(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588450
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】骨移植片ならびに骨移植片を作製及び使用する方法
(51)【国際特許分類】
A61L 27/36 20060101AFI20191001BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20191001BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
A61L27/36 400
A61L27/36 410
A61L27/38 111
A61L27/40
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-550518(P2016-550518)
(86)(22)【出願日】2015年2月6日
(65)【公表番号】特表2017-507702(P2017-507702A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】US2015014739
(87)【国際公開番号】WO2015120221
(87)【国際公開日】20150813
【審査請求日】2017年12月13日
(31)【優先権主張番号】14/175,184
(32)【優先日】2014年2月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507400686
【氏名又は名称】グローバス メディカル インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】バット,アーカナ
(72)【発明者】
【氏名】ラスコヴィッツ,ダン
(72)【発明者】
【氏名】ジョー,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】アダムス,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ボイヤー セカンド,マイケル リー
【審査官】
小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0262633(US,A1)
【文献】
特表2005−506102(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0033572(US,A1)
【文献】
東北大学歯学雑誌,1983年,Vol.1,No.2,p91−104
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)骨髄から皮質骨を分離し、前記皮質骨をすすぎ、粉砕して繊維にして、この皮質骨繊維を処理して、前記繊維が含まれている水のpHを6.5〜7になるように調節して脱塩皮質骨繊維を形成することによって、脱塩皮質骨繊維を取得及び調製することと、
(B)ボーンミルを用いて顆部を粉砕して、0.05〜1.5mmの範囲の海綿骨チップを得ることによって新鮮凍結顆部から海綿骨チップを得、
(1)前記海綿骨チップを0.3〜0.5%の生理食塩水で処理し、前記生理食塩水で処理したチップをリン酸緩衝食塩水ですすぎ、前記チップを凍結培地及びジメチルスルホキシド(DMSO)と混合し、前記チップを培地で凍結させ、前記チップを保管することによって細胞富化海綿骨チップを形成すること、
(2)前記海綿骨チップを0.3〜0.5%の生理食塩水で処理し、前記生理食塩水で処理したチップをリン酸緩衝食塩水ですすぎ、前記チップを最大10日間培地で培養し、前記培養期間後に、前記チップを凍結培地と混合し、前記チップを培地で凍結させ、前記チップを保管することによって細胞富化海綿骨チップを形成すること、
(3)前記海綿骨チップを37℃及び5%O2でインキュベータにおいて周期的に撹拌しながらコラゲナーゼで1〜3時間処理し、上清を形成させ、フィルタを通して前記上清を濾過し、結果として得られる細胞懸濁液を5〜15分間遠心分離して細胞ペレットを形成し、前記細胞ペレットを細胞培養培地で再構成して組織培養フラスコに播種し、前記細胞を最大10日間培養し、解離剤を用いて前記細胞を分離させて前記海綿骨チップに再播種して、細胞富化海綿骨チップを形成し、前記細胞富化海綿骨チップを凍結培地と混合し、前記チップを保管すること、ならびに
(4)前記海綿骨チップを0.3〜0.5%の生理食塩水で処理した後、前記生理食塩水で処理したチップを(3)のようにコラゲナーゼで処理及び加工することによって細胞富化海綿骨チップを形成すること、からなる群から選択される方法によって処理することと、
