特許第6588501号(P6588501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588501
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】起泡性液状調味料
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20191001BHJP
   A23L 27/50 20160101ALI20191001BHJP
   A23L 29/281 20160101ALI20191001BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20191001BHJP
【FI】
   A23L27/00 D
   A23L27/50 E
   A23L29/281
   A23L29/256
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-123431(P2017-123431)
(22)【出願日】2017年6月23日
(65)【公開番号】特開2019-4769(P2019-4769A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2018年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006770
【氏名又は名称】ヤマサ醤油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前川 達哉
(72)【発明者】
【氏名】土平 洋彰
(72)【発明者】
【氏名】向山 信
【審査官】 小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−198013(JP,A)
【文献】 特開2012−223186(JP,A)
【文献】 特開2009−284893(JP,A)
【文献】 特開2015−112031(JP,A)
【文献】 特開2016−086708(JP,A)
【文献】 特開2014−050326(JP,A)
【文献】 特開2013−252127(JP,A)
【文献】 特開昭48−026989(JP,A)
【文献】 不思議な調味料、もこもこ泡醤油。|ネコハウス、[online]、平成27年12月9日、[平成31年3月14日検索]、インターネット<URL: https://nekoie.com/awa_soysauce/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/50
A23L 27/00−27/40;27/60
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチンおよびゼリー強度10g〜100gの寒天を含有し、ゼラチンと寒天の添加重量の比が、ゼラチン:寒天比が400:1〜100:1である、起泡性液状調味料。
【請求項2】
寒天が、ゼリー強度20g〜100gの寒天である、請求項1記載の起泡性液状調味料。
【請求項3】
ゼラチンが豚に由来する、請求項1記載の起泡性液状調味料。
【請求項4】
液状調味料が醤油含有調味料である、請求項1記載の起泡性液状調味料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起泡性液状調味料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
起泡剤を添加した起泡性液状食品として、容器に密封して振とうすることにより起泡させるものや、フォーマー容器に充填し、該容器から吐出する際に起泡させるものが知られている。
【0003】
これらの起泡性液状食品では、好ましい性状の泡を生じさせることや、生じた泡を安定的に保持することが求められることから、従来各種の工夫がなされてきた。例としては、特定の分子量分布を有する大豆タンパク加水分解物を起泡剤として含む起泡性液状食品(特許文献1)や、大豆多糖類と、ゼラチン、コラーゲンペプチドまたはガム類を含む起泡させた液状飲食品(特許文献2)、ポリグリセリン脂肪酸エステルを起泡剤として含む液状食品(特許文献3)などが挙げられる。
【0004】
また、醤油やドレッシングなどの液状調味料に起泡性を付与し、食味を向上させる方法として、ゼラチンを添加することが知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−86708
【特許文献2】特開2015−112031
【特許文献3】特開2014−50326
