【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。有利な実施形態は、従属請求項から得られる。
【0011】
以下において、用語「遠位」は、注射デバイスの注射針端部の方に向かう方向を表すのに使用され、用語「近位」は、注射デバイスのエンドキャップ端部の方に向かう方向を表すのに使用される。
【0012】
用語「用量増加」は、用量を送達または投薬する前に装置またはデバイスを準備するプロセスを示すのに使用される。用語「用量増加された」は、その状態における装置またはデバイスのそれぞれの要素の完全に用量増加された状態および対応する位置、すなわち、すぐ後に投薬動作が可能な位置を示す。
【0013】
「用量増加方向」は、用量増加プロセスにおける装置またはデバイスの要素の長手方向または回転方向の動きなどの動きの方向を示す。用語「ダイヤルダウン方向」または「投薬方向」は、使用者が不完全な設定用量をダイヤルダウンしようとするとき、または、使用者がデバイスもしくは装置の用量増加された状態に完全に用量増加することによって設定した後に投薬または送達動作を実行するときのどちらかにおける、装置またはデバイスの要素の動きの方向を示す。好ましくは、用量増加方向は、ダイヤルダウン方向または投薬方向と反対である。
【0014】
流体製品の予め設定された投薬量は、装置の1つまたは複数の要素がゼロ投薬量に対応する開始位置から離れた後、予め設定された投薬量に対応する終了位置に達したときの装置の1つまたは複数の要素の設定に対応する投薬量であってもよい。それぞれの要素の動きは、例えば、設定位置以外、例えば初期位置を下回る、または、予め設定された投薬量位置を上回るそれぞれの要素のさらなる動きをブロックする突起または他の適切な要素によって制限され得る。
【0015】
流体製品の予め設定された投薬量を用量増加および送達するための医薬品投薬装置または注射デバイスは、ハウジングを備える。ここで、用語「ハウジング」は、ハウジング自体、および、ハウジングに固定的に結合される任意の要素、例えば以下に記載のハウジングに好ましくは移動不可能に結合されるガイドスリーブのような要素を示す。その場合、ガイドスリーブは、ハウジング要素またはハウジングとみなされる。用量設定要素、例えば投薬スリーブに結合されるエンドキャップ付きまたは無しの投薬スリーブは、ハウジングおよびハウジング要素に対して動くことができ、また、一切の投薬動作が不可能なゼロ投薬量に対応する開始位置と、流体製品の予め設定された投薬量を投薬するためにその後に投薬動作を実施することが可能な、流体製品の予め設定された投薬量に対応する用量増加された位置と、の間で動くことができる。予め設定された投薬量は、医薬品投薬装置が初めて動作される前に一度設定される投薬量であってもよく、デバイスの動作のときに変えられない固定された予め設定された投薬量のままであってもよい。
【0016】
医薬品投薬装置は、駆動システムを備える。この駆動システムは、例えば、カートリッジのストッパに力を掛けることができるフランジに結合されるプランジャロッドに結合される回転スリーブを備える。駆動システムは、例えばねじ係合によって、用量設定要素に結合され、投薬動作を開始または実行するように動作可能である。用量設定要素を用量増加方向に適切に動かすことによって予め設定された投薬量が完全に設定された後、用量設定要素は、投薬方向に動作されることができ、また、カートリッジからの予め設定された投薬量である量の流体製品を変位させるか、または、押し出すために、用量設定要素に作用する使用者の投薬動作を(例えば、カートリッジ内でストッパを定められた距離だけ移動させることによって)行う駆動システムの投薬動作に移すために、駆動システムに結合される。投薬スリーブなどの用量設定要素は、例えば、ねじ係合によって、回転スリーブのような回転要素に結合可能であり、それによって、投薬スリーブが例えばハウジングに対して回転方向に固定されるが軸線方向に移動可能な場合、投薬スリーブは、ハウジングに対する回転スリーブの回転運動および/または移動を行うことができる。
