特許第6588532号(P6588532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588532
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】フリーピストンエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02B 75/28 20060101AFI20191001BHJP
   F02B 63/04 20060101ALI20191001BHJP
   H02K 35/00 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   F02B75/28 D
   F02B75/28 E
   F02B63/04 A
   H02K35/00
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-507095(P2017-507095)
(86)(22)【出願日】2015年4月22日
(65)【公表番号】特表2017-515047(P2017-515047A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】IL2015050425
(87)【国際公開番号】WO2015162614
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2018年4月20日
(31)【優先権主張番号】61/983,469
(32)【優先日】2014年4月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516317056
【氏名又は名称】シャウル・ヤーコビー
【氏名又は名称原語表記】Shaul YAAKOBY
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】シャウル・ヤーコビー
【審査官】 西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05351659(US,A)
【文献】 特公昭52−024163(JP,B1)
【文献】 特開昭62−038833(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02232718(GB,A)
【文献】 独国特許出願公開第03518982(DE,A1)
【文献】 特開昭63−192916(JP,A)
【文献】 特開平09−144554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 75/28
F02B 63/04
H02K 35/00
F01B 11/00
F01L 11/02
F01L 21/02
F02B 71/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸に沿った出力軸の直線往復運動を発生するように構成された内燃エンジンであって、
その両側において、エンジンヘッドによって囲まれた両面シリンダと、
前記シリンダの両側に配置され、対応する1つのエンジンヘッドに接続された排気ユニットと、
前記シリンダの内部空間の中に配置され、前記シリンダに対して前記長手方向軸に沿って自由に滑動する両面ピストンと、
前記長手方向軸に位置合わせされた2つのピストンロッドであって、各ピストンロッドは前記ピストンの反対側の面で接続されている、2つのピストンロッドと
を備え、
前記ピストンロッドのそれぞれは、複数の排気開口を備え、
前記ピストンロッドのそれぞれが、前記ピストンから離間している前記ピストンロッドの開放端から、前記開放端よりも前記ピストンに近い前記排気開口まで少なくとも延在している空洞を備える、内燃エンジン。
【請求項2】
前記ピストンロッドのそれぞれは、滑動バルブである、請求項1に記載の内燃エンジン。
【請求項3】
前記ピストンは、前記シリンダ内での前記ピストンの摺動運動が、吸気バルブが空気の吸入を許容する吸気バルブを形成し、燃焼ガスが前記シリンダから放出されることを許容する排気バルブを形成するように、前記シリンダ内に構成されている、請求項1に記載の内燃エンジン。
【請求項4】
前記エンジンは、(a)仕事、(b)排気、(c)掃気、(d)気体の昇圧、及び(e)圧縮のステップを有するサイクルで動作する、請求項1に記載の内燃エンジン。
【請求項5】
前記シリンダは、実質的に前記シリンダの中央に形成された1又は複数の吸気開口(14)を更に備える、請求項1に記載の内燃エンジン。
【請求項6】
前記シリンダは、前記シリンダを通る予圧空気の連続流を許容するように構成されている、請求項1に記載の内燃エンジン。
【請求項7】
前記シリンダは、前記シリンダの内部において、内部シリンダ壁を更に備え、
空気の前記連続流は、前記シリンダから既燃ガスを掃気し、前記シリンダ壁及び前記ピストンを冷却し、前記ピストンの位置に依存することなく前記既燃ガスを新鮮な空気に置き換える、請求項6に記載の内燃エンジン。
【請求項8】
前記エンジンは、前記ピストンが前記長手方向軸回りに回転することを防止するように構成された位置合わせシステムを更に備える、請求項1に記載の内燃エンジン。
【請求項9】
長手方向軸に沿った出力軸の直線往復運動を発生するように構成された内燃エンジンであって、
その両側において、エンジンヘッドによって囲まれた両面シリンダと、
前記シリンダの両側に配置され、対応する1つのエンジンヘッドに接続された排気ユニットと、
前記シリンダの内部空間の中に配置され、前記シリンダに対して前記長手方向軸に沿って自由に滑動する両面ピストンと、
前記長手方向軸に位置合わせされた2つのピストンロッドであって、各ピストンロッドは前記ピストンの異なる側に配置されている、2つのピストンロッドと、
前記ピストンが前記長手方向軸回りに回転することを防止するように構成された位置合わせシステムと