(C)前記脱塩皮質骨繊維と前記細胞富化海綿骨チップとを約1:1〜2:1の比で混合し、それによって骨原性、骨誘導性、かつ骨伝導性である骨移植片材料を得ることと、を含む、骨移植片を作製する方法。
【請求項2】
前記細胞富化海綿骨チップが、−80℃から−180℃の温度で保管される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記骨移植片中の骨原性細胞の濃度が、最終生成物1cc当たり20,000個を上回る細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記皮質骨繊維が、5:1〜500:1の長さ対幅の比まで粉砕される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記皮質骨繊維が、凍結乾燥され、室温で保管される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記海綿骨チップが、長骨の新鮮凍結顆部から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記皮質骨繊維が、250ミクロン〜3mmのサイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記骨移植片材料がパテの形態である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、概して、骨移植片ならびにそれを作製及び使用する方法に関する。より具体的には、本発明は、骨誘導性脱塩骨と骨伝導性皮質骨−海綿骨チップとの混合物中に骨原性幹細胞を含む、骨原性骨移植片に関する。本骨移植片を有するキット及びインプラント、ならびに本骨移植片を作製及び使用する方法が、さらに含まれる。
〔背景技術〕
骨は、一般に、例えば骨折の後に、完全に再生する能力を有するが、再生するためには非常に小さな骨折空間または何らかの足場を必要とする。骨移植は、失われた骨を置き換えて、非常に複雑、適切に治癒できない、または著しい健康上の危険性を患者に呈する骨折を修復する、外科的処置である。
【0002】
骨移植片は、自家移植のもの(患者自身の身体から摘出した骨、腸骨稜に由来することが多い)、同種移植のもの(通常は骨バンクから入手される死体骨)、または骨に類似の機械的特性を有する合成のもの(ヒドロキシアパタイトもしくは他の天然かつ生体適合性物質から作製されることが多い)であり得る。ほとんどの骨移植片は、天然の骨が数ヶ月の期間で治癒するにつれて再吸収され、置き換えられることが予測される。
【0003】
骨移植片は、骨再生が可能な生存細胞を含む場合、骨原性である。脊椎及び長骨適用のための骨移植片代替物における現在の最適な標準物は、自家移植(すなわち、患者自身の組織を使用する)であり、同種移植がそれに続く。自家移植片は、多数の骨形成細胞を含有している場合、骨原性であると見なされる。しかしながら、自署は、可用性が限られている場合があり、それらは、供与部位の病的状態によって制限される。また、自家移植片は、複数回の外科手術を必要とする場合がある。同種移植は、供給源及び処理ステップに起因する大幅な変動性により性能が制限される。
【0004】
骨原性であり、かつ/または骨治癒期全体にわたり骨再生を強化することができる、優れた骨移植片を製造する必要性がある。
〔発明の概要〕
非限定的な例示的な実施形態によると、本発明は、骨誘導性脱塩骨と骨伝導性皮質骨−海綿骨チップとの混合物中に骨原性幹細胞を含む、骨治癒を促進するための骨移植片を提供する。
【0005】
他の例示的な実施形態は、本明細書に提供される骨移植片を調製するための方法を対象とする。さらなる例示的な実施形態は、外科手術により本発明の骨移植片のうちの1つ以上を哺乳動物に挿入することによって、骨移植片代替物を哺乳動物に適用することを含む、方法を対象とする。骨移植片は、例えば、例として切片、パテ、ゲル、及びスポンジの形態の移植片により適用されてもよく、あるいは骨移植片は、インプラントと共に、例えば、その中もしくは上に組み込まれた状態でも、利用可能であり得る。
【0006】
なおもさらなる例示的な実施形態は、本明細書に提供される骨移植片のうちの1つ以上を中または上に含む、インプラントまたは他のデバイスを対象とする。他の例示的な実施形態は、本骨移植片のうちの1つ以上、及び/または本骨移植片を調製するために組み合わせ、混合、もしくは処理することができる構成要素もしくは要素、ならびに本骨移植片の作製または使用を補助することができる説明書、デバイス、インプラント、ツール、または他の構成要素を含む、キットを対象とする。
