(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588425
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】高電圧放電及びオゾンによる水システムの処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/48 20060101AFI20191001BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20191001BHJP
C02F 1/78 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
C02F1/48 B
H05H1/24
C02F1/78
【請求項の数】17
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-511781(P2016-511781)
(86)(22)【出願日】2014年4月28日
(65)【公表番号】特表2016-525923(P2016-525923A)
(43)【公表日】2016年9月1日
(86)【国際出願番号】US2014035706
(87)【国際公開番号】WO2014179227
(87)【国際公開日】20141106
【審査請求日】2017年1月24日
(31)【優先権主張番号】61/818,229
(32)【優先日】2013年5月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/260,605
(32)【優先日】2014年4月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506041682
【氏名又は名称】エヌシーエイチ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】NCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デンバー,アドリアン,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ベラ,デイビッド,エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ホロウェイ,マシュー,シー.
【審査官】
岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0095352(US,A1)
【文献】
特開2012−075966(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/157248(WO,A1)
【文献】
特開2009−190003(JP,A)
【文献】
特開2003−234340(JP,A)
【文献】
特開平09−106979(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02363380(EP,A1)
【文献】
国際公開第2012/168670(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0038970(US,A1)
【文献】
特表平11−510736(JP,A)
【文献】
特開2002−059170(JP,A)
【文献】
独国特許発明第102011014329(DE,B3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/48
C02F 1/78
H05H 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却用及び冷却された水が自動的にループされる水システムにおいて、前記水を高電圧プラズマ放電により処理する方法であって:
前記水システムに流体連通する入口と、出口と、本体と、少なくとも一部分が前記本体内に配備された高電圧電極と、少なくとも一部分が前記本体内に配備された接地電極とを含む反応チャンバーを具え、処理される水の少なくとも一部分を、前記水システムから前記反応チャンバーの中を通って流すこと;
マルクスラダーを有する高電圧発生器の中に電圧を発生させること;
前記高電圧発生器から前記高電圧電極へ電圧を供給することにより、少なくとも一部分が前記反応チャンバーの本体内部の水の中に浸漬された前記2つの電極間に高周波及び高電圧プラズマ放電を、処理される水の中に発生させること;
1又は2以上の電磁干渉サプレッサを水システムの1又は2以上の電子構成要素に接続するか、或いは、1又は2以上の接地デバイスを1又は2以上のパイプセグメント又は水システムのサンプに接続することにより、前記高周波及び高電圧プラズマ放電の結果として発生される電磁放射から水システム構成要素を保護すること;及び
前記本体の中又は前記本体の上流の水の部分に対して、1又は2種以上のガスを任意的に供給すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記高電圧プラズマ放電における各放電では、1又は2種以上の寿命の長い酸化化学物質が生成される、請求項1の方法。
【請求項3】
前記1又は2種以上の寿命の長い酸化化学物質は、オゾン及び過酸化水素からなる群から選択される、請求項2の方法。
【請求項4】
前記高電圧プラズマ放電における各放電では、1又は2種以上の寿命の短い酸化化学物質が生成される、請求項1の方法。
【請求項5】
前記1又は2種以上の寿命の短い酸化化学物質は、スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル及び水素ラジカルからなる群から選択される、請求項4の方法。
【請求項6】
前記高電圧プラズマ放電における各放電では、UV放射が生成される、請求項1の方法。
【請求項7】
前記高電圧プラズマ放電における各放電では、音響衝撃波が生成される、請求項1の方法。
【請求項8】
前記高電圧発生器への電力供給源を、水システムの他の構成要素と絶縁することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項9】
前記1又は2以上の接地デバイスは、水システム内の配管に巻かれたワイヤーを含む、請求項8の方法。
【請求項10】
電気伝導度が、水システムのブローダウンを開始する電気伝導度の値よりも低い予め設定された閾値に達するか又は超えると、本体の中又は本体の上流の水の部分に供給されるガスの量を増加させることをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項11】