を備え、
前記ピストンロッドのそれぞれは、複数の排気開口を備え、
前記位置合わせシステムは、複数の位置合わせロッドを備え、
前記位置合わせロッドは、コイル巻線を備え、
前記エンジンは、固定子コイルを有するとともに発電するように構成された電気モータを更に備え、
前記固定子コイルは、前記固定子コイルを通る前記位置合わせロッドの直線的な前後運動によってエネルギが与えられている、内燃エンジン。
【請求項10】
長手方向軸に沿った出力軸の直線往復運動を発生するように構成された内燃エンジンであって、
その両側において、エンジンヘッドによって囲まれた両面シリンダと、
前記シリンダの両側に配置され、対応する1つのエンジンヘッドに接続された排気ユニットと、
前記シリンダの内部空間の中に配置され、前記シリンダに対して前記長手方向軸に沿って自由に滑動する両面ピストンと、
前記長手方向軸に位置合わせされた2つのピストンロッドであって、各ピストンロッドは前記ピストンの異なる側に配置されている、2つのピストンロッドと、
前記ピストンが前記長手方向軸回りに回転することを防止するように構成された位置合わせシステムと
を備え、
前記ピストンロッドのそれぞれは、複数の排気開口を備え、
前記位置合わせシステムは、位置合わせロッドを備え、
前記エンジンは、直線運動を、回転運動に変換するように構成されたシステムを更に備え、
前記システムは、
複数の前記位置合わせロッドのうちの第1の位置合わせロッドに接続された第1のラックによって回転させられる第1の小歯車であって、前記第1の小歯車は、単一の方向に回転するように構成された、前記第1の小歯車と、
複数の前記位置合わせロッドのうちの第2の位置合わせロッドに接続された第2のラックによって回転させられる第2の小歯車であって、前記第2の位置合わせロッドは、前記第1の位置合わせロッドに隣接しており、前記第2の小歯車は、前記単一の方向に回転するように構成された、前記第2の小歯車と
を備え、
前記第1の小歯車と前記第2の小歯車は、出力軸に位置合わせされ、出力軸回りに回転する、内燃エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジンの分野に関し、より詳細には、自由端ピストンを有する内燃エンジンの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの内燃エンジンが知られている。ピストンエンジンの最も一般的なタイプは、2ストロークエンジン及び4ストロークエンジンである。エンジンのこれらのタイプは、比較的多数の部品から構成され、適切に機能するために、多数の補助システム、例えば、潤滑、冷却等を必要とする。
【0003】
英国特許出願公開第2183726号は、複動2ストローク内燃エンジンを開示している。このエンジンは、排気バルブを備えており、前記排気バルブは、ピストンロッド上をピストンロッドに対して動き、エンジンの一体部分を形成しない。前記排気バルブは、バネによって後方に引っ張られており、ピストンが他方に動いたとき、ほぞ(tenon)によって開かれる。ピストンが他方に到達したときに排気が起こり、ピストンが他方へ動き始めるとすぐに排気バルブは閉じる。
【0004】
英国特許出願公開第2183726号の不利な点は、ピストンロッドに滑動可能に整合する排気バルブを生産する必要があること、バネ及び機械的な開放機構をバルブに備える必要があること、及び不十分なガス交換プロセスである。
【0005】
米国特許第5676097号は、補助供給口ユニットと協働する複動ピストンを備えた高効率内燃エンジンを開示している。
【0006】
排気開口は、シリンダの中央に配置され、吸気開口は、シリンダの端に配置され、バルブ(19)を使用する。
【0007】
米国特許出願公開第2012/280513号は、フリーピストンエンジンを開示している。このエンジンは、非常に長い。エンジンの両側に配置されたピストンは、内部ロッドを使用して他方のピストンに接続されている。エンジンは、液体を格納しており、排気は、エンジンの両側に配置された機械式バルブを使用して行われる。機械的動力は、エンジンの外側ではなくエンジンの内側で受けられる。
【0008】
米国特許出願公開第2012/280513号は、専用の排気バルブと操作機構を必要とするという不利な点を有する。
【0009】
米国特許第4831972号は、中央に配置された発火プラグを有する内燃エンジンを開示している。エンジンが受ける機械的動力は、エンジンの中に残存している。
【0010】
米国特許第6722322号は、ある種のエンジンヘッドを形成する2つのピストンを備える、内燃エンジンを開示している。外部バネが、内部プランジャを保持する働きをする。
【0011】
独国特許出願公開第102008004879号は、例えば、掘削機用の、フリーピストンを備えるヒートエンジンと、電気エネルギを発生させるための前記ヒートエンジンによって駆動されるリニア発電装置と、油圧及び/又は気圧エネルギを発生させるための前記ヒートエンジンによって駆動されるポンプアセンブリとを有する。
【0012】
米国特許第6199519号は、発火プラグを必要とせず、自己着火するフリーピストンエンジンを開示している。動力がエンジンの外に出ることなく、吸気及び排気は、シリンダ側面の両側で提供される。
【0013】
米国特許第4385597号は、3つのピストン、すなわち、1つの中央ピストンと、中央ピストンに対して動く2つの側方ピストンとを有する2ストローク内燃エンジンを開示している。
【0014】
米国特許第4414927号は、3つのピストンを有する2ストローク揺動ピストンエンジンを開示している。ピストンロッドのどちらも排気バルブとして働かない。
【0015】
特公昭63−192916号は、3つのピストンを有するリニアエンジンを開示している。
【0016】
