特許第6588371号(P6588371)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588371
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】磁界検出装置およびその調整方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/09 20060101AFI20191001BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   G01R33/09
   H01L43/08 Z
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-67445(P2016-67445)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-181240(P2017-181240A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120204
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 巌
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】一戸 健司
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−236134(JP,A)
【文献】 特開2006−029899(JP,A)
【文献】 特表平08−503778(JP,A)
【文献】 特開平10−070325(JP,A)
【文献】 特表2005−517937(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0285395(US,A1)
【文献】 特表2014−516406(JP,A)
【文献】 特開2014−209089(JP,A)
【文献】 特開2006−308573(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0176132(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/09
H01L 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが磁気抵抗効果素子を有する第1の抵抗変化部と第2の抵抗変化部とが直列に接続されて電圧が印加され、前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部の中点から第1の中点出力が得られる磁界検出装置において、
前記磁気抵抗効果素子は、磁化が固定された固定磁性層と非磁性層と自由磁性層とが積層されて構成され、前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部とで、前記固定磁性層の固定磁化の向きが逆向きであり、
前記第1の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向きと、前記第2の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向きとが、前記固定磁化と直交する向きに対して同じ方向へ傾いていることを特徴とする磁界検出装置。
【請求項2】
それぞれが磁気抵抗効果素子を有する第1の抵抗変化部と第2の抵抗変化部とが直列に接続され、第3の抵抗変化部と第4の抵抗変化部とが直列に接続され、2つの直列群が並列に接続されて電圧が印加され、前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部の中点から第1の中点出力が得られ、前記第3の抵抗変化部と前記第4の抵抗変化部との中点から第2の中点出力が得られる磁界検出装置において、
前記磁気抵抗効果素子は、磁化が固定された固定磁性層と非磁性層と自由磁性層とが積層されて構成され、前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部とで、前記固定磁性層の固定磁化の向きが逆向きで、前記第3の抵抗変化部の前記固定磁性層の固定磁化の向きが前記第2の抵抗変化部と同じで、前記第4の抵抗変化部の前記固定磁性層の固定磁化の向きが前記第1の抵抗変化部と同じであり、
前記第1の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向きと、前記第2の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向きと、前記第3の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向き、および前記第4の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向きが、前記固定磁化と直交する向きに対して同じ方向へ傾いていることを特徴とする磁界検出装置。
【請求項3】
前記磁気抵抗効果素子は長尺形状で、前記固定磁性層の固定磁化の向きが前記磁気抵抗効果素子の短幅方向に設定されており、
前記磁気抵抗効果素子の前記自由磁性層の磁化を長手方向に設定する縦バイアス磁界と、前記自由磁性層の磁化の向きを、前記縦バイアス磁界の磁化方向から傾かせる矯正磁界が設けられている請求項1または2記載の磁界検出装置。
【請求項4】
前記磁気抵抗効果素子に前記縦バイアス方向と平行に延びる通電路が設けられ、前記通電路に流れる電流によって前記矯正磁界が誘導される請求項3記載の磁界検出装置。
【請求項5】
前記通電路に流れる電流を調整する調整部を有する請求項4記載の磁界検出装置。
【請求項6】
