(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レーザ光を反射する少なくとも2つのガルバノミラー及び前記ガルバノミラーをそれぞれ回転駆動させるガルバノモータを有し、ワークに対してレーザ光を走査可能なスキャナヘッドと、
前記スキャナヘッドを前記ワークに対して移動させる移動手段と、
前記移動手段を制御することにより、教示された通りの加工経路に沿って前記スキャナヘッドを移動させる移動制御装置と、
前記スキャナヘッドから前記ワークに対して、前記スキャナヘッドの移動方向に対して交差する方向にレーザ光が走査されるように、前記ガルバノモータの回転駆動角度を制御するガルバノモータ制御部を有するスキャナ制御装置と、を備えるレーザ加工装置であって、
前記移動制御装置は、前記スキャナヘッドの移動方向に対する前記スキャナヘッドの回転角度を検出する回転角度検出部を有し、
前記スキャナ制御装置は、前記回転角度検出部によって検出された前記スキャナヘッドの回転角度のデータを受け取り、前記回転角度のデータから、前記スキャナヘッドの移動方向に対してレーザ光が交差する方向が所定の方向となる前記ガルバノミラーの回転駆動角度を算出するミラー角度算出部を有し、
前記スキャナ制御装置の前記ガルバノモータ制御部は、前記ガルバノミラーの回転駆動角度が前記ミラー角度算出部によって算出された回転駆動角度となるように前記ガルバノモータを制御する、レーザ加工装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[レーザ加工装置の全体構成]
図1は、本発明に係るレーザ加工装置の全体構成を示すブロック図であり、リモートレーザ溶接ロボットシステムとして構成されたレーザ加工装置の一実施形態を示している。
図2は、本発明に係るレーザ加工装置におけるスキャナヘッドの光学系を説明する図である。
図1、
図2に示すレーザ加工装置の全体構成は、後述する各実施形態に共通の構成である。
レーザ加工装置1は、ロボット2と、レーザ発振器3と、スキャナヘッド4と、ロボット制御装置5と、スキャナ制御装置6とを備える。
【0016】
ロボット2は、複数の関節を有する多関節ロボットであり、基部21と、アーム22と、複数のY方向に延びる回転軸を有する関節軸23a〜23dを備える。また、ロボット2は、Z方向を回転軸としてアーム22を回転移動させるロボットモータ(図示せず)、各関節軸23a〜23dを回転させてアーム22をX方向に移動させるロボットモータ(図示せず)等の複数のロボットモータを有する。各ロボットモータは、後述するロボット制御装置5からの駆動データに基づいてそれぞれ回転駆動する。
【0017】
ロボット2のアーム22の先端部22aにスキャナヘッド4が固定されている。従って、ロボット2は、各ロボットモータの回転駆動によって、スキャナヘッド4を所定のロボット速度で、所定のX、Y方向に移動させることができる。
このロボット2は、本発明の移動手段の一例である。
【0018】
レーザ発振器3は、レーザ媒質、光共振器及び励起源等(いずれも図示せず)から構成される。レーザ発振器3は、後述するスキャナ制御装置6からのレーザ出力指令に基づくレーザ出力のレーザ光を生成し、生成したレーザ光をスキャナヘッド4に出射する。
【0019】
スキャナヘッド4は、レーザ発振器3から出射されるレーザ光Lを受けて、ワーク10に対してレーザ光Lを走査可能なガルバノスキャナである。
図2に示すように、スキャナヘッド4は、レーザ発振器3から出射されるレーザ光Lを反射させる2つのガルバノミラー41、42と、ガルバノミラー41、42をそれぞれ回転駆動するガルバノモータ41a、42aと、カバーガラス43とを備える。
【0020】
ガルバノミラー41、42は、互いに直交する2つの回転軸J1、J2回りにそれぞれ回転可能に構成される。ガルバノモータ41a、42aは、後述するスキャナ制御装置6からの駆動データに基づいて回転駆動し、ガルバノミラー41、42を回転軸J1、J2回りに独立して回転させる。
【0021】
