(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
厚み方向開度がa(mm)であるダイスリット部を備える押出機にてスチレン系樹脂を含む樹脂組成物を加熱溶融し、さらに発泡剤を配合した発泡性溶融物を前記ダイスリット部から低圧域に押出発泡して板状に成形する、密度が20kg/m3以上45kg/m3以下、独立気泡率が90%以上、厚みA(mm)が10mm以上150mm以下であるスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法であって、
前記発泡剤がハイドロフルオロオレフィンと他の有機発泡剤とを含み、
前記ダイスリット部の厚み方向開度aと前記スチレン系樹脂押出発泡体の厚みAとの厚み拡大比A/aを5以上15以下とし、かつ、
前記ダイスリット部の温度を70〜90℃の範囲とし、前記ダイスリット部から押出される直前の前記発泡性溶融物を4.5MPa以上10.0MPa以下に加圧することを特徴とする、スチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
前記ハイドロフルオロオレフィンの配合量が、前記スチレン系樹脂100gに対して0.030mol以上0.125mol以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
前記ハイドロフルオロオレフィンの配合量が、前記スチレン系樹脂100gに対して0.040mol以上0.105mol以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
前記ハイドロフルオロオレフィンと前記他の有機発泡剤との合計配合量が、前記スチレン系樹脂100gに対して0.105mol以上0.300mol以下である請求項1〜8のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
前記樹脂組成物が、前記スチレン系樹脂100重量部に対して難燃剤0.5重量部以上8.0重量部以下を配合した樹脂組成物である請求項1〜9のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
前記難燃剤が臭素系難燃剤であり、前記臭素系難燃剤の配合量が、前記スチレン系樹脂100重量部に対して0.5重量部以上6.0重量部以下である請求項10に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
前記熱線輻射抑制剤がグラファイト、酸化チタン及び硫酸バリウムよりなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項12に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、本実施の形態は本発明の一部にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で本実施形態を適宜変更できることはいうまでもない。
【0014】
本発明のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法は、スチレン系樹脂を含む樹脂組成物を原料とし、オゾン破壊係数が極めて小さく、地球温暖化係数が非常に小さいハイドロフルオロオレフィンと他の有機発泡剤とを含む発泡剤を用いて押出発泡を行なう方法である。
【0015】
本発明の製造方法は、例えば、押出機にスチレン系樹脂を含む樹脂組成物(以下、「スチレン系樹脂組成物」という。)を供給して加熱溶融し、これにハイドロフルオロオレフィンと他の有機発泡剤とを含む発泡剤を配合して発泡性溶融物とし、この発泡性溶融物を押出機に備え付けられたダイスリット部(口金)から押出機内部よりも低圧域に押出して発泡させ、成形することにより行なわれる。
【0016】
本発明では、所定の特性を有するスチレン系樹脂押出発泡体を得るために、該発泡体の厚みをA(mm)、押出機に備え付けられているダイスリット部(口金)の出口の厚み方向開度をa(mm)とした場合に、前記Aと前記aとの比である厚み拡大比A/a及び発泡性溶融物をダイスリット部から押出発泡する直前に該発泡性溶融物に負荷される発泡圧力(以下、特に断らない限り単に「発泡圧力」ということがある。)を所定の範囲とすることを特徴とする。
【0017】
厚み拡大比A/aは18以下であり、目的とする各特性を有するスチレン系樹脂押出発泡体を安定的に量産するという観点等から、好ましくは3以上18以下、より好ましくは4以上15以下、さらに好ましくは5以上10以下である。厚み拡大比A/aが18を超えると、得られるスチレン系樹脂押出発泡体の表面が波立ち、その表面平滑性が損なわれ、断熱材や緩衝材としての使用が制限されるおそれがある。また、厚み拡大比A/aが3未満では、得られるスチレン系樹脂押出発泡体の表面にスポット孔が発生し易くなる傾向が生じ、その外観性が幾分損なわれる場合が生じるおそれがある。
【0018】
発泡圧力は4.5MPa以上10.0MPa以下であり、目的とする各特性を有するスチレン系樹脂押出発泡体を安定的に量産するという観点等から、好ましくは4.5MPa以上8.0MPa以下である。発泡圧力が4.5MPa未満では、スチレン系樹脂押出発泡体表面にスポット孔が多数発生してその外観が悪くなったり、場合によっては成形不良が起こったりするおそれがある。発泡圧力が10.0MPaを超えると、スチレン系樹脂押出発泡体の表面に波打ちが発生してその外観が悪くなると共に、該発泡体を断熱材等として使用するために表面の切削加工等の余分な作業が必要になるおそれがある。
【0019】
本発明の製造方法において、厚み拡大比A/aは18以下であり、かつ、発泡圧力は4.5MPa以上10.0MPa以下であるが、厚み拡大比A/aの範囲は18以下から3以上18以下、4以上15以下又は5以上10以下に変更でき、及び/又は、発泡圧力の範囲を4.5MPa以上10.0MPa以下から4.5MPa以上8.0MPa以下に変更できる。
【0020】
本発明の製造方法により得られるスチレン系樹脂押出発泡体は、厚みが10mm以上150mm以下の板状であり、密度20kg/m
3以上45kg/m
3以下且つ独立気泡率90%以上と軽量且つ高断熱性であり、難燃性に優れ、表面にスポット孔や波打ちの発生がないことから外観性に優れ、例えば、住宅、建築物等の各種構造物や各種家具類の断熱材、緩衝材等として有用である。
【0021】
以下、本発明の製造方法について、原料として用いるスチレン系樹脂組成物、発泡剤及び押出発泡法の順にさらに詳しく説明する。
【0022】
[スチレン系樹脂組成物]