水は、微生物種を除去するために処理され、水が前記高電圧プラズマ放電で処理される間、殺生物剤は水に加えられない、請求項1の方法。
【請求項12】
前記高電圧発生器の中に電圧を発生させるステップで生成されたオゾンを獲得すること、及び、前記オゾンを、本体の中又は本体の上流の水の部分に供給することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項13】
前記接地デバイスは、ワイヤーを含み、前記ワイヤーを水システムの配管及び地面に接続し、前記ワイヤーを通じて電流を流すことにより、水システムの水の中に磁場を発生させることをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項14】
前記高電圧プラズマ放電を発生させるステップで生じた過剰エネルギーを獲得して、電流をワイヤーに供給することをさらに含む、請求項12の方法。
【請求項15】
前記高電圧発生器の電極に空気をブローすることをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項16】
前記ガスは、ベンチュリシステムを用いて、入口上流の水の部分に供給され、水がベンチュリシステムを通って流れるとき、前記水の部分の流速を調節することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項17】
前記高電圧電極に供給される電圧は200kVを超える、請求項1の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2013年5月1日出願の米国特許仮出願第61/818229号の利益を主張する。
<発明の分野>
本発明は、プラズマを発生させる高電圧放電及び高電圧発生の副生成物であるオゾンを用いて流水システムを処理するシステム及び方法に関するもので、特に冷却塔や、他の再循環システム又は閉ループシステムの処理に有用である。
【背景技術】
【0002】
<関連技術の記載>
人工の水システムは、世界のエネルギー生産施設、産業関連の製造プラント、病院、並びに他の複合施設及び建築物の多くで一般的に見られる重要な構成要素である。これらシステムは、年間およそ7000億ガロンの水を消費し、補給水及び汚水処理のコストだけで18億ドルものコストを伴う。これら人工の水システムは全て、システムを効率的に作動させるために重要な熱伝達表面におけるスケール、バイオフィルム及び他の腐食性副生成物の蓄積を制御するための処理を、化学的又は非化学的な態様で行う必要がある。
【0003】
冷却塔やボイラー等のように熱交換を伴う水システムの場合、これらの汚染物質を除去し、システムが再び汚染されるまでの時間を長くするために有効な処理を行うことにより、相当量の金額を節約することができる。効果的かつ徹底した処理は、定期的処理の頻度を少なくし、日常のメンテナンス及び/又は定期的処理に必要な化学剤の量を少なくすることができるので、労働及び処理用化学剤のコストを節約することができる。また、清浄な熱交換表面によって操業することにより、エネルギーコストの節約にもなる。米国産業界では、熱交換表面の汚染によって生じる費用が毎年何億ドルにも及んでおり、年間約3千兆Btus(quads)ものエネルギー消費の増大に直接関係している。
【0004】
水の利用を最大にすると共に浪費を最小にするために、これらシステムの多くは、スケーリング、バイオフィルム形成及び腐食から保護する一連の化学的処理(chemical treatments)を採用する。これらの化学的処理により、水の排出と新鮮な水との交換が必要となる前に、水の再使用と再循環が何度も可能となる。水の循環時間を増大させることにより、下水システムに放出される水の量は有意に低減され、流出(bleed off)分の代替に必要な補給水の量を最小にすることができる。しかしながら、化学的処理用組成物及び方法の多くは、使用される化学剤の腐食性が強いので、処理される水システムの構成要素を損傷する虞れがある。また、過酷な化学的処理に対する環境へのマイナス面があり、環境中に放出される排水の中に、トリハロメタン、ハロアセトニトリル、ハロフェノール等の有毒な殺菌副生成物が生成される問題がある。冷却塔の処理の場合、年間に放出される水処理用化学剤は5360億ポンドと推定されており、放出される地域及び水路の中又はその近傍に生存する様々な種に対して、また、放出される下水処理プラントの細菌成分に対して影響を及ぼす。
【0005】
化学的処理に関連する環境への影響を最小にするために、多くの水処理企業、さらに重要なそれらの顧客は、それらシステムの性能を維持するために、非化学ベースの水処理技術の使用に注目している。業務用及び住居用の水システムの両方で用いられる市販の非化学処理装置又は水質調整技術は現在約30存在する。これらのシステムは、次の3つのカテゴリーに分類される:(1)殺生物剤を製造するのに空気又は塩等の無害又は安全な化学添加剤を用いる間接的化学剤製造システムである。これらのシステムとして、オゾン発生器、電気化学的ハイポクロライト発生器及び混合オキシダント発生器が挙げられる。(2)水における直接相互作用によって活性化学種を発生させる直接化学剤製造システムである。これらデバイスは、流体力学的キャビテーション又は音響キャビテーションを用いて、ヒドロキシルラジカルと高温及び高圧の局部的領域を水中に生じさせるものである。このカテゴリーに適合する他の種類のデバイスとして、紫外線光システムがある。(3)プラズマ発生を含む電気磁気的デバイスであり、誘導された電磁場を用いてイオンの移動及び運動を誘導し、エレクトロポーレーション又は細胞壁内のイオンサイクロトロン共鳴によって細胞死に至らしめるものである。これらの技術の中で、電気磁気的デバイスが最も一般的であるが、これは、厳密な科学的サポートが最も少ない技術である。化学的アプローチは、直接的及び間接的の両方とも、科学的信頼性はより大きい。しかしながら、このような理解が、電気磁気的デバイスの潜在的用途を制限することになったかもしれず、それゆえ、市場シェアの多くを獲得することができずにいる。
【0006】