〔図面の簡単な説明〕
非限定的な実施形態が、以下の添付の図面を参照して本明細書に記載される。
【0007】
図1:本発明の非限定的な実施例による、骨移植片を調製する例示的な方法のフローチャートである。
〔発明を実施するための形態〕
本発明は、骨移植片ならびにそのような骨移植片を作製及び使用するための方法、ならびにそれを含むキット及びインプラントまたは他のデバイスを対象とする。
【0008】
例示的な実施形態は、骨折の治癒と併せて使用されるように記載されているが、これらの骨移植片は、他の目的で使用されてもよいこと、したがって、本発明がそのような用途に限定されないことを理解されたい。本明細書に提供される教示を鑑みると、当業者であれば、本発明の骨移植片が使用され得る他の用途を理解し、本発明の骨移植片及び方法を他の用途で使用することができるであろう。したがって、これらの代替的な使用は、本発明の一部であることが意図される。
【0009】
本発明の例示的な実施形態の追加の態様、利点、及び/または他の特徴は、添付の図面をと共に、以下の詳細な説明を考慮すれば明らかであろう。本明細書に記載される実施形態は単に例示的かつ例証的であることが、当業者には明らかなはずである。その多数の変化形の実施形態が、本開示及びその同等物の範囲内に含まれることが企図される。
【0010】
記載される例示的な実施形態では、明確さの目的で特定の用語が用いられる。しかしながら、これらの実施形態は、この特定の用語に限定されることを意図するものではない。別途示されない限り、技術用語は、従来の使用法に従って用いられる。
【0011】
本明細書に使用されるとき、「1つの(a)」または「1つの(an)」は、1つ以上を意味し得る。本明細書に使用されるとき、「もう1つの」は、少なくとも2つ目またはそれ以上ものを意味し得る。さらに、文脈により別途必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。
【0012】
本明細書に使用されるとき、「哺乳動物」という用語は、本骨移植片が適用され得る任意の「対象」または「患者」としての動物(ヒトを含むがこれに限定されない)を含むことが意図される。対象または患者または哺乳動物は、現在診療を受けている場合もそうでない場合もあり、また以前に1回以上の治療を受けている場合もそうでない場合もある。当業者には明らかであるように、配合物は、非ヒトとヒトとでは異なる可能性がある。
【0013】
本明細書に使用されるとき、「有効量」は、結果(構成物質または組成物が提供される目的としての)を達成するのに有効な組成物または配合物中の特定の構成物質の量または全体としての配合物の量を指す。したがって、骨移植片配合物の有効量は、本骨移植片が適用される対象、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)において所望される骨移植片の効果を達成するのに好適な量である。
【0014】
数的データが、範囲の形式で本明細書に提示される場合がある。そのような範囲形式は、単に便利さ及び簡潔さのための使用されるものであり、その範囲の限界として明示的に記載される数値だけでなく、その範囲に含まれる全ての個別の数値または部分範囲を、各数値及び部分範囲が明示的に記載されるかのように含むことを理解されたい。
【0015】
非限定的な例示的な実施形態によると、本発明は、骨誘導性脱塩骨と骨伝導性皮質骨−海綿骨チップとの混合物中に骨原性幹細胞を含む、例えば、哺乳動物における骨治癒を促進するための骨移植片を提供する。例示的な実施形態は、骨原性であり(移植片材料中の生骨細胞が骨の再構成に寄与する)、骨誘導性(未分化細胞が活性な骨芽細胞となるように促す)、かつ骨伝導性(自然骨の修復成長を導く)である、骨移植片材料を提供する。したがって、本明細書における例示的な実施形態には、(1)骨原性幹細胞と、(2)骨誘導性脱塩骨基質と骨伝導性皮質骨−海綿骨チップとの混合物とを含む、骨移植片が含まれる。
【0016】
非限定的な例示的な実施形態にはまた、本骨移植片を作製する方法も含まれ、この方法には、(1)骨髄から皮質骨を分離し、皮質骨をすすぎ、粉砕して、高い長さ対幅の比を有するチップにすることによって、皮質骨チップを取得及び/または調製し、この皮質骨チップを、例えば0.5〜0.7NのHCl中で15分間〜3時間脱塩し、HClまたは他の処理物質を除去し、チップが含まれている水のpHが6.5〜7になるまで水ですすぐこと、ならびに(2)新鮮凍結顆部から海綿骨チップを得て(これを例えば生理食塩水ですすいでもよい)、以下の方法のうちの1つによってさらに処理することが含まれる:
