(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記チャックを、前記積み重ねられたワークの上方と所定の搬送先の上方との間で3次元的に移動可能なアームを備える請求項1から請求項7のいずれかに記載のワーク取り出し装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のワーク押えおよび特許文献2のワーク分離装置は、ワークを把持するための把持部とは別体に構成され、把持部の外側に設けられるため、ワーク取り出し装置全体が大型になり製造コストが高くなるという不都合がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、大型化することなく一番上のワークと上から2番目のワークとを切り離すための手段を搭載することができるワーク取り出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、鉛直方向に積み重ねられた板状または柱状のワークを上から1個ずつ取り出すワーク取り出し装置であって、一番上のワークの周囲に配列され該一番上のワークの側面を把持する複数の把持爪を有し、鉛直上下方向に移動可能なチャックと、少なくとも1つの前記把持爪の内部に設けられ、前記複数の把持爪によって把持されている前記一番上のワークと、上から2番目のワークとを切り離す切り離し手段とを備え、該切り離し手段が、前記上から2番目のワークに向かって前記少なくとも1つの把持爪から下方に突出可能に設けられた押付部と、該押付部を前記上から2番目のワークに向かって下方に押し出して前記押付部を前記上から2番目のワークに押し付ける駆動部とを備えるワーク取り出し装置である。
【0007】
本態様によれば、チャックの下方に配置された複数のワークのうち、一番上のワークが複数の把持爪によって把持され、その状態でチャックが鉛直方向に上昇することで、ワークを上から順番に取り出すことができる。
この場合に、切り離し手段の作動によって、把持爪によって把持されている一番上のワークと上から2番目のワークとが切り離される。
【0008】
すなわち、駆動部の作動により、上から2番目のワークに向かって少なくとも1つの把持爪から押付部が突出して上から2番目のワークに下方に向かって押し付けられる。そして、押付部によって上から2番目のワークが下方に押さえ付けられている状態でチャックの上昇により一番上のワークが上昇することで、上から2番目のワークは一番上のワークから切り離される。
このように、把持爪の内部に切り離し手段を設けることで、装置全体を大型化することなく切り離し手段を設けることができる。
【0009】
上記態様においては、前記駆動部が、前記一番上のワークの側面の近傍において鉛直下方に前記押付部を押し出してもよい。
側面よりも水平方向に突出するつばを上端に有するワークの場合、少なくとも1つの把持爪から一番上のワークの側面の近傍において鉛直下方に押し出される押付部によって、上から2番目のワークのつばを鉛直下方に押さえ付けることができる。
【0010】
上記態様においては、前記駆動部が、斜め下方に前記押付部を押し出してもよい。
このようにすることで、上から2番目のワークに向かって少なくとも1つの把持爪から斜め下方に押し出される押付部によって、上から2番目のワークの側面を下方に向かって押さえ付けることができる。
【0011】
上記態様においては、前記駆動部が、前記鉛直方向の回転軸回りに前記押付部を回転させながら該押付部を鉛直下方に押し出し、前記押付部の水平方向を向く側面は、前記回転軸からの水平方向の距離が前記回転軸回りの周方向に漸次変化する形状を有していてもよい。
少なくとも1つの把持爪から鉛直下方に押し出される押付部と、上から2番目のワークとの水平方向の間隔は、押付部の回転に伴って変化する。したがって、押付部が上から2番目のワークに接触する位置まで押付部が押し出されることで該上から2番目のワークを鉛直下方に押さえ付けることができ、押付部がさらに押し出されることで上から2番目のワークを押付部による押さえ付けから解放することができる。
【0012】
上記態様においては、前記押付部が、前記上から2番目のワークの側面との接触によって弾性変形する弾性体からなっていてもよい。
