(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載のエポキシ樹脂(A)と分子中に一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシ基を併せ持つ化合物(c)とを反応せしめて得られる反応性エポキシカルボキシレート化合物(B)。
請求項1記載のエポキシ樹脂(A)、分子中に一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシ基を併せ持つ化合物(c)及び一分子中に水酸基とカルボキシ基を併せ持つ化合物(d)とを反応せしめて得られる反応性エポキシカルボキシレート化合物(B’)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記酸変性エポキシアクリレートを含有する硬化型樹脂組成物は比較的強靭な硬化物を得ることができるが、輸送機器といった極めて高い信頼性を求められる材料としては信頼性が低い。更に、着色顔料、特にカーボンブラック等の分散性がより優れ、高い顔料濃度でも良好な現像特性を有する酸変性エポキシアクリレート化合物が求められている。この際、比較的高い分子量を有しておりながら、且つ、適度な現像性を有していることが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前述の課題を解決するため、多環式炭化水素基を有するエポキシ樹脂(a)と一分子中に二つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物(b)とを反応せしめて得られるエポキシ樹脂(A)と一分子中に重合可能なエチレン性不飽和基とカルボキシ基を併せ持つ化合物(c)とを反応させて得られる反応性エポキシカルボキシレート化合物(B)、反応性エポキシカルボキシレート化合物(B)と一分子中に水酸基とカルボキシ基を併せ持つ化合物(d)とを反応させて得られる反応性エポキシカルボキシレート化合物(B’)、更に、それらに多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる反応性ポリカルボン酸化合物(C)及び(C’)が、特に優れた樹脂物性を有することを見出した。
更には、該反応性エポキシカルボキシレート化合物(B)及び反応性ポリカルボン酸化合物(C)が着色顔料との良好な親和性を有していることを見出し、これらの化合物を含む組成物が高い顔料濃度でも良好な現像性を持つレジスト材料等となることを見出した。
【0010】
本発明は下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(a)と一分子中に二つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物(b)とを反応せしめて得られるエポキシ樹脂(A)に関する。
【0011】
【化1】
【0012】
一般式(1)中、Arはそれぞれ独立して(2)又は(3)のいずれかであり、(2)と(3)のモル比率は(2)/(3)=1〜3である。nは繰り返し数であり、0〜5の正数である。Gはグリシジル基を示す。
【0013】
さらに前記エポキシ樹脂(A)に分子中に一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシ基を併せ持つ化合物(c)を反応せしめて得られる反応性エポキシカルボキシレート化合物(B)に関する。
さらに前記カルボキシレート化合物(B)に多塩基酸無水物(e)を反応せしめて得られる反応性ポリカルボン酸化合物(C)に関する。
さらに前記反応性エポキシカルボキシレート化合物(B)と一分子中に水酸基とカルボキシ基を併せ持つ化合物(d)を反応せしめて得られる反応性エポキシカルボキシレート化合物(B’)に関する。
さらに前記カルボキシレート化合物(B’)に多塩基酸無水物(e)を反応せしめて得られる反応性ポリカルボン酸化合物(C’)に関する。
さらに、前記カルボキシレート化合物(B)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
さらに、反応性ポリカルボン酸化合物(C)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
さらに、前記カルボキシレート化合物(B)及び/又は(C)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
さらに、前記カルボキシレート化合物(B’)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
さらに、前記反応性ポリカルボン酸化合物(C’)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
さらに、前記カルボキシレート化合物(B’)及び/又は(C’)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
さらに、反応性エポキシカルボキシレート化合物(B)、反応性エポキシカルボキシレート化合物(B’)、反応性ポリカルボン酸化合物(C)、反応性ポリカルボン酸化合物(C’)から選ばれる2種以上を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
さらに、反応性化合物(D)を含む前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
さらに、着色顔料を含有する前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
さらに、成形用材料である前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
さらに、皮膜形成用材料である前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
さらに、レジスト材料組成物である前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
さらに、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物に関する。
さらに、前記硬化物でオーバーコートされた物品に関する。
さらに、前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(a)と一分子中に二つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物(b)とを反応させるエポキシ樹脂(A)の製造法に関する。
さらに、前記エポキシ樹脂(A)に分子中に一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシ基を併せ持つ化合物(c)を反応させる反応性エポキシカルボキシレート化合物(B)の製造法に関する。
さらに、前記エポキシ樹脂(A)に分子中に一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシ基を併せ持つ化合物(c)及び一分子中に水酸基とカルボキシ基を併せ持つ化合物(d)を反応させる反応性エポキシカルボキシレート化合物(B’)の製造法に関する。
さらに、前記カルボキシレート化合物(B)と多塩基酸無水物(e)を反応させる反応性ポリカルボン酸化合物(C)の製造法に関する。
さらに、前記カルボキシレート化合物(B’)と多塩基酸無水物(e)を反応させる反応性ポリカルボン酸化合物(C’)の製造法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の特定構造の多環式炭化水素基を有するエポキシ樹脂の酸変性化合物は着色顔料との良好な親和性を有している。該酸変性化合物を含む樹脂組成物は溶剤を乾燥させただけの状態においても優れた樹脂物性を有している。又、本発明の樹脂組成物を紫外線等の活性エネルギー線等により硬化して得られる硬化物は、熱的及び機械的な強靭性、良好な保存安定性、更には高温高湿や冷熱衝撃に耐え得る高い信頼性を有する。したがって、本発明の樹脂組成物は成形用材料、皮膜形成用材料、レジスト材料に好適である。