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】NHKガッテン!ウェブサイト「快感!話題の泡レシピ」(http://www9.nhk.or.jp/gatten/articles/20140611/index.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、起泡性液状調味料において、その起泡性や、生じた泡の安定的維持は必ずしも満足できるものではなく、さらなる改善が求められていた。したがって本発明の課題は、泡立ちが良く、また生じた泡の維持性が高い起泡性液状調味料を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、好ましい起泡性液状調味料を得るべく検討を行った結果、たとえば起泡剤として知られているゼラチンを用いたとしても、泡の性状が好ましくなかったり、起泡後、常温で放置すると泡が保持されずに液体に戻ってしまうといった課題を有することを見出した。
【0009】
そこで、さらに鋭意検討を行ったところ、起泡剤としてのゼラチンを添加するにあたり、ゼラチンと、ゼリー強度10g〜150gの寒天を組み合わせて添加することにより、泡立てたときに良好な性状を有する泡が生じ、さらに泡の保持性を十分に有するきわめて好ましい起泡性液状調味料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0010】
本発明の起泡性液状調味料は、泡の保持性、形成される泡の弾力という点できわめてすぐれている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における「ゼリー強度」とは、ゼラチンにおいては、日本工業規格「にかわ及びゼラチン」において定められた方法によって測定された測定値(g)をいい、寒天においては、1.5%寒天溶液を調製し、20℃で15時間放置、凝固せしめたゲルについて、その表面1cm当たり20秒間耐え得る最大重量(g)をいう。
【0012】
本発明の起泡性液状調味料は、ゼラチンと低ゼリー強度寒天を含有することを特徴とする。
【0013】
本発明のゼラチンは、牛、豚などの哺乳類、鶏などの鳥類、またはサメなどの魚類等のいずれに由来するものでもよいが、哺乳類に由来するものが好ましく、中でも豚に由来するものが、ゼラチン臭さが少なく、添加後の泡状調味料の食味にすぐれるという理由で、とくに好ましい。
また、本発明におけるゼラチンは、ゼリー強度150g〜250gのものを用いると、起泡性にすぐれ、ゼラチン由来の臭みの少ない起泡性液状調味料が得られるという理由により好ましい。
【0014】
本発明における寒天とは、食用として用いられるものであれば、いずれも原料として使用することが可能である。また本発明の寒天は低ゼリー強度のものであることが必要であり、具体的には、1.5重量%寒天濃度でのゼリー強度10g〜150gであることが好ましく、20g〜100gであることがさらに好ましい。寒天のゼリー強度が高い場合、液状調味料のゲル化が進み過ぎて、泡を形成するためのチューブ部に詰まる場合などの不具合が生じる恐れがある。
【0015】
本発明の起泡性液状調味料は、主要な原料調味料として醤油、つゆ類、ぽん酢醤油、たれ、ソース、調味酢など公知の液状調味料を用いることができる。中でも醤油、つゆ、ぽん酢醤油など醤油を原料に含むものであることが好ましく、醤油であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明の起泡性液状調味料は、上記原料調味料に、少なくとも上記ゼラチンおよび寒天を添加したものをいう。
【0017】
ゼラチンの添加量としては、乾燥重量換算で、起泡性液状調味料中の濃度0.5〜5%(w/v)であることが好ましく、1〜4%(w/v)であることがさらに好ましい。また、寒天の添加量としては、乾燥重量換算で、起泡性液状調味料中の濃度0.01〜1%(w/v)であることが好ましく、0.01〜0.5%(w/v)であることがさらに好ましい。ゼラチンとレシチンの総量としては、起泡性液状調味料中の乾燥重量換算濃度として0.5〜6%(w/v)であることが好ましい。
【0018】
ゼラチンと寒天の添加重量の比としては、ゼラチン:寒天比が400:1〜50:1であることが好ましく、300:1〜100:1であることがさらに好ましい。寒天の比率が大きすぎると、ゲル化が進み過ぎるために、泡を形成するためのチューブ部に液が詰まる場合などの不具合が生じる恐れがある。
【0019】
本発明の起泡性液状調味料は、上記原料調味料、ゼラチンおよび寒天に加えて、pH調整剤、香料、酸化防止剤等の成分をさらに含有していても良い。
