Hz,
2J
H−H=3.5Hz,
7CH
2),4.66(dd,1H,
3J
H−H=5.1Hz,
3J
H−H=3.6Hz,
1CH),4.81(s,1H,NH),7.22−7.47(m,5H,CH
Ar).
【0117】
(R
PSSRR)−4−(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イル)−2,2−ジメチル−2−オキソ−2−フェニル−テトラヒドロ−6λ
*5
*−[1,3]ジオキソロ[4,5−d][1,2]オキサホスフィナン−3−アミノベンジルの合成
【化20】
先行段落で得られた1gの化合物(3mmol)、10mLのTHF、0.35mLのメチルフェニルホスフィネート(3mmol、1当量)およびtert−ブトキシドカリウム(70mg、0.2当量)をあらかじめ脱酸素化したシュレンク管内に窒素雰囲気下で配置した。そこで媒質を15時間、室温で撹拌した。次に15mLの0.1N塩酸を反応媒質に加え、次に15mLの飽和塩化ナトリウム水溶液および50mLのクロロホルムを加えた。水相は50mLのクロロホルムを用いて2回抽出した。有機相を結合し、硫酸マグネシウムの上方に通して乾燥させ、減圧下で蒸発させた。このようにして得られた油性残留物は、次にジエチルエーテルを用いるシリカゲルカラム上で精製した。73%収率.
31P NMR(161.97MHz,CDCl
3):δ38.31.
1HNMR(400.13MHz,CDCl
3):δ1.35(s,3H,CH
3),1.37(s,3H,CH
3),1.40(s,3H,CH
3),1.45(s,3H,CH
3),3.35(dd,1H,
3J
H−H=4.3Hz,
2J
P−H=7.6Hz,
1CH),3.94(bs,2H,
7CH
2),4.14(m,2H,
6CH
2),4.43(m,1H,
3CH),4.49(qd,1H,
3J
H−H=1.8Hz,
3J
H−H=7.6Hz,
4CH),4.58(m,1H,
5CH),4.69(ddd,1H,
3J
P−H=21.2Hz,
3J
H−H=4.3Hz,
3J
H−H=6.6Hz,
2CH),7.23−7.97(m,5H,CH
Ar).
13CNMR(100.61MHz,CDCl
3):δ24.66(1s,1C,CH
3),25.26(1s,1C,CH
3),26.31(1s,1C,CH
3),27.01(1s,1C,CH
3),52.97(d,1C,
1J
P−C=87.3Hz,
1CH),53.05(s,1C,
7CH2),66.81(s,1C,
6CH
2),72.56(d,1C,
2J
P−C=3.6Hz,
2CH),73.70(d,1C,
3J
P−C=5.1Hz,
5CH),73.81(d,1C,
3J
P−C=8.7Hz,
3CH),75.47(d,1C,
2J
P−C=1.5Hz,
4CH),109.10(s,1C,Cq),110.01(s,1C,Cq),127.27(s,2C,CH
ANIm),128.14(s,2C,CH
ANIo),128.79(s,1C,CH
Arm),128.30(s,1C,CH
Arm),129.57(d,1C,J
P−C=138.9Hz,Cq
Ar),129.60(s,1C,CH
ANIp),131.82(s,1C,CH
Aro),131.97(s,1C,CH
Aro),132.87(s,1C,CH
Arp),138.94(d,1C,
3J
P−C=17.4Hz,Cq
Ar).IR(KBrペレット):3351ff(νNH),2980ff,2894ff(νCH
Alk),1491ff,1439ff,1370f,1265f,1205FF,1167f,1128m(νC−O−C),1059f(νP=O),962m(νP−O−C),925m(δCH
Ar),891m,817f,733F,713f,693F.MSFAB+(NBA):m/z(%)475[MH+H
+](90%);474[M+H
+](50%).HRMS
+(NBA):理論質量474.2046;試験質量474.2058.
【0118】
(R
PSSRR)−(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イル)−2,2−ジメチル−2−オキソ−2−フェニル−テトラヒドロ−6λ
*5
*−[1,3]ジオキソロ[4,5−d][1,2]オキサホスフィナン−3−アミノ5.5dの合成
【化21】
1gのホスフィノ糖(0.002mol)、10mLのエタノールおよび1gの木炭上のパラジウムをあらかじめ脱酸素化したシュレンク管内に窒素雰囲気下で配置した。そこで媒質を室温の水素雰囲気下で24時間撹拌した。反応媒質を次にセライトに通してろ過してパラジウムを除去した。得られたろ液を減圧下で蒸発させると、わずかに着色された油が得られた。この油をシリカゲルカラム上で精製したが、エタノールを用いて溶出した場合にのみ予想生成物が発生した。87%収率.