【0015】
着色顔料との高い親和性から、本発明の酸変性化合物及び該酸変性化合物を含む組成物は高い顔料濃度においても良好な現像性を発揮し、カラーレジスト、カラーフィルタ用のレジスト材料、特にブラックマトリックス材料等に適している。
【0016】
熱的及び機械的な強靭性、良好な保存安定性、更には高温高湿や冷熱衝撃に耐える高い信頼性から、本発明の酸変性化合物及び該酸変性化合物を含む組成物は特に高い信頼性を求められるプリント配線板用ソルダーレジスト、多層プリント配線板用層間絶縁材料、フレキシブルプリント配線板用ソルダーレジスト、メッキレジスト、感光性光導波路等の用途に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明で用いられるエポキシ樹脂(a)は下記一般式(1)で表されるフェノール/レゾルシンアラルキル型エポキシ樹脂である。
【0019】
一般式(1)中、Arはそれぞれ独立して(2)又は(3)のいずれかであり、(2)と(3)のモル比率は(2)/(3)=1〜3である。nは繰り返し数であり、0〜5の正数である。Gはそれぞれ独立してグリシジル基である。
【0020】
エポキシ樹脂(a)は、日本化薬株式会社より、NC−3500シリーズとして市販品を入手可能である。エポキシ樹脂(a)を合成する場合、特に限定されないが、例えば特許文献4に記載された反応条件に準じて好適に得ることができる。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂(A)はエポキシ樹脂(a)と一分子中に二つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物(b)とを反応させて得ることができる。
【0022】
一分子中に二つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物(b)としては、一分子中に芳香環を一つ有するもの、一分子中に芳香環を二つ以上有するものなどが挙げられるが、本発明においては特段の限定はない。一分子中に芳香環を一つ有するものとしては例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、テトラメチルビフェノール、エチリデンビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)、ジメチルブチリデンビスフェノール、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス〔2,6−ジメチルフェノール〕、4,4’−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール、5,5’−(1−メチルエチリデン)ビス〔1,1’−ビフェニル−2−オール〕、ナフタレンジオール、ジシクロペンタジエン変性ビスフェノール、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイドとハイドロキノンとの反応生成物等が挙げられる。また、これらの化合物の芳香核に炭素原子数1〜4のアルキル基又はフェニル基を置換基として有する化合物も挙げられる。
【0023】
一分子中に芳香環を二つ以上有する一分子中に二つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物(b)として、レゾルシン/フェノールノボラック樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、α−ナフトールアラルキル樹脂、β−ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂及びノニルフェノールノボラック樹脂等のアルキルフェノールのノボラック樹脂等の3 官能以上のフェノール化合物も使用可能である。本発明においては、エポキシ樹脂(a)の原料である式(4)で表されるフェノール(b−1)が好ましい。
【0025】
一般式(4)中、Phはそれぞれ独立して(5)又は(6)のいずれかであり、(5)と(6)のモル比率は(5)/(6)=1〜3である。nは繰り返し数であり、0〜5の正数である。
【0026】
本発明には、エポキシ樹脂(A)の合成法も含まれる。
【0027】
本発明において用いられるエポキシ樹脂(A)の合成法に限定はないが、例えば、フェノール/レゾルシンアラルキル型エポキシ樹脂(a)のエポキシ基1モルに対して、一分子中に二つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物(b)の水酸基が0.01〜0.3モルとなるように反応させる。
【0028】
エポキシ樹脂(a)と一分子中に二つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物(b)との反応は必要により、触媒を使用する。使用できる触媒としては具体的にはテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩;トリフェニルエチホスホニウムクロライド、トリフェニルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属塩;2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、トリエタノールアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類;トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類;オクチル酸スズなどの金属化合物;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。これら触媒を使用する場合の使用量はその触媒の種類にもよるが一般には総樹脂量に対して10ppm〜30000ppm、好ましくは100ppm〜5000ppmが必要に応じて用いられる。本反応においては触媒を添加しなくても反応は進行するので好ましい反応温度、反応溶剤量にあわせて適宜使用すればよい。
【0029】
エポキシ樹脂(A)の合成法において、無溶剤で反応させる、若しくは溶剤で希釈して反応させることもできる。ここで用いることができる溶剤としては、この反応に対してイナート溶剤であれば特に限定はない。また、次工程であるカルボキシレート化反応、さらに次の工程である酸付加反応で溶剤を用いて製造する場合には、その両反応にイナートであることを条件に、溶剤を除くことなく直接次工程での反応に供することもできる。
【0030】
具体的に例示すれば、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族系炭化水素溶剤、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素溶剤、及びそれらの混合物である石油エーテル、ホワイトガソリン、ソルベントナフサ等が挙げられる。
【0031】
エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のアルキルアセテート類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のモノ、若しくはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート類、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のポリカルボン酸アルキルエステル類等が挙げられる。