【0017】
回転スリーブは、本発明の一態様によれば、ハウジングに対して軸線方向に移動することができず、本発明の他の態様によれば、ハウジングに対して所定の距離だけ軸線方向に移動可能である。回転スリーブは、好ましくは、投薬動作中にプランジャロッドにモーメントまたは力を伝えるために、プランジャロッドに解放可能に結合されるか、または、一方向的に結合され、それによって、好ましくはプランジャロッドの前進運動が引き起こされる。結合は、好ましくは、用量増加動作が行われるときに解放され、それによって、用量増加プロセスの間、回転スリーブからプランジャロッドに力またはモーメントが伝えられなくなる。プランジャロッド自体は、ハウジングまたはハウジング要素にねじ係合され、したがって、プランジャロッドの回転運動は、プランジャロッドの軸線方向移動を引き起こす。
【0018】
医薬品投薬装置または注射デバイスは、用量設定要素が予め設定された投薬量に対応する用量増加された位置に達しておらず、したがって、初期位置もしくは開始位置か、または、開始位置と完全に用量増加された位置との間の中間位置にあるときに、駆動システムの投薬動作を阻止またはブロックするサブ用量阻止システムを備える。サブ用量阻止システムは、用量設定要素が用量増加された位置に達したとき、および/または、その後に、駆動システムの投薬動作を可能またはブロック解除することができ、したがって、サブ用量阻止システムは、少なくとも予め設定された投薬量が、投薬動作が開始され得る前に用量設定要素によって設定されることを確実にすることができる。
【0019】
サブ用量阻止システムは、駆動システムの投薬動作を阻止またはブロックするとき、駆動システムの駆動要素(例えば、回転スリーブ)の回転運動をブロックするように動作可能である。この回転運動は、投薬方向またはダイヤルダウン方向に対応している。駆動要素の反対のダイヤルアップ方向の回転運動はブロックされない。したがって、サブ用量阻止システムは、用量設定要素が完全に用量増加された位置に到達する前の駆動システムの投薬動作をブロックする。
【0020】
サブ用量阻止システムによってブロックされる駆動システムの駆動要素の回転運動は、医薬品投薬装置の長手方向軸線を中心とした回転である、医薬品投薬装置の円周方向における回転運動である。医薬品投薬装置の円周方向における駆動要素の回転運動をブロックすることは、例えば医薬品投薬装置の長手方向軸線に対して斜めに延在する軸線を中心として回転する要素を導入することなどによって医薬品投薬装置への追加の複雑さを加える必要なく、確実にブロックされ得る駆動要素を簡単かつ確実に構築するという利点をもたらす。したがって、本発明による医薬品投薬装置は、コンパクトな態様で構築可能であり、それと同時に、信頼性の高いサブ用量阻止機能をもたらすことができる。
【0021】
サブ用量阻止システムは、ロックリングのような単一要素であってもよく、または、互いに対して動くことができる要素の組み合わせであってもよい。好ましくは、ロックリングは、いずれにしても、単一方向(例えば、用量増加方向)のみのロックリングの運動または回転を可能にしつつ反対方向の運動または回転をブロックする態様で、ハウジングまたはハウジング要素に結合され得る。一代替実施形態によれば、ロックリングは、ハウジングまたはハウジング要素に解放可能に結合可能であり、したがって、ロックリングは、例えば、ダイヤルアッププロセス中にハウジング要素から結合解除されて、任意の方向における回転運動を可能にし、また、ロックリングは、例えば、ハウジングに一方向的に結合されて、用量増加方向のみの運動または回転を可能にし、ダイヤルダウン動作が実行されるときの反対方向の運動または回転をブロックして、ダイヤルダウンまたは所望の投薬動作をブロックすることができる。駆動システムの適切な解放およびブロックを引き起こすように、駆動システムの要素(例えば、回転スリーブ)は、例えば、ロックリングに解放可能かつ回転的に結合され得る。結合は、初期位置に対応する回転スリーブの位置と、予め設定された投薬量が設定される用量増加された位置と、の間で常時行われ、回転スリーブの適切な運動または回転によって予め設定された投薬量が完全に設定された後にだけ解放され得るようになる。好ましくは一方向的に動くことができるロックリングとのこの結合は、用量増加のプロセス中に、ダイヤルダウンまたは投薬動作の実行が不可能になることを確実にする。