水中で高電圧放電及びプラズマ発生を用いることは、先行技術において知られている。例えば、B.R.Lockeらによって発表された文献(Ind Eng.Chem Res 2006,45,882-905)には、電極の構成及び形状、パルスアークとパルスコロナの関係、水排出プロセスにおける電気水力学的放電及び非熱性プラズマ放出中に生成される化学種について記載されている。この文献は、この技術を水処理に用いることに関連する多くの基本的問題を取り扱うものであるが、産業的環境、商業的環境又は住居環境における水処理に関連する実際の適用、特に、水及び周囲雰囲気中に放出される電磁放射の影響を最小にするための複数の接地点(ground points)の必要性に関する実際の適用については記載されていない。
【0007】
オゾンガスを用いて水処理を行なうことも知られている。例えば、Guptaらによる文献(S.B.Gupta,IEEE Transactions on Plasma Science,2008,36,40,1612-163)には、水中でのパルス放電によって生じる酸化プロセスの進化した使用について記載されている。Guptaらによるプロセスでは、独立した二次源から(高電圧発生器からではない)放出反応器の中に供給される酸素ガス又はオゾンガスを用いる。Guptaらはまた、システムの出力及び性能は、溶液伝導度に大きく依存することを報告している。例えば冷却塔や閉ループにおけるシステムのように水伝導度が高くなり得る用途では高電圧放電が必要とされるが、これは、電磁放射が増大する問題を生じる。
【0008】
水の処理又は精製を含む様々な目的のためにプラズマを発生させる特許又は特許出願公開がこれまでに幾つかある。例えば、米国特許出願公開第2009/0297409号(大気圧又はそれより高圧で放出されるプラズマの発生)、米国特許出願公開第2006/0060464号(流体中にプラズマの発生、特に水媒体の中に含まれるか又は生成したバブルの中に形成されるプラズマの発生)、米国特許第6558638号(放出ゾーンにバブルを発生させるために組み込まれたガス供給手段を使用し、高電圧放電を利用して液体を処理する)、及び米国特許出願公開第2010/0219136号(パルス化されたプラズマ放出により、5 gpmの流量、 120〜150ワット電力の僅かな消費量にて水等の流体を処理する)等である。
【0009】
上記先行技術には、水中での高電圧放電により、化学的に活性な種が発生し、物理的効果がもたらされ、水化学を制御できる例が開示されている。しかしながら、長い期間に亘って流水を産業的、商業的或いは住居的規模で大量に処理するに際しては、プラズマ放電を用いたこの技術をどのように水システムに適用するかについては開示がなく、スケールや腐食の制御、ブローダウン、水保護対策等に必要なコントローラ及びモニターを含む水システムの他の構成要素の損傷を防止する技術についての開示はない。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、非化学的技術を用いて、冷却塔や、閉ループシステム又は再循環水システム等の流水システムを処理するためのシステム及び方法に関する。この処理は、処理される水の中に浸漬された2つの電極の間に高周波で高電圧の放電を発生させることを含む。電極間で放電が行われる毎に、寿命の長い酸化化学物質(オゾン、過酸化水素)と寿命の短い酸化化学物質(スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル及び水素ラジカル)が発生する。また、音響衝撃波(sonic shockwaves)と共にUV放射が発生する。これらの効果は、従来より広く知られている。しかしながら、電磁気又は電解システムを利用して、高電圧放電によって生じる過剰エネルギー(通常は廃棄されるエネルギー)を獲得することはこれまで知られていない。本発明の一実施形態に係るシステムでは、この過剰エネルギーを利用し、水システム用配管を地面に接続するワイヤーループの中に電流を流し、水中に磁場を発生させることにより、水の調整及び処理をさらに行なう。この磁場は、水処理に有益な効果をもたらす。水システムでは、伝導度、pH、生物活性を測定するために、また、高電圧放電を水供給部に直接発生させるシステムで一般的に用いられる重要なシステム構成要素を制御するために、電子制御システムが用いられるが、水システム全体に対する大量の電磁放射による電子制御システムへの損傷は回避される。
【0011】
既存の技術では、高電圧放電を水中で用いる場合、水中に複数の設置地点が無く、高電圧構成要素の周りに適当な遮蔽が無い場合は、その適用性が著しく制限される。本発明の他の実施形態は、微細バブル発生器を使用して、微細バブルの流れを高電圧放電チャンバー中に導入するものである。高伝導度の水中で高電圧放電用の反応領域を最大にするために、発電能力が200kVを超える電力を供給する必要がある。この電力供給の副生成物として生成するオゾンガスは、システムから取り除かなければならない。本発明では、高電圧電力供給の副生成物として生じたこのオゾンガスは、微細バブルの微細分散物として高電圧チャンバーの中に導入され、酸化反応を向上させるゾーンを作るものである。また、高電圧チャンバーは、流体取扱システムを組み込むことにより、ソニケーション又は流体力学キャビテーションにより高電圧放電ゾーン内に微細バブルを発生させることができる。また、本発明は、パルス化された高電圧放電レジメン(regimen)を用いることにより、所定の時間刻みで高電圧放電が行なうことができ、水、配線、その他電力供給に重要な構成要素の過熱が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の装置について、以下の図面に関してさらに記載し、説明する。
【
図1】
図1は、本発明に係るシステムの好ましい一実施形態の概略図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の実施形態が適用されなかった一実験において測定された電磁場を示すグラフである。
【
図2B】
図2Bは、本発明の実施形態が適用されなかった一実験において測定された電磁場を示すグラフである。
【
図3】
図3は、本発明の好ましい実施形態を用いた別の実験において測定された電磁場を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本発明に係る別の好ましい実施形態の概略図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る別の好ましい実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る処理システムの好ましい実施形態が、