【0032】
エーテル系溶剤としては、ジエチルエーテル、エチルブチルエーテル等のアルキルエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類等が挙げられる。
【0033】
ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。
【0034】
このほかにも、後述するその他反応性化合物(D)等の単独または混合有機溶媒中で反応を行うことができる。この場合、硬化性組成物として使用した場合には、直接に組成物として利用することができるので好ましい。
【0035】
溶剤の使用量は総樹脂質量に対し、0〜300質量部、好ましくは0〜100質量部である。
【0036】
反応温度、反応時間は樹脂濃度、触媒量により、適宜選択する必要があり、一概に規定できないが、反応時間は通常1〜200時間、好ましくは1〜100時間である。生産性の問題から反応時間が短いことが好ましい。また反応温度は通常0〜250℃、好ましくは30〜200℃である。
【0037】
反応終了後、溶剤を使用して得られたエポキシ樹脂溶液はそのまま必要により溶液の濃度を調整し、エポキシ樹脂(A)を含む溶液として次工程のカルボキシレート化工程に進むこともできる。また必要に応じて水洗などにより触媒等を除去し、更に加熱減圧下溶剤を留去することによりエポキシ樹脂(A)を単離し次工程に進んでも構わない。
【0038】
本発明で用いられるエポキシ樹脂(A)は前記Arがレゾルシンの場合、直鎖の構造の他、分岐した構造をとり得る。分岐する場合、レゾルシン基上のグリシジル基と他のグリシジル基が反応して新たな結合を生じる。Arがレゾルシンの場合においては、分岐鎖からさらに分岐鎖が生ずる場合もある。このため、エポキシ樹脂(A)の構造は一義的に確定できるものではなく、分子ごとに多種多様な構造を取り得る。
【0039】
次に、エポキシ樹脂(A)のカルボキシレート化工程について説明する。この工程は反応性カルボキシレート化合物(B)及び反応性カルボキシレート化合物(B’)を得る製造方法であり、これらも本発明に含まれる。
【0040】
この反応では、エポキシ樹脂(A)に、分子中に一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシ基を併せ持つ化合物(c)を反応させることで、反応性カルボキシレート化合物(B)を得る。また、エポキシ樹脂(A)に、分子中に一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシ基を併せ持つ化合物(c)及び一分子中に水酸基とカルボキシ基を併せ持つ化合物(d)を反応させることで、反応性カルボキシレート化合物(B’)を得る。
【0041】
ここで示される分子中に一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシ基を併せ持つ化合物(c)は、活性エネルギー線への反応性を付与させるために用いる。このような化合物(c)にはモノカルボン酸化合物、ポリカルボン酸化合物が挙げられる。
【0042】
モノカルボン酸化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸類やクロトン酸、α−シアノ桂皮酸、桂皮酸、或いは飽和または不飽和二塩基酸と不飽和基含有モノグリシジル化合物との反応物が挙げられる。上記において(メタ)アクリル酸類としては、例えば(メタ)アクリル酸、β−スチリルアクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、(メタ)アクリル酸二量体、飽和または不飽和二塩基酸無水物と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート誘導体と当モル反応物である半エステル類、飽和または不飽和二塩基酸とモノグリシジル(メタ)アクリレート誘導体類との当モル反応物である半エステル類等が挙げられる。
【0043】
ポリカルボン酸化合物としては、一分子中に複数の水酸基を有する(メタ)アクリレート誘導体と当モル反応物である半エステル類、飽和または不飽和二塩基酸と複数のエポキシ基を有するグリシジル(メタ)アクリレート誘導体類との当モル反応物である半エステル類等が挙げられる。
【0044】
これらのうち最も好ましくは、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としたときの感度の点で(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとの反応生成物または桂皮酸が挙げられる。一分子中に一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシ基を併せ持つ化合物(c)としては、化合物中に水酸基を有さないものが好ましい。
【0045】
本発明において用いられる一分子中に一個以上の水酸基と一個以上のカルボキシ基を併せ持つ化合物(d)は、カルボキシレート化合物中に水酸基を導入することを目的として用いる。これらには、一分子中に一個の水酸基を一個のカルボキシ基を併せ持つ化合物、一分子中に二つ以上の水酸基と一個のカルボキシ基を合わせもつ化合物、一分子中に一個以上の水酸基と二個以上のカルボキシ基を併せ持つ化合物がある。
【0046】
一分子中に一個の水酸基を一個のカルボキシ基を併せ持つ化合物としては、例えばヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシブタン酸、ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。また一分子中に二つ以上の水酸基と一個のカルボキシ基を合わせもつ化合物としては、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等が挙げられる。一分子中に一個以上の水酸基と二個以上のカルボキシ基を併せ持つ化合物としてはヒドロキシフタル酸等が挙げられる。
【0047】
これらのうち、水酸基は一分子中に二個以上含まれるものが、本発明の効果を考慮すると好ましい。さらに、カルボキシ基は一分子中一個であるものがカルボキシレート化反応の安定性を考慮すると好ましい。最も好ましくは、一分子中に二個の水酸基と一個のカルボキシ基を有するもの好ましい。原材料の入手を考慮すれば、ジメチロールプロピオン酸とジメチロールブタン酸が特に好適である。一分子中に一個以上の水酸基と一個以上のカルボキシ基を併せ持つ化合物(d)としては、化合物中に重合可能なエチレン性不飽和基を有さないものが好ましい。
【0048】
これらのうち、前記のエポキシ樹脂(A)と(c)および(d)の反応の安定性を考慮すると、(c)および(d)が有するカルボキシ基は1つであることが好ましく、1つのカルボキシ基を有する(c)又は(d)(モノカルボン酸)と2つ以上のカルボキシ基を有する(c)又は(d)(ポリカルボン酸)を併用する場合でも、モノカルボン酸の総計モル量/ポリカルボン酸の総計モル量で表される値が15以上であることが好ましい。
【0049】
この反応におけるエポキシ樹脂(A)と(c)の仕込み割合、又は、(c)および(d)のカルボン酸総計の仕込み割合としては、用途に応じて適宜変更される。エポキシ樹脂(A)の全てのエポキシ基をカルボキシレート化すると、未反応のエポキシ基が残らないために、反応性カルボキシレート化合物(B)又は(B’)の保存安定性は高い。未反応のエポキシ基がない場合は、反応性カルボキシレート化合物(B)又は(B’)の反応性は導入した二重結合に依存する。
【0050】
一方、(c)の仕込み割合、又は、(c)および(d)の仕込み量を減量し未反応のエポキシ基を残し、導入した二重結合の反応性と、未反応のエポキシ基の反応性、例えば光カチオン触媒による重合反応や熱重合反応を複合的に利用すること(複合硬化)も可能である。しかし、この場合は反応性カルボキシレート化合物(B)又は(B’)の保存及び製造条件の検討には注意を要する。