スチレン系樹脂組成物に含まれるスチレン系樹脂としては、特に限定はなく、例えば、スチレン系単量体の単独重合体(x)、2種以上のスチレン系単量体の共重合体(y)、スチレン系単量体とそれに共重合可能なスチレン系単量体以外の単量体(以下単に「他の単量体」という。)との共重合体(z)よりなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等のスチレン化合物が挙げられ、1種又は2種以上を使用できる。他の単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ブタジエン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられ、1種又は2種以上を使用できる。前記他の単量体、特にアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等は、製造されるスチレン系樹脂押出発泡体の圧縮強度等の物性を低下させない程度の量を用いることができる。また、本発明で用いるスチレン系樹脂は、前記単独重合体(x)、共重合体(y)及び共重合体(z)に限られず、前記スチレン系単量体の単独重合体(x)、共重合体(y)及び共重合体(z)から選ばれる少なくとも1種と、前記他の単量体の単独重合体及び/又は共重合体とのブレンド物であってもよく、ジエン系ゴム強化ポリスチレンやアクリル系ゴム強化ポリスチレンとのブレンド物であってもよい。更に、本発明で用いるスチレン系樹脂は、メルトフローレート(以下、「MFR」という。)、成形加工時の溶融粘度、溶融張力等を調整する目的で、分岐構造を有するスチレン系樹脂であってもよい。
【0023】
本発明におけるスチレン系樹脂としては、MFRが0.1〜50g/10分のものを用いることが、押出発泡成形する際の成形加工性に優れ、成形加工時の発泡性溶融物のダイスリット部からの吐出量、得られるスチレン系樹脂押出発泡体の厚みや幅、見掛け密度又は独立気泡率を所望の値に調整しやすく、発泡性(発泡体の厚みや幅、見掛け密度、独立気泡率、表面性等を所望の値又は状態に調整しやすいほど、発泡性が良い)、外観等に優れたスチレン系樹脂押出発泡体が得られると共に、圧縮強度、曲げ強度又は曲げたわみ量といった機械的強度や、靱性等の特性のバランスがとれた、スチレン系樹脂押出発泡体が得られる点から、好ましい。更に、スチレン系樹脂のMFRは、成形加工性及び発泡性に対する機械的強度、靱性等のバランスの点から、0.3〜30g/10分が更に好ましく、0.5〜25g/10分が特に好ましい。なお、本発明において、MFRは、JIS K7210(1999年)のA法、試験条件Hにより測定される。
【0024】
本発明では、前記したスチレン系樹脂のなかでも、経済性・加工性の面からスチレン系単量体の単独重合体(x)が好ましく、ポリスチレン樹脂が特に好適である。また、スチレン系樹脂押出発泡体に、より高い耐熱性が要求される場合には、スチレン系単量体と他の単量体との共重合体(z)が好ましく、スチレン−アクリロニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸共重合ポリスチレン、無水マレイン酸変性ポリスチレンがより好ましい。また、スチレン系樹脂押出発泡体に、より高い耐衝撃性が求められる場合には、ゴム強化ポリスチレンを用いることが好ましい。これらスチレン系樹脂は、単独で使用してもよく、また、共重合成分、分子量や分子量分布、分岐構造、MFR等の異なるスチレン系樹脂を2種以上混合して使用してもよい。
【0025】
スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂以外の任意成分として、難燃剤、難燃助剤、難燃剤の安定剤、熱線輻射抑制剤(以下、「輻射抑制剤」ということがある。)、樹脂添加剤等を含むことができる。なお、スチレン系樹脂組成物の中でも、難燃剤を含むスチレン系樹脂組成物が好ましく、難燃剤と難燃助剤及び/又は難燃剤の安定剤とを含むスチレン系樹脂組成物がより好ましく、難燃剤と難燃助剤及び/又は難燃剤の安定剤と輻射抑制剤とを含むスチレン系樹脂組成物がさらに好ましい。
【0026】
難燃剤としては特に限定されず、各種樹脂用難燃剤を使用できるが、臭素系難燃剤を好ましく使用できる。臭素系難燃剤の具体的な例としては、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピル)エーテル、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテル、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートや、臭素化スチレン−ブタジエンブロックコポリマーのような脂肪族臭素含有ポリマーが挙げられる。これらのうち、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2、3−ジブロモ−2−メチルプロピル)エーテル及びテトラブロモビスフェノールA−ビス(2、3−ジブロモプロピル)エーテルからなる混合臭素系難燃剤、臭素化スチレン−ブタジエンブロックコポリマーが、押出運転が良好であり、発泡体の耐熱性に悪影響を及ぼさない等の理由から、望ましく用いられる。難燃剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0027】
スチレン系樹脂組成物における難燃剤の配合量は特に限定されないが、例えば、スチレン系樹脂100重量部に対して難燃剤を0.5重量部以上8.0重量部以下含むことにより、得られるスチレン系樹脂押出発泡体に優れた難燃性を付与することができる。難燃剤の配合量が0.5重量部未満では、難燃性等のスチレン系樹脂押出発泡体としての良好な諸特性が得られがたい傾向があり、一方、難燃剤の配合量が8.0重量部を超えると、スチレン系樹脂押出発泡体製造時の安定性、表面性等を損なう場合がある。但し、難燃剤の配合量は、JIS A9511 測定方法Aに規定される難燃性が得られるように、発泡剤配合量、スチレン系樹脂押出発泡体の見掛け密度、難燃相乗効果を有する難燃助剤や難燃剤の安定剤等の種類や配合量等に合わせて、適宜調整されることがより好ましい。
【0028】
また、難燃剤が臭素系難燃剤である場合、スチレン系樹脂組成物における臭素系難燃剤の配合量は、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上6.0重量部以下が好ましく、1.0重量部以上5.0重量部以下がより好ましく、1.5重量部以上4.0重量部以下が更に好ましい。臭素系難燃剤の配合量が0.5重量部未満では、難燃性等のスチレン系樹脂押出発泡体としての良好な諸特性が得られがたい傾向があり、一方、6.0重量部を超えると、スチレン系樹脂押出発泡体製造時の安定性、表面性等を損なう場合がある。
【0029】
難燃助剤は、例えばスチレン系樹脂押出発泡体の難燃性をさらに向上させる目的で、難燃剤と共に用いることができる。難燃助剤としては、例えば、ラジカル発生剤、リン系難燃剤等が挙げられる。
【0030】
ラジカル発生剤としては特に限定されず、例えば、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、ポリ−1,4−ジイソプロピルベンゼン、2,3−ジエチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、3,4−ジエチル−3,4−ジフェニルヘキサン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジフェニル−4−エチル−1−ペンテン等が挙げられる。ジクミルパーオキサイドの様な過酸化物も用いられる。その中でも、樹脂加工温度条件にて、安定なものが好ましく、具体的には2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン及びポリ−1,4−ジイソプロピルベンゼンが好ましい。スチレン系樹脂組成物におけるラジカル発生剤の配合量は、スチレン系樹脂100重量部に対して0.05重量部以上0.5重量部以下が好ましい。