レーザ発振器3から出射されたレーザ光Lは、2つのガルバノミラー41、42で順次反射された後にスキャナヘッド4から出射され、ワーク10の加工点(溶接点)に到達する。このとき、ガルバノモータ41a、42aにより2つのガルバノミラー41、42がそれぞれ回転すると、これらガルバノミラー41、42に入射するレーザ光Lの入射角が連続的に変化する。その結果、スキャナヘッド4からワーク10に対して所定の経路でレーザ光Lが走査され、そのレーザ光Lの走査経路に沿ってワーク10上に溶接軌跡を形成するようになっている。
【0022】
スキャナヘッド4からワーク10上に出射されるレーザ光Lの走査経路は、ガルバノモータ41a、42aの回転駆動を適宜制御してガルバノミラー41、42のそれぞれの回転角度を変化させることにより、X、Y方向に任意に変化させることができる。
【0023】
カバーガラス43は、円柱状であり、ガルバノミラー41、42によって順次反射されてワーク10に向かうレーザ光Lを透過すると共に、スキャナヘッド4の内部を保護する機能を有する。
【0024】
ロボット制御装置5は、ロボット2の各ロボットモータに駆動制御データを出力してロボット2の動作を制御する。すなわち、ロボット制御装置5は、各ロボットモータに駆動制御データを出力して各ロボットモータの回転駆動を制御することにより、アーム22の先端部22aに取り付けられたスキャナヘッド4をワーク10に対してX、Y方向に移動させる。
このロボット制御装置5は、本発明の移動制御手段の一例である。
【0025】
スキャナ制御装置6は、レーザ発振器3に対して所望の出力のレーザ光が出射されるようにレーザ出力指令を出力すると共に、スキャナヘッド4のガルバノモータ41a、42aに駆動制御データを出力することによりガルバノミラー41、42を回転させ、スキャナヘッド4からワーク10に対して出射されるレーザ光Lの走査を制御する。
【0026】
なお、以下に説明する各実施形態におけるスキャナ制御装置6は、スキャナヘッド4の移動方向に対してレーザ光Lの交差する方向が直交する方向となるようにスキャナヘッド4を制御することにより、ワーク10に対して所定の振り幅W及び所定のピッチPでレーザ光Lが走査される場合について説明する。これにより、ワーク10上にはジグザグ状の溶接軌跡が形成される。
【0027】
[第1の実施形態]
次に、これらロボット制御装置5及びスキャナ制御装置6の更に詳細な構成について、
図3に示すブロック図を用いて説明する。
図3は、第1の実施形態に係るレーザ加工装置1のロボット制御装置5及びスキャナ制御装置6の構成を示すブロック図である。
ロボット制御装置5は、プログラム解析部5aと、補間部5bと、加減速計算部5cと、ロボットモータ制御部5dと、回転角度検出部5eとを有する。
【0028】
プログラム解析部5aは、図示しない入力装置からロボット制御装置5に入力された教示点を含む溶接プログラムを解析し、スキャナヘッド4の移動方向と目標とするロボット速度に関する動作指令情報を生成する。生成された動作指令情報は補間部5bに出力される。
【0029】
補間部5bは、プログラム解析部5aから出力された動作指令情報に基づいて、教示点間のスキャナヘッド4の移動経路がワーク10上の所望の加工経路に沿う滑らかな経路となるように補間を行う。この補間の種類は、加工経路に応じて直線及び曲線を含む。生成された補間情報は加減速計算部5cに出力される。
【0030】
加減速計算部5cは、補間部5bから出力された補間情報と予め設定されている各パラメータとに基づいて、ロボット2の動作の加減速処理を行い、スキャナヘッド4を所望の加工経路に沿って移動させるための各ロボットモータの駆動情報を生成する。生成された各ロボットモータの駆動情報はロボットモータ制御部5dに出力される。生成された各ロボットモータの駆動情報は回転角度検出部5eにも出力される。
【0031】
ロボットモータ制御部5dは、加減速計算部5cから出力された駆動情報に基づいて各ロボットモータの駆動データを生成し、生成された駆動データに基づいて各ロボットモータを駆動する。
【0032】
回転角度検出部5eは、加減速計算部5cから出力された各ロボットモータの駆動情報から、アーム22の先端部22aに取り付けられたスキャナヘッド4の移動方向に対するスキャナヘッド4の回転角度(本実施形態においては、Z方向を回転軸とする回転角度)を検出する。スキャナヘッド4の移動方向及び回転角度はアーム22の動作によって決定される。そして、このアーム22の動作は、各ロボットモータの駆動情報によって検出できるからである。