【0051】
未反応のエポキシ基を有さない反応性カルボキシレート化合物(B)又は(B’)を製造する場合、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基が十分反応する量の(c)又は(c)及び(d)を用いればよい。本発明においては、(c)又は(c)及び(d)の総計が、前記エポキシ樹脂(A)1当量に対し90〜120当量%であることが好ましい。この範囲であれば比較的安定な条件での製造が可能である。カルボン酸化合物の仕込み量が多過ぎる場合には、過剰のカルボン酸化合物(c)又は(c)および(d)が残存してしまうために好ましくない。
【0052】
また、未反応のエポキシ基を有する反応性カルボキシレート化合物(B)又は(B’)を製造する場合、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基が残る量の(c)又は(c)及び(d)を用いればよい。本発明においては、(c)又は(c)および(d)の総計が、前記エポキシ樹脂(A)1当量に対し20〜90当量%であることが好ましい。カルボン酸化合物の仕込み量が少なすぎる場合、複合硬化の効率が低くなる。この場合は、反応中のゲル化や、反応性カルボキシレート化合物(B)及び反応性カルボキシレート化合物(B’)の経時安定性に十分注意する。
【0053】
反応性カルボキシレート化合物(B’)を製造する場合、一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシ基を併せ持つ化合物(c)と一個以上の水酸基と一個以上のカルボキシ基を併せ持つ化合物(d)の使用比率は、カルボキシ基に対するモル比において(c):(d)が9:1〜1:9であり、さらには4:6〜8:2の範囲が好ましい。この範囲であれば(c)が少なすぎる場合の感度の低下を防ぐことが出来、また(d)が少なすぎる場合の(d)の効果が希薄になるのを防ぐことができる。本カルボキシレート化反応において、(c)及び(d)の仕込みの順序に特段の限定はない。
【0054】
本カルボキシレート化反応は、溶剤は必ずしも必要ではないが、溶剤で希釈して行ってもよい。本発明で用いることができる溶剤としては、本カルボキシレート化反応で用いることができる溶剤としてはエポキシ樹脂(A)の合成で用いられる溶剤と同一でよく、カルボキシレート化反応に対して反応を示さない溶剤であれば特に限定はない。溶剤の使用量は、得られる樹脂の粘度や使途により適宜調整されるが、反応物の総量の10〜70質量%、好ましくは20〜50質量%である。
【0055】
このほかにも、(A)、(B)又は(B’)、(C)又は(C’)以外の反応性化合物(D)等の単独または混合有機溶媒中で行うことができる。この場合、硬化型組成物として使用した場合には、直接に組成物として利用することができる。
【0056】
反応時には、反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、該触媒の使用量は、反応物、即ち上記エポキシ化合物(A)、一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシ基を併せ持つ化合物(c)、及び場合により溶剤その他を加えた反応物の総量に対して0.1〜10質量%である。その際の反応温度は60〜150℃であり、また反応時間は、好ましくは5〜60時間である。使用しうる触媒の具体例としては、例えばトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等既知一般の塩基性触媒等が挙げられる。
【0057】
また、熱重合禁止剤として、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2−メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、ジフェニルピクリルヒドラジン、ジフェニルアミン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン等を使用するのが好ましい。
【0058】
本反応は、適宜サンプリングしながら、サンプルの酸価が5mg・KOH/g以下、好ましくは2mg・KOH/g以下となった時点を終点とする。
【0059】
こうして得られた反応性カルボキシレート化合物(B)及び(B’)の好ましい分子量範囲としては、GPCにおけるポリスチレン換算質量平均分子量が1,000から30,000の範囲であり、より好ましくは1,500から20,000である。この分子量よりも小さい場合には硬化物の強靭性が充分に発揮されず、またこれよりも大きすぎる場合には、粘度か高くなり塗工等が困難となる。
【0060】
次に、酸付加工程について説明する。酸付加工程は、前工程において得られた反応性カルボキシレート化合物(B)又は(B’)に必要に応じてカルボキシ基を導入し、反応性ポリカルボン酸(C)又は(C’)を得ることを目的として行われる。カルボキシ基を導入する理由としては、例えばレジストパターニング等が必要とされる用途において、活性エネルギー線非照射部にアルカリ水への可溶性を付与させる、また金属、無機物等への密着性を付与させる等の目的を持って導入される。具体的には、カルボキシレート化反応により生じた水酸基に多塩基酸無水物(e)を付加反応させることで、エステル結合を介してカルボキシ基を導入させる。
【0061】
多塩基酸無水物(e)の具体例としては、例えば、一分子中に酸無水物構造を有する化合物であればすべて用いることができるが、アルカリ水溶液現像性、耐熱性、加水分解耐性等に優れた無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、3−メチル−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸または、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0062】
多塩基酸無水物(e)を付加させる反応は、前記カルボキシレート化反応液に多塩基酸無水物(e)を加えることにより行うことができる。添加量は用途に応じて適宜変更される。
【0063】
本発明のポリカルボン酸化合物(C)又は(C’)をアルカリ現像型のレジストとして用いようとする場合は、多塩基酸無水物(e)を最終的に得られる反応性ポリカルボン酸化合物(C)又は(C’)の固形分酸価(JISK5601−2−1:1999に準拠)が30〜120mg・KOH/g、好ましくは40〜105mg・KOH/g、となる計算値を仕込む。固形分酸価がこの範囲内であれば、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物のアルカリ水溶液現像性は良好である。即ち、アルカリ水溶液現像性が良好とは、良好なパターニング性と過現像に対する管理幅が広く、また過剰の酸無水物が残留しないことをいう。
【0064】
反応時には、反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、該触媒の使用量は、反応物、即ち前記エポキシ樹脂(A)、(c)及び/又は(d)から得られたカルボキシレート化合物、及び他塩基酸無水物(e)、場合により溶剤その他を加えた反応物の総量に対して0.1〜10質量%である。その際の反応温度は60〜150℃であり、また反応時間は、好ましくは5〜60時間である。使用しうる触媒の具体例としては、例えばトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0065】