31P NMR(161.97MHz,CDCl
3):δ37.46.
1HNMR(400.13MHz,CDCl
3):δ1.38(s,3H,CH
3),1.41(s,3H,CH
3),1.44(s,3H,CH
3),1.50(s,3H,CH
3),1.86(bs,2H,NH
2),3.49(dd,1H,
2J
P−H=5.2Hz,
3J
H−H=6.4Hz,
1CH),4.11(m,2H,
6CH
2),4.39−4.58(m,4H,
3CH+
5CH+
2CH+
4CH),7.39−7.87(m,5H,CH
Ar).
13CNMR(100.61MHz,CDCl
3):δ25.04(s,1C,CH
3),25.27(s,1C,CH
3),26.93(s,1C,CH
3),26.95(s,1C,CH
3),48.78(d,1C,
1J
P−C=91.6Hz,
1CH),66.78(s,1C,
6CH
2),72.85(d,1C,
2J
P−C=3Hz,
2CH),73.27(d,1C,
2J
P−C=5.1Hz,
4CH),73.97(d,1C,
3J
P−C=9.5Hz,
3CH),78.33(s,1C,
5CH),109.23(d,1C,Cq),109.96(d,1C,Cq),128.71(d,1C,
2J
P−C=138Hz,Cq
Ar),128.41(s,1C,CH
Ar),128.52(s,1C,CH
Ar),131.92(s,1C,CH
Ar),132.02(s,1C,CH
Ar),133.02(s,1C,CH
Arp).IR(KBrペレット):3287f(νOH),2987ff,2937ff(νCH
Alk),1593ff(νNH),1439ff,1372f,1207FF(νP=O),1159m(νC−O−C),1124F(νC−O),1060FF,958F(νP−O−C),920f,890m,836m,798f,727F,694F.MSFAB+(NBA):m/z(%)767[2M+H
+](10%),384[M+H
+](90%).HRMS
+(NBA):理論質量384.1576;試験質量384.1567.
【0119】
化合物5.6d(R
PSSRR)−3−アセトアミド−4−(2.2−ジメチル−[1.3]ジオキソラン−4−イル)−2.2−ジメチル−2−オキソ−2−フェニルテトラヒドロ−2λ
5−[1.2]オキサホスフィナン)の合成
酢酸無水物(72μL、0.76mmol)およびトリエチルアミン(60μL、0.42mmol)を無水CH
2Cl
2(5mL)中の以前に得られた化合物5.5dの溶液(145mg、0.38mmol)に窒素雰囲気下で加えた。反応混合液を室温で2時間攪拌した。有機溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。結合有機相を硫酸ナトリウムの上方に通して乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮した。次に残留物をシリカゲルクロマトグラフィ(50/50/0〜0/95/5のヘプタン/EtOAc/EtOH勾配)上で精製した。得られた無色固体を最小必要量のジエチルエーテル中に溶解させ、ヘキサンから再沈降させた。化合物5.6dは、12%の総収率で得られた(20mg)。
【化22】
31P NMR(161.97MHz,CDCl
3):δ=37.02ppm.
1HNMR(400.13MHz,CDCl
3):δ=1.31(s,3H),1.34(s,3H),1.37(s,3H),1.53(s,3H),1.91(s,3H),4.03(ddd,2H,J=4.5,5.5,9Hz),4.36−4.48(m,3H),4.60−4.71(m,2H,),6.74(bs,1H),7.42−7.88(m,5H)ppm.
13CNMR(100.61MHz,CDCl
3):δ=25.59,26.41,26.85,27.51,66.61,68.01,68.97,74.72,75.09,75.17,76.86,76.93,109.88,111.04,129.70,130.03,130.54,131.92,133.87,135.50,165.98.HRMS(ESI)m/zC
20H
30NO
7P(M+H)
+に対しての理論値:426.1682;試験質量426.1686.