図1に示されている。処理システム10は、好ましくは、ガス注入システム28、プラズマ反応チャンバー36、高電圧発生器40、電力システム46及び様々な構成要素の保護デバイスを具える。処理システム10は、既存の水システム(water system)12に容易に付加される。水システム12は、業務用又は住居用のあらゆる水システム、特に、冷却塔のような冷却及び再循環用水システムに用いられる水システムであってよい。
図1に示される水システム12では、周知の構成要素で図示されていないものがある。水システム12で処理される水の流れ14は、水システムの監視用として一般的に用いられるpHセンサー、温度センサー及び伝導度センサー等の様々なセンサー16を通過する。システム内の水は、水システム12の規模や水システム12の中を流れる水量に応じて、全部が処理システム10を通過してもよいし、一部の流れ又は副流のみが処理システム10を通過してもよい。
【0014】
水の流れ18は好ましくは、ガス注入システム28を通って流れ、空気及び/又はガスの微細バブルが水の流れ18に注入される。好ましくは、ガス注入システム28は、1又は2以上の微細バブル発生デバイス(micro-bubbler devices)20を具えており、空気又はガス22、反応性ガス26及び/又はオゾン30が、プラズマ反応チャンバー36の上流にて微細バブルとして水の流れに導入される。水システム12から微生物種をできるだけ多く除去することができるように、オゾン、単原子酸素、準安定一重項デルタ酸素、蒸気相の二酸化水素、塩素ガス、二酸化塩素ガス等の反応性ガスを用いることもできる。そのようなガスの使用及び選択は、水システム12内の水条件に応じて決められる。水の流れ18に対して、空気、オゾン、その他のガスの流れを付加する必要はなく、微細バブルとして付加する必要もない。微細バブルは、プラズマ発生を補助し、オゾンガス等の反応性ガスも水システムの水の処理に寄与する。バブルが付加される場合、バブル注入された流れ24がプラズマ反応チャンバー36に供給されるか、又は流れ18がプラズマ反応チャンバー36に供給される。
【0015】
好ましい一実施形態において、ガス注入システム28は、ベンチュリシステムを具え、該システムにより、空気/ガス、反応性ガス及び/又はオゾンの微細バブル分散物が水の流れ18に注入され、水の流れ24が生成される。ベンチュリシステムの流入部は、高電圧反応チャンバー36の上流に配置され、1又は2種以上のこれらガスの微細バブルが、反応チャンバー36内の高電圧放電に取り入れられる。別の好ましい実施形態において、微細バブルは、組み込まれた流体力学キャビテーションシステムによって発生し、流体力学キャビテーションプロセスによって生じた微細バブルの高分散懸濁液が、反応チャンバー36内の反応ゾーンに導入される。第3の好ましい実施形態において、ベンチュリシステムと流体力学キャビテーションシステムは一緒に用いられる。両システムを用いると、最適化された反応動力学と活性種を発生させるための相乗作用的環境がもたらされる利点がある。第4の好ましい実施形態において、高電圧反応チャンバー36が複数の音響プローブ(sonicating probes)に連結されることにより、チャンバー36内の高電圧放電ゾーン内のその場で微細バブルを発生させることができ、相乗作用による反応効果が得られる。さらに、第5の好ましい実施形態において、1又は2種以上のこれらガスは、音響プローブによって発生される微細バブルと共に、ベンチュリを通して高電圧反応ゾーン中に導入される。微細バブルの導入は、当該分野で広く知られているこれらのシステム又はデバイス及び構成要素であれば何れを用いて行うことができる。空気の絶縁破壊強度(dielectric breakdown strength)は水よりも小さいため、微細バブルの導入は、プラズマ発生を補助する。プラズマ崩壊は空気中で開始されるので、空気中のイオン化電子はキャリーオーバとなり、水分子中で電子イオン化を開始する。
【0016】
反応チャンバー36は、密封された水密ハウジング35が、内側絶縁バリア層34aと外側接地シールド(ground shield)34bとによって取り囲まれ、遮蔽される。絶縁バリア34aは、非導電性層であり、地面に繋がれた導電性外側層であるグラウンド層34bへのアーク発生を防止するものである。絶縁バリア34aと接地シールド34bは、反応チャンバー36から放射する電磁干渉を低減する。反応チャンバー36が遮蔽されていないと、チャンバー36内で発生するプラズマにより、高感度電子装置が損傷を受ける虞れがある。高電圧発生器40内で発生した電圧がチャンバー36内の高電圧電極に送られると、反応チャンバー36内に配備された高電圧電極と接地電極がチャンバー36内にプラズマ放電を発生する。プラズマ放電を発生させるこれら構成要素は、当業者に広く知られている。反応チャンバー36、ハウジング35、さらには反応チャンバー36内の高電圧電極及び接地電極の形状及び構成は重要ではなく、既知のあらゆる形状及び構成を用いられることができる。また、反応チャンバー36内でプラズマ放電を発生させるために必要な別のアース(ground)48を、ハウジング35を取り囲む接地層34bと接触した状態で配備されることができる。高絶縁性高電圧ワイヤー38により、高電圧発生器40が反応チャンバー36内の高電圧電極に接続される。また、他の電子デバイス、金属構造又は人/操作者へのアーク放電を防止するために、ワイヤー38は高強度絶縁体で絶縁されることが好ましい。処理された水の流れ50は、反応チャンバー36を出て、サンプ54に戻される(特に、水システム12が冷却塔である場合)か、又は水システム12の中を通って再循環される他の構成要素又は配管に戻される。チャンバー36に入る水流れ24の入口カップリングと、チャンバー36から出る水流れ50の出口カップリングは、接地されるべきである。
【0017】
高電圧発生器40は、放電ステップ毎に、200kVを超える高周波高電圧放電を発生することができる。高電圧発生器40は、好ましくは、マルクスラダー(Marx ladder)又はマルクス発生器42が外側ハウジング43内のスパークギャップチャンバー41内に配備され、マルクスラダー42を周囲環境と絶縁すると共に、内部の構成要素から近傍金属構造、電気出口及び他の監視制御システムへのアーク放電を防止する絶縁バリアを含む。導電性の水の処理において従来の冷却塔又は閉ループシステムにおける場合と同様な効果を発揮するために、高電圧発生器40は、反応チャンバー36内の高電圧放電電極と接地電極との間に約5mmある電極ギャップに対して、200kVの電圧を出力できることが好ましい。当業者であれば、他の電極ギャップを用いられることは理解されるであろうが、約5mmのギャップ距離が好ましい。ギャップ距離が大きくなると、出力電圧を増大させる必要があり、高電圧発生器40における構成要素の故障等の付加的問題を引き起こす虞れがあるためであり、一方、ギャップ距離が小さくなると、プラズマ放電に曝される水量が減少するためである。