本酸付加反応は、無溶剤で反応させる、若しくは溶剤で希釈して反応させることもできる。本酸付加反応で用いることができる溶剤としてはエポキシ樹脂(A)の合成及びカルボキシレート化反応で用いられる溶剤と同一でよく、酸付加反応に対して反応を示さない溶剤であれば特に限定はない。また、前工程であるカルボキシレート化反応で溶剤を用いて製造した場合には、その両反応に反応を示さないことを条件に、溶剤を除くことなく直接次工程である酸付加反応に供することもできる。本反応における溶剤の使用量は、得られる樹脂の粘度や使途により適宜調整されるが、反応物の総量の10〜70質量%、好ましくは20〜50質量%である。
【0066】
この他にも、後記する反応性化合物(D)等の単独または混合有機溶媒中で行える。この場合、硬化型組成物として使用した場合には、直接に組成物として利用することができるので好ましい。
【0067】
また、熱重合禁止剤等は、前記カルボキシレート化反応における例示と同様のものを使用することが好ましい。
【0068】
本反応は、適宜サンプリングしながら、反応物の酸価が、設定した酸価のプラスマイナス10%の範囲になった点をもって終点とする。
【0069】
本発明において使用しうる反応性化合物(D)の具体例としては、ラジカル反応型のアクリレート類、カチオン反応型のその他エポキシ化合物類、その双方に感応するビニル化合物類等のいわゆる反応性オリゴマー類が挙げられる。
【0070】
使用しうるアクリレート類としては、単官能(メタ)アクリレート類、多官能(メタ)アクリレート、その他エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0071】
単官能(メタ)アクリレート類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、フェニルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0072】
多官能(メタ)アクリレート類としては、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アジピン酸エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールエチレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリエチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびそのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0073】
使用しうるビニル化合物類としてはビニルエーテル類、スチレン類、その他ビニル化合物が挙げられる。ビニルエーテル類としては、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。スチレン類としては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。その他ビニル化合物としてはトリアリルイソイシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0074】
さらに、いわゆる反応性オリゴマー類としては、活性エネルギー線に官能可能な官能基とウレタン結合を同一分子内に併せ持つウレタンアクリレート、同様に活性エネルギー線に官能可能な官能基とエステル結合を同一分子内に併せ持つポリエステルアクリレート、その他エポキシ樹脂から誘導され、活性エネルギー線に官能可能な官能基を同一分子内に併せ持つエポキシアクリレート、これらの結合が複合的に用いられている反応性オリゴマー等が挙げられる。
【0075】
また、カチオン反応型単量体としては、一般的にエポキシ基を有する化合物であれば特に限定はない。例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリジジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリジジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ユニオン・カーバイド社製「サイラキュアUVR−6110」等)、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド(ユニオン・カーバイド社製「ELR−4206」等)、リモネンジオキシド(ダイセル化学工業社製「セロキサイド3000」等)、アリルシクロヘキセンジオキシド、3,4−エポキシ−4−メチルシクロヘキシル−2−プロピレンオキシド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート(ユニオン・カーバイド社製「サイラキュアUVR−6128」等)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)ジエチルシロキサン等が挙げられる。
【0076】
これらのうち、反応性化合物(D)としては、ラジカル硬化型であるアクリレート類が最も好ましい。カチオン型の場合、カルボン酸とエポキシが反応してしまうため2液混合型にする必要が生じる。
【0077】
本発明の反応性カルボキシレート化合物(B)、(B’)、反応性ポリカルボン酸化合物(C)及び(C’)から選ばれる1種以上と、必要に応じて(B)、(B’)、(C)、(C’)とは異なる反応性化合物(D)とを混合して本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得ることができる。このとき、用途に応じて適宜その他の成分を加えてもよい。
【0078】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、組成物中に反応性カルボキシレート化合物(B)、(B’)、反応性ポリカルボン酸化合物(C)、(C’)から選ばれる1種以上を97〜5質量%、好ましくは87〜10質量%、(B)、(B’)、(C)、(C’)とは異なる反応性化合物(D)を3〜95質量%、好ましくは3〜90質量%を含む。本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は必要に応じてその他の成分を樹脂組成物の総量の70質量%程度まで含んでよい。
【0079】
本発明の反応性カルボキシレート化合物(B)又は(B’)もしくは反応性ポリカルボン酸化合物(C)又は(C’)は、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の用途に応じて適宜使い分けられる。例えば、同じソルダーレジスト用途でも現像せず、印刷法によりパターンを成形する場合や溶剤等により未反応部位を流去させる、溶剤現像型の場合にはカルボキシレート化合物(B)及び/又は(B’)を用い、アルカリ水により現像させる場合には反応性ポリカルボン酸化合物(C)及び/又は(C’)を用いる。一般的にアルカリ水現像型の方が微細なパターンを作りやすいため、この用途には反応性ポリカルボン酸化合物(C)及び/又は(C’)を用いる場合が多い。もちろん(B)、(B’)、(C)、(C’)を要求される用途・性能に応じて、どのような組み合わせで併用してもよい。
【0080】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は活性エネルギー線によって容易に硬化する。ここで活性エネルギー線の具体例としては、紫外線、可視光線、赤外線、X線、ガンマー線、レーザー光線等の電磁波、α線、β線、電子線等の粒子線等が挙げられる。本発明の好適な用途を考慮すれば、これらのうち、紫外線、レーザー光線、可視光線、または電子線が好ましい。
【0081】