押付部が上から2番目のワークの側面に押し付けられることで弾性変形した後、チャックの上昇により一番上のワークが上昇する過程においても押付部の変形によって押付部とワークの側面との密着状態が維持されることで、押付部による上から2番目のワークの側面の押さえ付けが維持される。これにより、一番上のワークの上昇開始後も、上から2番目のワークを安定的に下方に押さえ続けることができる。
【0013】
上記態様においては、前記駆動部が、鉛直面内において揺動可能に設けられていてもよい。
このようにすることで、押付部が上から2番目のワークの側面に押し付けられた状態でチャックの上昇により一番上のワークが上昇する過程において、押付部が下方に向かう方向に駆動部が揺動することで、押付部による上から2番目のワークの側面の押さえ付けが維持される。これにより、一番上のワークの上昇開始後も、上から2番目のワークを下方に押さえ続けることができる。
【0014】
上記態様においては、前記駆動部が、エアシリンダであってもよい。
このように、空気圧によって駆動されるエアシリンダを駆動部として用いることで、駆動部とその周辺の構成および制御を簡素化することができる。
【0015】
上記態様においては、前記チャックを、前記積み重ねられたワークの上方と所定の搬送先の上方との間で3次元的に移動可能なアームを備えていてもよい。
このようにすることで、ワーク取り出し装置を、ワークを所定の搬送先へ搬送する搬送装置として使用することができる。
【0016】
上記態様においては、前記チャックおよび前記切り離し手段が、空気圧を駆動源として作動し、前記チャックおよび前記切り離し手段が並列接続され前記チャックおよび前記切り離し手段に向けて同時に空気圧を出力する単一のエア源と、該エア源と前記切り離し手段との間に設けられ、前記空気圧の伝達を遅延させる遅延バルブとを備えていてもよい。
単一のエア源から出力された空気圧は、チャックに供給され、その後に遅延バルブの作用によって遅れて切り離し手段にも空気圧が供給される。これにより、チャックが作動して複数の把持爪によって一番上のワークが把持された後に、切り離し手段の駆動部が作動して押付部が上から2番目のワークに向かって押し出される。このように、チャックによるワークの把持動作に連動して切り離し手段を動作させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、大型化することなく一番上のワークと上から2番目のワークとを切り離すための手段を搭載することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るワーク取り出し装置100について
図1から
図4を参照して説明する。
本実施形態に係るワーク取り出し装置100は、例えば、加工後に鉛直方向に一列に積み重ねられたワークW1,W2,…を上から1個ずつ取り出して所定の搬送先に搬送する搬送用のロボットである。積み重ねられたワークW1,W2,…は、加工の際に表面に付着した油等が原因で相互にくっついてしまうことがある。ワーク取り出し装置100は、ワークW1,W2,…を1個ずつ分離して搬送することができるように構成されている。
【0020】
具体的には、ワーク取り出し装置100は、
図1から
図3(a)〜(d)に示されるように、ワークW1を把持する複数の把持爪2を有し鉛直上下方向に移動可能なチャック1と、把持爪2に内蔵され一番上のワークW1と上から2番目のワークW2とを切り離すための切り離し手段3とを備えている。
本実施形態のワーク取り出し装置100は、側面よりも径方向外方に突出するつばFが上端に設けられている円板状または円柱状のワークW1,W2,…に適用される。ワークW1,W2,…は、つばFを上方に向けて積み重ねられている。
【0021】
ワーク取り出し装置100は、
図1に示されるように、3次元的に動作可能な多関節のロボットアーム10を備える多関節ロボットであり、ロボットアーム10の先端部にチャック1が設けられている。チャック1は、ロボットアーム10の動作によって、ワークW1,W2,…の上方と所定の搬送先の上方との間で水平方向、鉛直上下方向および斜め方向に3次元的に移動可能になっている。ワーク取り出し装置100は、多関節ロボットに代えて、スカラロボットまたはローダであってもよい。
【0022】
複数の把持爪2は、チャック1の下部に設けられ、一番上のワークW1の周囲に配列するように、鉛直方向の中心軸X回りに均等に配列している。本実施形態においては、3つの把持爪2を備える構成を想定しており、参照する図面には、3つの把持爪2のうち2つのみが図示されている。