(A)海綿骨チップを0.3〜0.5%の生理食塩水で処理し、生理食塩水で処理したチップをリン酸緩衝食塩水(PBS)ですすぎ(例えば、2回以上)、チップを凍結培地(例えば、最小必須培地(MEM))及び10%ジメチルスルホキシド(DMSO)と混合し、チップを培地で凍結させ、−80℃から−180℃の温度で保管すること、
(B)海綿骨チップを0.3〜0.5%の生理食塩水で処理し、生理食塩水で処理したチップをリン酸緩衝食塩水(PBS)ですすぎ(2〜3回以上)、チップを最大10日間(例えば、最小必須培地で)培養し、培養期間後にチップを凍結培地と混合し、チップを培地で凍結させ、−80℃から−180℃の温度で保管すること、
(C)海綿骨チップを37℃及び5%CO
2に設定したインキュベータにおいて周期的に撹拌しながらコラゲナーゼ(1mg/ml〜10mg/ml)で1〜3時間処理し、70ミクロンの細胞濾過器を通して上清を濾過し、結果として得られた細胞懸濁液を遠心分離して細胞ペレットを形成し、細胞ペレットを細胞培養培地で再構成して組織培養フラスコに播種し、細胞を例えば37℃で最大10日間培養し、トリプシン等の解離剤を用いて細胞を分離させて海綿骨チップに再播種して、細胞富化海綿骨チップを形成し、細胞富化海綿骨チップを凍結培地と混合し、−80℃から−180℃の温度で保管すること、あるいは、
(D)海綿骨チップを上述の選択肢(A)のように生理食塩水で処理した後、チップを上述の選択肢(c)のようにコラゲナーゼで処理及び加工すること。
【0017】
本発明による非限定的な例示的な方法は、例えば、
図1のフローチャートに示されている。
図1に示されるように、例示的な実施形態において、本骨移植片を作製する方法が提供され、この方法には、骨髄を取り出し、PBS中ですすぎ、皮質骨を粉砕して高い長さ対幅の比を有するチップにすることによって皮質骨幹から皮質骨チップを取得及び/または調製し(フローチャートの左側を参照されたい)、この皮質骨チップを、例えば0.5〜0.6NのHCl中で30分間〜3時間脱塩し、チップが含まれている水のpHが6.5〜7になるまで水ですすぐことが含まれる。
【0018】
図1のフローチャートの右側には、本発明の海綿骨チップを得ることができる4つの異なる方法が示される。選択肢の全てによると、海綿骨チップは、新鮮凍結顆部から得られ、これを粉砕してチップにし、生理食塩水で処理する。チップは、次いで、フローチャートに記載される方法(選択肢A〜D)のうちの1つによってさらに処理されるが、これらの方法には、以下が含まれる:
(A)海綿骨チップを0.3〜0.5%の生理食塩水で処理し、生理食塩水で処理したチップをリン酸緩衝食塩水(PBS)ですすぎ、チップを培地において−80℃から−180℃の温度で凍結させること、
(B)海綿骨チップを0.3〜0.5%の生理食塩水で処理し、生理食塩水で処理したチップをリン酸緩衝食塩水(PBS)ですすぎ、チップを最大10日間(例えば、最小必須培地で)培養し、凍結培地を添加し、チップを培地において−80℃から−180℃で凍結させること、
(C)海綿骨チップをコラゲナーゼ(1mg/ml〜10mg/ml)で最大3時間処理し、上清を濾過し、遠心分離して細胞ペレットを得、細胞ペレットを細胞培養培地で最大10日間、例えば37℃で再構成し、細胞を海綿骨チップ上に再播種すること、あるいは
(D)海綿骨チップを上述の選択肢(A)のように生理食塩水で処理した後、チップを上述の選択肢(c)のようにコラゲナーゼで処理及び加工すること。
【0019】
皮質骨チップ及び海綿骨チップを得た後に、
脱塩皮質骨チップと細胞富化海綿骨チップとを、1:1〜2:1の比で混合する。最後のステップは
図1に示されていない。この方法により、有利なことに、骨原性、骨誘導性、かつ骨伝導性である、骨移植片材料が得られる。例示的な実施形態によると、骨移植片における骨原性細胞の濃度は、最終生成物1cc当たり20,000個を上回る細胞となり得る。
【0020】
例示的な実施形態によると、皮質骨チップは、比較的高い長さ対幅の比を有するように、例えば、例として250ミクロン〜3mmのサイズを有するように、粉砕してもよい。例示的な実施形態によると、皮質骨チップは、凍結乾燥させ、室温で保管してもよい。
【0021】
これらの実施形態における海綿骨チップは、−80℃から−180℃の温度(両端の温度及びそれらの間の範囲を含む)で凍結され、保管され得る。
【0022】
使用方法