【0031】
リン系難燃剤は、スチレン系樹脂押出発泡体の熱安定性能を損なわない範囲で用いられる。リン系難燃剤としては、リン酸エステル及びホスフィンオキシド等が挙げられ、これらを併用することもできる。リン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、縮合リン酸エステル等が挙げられ、特にトリフェニルホフェートが好ましい。ホスフィンオキシド型のリン系難燃剤としては、トリフェニルホスフィンオキシドが好ましい。リン酸エステル及びホスフィンオキシドはそれぞれ1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用でき、また両者を併用してもよい。スチレン系樹脂組成物におけるリン系難燃剤の配合量は、スチレン系樹脂100重量部に対して0.1重量部以上2重量部以下が好ましい。
【0032】
難燃剤の安定剤は、例えば、スチレン系樹脂押出発泡体の難燃性を低下させることなく、かつ、該発泡体の熱安定性を向上させることができる。難燃剤の安定剤としては特に限定されるものではないが、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂のようなエポキシ化合物;ジペンタエリスリトールとアジピン酸との部分エステル(ジペンタエリスリトール−アジピン酸反応混合物)及びジペンタエリスリトールと多価アルコールとの反応物のような多価アルコールエステル;トリエチレングリコール−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル 3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナートのようなフェノール系安定剤;3,9−ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、及びテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト)のようなホスファイト系安定剤;等が挙げられる。難燃剤の安定剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0033】
輻射抑制剤は、近赤外又は赤外領域(例えば、800〜3000nm程度の波長域)の光を反射・散乱・吸収する特性を有する物質をいう。輻射抑制剤を配合することにより、断熱性が一層向上したスチレン系樹脂押出発泡体が得られる。輻射抑制剤としては前述の特性を有する物質であれば特に限定されず、例えば、グラファイトや、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化アンチモン等の白色系無機粒子等が挙げられる。これらの中でも、熱線輻射抑制効果が大きい観点から、グラファイト、酸化チタン、硫酸バリウムが好ましく、グラファイト、酸化チタンがより好ましく、グラファイトがさらに好ましい。輻射抑制剤は単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
【0034】
スチレン系樹脂組成物における輻射抑制剤の配合量は、スチレン系樹脂100重量部に対して、1.0重量部以上6.0重量部以下が好ましく、2.0重量部以上5.0重量部以下がより好ましい。輻射抑制剤の含有量が1.0重量部未満では、断熱性向上が得られ難い傾向があり、一方、6.0重量部超では、押出安定性・成形性が劣ったり、燃焼性が損なわれたりする傾向がある。
【0035】
樹脂添加剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で用いられる。樹脂添加剤としては特に限定されず、例えば、シリカ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無機化合物、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、ステアリルアミド系化合物等の加工助剤、フェノール系抗酸化剤、リン系安定剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類等の耐光性安定剤、前記以外の難燃剤、帯電防止剤、顔料等の着色剤等が挙げられる。樹脂添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0036】
スチレン系樹脂に各種任意成分を添加するタイミングや混練時間は特に限定されないが、例えば、スチレン系樹脂に対して各種任意成分を添加して乾式又は湿式で混合した後、押出機に供給して加熱溶融し、更に発泡剤を配合して混合する手順が挙げられる。
【0037】
本発明で使用するスチレン系樹脂組成物としては、下記に示す第1〜第5実施形態のスチレン系樹脂組成物が好ましい。
第1実施形態のスチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂100重量部に対して、好ましくは、難燃剤0.5〜8.0重量部を含む。また、難燃剤が臭素系難燃剤である場合、第1実施形態のスチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂100重量部に対して、臭素系難燃剤0.5〜6.0重量部、1.0〜5.0重量部又は1.5〜4.0重量部を含む。
【0038】
第2実施形態のスチレン系樹脂組成物は、第1実施形態のスチレン系樹脂組成物に、ラジカル発生剤及びリン系難燃剤から選ばれる少なくとも1種の難燃助剤を更に添加したものであり、難燃剤の配合量は第1実施形態のスチレン系樹脂組成物と同じであり、ラジカル発生剤の配合量はスチレン系樹脂100重量部に対して0.05〜0.5重量部であり、リン系難燃剤の配合量はスチレン系樹脂100重量部に対して0.1〜2重量部である。
【0039】
第3実施形態のスチレン系樹脂組成物は、第2実施形態のスチレン系樹脂組成物に輻射抑制剤を更に添加したものであり、難燃剤、並びにラジカル発生剤及びリン系難燃剤から選ばれる少なくとも1種の難燃助剤の配合量は第2実施形態のスチレン系樹脂組成物と同じであり、輻射抑制剤の配合量はスチレン系樹脂100重量部に対して1.0〜6.0重量部又は2.0〜5.0重量部である。
【0040】
第4実施形態のスチレン系樹脂組成物は、第3実施形態のスチレン系樹脂組成物に吸水性物質を更に添加したものである。吸水性物質は、後述するように、他の有機発泡剤としてアルコール類を用いる場合及び/又は無機発泡剤として水を用いる場合に、添加される。第4実施形態のスチレン系樹脂組成物において、難燃剤、ラジカル発生剤及びリン系難燃剤から選ばれる少なくとも1種の難燃助剤、並びに輻射抑制剤の配合量は第3実施形態のスチレン系樹脂組成物と同じであり、吸水性物質の配合量は、スチレン系樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部又は0.1〜3重量部である。