【0023】
3つの把持爪2は、中心軸Xに対して放射状に移動することで開閉し、それによりワークW1を把持および解放するようになっている。すなわち、3つの把持爪2は、中心軸Xに接近する方向に同時に移動することで閉じ、それによりワークW1の側面を把持する。また、3つの把持爪2は、中心軸Xから離間する方向に同時に移動することで開き、それによりワークW1を解放する。内側(中心軸X側)に配置されワークW1の側面に接触する把持爪2のチャック面2aは、ワークW1の側面に沿うように中心軸X回りに湾曲していてもよい。
【0024】
切り離し手段3は、少なくとも1つの把持爪2の内部に設けられている。切り離し手段3は、
図3(a)〜(d)に示されるように、押付部4と、押付部4を鉛直上下方向に移動させるエアシリンダ(駆動部)5と、エアシリンダ5に接続されたエア回路6とを備えている。
【0025】
押付部4は、把持爪2の下面2bから鉛直下方に突出可能に把持爪2の内部に配置されている。また、押付部4は、チャック面2aの近傍に配置されており、3つの把持爪2がワークW1の側面を把持しているときに、ワークW1の側面の近傍に配置されて押付部4の少なくとも一部分がつばFと鉛直方向に重なるようになっている。
【0026】
エアシリンダ5は、エア回路6から圧縮空気(エア)Aが供給されることで押付部4をチャック面2aの近傍から鉛直下方に押し出し、エア回路6を介してエアAが排出されることで押付部4を鉛直上方に上昇させるようになっている。
【0027】
次に、このように構成されたワーク取り出し装置100の作用について説明する。
積み重ねられたワークW1,W2,…は、3つの把持爪2の中心の鉛直下方にワークW1,W2,…の中心が位置するように、チャック1の下方に配置される。
ワーク取り出し装置100の動作が開始されると、3つの把持爪2が一番上のワークW1を囲む位置までチャック1が下降し、続いて、
図3(a)に示されるように、3つの把持爪2が閉じることで把持爪2によって一番上のワークW1の側面が把持される。
【0028】
次に、
図3(b)に示されるように、エア回路6からエアシリンダ5へエアAが供給され、エアシリンダ5が押付部4をチャック面2aの近傍から鉛直下方に押し出す。このときに、ワークW1の下にワークW2がくっついている場合には、押付部4がワークW2のつばFに押し付けられる。
【0029】
次に、
図3(c)に示されるように、チャック1が上昇し、チャック1と一緒にワークW1も上昇する。ワークW1が上昇する過程において、押付部4は、エアシリンダ5によってワークW2のつばFに鉛直下方に向かって押し付けられ続ける。したがって、上昇するワークW1からワークW2が確実に切り離され、ワークW1のみが持ち上げられる。
次に、
図3(d)に示されるように、エア回路6を介してエアシリンダ5からエアAが排出され、エアシリンダ5が押付部4を把持爪2内まで上昇させる。
次に、ロボットアーム10の動作によってワークW1は所定の搬送先の上方に搬送され、3つの把持爪2が開くことでワークW1は所定の搬送先に載置される。
【0030】
このように、本実施形態によれば、チャック1が一番上のワークW1を持ち上げるときに、上から2番目のワークW2が押付部4によって下方に押さえ付けられるように構成されている。これにより、ワークW1を持ち上げる過程で、ワークW1の下にくっついているワークW2をワークW1から確実に切り離し、ワークW1のみを取り出すことができる。また、切り離し手段3が把持爪2の内部に設けられているので、チャック1とは別体の切り離し手段をチャック1の外側に設ける場合と比較して、装置全体の小型化および低コスト化が可能である。また、ワークW1を取り出す作業において、切り離し手段3の追加に伴って追加される工程は押付部4を押し出す工程のみであるので、タクトタイムの延長はほとんどない。
【0031】
本実施形態においては、把持爪2の閉動作に連動して切り離し手段3が動作するように、チャック1および切り離し手段3を駆動させるためのエア回路6が設計されていることが好ましい。
図4に、このようなエア回路6の一例を示す。
図4のエア回路6は、チャック1および切り離し手段3が並列接続されエア(空気圧)を出力する単一のエア源61と、エア源61と切り離し手段3との間に設けられ空気圧の伝達を遅延させる第1エアシーケンスバルブ(遅延バルブ)62とを備えている。符号63は第2エアシーケンスバルブ、符号64は切換弁、符号65,66はパイロットチェック弁、符号67はエアフィルタ、符号68はエアレギュレータである。