【0120】
c)本発明による式(1)の化合物の調製物
式3.48aおよび4.2aの化合物は水中、数多くの水溶性溶媒中で不溶性であり、シクロデキストリン中では錯体形成不能である。下記の2種の調製物は、化合物3.48aおよび4.2aに特に適合するので、約20〜100mg/kgの濃度で静脈内投与によるin vivo投与を可能にする。
【0121】
調製物1:化合物3.48aおよび4.2aをEtOH/MDA混合液中に溶解させ、その後に界面活性剤Solutol(登録商標)HS15(BASF社によって販売されたポリエチレングリコール−660−ヒドロキシステアレート)を即時添加して37°Cに加熱してろ過すると(0.22μm)、EtOH/MDA/Solutol(登録商標)HS15混合液(容積で1/3/6)が得られたので、10容積%の0.9% NaCl溶液を加えて希釈した。使用した0.9% NaCl溶液は、気密シールを備える無菌ガラス瓶に入れられた注射液(無菌および非発熱性)である。
【0122】
調製物2:EtOH/MDA/Solutol(登録商標)HS15混合液(容積で1/3/6)を得るために調製物1と同一方法で調製し、0.9% NaClを用いて4倍に希釈した(化合物3.48aまたは4.2aの調製物の調製中に5mg/kgを使用した以外)。
【0123】
d)急性および慢性in vivo毒性
化合物3.48aおよび4.2aの急性毒性試験は、50、25、10、5および1mg/kgの濃度範囲について健常マウスを対象に実施した。50mg/kgの最高用量についてさえ、死亡は観察されなかった。
【0124】
慢性毒性試験は、4週間にわたり注射3回/週のペースで20、5および1mg/kgの注射を対象に実施した。mg/kgの最高用量についてさえ、死亡は観察されなかった。
【0125】
e)in vivo転移抑制活性
SNB75皮下モデル(
図1)
100μLの無菌PBS(リン酸緩衝食塩液、Fisher製)中の5×10
6個のSNB75細胞の懸濁液を各マウスに注射した(麻酔を伴わない皮下投与)。マウスが0.13〜0.033mm
3の容積の腫瘍を提示し時点に、各群が同等数の大、中および小腫瘍を含有するように群を形成した。各群マウス7匹を含む5群を用いて試験手順を実施した。以下に記載する5種の調製物中1種を用いて5群のマウスを処置した:
A群:100μLのNaClの注射による処置(コントロール、No.1)。
B群:100〜150μLの量の調製物2を用いて、マウスの体重にしたがって10mg/kgの割合で化合物3.48aを用いた処置。
C群:100〜150μLの量の調製物2を用いて、マウスの体重にしたがって5mg/kgの割合で化合物3.48aを用いた処置。
D群:100〜150μLの量を用いて、マウスの体重にしたがって20mg/kgの割合でテモゾロミドを用いた処置。テモゾロミドは、Schering Plough研究所によってTemodalの名称で販売されている比較抗癌有効成分である。テモゾロミドは、多形性膠芽腫を治療するために適応である。40mg/kgの用量は実験期間の終了前にマウス死亡を生じさせるので、用量を20mg/kgに限定した。
E群:化合物3.48aを含有していない調製物2の、マウスの体重にしたがって100〜150μLの注射による処置(コントロール、No.2)。
【0126】
各バッチは、100〜150μLの溶液の尾静脈内への静脈内注射によって処置した(精密シリンジおよびG25X1超微細針、VWR)。4週間にわたり週3回の注射を実施した。マウスの体重は各注射時に計量した。腫瘍のサイズは、4週間にわたり週2回測定した。マウスを4週間後に犠死させ、腫瘍および器官(肝臓、腎臓、脾臓、脳、腸、心臓、筋肉)を切除した。組織学的分析をこれらの器官に対して実施した。
【0127】
図1に示したように、コントロール群(A群およびE群)のマウスに比較して、4週間後には、化合物3.48a(B群およびC群)を用いて処置したマウスでは原発腫瘍の増殖の極めて大きな減少が観察された。B群およびC群については、マウスは1匹も死亡せず、体重減少は観察されなかった。D群に関しては、マウス7匹中3匹が第3回注射後に死亡し、残り4匹のマウスについては、腫瘍の極めて大きな退行が見られたにもかかわらず、実質的な体重減少が観察された。
【0128】
ヒト膠芽腫を起源とするSNB75細胞系は、皮下移植後のヌードマウスにおいて転移できる。詳細には、コントロール群(A群およびE群)の全マウスが肝臓および腸内で転移を発生した。化合物3.48aを用いて処置したマウス(B群およびC群)は、1匹も転移を発生しなかった。
図1Aは、SNB75細胞の皮下移植8週間後の、A群のマウス肝臓内での転移の存在およびB群のマウス肝臓内での転移の非存在を示している。