本骨移植片のいずれかを、骨移植片を必要とする哺乳動物に挿入することを含む方法もまた、本明細書に提供される。例として、本骨移植片は、本骨移植片のうちの1つ以上を、それを必要とする哺乳動物、例えば哺乳動物に挿入することによって、哺乳動物に挿入または適用され得る。骨移植片は、例えば、例として切片、パテ、ゲル、及び/またはスポンジの形態の移植片により挿入または適用されてもよく、あるいは骨移植片は、インプラントと共に、例えば、その中または上に(例えばコーティングとして)組み込まれた状態でも、利用可能であり得る。骨移植片は、骨移植片の必要性、骨移植片の種類、及び患者を考慮して医師により決定される、有効量で挿入され得る。
【0023】
前述のように、対象/患者は哺乳動物(ならびに他の動物)であってもよく、哺乳動物はヒトであってもよい(が、必ずしもそうでなくてもよい)。
【0024】
本発明の実施形態は、例えば、骨の欠損を補うために使用することができる、成形可能かつ形状付け可能なパテ組成物を含み得る。したがって、例示的な実施形態によると、本骨移植片は、切片、パテ、ゲル、またはスポンジを含むがこれらに限定されない、パテまたは他の半固形もしくは固形の形態であり得る。
【0025】
インプラント
なおもさらなる例示的な実施形態は、本明細書に提供される骨移植片のうちの1つ以上を含むインプラントまたは他のデバイスもしくは製品を対象とし、本骨移植片はインプラントの中もしくは上に組み込まれるか、または製品もしくはインプラントと共に使用される。例えば、本骨移植片代替物は、インプラント内への、またはその中の移植片として使用することができる。非限定的な例として、骨移植片は、圧迫骨折の治療のための椎体間スペーサと共に使用することができる。
【0026】
外科的インプラント及び組成物は、それらの意図される機能を無事に果たすためには、生体適合性でなければならない。生体適合性は、インプラントまたは組成物が、毒性、異物反応、または細胞の破壊といった二次的悪影響を伴うことなくその治療的機能を発揮できるような様式で機能する特徴として定義され得る。有害な反応の回避を補助するために、例示的な骨移植片は、哺乳動物に埋め込むための滅菌環境及び配合物で調製され得る。
【0027】
キット
なおもさらなる実施形態は、本骨移植片のうちの1つ以上またはその1つ以上の構成要素もしくは要素を含む、キットを対象とする。
【0028】
例示的なキットは、例えば、本骨移植片のうちの任意のものを、説明書及び/または例として骨移植片代替物の保管、調製、または使用に用いることができる少なくとも1つの追加の構成要素(デバイス、インプラント、ツール等)と共に含み得る。例として、キットの構成要素は、骨移植片をデバイスもしくはインプラントに添加するのを補助するため、または骨移植片を哺乳動物に挿入するのを補助するために使用され得る。さらなる非限定的な例では、本骨移植片のうちの1つ以上、ならびに骨移植片の調製のための説明書、骨移植片の使用のための説明書、骨移植片を哺乳動物に挿入するためのツール、乾燥形態の骨移植片を水和させるためのツールもしくはビヒクル、及び/または骨移植片と共に哺乳動物に挿入されるインプラントが含まれ得る。例えば、骨移植片は、再構成及び/または哺乳動物/患者への適用のために、シリンジで提供されてもよい。例示的な実施形態によると、生成物は、侵襲が最小限となる様式で生成物を送達するための付属品と共に、シリンジで提供されてもよい。キットに含まれる他の可能性のある要素としては、使い捨ての器具または処置文書が挙げられる。
【0029】
なおもさらなる非限定的な例には、本骨移植片を調製するために組み合わせ、混合、または処理することができる、本骨移植片の1つ以上の要素が含まれ得る。例として、本キットには、本明細書に提供される段階のいずれかにある皮質骨及び/または海綿骨チップ、ならびに/または本骨移植片を形成するために組み合わせ、混合、または処理され得る本骨移植片の他の要素が含まれ得る。本骨移植片のうちの1つ以上の調製のための説明書、ならびに/または本骨移植片の作製もしくは使用を補助するための1つ以上のツール、デバイス、インプラント、及び/もしくは他の構成要素が、さらに提供され得る。
【0030】
以下の実施例は、様々な非限定的実施形態及び技法をさらに例示するために提供される。しかしながら、これらの実施例は、例示的であることを意味するものであり、本特許請求の範囲を制限するものではないことを理解されたい。当業者には明らかなように、多数の変化形及び修正形が、本発明の趣旨及び範囲内に含まれることが意図される。
〔実施例〕
実施例1
本実施例は、本発明の非限定的な例示的な実施形態による、骨誘導性脱塩骨と骨伝導性皮質骨−海綿骨チップとの混合物中に、骨原性幹細胞を含む、例示的な骨移植片を作製する方法を示す。
【0031】