【0033】
回転角度は、ロボットモータの駆動情報から所定の演算式によって求めるようにしてもよいし、あるいは、ロボットモータの駆動情報とスキャナヘッド4の回転角度とを関連付けたデータテーブルを用意しておき、このデータテーブルに基づいて求めるようにしてもよい。
【0034】
回転角度検出部5eによるスキャナヘッド4の回転角度の検出は、予め設定された所定の制御周期毎に行われる。そして、回転角度検出部5eは、スキャナヘッド4の回転角度のデータを所定の制御周期毎に生成すると、その都度、生成した回転角度のデータを、後述するスキャナ制御装置6のミラー角度算出部6gに出力する。
【0035】
スキャナ制御装置6は、プログラム解析部6aと、補間部6bと、走査速度算出部6cと、加減速計算部6dと、ガルバノモータ制御部6eと、レーザ指令出力部6fと、ミラー角度算出部6gとを有する。
【0036】
プログラム解析部6aは、図示しない入力装置からスキャナ制御装置6に入力された溶接プログラムを解析し、スキャナヘッド4の走査方向と目標とするロボット速度に関する動作指令情報を生成する。そして、プログラム解析部6aは、生成された動作指令情報を補間部6bに出力すると共に、スキャナヘッド4から出射されるレーザ光Lのレーザ出力情報を生成し、生成されたレーザ出力情報をレーザ指令出力部6fに出力する。
【0037】
補間部6bは、プログラム解析部6aから出力された動作指令情報に基づいてスキャナヘッド4の移動経路の補間を行い、補間情報を生成する。生成された補間情報は走査速度算出部6cに出力される。
【0038】
走査速度算出部6cは、レーザ光Lの走査速度を算出する。この走査速度は、ガルバノミラー41、42を回転させる速度(周波数)であり、プログラム解析部6aによって得られた目標とするロボット速度を含む補間情報であって補間部6bから出力された補間情報、及び、後述するミラー角度算出部6gから出力された各ガルバノミラー41、42の回転駆動角度の情報に基づいて算出される。走査速度算出部6cによって算出された走査速度のデータは加減速計算部6dに出力される。
【0039】
加減速計算部6dは、走査速度算出部6cから出力されたガルバノミラー41、42の回転速度の情報と各パラメータとに基づいて、ガルバノモータ41a、42aの加減速処理を行い、レーザ光Lを所定の走査速度及び所定の走査方向で走査させるための各ガルバノモータ41a、42aの駆動情報を生成する。生成された各ガルバノモータ41a、42aの駆動情報はガルバノモータ制御部6eに出力される。
【0040】
ガルバノモータ制御部6eは、加減速計算部6dから出力された駆動情報に基づいて各ガルバノモータ41a、42aの駆動制御データを生成し、生成された駆動制御データに基づいて各ガルバノモータ41a、42aを駆動する。
【0041】
レーザ指令出力部6fは、スキャナヘッド4から出射されるレーザ光Lがプログラム解析部6aから出力されたレーザ出力情報に基づく所望のレーザ出力となるように、レーザ発振器3にレーザ出力指令を出力する。
【0042】
ミラー角度算出部6gは、ロボット制御装置5の回転角度検出部5eから所定の制御周期毎にスキャナヘッド4の回転角度のデータを受け取ると、その都度、受け取った回転角度のデータに基づいて、レーザ光Lが所定の振り幅Wであり、且つ、スキャナヘッド4の移動方向に対してレーザ光Lが交差する方向が直交する方向となる各ガルバノミラー41、42の最適な回転駆動角度を算出する。算出された回転駆動角度の情報は、前述の走査速度算出部6cに出力される。従って、走査速度算出部6cは、所定の制御周期毎に、レーザ光Lが所定の走査速度及び所定の走査方向になるような各ガルバノモータ41a、42aの駆動情報を生成し、その都度、生成された各ガルバノモータ41a、42aの駆動情報を加減速計算部6dに出力する。
【0043】
次に、第1の実施形態に係るレーザ加工装置1の作用及び効果について、
図4〜
図6A、
図6Bを用いて説明する。
図4は、スキャナヘッド4の回転角度がずれた状態を模式的に示す図であり、
図5は、