前記磁気抵抗効果素子の側方に配置された永久磁石によって前記矯正磁界が誘導される請求項3記載の磁界検出装置。
【請求項7】
それぞれが磁気抵抗効果素子を有する第1の抵抗変化部と第2の抵抗変化部とが直列に接続されて電圧が印加され、前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部の中点から第1の中点出力が得られる磁界検出装置の調整方法において、
前記磁気抵抗効果素子を、磁化が固定された固定磁性層と非磁性層と自由磁性層とを積層して構成し、前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部とで、前記固定磁性層の固定磁化の向きを逆向きとし、
前記第1の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向きと、前記第2の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向きとを、前記固定磁化と直交する向きに対して同じ方向へ傾けて、温度特性の調整を行うことを特徴とする磁界検出装置の調整方法。
【請求項8】
それぞれが磁気抵抗効果素子を有する第1の抵抗変化部と第2の抵抗変化部とが直列に接続され、第3の抵抗変化部と第4の抵抗変化部とが直列に接続され、2つの直列群が並列に接続されて電圧が印加され、前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部の中点から第1の中点出力が得られ、前記第3の抵抗変化部と前記第4の抵抗変化部との中点から第2の中点出力が得られる磁界検出装置の調整方法において、
前記磁気抵抗効果素子は、磁化が固定された固定磁性層と非磁性層と自由磁性層とを積層して構成し、前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部とで、前記固定磁性層の固定磁化の向きを逆向きとし、前記第3の抵抗変化部の前記固定磁性層の固定磁化の向きを前記第2の抵抗変化部と同じで、前記第4の抵抗変化部の前記固定磁性層の固定磁化の向きを前記第1の抵抗変化部と同じとし、
前記第1の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向きと、前記第2の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向きと、前記第3の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向き、および前記第4の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向きを、前記固定磁化と直交する向きに対して同じ方向へ傾けて、温度特性の調整を行うことを特徴とする磁界検出装置の調整方法。
【請求項9】
外部磁界が作用していないときに、単位温度変化当たりの前記中点電位の変動量をゼロに近づける調整を行う請求項7または8記載の磁界検出装置の調整方法。
【請求項10】
前記磁気抵抗効果素子を長尺形状で、前記固定磁性層の固定磁化の向きを前記磁気抵抗効果素子の短幅方向に設定し、
前記磁気抵抗効果素子の前記自由磁性層の磁化を長手方向に設定する縦バイアス磁界と、前記自由磁性層の磁化の向きを、前記縦バイアス磁界の磁化方向から傾かせる矯正磁界を設ける請求項7ないし9のいずれかに記載の磁界検出装置の調整方法。
【請求項11】
前記磁気抵抗効果素子に前記縦バイアス方向と平行に延びる通電路を設け、前記通電路に流れる電流によって前記矯正磁界を誘導する請求項10記載の磁界検出装置の調整方法。
【請求項12】
前記通電路に流れる電流を調整する請求項11記載の磁界検出装置の調整方法。
【請求項13】
前記磁気抵抗効果素子の側方に配置された永久磁石によって前記矯正磁界を誘導する請求項10記載の磁界検出装置の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定磁性層の固定磁化の向きが相違する磁気抵抗効果素子を組み合わせて構成されたものであり、磁気抵抗効果素子の温度特性による検知出力の変動を抑制できる磁界検出装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電流検知装置などには電流磁界を検知するための磁界検出装置が使用されている。磁界検出装置は、固定磁性層と非磁性層と自由磁性層とが積層された磁気抵抗効果素子すなわちGMR素子(巨大磁気抵抗効果素子)が使用されている。磁界検出装置は、固定磁性層の固定磁化の向きが逆向きである2種の磁気抵抗効果素子が直列に接続されて、2種の磁気抵抗効果素子の中点から出力が得られる。
【0003】
磁気抵抗効果素子は、各層を成膜して多層膜構造とした後に、トリミングして長尺形状などとするが、磁界検出装置では、固定磁化の向きが逆となる2種の磁気抵抗効果素子の特性のばらつきにより、外部磁界が作用していないときにも中点からわずから出力が得られてしまうなどの問題がある。
【0004】
そこで、それぞれの磁気抵抗効果素子の実質的な長さを調整することで、固定磁化の向きが相違する2種の磁気抵抗効果素子の基本的な抵抗値を合わせる調整が行われている。しかし、磁気抵抗効果素子は、温度変化により抵抗変化が変動する特性を有しており、この温度特性については、磁気抵抗効果素子の実質的な長さを変化させることで調整することができない。
【0005】
一方で、特許文献1と特許文献2には、自由磁性層にバイアス磁界を与える発明が記載されている。
【0006】
特許文献1に記載の磁界検出装置は、その図7に記載されているように、TMR素子において、固定層の磁化ベクトルと測定すべき外部磁界の向きをY軸方向とするとともに、Y軸方向にバイアス電流を流して、この電流で誘導されるバイアス磁界をX方向へ印加している。自由層にバイアス磁界を与えることで、図6に記載されているように、外部磁界の検出可能範囲を広げるとともに、ヒステリシスを小さくしようとしている。