【0018】
好ましい一実施形態において、高電圧発生器40は、一般的な壁コンセントから110Vの出力を得て、40kVのDC信号を発生させる低電圧用ステージ1構成要素を具える。これは、ゼロボルトスイッチング回路によって達成され、フライバックトランスからの入力をパルス化するものである。トランスの巻き数を増加又は減少させることにより、フライバックトランスの出力電圧を変化させることができる。ゼロボルトスイッチドライバ回路を用いる利点は、ノイズ耐性(noise immunity)が高いという特徴を有し、パルス電力系において生じる電磁干渉に影響され難いことである。デジタル回路又は他の回路を用いることはできるが、これら回路は、ゼロボルトスイッチングドライバよりも、プラズマ反応チャンバー36によって発生する外部干渉に対する感受性が強い。電子部品を高電圧出力から保護するために、これは、別個のシールド体として構成される。低電圧用ステージ1構成要素からの信号は、並列に組み立てられたキャパシタを有するマルクス発生器42内のキャパシタバンクを充電するのに用いられる。キャパシタバンクが放電限界に達すると、放電電極と接地電極との間の端子電圧が200kVを超えるように、マルクスラダー内のスパークギャップ間に連鎖放電イベント(cascading discharge event)がトリガされる。
【0019】
空気を加圧又はブローする空気ポンプ44又は他のデバイスは、高電圧発生器40の中に組み込まれることが好ましいが、発生器40の外部に配備して、発生器40の中へ空気が流れるように適当な配管で接続することもできる。空気ポンプ44で空気をブローし、空気を高電圧発生器40の中を通過させて、マルクスラダー42の電極を急冷することにより、電極寿命を向上させる効果がある。空気は、空気ポンプ44により、勢いよく電極を通過し、スパークギャップチャンバー41から出て行く。スパークギャップチャンバー41で発生したオゾンガス30は、高電圧発生器40から取り出され、好ましくは再循環されて、水の流れ18の中へ噴射又は注入され、更なる水処理が行われる。マルクスラダーで発生したオゾンガスは、一般的には廃棄物として扱われるが、本発明では、水処理源として有益に用いられる。最も好ましくは、オゾンガス30は、ベンチュリを通り、反応チャンバー36への入口又はその近傍にて水の流れ18に導入される。これにより、水供給部へのオゾン導入が可能となり、また、微細バブルによって水の流れ18が曝気されて、フィード流れ24が形成される。
【0020】
処理システム10はまた、電力システム46と、水システムの構成要素を過剰の発生電圧から保護するための様々な保護デバイスとを具える。電力システム46は好ましくは、無停電電力供給源又は絶縁トランスを具え、水システム12が収納された建築物の電力供給源への一過性電圧スパイクの進入が低減される。これはまた、高電圧発生器40を、建築物及び水システム12の他の電子構成要素(例えば、別個の無停電電力供給源又は絶縁トランス60を有するセンサー16)と絶縁する。接地された金属構成要素56は、好ましくは、水システム12用の水リザーバ(例えば、冷却塔の場合はサンプ54)内に配置される。接地された金属構成要素56は、表面積が大きな金属片又はメッシュ片が望ましいが、他の形状及び構成が用いられてもよい。この接地された構成要素は、水を通しての電磁干渉を低減又は解消する。好ましくは、電磁干渉サプレッサ58が、水システム12の電子構成要素、特に、伝導度、温度及びpH等の水質を監視するのに用いられるあらゆるセンサー(例えば、センサー16)に接続されるか又はクランプされる。必要に応じて、例えば符号52で示される他の接地デバイスが、水システム12内の他のリザーバ又は配管に付加されることができるし、水システム12を処理システム10と接続することもできる。好ましい一実施形態において、接地デバイス52は、水システム内の水が流れるパイプの壁にネジが挿入され、長いワイヤーの一方の端部が前記ネジの頭部に接続されて前記パイプに数回巻き付けられており、他方の端部が地面に接続されている。当業者であれば、他の接地デバイス又は接地構造も同様に用いられることは理解されるであろう。一般的に、これらの接地デバイスは、例えばコーレータ(corrater)(腐食監視システム)、化学コントローラ、流れコントローラ、伝導度プローブ等の特定の種類の機器に配置されるか又はその近傍に配置される。大規模の水システムでは、2〜4個の接地デバイスが水システム全体に亘って間隔をあけて配置されることが多い。これらの接地デバイスは、水システム12の構成要素を保護すると共に、複数の接地点から獲得されたエネルギーがキャパシタ又はインダクタに保存されることができる。このエネルギーを利用して、低レベルのエネルギーフィールド(電磁的又は電気化学的)が発生され、これが水処理プロセスに更なる利益をもたらす。電磁場は、化学物質スケール形成の防止に用いられ、エレクトロポーレーション及びイオンサイクロトロン発振を誘導するのに用いられており、これらは抗菌特性を有することが示されている。電気化学反応は、局部的に高pHの領域と低pHの領域を発生させることができ、エレクトロポーレーションを誘導することもできる。これらはまた、エネルギーを保存しないで、水システム内の一部箇所に低レベル電磁場を発生させることもできる。例えば、水システム内のパイプの周りに巻き付けられた前記ワイヤーデバイスの場合、パルス(プラズマから)が地面に送られる毎に、電流がパイプの周囲のワイヤーループの中を流れる。このとき、その位置で、パイプを通って流れる水の中に磁場が発生する。
【0021】
処理システム10は好ましくは、タイマー又は他のコントローラデバイスを用いて稼働され、所定の間隔、好ましくは約15分間隔にて作動/作動停止を行うことにより、システム全体の加熱を低減し、効率を向上させることができる。システムの温度が上昇すると、マルクス発生器40内で浪費されるエネルギーが増えるため、放電ロス(charging losses)が多くなり、プラズマ発生に利用可能なエネルギーが減少する。システムの定期的停止中にシステムを冷却させることにより、放電ロスが減少し、効率が向上する。システムを定期的に作動/作動停止することにより、オゾンは一定間隔でスパークギャップチャンバーから送り出され、5mmを超える電極ギャップに対してもパルス化されたアーク放電が維持される。システムを安全に作動させるには、システムへの電力供給は、地絡遮断回路を有するスイッチボックス45を通して行う必要がある。デバイスから出る電流が、デバイスに入る電流と一致しない場合、この非常停止システムが始動する。