【0041】
第5実施形態のスチレン系樹脂組成物は、第1〜第4実施形態のスチレン系樹脂組成物に、難燃剤の安定剤、樹脂添加剤、又は難燃剤の安定剤と樹脂添加剤との両方を更に添加したものである。難燃剤の安定剤や樹脂添加剤の配合量は、スチレン系樹脂の種類、併用される難燃剤、難燃助剤、輻射抑制剤、吸水性物質等の種類や配合量、得ようとするスチレン系樹脂押出発泡体の各種物性等に応じて広い範囲から適宜選択できる。
【0042】
[発泡剤]
次に、本発明で用いる発泡剤について説明する。該発泡剤は、HFOと特定の有機発泡剤とを含む。HFOは、オゾン破壊係数がゼロか極めて小さいものであり、地球温暖化係数が非常に小さく、環境に影響を及ぼしにくい発泡剤である。しかも、HFOは、気体状態の熱伝導率が低く、かつ難燃性であることから、スチレン系樹脂押発泡体の発泡剤として用いることにより、スチレン系樹脂押出発泡体の断熱性及び難燃性をさらに向上させることができる。
【0043】
HFOとしては、例えば、テトラフルオロプロペン類が挙げられる。テトラフルオロプロペン類の具体例としては、例えば、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(トランスHFO−1234ze)、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(シスHFO−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)等が挙げられる。これらのテトラフルオロプロペン類は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
なお、HFOを発泡剤とする従来のスチレン系樹脂の押出発泡では、スチレン系樹脂に対する溶解度が比較的高く、スチレン系樹脂との相溶性が高いHFOが用いられ、さらにその中でも、発泡体中から逸散し易い反面、スチレン系樹脂に多く添加でき、発泡剤としての発泡能力に優れるHFOがさらに好ましく用いられ、それにより、発泡倍率の高いスチレン系樹脂押出発泡体が得られていた。
【0045】
一方、スチレン系樹脂に対する溶解度及びスチレン系樹脂との相溶性が低いHFOであるテトラフルオロプロペン類(HFO−1234ze,HFO−1234yf等)を用いて高発泡倍率のスチレン系樹脂押出発泡体を得るために、テトラフルオロプロペン類を多量に配合する必要があるが、そうすると、押出発泡時にテトラフルオロプロペン類が発泡性溶融物から分離し、得られるスチレン系樹脂押出発泡体表面に局所的に大きく凹んだスポット孔が発生し、該発泡体の外観が悪化するおそれがある。また、厚みの大きい該発泡体を製造する場合には、独立気泡率が低下して長期断熱性が低下するおそれがある。
【0046】
しかし、本発明では、HFOとしてテトラフルオロプロペン類を用いた場合でも、テトラフルオロプロペン類と特定の有機発泡剤とを併用すると共に、上記した厚み拡大比A/a及び発泡圧力をそれぞれ所定の範囲に調整することにより、高発泡倍率で長期断熱性に優れつつ、表面にスポット孔や波打ちのない優れた外観を有するスチレン系樹脂押出発泡体を得ることができる。
【0047】
HFOの配合量は、スチレン系樹脂100gに対して好ましくは0.030mol以上0.125mol以下、より好ましくは0.035mol以上0.115mol以下、さらに好ましくは0.040mol以上0.105mol以下、特に好ましくは0.045mol以上0.090mol以下である。HFOの配合量がスチレン系樹脂100gに対して0.030molより少ない場合には、HFOによる断熱性の向上効果が不十分になる傾向がある。一方、HFOの配合量がスチレン系樹脂100gに対して0.125molを超える場合には、押出発泡時にHFOが発泡性溶融物から分離して、得られるスチレン系樹脂押出発泡体表面にスポット孔が発生したり、該発泡体の独立気泡率が低下して断熱性に影響を及ぼしたりする傾向がある。
【0048】
HFOと併用される有機発泡剤としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン(2−メチルプロパン)、シクロペンタン等の炭素数3〜5の飽和炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル類、塩化メチル、塩化エチル等の塩化アルキル、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、アリールアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール等のアルコール類、ケトン類、エステル類等が挙げられる。これらの中でも、燃焼性やスチレン系樹脂押出発泡体からの散逸性等の観点から、ポリスチレン透過率が0.5×10
−10cc・cm/cm
2・s・cmHg以上であるものが好ましく、ポリスチレン透過率が1.0×10
−10cc・cm/cm
2・s・cmHg以上であるものがより好ましく、且つ、ポリスチレン透過率が0.5×10
−10cc・cm/cm
2・s・cmHg未満である発泡剤を含まないものがさらに好ましい。これらの有機発泡剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0049】
前記のような有機発泡剤は、スチレン系樹脂の可塑化効果が高く、スチレン系樹脂、発泡剤、難燃剤やその他の任意成分を含む発泡性溶融物を適正な粘度にて発泡させ、所望のスチレン系樹脂押出発泡体を得るために必要である。一方、前記したようにポリスチレン透過率が高く、スチレン系樹脂押出発泡体とした後に速やかに散逸する有機発泡剤を選択することで、該押出発泡体を製造する際に優れた加工性、発泡性が得られ、且つ、該押出発泡体に優れた難燃性を付与することができる。
【0050】
本発明においてHFOと併用する他の有機発泡剤は、ポリスチレン透過率が0.5×10
−10cc・cm/cm
2・s・cmHg以上であれば、特に制限はないが、エーテル類や塩化アルキルが、スチレン系樹脂の可塑化効果が高く、且つ、ポリスチレン透過率が速いため好ましい。それらの内、ジメチルエーテル、塩化メチル及び塩化エチルがより好ましく、なかでもジメチルエーテルはポリスチレン透過率が高く(ポリスチレン透過速度が速く)、環境への負荷も少ないことから特に好ましい。これらの有機発泡剤は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0051】
尚、本発明における発泡剤のポリスチレン透過率は、例えば、ポリスチレン樹脂(商品名;G9401、PSジャパン(株)製)を加熱・溶融プレスして作製した50〜100μm厚みのポリスチレン樹脂フィルムを、ガスクロマトグラフ(商品名;G2700T、(株)ヤナコ計測製)を備えた差圧式ガス透過装置(商品名;GTR−31A、GTRテック(株)製)に固定し、差圧法にて温度23℃±2℃、dryの条件で透過量を測定することにより得ることができる。このようにして測定した発泡剤のポリスチレン透過率の一例を表1に示す。