英国特許出願公開第2353562号は、剛性ピストン/接続ロッドユニット、及び2つの燃焼チャンバを備え、更に断熱及び燃焼チャンバ内への水噴霧器を有する内燃エンジンを開示している。英国特許出願公開第2353562号のエンジンの不利な点は、エンジンの両側に吸気及び排気バルブを必要とする点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、前述の不利な点を大幅に低減する又は克服するフリーピストンエンジンを提供することである。
【0018】
本発明の主な目的は、内燃エンジンにおけるガス交換の新しい方法を提供することである。
【0019】
本発明の更なる主な目的は、ピストンの位置に関わらず、シリンダへの及びシリンダを通じた、並びにピストンを通じた予圧外気(pre-charged fresh air)の一定の流れを可能にし、所定の時点における燃焼動作とは無関係に、排気システムを通じた予圧外気の一定の流れを可能にするフリーピストンエンジンを提供することである。
【0020】
本発明の更なる目的は、自動サイクル、アトキンソンサイクル、又は2ストロークサイクルと異なる内燃エンジンにおける新しいサイクルプロセスを提供することである。
【0021】
本発明のその他の目的は、多機能ピストンを提供することである。
【0022】
本発明のその他の目的は、吸気バルブとして機能するピストン並びに排気チューブ及び排気バルブとして機能するピストンロッドを提供することである。
【0023】
本発明の更なる目的は、直接低圧燃料噴射を具体化するフリーピストンエンジンを提供することである。
【0024】
本発明のその他の目的は、横方向のストレスのない動作ピストンを具体化するフリーピストンエンジンを提供することである。
【0025】
本発明の更なる目的は、気体の流れをより長い流路に転換し、エンジンヘッドとピストンロッドとの間の隙間への気体の集中を抑制することで圧縮気体の漏洩を防止するフリーピストンエンジンを提供することである。
【0026】
本発明の更なる目的は、ピストン回転防止機構を有するフリーピストンエンジンを提供することである。
【0027】
本発明のその他の目的は、分割シールリング回転防止機構を有するフリーピストンエンジンを提供することである。
【0028】
本発明のその他の目的は、周縁に発電機を有するフリーピストンエンジンを提供することである。
【0029】
本発明のその他の目的は、直線運動を回転運動に変換するフリーピストンエンジンを提供することである。
【0030】
本発明のその他の目的は、低コストフリーピストンエンジンを提供することである。
【0031】
本発明の更なる目的は、効率がよく、少ない部品を有し、高い出力重量比を有し、空気汚染及び燃料消費を相当に抑制する新たな内燃エンジンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
既知の自動サイクルプロセスは、以下のステップ、吸気−圧縮−仕事−排気、を有する。既知の2ストロークサイクルプロセスは、シリンダの頂点からシリンダの底点へ動き再び上昇する(完全サイクル)ピストンの動きに沿った、以下のステップ、仕事及び圧縮−排気及び吸気を有する。
【0033】
本発明のサイクルプロセスは、「アクエリアスサイクル(Aquarius cycle)」と呼んでもよく、以下のステップ、仕事−排気−掃気−気体の昇圧−圧縮−仕事を有する。本発明は、この新規なサイクルを提案し、本設計は、シリンダの両側におけるシリンダの内側で前記サイクルが対称的及び同時に行われることを許容する(すなわち、シリンダの所期の第1側が、サイクルの所期のステップを行うとき、シリンダの反対側は、前記サイクルのステップではあるが、しかしながら、シリンダの第1側において起こるステップと比較して異なるステップを行う)。サイクル全体は、ピストンがシリンダの一端から他端へのストロークを完了するたびに、シリンダの内側で同時に起こる。
【0034】
シリンダを通じた予圧空気の連続流は、燃焼のために使用される以外には、既燃気体の掃気をするため、シリンダ壁及びピストンを冷却するため、及び排気チャンバの既燃ガスを濃化するために働く。
【0035】
本発明によると、長手方向軸に沿った出力軸の直線往復運動を発生する内燃エンジンを提供し、当該内燃エンジンは
両面シリンダであって、前記シリンダの両面において、前記シリンダがエンジンヘッドによって囲まれている、両面シリンダと、
前記シリンダの両側に配置された排気ユニットと、
前記シリンダ内部空間の中に配置され、前記シリンダに対して長手方向軸に沿って自由に滑動するピストンと、
前記長手方向軸に位置合わせされた2つのピストンロッドであって、各ピストンロッドは前記ピストンの異なる側に配置されている、2つのピストンロッドと、
を備え、
前記ピストンロッドのそれぞれは、排気開口を備える。
【0036】
好ましくは、排気開口は、複数の孔、複数の縦溝、及び複数の溝からなる群から少なくとも1つを備える。
【0037】
典型的には、ピストンロッドのそれぞれは、ピストンから離れたピストンロッドの開放端から、ピストンに最も近い排気開口まで、少なくとも延在している空洞を備えている。
【0038】
好ましくは、排気開口は、ピストンロッドの一体部分を形成する排気バルブを備える。
【0039】
更に好ましくは、ピストンロッドのそれぞれは、滑動バルブを備えている。
【0040】
更に好ましくは、ピストンは、吸気バルブと排気バルブとを備えている。
【0041】
典型的には、ピストンは、ピストンの正中面に関して対称である。
【0042】
革新的には、エンジンは、アクエリアスサイクルを通じて動作し、当該アクエリアスサイクルは、以下のステップ:(a)仕事、(b)排気、(c)掃気、(d)気体の昇圧、(e)圧縮を備える。好ましくは、排気開口は、少なくとも1つの群に配置されている。典型的には、排気開口は、多数の群に配置されている。
【0043】
望ましいならば、シリンダは、中央部に吸気開口を有する。
【0044】
実用上は、シリンダは、シリンダを通る予圧空気の連続流を有する。
【0045】
