特許第6588345号(P6588345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588345
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】油中水型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/894 20060101AFI20191001BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20191001BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20191001BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20191001BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20191001BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   A61K8/894
   A61K8/25
   A61K8/31
   A61K8/06
   A61Q13/00 102
   A61Q19/00
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-7211(P2016-7211)
(22)【出願日】2016年1月18日
(65)【公開番号】特開2017-128512(P2017-128512A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2019年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】大村 孝之
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/069173(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/024653(WO,A1)
【文献】 特開2000−72646(JP,A)
【文献】 特表2005−509589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)香料を5〜15質量%、
(b)ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライトを1.5〜3質量%、及び、
(c)非イオン性界面活性剤を含む油中水型乳化化粧料であって、
前記(c)非イオン性界面活性剤が、化粧料全重量に対して2〜10質量%の炭素数12〜22の炭化水素分岐鎖を有するポリエーテル変性シリコーン(c1)を含み、アルキル鎖を持たないポリエーテル変性シリコーン(c2)を化粧料全重量に対して10質量%以下含んでいてもよく、
前記(b)成分に対する(c1)成分と(c2)成分との合計配合量の比率[((c1)+(c2))/(b)]が2以上であり、
前記(a)成分に対する(c1)成分と(c2)成分との合計配合量の比率[((c1)+(c2))/(a)]が0.8以上であり、
(c1)成分と(c2)成分との合計配合量が4質量%以上であり、(c2)成分に対する(c1)成分の配合量比率[(c1)/(c2)]が0.8以上であり、
化粧料の硬度がレオメーター11.3φの測定条件において6以上であることを特徴とする油中水型乳化化粧料。
【請求項2】
前記炭素数12〜22の炭化水素分岐鎖を有するポリエーテル変性シリコーン(c1)が、メチルポリシロキサン・セチルメチルポリシロキサン・ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体である、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記アルキル鎖を持たないポリエーテル変性シリコーン(c2)が、PEG−9 ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及びPEG−10ジメチコンから選択される少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油中水型乳化化粧料に関する。より詳細には、香料を高配合しても粘度低下を起こさず適度な硬度を保持できる安定な油中水型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油中水型乳化タイプの化粧料は、水中油型乳化タイプに比較して耐水性に優れる上、エモリエント油、油溶性の薬剤、紫外線吸収剤などを効率的に配合できるといった特徴を有し、スキンケア効果の高い化粧料とすることができる。しかし、水中油型乳化タイプに比較して安定化が難しく、清涼感に乏しく、べたつきや油っぽさといった使用感を生じることが問題となる場合があった。
【0003】
油中水型乳化化粧料の外相(油相)を構成する油分を増粘又はゲル化させることにより乳化物が安定化することが行われている。例えば、水膨潤性粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤と非イオン性界面活性剤とで処理した有機変性粘土鉱物が乳化剤として安定な油中水型乳化化粧料を構成できることが知られている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載された乳化系は、水分を高配合しても安定な油中水型乳化系を維持できるため、油中水型乳化タイプでありながらみずみずしい使用感のスキンケア化粧料やメーキャップ化粧料に応用が試みられている。例えば、特許文献2には、エタノール及び清涼剤を含み、みずみずしくさっぱりした使用感と清涼感を有する油中水型乳化化粧料が開示されている。また、特許文献3には、みずみずしく、独特のソフトな使用感を有するゲル状化粧料、特にメーキャップ化粧料が記載されている。