【0022】
好ましくは、サブ用量阻止システムは、駆動システムの投薬動作の阻止またはブロックのとき、ダイヤルダウン方向における用量設定要素の運動を阻止するように動作可能である。この場合、サブ用量阻止システムは、2つの目的、すなわち、投薬動作をブロック(例えば、プランジャロッドの前進運動をブロック)すること、および、ダイヤルダウン動作(投薬スリーブのダイヤルダウン運動)をブロックすることを果たす。これは、例えば、用量設定要素または投薬スリーブと、駆動システム要素(例えば、回転スリーブ)と、の間の上述のねじ係合によって達成され得る。
【0023】
好ましくは、ロックリングのようなサブ用量阻止システムは、恒久的に、または、別法として解放可能に、ハウジングまたはハウジング要素に結合され得る。この結合は、例えば、用量増加方向におけるハウジングに対するサブ用量阻止システムまたはロックリングの運動または回転を可能にし、反対方向(例えば、ダイヤルダウン方向)におけるそれ自体またはそれに結合される任意の要素の運動または回転を阻止するラチェット手段によって行われる。
【0024】
好ましくは、サブ用量阻止システムは、係合状態において、ダイヤルダウン方向における駆動要素の回転を阻止またはブロックするように、ハウジングまたはハウジング要素の対応するラチェット歯に係合または係合解除するように動作可能な少なくとも1つの結合機構またはラチェット歯またはラチェット歯部を備える。係合または係合解除の動作は、サブ用量阻止システムに対して少なくとも1つのラチェット歯を動かすことによって行われ、それはサブ用量阻止システムに連結されるラッチ手段または付勢手段にラチェット歯を設けることによって行われ得る。あるいは、係合または係合解除動作は、サブ用量阻止システムまたはロックリングを適切に動かすまたは移動させることによって対応するラチェット歯に結合または結合解除するように、ハウジングに対してサブ用量阻止システムまたはロックリングを動かすことによって行われ得る。
【0025】
サブ用量阻止システムのラチェット歯またはラチェット歯部は、好ましくは、対応するラチェット歯を軸線方向に向けることで、軸線方向におけるハウジングまたはハウジング要素の対応するラチェット歯に係合することができ、または、別法により、医薬品投薬装置の径方向の対応するラチェット歯に係合することができる。
【0026】
好ましくは、サブ用量阻止システムは、ロックリングのような管状部材またはスリーブ形状にされ、ハウジングおよび/または駆動システムとの解放可能または恒久的な結合のための結合手段を備えることができる。サブ用量阻止システムの管状部材は、好ましくは、サブ用量阻止システムの管状部材と駆動システムの管状部材または回転スリーブとの解放可能な回転的な結合のために、対応する結合機構または駆動システムの管状部材の歯または回転スリーブの歯に好ましくは径方向において対向する面に、結合機構または結合歯を備える。
【0027】
駆動システムの回転スリーブは、好ましくは、サブ用量阻止システムの径方向内側か、径方向外側のどちらかに配置され得る。
【0028】
サブ用量阻止システムは、好ましくは、用量設定要素が用量増加方向に操作または移動されるときに、上述したように、サブ用量阻止システムまたはロックリングとハウジングまたはハウジング要素との間の結合が開くまたは解放されるように、医薬品投薬装置の軸線方向に動くことができ、また、用量設定要素がダイヤルダウン方向に操作または移動されるときに、回転をブロックするためにハウジングまたはハウジング要素に結合するように反対方向に動くことができる。