【0032】
このように構成されたエア回路6は、以下のように動作する。
切換弁64がクランプ側に切り替えられた状態で、エア源61からエアが吐出される。吐出されたエアは、エアフィルタ67、エアレギュレータ68および切換弁64を介してチャック1および第1エアシーケンスバルブ62に同時に供給される。
エアが供給されたチャック1は、ワークW1,W2,…の上方に移動し、一番上のワークW1の位置まで下降し、把持爪2によってワークW1を把持する。
【0033】
続いて、第1エアシーケンスバルブ62によってチャック1よりも遅れて切り離し手段3にエアが供給されることで切り離し手段3のエアシリンダ5が動作を開始し、下方に押し出された押付部4がワークW2に押し付けられる。切り離し手段3が動作を開始するタイミングは、例えば、把持爪2によってワークW1が把持されてから1秒〜10秒後に設定される。続いて、チャック1が上昇することで、ワークW2がワークW1から切り離されてワークW1のみが持ち上げられる。
【0034】
次に、第2エアシーケンスバルブ63によって切り離し手段3よりも遅れてパイロットチェック弁66にエアが供給されることでパイロットチェック弁66が開く。これにより、切り離し手段3の圧力が大気開放されて、エアシリンダ5が押付部4を上昇させる。パイロットチェック弁66が動作するタイミングは、例えば、チャック1が上昇してから1秒〜10秒後に設定される。このとき、パイロットエアPA1の圧力はパイロットチェック弁65によって保持される。
【0035】
次に、切換弁64がアンクランプ側に切り替えられ、チャック1が所定の搬送先の上方に移動し、把持爪2が開くことでワークW1が所定の搬送先に載置される。
次に、パイロットエアPA2によってパイロットチェック弁65が開く。パイロットエアPA1の圧力の開放後、パイロットチェック弁66が閉じる。
【0036】
このように、チャック1および切り離し手段3が、共通のエア源61から供給されるエア(空気圧)を駆動源として順番に作動するように構成することで、把持爪2によるワークW1の把持動作と連動して切り離し手段3がワークW2の切り離し動作を行うように、チャック1と切り離し手段3の動作を容易に制御することができる。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るワーク取り出し装置200について
図5および
図6を参照して説明する。
本実施形態においては、第1の実施形態と異なる構成について説明し、第1の実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
本実施形態に係るワーク取り出し装置200は、
図5および
図6(a)〜(d)に示されるように、複数の把持爪2を有するチャック1と、少なくとも1つの把持爪2に内蔵された切り離し手段31とを備えている。
図5および
図6にはつばFを有しないワークW1,W2,…が示されているが、本実施形態のワーク取り出し装置200は、第1の実施形態と同様につばFを有するワークW1,W2にも適用することができる。
【0039】
切り離し手段31は、
図6(a)〜(d)に示されるように、押付部41と、押付部41を鉛直方向に対して斜め上下方向に移動させるエアシリンダ(駆動部)51と、エアシリンダ51に接続されたエア回路6とを備えている。
【0040】
押付部41は、ワークW2の側面との接触によって弾性変形する弾性体から構成されている。押付部41は、チャック面2aから外側(中心軸Xとは反対側)に離間した位置において、把持爪2の下面2bから中心軸Xに向かって斜め下方に突出可能に把持爪2の内部に配置されている。
【0041】
エアシリンダ51は、エア回路6から圧縮空気(エア)Aが供給されることで押付部41を中心軸Xに向かって斜め下方に押し出し、エア回路6を介してエアAが排出されることで押付部41を斜め上方に上昇させるようになっている。
【0042】
次に、このように構成されたワーク取り出し装置200の作用について説明する。
ワーク取り出し装置200の動作が開始されると、3つの把持爪2が一番上のワークW1を囲む位置までチャック1が下降し、続いて、