【0007】
特許文献2に記載された磁界検出装置は、図1に示すように、互いに直列に接続されている磁気抵抗効果素子が斜めに配置されており、その上に位置する平面コイルに流れる電流でバイアス磁界を誘導し、それぞれの磁気抵抗効果素子の自由層にバイアス磁界を与えている。これにより検知出力のリニアリティを改善しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−145241号公報
【特許文献2】特開2006−29899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1と特許文献2には、バイアス電流から誘導されるバイアス磁界によって、自由磁性層にバイアス磁界を与える発明が記載されている。しかし、いずれの特許文献にも、磁気抵抗効果素子の温度変化による抵抗値の変動をどのようにして改善できるかは記載されていない。
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、温度変化による特性の変動を修正することができる磁界検出装置およびその調整方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、それぞれが磁気抵抗効果素子を有する第1の抵抗変化部と第2の抵抗変化部とが直列に接続されて電圧が印加され、前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部の中点から第1の中点出力が得られる磁界検出装置において、
前記磁気抵抗効果素子は、磁化が固定された固定磁性層と非磁性層と自由磁性層とが積層されて構成され、前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部とで、前記固定磁性層の固定磁化の向きが逆向きであり、
前記第1の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向きと、前記第2の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向きとが、前記固定磁化と直交する向きに対して同じ方向へ傾いていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の磁界検出装置は、それぞれが磁気抵抗効果素子を有する第1の抵抗変化部と第2の抵抗変化部とが直列に接続され、第3の抵抗変化部と第4の抵抗変化部とが直列に接続され、2つの直列群が並列に接続されて電圧が印加され、前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部の中点から第1の中点出力が得られ、前記第3の抵抗変化部と前記第4の抵抗変化部との中点から第2の中点出力が得られる磁界検出装置において、
前記磁気抵抗効果素子は、磁化が固定された固定磁性層と非磁性層と自由磁性層とが積層されて構成され、前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部とで、前記固定磁性層の固定磁化の向きが逆向きで、前記第3の抵抗変化部の前記固定磁性層の固定磁化の向きが前記第2の抵抗変化部と同じで、前記第4の抵抗変化部の前記固定磁性層の固定磁化の向きが前記第1の抵抗変化部と同じであり、
前記第1の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向きと、前記第2の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向きと、前記第3の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向き、および前記第4の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向きが、前記固定磁化と直交する向きに対して同じ方向へ傾いていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の磁界検出装置は、前記磁気抵抗効果素子は長尺形状で、前記固定磁性層の固定磁化の向きが前記磁気抵抗効果素子の短幅方向に設定されており、
前記磁気抵抗効果素子の前記自由磁性層の磁化を長手方向に設定する縦バイアス磁界と、前記自由磁性層の磁化の向きを、前記縦バイアス磁界の磁化方向から傾かせる矯正磁界が設けられているものである。
【0014】
例えば、前記磁気抵抗効果素子に前記縦バイアス方向と平行に延びる通電路が設けられ、前記通電路に流れる電流によって前記矯正磁界が誘導されるものである。
この場合に、前記通電路に流れる電流を調整する調整部を有するものが好ましい。
【0015】
あるいは、本発明の磁界検出装置は、前記磁気抵抗効果素子の側方に配置された永久磁石によって前記矯正磁界が誘導されるものである。
【0016】
次に、本発明は、それぞれが磁気抵抗効果素子を有する第1の抵抗変化部と第2の抵抗変化部とが直列に接続されて電圧が印加され、前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部の中点から第1の中点出力が得られる磁界検出装置の調整方法において、
前記磁気抵抗効果素子を、磁化が固定された固定磁性層と非磁性層と自由磁性層とを積層して構成し、前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部とで、前記固定磁性層の固定磁化の向きを逆向きとし、
前記第1の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向きと、前記第2の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向きとを、前記固定磁化と直交する向きに対して同じ方向へ傾けて、温度特性の調整を行うことを特徴とするものである。