【0129】
Gli4頭蓋内モデル
2×10
5個のGli4細胞を1群のマウスに注射した(右側線条体注射、注射座標:プレグマ 0 L−L:L:−1.5mm P:−3.5〜2.5)。マウスは、直ちに週3回、化合物3.48aを10mg/kgで用いて(調製物1、B群)または同一処置手順にしたがって100μLのNaClを使用して(A群)4週間にわたり処置し、10週間後に犠死させた。
【0130】
コントロール群のマウス(A群)では、脳梁に沿って遊走して他方の半球内へ通過した分散性のGli4細胞が観察された。Gli4細胞は、抗マウス二次抗体(Alexa 594)とともに明らかになった抗ヒト核(抗−HuNu)抗体により同定された。この遊走は、ヒト多形性膠芽腫において観察されるような白質に沿った遊走(白質に沿った繊維束内増殖としての分散)を反映している。
【0131】
10mg/kgの割合で化合物3.48aを用いて処置したマウス群(B群)では、4週間の処置は細胞遊走の阻害を可能にした。処置の中止後、最後の6週間中に細胞の増殖および遊走の再開が観察された。
【0132】
MDAMB−435皮下モデル(
図4〜6)
100μLの無菌PBS(リン酸緩衝食塩液、Fisher製)中の1×10
6個のMDAMB−435細胞の懸濁液を各マウスに注射した(左後四半身の乳腺中に麻酔を伴わない皮下投与)。マウス3匹の予備コントロール群が最初の転移(肝臓、腸、卵巣)を提示した時点に、マウス8匹の4群を用いて試験手順を実施した。以下に記載する5種の調製物中1種を用いて5群のマウスを処置した:
A群:100μLのNaClの注射による処置(コントロール、No.1)。
B群:化合物4.2aを含有していない100〜150μLの調製物2を用いて、マウスの体重にしたがった注射による処置(コントロール、No.2)。
C群:100〜150μLの量の調製物2を用いて、マウスの体重にしたがって、10mg/kgの割合で化合物4.2aを用いた処置。
D群:100〜150μLの量の調製物2を用いて、マウスの体重にしたがって、5mg/kgの割合で化合物4.2aを用いた処置。
【0133】
各バッチは、100〜150μlの溶液の尾静脈内への静脈内注射によって処置した(精密シリンジおよびG25X1超微細針、VWR)。4週間にわたり週3回の注射を実施した。各注射時にマウスの体重を計量した。マウスを4週間後に犠死させ、腫瘍および器官(肝臓、腎臓、脾臓、脳、腸、心臓、筋肉)を切除した。組織学的分析をこれらの器官に対して実施した。
【0134】
ヒト黒色腫を起源とするMDAMB−435細胞系は、乳腺内への皮下移植後のヌードマウスにおいて転移できる。詳細には、コントロール群(A群およびB群)の全マウスが肝臓および腸内で転移を発生した。化合物4.2aを用いて処置したマウス(C群およびD群)は、転移発生の低減(小規模転移)および転移数の大きな減少を経験した。
【0135】
図4は、コントロール群マウス(A群およびB群)における卵巣での転移の存在、および化合物4.2aを用いて処置したマウス(C群およびD群)での転移の非存在を示している。
【0136】
図5は、処置条件の関数としての、マウス1匹当たりの平均転移数を示している。この図は、化合物4.2aを用いて処置したマウス(C群およびD群)が1匹も3つ以上の転移を発生しなかったことを示している。他方、コントロール群マウス(A群およびB群)は、大多数が3つ以上の転移を発生した。
【0137】
図6は、処置条件の関数としての、これらの続発性腫瘍の質量分布を示している。この図は、化合物4.2aを用いた処置が転移の発生を低減させたことを示している。
【0138】
f)in vitro抗増殖活性
細胞系MDAMB−435およびA431は、96ウエルプレート内に1ウエル当たり細胞3,000個の密度で播種した。24時間後、100% DMSO中に再懸濁させた化合物4.2aおよび5.6dは、0.3%の最終一定量のDMSOに対して0〜0.001〜0.010〜0.1〜1〜10〜50μMの濃度で加えた。培養をさらに72時間保持し、次にMTT比色試験を実施した。PBS中で5mg/mLのMTTの100μL溶液を培養媒質に加え、これを3時間にわたり培養させた。培養媒質を取り除き、細胞は、イソプロパノール中の100μLの4mM HCl溶媒、0.1% Nondet P−40(NP40)を加えることによって溶解させた。黄色テトラゾリウムMTT塩(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)は、活性生細胞のミトコンドリアコハク酸デヒドロゲナーゼによって還元させられると、青紫色のホルマザン生成物を形成する。この媒質はその後、黄色から青紫色に変化する。590nmでのこの着色強度は試験中に存在する生細胞数に比例し、これらの細胞の代謝活性の指標を生じる。