本発明において用いうる着色顔料とは、本発明の活性エネルギー線樹脂組成物を着色材料とするために用いられる。本発明の反応性カルボキシレート化合物(B)、(B’)、反応性ポリカルボン酸化合物(C)、(C’)は優れた顔料への親和性、即ち分散性を有するため分散が良好に進行し、顔料濃度を濃くすることができる。また現像を必要とされる組成物においては、分散がより好適な状態にあるために、良好なパターニング特性が発揮され、また現像溶解部における現像残渣も少ないため、好適である。
【0082】
着色顔料としては、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系等の有機顔料、カーボンブラック等、酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。これらのうちカーボンブラックの分散性が高くもっとも好ましい。
【0083】
本発明において成形用材料とは、未硬化の組成物を型にいれ、もしくは型を押し付けて物体を成形したのち、活性エネルギー線により硬化反応を起こさせ成形させるもの、もしくは未硬化の組成物にレーザー等の焦点光などを照射し、硬化反応を起こさせ成形させる用途に用いられる材料を指す。
【0084】
具体的な用途としては、平面状に成形したシート、素子を保護するための封止材、未硬化の組成物に微細加工された「型」を押し当て微細な成形を行うナノインプリント材料、さらには特に熱的な要求の厳しい発光ダイオード、光電変換素子等の周辺封止材料等が好適な用途として挙げられる。
【0085】
本発明において皮膜形成用材料とは、基材表面を被覆することを目的として利用される。具体的な用途としては、グラビアインキ、フレキソインキ、シルクスクリーンインキ、オフセットインキ等のインキ材料、ハードコート、トップコート、オーバープリントニス、クリヤコート等の塗工材料、ラミネート用、光ディスク用他各種接着剤、粘着剤等の接着材料、ソルダーレジスト、エッチングレジスト、マイクロマシン用レジスト等のレジスト材料等これに該当する。さらには、皮膜形成用材料を一時的に剥離性基材に塗工しフィルム化した後、本来目的とする基材に貼合し皮膜を形成させる、いわゆるドライフィルムも皮膜形成用材料に該当する。
【0086】
反応性ポリカルボン酸化合物(C)及び/又は(C’)のカルボキシ基は基材への密着性を高める。さらに、反応性ポリカルボン酸化合物(C)及び/又は(C’)がアルカリ水溶液に可溶性であることから、反応性ポリカルボン酸化合物(C)及び/又は(C’)を含む本発明の組成物はプラスチック基材、若しくは金属基材を被覆するためのアルカリ水現像型レジスト材料組成物としても好ましい。
【0087】
本発明においてレジスト材料組成物とは、基材上に該組成物の皮膜層を形成させ、その後、紫外線等の活性エネルギー線を部分的に照射し、照射部、未照射部の物性的な差異を利用して描画しようとする活性エネルギー線感応型の組成物を指す。具体的には、照射部、または未照射部を何らかの方法、例えば溶剤等やアルカリ溶液等で溶解させるなどして除去し、描画を行うことを目的として用いられる組成物である。
【0088】
本発明のレジスト用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、パターニングが可能な種々の材料に適応でき、例えば特に、ソルダーレジスト材料、ビルドアップ工法用の層間絶縁材に有用であり、さらには光導波路としてプリント配線板、光電子基板や光基板のような電気・電子・光基材等にも利用される。
【0089】
特に好適な用途は、強靭な硬化物を得ることができる特性を生かして、ソルダーレジスト等の永久レジスト用途、顔料分散性が良好であるとの特性を生かして、印刷インキ、カラーフィルタ等のカラーレジスト、特にブラックマトリックス用レジストである。
【0090】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、エネルギー線による硬化反応前の機械的強度が求められるドライフィルム用途にも利用される。即ち、本発明で用いられる前記エポキシ樹脂(A)の水酸基、エポキシ基のバランスが特定の範囲にあるため、本発明の反応性カルボキシレート化合物(B)及び/又は(B’)が比較的高い分子量であるにも関わらず、良好な現像性を発揮する。
【0091】
皮膜形成させる方法としては特に制限はないが、グラビア等の凹版印刷方式、フレキソ等の凸版印刷方式、シルクスクリーン等の孔版印刷方式、オフセット等の平版印刷方式、ロールコーター、ナイフコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スピンコーター等の各種塗工方式が任意に採用できる。
【0092】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物とは、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射し硬化させたものを指す。
【0093】
この他、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を各種用途に適合させる目的で、樹脂組成物中に70質量%を上限にその他の成分を加えることもできる。その他の成分としては光重合開始剤、その他の添加剤、着色材料、また塗工適性付与等を目的に粘度調整のため添加される揮発性溶剤等が挙げられる。下記に使用しうるその他の成分を例示する。
【0094】
ラジカル型光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシンクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン等のアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等の公知一般のラジカル型光反応開始剤が挙げられる。
【0095】
また、カチオン系光重合開始剤としては、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩、ルイス酸のホスホニウム塩、その他のハロゲン化物、トリアジン系開始剤、ボレート系開始剤、及びその他の光酸発生剤等が挙げられる。
【0096】
ルイス酸のジアゾニウム塩としては、p−メトキシフェニルジアゾニウムフロロホスホネート、N,N−ジエチルアミノフェニルジアゾニウムヘキサフロロホスホネート(三新化学工業社製サンエイドSI−60L/SI−80L/SI−100Lなど)等が挙げられ、ルイス酸のヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロアンチモネート等が挙げられ、ルイス酸のスルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロホスホネート(Union Carbide社製Cyracure UVI−6990など)、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート(Union Carbide社製Cyracure UVI−6974など)等が挙げられ、ルイス酸のホスホニウム塩としては、トリフェニルホスホニウムヘキサフロロアンチモネート等が挙げられる。
【0097】
その他のハロゲン化物としては、2,2,2−トリクロロ−[1−4’−(ジメチルエチル)フェニル]エタノン(AKZO 社製Trigonal PIなど)、2.2−ジクロロ−1−4−(フェノキシフェニル)エタノン(Sandoz 社製Sandray 1000など)、α,α,α−トリブロモメチルフェニルスルホン(製鉄化学社製BMPSなど)等が挙げられる。トリアジン系開始剤としては、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシフェニル)−6−トリアジン(Panchim社製Triazine Aなど)、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン(Panchim社製Triazine PMSなど)、2,4−トリクロロメチル−(ピプロニル)−6−トリアジン(Panchim社製Triazine PPなど)、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシナフチル)−6−トリアジン(Panchim社製Triazine Bなど)、2[2’(5”−メチルフリル)エチリデン]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(三和ケミカル社製など)、2(2’−フリルエチリデン)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(三和ケミカル社製)等が挙げられる。