【0017】
また本発明は、それぞれが磁気抵抗効果素子を有する第1の抵抗変化部と第2の抵抗変化部とが直列に接続され、第3の抵抗変化部と第4の抵抗変化部とが直列に接続され、2つの直列群が並列に接続されて電圧が印加され、前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部の中点から第1の中点出力が得られ、前記第3の抵抗変化部と前記第4の抵抗変化部との中点から第2の中点出力が得られる磁界検出装置の調整方法において、
前記磁気抵抗効果素子は、磁化が固定された固定磁性層と非磁性層と自由磁性層とを積層して構成し、前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部とで、前記固定磁性層の固定磁化の向きを逆向きとし、前記第3の抵抗変化部の前記固定磁性層の固定磁化の向きを前記第2の抵抗変化部と同じで、前記第4の抵抗変化部の前記固定磁性層の固定磁化の向きを前記第1の抵抗変化部と同じとし、
前記第1の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向きと、前記第2の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向きと、前記第3の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向き、および前記第4の抵抗変化部の前記自由磁性層の磁化の向きを、前記固定磁化と直交する向きに対して同じ方向へ傾けて、温度特性の調整を行うことを特徴とするものである。
【0018】
本発明の磁界検出装置の調整方法は、外部磁界が作用していないときに、単位温度変化当たりの前記中点電位の変動量をゼロに近づける調整を行うものである。
【0019】
本発明の磁界検出装置の調整方法は、前記磁気抵抗効果素子を長尺形状で、前記固定磁性層の固定磁化の向きを前記磁気抵抗効果素子の短幅方向に設定し、
前記磁気抵抗効果素子の前記自由磁性層の磁化を長手方向に設定する縦バイアス磁界と、前記自由磁性層の磁化の向きを、前記縦バイアス磁界の磁化方向から傾かせる矯正磁界を設けるものである。
【0020】
例えば、前記磁気抵抗効果素子に前記縦バイアス方向と平行に延びる通電路を設け、前記通電路に流れる電流によって前記矯正磁界を誘導する。
この場合に、前記通電路に流れる電流を調整することが好ましい。
【0021】
また、本発明の磁界検出装置の調整方法は、前記磁気抵抗効果素子の側方に配置された永久磁石によって前記矯正磁界を誘導するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、固定磁性層の固定磁化が互いに逆向きである2種の抵抗変化部が直列に接続されてその中点から出力を得ているが、直列に接続された抵抗変化部を構成する磁気抵抗効果素子の自由磁性層を全て同じ向きに傾かせることで、中点電圧の温度特性を改善でき、例えば外部磁界が作用していないときの、前記中点電圧の単位温度変化当たりの変動量をゼロに近づけることを可能にしている。
【0023】
したがって、本発明は、ブリッジ回路を構成する抵抗変化部の温度特性を改善することができる。
【0024】
また、自由磁性層に電流磁界を与えて、自由磁性層の磁化を斜めに向けるための矯正磁界を生成し、このとき、電流磁界を誘導する電流量を調整することで、温度特性に関する調整を簡単に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施の形態の磁界検出装置を示す平面図、
図2図1に示す磁界検出装置において、第1の抵抗変化部を構成する通電路と磁気抵抗効果素子を示す断面図、
図3】磁界検出装置の回路図、
図4】本発明の第2の実施の形態の磁界検出装置の抵抗変化部を示す平面図、
図5】本発明の第3の実施の形態の磁界検出装置の抵抗変化部を示す平面図、
図6】磁気抵抗効果素子の膜構成の一例を示す説明図、
図7】調整前の磁気抵抗効果素子の特性を示す線図、
図8】磁気抵抗効果素子の実質的な抵抗の長さを調整したときの特性を示す線図、
図9】磁気抵抗効果素子の自由磁性層の磁化の向きを調整したときの特性を示す線図、
図10】磁気抵抗効果素子の実質的な抵抗の長さと自由磁性層の磁化の向きの双方を調整したときの特性を示す線図、
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1の実施の形態の磁界検出装置1>
図1図2に示す第1の実施の形態の磁界検出装置1は、基板の表面であるX−Y平面に沿って形成された薄膜の積層体で構成されている。
【0027】
磁界検出装置1は、第1の抵抗変化部R1、第2の抵抗変化部R2、第3の抵抗変化部R3および第4の抵抗変化部R4を有している。
【0028】
第1の抵抗変化部R1と第2の抵抗変化部R2は直列に接続され、第3の抵抗変化部R3と第4の抵抗変化部R4は直列に接続されている。第1の抵抗変化部R1と第2の抵抗変化部R2との直列群と、第3の抵抗変化部R3と第4の抵抗変化部R4との直列群とが平行に接続されている。
【0029】
第1の抵抗変化部R1と第3の抵抗変化部のY1側の端部に交番電圧(交流電圧:駆動電圧)Vddが印加され、第2の抵抗変化部R2のY2側の端部と、第4の抵抗変化部R4のY2側の端部とが、接地電位Gndに設定されている。
【0030】
図3に示すように、第1の抵抗変化部R1と第2の抵抗変化部R2との中点から第1の中点出力Out1が得られ、第3の抵抗変化部R3と第4の抵抗変化部R4との中点から第2の中点出力Out2が得られる。第1の中点出力Out1と第2の中点出力Out2は、差動増幅器3に与えられて、第1の中点出力Out1と第2の中点出力Out2との差が求められ、検知出力となる。