【0022】
以下の実施例は、本発明の様々な実施形態に係る処理システム10を試験したものである。
【実施例】
【0023】
<実施例1A:非保護システムへの直接放電>
第1の実験セットでは、試験用の冷却塔を用いた。この実験システムは
図1に示されるシステムに相当するもので、構成要素の符号は、
図1の参照符号を用いた。冷却塔(総容量100L)の水システム12に水を供給し、システムは水が循環するように設定した。水化学のモニタリングを優位制御システム(Advantage Control system)を用いて行ない、生物モニタリングを、2つのインハウス生物監視システムとChemTrak生物モニターを用いて行なった。これらのシステムは、大規模の業務用又は産業用冷却塔の運転において一般的に用いられるシステムであるか、又はそれに類似したシステムである。高電圧発生器システムを冷却塔中に組み込むために、熱交換器ラックから、機械式ボールバルブ及び12フィート長さで直径0.75インチの透明可撓性PVCチューブを介して、副流の流れ(流れ18)を引き出した。システムは、このバルブにより、処理される水の具体的組成に基づいて流動力学を変化させることができる。例えば、ベンチュリを通る流速を変えると、ガスバブルの水中への分布が変化し、高電圧放電電極で発生するプラズマの形態を変化させることができる。指向性高電圧放電を用いて生物学的制御を行うためのシステム全体の水処理に関しては、水量と流速が重要であるが、その理由は、処理の成功は、送達されるエネルギー量だけでなく、処理時間にも依存するからである。一般的なシステムでは、大量の水の中に細菌が絶えず増殖しているので、全処理時間(生物成分を含む水のカラムが高電圧放電と接触している全処理時間)を増やすために、システムの水の全量が高電圧放電ゾーンを通って繰り返し処理又は循環されるように、反応チャンバー36を通る流れを高流速にすることが重要である。
【0024】
この実験セットを試験用冷却塔に使用し、最大2gpmの副流の流れを得ることができる。この配管は、ポリエチレン製のネジ付きバーブ取付具を介して、プラズマチャンバー36に接続される。反応チャンバーの出口に5フィート長さの透明PVC管が取り付けられ、反応チャンバー(流れ50)を出た水がサンプ54の中に排出される。なお、前記好ましい実施形態において記載した接地点(例えば接地52及び56)は何れも配置されていない。反応チャンバー36は、高電圧発生器40に接続される。ユニットを作動させると、1cmの電極ギャップに対して、水中での電気伝導度が1500μmhoのパルス化されたスパーク放電が観察された。高電圧発生器40を作動させると直ちに、水システム12の流れ制御リレーがオンオフを開始し、水システム12への電力が遮断される。優位制御器内の電子機器が過負荷となってシステムが停止し、また、バイオモニタ(高電圧発生器40の場所とは他方側に配置される)の出力は過負荷となって遮断した。
図2A及び
図2Bは、この実施形態の試験においてプラズマユニットをオンにし、水の流れがある場合と水の流れが無い場合について、水中で測定された電磁場を示しており、電磁場は両方とも水の中を進む。水の流れがある場合(
図2A)、高い共振電磁パルスが、システムを循環する水に入り込んでいることが分かる。水の流れがない場合(
図2B)にも、高電圧放電の結果、測定可能な電磁場がまだ存在することが分かる。
【0025】
<実施例1B:保護されたシステムへの直接放電>
複数の接地保護システムを適所に配備して実施例1Aの実験を繰り返し行なった。接地は、システム全体の中で、サンプ54と配管の部分に(前述したネジとワイヤーの巻付けを使用し)行なった。
図3は、水中の電磁場に有意な低下があることを示している。複数の接地システムを用いると、高電圧放電システムは、水システム12の一部に用いられた電子制御及び監視装置に問題を生じることなく、数時間に亘って連続運転することが可能である。
【0026】
<実施例2:微生物除去のためのベンチ試験>]
水中での非熱プラズマ放電について、微生物の不活性化に対する有効性を調べるために、ベンチレベルで4つの研究を行なった。水中でのプラズマ放電により、活性酸素種、UV放射及び圧力場衝撃波を発生するが、これらは全て、微生物を不活性化し得ることが知られている。プラズマ放電は、溶液中の電場を、その破壊電圧よりも増大させることによって達成されることができる。破壊電圧は、溶液の伝導度及び誘電特性に依存する。システム中に入力エネルギーと微生物の対数減少との関係が存在することが観察された。大腸菌の1対数減少(D値として知られている)を達成するのに必要な入力エネルギーは、14J/Lから366J/Lを超えるまで変化し得ることも実証された。シュードモナス属の幾つかの種に関する実験については、1対数減少を達成するのに必要な平均入力エネルギーは85kJ/Lであることが報告されている。
【0027】
第1の実験セットにおいて、ロッド乃至シリンダー形状の電極を、1600mLの水(水道水800mLと蒸留水800mL)が入れられたビーカーの中に配置した。マルクス発生器から(非熱プラズマの電圧増幅器から)発生したオゾンを、1600mLの水(これも水道水800mLと蒸留水800mL)(ビーカー#2)が入れられた第2のビーカーの中に曝気した。これらの試験で大腸菌(E.coli)を用いたのは、大腸菌が指向性エネルギー法による不活性化に対する感受性が高いためである。水1600mLが入れられた前記各ビーカーについて、懸濁大腸菌の濃度が既知であるTSBス保存溶液2mLを用いて、水が充填された前記各ビーカーを接種し、最終大腸菌濃度を4.65×10
6cfu/mL(試験#1)と4.50×10
6cfu/mLにした。プラズマのみのビーカー試験(ビーカー#1)については、シリンダー状電極の直径を、1/4インチ(アーク放電を発生させた)から1インチのサイズにまで増大させて、パルスコロナを放電中に発生させた。この試験の目的は、アーク放電(より多くのエネルギーをシステム中に放出するので、好ましい)とパルスコロナのどちらが最も大きな生物学的不活性化をもたらすかを決めることである。
【0028】
オゾン処理のみのビーカーに関して、マルクス発生器チャンバーからオゾンを押し出し、エアストーンを用いてビーカー中にバブリングした。実験中、サンプル25mLを、0分、2分、4分、10分、20分及び30分後に各ビーカーから独立して採取し、バイオアッセイにてcfu/mLを求めた。パルスコロナ放電プラズマのみの試験結果を、表1に試験#1として示す。