図4に示すスキャナヘッド4によってワーク10上に形成される溶接軌跡を示す図であり、
図6A、
図6Bは、スキャナヘッド4の回転角度と加工経路に対する溶接軌跡を示す図である。なお、
図4〜
図6A、
図6Bにおける紙面がワーク10の表面である。
【0044】
レーザ加工装置1のロボット制御装置5は、各ロボットモータを駆動制御することにより、教示された通りの加工経路に沿って所定のロボット速度でスキャナヘッド4を移動させる。これにより、スキャナヘッド4は、加工経路に沿う方向(
図4、
図5中に白抜き矢印で示す方向)に所定の速度で移動する。そして、レーザ加工装置1のスキャナ制御装置6は、スキャナヘッド4の加工経路に沿う移動の過程で、スキャナヘッド4の移動方向に対してレーザ光Lが交差する方向が直交する方向となるように各ガルバノモータ41a、42aを回転駆動し、ガルバノミラー41、42を独立して回転させる。
【0045】
ここで、
図4に示すように、スキャナヘッド4の移動方向に対するスキャナヘッド4の回転角度が、角度θだけ傾斜した場合、この角度θは、ロボット2の各ロボットモータの駆動情報に基づいて、所定の制御周期毎に、ロボット制御装置5の回転角度検出部5eによって検出される。検出された回転角度のデータは、その都度、スキャナ制御装置6のミラー角度算出部6gに出力される。スキャナ制御装置6は、ロボット制御装置5からスキャナヘッド4の回転角度のデータを受け取る度に、レーザ光Lが所定の振り幅Wであり、且つ、スキャナヘッド4の移動方向に対してレーザ光Lが交差する方向が直交する方向となるような最適なガルバノミラー41、42の回転駆動角度を算出する。そして、スキャナ制御装置6は、その算出結果に基づいて各ガルバノモータ41a、42aを回転駆動する。
【0046】
これにより、スキャナヘッド4から出射されるレーザ光Lは、スキャナヘッド4の移動方向に対するスキャナヘッド4の回転角度が角度θだけずれても、加工経路に対して直交する所望の方向に走査される。その結果、
図5に示すように、ワーク10上の加工経路に対して所定の方向に交差する所定の振り幅Wのジグザグ状の溶接軌跡20が形成される。
【0047】
このように、第1の実施形態に係るレーザ加工装置1によれば、スキャナヘッド4の移動方向に対してスキャナヘッド4の回転角度がずれることがあっても、ロボット2の先端点を加工経路に沿って教示するだけで、スキャナヘッド4から出射されるレーザ光Lを、ワーク10に対して所定の方向に走査させることができる。
【0048】
従って、例えば
図6Aに示すように、ワーク10に対するスキャナヘッド4の回転角度に変化はなくても、スキャナヘッド4の移動方向が加工経路に沿ってY方向に変化する場合や、例えば
図6Bに示すように、ワーク10に対するスキャナヘッド4の回転角度が90°変化し、更に、スキャナヘッド4の移動方向が加工経路に沿ってY方向に変化する場合であっても、このレーザ加工装置1は、加工経路に対して所定の方向に交差する所定の振り幅の溶接軌跡20を形成することができ、溶接品質を維持することができる。
【0049】
スキャナヘッド4の移動方向に対するスキャナヘッド4の回転角度は、
図6A、
図6Bに示すようにずれるものに何ら制限されない。本発明に係るレーザ加工装置1は、スキャナヘッド4の移動方向に対するスキャナヘッド4の回転角度が僅かにずれる場合でも、上述したように、加工経路に対して所定の方向に交差する所定の振り幅の溶接軌跡を形成することができる。
【0050】
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態に係るレーザ加工装置1のロボット制御装置5及びスキャナ制御装置6の構成を示すブロック図である。
図3に示すブロック図と同一符号の部位は同一構成の部位であるため、以下でする説明以外の説明は、
図3に示すブロック図における説明を援用し、ここでの説明は省略する。
第2の実施形態におけるロボット制御装置5は、第1の実施形態におけるロボット制御装置5に、移動速度検出部5fが付加されている。
【0051】