【0031】
図1に示すように、第1の抵抗変化部R1、第2の抵抗変化部R2、第3の抵抗変化部R3、第4の抵抗変化部R4には、それぞれ磁気抵抗効果素子10が複数設けられている。全ての磁気抵抗効果素子10は、左右方向(X方向)に長手方向が向けられた長尺形状であり、且つ互いに平行に形成されている。
【0032】
第1の抵抗変化部R1には、複数の通電路21が形成されている。個々の通電路21は左右方向(X方向)に長手方向が向けられた長尺形状である。同様に、第2の抵抗変化部R2、第3の抵抗変化部R3および第4の抵抗変化部R4にも、長手方向がX方向に向けられた長尺形状の通電路22,23,24が形成されている。
【0033】
図2(A)には、第1の抵抗変化部R1に配列している磁気抵抗効果素子10と通電路21の一部が示されている。磁気抵抗効果素子10の上に絶縁層が形成され、その上に通電路21が形成されている。図1図2(A)に示すように、第1の抵抗変化部R1では、それぞれの磁気抵抗効果素子10のX1側の端部が、接続部26aを介してその上に位置する通電路21のX1側の端部に接続されている。図1に示すように、それぞれの磁気抵抗効果素子10のX2側の端部は、接続部26bを介してその上の通電路21に接続されている。その通電路21は、Y2方向に延びて、Y2側に隣接する他の磁気抵抗効果素子10の上に重ねられている。この構造により、第1の抵抗変化部R1のミアンダパターンの各行で、通電路21と磁気抵抗効果素子10とが、直列に接続され、さらに、通電路21と磁気抵抗効果素子10とが、接続部26aで折り返されて互いに平行に対向している。
【0034】
図3に示す電源部2から直流または交流の駆動電圧が与えられると、第1の抵抗変化部R1とそれぞれの通電路21に電流が流れる。例えば、図2(A)に示されるように、通電路21に電流I1がX1方向に流れているとき、その下に位置する磁気抵抗効果素子10には逆向きのX2方向の電流Iaが流れる。
【0035】
図2(B)には、第2の抵抗変化部R2に配列している磁気抵抗効果素子10と通電路22の一部が示されている。図1図2(B)に示すように、磁気抵抗効果素子10のX2側の端部は、接続部27bを介してその上に位置する通電路22のX2側の端部に接続されている。図1に示すように、それぞれの磁気抵抗効果素子10のX1側の端部は、接続部27aを介してその上の通電路22に接続されている。その通電路22は、Y1方向に延びて、Y1側に隣接する他の磁気抵抗効果素子10の上に重ねられている。この構造により、第2の抵抗変化部R2でも、通電路22と磁気抵抗効果素子10とが、直列に接続され、さらに通電路22と磁気抵抗効果素子10が、接続部27bで折り返されて互いに平行に対向している。
【0036】
第2の抵抗変化部R2においても、ミアンダパターンで配列しているそれぞれの通電路22にX1方向の電流I2が流れると、磁気抵抗効果素子10に、X2方向の電流Ibが流れる。
【0037】
図1に示すように、第3の抵抗変化部R3と第4の抵抗変化部R4での磁気抵抗効果素子10と通電路23または24との接続構造は、第2の抵抗変化部R2とほぼ同じである。第3の抵抗変化部R3でも、それぞれの通電路23にX1方向の電流I3が流れると、磁気抵抗効果素子10にX2方向の電流が流れる。同様に、第4の抵抗変化部R4でも、それぞれの通電路24にX1方向の電流I4が流れると、磁気抵抗効果素子10にX2方向の電流が流れる。
【0038】
図6には、それぞれの抵抗変化部R1,R2,R3,R4を構成する磁気抵抗効果素子10の積層構造が説明されている。
【0039】
磁気抵抗効果素子10は、巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)であり、基板の上に絶縁下地層が形成され、その上にシード層9が形成されている。シード層9の上に、固定磁性層11と非磁性層12と自由磁性層13さらに反強磁性層14が順に積層され、反強磁性層14が保護層および絶縁層15で覆われている。
【0040】
固定磁性層11は、第1の固定層11aと第2の固定層11b、ならびに第1の固定層11aと第2の固定層11bとの間に位置する非磁性中間層11cを有する積層フェリ構造である。第1の固定層11aと第2の固定層11bは、CoFe合金(コバルト−鉄合金)で形成されている。非磁性中間層11cはRu(ルテニウム)で形成されている。
【0041】
積層フェリ構造の固定磁性層11は、第1の固定層11aと第2の固定層11bの磁化が反平行に固定されたいわゆるセルフピン構造である。積層フェリ構造の固定磁性層11は、磁場中で熱処理を行うことなく、第1の固定層11aと第2の固定層11bの反強磁性結合により、磁化の向きを固定することができる。固定磁性層11の固定磁化の方向は第2の固定層11bの磁化方向である。
【0042】
図1に示すように、第1の抵抗変化部R1と第4の抵抗変化部R4では、全ての磁気抵抗効果素子10の固定磁性層11の固定磁化Pinの方向がY2方向である。第2の抵抗変化部R2と第3の抵抗変化部R3では、全ての磁気抵抗効果素子10の固定磁性層11の固定磁化Pinの方向がY1方向である。
【0043】
非磁性層12はCu(銅)などの非磁性導電材料で形成されている。自由磁性層13は第1強磁性層13aと第2強磁性層13bおよび第3強磁性層13cが積層されて構成されている。第1強磁性層13aと第3強磁性層13cはCoFe合金(コバルト・鉄合金)で形成され、第2強磁性層13bはNiFe合金(ニッケル・鉄合金)で形成されている。
【0044】
自由磁性層13の第3強磁性層13cに、反強磁性層14が直接に接触して積層されている。反強磁性層14は、IrMn合金(イリジウム・マンガン合金)で形成されている。IrMn合金(イリジウム・マンガン合金)を磁場中で成膜することで、アニール処理を行うことなく自由磁性層13との間で交換結合が可能である。なお、反強磁性層14としてPtMn(白金・マンガン合金)などを使用することが可能である。この場合には、膜の規則化のためにアニール処理が必要になる。