図6(a)に示されるように、3つの把持爪2が閉じることで把持爪2によって一番上のワークW1の側面が把持される。
【0043】
次に、
図6(b)に示されるように、エア回路6からエアシリンダ51へエアAが供給され、エアシリンダ51が押付部41を斜め下方に押し出す。このときに、ワークW1の下にワークW2がくっついている場合には、押付部41がワークW2の側面に弾性変形しながら押し付けられる。
【0044】
次に、
図6(c)に示されるように、チャック1が上昇し、チャック1と一緒にワークW1も上昇する。ワークW1が上昇する過程において、押付部41は、さらに弾性変形しながらエアシリンダ51によってワークW2の側面に斜め下方に向かって押し付けられ続ける。したがって、上昇するワークW1からワークW2が確実に切り離され、ワークW1のみが持ち上げられる。
次に、
図6(d)に示されるように、エア回路6を介してエアシリンダ51からエアAが排出され、エアシリンダ51が押付部41を把持爪2内まで上昇させる。
【0045】
このように、本実施形態によれば、チャック1が一番上のワークW1を持ち上げるときに、上から2番目のワークW2が押付部41によって下方に押さえ付けられるように構成されている。これにより、ワークW1を持ち上げる過程で、ワークW1の下にくっついているワークW2をワークW1から確実に切り離し、ワークW1のみを取り出すことができる。さらに、切り離し手段31が把持爪2の内部に設けられているので、チャック1とは別体の切り離し手段をチャック1の外側に設ける場合と比較して、装置全体の小型化および低コスト化が可能である。また、ワークW1を取り出す作業において、切り離し手段31の追加に伴って追加される工程は押付部41を押し出す工程のみであるので、タクトタイムの延長はほとんどない。
本実施形態においても、
図4のエア回路6を採用して、把持爪2によるワークW1の把持動作と連動して切り離し手段31がワークW2の切り離し動作を行うように構成されていてもよい。
【0046】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係るワーク取り出し装置300について
図7から
図10を参照して説明する。
本実施形態においては、第1の実施形態と異なる構成について説明し、第1の実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
本実施形態に係るワーク取り出し装置300は、
図7および
図8(a)〜(d)に示されるように、複数の把持爪2を有するチャック1と、少なくとも1つの把持爪2に内蔵された切り離し手段32とを備えている。
図7および
図8にはつばFを有しないワークW1,W2,…が示されているが、本実施形態のワーク取り出し装置300は、第1の実施形態と同様につばFを有するワークW1,W2にも適用することができる。
【0048】
切り離し手段32は、
図8(a)〜(d)に示されるように、押付部42と、押付部42を鉛直方向の回転軸Y回りに回転させながら鉛直上下方向に移動させるスイングシリンダ(エアシリンダ、駆動部)52と、スイングシリンダ52に接続されたエア回路6とを備えている。
【0049】
押付部42は、ワークW2の側面との接触によって弾性変形する弾性体から構成されている。押付部42は、チャック面2aから外側(中心軸Xとは反対側)に離間した位置において、把持爪2の下面2bから鉛直下方に突出可能に把持爪2の内部に配置されている。
【0050】
スイングシリンダ52は、エア回路6から圧縮空気(エア)Aが供給されることで、押付部42を鉛直下方に押し出し、エア回路6を介してエアAが排出されることで押付部42を鉛直上方に上昇させるようになっている。このときに、スイングシリンダ52は、把持爪2によって把持されている一番上のワークW1の下端またはその近傍よりも上方においては押付部42を並進移動させ、ワークW1の下端またその近傍よりも下方においては押付部42を回転軸Y回りに回転させるように構成されている。
【0051】
ここで、押付部42は、水平に配置された板状の部材からなり、押付部42の水平方向を向く側面42aは、回転軸Yから側面42aまでの水平方向の距離が回転軸Y回りの周方向に漸次変化するような形状を有する。回転軸Yから押付部42の側面42aまでの最大距離は、把持爪2によってワークW1が把持されている状態での回転軸YからワークW2の側面までの水平方向の距離よりも大きく、回転軸Yから押付部42の側面42aまでの最小距離は、把持爪2によってワークW1が把持されている状態での回転軸YからワークW2の側面までの水平方向の距離よりも小さくなっている。例えば、