長骨由来の皮質骨及び海綿骨を分離することができる。皮質骨を骨髄から分離し、リン酸緩衝食塩水(PBS)溶液ですすぎ、粉砕してチップにする(例えば、比較的高い長さ対幅の比を有する250ミクロン〜3mmのサイズ)。皮質骨チップを、次いで、0.5〜0.7NのHClで15分間〜3時間処理してもよい。処理の最後に、HClをデカンテーションし、pHが6.5〜7になるまでチップを脱イオン(DI)水ですすいでもよい。チップは、次いで、凍結乾燥させ、室温で保管することができる。
【0032】
新鮮凍結顆部由来の海綿骨チップを、0.9%の生理食塩水で2〜3回すすいでもよい。すすいだ後、チップを、以下の方法のうちの1つで処理することができる:
(a)海綿骨チップを、0.3〜0.5%の生理食塩水で処理してもよい。生理食塩水で処理したチップを、次いで、リン酸緩衝食塩水ですすいでもよい(2回以上)。チップを、凍結培地(最小必須培地(MEM))及び10%ジメチルスルホキシド(DMSO)と混合し、−80℃から−180℃で凍結させてもよい。
【0033】
(b)海綿骨チップを、0.3〜0.5%の生理食塩水で処理した後、チップをリン酸緩衝食塩水ですすいでもよい(2〜3回)。すすいだ後、チップを、最小必須培地で最大10日間培養してもよい。培養期間の終わりに、チップを凍結培地と混合し、−80℃から−180℃の温度で凍結させてもよい。
【0034】
(c)チップを周期的に撹拌しながら37℃でコラゲナーゼ(1mg/ml〜10mg/ml)で1〜3時間処理してもよい。この時間の終わりに、70ミクロンのフィルタを通して上清を濾過する。結果として得られた細胞懸濁液を、次いで、1000〜1500rpmで5〜15分間遠心分離する。細胞ペレットを細胞培養培地において再構成し、組織培養フラスコに播種してもよい。細胞を最大10日間培養してもよい。この期間の終わりに、解離剤を用いて細胞を分離し、海綿骨チップに再播種してもよい。細胞富化海綿骨チップを、次いで、凍結培地と混合し、−80℃から−180℃の温度で保管してもよい。
【0035】
(d)チップを選択肢(a)のように生理食塩水で処理した後、選択肢(c)のようにコラゲナーゼで処理及び加工してもよい。最終生成物を、−80℃から−180℃で保管され得る。
【0036】
上述の事例の全てにおいて、骨原性細胞の濃度は、最終生成物1cc当たり20,000個を上回る細胞となり得る。最終骨移植片生成物は、約1:1〜2:1の比(両端の比を含め、これらの間の全ての点及び範囲を含む)で混合され得る脱塩皮質骨チップ及び細胞富化海綿骨チップを含む。
【0037】
本発明は、骨原性、骨誘導性、かつ骨伝導性である、骨移植片材料を提供する。
【0038】
実施例2
本実施例は、本発明の非限定的な例示的な実施形態による、骨誘導性脱塩骨と骨伝導性皮質骨−海綿骨チップとの混合物中に、骨原性幹細胞を含む、例示的な骨移植片を作製する方法に関する別の実施形態を示す。
【0039】
長骨由来の皮質骨及び海綿骨(大腿骨、脛骨、橈骨、及び尺骨等)を分離することができる。皮質骨を骨髄から分離し、リン酸緩衝食塩水(PBS)溶液ですすぎ、加工して、比較的高い長さ対幅の比を有するチップ(例えば、250ミクロン〜3mmのサイズ)を得る。皮質骨チップ/繊維を、次いで、0.5〜0.7NのHClで15〜40分間処理してもよい。処理の最後に、HClをデカンテーションし、pHが6.5〜7になるまでチップを脱イオン(DI)水ですすいでもよい。チップは、次いで、凍結乾燥させ、室温で保管することができる。
【0040】
顆部を、ボーンミルを用いて粉砕して、0.05〜1.5mmの範囲の海綿骨チップを得ることができる。新鮮凍結顆部に由来する海綿骨チップは、例えば、0.9%の生理食塩水で2〜3回以上すすぐことによって分離される。すすいだ後、チップを、0.3〜0.5%の生理食塩水で処理してもよい。海綿骨チップ及び皮質骨繊維を、1:1の比率で混合し、凍結培地(最小必須培地)及び10%ジメチルスルホキシドと混合してもよい。
【0041】
この最終生成物は、−80℃から−180℃の温度で保管され得る。
【0042】
前述の説明において、本発明は、その特定の実施形態に関連して説明されている。しかしながら、様々な修正及び変更が本発明の広範な趣旨及び範囲から逸脱することなくそれらになされてもよいことは、明らかであろう。したがって、そのような変更及び修正が添付の特許請求の範囲により定められる本発明の範囲内に含まれることが、意図される。本明細書及び図面は、したがって、限定的な意味ではなく、例示的であると見なされるものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の非限定的な実施例による、骨移植片を調製する例示的な方法のフローチャートである。