【0029】
駆動システムは、好ましくは、プランジャロッドを備える。プランジャロッドは、プランジャロッドの軸線方向に沿って延在する少なくとも1つの溝またはカムを備える。プランジャロッドの円周方向において、軸線方向に延在する1つ、2つまたは3つ以上の溝またはカムが設けられてもよい。隣接する2つの溝またはカムの間の円周方向距離は、流体製品の予め設定された投薬量を設定または規定するのに使用され得る。好ましくは、プランジャロッドに、軸線方向に延在する2つ以上の溝またはカムが円周方向に設けられる場合、隣接する2つの溝またはロッドの間の円周方向距離は等しい。軸線方向に延在する例えば4つの溝を使用する場合、それらは、円周方向に90°だけずらされる。溝またはカムは、例えば径方向に動くことができるアームである駆動要素の少なくとも1つの結合または係合要素と協働することができる。その結果、係合要素が溝またはカムに結合されていないときに駆動要素の係合要素が例えば径方向外側位置または解放位置または係合解除位置になり、それによって、少なくとも用量増加方向におけるプランジャロッドに対する駆動要素の運動または回転が可能になる。好ましくは、プランジャロッドは、ハウジングの適切な結合手段(例えば、ねじ山)によってハウジングに回転的に結合される。好ましくは、予め設定された投薬量の設定後、駆動要素の係合要素は、1つの溝またはカムから隣接する溝またはカムに用量増加方向に、それに係合するために移動され、それによって、好ましくは少なくとも投薬方向をもたらすことができるように、例えば、プランジャロッドに回転的に結合するように係合要素の径方向内方運動が実行され、その結果、駆動要素の回転運動は、少なくとも投薬方向においてプランジャロッドに伝えられ得る。
【0030】
好ましくは、結合歯のような結合機構は、駆動要素に連結される例えば上述したようなものと同じ係合要素である係合要素に設けられる。この結合機構は、例えば、駆動要素をそれに回転的に結合させるために、例えばロックリングの内周面に設けられるサブ用量阻止システムまたはロックリングの対応する結合機構または歯に係合する係合位置(例えば、径方向外側位置)まで径方向に動くことができる。この回転結合は、係合要素が、プランジャロッドの溝またはカムの係合から解除され、径方向外側位置まで外に動かされるときに行われる。駆動要素とサブ用量阻止システムまたはロックリングとの間の回転結合は、係合要素が反対(例えば、径方向内側方向)に移動されるときに解放され、それによって、駆動要素は、サブ用量阻止システムから結合解除され、プランジャロッドに再び結合される。
【0031】
好ましくは、駆動要素は、係合要素を備える。係合要素は、プランジャロッドの溝またはカムの係合から解除されダイヤルアップ方向にわずかな距離だけ動かされた後、ダイヤルアップ運動に戻ることはできないが、プランジャロッドの隣接する溝またはカムまで動くことだけは可能である。
【0032】
プランジャロッド、または、サブ用量阻止システムもしくはロックリングへの駆動要素の係合要素の結合動作または結合解除動作は、上述した通りであってもよく、または、任意の他の方向(例えば、プランジャロッドが、例えば中空プランジャロッドであり、駆動要素の外側に設けられ、サブ用量阻止システムまたはロックリングが駆動要素の内側にある場合には、反対方向)であってもよい。
【0033】
用量設定要素は、好ましくは、ハウジングの軸線方向(例えば、投薬量の設定のプロセスのときは、近位方向または用量増加方向、投薬動作の実行のときは反対方向)に移動可能である。
【0034】