【0098】
ボレート系開始剤としては、日本感光色素製NK−3876及びNK−3881等が挙げられ、その他の光酸発生剤等としては、9−フェニルアクリジン、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール(黒金化成社製ビイミダゾールなど)、2,2−アゾビス(2−アミノ−プロパン)ジヒドロクロリド(和光純薬社製V50など)、2,2−アゾビス[2−(イミダソリン−2イル)プロパン]ジヒドロクロリド(和光純薬社製VA044など)、[η−5−2−4−(シクロペンタデシル)(1,2,3,4,5,6,η)−(メチルエチル)−ベンゼン]鉄(II)ヘキサフロロホスホネート(Ciba Geigy社製Irgacure 261など)、ビス(y5−シクロペンタジエニル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピリ−1−イル)フェニル]チタニウム(Ciba Geigy社製CGI−784など)等が挙げられる。
【0099】
この他、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル等の熱に感応する過酸化物系ラジカル型開始剤等を併せて用いても良い。また、ラジカル系とカチオン系の双方の開始剤を併せて用いても良い。開始剤は、1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併せて用いることもできる。
【0100】
その他の添加剤としては、例えばメラミン等の熱硬化触媒、アエロジル等のチキソトロピー付与剤、シリコーン系、フッ素系のレベリング剤や消泡剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤、安定剤、酸化防止剤等を使用することができる。
【0101】
また、その他の顔料材料としては例えば、着色を目的としないもの、いわゆる体質顔料を用いることもできる。例えば、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸バリウム、水酸化アルミニウム、シリカ、クレー等が挙げられる。
【0102】
この他に活性エネルギー線に反応性を示さない樹脂類(いわゆるイナートポリマー)、たとえばその他のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ケトンホルムアルデヒド樹脂、クレゾール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、スチレン樹脂、グアナミン樹脂、天然及び合成ゴム、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びこれらの変性物を用いることもできる。これらは樹脂組成物中に40質量%までの範囲において用いることが好ましい。
【0103】
特に、ソルダーレジスト用途に反応性ポリカルボン酸化合物(C)又は(C’)を用いようとする場合には、活性エネルギー線に反応性を示さない樹脂類として公知一般のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。これは活性エネルギー線によって反応、硬化させた後も(C)又は(C’)に由来するカルボキシ基が残留してしまい、結果としてその硬化物は耐水性や加水分解性に劣ってしまう。エポキシ樹脂を用いることで残留するカルボキシ基をさらにカルボキシレート化し、さらに強固な架橋構造を形成させる。
【0104】
また使用目的に応じて、樹脂組成物中に50質量%、さらに好ましくは35質量%までの範囲において揮発性溶剤を添加することもできる。
【実施例】
【0105】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例中特に断りがない限り、部は質量部を示す。
【0106】
軟化点、エポキシ当量は以下の条件で測定した。
1)エポキシ当量:JISK−7236:2001に準じた方法で測定した。
2)水酸基当量:該当するエポキシ樹脂のエポキシ当量と、エポキシ樹脂中のエポキシ基と当量の酢酸を反応させ、エポキシ基を開環させた後、JIS K 0070:1992に準じた方法で測定して得られた水酸基当量から算出した。
3)軟化点:JISK−7234:1986に準じた方法で測定
4)GPCの測定条件は以下の通りである。
機種:TOSOH HLC−8220GPC
カラム:Super HZM−N
溶離液:THF(テトラヒドロフラン); 0.35ml/分、40℃
検出器:示差屈折計
分子量標準:ポリスチレン
【0107】
合成例1:一分子中に二つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物(b)の合成
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、フェノール316部、レゾルシン158部を仕込み、100℃に昇温した後、4,4’−ビスクロロメチルビフェニル201部を2時間かけて分割添加し、同温度でさらに5時間反応させた。その後、160℃に昇温し、4,4’−ビスクロロメチルビフェニルを全て反応させた。その間、生成するHClをアルカリでトラップでして留去した。反応終了後、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下に未反応フェノール及び未反応レゾルシンを留去することにより266部のフェノール/レゾルシンアラルキル樹脂(b−1)を得た。得られたフェノール/レゾルシンアラルキル樹脂(b−1)の水酸基当量は135g/eq.、軟化点は94℃、ICI粘度は470mPa・s、2価フェノール導入割合は64%であった。
【0108】
実施例1:エポキシ樹脂(A)の合成
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら前記式(1)のエポキシ樹脂(a)としてフェノール−ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製 NC−3500;エポキシ当量207g/eq.、軟化点70℃、)、合成例1で得たフェノール/レゾルシンアラルキル樹脂(b−1)(水酸基当量 135g/eq.、前記式(4)で表される化合物)を表1に記載量仕込み、さらに溶剤としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を固形分が60質量部になるよう仕込んだ。70℃で均一に溶解した後、トリフェニルホスフィン0.5gを加え、100℃で20時間撹拌した。反応終了後、酸素パージを施し、トリフェニルホスフィンを酸化してエポキシ樹脂(A)樹脂溶液を得た。
【0109】
さらに得られた樹脂溶液から減圧乾燥により溶剤を除いてエポキシ樹脂(A)を得、エポキシ当量、水酸基当量、軟化点(sp)を測定し表1に記載した。
【0110】
【表1】
【0111】
注)
WPE:エポキシ当量(g/eq)
sp:軟化点(℃)
mol比:合成例1及びGPH−65のNC−3500のエポキシ基に対する水酸基のモル比を示す。
比較例1−1は、NC−3500そのもののデータを示した。
【0112】