ロボット制御装置5の移動速度検出部5fは、回転角度検出部5eと同じく所定の制御周期毎に、ロボット2によって移動されるスキャナヘッド4の移動速度を検出する。このスキャナヘッド4の移動速度は、ロボット制御装置5の加減速計算部5cからロボットモータ制御部5dに出力される駆動情報から検出される。従って、第2の実施形態におけるロボット制御装置5の加減速計算部5cは、生成した各ロボットモータの駆動情報を移動速度検出部5fにも出力するようになっている。
【0052】
移動速度検出部5fは、所定の制御周期毎に、加減速計算部5cから出力された各ロボットモータの駆動情報から、加工経路に沿ってスキャナヘッド4を移動させる際に刻々と変化するロボット速度を検出し、ワーク10に対するスキャナヘッド4の移動速度を算出する。算出された移動速度のデータは、その都度、スキャナ制御装置6の走査速度算出部6cに出力される。
【0053】
第2の実施形態におけるスキャナ制御装置6の走査速度算出部6cは、所定の制御周期毎に、移動速度検出部5fによって検出されたスキャナヘッド4の移動速度のデータを受け取る。そして、走査速度算出部6cは、受け取った移動速度のデータと、補間部6bから出力された補間情報と、ミラー角度算出部6gから出力されたガルバノミラー41、42の回転駆動角度のデータに基づいて、
図8に示すように、レーザ光Lの走査速度K:ロボット速度V=振り幅W:ピッチP/2の関係を満たすようなレーザ光Lの新たな走査速度K(K=2VW/P)を算出する。このレーザ光Lの走査速度Kは、ワーク10に対するレーザ光Lの溶接軌跡20が常に所定のピッチPとなる走査速度となる。
【0054】
走査速度算出部6cによって算出された走査速度のデータは加減速計算部6dに出力される。その結果、スキャナ制御装置6は、走査速度算出部6cによって算出された新たな走査速度でレーザ光Lが走査されるようにガルバノモータ41a、42aの駆動を制御する。
【0055】
次に、第2の実施形態に係るレーザ加工装置1の作用及び効果について説明する。
まず、スキャナヘッド4の移動速度は、ワーク10上の加工経路が曲線を含む場合、一定にならないことがある。これは、目標とするロボット速度でスキャナヘッド4を移動させても、例えば曲線が始まる位置や曲線が終わる位置等でロボット速度に必然的に加減速が生じるためである。その結果、スキャナヘッド4からワーク10に対して所定の振り幅Wでレーザ光Lを走査しても、ロボット速度の変動に応じて溶接軌跡20のピッチPが変動する場合がある。
【0056】
しかし、この第2の実施形態におけるスキャナ制御装置6は、走査速度算出部6cにおいて、走査速度K:ロボット速度V=振り幅W:ピッチP/2の関係から、所定の制御周期毎にロボット速度Vに同期した新たな走査速度K(K=2VW/P)を算出する。このため、第2の実施形態に係るレーザ加工装置1によれば、前述した第1の実施形態に係るレーザ加工装置1の効果に加えて、レーザ加工中にロボット2のロボット速度に加減速が生じてスキャナヘッド4の移動速度が変動しても、そのスキャナヘッド4の移動速度に同期した最適なレーザ光Lの走査速度でワーク10上にレーザ光Lを走査することができる効果が得られる。従って、この第2の実施形態に係るレーザ加工装置1は、ワーク10上の加工経路に対して所定のピッチPの溶接軌跡20を形成することができ、溶接品質を向上させることができる。
【0057】
[第3の実施形態]
図9は、第3の実施形態に係るレーザ加工装置1のロボット制御装置5及びスキャナ制御装置6の構成を示すブロック図である。
図3及び
図7に示すブロック図と同一符号の部位は同一構成の部位であるため、以下でする説明以外の説明は、
図3及び
図7に示すブロック図における説明を援用し、ここでの説明は省略する。
第3の実施形態におけるスキャナ制御装置6は、第2の実施形態におけるスキャナ制御装置6に、変化量算出部6hとレーザ出力算出部6iが付加されている。
【0058】
変化量算出部6hは、予め設定された基準速度値に対する走査速度算出部6cによって算出された新たな走査速度の変化量を算出する。基準速度値は、補間部6bから出力された補間情報に基づいて走査速度算出部6cによって算出される初期速度値である。基準速度値は、スキャナヘッド4が目標とする一定のロボット速度で直線移動する際の速度によって規定される。変化量算出部6hは、所定の制御周期毎に、この基準速度値と走査速度算出部6cによって算出された新たな走査速度との差分である変化量を算出する。算出された変化量のデータは、レーザ出力算出部6iに出力される。
