【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様において、上記目的は、関心被検体の少なくとも一部の磁気共鳴画像を収集するように構成された磁気共鳴撮像システムであって、
スキャナユニットであり、
中心軸に沿って配置された磁石ボアを備えた主磁石であり、少なくとも磁石ボア内に静磁場B
0を生成するように構成された主磁石、
磁石ボア内に提供される検査空間であり、磁気共鳴画像の収集中に当該検査空間内に関心被検体の少なくとも一部が位置付けられる、検査空間、
磁石ボア内に配置されたボアカバーであり、中心軸に関する半径方向に垂直に検査空間の範囲を定めるボアカバー、及び
検査空間内に関心被検体の少なくとも一部を位置付けるために関心被検体を検査空間に入れるために設けられた中心軸の周りの開口、を持つ正面カバー、
を含むスキャナユニットと、
複数の照明要素を有するボア領域照明ユニットであり、当該ボア領域照明ユニットは、ボア領域に照明状況を生成するように構成され、
照明要素のうちの少なくとも一部がオンに切り換えられるときに、中心軸の周りの方位角の少なくとも或る連続した範囲で、面積平均された輝度関連光度パラメータの空間的に次第に変化する分布がボア領域に生成されるようにされ、及び/又は
照明要素のうちの少なくとも一部が、正面カバーの外表面に規則的なパターンで配置される、
ボア領域照明ユニットと、
を有する磁気共鳴撮像システム、によって達成される。
【0010】
正面カバーに配置されたボア領域照明ユニットの照明要素は、少なくとも1つの動作状態において、正面カバーにおける照明状況を生成するように構成される。
【0011】
正面カバーの直前で中心軸に対して垂直に配置される仮想平面の、方位角方向に配置された複数の環状領域における位置で、面積平均された輝度関連光度パラメータが、少なくとも中心軸の周りの方位角の連続した範囲に関して、中心軸に向かって半径方向に低下する。
【0012】
あるいは、ボア領域照明ユニットは、少なくとも1つの動作状態においてボアカバーにおける照明状況を生成するように構成された、ボアカバーに配置された少なくとも1つの照明要素を有するボアカバー照明ユニットを含む。ボアカバー照明ユニットによってボアカバーが少なくとも部分的に照らされる場合に、仮想平面の方位角方向に配置された複数の環状領域における位置で、面積平均された輝度関連光度パラメータが、少なくとも中心軸の周りの方位角の連続した範囲に関して、中心軸に向かって半径方向に上昇する。
【0013】
“ボア領域”なる表現は、本出願で使用されるとき、特に、ボアと、ボアカバーと、ボアの開口及び近位端に隣接した正面カバーの部分とを包含するように理解されるべきである。正面カバーのこの部分の幅は、正面カバーの幅全体のうちの、好ましくは20%よりも広く、より好ましくは30%よりも広く、そして更に好ましくは50%よりも大きい。
【0014】
“照明要素”なる表現は、本出願で使用されるとき、特に、電球型の光源、光ファイバ端、及び発光ダイオード(LED)とともに、背後から照らされるその他は不透明な材料の半透明部分をも包含するように理解されるべきである。中心軸の周りの方位角の連続した範囲は、好ましくはπ/2と2πとの間、より好ましくはπと2πとの間である。
【0015】
斯くして、ボア領域の寸法はもはや関心被検体の注目の的でなくなるか、ボア領域の寸法が関心被検体の感じ方において大きくなるかの何れかとなる。関心被検体の注意を逸らせることに好適な、又は磁石ボアの寸法に関する関心被検体の光学的な感じ方に影響を及ぼすことに好適な照明状況を容易に生成することができる。それにより、ボア領域を見ることで関心被検体に生じ得る不安、威嚇的、又は不快な感情を回避することができる。関心被検体は、もっとリラックスした状態で検査空間内に位置することができ、磁気共鳴画像の乱されない収集のための重要な必要条件として、関心対象の改善された協力を達成することができる。明らかなように、関心被検体の光学的な感じ方に影響を及ぼすことは、検査空間内に位置付けられる前に特に重要なことである。