さらなる一態様によれば、上述したような医薬品投薬装置の投薬動作を阻止する方法が提供される。用量設定要素がダイヤルアップ方向に動かされて、予め設定された投薬量未満に対応する位置に至り(例えば、投薬スリーブをハウジングから不完全引っ張り出しており)、また、この状態で、反対方向またはダイヤルダウン方向に作用する動作または力が投薬要素に加えられたとき、用量設定要素は、例えば回転スリーブに結合されることによって、サブ用量阻止システムに直接的または間接的に結合される。サブ用量阻止システムは、円周方向における駆動要素(例えば、回転スリーブ)の回転を阻止もしくはブロックするか、または、ダイヤルダウン方向における用量設定要素の運動をブロックするか、または、少なくとも投薬方向におけるプランジャロッドの運動をブロックする。
【0035】
以下に、好ましい実施形態について説明する。
【0036】
流体製品の定められた投薬量を用量増加するために、回転スリーブは、回転運動が回転スリーブとガイドスリーブとの間における第1の当接接触によって制限されるまで、ガイドスリーブに対して回転され得る。この目的のために、回転スリーブは、第1の回転方向に回転され得る。流体製品の用量増加のため、投薬スリーブは、注射デバイスから軸線方向に引き出されることができ、その一方で、流体製品の投与のため、投薬スリーブは、注射デバイスに軸線方向に押し入れられることができる。したがって、流体製品の投与のために、回転スリーブは、回転運動が回転スリーブとガイドスリーブとの間の第2の当接接触によって制限されるまで、第2の回転方向に回転され得る。回転スリーブとガイドスリーブとの間の第1および第2の当接接触は、回転スリーブに径方向外方に突出する突起を設けることによって形成されることができ、ガイドスリーブに設けられた径方向内方に突出する2つの突起の間において前後に回転的に動かされることができる。あるいは、回転スリーブは、径方向外方に突出する2つの突起を備え、ガイドスリーブに配置され径方向内方に突出する対応する突起同士の間において前後に回転的に動かされてもよい。
【0037】
回転スリーブの係合要素およびガイドスリーブの係合要素は、プランジャロッドが1つの回転方向において回転可能であり反対の回転方向において回転がブロックされるように、プランジャロッドの歯部と協働することができる。流体製品の注射デバイスからの投薬のとき、プランジャロッドは、回転可能になり、その一方で、流体製品の用量増加については、プランジャロッドは回転阻止される。プランジャロッドは、ねじ付き連結部によってガイドスリーブに連結されることができ、または、別法として、注射デバイスのハウジングに連結され得る。ガイドスリーブは、軸線方向に固定され回転方向に固定されるようにハウジングに連結可能であり、または、別法として、ハウジングと一体に具現化可能である。
【0038】
回転スリーブおよびガイドスリーブの係合要素は、弾性ばねアームとして具現化可能であり、係合要素は、円周方向において、対応するスリーブに配置可能である。回転スリーブおよびガイドスリーブの係合要素は、1つの急傾斜側面および1つの平坦側面を呈する先端部を備えていてもよい。これらの先端部は、ばねアームによってプランジャロッドの歯部に弾性的に係合することができる。回転スリーブおよびガイドスリーブの係合要素をプランジャロッドの歯部に係合させる機構は、ラチェット機構として具現化され得る。この目的のために、プランジャロッドは、長手方向におけるいくつかの長手方向ノッチまたは長手方向溝を備えていてもよい。長手方向ノッチまたは長手方向溝は、歯、好ましくは、1つまたは複数の歯の間隙を有するいくつかの歯を形成する。長手方向ノッチもしくは長手方向溝または歯もしくは歯の間隙は、1つの急傾斜側面および1つの平坦側面を備える。
【0039】
定められた投薬量は、一方では、回転スリーブの当接部とガイドスリーブの当接部との間の第1の当接接触と第2の当接接触との間に定められる回転位置によって定められることができ、他方では、回転スリーブと投薬スリーブおよび/または投薬スリーブの軸線方向経路との間のねじ山ピッチによって定められ得る。これに代えて、または、加えて、投薬スリーブの軸線方向経路は、軸線方向当接部および対応当接部によって制限され得る。この目的のために、投薬スリーブは、2つの軸線方向に離間した当接部を備えていてもよい。