図9(a)〜(d)に示されるように、押付部42は、鉛直方向に見たときに楕円形を有し、押付部42の中心に対して回転軸Yが偏心するようにスイングシリンダ52に取り付けられている。これにより、回転軸Y回りの押付部42の回転角度に応じて押付部42の側面42aとワークW2の側面との間の距離が漸次変化し、押付部42は、下降するにつれて弾性変形しながらワークW2の側面に押し付けられるようになっている。
【0052】
次に、このように構成されたワーク取り出し装置300の作用について説明する。
ワーク取り出し装置300の動作が開始されると、3つの把持爪2が一番上のワークW1を囲む位置までチャック1が下降し、続いて、
図8(a)に示されるように、3つの把持爪2が閉じることで把持爪2によって一番上のワークW1の側面が把持される。
【0053】
次に、
図8(b),(c)に示されるように、エア回路6からスイングシリンダ52へエアAが供給され、スイングシリンダ52が押付部42を鉛直下方に押し出す。このときに、押付部42は、
図9(a),(b)に示されるように、ワークW1の下端またはその近傍までは回転することなく下降し、その後は、
図9(c)に示されるように、回転軸Y回りに回転する。したがって、ワークW1の下にワークW2がくっついている場合には、
図8(c)および
図9(c)に示されるように、押付部42がワークW2の側面に弾性変形しながら押し付けられる。
【0054】
次に、
図8(c)に示されるように、チャック1が上昇し、チャック1と一緒にワークW1も上昇する。ワークW1が上昇する過程において、押付部42は、スイングシリンダ52によってワークW2の側面に斜め下方に向かって押し付けられ続ける。したがって、上昇するワークW1からワークW2が確実に切り離され、ワークW1のみが持ち上げられる。
次に、
図8(d)および
図9(d)に示されるように、スイングシリンダ52が押付部42をさらに回転させることで、押付部42によるワークW2の押さえ付けが解除される。
【0055】
このように、本実施形態によれば、チャック1が一番上のワークW1を持ち上げるときに、上から2番目のワークW2が押付部42によって下方に押さえ付けられるように構成されている。これにより、ワークW1を持ち上げる過程で、ワークW1の下にくっついているワークW2をワークW1から確実に切り離し、ワークW1のみを取り出すことができる。さらに、切り離し手段32が把持爪2の内部に設けられているので、チャック1とは別体の切り離し手段をチャック1の外側に設ける場合と比較して、装置全体の小型化および低コスト化が可能である。また、ワークW1を取り出す作業において、切り離し手段32の追加に伴って追加される工程は押付部42を押し出す工程のみであるので、タクトタイムの延長はほとんどない。
本実施形態においても、
図4のエア回路6を採用して、把持爪2によるワークW1の把持動作と連動して切り離し手段32がワークW2の切り離し動作を行うように構成されていてもよい。
【0056】
本実施形態のワーク取り出し装置300は、
図10および
図11に示されるように、段付きの側面を有するワークW1,W2,…、または下端につばFを有するワークW1,W2,…にも好適に適用することができる。
図10および
図11のワークW1,W2,…は、上端側に小径部を有し、下端側に小径部よりも大径の大径部(またはつばF)を有している。このようなワークW1,W2,…の場合、
図10(a)に示されるように、3つの把持爪2によって一番上のワークW1の小径部の側面が把持される。
【0057】
次に、スイングシリンダ52によって押付部42が鉛直下方に押し出されると、押付部42は、
図10(b)および
図11(b)に示されるように、ワークW1の下端またはその近傍までは回転することなく下降し、その後は、
図10(c)に示されるように、回転軸Y回りに回転する。したがって、ワークW1の下にワークW2がくっついている場合には、
図10(c)および
図11(c)に示されるように、押付部42がワークW2の大径部(またはつばF)に鉛直下方に押し付けられ、ワークW1を持ち上げる過程でワークW2をワークW1から確実に切り離すことができる。