【0005】
一方、クリーム等の化粧料に香料で香りづけして製品の魅力を高めることが行われているが、一般的なクリーム等の油中水型乳化化粧料における香料の配合量は多くとも1質量%以下であり、通常は0.1〜0.5質量%程度であった(例えば、特許文献1の実施例7及び9参照)。そして、油中水型乳化化粧料が前記の有機変性粘土鉱物で乳化安定化されていても、そこに香料を高配合(例えば5質量%以上配合)すると、粘度が低下して不安定化するという問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平3−80531号公報
【特許文献2】特許第3524717号公報
【特許文献3】特許第5384050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって本発明における課題は、香料を高配合しても粘度低下を起こさず、安定性に優れた油中水型乳化化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライトと特定構造の非イオン性シリコーン系界面活性剤とを組み合わせて配合し、なおかつ各成分間の配合量比率を特定範囲内とすることにより、香料を高配合しても粘度低下を来さず安定な油中水型乳化化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(a)香料を5〜15質量%、
(b)ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライトを1.5〜3質量%、及び、
(c)非イオン性界面活性剤を含む油中水型乳化組成物であって、
前記(c)非イオン性界面活性剤が、組成物全重量に対して2〜10質量%の炭素数12〜22の炭化水素分岐鎖を有するポリエーテル変性シリコーン(c1)を含み、アルキル鎖を持たないポリエーテル変性シリコーン(c2)を組成物全重量に対して10質量%以下含んでいてもよく、
前記(b)成分に対する(c1)成分と(c2)成分との合計配合量の比率[((c1)+(c2))/(b)]が2以上であり、
前記(a)成分に対する(c1)成分と(c2)成分との合計配合量の比率[((c1)+(c2))/(a)]が0.8以上であり、
(c1)成分と(c2)成分との合計配合量が4質量%以上であり、(c2)成分に対する(c1)成分の配合量比率[(c1)/(c2)]が0.8以上であり、
組成物の硬度がレオメーター11.3φの測定条件において6以上であることを特徴とする油中水型乳化組成物及び当該組成物からなる油中水型乳化化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の油中水型乳化化粧料は、香料を5質量%以上高配合しても粘度低下を起こさず、安定で適度な硬度を維持し、みずみずしい使用感を発揮する。従来のクリーム等に比較して香料が高配合されているので賦香効果が高く、香水やオーデコロン等のフレグランス化粧料のような高級感が演出できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の油中水型乳化化粧料(以下、単に「乳化化粧料」と呼称する場合もある)は、5〜15質量%の香料((a)成分)を含んでいる。
化粧料に配合される香料は、一般に、天然香料、合成香料及び調合香料に分類される。天然香料は植物又は動物由来の成分を主成分とする香料であり、バラ油、ジャスミン油、ネロリ油、ラベンダー油、イランイラン油、チュベローズ油、クラリセージ油、クローブ油、ペパーミント油、ゼラニウム油、パチュリー油、サンダルウッド油、シナモン油、コリアンダー油、ナツメグ油、ペッパー油、レモン油、オレンジ油、ベルガモット油、オポポナックス油、ベチバー油、オリス油、オークモス油等の植物由来の天然香料、ムスク油、シベット油、カストリウム油、アンバーグリス油等の動物由来の天然香料がある。
【0012】
合成香料は、その化学構造あるいは発香基という観点から炭化水素、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、ラクトン、フェノール、アセタールなどに分類されることがある。具体例としては、リモネン、β−カリオフィレン(以上、炭化水素類)、シス−3−ヘキセノール、リナロール、ファルネソール、β−フェニルエチルアルコール、ゲラニオール、シトロネロール、ターピネオール、メントール、サンタロール、バグダノール、ブラマノール(以上、アルコール類)、2,6−ノナジエナール、シトラール、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、l−カルボン、シクロペンタデカノン、リラール、リリアール(以上、アルデヒド類)、β−イオノン、ダマスコン、メチルイオノン、イロン、イソイースーパー、アセチルセドレン、ムスコン(以上、ケトン類)、リナリルアセテート、ベンジルベンゾエート、ベンジルアセテート、メチルジヒドロキシジャスモネート、メチルジャスモネート(以上、エステル類)、γ−ウンデカラクトン、ジャスミンラクトン、シクロペンタデカノリッド、エチレンブラシレート(以上、ラクトン類)、オイゲノール(フェノール類)、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール(アセタール類)、ローズオキサイド、インドール、オーランチオール等が挙げられる。
【0013】
調合香料とは、天然香料や合成香料を調合することにより得られる香料であり、その主体(ボディー)となる部分の香りを有する素材を調合ベース香料という。基本的なベース香料としては、ローズ、ジャスミン、ミューゲなどのフローラル、ウッディ、シプレー、シトラス、グリーン、フゼア、オリエンタルなどが知られている。また、少量添加して香りのコクや幅を出すベース香料として、フルーティ、スパイシー、アルデハイド、アニマルなども知られている。