【0040】
注射デバイスは、投薬スリーブの引き上げ運動、および/または、上下に並進運動されるプランジャロッドの送達運動をもたらすことができる。この目的のために、ガイドスリーブまたはハウジングとプランジャロッドとの間のねじ係合のねじ山ピッチ、および、投薬スリーブと回転スリーブとの間のねじ係合のねじ山ピッチは、異なってもよい。好ましくは、投薬スリーブと回転スリーブとの間のねじ係合のねじ山ピッチは、ガイドスリーブまたはハウジングとプランジャロッドとの間のねじ係合のねじ山ピッチよりも大きい。あるいは、ガイドスリーブまたはハウジングとプランジャロッドとの間のねじ係合のねじ山ピッチは、投薬スリーブと回転スリーブとの間のねじ係合のねじ山ピッチ以上であってもよい。
【0041】
好ましくは、回転スリーブおよびガイドスリーブは、係合要素をそれぞれ備え、プランジャロッドは、円周方向に互いに対して約90度オフセットされるように配置される4つの長手方向ノッチもしくは長手方向溝、および/または、4つの歯の隙間を有する4つの長手方向歯を備える。あるいは、回転スリーブは、円周方向において互いに対して約180度オフセットされるように回転スリーブに配置される2つの係合要素を備え、ガイドスリーブは、同様に、円周方向において互いに対して約180度オフセットされるようにガイドスリーブに配置される2つの係合要素を備える。あるいは、円周方向に互いに対して約90度オフセットされるように配置される4つの係合要素が、回転スリーブまたはガイドスリーブにそれぞれ設けられてもよい。
【0042】
あるいは、回転スリーブおよびガイドスリーブに配置される係合要素の数と、プランジャロッドに設けられる長手方向ノッチもしくは長手方向溝および/または長手方向歯もしくは歯の間隙の数は、同じであってもよい。
【0043】
注射デバイスは、回転スリーブとガイドスリーブとの間に2つの当接接触部を備えることが好ましい。当接接触部は、円周方向にオフセットされるように配置され、2つの当接部の間の距離は、2つの隣接するラッチ位置の間の距離に概ね対応する。このラッチ位置では、回転スリーブおよび/またはガイドスリーブの係合要素がプランジャロッドの長手方向ノッチもしくは長手方向溝または歯の間隙に係合する。
【0044】
回転スリーブおよびガイドスリーブの係合要素、ならびに、プランジャロッドの歯部は、流体製品の用量増加のときおよび送達のときに1つ以上のクリック音が生成され得るように具現化され得る。
【0045】
回転方向には固定されるが軸線方向には動くことができるように注射デバイスのハウジング内に取り付けられ得る投薬スリーブと、軸線方向には固定されるが回転することができるように注射デバイスのハウジング内に設けられ得る回転スリーブと、の間のねじ連結により、回転スリーブは、流体製品の用量増加のときは、1つの回転方向すなわち用量増加方向に、流体製品の送達のときは、1つの回転方向すなわち送達方向に動くことができる。
【0046】
流体製品の用量増加のとき、プランジャロッドは、ガイドスリーブの係合要素とプランジャロッドの歯部との間の係合によって、注射デバイスのハウジングに対して軸線方向に固定され回転方向に固定されるように保持され得る。この目的のために、ガイドスリーブの係合要素の先端部の急傾斜側面と、長手方向ノッチもしくは長手方向溝または歯もしくは歯の間隙の急傾斜側面とは、当接接触する。また、流体製品の用量増加のとき、回転スリーブの係合要素は、プランジャロッドの歯部との係合から解除され得る。回転スリーブの係合要素の先端部の平坦側面は、プランジャロッドの長手方向ノッチもしくは長手方向溝または歯もしくは歯の間隙の平坦側面の上を摺動して、プランジャロッドの次の長手方向ノッチもしくは長手方向溝または歯の間隙に入る。
【0047】