【0045】
反強磁性層14と第3強磁性層13cとの界面での反強磁性結合によって、自由磁性層13に交換結合磁界Hexが作用する。図1において破線の矢印で示すように、自由磁性層13に対して交換結合磁界HexがX1方向に作用する。交換結合磁界Hexおよび長尺形状の自由磁性層13の形状異方性によって、自由磁性層13の磁化がX1方向へ揃えられる。
【0046】
保護層および絶縁層15はTa(タンタル)で形成されている。保護層および絶縁層15の上に通電路21,22,23,24が形成される。通電路21,22,23,24は、Al(アルミニウム)、Cu、Ti(チタン)、Cr(クロム)などの非磁性の導電性材料で形成されており、例えばCuとAlとの積層構造である。
【0047】
磁気抵抗効果素子10は、固定磁性層11の固定磁化Pinの方向が感度軸方向である。自由磁性層13の磁化が固定磁化Pinと平行に向けられると、磁気抵抗効果素子10の抵抗値が極小となり、磁化が固定磁化Pinと反平行に向けられると、磁気抵抗効果素子10の抵抗値が極大になる。
【0048】
<第1の実施の形態の磁界検出装置1の動作>
次に、第1の実施の形態の磁界検出装置1の動作を説明する。
【0049】
電源部2から駆動電圧Vddが与えられ、第1の抵抗変化部R1において、通電路21にX1方向の電流I1が流れると、図2(A)に示すように、電流磁界による矯正磁界H1が磁気抵抗効果素子10の自由磁性層13に対してY2方向に与えられる。図1に示すように、自由磁性層13の磁化をX1方向へ向けようとする交換結合磁界Hexおよび形状異方性と、前記矯正磁界H1との合成力により、自由磁性層13の磁化Fは、固定磁性層11の固定磁化Pinの方向と直交するX1方向に対してややY2方向に傾く斜めの向きとなる。
【0050】
第2の抵抗変化部R2においても、磁気抵抗効果素子10に対して、交換結合磁界HexがX1方向に作用する。第1の抵抗変化部R1の通電路21にX1方向の電流I1が流れると、図2(B)に示すように磁気抵抗効果素子10に対して矯正磁界H2がY2方向に作用する。よって、第2の抵抗変化部R2においても、自由磁性層13の磁化Fは、固定磁性層11の固定磁化Pinの方向と直交するX1方向に対してややY2方向に傾いて斜めに向けられる。
【0051】
第3の抵抗変化部R3と第4の抵抗変化部R4においても、交換結合磁界HexがX1方向に作用し、矯正磁界H3とH4がY2方向へ作用するため、自由磁性層13の磁化Fは、固定磁性層11の固定磁化Pinの方向と直交するX1方向に対してややY2方向に傾く斜めに向けられる。
【0052】
磁界検出装置1では、直列に接続されている第1の抵抗変化部R1と第2の抵抗変化部R2とで、固定磁性層11の固定磁化Pinが逆向きであるが、第1の抵抗変化部R1と第2の抵抗変化部R2とで、自由磁性層13の磁化Fが同じY2方向へ傾けられている。後に説明するように、第1の抵抗変化部R1と第2の抵抗変化部R2とで自由磁性層13の磁化Fを同じ方向へ傾けることによって、第1の抵抗変化部R1と第2の抵抗変化部R2を構成する磁気抵抗効果素子10の温度特性を改善でき、中点出力Out1の単位温度変化に対する出力の変動量をゼロに近づけるように調整することが可能となる。
【0053】
すなわち、第1の抵抗変化部R1を構成する磁気抵抗効果素子10と、第2の抵抗変化部R2を構成する磁気抵抗効果素子10は、膜の積層構造が同じであり、同時に成膜されるために、同じ温度特性を持つものとなる。したがって、抵抗変化部R1,R2において、磁気抵抗効果素子10の自由磁性層13の磁化Fを同じ方向へ傾けることで、磁気抵抗効果素子10の温度特性による中点出力Out1の変動を抑制できるようになる。
【0054】
同様に、第3の抵抗変化部R3と第4の抵抗変化部R4でも磁気抵抗効果素子10の膜構成が同じであるが、固定磁性層11の固定磁化Pinの向きが互いに逆である。ここでも、2つの抵抗変化部R3,R4において、磁気抵抗効果素子10の自由磁性層11の磁化FをX1方向に対して同じ向きに傾かせることで、中点出力Out2の単位温度変化に対する出力の変動量をゼロに近づけるように調整することが可能となる。
【0055】
ここで、図1図3に示すVdd−Out1−Gndに外部磁界Bが作用したときの直列回路の抵抗値を計算すると、R1とR2とで感度軸が逆向きのため、(R1−α1・H1)+(R2+α2・H2)である。α1とα2は磁気抵抗効果素子10の抵抗変化率であるが、R1とR2は同じ感度を有する同じ構造の磁気抵抗効果素子10で構成されているため、α1=α2である。H1はR1に作用する磁界の強さで、H2はR2に作用する磁界の強さであり、H1=H2である。したがって、外部磁界Bが変化しても、前記直列回路の抵抗値は、(R1−α1・H1)+(R2+α2・H2)=R1+R2で変化することがない。したがって、通電路21,22に流れる電流は一定となり、矯正磁界H1,H2,H3,H4の大きさも常に一定となる。
【0056】
ただし、ノイズなどの影響で矯正磁界H1,H2,H3,H4に変動が生じるのを
防止するために、電源部2を定電流回路としてもよい。
【0057】
また、図3に示すように、電源部2から与えられる電流値を可変する電流調整部(可変抵抗器)4を設けると、通電部21,22,23,24に流れる電流I1,I2,I3,I4を調整して、自由磁性層の磁化Fの傾き角度を、温度特性を改善するための適正値となるように調整することが可能になる。
【0058】