【0020】
本発明の起泡性液状調味料を製造するには、公知の方法によれば良いが、たとえば原料調味料、寒天等の材料を混合し、90〜95℃程度まで加温し、その後60℃程度でゼラチンを溶解させた後、常温まで冷ますことで得ることができる。この際、ゼラチン等を混合前にあらかじめ水で膨潤させておいてもよい。
【0021】
本発明は、ノンガスフォーマー容器に充填されて提供されることが好ましい。ノンガスフォーマー容器とは、噴出用ガスを用いずに空気と液体を混合させることにより泡を形成して吐出する容器である。ノンガスフォーマー容器には、例えば、ポンプフォーマー容器やスクイズフォーマー容器がある。ポンプフォーマー容器は、容器のキャップから上方に突設されたノズルを押し下げることで、容器内に収納された内容液を泡状としてノズルの吐出口から容器外に吐出するような容器である。スクイズフォーマー容器は、可撓性を有する容器本体を押圧することにより、内容液を泡状に吐出させる容器である。
【実施例】
【0022】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)単独成分における検討
市販の濃口醤油80mlと、各起泡剤の溶解液20mlを混合し、90℃まで加熱してゼラチン等を溶解させた後に常温まで水冷することで、泡醤油原液を作成した。なおゼラチンは混合前に水に投入しておき、膨潤させてから用いた。
【0023】
得られた泡醤油原液をスクイズフォーマー容器に充填し、吐出された泡醤油の性状を「起泡性」「泡沫安定性」の2点について評価した。なお「起泡性」とは、吐出した直後の泡立ちの良さ、「泡沫安定性」とは、吐出された後の泡が液状に残存する時間を目視によって◎、○、△、×で評価した。結果を下記表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
上記表1に示すように、発酵セルロースやキサンタンガムを用いた場合(配合例1、2)では、起泡性が低く全く不適であった。また、キサンタンガムを用いた配合例2では、容器の吐出部のチューブにゲルが詰まるなどの不具合もみられた。
【0026】
一方、ゼリー強度150g〜250gのゼラチン類を用いた場合(配合例3〜6)では、起泡性において概ね良好な結果が得られた。なお牛由来ゼラチンを用いたときは、若干の獣臭さが感じられたが、豚由来ゼラチンはこれらの臭みもなく、食味も良好で最も適していた。
しかしながら、これらのゼラチンを単独で用いる泡状醤油も、吐出後の泡沫安定性においては不十分なものであった。
【0027】
(実施例2)成分の組み合わせにおける検討
泡沫安定性の向上を図るため、ゼラチンに対し、さらに他の成分を組み合わせたときの起泡性、泡沫安定性についてさらに検討した。泡醤油原液の調製法および評価法については、実施例1の内容に準じ、ゼラチンとしては豚由来、ゼリー強度250gのものを用いた。配合内容および評価結果を下記表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】
上記表2に示すように、ゼラチンに対して脂肪酸ポリグリセリンエステルや発酵セルロース等を組み合わせたとき(配合例7、8)では、泡沫安定性は向上せず、また起泡性も不十分であった。発酵セルロースを組み合わせたとき(配合例8)は、泡沫安定性はやや向上したが、粘度により容器吐出部に詰まってしまう場合があった。
【0030】
レシチンを組み合わせたとき(配合例9)は、起泡性および泡沫安定性において若干の向上がみられたが、醤油のような調味料に配合したときには、レシチンに由来すると考えられる苦みや特有のにおいが感じられてしまい、食味において最適とは言えなかった。
【0031】
ゼラチンと寒天を組み合わせた場合(配合例10〜13)について検討する。
ゼリー強度200gの寒天を用いた場合(配合例13)、水冷した時点で泡醤油原液のゲル化が進み過ぎてしまうために、チューブ部に液が詰まるなどして泡状醤油の形成が難しくなり、泡状醤油に用いるには適していなかった。
【0032】
一方、ゼリー強度30gまたは100gの寒天を用いたときには(配合例10〜12)、十分な起泡性があり、また泡沫安定性も最も高い評価であるばかりでなく、苦みやにおいなどによって調味料本来の食味にも影響することのない、きわめて良好な泡状醤油が得られた。また生じる泡状醤油は、泡に弾力性があり、食材等に載置したときにも流れ落ちないなど、食味以外の性状においても優れていた。
【0033】
以上の結果から、ゼラチンおよび低ゼリー強度寒天の組み合わせを配合した時に、起泡性および泡沫安定性が高く、しかも食味にも影響のない、きわめてすぐれた泡状醤油を得られることが明らかになった。