【0014】
本発明における香料は、上記の天然香料、合成香料、及び調合香料から選択される少なくとも一種であり特に限定されるものではない。
本発明の乳化化粧料おける香料の配合量は、5〜15質量%である。5質量%未満では意図する賦香効果が得られない。15質量%を超えて配合すると香りが強くなりすぎる場合があり、乳化安定性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0015】
本発明に係る油中水型乳化化粧料は、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト((b)成分)を含む。
本発明におけるジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト((b)成分)は、化粧料等の油相増粘剤(又はゲル化剤)として従来から使用されている有機変性粘土鉱物の一種であり、油分中で非イオン性界面活性剤と複合体を形成してオイルゲルを構築する(特許文献1〜3参照)。
【0016】
本発明におけるジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト(成分b)として市販品を使用してもよく、例えば、「ベントン38V」又は「ベントン38VCG」(エレメンティスジャパン株式会社製)等を例示することができる。
【0017】
本発明の乳化化粧料におけるジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト((b)成分)の配合量は1.5〜3.0質量%、好ましくは1.8〜2.8質量%、より好ましくは2.0〜2.5質量%である。(b)成分の配合量が1.5質量%未満であると十分な乳化安定性が得られない。
【0018】
本発明の乳化化粧料は、前記ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト((b)成分)とともに複合体を形成する非イオン性界面活性剤((c)成分)を含有する。
本発明における非イオン性界面活性剤は、炭素数12〜22の炭化水素分岐鎖を有するポリエーテル変性シリコーン((c1)成分)を含んでいる。
【0019】
炭素数12〜22の炭化水素分岐鎖を有するポリエーテル変性シリコーン((c1)成分)は、直鎖状又は分岐鎖状のシリコーン骨格の側鎖にポリオキシアルキレン基と炭素数12〜22の炭化水素基、好ましくはアルキル基とを有するものであり、ポリエーテル・アルキル共変性シリコーンとも呼ばれるものを包含する。例えば、下記一般式(I)で示される構造を有するポリエーテル・アルキル共変性シリコーンが例示される。
【0020】
【化1】
上記式(I)において、
Rは炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基(好ましくはメチル基);
R’は水素又は炭素数1〜12のアルキル基(好ましくは水素);
pは12〜22(好ましくは10〜18、特に好ましくは12〜16);
qは1〜50(好ましくは3);
mは1〜100;
n、w及びxは各々1〜50;
yは0〜50である。
なお、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンの付加順序は特に制限されず、ランダム状又はブロック状の何れでもよい。また、アルキル鎖(C2p+1)は、直鎖状又は分岐鎖状のものを含む。
【0021】
具体例としては、直鎖状のシリコーン骨格を有するメチルポリシロキサン・セチルメチルポリシロキサン・ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体(セチルジメチコンコポリオールともいう)、市販品として、ABIL EM90(Degussa社製)が挙げられる。また、分岐鎖状のシリコーン骨格を有するラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(KF−6038;信越化学工業社製)等を使用することもできる。
【0022】
本発明の乳化化粧料における炭素数12〜22の炭化水素分岐鎖を有するポリエーテル変性シリコーン((c1)成分)の配合量は、化粧料全重量に対して2〜10質量%、好ましくは2〜8質量%、より好ましくは2〜6質量%である。
【0023】
本発明における非イオン性界面活性剤((c)成分)は、アルキル鎖を持たないポリエーテル変性シリコーン((c2)成分)から選択される少なくとも1種を更に含んでいてもよい。アルキル鎖を持たないポリエーテル変性シリコーンは、一般に、ポリエーテル変性シリコーンと呼ばれている。
【0024】
本発明において用いられるポリエーテル変性シリコーンは、直鎖状又は分岐鎖状のシリコーン骨格の側鎖にポリオキシアルキレン基を有するものであり、例えば、下記一般式(II)で示されるものが挙げられる。
【0025】
【化2】
上記式(II)において、
Rは炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基(好ましくはメチル基);
R’は水素又は炭素数1〜12のアルキル基(好ましくは水素又はメチル基);
qは1〜50(好ましくは3);
mは1〜100;
n及びxは各々1〜50;
yは0〜50である。
なお、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンの付加順序は特に制限されず、また、ランダム状、ブロック状の何れでもよい。
【0026】