【0016】
照明要素のうちの少なくとも一部がオンに切り換えられるときに、中心軸の周りの方位角の少なくとも或る連続した範囲で、面積平均された輝度関連光度パラメータの空間的に次第に変化する分布が、正面カバーとボアカバーとの境界部に生成されるように、ボア領域に照明状況を生成するように構成される照明要素によって、正面カバーとボアカバーとの境界部で、暗めの領域と明るめの領域との間の光学的に鋭いエッジが抑制又は回避され得る。これは、ボアの半径寸法を光学的に拡大させることになり、ひいてはそれにより、関心被検体における不安を軽減し得る。好ましくは、この光分布は、正面カバーの幅全体のうちの20%よりも広い、より好ましくは30%よりも広い、そして更に好ましくは50%よりも大きい正面カバーの部分の幅にわたって延在する。
【0017】
ボアを光学的に拡大することのこの効果は、例えば、ボア内にボア照明が存在しない又は薄暗い照明のみが存在するときに、面積平均された輝度関連光度パラメータを中心軸に向けて半径方向に徐々に小さくすることによって達成され得る。この効果はまた、例えば、ボア(の一部)及び正面カバー(の一部)の双方を照明することによって達成され得る。この効果はまた、ボア内にボア照明が存在しない又は薄暗い照明のみが存在するときに、幾らか規則的なパターンの使用によって、例えば、中心軸に向けて半径方向に減少する平均輝度関連光度パラメータを持つ規則的なドット又は同心円の使用によって達成され得る。これは、例えば、1つずつのドットの光強度を中心軸に向けて低下させることによって、又はドットの密度を中心軸に向けて低下させることによって達成され得る。また、例えば、この効果は、ボアカバーも照明されるときに、ドット又は同心円の面積平均輝度関連光度パラメータを中心軸に向けて半径方向に増大させることによって達成され得る。これらの手段は、正面カバーとボアカバーとの間の境界部で暗めの領域と明るめの領域との間の光学的に鋭いエッジが抑制又は回避されることを達成する。
【0018】
正面カバー及びボアカバーは、それらの外表面が滑らかな移行を形成するように設計され得る。この場合、正面カバーは、中心軸に対する外表面の半径寸法が、ボアカバー表面の寸法と比較して大きくところで始まると理解されるべきである。
【0019】
他の一実施形態によれば、ボア領域照明ユニットは正面カバー照明のみを有する。
【0020】
他の一好適実施形態において、正面カバーは少なくとも部分的に、半透明材料から製造され、この半透明材料が、少なくとも1つの動作状態において、背後からボアカバー照明ユニットによって照らされる。“少なくとも部分的に”なる表現は、本出願で使用されるとき、特に、正面カバーが完全に半透明材料から製造されることをも包含するように理解されるべきである。斯くして、特にボアカバーの近位端に隣接する正面カバー領域において、正面カバーを影なく照明することが達成され得る。それにより、磁石ボアの半径寸法の増大という光学的な錯覚が関心被検体に生成され得る。
【0021】
更なる他の一好適実施形態において、正面カバー及びボアカバーの双方が少なくとも部分的に半透明材料から製造され、少なくとも1つの動作状態において、正面カバーが背後から正面カバー照明ユニットによって照らされ、且つボアカバーが背後からボアカバー照明ユニットによって照らされる。
【0022】
更なる他の一好適実施形態において、正面カバー照明ユニットは、正面カバーの外表面に規則的なパターンで配置された複数の照明要素を有する。斯くして、関心被検体の注意を磁石ボアの半径寸法から容易に逸らすことができ、且つ/或いは照明要素によって磁石ボアをカモフラージュすることができる。
【0023】