【0029】
第2の実験は、曝気したオゾンと共にロッド乃至シリンダー形状の電極を、1600mLの水(水道水800mLと蒸留水800mL)が入れられた1個のビーカーの中に配置した(試験#2)。この試験2では、懸濁大腸菌の濃度が既知であるTSB保存溶液2mLを用いて、水が充填された前記ビーカーを接種し、最終大腸菌濃度を6.10×10
6cfu/mLにした。シリンダー状電極直径は1/4インチであり、放電中の溶液にパルススパーク(パルスアーク放電)が発生し、マルクス発生器によって発生したオゾンは電極の下のビーカー中にバブリングした。実験中、サンプル25mLを、0分、10分、30分、45分及び60分後に各ビーカーから独立して採取し、バイオアッセイにてcfu/mLを求めた。試験結果を、表1に試験#2として示す。
【0030】
第3の実験は、ロッド乃至シリンダー形状の電極を、1600mLの水(水道水800mLと蒸留水800mL)が入れられたビーカーの中に配置した(試験#3)。マルクス発生器から(非熱プラズマの電圧増幅器から)発生したオゾンを、1600mLの水(これも水道水800mLと蒸留水800mL)が入れられた第2のビーカーの中に曝気した。この研究で大腸菌(E.coli)を用いたのは、大腸菌が指向性エネルギー法による不活性化に対する感受性が高いためである。水1600mLが入れられた前記各ビーカーについて、懸濁大腸菌の濃度が既知であるTSBス保存溶液2mLを用いて、水が充填された前記各ビーカーを接種し、最終大腸菌濃度を3.05×10
6cfu/mL(試験#1)と3.40×10
6cfu/mLにした。第2の実験と同様、放電中の溶液にパルススパーク(パルスアーク放電)が発生するように、シリンダー状電極の直径は1/4インチとした。オゾン処理のみのビーカーに関して、マルクス発生器チャンバーからオゾンを押し出し、エアストーンを用いてビーカー中にバブリングした。実験中、サンプル25mLを、0分、10分、15分、30分及び45分後に各ビーカーから独立して採取し、バイオアッセイにてcfu/mLを求めた。試験結果を、表1に試験#3として示す。
【0031】
第4の実験は、曝気したオゾンと共にロッド乃至シリンダー形状の電極を、2000mLの水(水道水1000mLと蒸留水1000mL)が入れられた1個のビーカーの中に配置した(試験#4)。この試験では、懸濁シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)の濃度が既知であるTSB保存溶液2mLを用いて、水が充填された前記ビーカーを接種し、最終シュードモナス・プチダ濃度を7.00×10
7cfu/mLにした。第1の実験と異なり、放電中の溶液にパルススパーク(パルスアーク放電)が発生するようにシリンダー状電極直径を小さくし、マルクス発生器によって発生したオゾンは電極の下のビーカー中にバブリングした。実験中、サンプル25mLを、0分、15分、30分、45分及び60分後に採取し、バイオアッセイにてcfu/mLを求めた。試験結果を、表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
図4に示される本発明のシステム及び方法の好ましい実施形態を用いて、実地試験を行なった。この実地試験の目的は、プラズマ水処理システム110を冷却塔水システム112内に設置し、酸化性殺生物剤を用いて水中の微生物群を制御することである。冷却塔水システム112は、全容量が1400ガロンであり、地方大学の管理棟外部の道路に設置されている。水の流れと伝導度を監視する制御ユニット115を用いて、システムのブローダウン及び化学剤のサンプ154への供給を制御した。このユニットは、水伝導度を900μmho〜1500μmhoの範囲に維持する。プラズマ処理システム110は、高電圧発生器140とプラズマ反応チャンバー136を具える。高電圧発生器は、マルクスラダー又はマルクス発生器42を具え、これらは、絶縁バリアを含む外側ハウジング43内のスパークギャップチャンバー41内に配備される。オゾンガス流れ130は、スパークギャップチャンバー141から引き出され、ベンチュリ121を介して水流れ114の入口に注入される。この試験で最初に用いられなかった空気122及び/又は反応性ガス126は、微細バブル発生器又は同様なデバイス120を通じて水流れに注入されることができる。ティー、混合器又は同様な接続具129を用いて、微細バブル発生器120からの空気及び/又は反応性ガスの微細バブルを、流れ124(オゾンを含有する)に注入し、流れ124は、反応チャンバー136の中へ入る。反応チャンバー136は、密封された水密ハウジング135が、内側絶縁バリア層134aと外側接地シールド134bとによって取り囲まれ、遮蔽されている。絶縁バリア34aは、非導電性層であり、地面に繋がれた導電性外側層であるグラウンド層34bへのアーク発生を防止するものである。高電圧発生器140内で発生した電圧がチャンバー136内の高電圧電極に送られると、反応チャンバー136内に配備された高電圧電極と接地電極がチャンバー136内にプラズマ放電を発生する。別のアース148を、ハウジング135を取り囲む接地層134bと接触した状態で配備されることができる。この実地試験では、反応チャンバー136は、水システム112の既存の水ラインに直接配管される。反応器入口129は、冷却塔サンプ154から水を引き出すポンプ113の高圧力側の水ライン114に接続される。ポンプ113と反応器136の間のラインに挿入されたベンチュリ121を用いて、マルクスラダー142によって発生したオゾンガス130が、処理される水の中に導入される。反応チャンバー136から出た処理済みの水150は、冷却装置(chiller)の出力側に戻され、冷却塔の中で循環される。
【0034】
システム110が最初に設置されたとき、
図1及び処理システム10に関連して記載した推奨される予防措置又は保護手段はいずれも配置されていない。システム110は主制御システムに接近して設置され、接地されておらず、制御ユニットのシールドは無く、センサーリードの周りにはEMI抑制のためのフェライトビーズも無い。高電圧発生器140のプラグは、壁の主電気コンセントの中に直接差し込まれている。
【0035】
プロセスの開始に際しては、水の流れ114が反応チャンバー136に導入され、高電圧システム140を作動させる。水を通して電磁フィードバックが行われると直ちに、水システム112の伝導度メータは6000μmhoに急上昇し、水システム112は即座にブローダウンモードとなり、水はドレン(drain)に放出される。