図1に示すように、磁界検出装置1に対してY1方向の外部磁界(被測定磁界)Bが作用すると、全ての抵抗変化部R1,R2,R3,R4において、自由磁性層13の磁化Fが時計方向へ回転させられる。第1の抵抗変化部R1では、磁気抵抗効果素子10の抵抗値が大きくなり、第2の抵抗変化部R2では、磁気抵抗効果素子10の抵抗値が小さくなる。また、第3の抵抗変化部R3では抵抗値が小さくなり、第4の抵抗変化部R4で抵抗値が大きくなる。
【0059】
よって第1の中点出力Out1の電圧が低下し、第2の中点出力Out2の電圧が上昇して、差動増幅器3の検知出力が低下する。図1とは逆に外部磁界BがY2方向に与えられると、第1の中点出力Out1が大きくなり、第2の中点出力Out2が小さくなって、差動増幅器3から得られる検知出力が逆位相となる。
【0060】
差動増幅器3で得られる検知出力によって外部磁界Bの大きさと向きを検知することが可能になる。
【0061】
<第2の実施の形態の磁界検出装置101>
図4に本発明の第2の実施の形態の磁界検出装置101の第1の抵抗変化部R1の構造が示されている。
【0062】
図4に示す第1の抵抗変化部R1では、磁気抵抗効果素子10の配置が図1に示す第1の実施の形態と同じである。複数の磁気抵抗効果素子10は、導電パターン111によってミアンダ形状に接続され、全ての磁気抵抗効果素子10が直列に接続されている。そして、電源部2から導電パターン111を介して磁気抵抗効果素子10に電圧が印加されている。
【0063】
第1の抵抗変化部R1では、磁気抵抗効果素子10と絶縁された通電路121が、それぞれの磁気抵抗効果素子10と平行に重ねられて形成されている。通電路121に与えられる電流I101によって矯正磁界H2が誘導される。磁気抵抗効果素子10の自由磁性層13の磁化Fは、交換結合磁界Hexおよび形状異方性と、矯正磁界H2との合成により、X1方向に対して斜めに傾けられる。
【0064】
第2の実施の形態の磁界検出装置101では、第2の抵抗変化部R2と第3の抵抗変化部R3と第4の抵抗変化部R4の構成が、図4に示す第1の抵抗変化部R1と同じである。また各抵抗変化部R1,R2,R3,R4のブリッジの接続構造も図1と同じである。
【0065】
各抵抗変化部R1,R2,R3,R4における磁気抵抗効果素子10の固定磁性層11の固定磁化Pinの向きは図1と同じである。そして、全ての抵抗変化部R1,R2,R3,R4において矯正磁界H2が同じ向き(Y2方向)に作用し、自由磁性層13の磁化FがX1方向に対して傾けられている。
【0066】
第2の実施の形態においても、電源部2から各抵抗変化部R1,R2,R3,R4に重ねられている通電路121に与えられる電流I101の電流量を調整する可変抵抗器などの調整部を設けることで、矯正磁界H2の大きさを可変し、自由磁性層13の磁化Fの傾き角度を、温度特性を改善するのに適正な値に調整することが可能である。
【0067】
<第3の実施の形態の磁界検出装置201>
図5に本発明の第3の実施の形態の磁界検出装置201の第1の抵抗変化部R1の構造が示されている。
【0068】
図5に示す第1の抵抗変化部R1は、磁気抵抗効果素子10の配置が図1に示す第1の実施の形態および図4に示す第2の実施の形態と同じである。複数の磁気抵抗効果素子10は、導電パターン111によってミアンダ形状に接続され、全ての磁気抵抗効果素子10が直列に接続されている。そして、電源部2から導電パターン111を介して磁気抵抗効果素子10に電圧が印加されている。
【0069】
それぞれの磁気抵抗効果素子10を挟んでY方向の両側に永久磁石211が配置されており、永久磁石211から磁気抵抗効果素子10に矯正磁界H2が与えられている。磁気抵抗効果素子10の自由磁性層13の磁化Fは、交換結合磁界Hexおよび形状異方性と、矯正磁界H2との合成により、X1方向に対して斜めに傾けられている。
【0070】
なお、図5に示す第3の実施の形態の磁界検出装置201では、磁気抵抗効果素子10として、自由磁性層13に重ねられた反強磁性層14が存在しておらず、自由磁性層13に交換結合磁界Hexが作用していないものであってもよい。この場合も、図5に示すように、永久磁石211によって、それぞれの磁気抵抗効果素子10に斜めに向くバイアス磁界を与えることで、自由磁性層13の磁化FをX1方向に対して斜めの向きに設定することが可能になる。
【0071】
第3の実施の形態の磁界検出装置201では、第2の抵抗変化部R2と第3の抵抗変化部R3と第4の抵抗変化部R4の構成が、図5に示す第1の抵抗変化部R1と同じである。またブリッジの接続構造も図1と同じである。
【0072】
各抵抗変化部R1,R2,R3,R4における磁気抵抗効果素子10の固定磁性層11の固定磁化Pinの向きは図1と同じである。そして、全ての抵抗変化部R1,R2,R3,R4において矯正磁界H2が同じ向きに傾けられている。
【0073】
<抵抗変化部の特性の調整>
図7は、磁気抵抗効果素子10の抵抗値などが未調整である磁界検出装置1(101,201)の各抵抗変化部の特性を示している。図8は、磁気抵抗効果素子10の実質的な長さを調整したときの各抵抗変化部の特性を示している。図9は、全ての抵抗変化部R1,R2,R3,R4において、磁気抵抗効果素子10の自由磁性層13の磁化FをX1方向に対して斜めに向けて温度特性を改善する調整を行ったときの各抵抗変化部の特性を示している。図10は、全ての抵抗変化部R1,R2,R3,R4において、磁気抵抗効果素子10の自由磁性層13の磁化FをX1方向に対して斜めに向けて温度特性を改善し、さらに、磁気抵抗効果素子10の実質的な長さを調整したときの各抵抗変化部の特性を示している。
【0074】
図7ないし図10の各図において(A)は、外部磁界Bの変化に対する各抵抗変化部R1,R2,R3,R4の抵抗値の変化を示している。横軸は、外部磁界Bの磁場Hyの強さ(mT)を示しており、Y1方向の磁場(Hy)の強さがプラス側で、Y2方向の磁場(Hy)の強さがマイナス側である。縦軸は各抵抗変化部の抵抗値(Ω)を示している。
【0075】