好ましくは、シリンダは、シリンダの内部にシリンダ壁を備え、空気の連続流は、ピストンの位置に依存することなく、シリンダから既燃ガスを掃気し、シリンダ壁及びピストンを冷却し、既燃ガスを濃化する。
【0046】
革新的には、既燃ガスは、ピストンロッドを通じてシリンダを充満させる。
【0047】
好ましくは、既燃ガスは、効率的な仕事ストロークの最後にシリンダから出る。
【0048】
典型的には、ピストンは、多機能ピストンを構成する。
【0049】
好ましくは、ピストンは、横方向のストレスのない動作ピストンを構成する。
【0050】
望ましいならば、エンジンは、既燃ガスの漏洩防止用の排気マニホルドに接続している一時チャンバを備える。
【0051】
典型的には、エンジンは、ピストンロッドとエンジンヘッドとの間、及びピストンロッドと排気ユニットとの間を密閉するシールリングを備え、シールリングは、静止しており、ピストンは、シールリング中を、シールリングに対して滑動する。
【0052】
更に典型的には、シールリングは、ピストンロッドに対して、内側へ接近する傾向のある分割リングを備える。
【0053】
ある実施形態では、エンジンは、吸気開口を備え、排気開口は吸気開口近傍にある。
【0054】
望ましいならば、エンジンは、ピストンの長手方向軸回りの回転を防止するための位置合わせシステムを備える。
【0055】
実用上は、位置合わせシステムは、長手方向軸に平行に向いており、接続アームを介してピストンロッドと接続されている位置合わせロッドを備える。
【0056】
好ましくは、位置合わせロッドはコイル巻線を備え、エンジンは、コイル巻線を通る位置合わせロッドの直線前後運動によってエネルギを与えられた固定子コイルを使用して電力を発生させる電気モータを備えている。
【0057】
典型的には、エンジンは、長手方向軸の周囲に及び長手方向軸から離間した仮想の周縁包絡を備え、電気モータの固定子コイルは、周縁包絡の周囲に位置し、長手方向軸から離間している。
【0058】
更に好ましくは、エンジンは、直線運動を回転運動に変換するシステムを備える。
【0059】
いくつかの実施形態では、システムは、
第1の位置合わせロッドに接続された第1のラックによって回転させられる第1の小歯車であって、第1の小歯車は、単一の方向に回転させられる、第1の小歯車と、
前記第1の位置合わせロッドと隣接する第2の位置合わせロッドに接続された第2のラックによって回転させられる第2の小歯車であって、第2の小歯車は、前記第1の小歯車の回転方向と同一である、単一の方向に回転させられる、第2の小歯車と
を備え、第1の小歯車と第2の小歯車は、出力軸に位置合わせされ、出力軸回りに回転する。
【0060】
本発明のより良い理解のため、及び本発明が実用上どのように実行され得るのかを示すために、添付図面についての言及がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】本発明に係るフリーピストンエンジンの斜視図。
図2】第1実施形態に係る、図1のエンジンの断面図。
図3図1のエンジンの分解斜視図。
図4図1のエンジンのシリンダの斜視図。
図5図4のシリンダの上部斜視図。
図6図1のエンジンのピストン及びピストンロッドの斜視図。
図7図1のエンジンの排気ユニットの斜視図。
図8】バルブが使用されたときのエンジンヘッドの改良された変形形態の斜視図。
図9図1のエンジンの吸気マニホルドの上部の斜視図。
図10図1のエンジンの吸気マニホルドの下部の斜視図。
図11】本発明にかかるフリーピストンエンジンの他の実施形態の断面側面図。
図12図11のエンジンの分解斜視図。
図13図11のエンジンのシリンダの斜視図。
図14図11のエンジンのエンジンヘッドの斜視図。
図15図11のエンジンのピストン及びピストンロッドの斜視図。
図16図11のエンジンのピストン位置合わせ装置の斜視図。
図17】発電ユニットのエンジンへの接続を示す本発明にかかるフリーピストンエンジンの他の実施形態の斜視図。
図18】直線運動を回転運動に変換するための機構を備える本発明にかかるフリーピストンエンジンの他の実施形態の斜視図。
図19】本発明にかかるピストンロッドの他の実施形態の斜視図。
図20】アクエリアスサイクルの第1ステップの間の本発明に係るフリーピストンエンジンの他の模式的な断面図。
図21】アクエリアスサイクルの第2ステップの間の本発明に係るフリーピストンエンジンの模式的な断面図。
図22】アクエリアスサイクルの第3ステップの間の本発明に係るフリーピストンエンジンの模式的な断面図。
図23】アクエリアスサイクルの第4ステップの間の本発明に係るフリーピストンエンジンの模式的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0062】
まず、本発明に係るフリーピストンエンジン10を示す図1から図10に注目する。長手方向軸Aを有するフリーピストンエンジン10は、内燃エンジンである。簡単のため、フリーピストンエンジン10を以後「エンジン」と言う。
【0063】
エンジン10は、シリンダ12の中央部16において、周方向に分布した多数の吸気開口14を有する両面シリンダ(two-sided cylinder)12を備える。典型的には、吸気開口14は、シリンダ12の外周に等間隔で分布している。吸気開口14は、吸気マニホルド18によって周方向に囲まれている。吸気マニホルド18は、吸気マニホルド下部22と接続される吸気マニホルド上部20を備える。吸気マニホルド上部20は、その上部において、空気取入口24を備え、空気取入口24を通じて予圧外気がシリンダ12の中に入る。シリンダ12の両側は、エンジンヘッド26によって閉じられており、間隔が空いた多数の円盤様冷却フィン28が備えられている。ある場合において、設計要求によって、エンジン10は、当技術分野で既知のタイプの冷却剤を使用することで冷却されてもよい。
【0064】