本発明におけるポリエーテル変性シリコーン((c2)成分)としては、シリコーン骨格が分岐鎖状であるもの(分岐鎖タイプのポリエーテル変性シリコーンともいう)が特に好ましい。分岐鎖タイプのポリエーテル変性シリコーンの具体例としては、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、市販品として、KF−6028(信越化学工業社製)等が挙げられる。シリコーン骨格が直鎖状であるもの(直鎖タイプのポリエーテル変性シリコーン)の具体例としては、PEG−10ジメチコン、市販品として、KF−6017又はKF−6017P(信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0027】
本発明の乳化化粧料におけるアルキル鎖を持たないポリエーテル変性シリコーン((c2)成分)の配合量は、化粧料全重量に対して10質量%以下(0〜10質量%)、好ましくは1〜6質量%、より好ましくは2〜4質量%である。
なお、本発明における(c2)成分は必須成分ではなく、本発明の乳化化粧料は(c2)成分を含まない態様を包含する。ただし、本発明の乳化化粧料における(c1)成分と(c2)成分との合計配合量が4質量%以上であることを必要とする。即ち、(c1)成分の配合量が4質量%未満である場合には、乳化化粧料は(c2)成分を必ず含有することになる。
【0028】
本発明の乳化化粧料がアルキル鎖を持たないポリエーテル変性シリコーン((c2)成分)を含有する場合、(c2)成分に対する(c1)成分の配合量比率[(c1)/(c2)]は0.8以上であることを条件とする。この比率が0.8未満であると乳化安定性が低下する場合がある。
【0029】
なお、本発明における(c)非イオン性界面活性剤は、上記の条件を満たす範囲内で、炭素数12〜22の炭化水素分岐鎖を有するポリエーテル変性シリコーン((c1)成分)及びアルキル鎖を持たないポリエーテル変性シリコーン((c2)成分)以外の、シリコーン系又は炭化水素系の非イオン性界面活性剤を含んでいてもよい。
【0030】
本発明の乳化化粧料においては、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト((b)成分)に対する(c1)成分と(c2)成分との合計配合量の比率[((c1)+(c2))/(b)]が2以上であり、香料((a)成分)に対する(c1)成分と(c2)成分との合計配合量の比率[((c1)+(c2))/(a)]が0.8以上であることが必要である。これらの条件のいずれかを満たさないと十分な乳化安定性が発揮されない。
【0031】
本発明の乳化化粧料は、油分中で(a)ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライトと(c)非イオン性界面活性剤とが複合体を構築してオイルゲルを形成し、そこに水相を分散させることによって調製できる。
【0032】
本発明の乳化化粧料において油相を形成できる油分としては、特に限定されないが、例えば、動植物油としてアボカド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、月見草油、ミンク油、ホホバ油、ナタネ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、カカオ、ヤシ油、コメヌカ油、オリーブ油、ラノリン、スクワレン等の天然動植物油脂類、流動パラフィン、スクワラン、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、2エチルヘキサン酸グリセロール、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ2−エチルへキサン酸ペンタエリスリット等の脂肪酸エステル類、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、リノール酸エチル等の極性油、シリコーン油としては、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジエンポリシロキサン、デカメチルポリシロキサン、メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、高重合メチルポリシロキサンなどを挙げることができる。
【0033】
本発明の乳化化粧料では、非イオン性界面活性剤としてシリコーン系の界面活性剤((c1)成分及び任意に(c2)成分)を主成分としているが、配合される油分はシリコーン油、特に揮発性シリコーン油を含まなくても安定な乳化系を構成できる。このことは、例えば、有機変性粘土鉱物と直鎖状のポリエーテル変性シリコーンとによって増粘かつ安定化された油中水型乳化物においては、油分にデカメチルシクロペンタシロキサン等の揮発性シリコーン油を含めることを必須とする特許文献2の発明からは予測できない特徴である。
【0034】
このようにして調製される本発明の乳化化粧料は、25℃でレオメーター(11.3φ、3mm針入)を用いて測定した硬度が6以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上である。このような硬度を有する本発明の乳化化粧料は、例えばジャー容器に充填すると流れることなく適度な硬さを保持している。
【0035】
本発明の乳化化粧料には、上記の他に、油中水型乳化化粧料に通常配合され得る任意成分を本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。