各図の(A)において実線で示すグラフは、Vdd−Out1間の抵抗値の変化であり、第1の抵抗変化部R1の抵抗値の変化を示している。一点鎖線で示すグラフは、Vdd−Out2間の抵抗値の変化であり、第3の抵抗変化部R3の抵抗値の変化を示している。細かな破線で示すグラフは、GND−Out1間の抵抗値の変化であり、第2の抵抗変化部R2の抵抗値の変化を示している。粗い破線で示すグラフは、GND−Out2間の抵抗値の変化であり、第4の抵抗変化部R4の抵抗値の変化を示している。
【0076】
各図の(B)は、外部磁界の変化に対する各抵抗変化部R1,R2,R3,R4の抵抗温度係数(TCR)を示している。横軸は、外部磁界Bの磁場Hyの強さ(mT)を示しており、Y1方向の磁場(Hy)の強さがプラス側で、Y2方向の磁場(Hy)の強さがマイナス側である。縦軸は各抵抗変化部R1,R2,R3,R4の抵抗温度係数(TCR:ppm/℃)を示している。
【0077】
抵抗温度係数は、基準温度Tを25℃、そのときの抵抗値をRとし、任意温度Taを85℃とし、そのときの抵抗値をRaとしたときに、(Ra−R)/R÷(Ta−T)×1000000(ppm/℃)で求められる。
【0078】
各図の(B)でも、実線で示すグラフは、第1の抵抗変化部R1のTCRの変化を示している。一点鎖線で示すグラフは、第3の抵抗変化部R3のTCRの変化を示している。細かな破線で示すグラフは、第2の抵抗変化部R2のTCRの変化を示している。粗い破線で示すグラフは、第4の抵抗変化部R4のTCRの変化を示している。
【0079】
各図の(C)は、外部磁界Bの磁場(Hy)の大きさと図1に示すようなフルブリッジ回路の出力との関係を示している。横軸は外部磁界Bの磁場(Hy)の大きさであり、Y1方向の磁場の強さがプラス側で、Y2方向の磁場の強さがマイナス側である。縦軸はフルブリッジ回路の出力であるが、ここでの出力は、(第2の中点出力Out2)−(第1の中点出力Out1)(mV)である。また、(C)では、基準温度T=25℃のときの検知出力が実線で示され、任意温度Ta=85℃のときの検知出力が一点鎖線で示されている。
【0080】
各図の(D)は、外部磁界Bの磁場(Hy)の大きさに対する、検知出力の温度特性の変化を示している。横軸は外部磁界Bの磁場(Hy)の大きさであり、Y1方向の磁場の強さがプラス側で、Y2方向の磁場の強さがマイナス側である。縦軸は、(C)に示されている(85℃での検知出力)−(25℃での検知出力)を温度差(85℃−25℃=60℃)で除した値(μV/℃)である。
【0081】
図7は無調整の状態であり、図7(A)(B)で、出力の交点がゼロ磁場に一致しておらず、しかも(D)に示すように、外部磁界Bが作用していないゼロ磁場において、単位温度変化当たりのブリッジ出力の変動値δがマイナス側に大きくずれている。その結果、温度変化があったときの出力の変動が、外部磁場がプラス側とマイナス側とでアンバランスになる。
【0082】
図8は、各抵抗変化部R1,R2,R3,R4を構成する磁気抵抗効果素子10をトリミングし、あるいはストライプ状の磁気抵抗効果素子10の途中に低抵抗材料のバイパスを付加するなどして実質的な抵抗の長さを変化させて調整した結果を示している。図8(A)では、固定磁性層11の固定磁化Pinの向きがY2方向である抵抗変化部R1,R4のそれぞれの抵抗値を上げて、固定磁性層11の固定磁化Pinの向きがY1方向である抵抗変化部R3,R3のそれぞれの抵抗値を下げることで、ゼロ磁場の状態で検知出力が交差するように調整している。この調整により、図8(B)に示すように、ゼロ磁場のときに、温度が変化しても、フルブリッジでの検知出力(Out2−Out1)をゼロに設定することが可能になる。
【0083】
しかし、図8(B)(D)に示すように温度特性は調整することができず、図8(D)に示すように、単位温度変化当たりのブリッジ出力のマイナス側の変動値δがさらに大きくなっている。
【0084】
図9では、図1図4および図5に示すように、各抵抗変化部R1,R2,R3,R4における磁気抵抗効果素子10の自由磁性層13の磁化Fの向きを、X1方向に対して全て同じ方向であるY2方向へ傾かせている。その結果、図8(D)に示すように、単位温度変化当たりのブリッジ出力のマイナス側の変動値δをゼロに接近させることができ、温度が上昇しているときと温度が低下しているときとで、外部磁界に対するブリッジ出力の変動の差を少なくできる。
【0085】
なお、この場合に、図9(A)に示すように出力の交点が外部磁界のプラス側へシフトし、図9(C)に示すように、それぞれでの温度でブリッジ出力がゼロになる点が、外部磁界Bの磁場(Hy)のプラス側にシフトするが、この点は処理回路上で、出力にバイアス電圧を与えることなどで解消することができる。
【0086】
図10は、各抵抗変化部R1、R2,R3,R4を構成する磁気抵抗効果素子10の実質的な抵抗の長さをトリミングや低抵抗材料のバイパスの付加で調整し、さらに全ての抵抗変化部R1,R2,R3,R4において、自由磁性層13の磁化Fの向きを全てX1方向の同じ方向へ傾けさせている。
【0087】
これにより、図10(D)に示すように、単位温度変化に対するブリッジ出力の変動値をほぼゼロに一致させることが可能になる。
【符号の説明】
【0088】
B 外部磁界
H1,H2,H3,H4 矯正磁界
Ia,Ib,Ic,Id 電流
Out1 第1の中点出力
Out2 第2の中点出力
Pin 固定磁性層の固定磁化
F 自由磁性層の磁化
R1 第1の抵抗変化部
R2 第2の抵抗変化部
R3 第3の抵抗変化部
R4 第4の抵抗変化部
Vdd 駆動電圧
1,101,102 磁界検出装置
2 電源部
3 差動増幅部
10 磁気抵抗効果素子
11 固定磁性層
12 非磁性層
13 自由磁性層
21,22,23,24 通電路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10