【0059】
レーザ出力算出部6iは、変化量算出部6hから出力された変化量のデータに基づいて、その変化量の増減に応じて増減した新たなレーザ出力を算出する。すなわち、基準速度値に対して新たな走査速度が増加した場合、より増加した新たなレーザ出力のデータがレーザ出力算出部6iによって得られる。一方、基準速度値に対して新たな走査速度が減少した場合、より減少した新たなレーザ出力のデータがレーザ出力算出部6iによって得られる。
【0060】
ここで、溶接速度F(溶接軌跡20に沿う速度)は、ロボット速度V、振り幅W及びピッチPとの関係で、F=V√(4W
2/P
2+1)となる。レーザ出力算出部6iは、基準レーザ出力をS
0、基準溶接速度をF
0としたとき、新たなレーザ出力Sとして、溶接速度Fに同期したレーザ出力S=S
0×F/F
0を求める。算出された新たなレーザ出力のデータはレーザ指令出力部6fに出力される。
【0061】
レーザ指令出力部6fは、変化量算出部6hから出力された新たなレーザ出力のデータに基づいて、スキャナヘッド4から出射されるレーザ光Lが、新たなレーザ出力のデータに基づくレーザ出力となるように、レーザ発振器3にレーザ出力指令を出力する。
【0062】
次に、第3の実施形態に係るレーザ加工装置1の作用及び効果について説明する。
一般に、スキャナヘッド4の移動速度が変化すると、それに応じて加工点(溶接点)に照射されるレーザ光Lの光量が増減し、ワーク10の溶け込み具合が変化する懸念がある。第3の実施形態に係るレーザ加工装置1は、スキャナヘッド4の移動速度の変化に応じてレーザ光Lの走査速度を増減させるので、レーザ光Lの走査速度の増減はスキャナヘッド4の移動速度の変動を示している。
【0063】
第3の実施形態におけるスキャナ制御装置6は、第2の実施形態におけるスキャナ制御装置6に変化量算出部6h及びレーザ出力算出部6iが付加されているので、第2の実施形態におけるレーザ加工装置1の効果に加えて、スキャナヘッド4の移動速度に応じた新たな走査速度でレーザ光Lを走査できると同時に、レーザ光Lの走査速度の増減に応じて増減したレーザ出力のレーザ光Lをワーク10上に対して出射することができる効果が得られる。従って、第3の実施形態におけるスキャナ制御装置6は、加工経路の曲線の入口や出口等でスキャナヘッド4の移動速度が増減し、それに応じてレーザ光Lの走査速度が変動しても、その走査速度の変動に応じてレーザ光Lの出力も増減されるので、ワーク10の溶け込み具合が不均一になることがなく、溶接品質を更に向上させることができる効果が得られる。
【0064】
以上の説明では、レーザ加工装置1は、スキャナヘッド4の移動方向に対してレーザ光Lを直交する方向に走査し、ワーク10上にジグザグ状の溶接軌跡を形成してウィービング溶接を行うものについて説明したが、これに制限されない。本発明におけるレーザ加工装置は、スキャナヘッド4からワーク10に対して、スキャナヘッド4の移動方向に対して交差する方向にレーザ光Lが走査されるものであればよい。従って、本発明に係るレーザ加工装置は、例えば
図10に示すように、スキャナヘッド4から所定の振り幅Wで楕円状にレーザ光Lを走査することにより、ワーク10上に所定のピッチPのコイル状の溶接軌跡20を形成するウォブリング溶接を行う場合にも適用することができる。
【0065】
また、以上の説明では、スキャナヘッド4の移動方向に対してレーザ光Lの交差する方向が直交する方向となる場合を例示したが、これに制限されない。本発明におけるレーザ加工装置は、スキャナヘッド4の移動方向に対してレーザ光Lが交差する方向となるようにスキャナヘッド4を制御するものであればよい。
【0066】
また、本発明に係るレーザ加工装置は、ロボット2によってスキャナヘッド4を移動させるものに限らず、例えばスキャナヘッドをガイドレールに沿って移動させるように構成されるものであってもよい。
【0067】
更に、本発明に係るレーザ加工装置におけるスキャナヘッドは、それぞれ独立したガルバノモータによって回転する3つ以上のガルバノミラーを有するものであってもよい。