任意成分としては、例えば、パラアミノ安息香酸、ホモメチル−7N−アセチルアラントイラニレート、ブチルメトキシベンゾイルメタン、ジ−パラメトキシケイヒ酸−モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、アミルサリシレート、オクチルシンナメート、2、4−ジヒドロキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤、エタノールなどの低級アルコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール等の保湿剤、寒天、メチルセルロース、アラビアガム、ポリビニルアルコール等の増粘剤、ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、フィチン酸等の酸化防止剤、安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸アルキルエステル(エチルパラベン、ブチルパラベン等)、ヘキサクロロフェン等の抗菌防腐剤、アシルサルコシン酸例えばラウロイルコシンナトリウム)、グルタチオン、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等の有機酸、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2及びその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15及びその誘導体等のビタミンB類、アスコルビン酸、アスコルビン酸硫酸エステル(塩)、アスコルビン酸リン酸エステル(塩)、アスコルビン酸ジパルミテート等のビタミンC類、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンE−アセテ−ト、ビタミンE−ニコチネート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH類、パントテン酸、パンテチン等のビタミン類、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、γ−オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸およびその誘導体、ヒノキチオール、ムシジン、ビサボロール、ユーカリプトール、チモールイノシトール、パントテニルエチルエーテル、エチニルエストラジオール、セファランチン、プラセンタエキス等の各種薬剤、色素などを挙げることができる。
例えば、エタノール等の低級アルコールを(好ましくは5〜20質量%程度)配合することにより、化粧料ののびを更に良好にすることができ、寒天、メチルセルロース、アラビアガム、ポリビニルアルコール等の増粘剤を(好ましくは0.5〜5質量%程度)配合することにより、更にコクのある使用感触とすることができる。
【0036】
本発明の油中水型乳化化粧料は、高賦香されたクリームとして提供できる他、適度な硬度を持つフレグランス化粧料としても提供できる。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。
【0038】
下記の表1〜3に掲げた組成で、油中水型乳化化粧料(クリーム)を調製した。
得られた化粧料について、(1)レオメーター硬度、(2)乳化安定性、及び(3)実使用試験におけるみずみずしさ、のびの軽さを評価した。
【0039】
評価方法
(1)硬度
25℃の雰囲気下にて、レオメーター(不動工業株式会社製:NRM−3002D;直径11.3mm、3mm針入)で測定した硬度を各表に示す。
【0040】
(2)乳化安定性
各例の化粧料を目視観察して以下の基準で評価した。
○:安定で外観に変化が見られない。
×:乳化物に分離が見られた。
【0041】
(3)実使用試験
各例のサンプルを専門パネルに使用してもらい、以下の基準で評価した。
S:極めて優れている。
A:優れている。
B:やや劣っている。
C:劣っている。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
表1の参考例に示すように、香料を配合しない場合には、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライトと非イオン性界面活性剤とで安定化された油中水型乳化物が得られた。その系に5質量%以上の香料を配合した場合、香料((a)成分)、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト((b)成分)及び非イオン性界面活性剤((c)成分)の組成、配合量範囲及び配合量比率が本発明の条件を満たしている場合は、若干の硬度低下は見られるものの、乳化安定性及び使用性に優れた化粧料となった(実施例1〜5)。
【0045】
しかしながら、表2に示すように、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト((b)成分)の配合量が1.5質量%に満たない場合(比較例1)、非イオン性界面活性剤が炭素数12〜22の炭化水素分岐鎖を有するポリエーテル変性シリコーン(c1)を含まない場合(比較例4)、炭素数12〜22の炭化水素分岐鎖を有するポリエーテル変性シリコーン(c1)とアルキル鎖を持たないポリエーテル変性シリコーン(c2)との合計配合量と香料((a)成分)又はジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト((b)成分)の配合量との比率が条件を満たさない場合(比較例2及び5)、さらには、(c1)成分と(c2)成分との配合量比率が条件を満たさない場合(比較例3及び6)には、安定した乳化物が得られないことが確認された。
【0046】
【表3】
【0047】
表3に示した結果から、香料の種類又は配合量を変化させても、本発明の条件を満たしている限り、安定で適度な硬度を維持した油中水型乳化化粧料が得られることが確認できる。なお、リモネンは高極性の香料であり、フェニルエチルアルコールは低極性の香料であり、ウンデシルアルデヒドは両者の中間の極性を有する香料である。
【0048】
さらに、表3の実施例9及び10で得られた結果から、本発明の乳化化粧料にエタノールを添加することによりのびの良さが更に向上し、寒天を配合することでみずみずしい感触が更に向上することが確認される。