一実施形態において、正面カバーは完全に、半透明又は透明な材料から製造され、少なくとも1つの動作状態において、背後からボアカバー照明ユニットの光源によって照らされる。正面カバーの正面又は背面の何れかに不透明フォイルが取り付けられ、不透明フォイルの開口部によって照明要素が実現される。
【0024】
好ましくは、規則的なパターンは、中心軸の周りの完全な円の少なくとも1つの連続した角度セグメントの中に配置される。斯くして、完全な円の1つの連続した角度セグメントの中のみで正面カバーに照明要素を設けることによって、関心被検体の注意を磁石ボアの半径寸法から効果的に逸らせることができる。
【0025】
一実施形態において、完全円の第1連続セグメント内に第1規則的パターンが配置され、第1連続セグメントとは異なる完全円の第2連続セグメント内に第2規則的パターンが配置される。第1連続セグメントと第2連続セグメントとで、中心軸の周りの完全円を構築してもよいし、あるいは、それらで完全円のうちの或るセグメントのみを形成してもよい。それにより、ボア領域に照明状況を生成することの実行可能な選択肢が提供され得る。
【0026】
正面カバーの外表面にある照明要素の形状が、円形ドット、半径方向に配列されたストライプ、及び方位角方向に配列されたストライプからなる群から選択される場合、関心被検体の注意を磁石ボアの半径寸法から効果的に逸らす照明状況を生成することができる。用語“半径方向”及び“方位角方向”は、本出願で使用されるとき、特に、上記中心軸がz軸を形成すること関する円筒座標系を参照してのものと理解されるべきである。
【0027】
他の一好適実施形態において、正面カバー照明ユニットの各照明要素の光度パラメータが、中心軸までの該照明要素の半径方向距離に応じて上昇又は低下する。なお、光度パラメータは、人間の眼の感度の標準化されたモデルである光度関数に基づく。斯くして、磁石ボアの横方向寸法に関する光学的な錯覚を生み出す照明状況を生成することができる。
【0028】
ルーメン単位で表される照明要素の光束は、好適な輝度関連光度パラメータとしての役割を果たすことができる。輝度関連光度パラメータは、ルクス(lux)=ルーメン/m
2の単位で表される照度としてもよい。概して、当業者に好適であると思われるその他の光度パラメータが、代わりに使用されてもよい。
【0029】
複数の異なる照明要素の場合、それにわたって輝度関連光度パラメータの平均を取るべき面積は、照明要素間の距離に基づいて選定され得る。例えば、この面積は、各環状領域が指定数の照明要素をカバーするように選定された、方位角方向に配列された環状領域の面積によって与えられ得る。好ましくは、各環状領域が、少なくとも2個の照明要素、より好ましくは少なくとも5個の照明要素、そして更に好ましくは少なくとも10個の照明要素をカバーする。
【0030】
斯くして、ボアカバーの照明が正面カバーまで拡大されるように見えて、ボアカバーと正面カバーとの間の移行領域を覆い隠すことで、関心被検体がそれらを区別することをいっそう困難にすることによって、磁石ボアの半径寸法に関する光学的な錯覚を生成することができ、それが結果として、関心被検体に、実際よりも大きい磁石ボアの半径寸法を光学的に知覚させる。
【0031】
他の一好適実施形態において、中心軸に向かって半径方向に関して取られた、面積平均された輝度関連光度パラメータ関数の一次導関数が、正面カバーの直前で中心軸に対して垂直に配置される仮想平面上の位置で、中心軸の周りの方位角の少なくとも或る連続した範囲に関して、少なくとも、ボア領域照明ユニットの最も外側の照明要素の中心軸からの距離とボアカバーの半径寸法とによって与えられる半径方向のインターバル内で、数学的な意味で連続である。それにより、ボア領域内の影又は暗/明コントラストゾーンを回避することができ、ボアカバーと正面カバーとの間の移行領域を効果的に覆い隠し、そして、磁石ボアの半径寸法に関して生成される光学的な錯覚を、関心被検体にとってますます信じられるものとする。
