特許第6588555号(P6588555)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6588555ブロックコポリマーの秩序膜中の欠陥を低減させるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588555
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】ブロックコポリマーの秩序膜中の欠陥を低減させるための方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20191001BHJP
【FI】
   C08J5/18CET
   C08J5/18CEY
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-537909(P2017-537909)
(86)(22)【出願日】2016年1月21日
(65)【公表番号】特表2018-502967(P2018-502967A)
(43)【公表日】2018年2月1日
(86)【国際出願番号】FR2016050115
(87)【国際公開番号】WO2016116707
(87)【国際公開日】20160728
【審査請求日】2017年9月15日
(31)【優先権主張番号】1550470
(32)【優先日】2015年1月21日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シュバリエ, ザビエル
(72)【発明者】
【氏名】イヌブリ, ラベール
(72)【発明者】
【氏名】ナヴァロ, クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ニコレ, セリア
【審査官】 福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−518652(JP,A)
【文献】 特表2008−520450(JP,A)
【文献】 特開2010−007070(JP,A)
【文献】 特開2016−028127(JP,A)
【文献】 特開2016−034748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00−2/02
C08J 5/12−5/22
B05D 1/00−7/26
B32B 1/00−43/00
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
H01L 21/27
H01L 21/30
H01L 21/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックコポリマーの秩序膜の欠陥の数を低減させるための方法であって
記秩序膜が
序−無秩序転移温度(TODT)及び少なくとも1つのTgを有する少なくとも1種のブロックコポリマーと
ODTを有さない少なくとも1種の化合物と
合物を含み、前記化合物が、ブロックコポリマーであり、
前記混合物が、ブロックコポリマー単独のTODTより低いTODTを有し
下の工程:
− TODTを有する少なくとも1種のブロックコポリマーとTODTを有さない少なくとも1種の化合物とを溶媒中で混合する工程と、
− この混合物を表面上に成膜する工程と、
− 表面上に成膜した混合物を、ブロックコポリマーの最大のTgと混合物のTODTとの間の温度で硬化させる工程と
を含、方法。
【請求項2】
TODTを有するブロックコポリマーがジブロックコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ジブロックコポリマーのブロックのうち一方がスチレンモノマーを含み、他方のブロックがメタクリル酸モノマーを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ジブロックコポリマーのブロックのうち一方がスチレンを含み、他方のブロックがメタクリル酸メチルを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ジブロックコポリマーのブロックのうち一方がスチレンモノマーを含み、他方のブロックがメタクリル酸モノマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ジブロックコポリマーのブロックのうち一方がスチレンを含み、他方のブロックがメタクリル酸メチルを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
表面がフリーである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
表面がガイドされる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
TODTを有する少なくとも1種のブロックコポリマーと、TODTを有さない少なくとも1種の化合物とを含み、前記化合物がジブロックポリマーである、ブロックコポリマーの秩序膜の欠陥の数を低減させるための組成物。
【請求項10】
リソグラフィーのマスク又は秩序膜を生成するための、請求項1から8の何れか一項に記載の方法の使用。
【請求項11】
請求項10によって得られたリソグラフィーのマスク又は秩序膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックコポリマー(BCP)を含む秩序膜における欠陥の数を低減させるための方法に関する。本発明はまた、これらの秩序膜を得るために使用される組成物、及び結果的に生じる、特にリソグラフィー分野でマスクとして使用することができる秩序膜に関する。
【0002】
本発明の主題である方法は、単一のブロックコポリマーが使用されるときに観察されるものと比較して同じピリオドについて欠陥の数の低減を呈する、表面積の大きい秩序膜を得ることが問題であるときに、特に有用である。