【0053】
HFOと他の有機発泡剤との合計配合量は、スチレン系樹脂100gに対して、好ましくは0.105mol以上0.300mol以下、より好ましくは0.115mol以上0.200mol以下である。前記合計配合量がスチレン系樹脂100gに対して0.105molより少ないと、スチレン系樹脂、発泡剤、難燃剤やその他の任意成分等を含む発泡性溶融物が、発泡時に所望の押出発泡体を得るための適正な粘度とならず、独立気泡率が90%より低い及び/又は見掛け密度の高いスチレン系樹脂押出発泡体しか得られない傾向がある。前記合計配合量がスチレン系樹脂100gに対して0.300molより多いと、過剰な発泡剤量の為、スチレン系樹脂押出発泡体中にボイド等の不良を生じる場合がある。
【0054】
本発明では、HFOをスチレン系樹脂100gに対して0.030〜0.125mol、0.035〜0.115mol、0.040〜0.105mol又は0.045〜0.090molの範囲で用い、かつ、HFOと他の有機発泡剤とを合計で、スチレン系樹脂100gに対して、0.105〜0.300mol又は0.115〜0.200molの範囲で用いる。
【0055】
本発明では、HFO及び他の有機発泡剤と共に、必要に応じて二酸化炭素や水等の無機発泡剤を併用することができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの無機発泡剤を用いることで、良好な可塑化効果や発泡助剤効果が得られ、押出圧力を低減し、スチレン系樹脂押出発泡体の一層安定な製造が可能となる。
【0056】
本発明では、他の有機発泡剤としてアルコール類を用いる場合及び/又は無機発泡剤として水を用いる場合には、押出発泡成形を安定して行なうために、スチレン系樹脂組成物に吸水性物質を配合することが好ましい。本発明に用いられる吸水性物質の具体例としては、ポリアクリル酸塩系重合体、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体、ポリビニルアルコール系重合体、ビニルアルコール−アクリル酸塩系共重合体、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸メチル−ブタジエン系共重合体、ポリエチレンオキサイド系共重合体及びこれらの誘導体等の吸水性高分子化合物;表面に水酸基を有する粒子径1000nm以下の微粉末;スメクタイト、膨潤性フッ素雲母、ベントナイト等の吸水性又は水膨潤性の層状珪酸塩並びにこれらの有機化処理品;ゼオライト、活性炭、アルミナ、シリカゲル、多孔質ガラス、活性白土、けい藻土等の多孔性物質;等が挙げられる。表面に水酸基を有する粒子径1000nm以下の微粉末としては、表面にシラノール基(−SiH
3OH)を有する無水シリカ(酸化ケイ素)等が挙げられる。該無水シリカの市販品は種々知られているが、例えば、商品名;AEROSIL、日本アエロジル(株)製等が挙げられる。吸水性物質は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。吸水性物質の配合量は、アルコール類や水の配合量等に応じて適宜調整されるが、スチレン系樹脂100重量部に対して0.01重量部以上5重量部以下が好ましく、0.1重量部以上3重量部以下がより好ましい。
【0057】
[押出発泡方法]
本発明のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法は、例えば、スチレン系樹脂組成物を押出機に供給して加熱し、溶融及び/又は可塑化させて混練し、樹脂溶融物を得る工程(1)と、工程(1)で得られた樹脂溶融物に発泡剤を配合して発泡性溶融物とする工程(2)と、発泡性溶融物を押出機に備え付けられたダイスリット部から押出機内部よりも低圧領域に押出して発泡させ、板状に成形する工程(3)とを含んでいる。
【0058】
本発明の製造方法において、スチレン系樹脂組成物を溶融混練するために用いられる押出機としては特に限定されず、例えば、単軸型、二軸型、多軸型等のスクリュー型押出機、プランジャ型押出機、ギアポンプ型押出機等が挙げられるが、これらの中でも生産効率等の観点からスクリュー型押出機が好ましい。押出機はその下流側に冷却機を備えていてもよく、2以上の押出機を連結したものでもよい。ダイスリット部(口金)は通常押出機の下流側に備え付けられており、押出機の下流側に冷却機を連結する場合は、冷却機の下流側に備え付けられ、その厚み方向開度はa(mm)である。さらに、ダイスリット部に連結又は隣接するように成形金型が設置され、さらに成形金型の下流側に隣接して成形ロールが設置される。ダイスリット部から押出された発泡体は成形金型により賦形され、さらに成形ロールにより成形され、スチレン系樹脂押出発泡体となる。
【0059】
ここで、例えば、ダイスリット部の厚み方向開度a(mm)及び/又は得られるスチレン系樹脂押出発泡体の厚みA(mm)を調整することにより、厚み拡大比A/aを上記した所定の範囲とすることができる。
【0060】
工程(1)において、スチレン系樹脂組成物の加熱温度は、該組成物に含まれるスチレン系樹脂が溶融する温度以上であればよいが、任意成分等の影響による樹脂の分子劣化ができる限り抑制される温度、例えば150〜260℃程度が好ましい。溶融混練時間は、単位時間当たりのスチレン系樹脂組成物の押出量や溶融混練手段として用いる押出機の種類により異なるので一義的に規定することはできず、スチレン系樹脂と発泡剤や任意成分とが均一に分散混合されるに要する時間として適宜設定される。
【0061】
工程(2)において、発泡剤を樹脂溶融物に配合又は圧入する際の圧力は、特に制限するものではなく、押出機等の内圧力よりも高い圧力であればよい。発泡剤の樹脂溶融物への配合又は圧入は、例えば押出機内にて行なわれ、発泡性溶融物が得られる。工程(1)及び工程(2)は、押出機内にて行なわれる。
【0062】
工程(3)において、押出機内の発泡性溶融物をダイスリット部から、押出機内部よりも低圧領域に押出して発泡させ、得られた発泡体を成形金型に充填して成形する。該成形は、例えば、ダイスリット部の内部と成形金型の内部空間(成形用空間)とがダイスリット部の出口を介して連通するように、ダイスリット部と成形金型とを隣接して配置し、ダイスリット部から押出した発泡体を成形金型の内部空間に直接充填するようにして行なうことができる。ここで、ダイスリット部の厚み方向開度a(mm)と最終的に得られるスチレン系樹脂押出発泡体の厚みAとの比である厚み拡大比A/aを18以下、好ましくは3以上18以下、より好ましくは4以上15以下、更に好ましくは5以上10以下に設定し、かつ、発泡性溶融物をダイスリット部から押出発泡する直前に該発泡性溶融物に負荷される発泡圧力を4.5MPa以上10.0MPa以下、好ましくは4.5MPa以上8.0MPa以下に設定している。ダイスリット部から押出され成形金型内で賦形された発泡体はそのまま本発明のスチレン系樹脂押出発泡体として使用できるが、成形金型の下流側に隣接配置される成形ロール等を用いて、断面積の大きい板状発泡体とすることが好ましい。成形金型の流動面形状調整及び金型温度調整によって、所望の発泡体の断面形状、発泡体の表面性、発泡体品質が得られる。