図1のシステム10に示された1又は2以上の保護手段がなければ、冷却用システム内で高電圧放電システムを有効に作動させることはできないであろう。
【0036】
システム110及び112の構成は、水制御ユニット170(水システム112の様々な構成要素を制御するのに用いられる)がハウジング172内で分離され、フェライトビーズ158を伝導度センサー116に繋がるワイヤーの周囲でクランプすることによって再構成した。システム110の作動中、システム制御ユニット170はハウジング172に取り囲まれているが、保守のために、開閉可能なドア又は取外し可能なカバーを通じて内部にアクセスすることができる。ハウジング172は好ましくは金属製のボックスであるが、例えばプラスチック、コンクリート、金属プラスチック複合体等のような他のシールド材料を用いることもできる。高電圧発生器140を、制御器とは反対側の場所に移動させ(約12フィート、好ましくは少なくとも6フィート離間させる)、電力供給源146をメインとの直接接続から、UPS経由に切り替えた。冷却塔のサンプ154も、戻り(処理済み)水ライン150が148により接地されたと同じように、接地156された。システム110が作動した場合、制御システム170又はセンサー116には悪影響はなく、冷却塔システム112を正常に作動させることができる。
【0037】
この構成を使用し、殺生物剤を添加することなく水処理システム110を6か月間作動させた。プロセス中、マルクスラダー142内に発生したオゾンガス130を、反応チャンバー136に入る水の中へ導入した。これにより、高電圧電極表面に、微細バブルの流れが生成された。水の伝導度が約900μmhoと低い場合、プラズマ放電を発生させるのに十分であるが、濃度サイクル数の増加と共に伝導度も上昇するので、この場合は反応チャンバーにプラズマ放電を発生させるのに適当でない。追加の空気122が反応チャンバーに導入されると、接地電極と高電圧放電電極との間により強固なエアカーテンが形成され、伝導度が1500μmho
を超える
水中にプラズ
マを発生させることができる。伝導度が予め設定された閾値(通常は約1500μmho)に達すると、冷却塔又は他の水システムはブローダウンモードに入り、高伝導度の水はドレンに排出され、新しい水(通常は水道水の新鮮な水であるが、伝導度が低い他の水源を用いることもできる)と交換される。
【0038】
図5に示されるプラズマ処理システム210の他の好ましい実施形態について、第2の実地治験を行なった。システム210を設置して、2200ガロンのステンレス鋼/亜鉛めっき冷却塔水システム212を処理した。このシステムを設置している間、高電圧発生器240とプラズマ反応器チャンバー236は、ハウジング260内にシールドされ、水システム212の水制御ユニット270及びセンサー216から離れた外壁上に配置されている。ハウジング260は、好ましくは、水制御ユニット270及びセンサー216から少なくとも6フィート離間している。ハウジング260は、好ましくは金属製であるが、例えばプラスチック、金属プラスチック複合体等のような他の材料を用いることもできる。運転中、ハウジング260はシステム210を被包しているが、内部の保守を行なうことができるように、開閉可能なドア又は取外し可能なカバーを通じて内部にアクセスすることができる。ハウジング260が用いられる場合、制御ユニット170をハウジング(例えば、システム110で用いられたハウジング172)で取り囲む必要はないが、そのようなハウジングは制御ユニットのさらなる保護のために用いられることができる。接地256されているサンプ254の中にポンプ213が直接入れられており、該ポンプを213を用いて、サンプ254から水214がプラズマ反応器の中を循環される。高電圧発生器240は、電力供給源246としての主電気コンセントに直接接続されるが、コンセントは独自のブレーカー回路にある。この構成では、システム210は、水システム212の作動を妨げるいかなる電気的又はEMI問題もなく6か月間連続して作動することができた(なお、この時は、冬期で冷却システムを停止したが、冷却が必要とされた場合は、本発明のこの実施形態を用いてさらに長期間作動することができたものと考えられる)。
【0039】
サンプ内に配置され表面積が大きな金属又はメッシュの接地片(56と同様なもの)等の保護手段、電磁干渉サプレッサ(例えば58)、接地されたワイヤーが巻き付けられたパイプセグメント又はフェライトビーズ(例えば52、158又は258)、高電圧発生器及びプラズマ反応チャンバーの周りにある保護ハウジング(例えば260)、水制御ユニット(例えば172)の周りにて、高電圧供給源及び反応チャンバーを水制御ユニット及びセンサーから十分な距離を離間させて配置する保護ハウジング、高電圧発生器専用の電力供給源(例えば、そのブレーカー回路のコンセント又はUPS又は絶縁トランス等)、水制御ユニット又はセンサー専用の電力供給源(例えば、別個のUPS又は絶縁トランス等)の一部又は全部との任意の組合せを、本発明に係る任意の処理システムと共に用いることにより、水システム構成要素をあらゆる干渉又は損傷から保護すると共に、処理システムを長期間に亘って連続作動させることができる。
接地デバイスの任意の組合せもまた、本発明に係る任意の処理システムと共に用いられることができ、処理システムが発生する過剰エネルギーを獲得し(及びキャパシタ又はインダクタを用いて保存し)、低レベルのエネルギー場(電磁気的又は電気化学的)を発生させることにより、水処理プロセスに更なる利益がもたらされる。
【0040】
本明細書中における水システムという語は、微生物種の増殖を制御又は除去するための定期的処理を必要とする産業用、商業用及び住居用のあらゆる種類の流水システムを含むものとする。水システムを通って流れる水には、汚染物質、化学的処理剤又は生物的処理剤が含まれる。図面に表される構成要素は、本発明に係る処理システム及び当該処理システムが用いられる水システムの好ましい実施形態において用いられるものを説明するためのものであって、必ずしも縮尺とおりには描かれていない。また、図に表された水システムの幾つかの構成要素は、水システム及び本発明のシステムの他の構成要素に関して、図に表された位置とは異なる位置にあってもよい。当業者であれば、本明細書を読むことにより、本発明の範囲内で、水システムの構成要素を保護しつつ流水をプラズマ放電及びオゾンで処理するシステム及び方法に変形及び改変を加えることができるであろう。それゆえ、本明細書に開示された本発明の範囲は、発明者らが法的権利を有する添付の特許請求の範囲における最も広い解釈によってのみ限定されるものとする。