実施例2:カルボキシレート化合物(B)及び(B’)の調製
実施例1、比較例1−1(NC−3500そのもの)、比較例1−3で調製したエポキシ樹脂(A)を表中記載量、分子中に一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシ基を併せ持つ化合物(c)としてアクリル酸(略称AA、Mw=72)を表中記載量、(d)としてジメタロールプロピオン酸(略称DMPA、Mw=134)触媒としてトリフェニルホスフィン3g、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを固形分80%となるように加え、100℃において24時間反応させ、反応性カルボキシレート化合物(B)及び(B’)溶液を得た。
【0113】
【表2】
注)AAのエポキシ樹脂(A)に対するモル比はいずれも1.0である。
【0114】
実施例3:反応性ポリカルボン酸化合物(C)及び(C’)の調製
実施例2及び比較例2において得られた反応性カルボキシレート化合物(B)及び(B’)溶液299gに多塩基酸無水物(e)として、テトラヒドロ無水フタル酸(略称THPA)を表3に記載量、及び溶剤として固形分が65質量部となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを添加し、100℃に加熱し酸付加反応させ反応性ポリカルボン酸化合物(C)及び(C’)溶液を得た。
【0115】
【表3】
【0116】
実施例4:ハードコート用組成物の調製
実施例2及び比較例2において合成した反応性カルボキシレート化合物(B)/(B’)20g、ラジカル硬化型の単量体(D)であるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート4g、紫外線反応型開始剤としてイルガキュア184を1.5gを混合し、加熱溶解した。
さらにこれを、乾燥時の膜厚20μmになるようハンドアプリケータによってポリカーボネート板上に塗工し、80℃30分間電気オーブンにて溶剤乾燥を実施した。乾燥後、高圧水銀ランプを具備した紫外線垂直露光装置((株)オーク製作所製)によって照射線量1000mJの紫外線を照射、硬化させ樹脂組成物でオーバーコートされた物品を得た。
この樹脂組成物でオーバーコートされた物品の塗膜の硬度をJIS K5600−5−4:1999により測定し、さらに耐衝撃性の試験をISO6272−1:2002によって実施した。
耐衝撃性の試験
○:傷、はがれなし。
△:僅かに傷あり。
×:剥がれた。
【0117】
【表4】
【0118】
以上の結果によって、明らかなように、実施例は比較例と比較し、高度と耐衝撃性が向上した。
【0119】
実施例5:ドライフィルム型レジスト組成物の調製
実施例3及び比較例3で得られた反応性ポリカルボン酸化合物(C)を56.73g、その他反応性化合物(D)としてDPCA−60(商品名:日本化薬(株)製 多官能アクリレート単量体)5.67g、光重合開始剤としてイルガキュア907(チバスペシャリチィーケミカルズ製)を2.92g及びカヤキュアーDETX−S(日本化薬(株)製)を0.58g、硬化成分としてNC−3000H(日本化薬(株)製)を17.54g、熱硬化触媒としてメラミンを0.73g及び濃度調整溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを5.67g加え、ビーズミルにて混練し均一に分散させレジスト樹脂組成物を得た。得られた組成物をワイヤーバーコーター♯20を用い、支持フィルムとなるポリエチレンテレフタレートフィルムに均一に塗布し、温度70℃の熱風乾燥炉を通過させ、厚さ20μmの樹脂層を形成した後、この樹脂層上に保護フィルムとなるポリエチレンフィルムを貼り付け、ドライフィルムを得た。得られたドライフィルムをポリイミドプリント基板(銅回路厚:12μm、ポリイミドフィルム厚:25μm)に、温度80℃の加熱ロールを用いて、保護フィルムを剥離しながら樹脂層を基板全面に貼り付けた。
【0120】
次いで、紫外線露光装置((株)オーク製作所、型式HMW−680GW)を用い回路パターンの描画されたマスク、および感度を見積もるために、コダック製ステップタブレットNo.2を通して500mJ/cm
2の紫外線を照射した。その後、ドライフィルム上のフィルムを剥離し剥離状態を確認した。その後1%炭酸ナトリウム水溶液でスプレー現像を行い、紫外線未照射部の樹脂を除去した。水洗乾燥した後、プリント基板を150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化反応させ硬化膜を得た。
【0121】
<感度評価>
感度は、ステップタブレットを透過した露光部に、何段目の濃度部分までが現像時に残存したかで判定した。段数(値)が大きいほうがタブレットの濃部で高感度と判定される(単位:段)。
【0122】
<現像性評価>
現像性は、パターンマスクを透過した露光部を現像する際に、パターン形状部が完全に現像されきるまでの時間、いわゆるブレイクタイムをもって現像性の評価とした(単位:秒)。
【0123】
<硬化性評価>
硬化性評価は、150℃加熱終了後の硬化膜の鉛筆硬度をもって示した。
評価方法は、JIS K5600−5−4:1999に準拠した。
【0124】
<耐折性評価>
レジストの硬化膜を形成したポリイミドプリント基板を、硬化膜側を上にして山折りし、指で折り曲げ部をよくしごいた。折り曲げ部を元に戻し、レジスト膜をルーペで観察した。
○:亀裂なし
△:僅かな亀裂が観察される
×:剥離する
【0125】
【表5】
【0126】
上記の結果から明らかなように、本発明の樹脂組成物は、高い硬度と高い耐折性を有している。またレジストとして良好な現像性と感度を有している。
【0127】
実施例6:難燃性の評価
実施例5及び比較例5で調製したレジスト組成物10.0g、リン系反応性難燃剤(FRM-1000日本化薬(株)製)0.5gを混合攪拌し、硬化型樹脂組成物を得た。組成物を膜厚25μmのポリイミドフィルムに、ワイヤーバーコーター#20で塗工、温度70℃の熱風乾燥炉を通過させ、厚さおおよそ15μmの樹脂層を形成した。紫外線露光装置((株)オーク製作所、型式HMW−680GW)を用い500mJ/cm
2の紫外線を照射した。照射後、プリント基板を150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化反応させて硬化膜を得た。得られた硬化膜を、長さ20cm、幅2cmの短冊状にポリイミド基材フィルムと一緒に切り出した。切り出したフィルムを縦長に吊るし、下端よりライターによって火をつけ、難燃性を評価した。結果を表6に示す。
難燃性評価
○:着火するが全焼する前に消火する。
×:全焼する。
【0128】
【表6】
【0129】
以上の結果から、本発明の反応性ポリカルボン酸化合物(C)及び(C’)は、難燃性を有した材料であることが明らかとなった。
【0130】
実施例7:顔料分散性に関する評価
実施例3及び比較例3で得られた反応性ポリカルボン酸化合物(C)及び(C’)を20g、その他反応性化合物(D)としてDPHA(商品名:日本化薬(株)製 アクリレート単量体)5.0g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10g、着色顔料として三菱カーボンブラック MA−100:10gを混合攪拌した。そこに35gのガラスビーズを入れ、ペイントシェーカで1時間分散を行った。
分散終了後の分散液を、ワイヤーバーコーター#2でポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、80℃の温風乾燥機で10分間乾燥を行った。
乾燥終了後の塗膜表面の光沢を、60°反射グロス計を用いて測定し、カーボンブラックの分散性を評価した。表7に結果を示す。光沢の値が高いほど良好な顔料分散性を示す。
【0131】
【表7】