【0063】
発泡圧力(ダイスリット部から押出される直前の発泡性溶融物に負荷される圧力)の調整は、例えば、ダイスリット部の温度、その内部空間がダイリット部の出口に直結する成形金型の金型温度、ダイスリット部の出口の開度等を調整することにより行なうことができる。ここでのダイスリット部の出口開度は、厚み方向に限定されず、幅方向でも良く、厚み方向と幅方向の両方でもよい。発泡圧力を高めるためには、金型温度を下げたり、ダイスリット部出口の開度を小さくしたりすればよい。発泡性溶融物に負荷される発泡圧力の調整方法の一具体例として、ダイスリット部からの発泡性溶融物の吐出量にもよるが、例えば、ダイスリット部出口の厚み方向開度aを1.0〜15.0mm程度の範囲とし、かつ、ダイスリット部の温度を70〜90℃の範囲とする方法が挙げられる。
【0064】
かくして、本発明により、軽量で、断熱性及び難燃性に優れ、外観性の向上したスチレン系樹脂押出発泡体を容易に得ることができる。
【0065】
本発明により得られるスチレン系樹脂押出発泡体の厚みAは、例えば建築用断熱材や保冷庫用又は保冷車用の断熱材として機能することを考慮した断熱性、曲げ強度及び圧縮強度の観点から、10mm以上150mm以下であり、好ましくは15mm以上120mm以下であり、さらに好ましくは20mm以上100mm以下である。
【0066】
本発明により得られるスチレン系樹脂押出発泡体の密度(見掛け密度)、独立気泡率、平均気泡率、気泡変形率及び熱伝導率は次の通りである。
【0067】
[見掛け密度]
本発明により得られるスチレン系樹脂押出発泡体は、例えば建築用断熱材や保冷庫用又は保冷車用の断熱材として機能することを考慮した断熱性及び軽量性の観点から、その密度(見掛け密度)が20kg/m
3以上45kg/m
3以下であり、好ましくは25kg/m
3以上40kg/m
3以下である。見掛け密度の算出方法は、実施例にて詳述する。
【0068】
[独立気泡率]
本発明により得られるスチレン系樹脂押出発泡体の独立気泡率は90%以上、好ましくは95%以上である。独立気泡率が低すぎる場合には、発泡剤として使用したハイロドフルオロオレフィンがスチレン系樹脂押出発泡体から早期に逸散しやすく、長期断熱性が低下するおそれがある。本発明において、スチレン系樹脂押出発泡体の独立気泡率(%)は、ASTM−D2856−70の手順Cに従って、空気比較式比重計(例えば、東京サイエンス(株)製、型式1000型)を使用して測定する。
【0069】
本発明により得られるスチレン系樹脂押出発泡体の独立気泡率は、スチレン系樹脂押出発泡体の中央部及び幅方向両端部付近の計3箇所から縦25mm×横25mm×厚み20mmの大きさに切り出したサンプルを試料とし、各試料について下記式(1)により独立気泡率を算出し、3箇所の独立気泡率の算術平均値として求めた。
独立気泡率(%)=(Vx−W/ρ)×100/(VA−W/ρ)・・・(1)
ただし、Vx、VA、W、及びρは以下の通りである。
Vx:上記空気比較式比重計により測定した試料の真の体積(cm
3;スチレン系樹脂押出発泡体の試料を構成する樹脂の容積と、試料内の独立気泡部分の気泡全容積との和。)
VA:試料の外寸法から算出した試料の見かけ上の体積(cm
3)
W:試料の全重量(g)
ρ:スチレン系樹脂押出発泡体を構成するスチレン系樹脂の密度(g/cm
3)
【0070】
[平均気泡径]
また、本発明により得られるスチレン系樹脂押出発泡体の厚み方向の平均気泡径(D
T)は、断熱性の観点から0.5mm以下であることが好ましく、0.05〜0.3mmであることがより好ましい。
【0071】
厚み方向の平均気泡径(D
T:mm)は、幅方向垂直断面の中央部及び両端部の計3箇所の顕微鏡拡大写真上に、厚み方向にスチレン系樹脂押出発泡体の全厚みにわたる直線を引き、各直線の長さと、該直線と交差する気泡の数から、各直線上に存在する気泡の平均径(直線の長さ/該直線と交差する気泡の数)を求め、求められた3箇所の平均径の算術平均値を厚み方向の平均気泡径(D
T:mm)とする。
【0072】
幅方向の平均気泡径(D
W:mm)は、幅方向垂直断面の、中央部及び両端部の計3箇所の顕微鏡拡大写真上における、スチレン系樹脂押出発泡体を厚み方向に二等分する位置に、3mmに拡大率を乗じた長さの直線を幅方向に引き、該直線と該直線と交差する気泡の数から、各直線上に存在する気泡の平均径を式[3mm/(該直線と交差する気泡の数−1)]にて求め、求められた3箇所の平均径の算術平均値を幅方向の平均気泡径(D
W:mm)とする。
【0073】
押出方向の平均気泡径(D
L:mm)は、スチレン系樹脂押出発泡体の幅方向を二等分する位置で、スチレン系樹脂押出発泡体を押出方向に切断して得られた押出方向垂直断面の、中央部及び両端部の計3箇所の顕微鏡拡大写真上において、スチレン系樹脂押出発泡体を厚み方向に二等分する位置に、3mmに拡大率を乗じた長さの直線を押出方向に引き、該直線と該直線と交差する気泡の数から、各直線上に存在する気泡の平均径を式[3mm/(該直線と交差する気泡の数−1)]にて求め、求められた3箇所の平均径の算術平均値を押出方向の平均気泡径(D
L:mm)とした。また、スチレン系樹脂押出発泡体の水平方向の平均気泡径(D
H:mm)は、D
WとD
Lの相加平均値とする。
【0074】
[気泡変形率]
更に本発明により得られるスチレン系樹脂押出発泡体は、気泡変形率が0.7〜2.0であることが好ましい。気泡変形率とは、上記測定方法により求められた厚み方向の平均気泡径(D
T:mm)をスチレン系樹脂押出発泡体の水平方向の平均気泡径(D
H:mm)で除した値(D
T/D
H)であり、該気泡変形率が1よりも小さいほど気泡は扁平であり、1よりも大きいほど縦長である。気泡変形率が小さすぎる場合は、気泡が扁平なので圧縮強度が低下する傾向にあり、扁平な気泡は球形に戻ろうとする傾向が強いので、スチレン系樹脂押出発泡体の寸法安定性も低下する傾向にある。気泡変形率が大きすぎる場合は、厚み方向における気泡数が少なくなるので、気泡形状による断熱性向上効果が小さくなる。したがって、上記気泡変形率は、0.8〜1.5であることがより好ましく、0.8〜1.2であることが更に好ましい。気泡変形率が上記範囲内にあることにより、機械的強度に優れ、かつ更に高い断熱性を有するスチレン系樹脂押出発泡体となる。
【0075】
[熱伝導率]
本発明により得られるスチレン系樹脂押出発泡体の、製造後100日経過後の熱伝導率は、好ましくは0.0290W/(m・K)以下、より好ましくは0.0280W/(m・K)以下である。本発明のスチレン系樹脂押出発泡体は、独立気泡率が高く、発泡体からのハイロドフルオロオレフィンの逸散が効果的に防止されることから、製造後100日経過後であっても、熱伝導率が低く維持され、断熱性に優れる。
【0076】