【0058】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係るワーク取り出し装置400について
図12および
図13を参照して説明する。
本実施形態においては、第1の実施形態と異なる構成について説明し、第1の実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
本実施形態に係るワーク取り出し装置400は、
図12および
図13(a)〜(d)に示されるように、複数の把持爪2を有するチャック1と、少なくとも1つの把持爪2に内蔵された切り離し手段33とを備えている。
図12および
図13にはつばFを有しないワークW1,W2,…が示されているが、本実施形態のワーク取り出し装置400は、第1の実施形態と同様につばFを有するワークW1,W2にも適用することができる。
【0060】
切り離し手段33は、
図13(a)〜(d)に示されるように、押付部43と、押付部43を鉛直方向に対して斜め上下方向に移動させるエアシリンダ(駆動部)53と、エアシリンダ53に接続されたエア回路6とを備えている。
【0061】
押付部43は、球状の部材からなり、チャック面2aから外側(中心軸Xとは反対側)に離間した位置において、把持爪2の下面2bから中心軸Xに向かって斜め下方に突出可能に把持爪2の内部に配置されている。
【0062】
エアシリンダ53は、エア回路6から圧縮空気(エア)Aが供給されることで押付部43を中心軸Xに向かって斜め下方に押し出し、エア回路6を介してエアAが排出されることで押付部43を斜め上方に上昇させるようになっている。また、エアシリンダ53は、水平方向の揺動軸回りに鉛直面内で揺動可能に設けられるとともに、エアシリンダ53を上方に付勢するばね7によって、押付部43を中心軸Xに向かって斜め下方に向けた姿勢に支持されている。
【0063】
次に、このように構成されたワーク取り出し装置400の作用について説明する。
ワーク取り出し装置400の動作が開始されると、3つの把持爪2が一番上のワークW1を囲む位置までチャック1が下降し、続いて、
図13(a)に示されるように、3つの把持爪2が閉じることで把持爪2によって一番上のワークW1の側面が把持される。
【0064】
次に、
図13(b)に示されるように、エア回路6からエアシリンダ53へエアAが供給され、エアシリンダ53が押付部43を斜め下方に押し出す。このときに、ワークW1の下にワークW2がくっついている場合には、押付部43がワークW2の側面に押し付けられる。
【0065】
次に、
図13(c)に示されるように、チャック1が上昇し、チャック1と一緒にワークW1も上昇する。ワークW1が上昇する過程において、エアシリンダ53は、押付部43を斜め下方に押し出しながら揺動軸回りに下方に(
図13(c)において反時計回りに)揺動することで、押付部43はワークW2の側面に斜め下方に向かって押し付けられ続ける。したがって、上昇するワークW1からワークW2が確実に切り離され、ワークW1のみが持ち上げられる。
次に、
図13(d)に示されるように、エア回路6を介してエアシリンダ53からエアAが排出され、エアシリンダ53が押付部43を把持爪2内まで上昇させる。
【0066】
このように、本実施形態によれば、チャック1が一番上のワークW1を持ち上げるときに、上から2番目のワークW2が押付部43によって下方に押さえ付けられるように構成されている。これにより、ワークW1を持ち上げる過程で、ワークW1の下にくっついているワークW2をワークW1から確実に切り離し、ワークW1のみを取り出すことができる。さらに、切り離し手段33が把持爪2の内部に設けられているので、チャック1とは別体の切り離し手段をチャック1の外側に設ける場合と比較して、装置全体の小型化および低コスト化が可能である。また、ワークW1を取り出す作業において、切り離し手段33の追加に伴って追加される工程は押付部43を押し出す工程のみであるので、タクトタイムの延長はほとんどない。
本実施形態においても、
図4のエア回路6を採用して、把持爪2によるワークW1の把持動作と連動して切り離し手段33がワークW2の切り離し動作を行うように構成されていてもよい。
【0067】
第1から第4の実施形態においては、駆動部として、空気圧を動力源として作動するエアシリンダ5,51,52,53を用いることとしたが、これに代えて、電動アクチュエータのような電力を動力源として作動する駆動部を用いてもよい。