明細書及び特許請求の範囲を通じて現れる方向の用語、例えば「前方(front)」、「後方(rear)」、「上方(upper)」、「下方(lower)」等は、互いに関連のある様々な表面の位置を区別するための便宜的な用語として使用されることに留意されたい。これらの用語は、図面を参照して定義されるが、しかしながら、これらは図示する目的にのみ使用され、添付された特許請求の範囲の制限を意図するものではない。
【0065】
ピストン30は、シリンダ12のシリンダ内部空間32の中に配置されており、長手方向軸Aの方向に、シリンダ内部空間32に沿って前後に自由に滑動可能である。ピストン30は、両面で、中実であり、ピストン30の正中面Pに関して対称である。
【0066】
ピストンロッド34は、ピストン30の中心で、ピストン30の両面に長手方向軸Aに関して対称に接続されている。2つのピストンロッド34のそれぞれは、中空であり、すなわち、ピストンロッド34の全長に渡って延在している、長手方向に延在する空洞36を備える。ピストン30は中実であるため、前述したように、所期のピストンロッド34の空洞36は、もう一方のピストンロッド34の空間36に接続されず、空洞の一方から他方にピストン30を通じて気体が流れることができないことは明らかである。
【0067】
(後述する)「滑動バルブ(sliding valve)」及び多機能ピストンの一体部分を備える各ピストンロッド34は、多数の排気開口38を備える。本発明の特殊な実施形態によれば、各ピストンロッド34の排気開口38は、3つの群、すなわち、ピストン30に最も近い内側群40と、ピストン30から最も遠い外側群42と、及び、内側群40と外側群42の間に配置された中央群44とに配置される。
【0068】
排気開口群間の距離又はそれらのピストンに関する位置、又は、望ましいならば、群の数は、設計要求によって決定される。各群、すなわち、内側群40、外側群42、及び中央群44は、多数の排気開口38を備えている。各群の排気開口38は、ピストン30から等距離にある。さらに、本発明の特殊な実施形態によれば、所期の群の排気開口38は、ピストンロッド34の回りに周方向に均等に分布している。
【0069】
内側群40の排気開口38のピストン30からの距離(排気開口38の最も近い点からピストン30まで測定される)は、エンジン10の圧縮率を決定する。
【0070】
エンジンヘッド26のそれぞれは、点火プラグ及び燃料噴霧器45を割り当てるための領域を有する。代替的には、燃料噴霧器45は、シリンダの中央部16又はシリンダ壁33に取り付けられてもよい。
【0071】
エンジンヘッド26のそれぞれの末端は、排気ユニット48によって閉じられている。排気ユニット48は、エンジンヘッド26のそれぞれに接続されており、又は、エンジンヘッド26のそれぞれに組み合わせ可能であるか若しくはエンジンヘッド26のそれぞれの一体部分であり得る。各排気ユニット48は、排気チャンバ50を、排気ユニット48の内部に備えており、排気冷却フィン52を、排気ユニット48の外部に備えている。排気ユニット48のそれぞれの上部は、排気出口54を備えている。
【0072】
エンジン動作の一般的な説明を説明する。ピストン30がシリンダ内部空間32の中で滑動したとき、対応して、吸気開口14を閉鎖及び露出させる。全てのエンジン動作、すなわち、燃焼、冷却、掃気、既燃ガスの酸化に必要な予圧空気は、吸気開口14を通じて流入する。本発明の好適な実施形態によれば、シリンダに流入する空気は予圧されている(図示しないシステムによって)。ピストンロッド34が動くとき、対応して、排気チャンバ50を露出及び閉鎖させる。この位置において、排気ガスは、排気チャンバ50から排気出口54まで流れ得る。必要ならば、排気ガスは更にターボ過給装置(図示せず)に流入してもよい。
【0073】
ピストン30がシリンダ12の中央部16からエンジンヘッド26に向かって動くとき、吸気開口14と排気開口38は閉鎖され、圧縮ストロークが起こる(図23参照、ピストンが右側へ動いたとき)。燃料は、噴霧器45(図11参照)を通じて、シリンダ内部空間32へ噴射され、点火プラグ46(図20参照)を使用して、発火される。燃料及び空気混合気の発火は、出力ストローク又は仕事ストロークとして既知の燃焼を作り出す(図21参照)。
【0074】
本発明のエンジンは、従来のエンジンに使用されているいくつかの噴霧器の代わりに、単一の中央噴霧器を利用する。代替的には、エンジンは、2つの噴霧器を使用してもよく、1つは各エンジンヘッド又はシリンダ壁33の頂点近傍にある。
【0075】
加えて、燃料は、圧縮ストロークの始めに噴霧器を通じて噴射されるが、一般的には、従来のエンジンにおいて、燃料は、圧縮ストロークの最後においてのみ燃焼チャンバに噴射される。この特徴によって、本発明のエンジンは、「直接低圧噴射(direct low pressure injection)」を実行することが可能になる、すなわち、空気を格納しているチャンバに燃料を約100バールかそれ以上で噴射する代わりに、空気を格納しているチャンバに燃料を約3バールで噴射する。この直接低圧噴射は、一般的に使用されている高圧噴射と対照的に、当業者に評価され得る様々な利点に直面する。例えば、(1)安全である−低圧を使用することが漏洩の機会を相当低減する、(2)低圧での燃料噴射による省エネルギ、(3)より良い燃焼と低燃費、従って、大気汚染の減少に繋がる空気と燃料のより良い噴霧がある。
【0076】
仕事ストロークの間、ピストン30は、シリンダ12の反対側に向かって動き、それとともにピストンロッド34を動かす。ピストンロッド34の運動(図21に見られるように右側への)の間、(ピストンの後方にある、すなわち、ピストンの左にある排気開口)排気開口38は、シリンダ内部空間32に露出しており、既燃ガスがピストンロッド34を通じて排気チャンバ50に向かって及び排気出口54へと流れることを可能にする(図21から図22への変化参照)。
【0077】