【0139】
表1は、腸癌(CaCo2)、皮膚癌(A431、MDAMB−435、B16F10)、乳癌(MDAMB−431)、腸癌(HuH7)、前立腺癌(DU145)および脳腫瘍(SNB75、Gli4、Gli7)由来の細胞系上での化合物4.2aおよび5.6dについての増殖50%阻害率(IC
50)に対する濃度値を示している。
【0140】
【表1】
【0141】
表1は、化合物4.2aおよび5.6dが様々なヒトおよびラットの組織の種々の癌細胞系に抗増殖活性を有することを示している。詳細には、化合物4.2aは、ヒト黒色腫細胞系MDAMB−435の細胞増殖を0.66μMのIC
50で阻害し、化合物5.6dはA431細胞系(ヒト扁平上皮癌)の増殖を100nMのIC
50で阻害する。
【0142】
g)in vitro抗遊走活性
化合物3.48a、4.2aおよび5.6dが癌細胞(一方ではヒト膠芽腫系SNB75またはヒト膠芽腫Gli4F1の一次培養ならびに他方ではMDAMB 435およびA431)の遊走に及ぼす作用は、ボイデンチャンバ内での標準遊走試験(24時間にわたる細胞の処置)を実施することによって決定した。
【0143】
この試験のために、化合物をin vitroで溶解させ、0.3%のDMSO中での培養に使用した。インサートの内部は、試験した細胞外マトリックスタンパク質(ラミニン−1、ビトロネクチンもしくはフィブロネクチン)で被覆した。様々な濃度で前処理した、および未処理(コントロール)の細胞は、0.1%のBSA(ウシ血清アルブミン)を含有する媒質中の細胞50,000個/500μL/インサートの割合で上記タンパク質を用いて被覆したインサート内に配置した。
【0144】
次に10%ウシ胎児血清を含有する500μLの媒質を、多孔質膜を越える化学走性勾配を形成できるように、Companionプレートの各ウエル内に配置した。37℃のインキュベータ内での24時間の遊走後、上清を取り出し、インサートの各面をPBSですすぎ洗いした。細胞数は顕微鏡を用いて計数した(Zeiss Axiophot、倍率200倍)。これは、未処置細胞に比較した遊走率(%)を生じる。
【0145】
下記の表2は、化合物3.48aについて、ボイデンチャンバ内での様々な細胞外マトリックスタンパク質支持体上でのヒトGBM細胞系(SNB75)、GBM幹細胞系(Gli4、Gli7)および乳癌細胞系MDAMB231の遊走についての阻害定数(Ki)の数値を表示している。下記の表3および4は、化合物4.2aおよび5.6dについて、様々な細胞外マトリックスタンパク質支持体上でのボイデンチャンバ内での黒色腫細胞系(MDAMB−435)または扁平上皮癌細胞系(A431)の遊走についての阻害定数(Ki)の数値を表示している。阻害作用は、使用される細胞系および幹細胞だけではなく、使用される細胞外マトリックスタンパク質支持体にも左右される。
【0146】
【表2】
【0147】
【表3】
【0148】
【表4】
【0149】
図2および3ならびに表2は、化合物3.48aが、使用したマトリックス(ビトロネクチン、フィブロネクチンもしくはラミニン−1)に依存する用量作用で、様々な細胞外マトリックス物質上でのGBM細胞系であるSNB75およびC6ならびにGBM幹細胞(Gli4およびGli7)の細胞遊走を阻害することを示している。癌細胞における遊走の50%減少は、詳細には化合物3.48aの1〜100nMという低い濃度についてフィブロネクチンもしくはビトロネクチン上で得られる(SNB75細胞系)。
【0150】
表3および4は、化合物4.2aおよび5.6dが、使用したマトリックス(ビトロネクチン、フィブロネクチンもしくはラミニン−1)に依存する用量作用で、細胞系MDAMB−435およびA431の細胞遊走を各々阻害することを示している。癌細胞における遊走の50%減少は、詳細には化合物4.2aおよび5.6dの10〜100nMという濃度についてフィブロネクチンもしくはビトロネクチン上で得られる。
【0151】
本発明による化合物(1)は、転移抑制性であると想定されている市販の化合物の作用様式とは異なる作用様式を有する。特定の理論によって縛られることを望むものではないが、本発明者らは、化合物(1)が、α−1,6−結合マンノース基上のβ−1,6位にあるN−アセチルグルコサミンの添加を触媒するグリコシルトランスフェラーゼを阻害することにより細胞糖化を標的とすると考えている。これらの修飾の結果は、例えばフィブロネクチンもしくはビトロネクチンなどの様々な細胞外マトリックスタンパク質上でのこれらの細胞の遊走能の阻害である。