流体製品の送達のとき、回転スリーブは、回転スリーブの係合要素の先端部の急傾斜側面と、プランジャロッドの長手方向ノッチもしくは長手方向溝または歯の急傾斜側面と、の間の当接によって、回転運動をプランジャロッドに伝えることができる。ガイドスリーブの係合要素の先端部の平坦側面は、プランジャロッドの長手方向ノッチもしくは長手方向溝または歯もしくは歯の間隙の平坦側面の上を摺動する。定められた投薬量の送達のとき、プランジャロッドは、プランジャロッドとガイドスリーブまたは別法としてハウジングとの間のねじ連結によって、遠位方向に回りながら動かされ得る。回転スリーブの係合要素、具体的にはその先端部または先端部の一部は、プランジャロッドの長手方向ノッチまたは長手方向溝に沿って軸線方向に摺動する。プランジャロッドは、注射デバイスのハウジングに対して遠位方向に軸線方向に動かされ、フランジを介して、ストッパを遠位方向に押す。フランジは、軸線方向に固定されるが好ましくは回転することができるようにプランジャロッドの遠位端に締結され得る。カートリッジ内のストッパは、カートリッジまたはカートリッジを収容するカートリッジホルダに締結される注射針を介して流体製品を押し出すことができる。
【0048】
カートリッジまたはカートリッジを収容するカートリッジホルダを保護するために、注射デバイスはペンキャップを備えていてもよい。ペンキャップは、軸線方向に固定され好ましくは回転方向に固定されるように注射デバイスのハウジングに連結され得る。ペンキャップは、注射デバイスの使用前にカートリッジに注射針を配置するために注射デバイスから取り外され、それによって注射針とカートリッジとの間の流体連通を形成するために、注射針のカニューレがカートリッジのセプタムを貫通することができる。
【0049】
注射デバイスは、軸線方向に固定され好ましくは回転方向に固定されるように投薬スリーブの近位端に配置され得るエンドキャップを特徴とすることができる。エンドキャップは、投薬スリーブと一体に形成されてもよい。
【0050】
また、注射デバイスは、最終投薬量が送達された後、さらなる投薬量が設定されることを阻止することができる機構を特徴とすることができる。
【0051】
この目的のために、注射デバイスの回転スリーブは、プランジャロッドに設けられる当接部に押し付けられる当接部を備えていてもよい。回転スリーブとプランジャロッドとの間の軸線方向および/または径方向の当接接触は、このようにして、最終投薬量が送達された後にさらなる投薬量が設定または引き上げられることを阻止することができる。好ましくは、2つの当接部は、回転スリーブに設けられてもよく、プランジャロッドに配置される2つの対応する当接部に当接接触して、用量増加方向における回転スリーブの回転運動を阻止してもよい。
【0052】
例示的な一実施形態では、投薬スリーブは、回転スリーブとガイドスリーブとの間に配置され得る。他の例示的な実施形態では、ガイドスリーブおよび投薬スリーブは、注射デバイス内に同軸に配置され得る。回転スリーブと投薬スリーブとの間のねじ連結は、一条ねじ連結もしくは多条ねじ連結として、または、ねじ連結のセグメントとして具現化され得る。
【0053】
また、注射デバイスは、投薬スリーブまたは設定ボタンの初期位置、引き上げ位置および/または送達位置を示すことができる表示デバイスを備えていてもよい。表示デバイスは、視覚的、聴覚的および/または触覚的なインジケータとして具現化され得る。視覚的な表示デバイスは、マーキングおよび/またはシンボルおよび/または表示数字を備えていてもよい。
【0054】
この目的のために、注射デバイスは、表示デバイスを有する表示スリーブを備えていてもよい。表示スリーブは、好ましくは、投薬スリーブに一体的に連結される。あるいは、投薬スリーブは、表示デバイスを備えていてもよい。また、投薬スリーブは、プリントおよび/またはステッカの形態の視覚的な表示デバイスを備えていてもよい。
【0055】
次に、本発明をいくつかの図面に基づき説明する。したがって、開示される特徴は、それぞれ、個別に、また組み合わせることで、本発明を有利に展開させる。