この独特で特別な動作は、既燃ガスが効率的な仕事ストロークの終了直後に排出されることを許容する。効率的な仕事ストロークは、燃焼後の高圧と、その後のシリンダの自由空間の増加との間における相違として定義される。燃焼後の高圧は、効率的なストローク(ピストンの運動)につながり、シリンダの自由空間の増加は、当該空間における圧力の低下を引き起こし、その時点で、気体の圧力は、もはや有効ではなく、ピストンを動かす運動力に変換されている。従って、シリンダ12の内側に既燃ガスが存在する比較的短い時間によって、シリンダは比較的低温で維持され、排気ユニットは高温で維持される。
【0078】
ピストン30の運動の継続中、吸気開口14は露出しており、予圧外気は、空気取入口24を通じて、ちょうど仕事ストロークを終了したところである(図23参照)シリンダ内部空間32に入る。予圧空気は、シリンダ内部空間32から既燃ガスのいかなる残留物を掃気し、シリンダを内側から冷却し、不燃燃料の残留物を燃焼するために外気を用いて排気ユニットでの既燃ガスを濃化する。その他の重要な問題は、ピストン30がシリンダ12のもう一端に向けた運動を維持しているとき、予圧空気はシリンダの自由空間の増加する大きさを満たし、その結果、既燃ガスがシリンダに戻るような吸引を排除する。
【0079】
同時に、ピストン30の反対側にある空気は、排気バルブ開口が閉じられるまで、まず、昇圧され、その後、圧縮される、従って、反対側の他の圧縮ストロークが開始する。シリンダ内部空間32及び排気チャンバ50に断続的に開放され、既燃ガスがシリンダ内部空間32から排気チャンバ50に流れることを許容する排気開口の動作は、「滑動バルブ」動作と定義されてもよい。
【0080】
ピストン30がシリンダ内部空間32内で左(図2参照)に最大ストロークに到達したとき、左ピストンロッド34の全ての排気開口38、すなわち、内側群40、中央群44及び外側群42の排気開口は、左排気チャンバ50の中に位置し、外側群42の排気開口は、いかなる場合においても大気に露出しないということに留意されたい。この位置において、もう一方のピストンロッド34、すなわち、右ピストンロッド34の外側群42の排気開口38は、右排気チャンバ50の中に配置されており、その一方で、右ピストンロッド34の内側群40及び中央群44の排気開口38はシリンダ内部空間32の中に位置している。
【0081】
今度は、図11−12,15−16に示す、本発明のその他の実施形態に注目する。示されているように、ピストンロッド34は、円形排気開口の代わりに、長手方向に延在する排気スロット56を備える。示されている実施形態において、ピストンロッド34は、ピストン30の両側に排気スロット56の4つのセットを備えている。排気スロット56の各セット58において、排気スロット56のそれぞれは、長手方向軸Aに関して及び正中面Pの他面における排気スロット56に関して、対称的に配置されている。
【0082】
本発明の他の実施形態(図には示していない)によれば、排気ガス用の「滑動バルブ」の同様の動作は、長さに沿って異なる直径を有しているピストンロッドを使用して達成される。従って、ピストンロッドは、ピストンの近傍で、及び排気ユニットの外部端で、最大の直径を有し、それらの間で、より小さい直径を有する。この構造では、排気ガスは、ピストンが一端から他端へ滑動するとき、シリンダ内部空間32から排気チャンバ50まで自由に流れることができる。
【0083】
更に、ピストンロッド34は、長手方向軸A回りのピストンロッド34の回転を防止するための位置合わせシステム60(図16参照)に接続されており、そのため「一直線に調整された運動ピストン」の特色をなす。ピストンロッド34のそれぞれは、ピストン30から離れたピストンロッド34の自由端62において、接続アーム64に接続している。接続アーム64のピストンロッド34への接続は、接続アーム64がピストンロッド34に対して長手方向軸A回りに回転不可能なようになっている。これは、例えば、ピストンロッド34と接続アーム64との間を螺合することによって、又は、ピストンロッド34の自由端62を、非円形の突起として形成し、対応する非円形の刻み目を有する接続アーム64を組み立てることによってなされる。固定ボルト66は、接続アーム64を対応するピストンロッド34に安全に取り付ける。
【0084】
位置合わせロッド68は、円筒形状及び位置合わせロッド軸Bを有しており、接続アーム64の各端において垂直に接続している。位置合わせロッド68は、エンジン10に対して内向きに接続されており、位置合わせロッド軸Bが長手方向軸Aと平行になるように方向付けられている。
【0085】
図11に見られるように、各排気ユニット48は、排気ユニット48の排気チャンバ50の外側に、位置合わせロッド68に大きさ及び位置が対応する位置合わせ孔69を備える。従って、エンジン10が組み立てられ、位置合わせロッド68が対応する位置合わせ孔69内を自由に滑動するとき、ピストンロッド34と共にあるピストン30は長手方向軸Aのみに沿って前後運動し、その一方で、ピストン30とピストンロッド34の長手方向軸A回りの回転は、うまく防止される。
【0086】
気体がピストンロッド34と排気ユニット外端との間を通って、大気まで流れることを防止するために、及び、ピストンロッド34とエンジンヘッド26との間の気体の漏洩を密閉するために、並びに、シリンダ内部空間32の内側のピストン30の一方から、シリンダ内部空間32の内側のピストン30の他方まで気体が流れることを防止するために、エンジン30は、シールリング70を備える。
【0087】
排気ユニット48の両端におけるシールリング70は、同様の構造を有している。各シールリング70は、排気ユニット48に形成されているシールリングハウジング72に載置されており、2つの排気リング74を備え、それらの間にリングスペーサ76を有する。排気リング74は、分割リングであり、排気リング74とピストンロッド34との間の隙間を密閉するために内向きに圧迫しやすいように形成されている。シールリング70は、静止しており、ピストンロッド34は、そこで滑動する。
【0088】