本発明において熱伝導率は、ISO 11561に記載の促進試験に準拠した方法により測定する。製造直後のスチレン系樹脂押出発泡体を厚み方向及び幅方向中央部から厚さ10mm×長さ200mm×幅200mmの成形表皮が存在しない試験片を切り出し、該試験片をJIS K 7100に規定された標準温度状態3級(23℃±5℃)、及び標準湿度状態3級(50+20、−10%R.H.)の条件下に静置する。製造後100日後に該試験片を用いてJIS A 1412−2:1999に準拠する方法で、平均温度23℃の温度条件にて熱伝導率を測定する。
【0077】
前記のように、スチレン系樹脂押出発泡体の製造から100日後の熱伝導率を0.0280W/mK以下とするには、ハイドロフルオロオレフィンの配合量、スチレン系樹脂押出発泡体の密度(見掛け密度)、独立気泡率、平均気泡径、気泡変形率を本発明に規定する範囲内又は好ましい範囲内に調整すれば良い。
【0078】
本発明により得られるスチレン系樹脂押出発泡体は、密度(見掛け密度)が20〜45kg/m
3又は25〜40kg/m
3の範囲であり、独立気泡率が90%以上又は95%以上の範囲であり、かつ、厚みA(mm)が10〜150mm、15〜120mm又は20〜100mmの範囲である。また、本発明のスチレン系樹脂押出発泡体は、前記密度、独立気泡率及び厚みAを有すると共に、0.5mm以下又は0.05〜0.3mmの範囲である平均気泡径(厚み方向の平均気泡径D
T、幅方向の平均気泡径D
W及び押出方向の平均気泡径D
Lのいずれか)、0.7〜2.0、0.8〜1.5又は0.8〜1.2の範囲である気泡変形率、及び0.0290W/(m・k)以下又は0.0280W/(m・k)以下の範囲である製造後100日経過後の熱伝導率よりなる群から選ばれる少なくとも1種の特性を有することが好ましい。
【実施例】
【0079】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明が以下の実施例に限定されないことは勿論である。また、以下の実施例及び比較例において、「部」は「重量部」を意味する。
【0080】
実施例及び比較例において使用した原料は、次の通りである。
[基材樹脂]
スチレン系樹脂A(ポリスチレン、商品名:G9401、MFR;2.2g/10分、PSジャパン(株)製)
スチレン系樹脂B(ポリスチレン、商品名:680、MFR;7.0g/10分、PSジャパン(株)製)
【0081】
[熱線輻射抑制剤]
グラファイト(商品名:M−885、鱗片状黒鉛、一次粒径5.5μm、固定炭素分89%、(株)丸豊鋳材製作所製)
【0082】
[難燃剤]
臭素系難燃剤1:テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピル)エーテルとテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテルとの混合物(商品名;GR−125P、第一工業(株)製)
臭素系難燃剤2:臭素化スチレン−ブタジエンブロックコポリマー(商品名;EMERALD INNOVATION #3000、ケムチュラ・ジャパン(株)製)
【0083】
[難燃助剤]
トリフェニルホスフィンオキシド(住友商事ケミカル(株)製)
ポリ−1,4−ジイソプロピルベンゼン(商品名;CCPIB、UNITED INITIATORS社製)
【0084】
[難燃剤の安定剤]
安定剤1:ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(商品名;アデカイザーEP−13、(株)ADEKA製)
安定剤2:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名;ECN−1280、ハンツマン・ジャパン(株)製)
安定剤3:ジペンタエリスリトール−アジピン酸反応混合物(商品名;プレンライザー(商標名)ST210、味の素ファインテクノ(株)製)
安定剤4:ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名;ANOX20、ケムチュラ・ジャパン(株)製)
安定剤5:3,9−ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(商品名;Ultranox626、ケムチュラ・ジャパン(株)製)
安定剤6:トリエチレングリコール−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート(商品名;ソンノックス2450FF、ソンウォンインターナショナルジャパン(株)製)
【0085】
[樹脂添加剤]
ステアリン酸カルシウム(滑剤、商品名;SC−P、堺化学工業(株)製)
ベントナイト(吸水性物質、商品名;ベンゲルブライトK11、(株)ホージュン製)
シリカ(吸水性物質、商品名;カープレックス(商標名)BS−304F、エボニックジャパン(株)製)
【0086】
[発泡剤]
HFO−1234ze(ハネウェルジャパン(株)製)
ジメチルエーテル(岩谷産業(株)製)
塩化エチル(日本特殊化学工業(株)製)
水(大阪府摂津市水道水)。
【0087】
実施例及び比較例で得られたスチレン系樹脂押出発泡体の特性(見掛け密度、独立気泡率、平均気泡径、気泡変形率、押出発泡体中のスチレン系樹脂100gに対するHFO−1234ze残存量、熱伝導率、JIS燃焼性及び外観)を以下の手法に従って評価した。
【0088】
(1)見掛け密度(kg/m
3)
得られたスチレン系樹脂押出発泡体の重量を測定すると共に、長さ寸法、幅寸法、厚み寸法を測定した。測定された重量及び各寸法から、以下の式に基づいて発泡体密度を求め、単位をkg/m
3に換算した。
見掛け密度(g/cm
3)=発泡体重量(g)/発泡体体積(cm
3)
【0089】
(2)独立気泡率(%)
得られたスチレン系樹脂押出発泡体から、厚さ20mm(厚みが20mmに達しない場合は、成形表皮を剥いだ最大厚さ)×長さ25mm×幅25mmの成形表皮が存在しない試験片を切り出し、ASTM−D2856−70の手順Cに準じて評価した。
【0090】
(3)平均気泡径(mm)
厚み方向の平均気泡径の測定方法は前述した通りである。
(4)気泡変形率
前述の通り評価した。気泡変形率の測定方法は前述した通りである。
【0091】
(5)押出発泡体中のスチレン系樹脂100gに対するHFO−1234ze残存量(mol)
得られたスチレン系樹脂押出発泡体をJIS K 7100に規定された標準温度状態3級(23℃±5℃)、及び標準湿度状態3級(50+20、−10%R.H.)の条件下に静置し、製造直後、及び、製造から100日後にHFO−1234ze残存量を以下の設備、手順にて評価した。尚、本発明における製造直後とは、スチレン系樹脂押出発泡体が押出機のダイから出て押出発泡されてから、5時間以内を指す。
a)使用機器;ガスクロマトグラフ GC−2014(商品名、(株)島津製作所製)
b)使用カラム;G−Column G−950 25UM(商品名、一般財団法人化学物質評価研究機構製)
【0092】
c)測定条件;
・注入口温度:65℃
・カラム温度:80℃
・検出器温度:100℃
・キャリーガス:高純度ヘリウム
・キャリーガス流量:30mL/分
・検出器:TCD
・電流:120mA
【0093】