【0032】
特に、面積平均された輝度関連光度パラメータの最大値が、磁石ボアの外側で、正面カバー表面上に置かれることで、より大きい半径寸法の磁石ボアの方へと、関心被検体の光学的な感じ方に影響を及ぼし得る。
【0033】
一実施形態において、ボア領域照明ユニットは、少なくとも1つの動作状態において、照明要素のうちの少なくとも1つを、該照明要素の、照明されるオン状態と消光されるオフ状態との間で、動的に切り換えるように構成される。斯くして、関心被検体の注意を磁石ボアの半径寸法から効果的に逸らせることができる。
【0034】
他の一実施形態において、ボア領域照明ユニットが、少なくとも1つの動作状態において、少なくとも、照明要素のうちの少なくとも1つの色の変化を起動するように構成される場合にも、同じ効果を達成することができる。例えば、この少なくとも1つの照明要素は、マルチカラー発光ダイオードを有することができ、ボア領域照明ユニットは、異なる色の光を放出するようにこのLEDを作動させるように構成される。
【0035】
本発明の他の一態様において、関心被検体の少なくとも一部の磁気共鳴画像を収集するように構成される磁気共鳴撮像システムでの使用のためのボア領域照明ユニットが提供される。さらに、磁気共鳴撮像システムは、中心軸に沿って配置された磁石ボアを備えた主磁石を持つスキャナユニットを有する。主磁石は、少なくとも磁石ボア内に静磁場B
0を生成するように構成され、更に、磁石ボア内に提供される検査空間であり、当該検査空間内に関心被検体の少なくとも一部が位置付けられる、検査空間と、磁石ボア内に配置されたボアカバーであり、中心軸に対して垂直に検査空間の範囲を定めるボアカバーとを有し、更に、検査空間内に関心被検体の少なくとも一部を位置付けるために関心被検体を検査空間に入れるために設けられた中心軸の周りの開口、を持つ正面カバーを有する。
【0036】
当該ボア領域照明ユニットは、複数の照明要素を有しており、且つ、照明要素のうちの少なくとも一部がオンに切り換えられるときに、中心軸の周りの方位角の少なくとも或る連続した範囲で、面積平均された輝度関連光度パラメータの空間的に次第に変化する分布がボア領域に生成されるように、ボア領域に照明状況を生成するように構成され、及び/又は、照明要素のうちの少なくとも一部が、正面カバーの外表面に規則的なパターンで配置される。
【0037】
正面カバーに配置された当該ボア領域照明ユニットの照明要素が、少なくとも1つの動作状態において、正面カバーにおける照明状況を生成するように構成される。
【0038】
正面カバーの直前で中心軸に対して垂直に配置される仮想平面の、方位角方向に配置された複数の環状領域における位置で、面積平均された輝度関連光度パラメータが、少なくとも中心軸の周りの方位角の連続した範囲に関して、中心軸に向かって半径方向に低下する。
【0039】
あるいは、当該ボア領域照明ユニットは、少なくとも1つの動作状態においてボアカバーにおける照明状況を生成するように構成された、ボアカバーに配置された少なくとも1つの照明要素を有するボアカバー照明ユニットを含み、該ボアカバー照明ユニットによってボアカバーが少なくとも部分的に照らされる場合に、仮想平面の方位角方向に配置された複数の環状領域における位置で、面積平均された輝度関連光度パラメータが、少なくとも中心軸の周りの方位角の連続した範囲に関して、中心軸に向かって半径方向に上昇する。
【0040】
本発明に従ったボア領域照明ユニットの更なる実施形態に関して、ここで、本発明に従った磁気共鳴撮像システムの開示を明示的に参照する。磁気共鳴撮像システムのボア領域照明ユニットに関して先述した特徴は、本発明に従ったボア領域照明ユニットにも適用可能であることが理解されるのであり、ボア領域照明ユニットそれ自体に関しても同様に開示されていると見なされるべきである。