固定ピン78は、排気カバー80に接続されており、分割リングの2つの縁の間に形成されている隙間に方向付けられており、それによって、分割リング、すなわち排気リング74が長手方向軸A回りにピストンロッド34に対して回転することを防止する。排気リング74は、前述したようにエンジンヘッド26の端に配置されていてもよく、排気チャンバ50において導入される必要はない。
【0089】
従って、位置合わせシステム60及び固定ピン78によって、ピストンロッド34と分割リング(すなわち排気リング74)との間のいかなる相対回転も防止されることが保証され、その結果、ピストンロッド34の排気スロット56が分割リング間の隙間に衝突しうるいかなる危険もなく、シールリング70に相対的なピストンロッド34の制限のない自由な滑動が保証される。システムを組み立てたとき、シールリング70が静止することと、ピストンロッド34がシールリング70を通じて自由に滑動可能であることとを保証することに配慮すべきである。
【0090】
ピストン30のシールリングは、前述したものに類似の構造を有しており、分割リングが外向きに、前述したものと反対に、延在する傾向があるという違いを有する、それによって、シールリングが強制的にシリンダ壁33を押圧することを保証し、ピストン30のシリンダ壁33に対する適切な密閉を保証する。
【0091】
エンジンヘッド26からの出口孔における、ピストンロッド34とエンジンヘッド26の間のよりよい密閉を保証するために、特別な設計が適用される。この設計によると、圧縮気体は、ピストンロッド34とエンジンヘッド26の間の隙間に入り込む代わりに、強制的にシリンダ内部空間32へと戻る。特別な設計は、ヘッドポートとピストンロッド34の間の隙間を、エンジンヘッド燃料チャンバにおける放物線の頂点から、シリンダの頂点により近い下点まで動かす。圧縮ストロークにおいて、気体は、後方へ向け直され、ヘッドポートとピストンロッド34の間の隙間に入り込まず、漏れ出さない。
【0092】
図17は、本発明に係るエンジン10の他の実施形態を示す。図17に示すように、接続アーム64のそれぞれは、X型を有しており、従って、4つの接続アーム縁82を有する。いくつかの実施形態によれば、4つの接続アーム縁82は、それらの間で接続され、従って、一般的にX型接続アームを取り囲む角形を形成している。位置合わせロッド68は、エンジン10の全長に渡って沿っており、その両端において、接続アーム縁82に接続している。
【0093】
位置合わせロッド68のそれぞれは、電気モータ88のロータ86を実用上形成しているロータアセンブリ及びコイル巻線を備えている。そのようなロータ86は、先行技術で既知のリニアモータのように、ピストンロッド34に接続された接続アーム64と共に、直線運動で前後に運動する。
【0094】
固定子コイル90は、エンジン10に沿って及びエンジン10を取り囲んで配置されている固定子支持ブラケット92と接続されており、ロータ86のそれぞれの周囲に形成されている。示したように、電気モータ88はエンジン10の周囲に形成されており、それによって、効率的で小型な構造を形成している。更に、固定子コイル90は、電気生産装置の新たな及び独特な「磁気極性アレイ」を形成するように配置されている。
【0095】
前述の説明によれば、本発明に係るエンジンは、燃料に蓄えられている化学エネルギを有用な機械エネルギに変換することでパワージェネレータの駆動力として働くリニア、フリーピストン、内燃エンジンである。エンジンは、電気推進、電気アキュムレータ、及び他の電気消費アプリケーションに適用されることができ、そうでなければ、空気を圧縮し、若しくは、プロペラを推進させる。
【0096】
本発明に係るエンジンの利点を示すために、従来の4シリンダエンジンに関して比較を行った。
【0097】
【表1】
【0098】
更に、以下の部品一覧表は、従来のエンジンに存在し、本発明に係るエンジンから省略される。
【0099】
クランクシャフト、複数のクランクシャフトベアリング、クランクシャフトオイルリテーナ、複数の接続ロッド軸受用の複数のオイルリテーナハウジング、複数の接続ロッドベアリング、オイルポンプ、潤滑システム、油受、ウォータポンプ、カムシャフト、タイミングシステム、複数のバルブ、複数のバルブガイド、複数のバルブシーリング、複数の揺動軸、バルブカバー、カウンタシャフト、上部オイルリテーナ及び複数のシーリング。
【0100】
前述の一覧表及び表に見られるように、本発明のエンジンは、先行技術のエンジンに対して相当な利点、例えば、部品の数の減少、重量の減少、大気汚染の減少、出力重量比の改善、単純なメンテナンス、機械的な信頼性の改善、体積の減少、を提供し、内部給油システムを必要としない。
【0101】
更に、本発明に係るピストンは、(a)燃焼及び出力ストロークを取り扱うこと、(b)吸気バルブとして働くこと、(c)排気プロセスで働くことによって多機能性を含み、又は「多次元的ピストン」であるため、ピストンは「3D」ピストンであると見なされてもよい。
【0102】
加えて、ピストン30は、長手方向軸Aに沿って直線的に動くため、及びピストンロッド34によってピストン30に適用される圧力が、同じ線に沿って連続的に向けられているため、ピストンロッドの基部がクランクシャフト回りに回転し、それによって、ピストンに代替的な横力が付加する従来のエンジンのようにピストンに働く横力はなく、従って、本発明に係るピストンは、「横方向のストレスのない動作ピストン」とみなされてもよい。従って、側方の機械的なストレスの欠如によって、給油システムの必要性は回避される。この特徴は、プロセスの間の蓄熱を減少させることができ、冷却を供給する必要性を減少させることができる。
【0103】
従って、単一の直線に沿って動作するため、エンジンの内側を動く排気バルブ、すなわち、内部排気バルブ又は「滑動バルブ」として働くピストンロッドを有しているため、本発明に係るエンジンは、「リニア3Dピストン、自己掃気及び冷却、直接低圧燃料噴霧システム、一直線に調整されたピストン運動及び滑動バルブの運動を備えた内燃エンジン」とみなされても良い。