約130ccの密閉可能なガラス容器(以下、「密閉容器」と言う)に、スチレン系樹脂押出発泡体から切り出した約1.2gの試験片を入れ、真空ポンプにより密閉容器内の空気抜きを行った。その後、密閉容器を170℃で10分間加熱し、スチレン系樹脂押出発泡体中の発泡剤を密閉容器内に取り出した。密閉容器が常温に戻った後、密閉容器内にヘリウムを導入して大気圧に戻した後、マイクロシリンジにより40μLのHFO−1234zeを含む混合気体(HFO−1234zeを含む混合気体40μL)を取り出し、上記a)〜c)の使用機器、測定条件にて評価した。なお、各試験片の寸法には、スチレン系樹脂押出発泡体の見掛け密度により多少の違いがある。
【0094】
(6)熱伝導率(W/mK)
発泡体の熱伝導率は、ISO 11561に記載の促進試験に準拠した方法により測定した。製造直後のスチレン系樹脂押出発泡体を厚み方向、及び幅方向中央部から厚さ10mm×長さ200mm×幅200mmの成形表皮が存在しない試験片を切り出し、該試験片をJIS K 7100に規定された標準温度状態3級(23℃±5℃)、及び標準湿度状態3級(50+20、−10%R.H.)の条件下に静置した。製造後100日後に該試験片を用いてJIS A 1412−2:1999に準拠する方法で、平均温度23℃の温度条件にて熱伝導率を測定し、以下の基準にて判定した。
【0095】
◎(合格):熱伝導率が0.0280W/mK以下。
〇(合格):熱伝導率が0.0280W/mKより大きく、0.0290W/mK以下。
×(不合格):熱伝導率が0.0290W/mKより大きい。
【0096】
(7)JIS燃焼性
JIS A 9511(測定方法A)に準じて、厚さ10mm×長さ200mm×幅25mmの試験片を5本用い、以下の基準で評価した。測定は、スチレン系樹脂押出発泡体の製造後、前記寸法の試験片に切削し、JIS K 7100に規定された標準温度状態3級(23℃±5℃)、及び標準湿度状態3級(50+20、−10%R.H.)の条件下に静置し、製造から1週間後に行った。
○(合格):3秒以内に炎が消えて、残じんがなく、燃焼限界指示線を超えて燃焼しないとの基準を満たす。
×(不合格):上記基準を満たさない。
【0097】
(8)外観
得られたスチレン系樹脂押出発泡体の外観を目視により観察し、表面における気孔や波打ちの発生を調べた。
【0098】
(実施例1)
[スチレン系樹脂組成物の作製]
表2の配合に示すように、スチレン系樹脂1(商品名G9401)100部に、臭素系難燃剤1(難燃剤、商品名GR−125P)3.0部、トリフェニルホスフィンオキシド(難燃助剤)1.0部、安定剤1(ビスフェノールA−グリシジルエーテル、商品名EP−13)0.10部、安定剤6(トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチルー4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、商品名ソンノックス2450FF)0.20部及びステアリン酸カルシウム(滑剤、商品名SC−P)0.10部を乾式混合し、スチレン系樹脂組成物を得た。
【0099】
[押出発泡体の作製]
押出発泡用押出機として、第一押出機(口径65mmの単軸押出機)、第二押出機(口径90mmの単軸押出機)及び冷却機をこの順番で直列に連結した押出機を用いた。冷却機の第二押出機とは反対側の先端には厚み方向開度(a)4.3mm×幅50mmの長方形断面のダイスリット部(口金)を設け、該ダイスリット部に密着させて成形金型を設置し、さらに成形金型の下流側に成形ロールを設置した。
【0100】
押出機の第一押出機に、上記で得られたスチレン系樹脂組成物を約50kg/hrで供給し、240℃に加熱して溶融及び混練した。得られた樹脂溶融物に、第一押出機の第二押出機側先端付近で発泡剤(スチレン系樹脂1の100部に対してHFO−1234ze5.5部及びジメチルエーテル4.3部)を圧入し、発泡性溶融物とした。得られた発泡性溶融物を第一押出機に連結された第二押出機及び冷却機中にて128℃に冷却した。
【0101】
表2の製造条件に示すように、ダイスリット部厚み方向開度aを4.3mmとし、且つ、ダイスリット部温度を80℃とすることにより、ダイスリット部内部で発泡性溶融物に負荷される発泡圧力を5.0MPaに調整した直後に、該発泡性溶融物をダイスリット部からその内部が大気圧となっている成形金型内に押出発泡して付形し、さらに成形ロールで形状を整え、断面寸法が厚さ36mm×幅230mmである板状のスチレン系樹脂押出発泡体を得た。該発泡体の評価結果を表2に示す。
【0102】
(実施例2〜9)
表2に示すように、各種配合剤の種類・配合量(部)、及び製造条件を変更した以外は、実施例1と同様の操作により、スチレン系樹脂押出発泡体を得た。但し、実施例9において、グラファイトは、あらかじめスチレン系樹脂のマスターバッチの形態として投入した。マスターバッチの混合濃度は、スチレン系樹脂/グラファイトを50重量%/50重量%とした。得られた各発泡体の評価結果を表2に示す。
【0103】
(比較例1〜3)
表3に示すように、各種配合剤の種類・配合量(部)、及び製造条件を変更した以外は、実施例1と同様の操作により、スチレン系樹脂押出発泡体を得た。得られた各発泡体の評価結果を表3に示す。
【0104】
なお、表2及び表3の配合において、「部」を単位とする数値は基材樹脂、発泡剤及び各任意成分の配合量であり、発泡剤の「mol」を単位とする数値は発泡剤の基材樹脂(スチレン系樹脂)100gに対するmol数を示している。また、表2及び表3のスチレン系樹脂押出発泡体の物性において、HFO−1234ze残存量とは、押出発泡体中の基材樹脂(スチレン系樹脂)100gに対するHFO−1234ze残存量をmol数で示している。また、表2及び表3の製造条件において、発泡圧力とは、ダイスリット部から押出す直前の発泡性溶融物に負荷される圧力である。
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
表2から、実施例1〜9では、厚み拡大比A/aを18以下とし、且つ、発泡圧力を4.5〜10.0MPaの範囲内とすることにより、見掛け密度が35kg/m
3と低く、独立気泡率が95〜96%と高く、平均気泡率が0.1mmと小さく、気泡変形率が0.9〜1.2と「1」に近く、HFO−1234Zeの残存量が長期間にわたってほぼ一定であり、且つ熱伝導率が低いことから、軽量で長期的な断熱性に優れ、JIS燃焼性の評価が「○」であることから難燃性に優れ、表面におけるスポット孔や波打ちの発生もなく、美麗な外観を有するスチレン系樹脂押出発泡体が得られることが分かる。
【0108】
表3から、厚み拡大比A/aを18以下としても、発泡圧力が4.5MPa未満である場合には、発泡物の表面に多数のスポット孔が発生して成形不良となり、スチレン系樹脂押出発泡体が得られなかったり(比較例1)、軽量性や難燃性は比較的良好であるものの、長期的な断熱性が不十分であり、表面にスポット孔が発生して外観が不良となったりする(比較例2)。また、厚み拡大比A/aが18を超え、発泡圧力が10MPaを超える場合には、難燃性は比較的良好であるものの、軽量性や断熱性が低下し、表面に波打ちが発生して外観が損なわれる(比較例3)。