【0104】
本発明はある程度具体的に説明されたが、様々な代替や改良が、以後請求する本発明の思想又は範囲から逸脱することなく、創作され得ると理解されたい。
【0105】
例えば、エンジンは、ただ1つのシリンダを有すると制限されず、2つ又はそれ以上のシリンダを有しても良い。
【0106】
排気開口は、ピストンロッドの回りに周方向に均等に分布する必要はなく、設計必要に応じて、異なる配列で配置されても良い。
【0107】
ピストンロッドの空洞は、ピストンロッドの全長に渡って延在する必要はない。好ましくは、空洞は、少なくともピストンから離れたピストンの開放端から、ピストンに最も近い排気開口まで延在している。
【0108】
ピストンロッドの排気開口は、前述したように形成される必要はない。いくつかの実施形態によれば、ピストンロッドは、排気開口を伴って、又は、ピストンロッドの長さを通る空洞を伴って形成されない。代替的には、図19に示されるように、ピストンロッド34は、中実ロッドであり、長手方向に延在している溝91をピストンロッド34の表面上に備える。
【0109】
ピストンロッド34を伴うピストン30が、シリンダ内部空間に沿って長手方向に動くため、長手方向に延在している溝91は、必要であれば、シリンダ内部空間又は排気チャンバに露出し、それによって排気動作を実行する。
【0110】
冷却フィンは、示されたように構築される必要はなく、すなわち、円盤様形状又は矩形を有する必要はなく、冷却フィンの他のいかなる形状が、構造又は設計要求に応じて選択されてもよい。
【0111】
ピストンは、ピストンロッドのそれぞれが、独立して又はそうでなく、ピストンの側面に接続される、前述したように貫通孔を備えない中実であってもよい。代替的には、ピストンは、ピストンロッドのそれぞれを、貫通孔を介して互いに接続するために、貫通孔を備えていてもよい。しかしながら、ピストンの一方からピストンの他方へピストンロッドを介して流れる空気はないことは明らかにされる必要がある。
【0112】
シリンダを予圧外気で満たす中央空気供給機の独特な設計は、伝統的なバルブを、シリンダヘッドの両面に1つ又は複数取り付けることを許容する。バルブは、バネによって閉じられ、機械的な機構によって開かれる。代替的には、電気的に操作されてもよい。バルブは、仕事ストロークが効率的な運動を終了するとすぐに開き、ピストンが反対端に動き、圧縮ストロークの方向に戻るように動くまで、開いて維持される。同時に、シリンダに流入する空気は、ピストンが反対方向へ動くことで増加したシリンダの体積を満たす。伝統的なバルブ又は蒸気口を使用することは、漏洩ガスを集め、漏洩ガスが大気に漏れ出すことを防止するために、小型排気ユニットをエンジンヘッドの端に取り付けることを必要とする。
【0113】
小型排気チャンバは、エンジンヘッドの内蔵ユニット又は内蔵部分である。高温気体は、後処理のために、排気チャンバにせき止められ、排気マニホルドに向けられる。
【0114】
図8は、バルブが使用されたときのエンジンヘッド93の改良変形形態を示す。
【0115】
いくつかの実施形態によれば(図18参照)、2つの隣接する位置合わせロッド68、例えば上部位置合わせロッド94及び下部位置合わせロッド96の直線運動(従って、エンジン10の直線運動)は、出力軸C回りの回転運動Rを作るために使用される。上部位置合わせロッド94は、その中央部に、上部ラック98を備えており、下部位置合わせロッドは、その中央部に、下部ラック100を備えている。上部ラック98は、下部ラック100に対向しており、それらのそれぞれは、異なる小歯車に係合している。上部ラック98は、第1の小歯車102に係合しており、下部ラック100は、第1の小歯車102と平行で有り分離している第2の小歯車104に係合している。
【0116】
第1の小歯車102及び第2の小歯車104は、共通の軸、すなわち出力軸Cに組み立てられる。小歯車のそれぞれは、機械的又は電気的ベアリングである、一方向ベアリングを備えている。図示した実施形態において、第1の小歯車102は、上部位置合わせロッド94が左側に動くとき、反時計回りに回転し、上部位置合わせロッド94が右側に動くとき、空回りする。同様に、第2の小歯車104は、下部位置合わせロッド96が右側に動くとき、反時計回りに回転し、下部位置合わせロッド96が左側に動くとき、空回りする。
【0117】
従って、エンジン10のピストンが、位置合わせロッド68と共に所定の方向に向かって直線的に動くとき、1つの小歯車のみが回転し、もう一方の小歯車は空回りする。エンジン10のピストンが、位置合わせロッド68と共に反対方向へ直線的に動くとき、もう一方の小歯車は、回転する。従って、位置合わせロッドによって、位置合わせロッドの異なる方向に交互に回転させられた各小歯車によって、小歯車は、相互出力軸Cを中心として単一の方向(図17に任意に示すように反時計回り、又は、反対方向、すなわち時計回りに)にのみ回転する。従って、本発明のエンジンは、既知の機械的適用、例えば飛行機のプロペラ、発電機、及びその他の類似物のための回転運動を生み出すために使用されてもよい。更に、本発明のエンジンは、液体又は気体を圧縮するために使用されてもよい。
【0118】
回転運動Rは、エンジン10の長手方向軸Aと垂直な出力軸C回りに実質的に確立される。
【0119】
エンジンは、発火プラグを使用することで点火された燃料を使用することを制限されず、必要であれば、エンジンは、ディーゼル自己着火燃料を使用してもよい。この場合、発火プラグは、エンジンから取り除かれる。
【0120】
いくつかの実施形態では、既燃ガスの漏洩を防ぐために、エンジンは、排気マニホルドに接続された一時的なチャンバを備えている。
【0121】
いくつかの実施形態では、排気開口は吸気開口近傍にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23