【0003】
「ピリオド(period)」という用語は、異なる化学組成を有するドメインによって隔離された、同じ化学組成を有する2つの隣接するドメインを隔離している平均最小距離を意味することが意図される。
【背景技術】
【0004】
リソグラフィーのマスクを生成するためにブロックコポリマーを使用することは、現在周知である。この技術は有望であるが、工業的に利用することができる大きい表面積のマスクを生成する際に問題が残っている。最低限の欠陥又は少なくとも許容されるレベルの欠陥を有する相当に大きい表面積を有するリソグラフィー用のマスクを製造するための方法が、リソグラフィー用途のために特に求められている。
【0005】
本発明の方法によって処理される表面のブロックコポリマーのナノ構造化は、ヘルマン−モーガンの記号による円柱状(六方対称(基本六方格子対称「6mm」)、又は正方対称(基本正方格子対称「4mm」))、球状(六方対称(基本六方格子対称「6mm」又は「6/mmm」)、又は正方対称(基本正方格子対称「4mm」)、又は立方対称(格子対称m1/3m))、層状又はらせん状などの形を取ることができる。好ましくは、ナノ構造化が取る好ましい形は、六角円柱状タイプのものである。
【0006】
本発明によって処理された表面上にブロックコポリマーを自己組織化させるための方法は、熱力学的法則によって支配される。自己組織化によって円柱状タイプの形態が生じるとき、各円柱は、欠陥がなければ、等距離にある6個の隣接する円柱に取り囲まれる。このようなことから、数種の欠陥を特定することができる。最初のタイプは、ブロックコポリマーの配列を構成する円柱の周囲の隣接物の数の評価に基づき、配位数欠陥としても公知である。5個又は7個の円柱が検討中の円柱を取り囲むのであれば、配位数欠陥が存在すると見なされることとなる。2番目のタイプの欠陥は、検討中の円柱を取り囲む円柱の間の平均距離を考慮する[W.Li, F.Qiu, Y.Yang及びA.C.Shi, Macromolecules, 43, 2644 (2010); K. Aissou, T. Baron, M. Kogelschatz及びA. Pascale, Macromol., 40, 5054 (2007); R. A. Segalman, H. Yokoyama及びE. J. Kramer, Adv. Matter., 13, 1152 (2003); R. A. Segalman, H. Yokoyama及びE. J. Kramer, Adv. Matter., 13, 1152 (2003)]。2個の隣接物の間のこの距離が2個の隣接物の間の平均距離の2%より大きいとき、欠陥が存在すると見なされることとなる。これらの2種の欠陥を決定するために、関連するボロノイ構造及びドローネー三角分割法が従来から使用されている。画像を二値化した後、各円柱の中心が特定される。ドローネー三角分割法によって、続いて第1次隣接物の数を特定すること及び2個の隣接物の間の平均距離を算出することが可能となる。これによって欠陥の数を決定することができる。
このカウント法は、Tironらによる論文に記載されている(J. Vac. Sci. Technol. B 29(6), 1071-1023, 2011)。
【0007】
最後のタイプの欠陥は、表面上に成膜されるブロックコポリマーの円柱の角度に関する。ブロックコポリマーが表面に対して垂直ではなく、むしろ表面に対して平行に横になるとき、配向の欠陥が出現していると見なされることとなる。
【0008】
本発明の方法によって、広い単結晶表面全体にわたって、配向、配位数、又は距離に関する欠陥の数が低減した、秩序膜の形のナノ構造化組織体を獲得することが可能となる。
【0009】
リソグラフィー用途のためのマスクを製造する目的で、欠陥の数の相当な低減を呈する、表面上に成膜されたブロックコポリマーの秩序膜を得ることを目的とした技術に言及する研究はあまりない。
【0010】
米国特許第8513356号は、PS体積分率が0.65から0.87の間であり、配列式(arrangement equation)を225℃で満たす、少なくとも1種の秩序化ポリスチレン−b−ポリ(メタクリル酸メチル)ジブロックと、PS体積分率が0.50から0.99の間であり、非配列式(non-arrangement equation)を225℃で満たす、非秩序化ポリスチレン−b−ポリ(メタクリル酸メチル)ジブロックとを含む組成物を開示している。該組成物は、円柱の垂直度の向上を呈する。例えば、配位数又は距離の欠陥を低減させる可能性については何も述べられていない。
【0011】
J.Mater.Chem、2010、20、7241において、Shinらは、円柱状タイプのBCPからなるBCPの混合物による、長ピリオドを有するBCPの秩序膜の自己組織化の向上について述べているが、この向上についての正確な測定が与えられておらず、また、この混合物の組成が当初の円柱状ポリマーのものと同じではないということが考慮に入れられていない。したがって、自己組織化の向上に及ぼす組成物の変動の影響を、非秩序化BCPの追加の影響から、及びピリオドの変動の影響のものから非相関化することは極めて難しい。
【0012】
秩序膜の表面積が大きい場合、欠陥のほとんどない秩序膜にそれ自体を組織化する純粋なBCPを得ることは極めて難しい。少なくとも1種のBCPを含む混合物はこの問題の1つの解決策であり、秩序化された形態を呈するBCPに対して、欠陥の数を低減させることが求められている場合、秩序−無秩序転移温度(TODT)を有する少なくとも1種のBCPとTODTを有さない少なくとも1種の化合物とを組み合わせて含む混合物が、BCP単独のTODTより低い秩序−無秩序転移温度(TODT)を有するとき、この混合物が一解決策であることが本発明において示される。これらの混合物の場合、これらの混合物を使用して得られた秩序膜の欠陥が、ブロックコポリマー単独で得られた秩序膜と比較して減少することが留意される。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、ブロックコポリマーの秩序膜の欠陥の数を低減させる方法であって、前記秩序膜が、秩序−無秩序転移温度(TODT)及び少なくとも1つのTgを有する少なくとも1種のブロックコポリマーと、TODTを有さない少なくとも1種の化合物との混合物を含み、この混合物が、ブロックコポリマー単独のTODTより低いTODTを有し、以下の工程:
− TODTを有する少なくとも1種のブロックコポリマーとTODTを有さない少なくとも1種の化合物とを溶媒中で混合する工程と、
− この混合物を表面上に成膜する工程と、
− 表面上に成膜した混合物を、ブロックコポリマーの最大のTgと混合物のTODTとの間の温度で硬化させる工程と
を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、コポリマー1及びコポリマー2についての温度の関数としてのG’及びG”率を示す。
図2図2は、ブレンドした組成物(4及び5)及びブレンドしていないコポリマー3の様々な厚さのSEM写真を示す。
図3図3は、ブレンドした及び純粋なブロックコポリマーについて、35nm厚の膜を用いて得られた典型的なパターンを示す。左の写真はSEM写真であり、中央の写真は二値化写真であり、右の写真は配位数欠陥を示す(ブロック点)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
秩序−無秩序転移温度を有するブロックコポリマー(一又は複数)に関して、それに関連する形態にかかわらず、任意のブロックコポリマーが本発明の状況において使用されてもよく、それは、ジブロックコポリマーであっても、線状若しくは星型トリブロックコポリマーであっても、又は線状、櫛型、若しくは星型マルチブロックコポリマーであってもよい。好ましくは、ジブロック又はトリブロックコポリマー、より好ましくはジブロックコポリマーが関与する。
【0016】
秩序−無秩序転移温度度、TODTは、ブロックコポリマーの構成ブロックの相分離に対応し、様々な方法で、例えば、DSC(示差走査熱量測定)、SAXS(X線小角散乱)、静的複屈折、動的機械分析、DMA、又は相分離が起こる(秩序−無秩序転移に対応する)温度を視覚化することを可能とする任意の他の方法で測定することができる。これらの技法の組み合わせも使用してもよい。
【0017】
TODT測定に関する以下の参考文献を、非限定的に挙げることができる:
− N.P.Balsaraら、Macromolecules 1992、25、3896−3901。
− N.Sakamotoら、Macromolecules 1997、30、5321−5330、及びMacromolecule 1997、30、1621−1632
− J.K.Kimら、Macromolecules 1998、31、4045−4048。
【0018】
本発明に使用される好ましい方法は、DMAである。
【0019】
本発明に関連して、n種のブロックコポリマーをm種の化合物と混合することが可能であるものとし、nは、1から10の間(限界値が含まれる)の整数である。好ましくは、nは1から5の間(限界値が含まれる)であり、好ましくはnは1から2の間(限界値が含まれる)であり、より好ましくはnは1に等しく、mは、1から10の間(限界値が含まれる)の整数である。好ましくは、mは1から5の間(限界値が含まれる)であり、好ましくはmは1から4の間(限界値が含まれる)、より好ましくはmは1に等しい。
【0020】
これらのブロックコポリマーは、当業者に公知の任意の技法で合成されてもよく、中でも、重縮合、開環重合、又は、アニオン重合、カチオン重合、若しくはラジカル重合が挙げられてもよく、これらの技法を制御することも制御しないことも可能であり、任意選択的に互いに組み合わせることも可能である。コポリマーがラジカル重合によって調製されるとき、ラジカル重合は、任意の公知の技法、例えば、NMP(「ニトロキシドを介する重合」)、RAFT(「可逆的付加及び開裂連鎖移動」)、ATRP(「原子移動ラジカル重合」)、INIFERTER(「開始剤−移動剤−停止剤」)、RITP(「逆ヨウ素移動重合」)、又はITP(「ヨウ素移動重合」)によって制御することができる。
【0021】
本発明の一つの好ましい形によれば、ブロックコポリマーは、制御ラジカル重合によって、より具体的にはさらにニトロキシドを介する重合によって調製され、ニトロキシドは、特にN−(tert−ブチル)−1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロキシドである。
【0022】
本発明の第2の好ましい形によれば、ブロックコポリマーは、アニオン重合によって調製される。
【0023】
重合がラジカル様式で行われるとき、ブロックコポリマーの構成モノマーは、次のモノマーから、すなわち、少なくとも1種の、ビニル、ビニリデン、ジエン、オレフィン、アリル又は(メタ)アクリル酸モノマーから選択されるものとする。このモノマーは、より具体的には、ビニル芳香族モノマー、例えば、スチレン若しくは置換されたスチレン、特にα−メチルスチレン、シリル化スチレン、アクリル酸モノマー、例えば、アクリル酸若しくはその塩、アクリル酸アルキル、アクリル酸シクロアルキル、又はアクリル酸アリール、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、又はアクリル酸フェニル、アクリル酸ヒドロキシアルキル、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸エーテルアルキル、例えば、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコール若しくはアクリル酸アリールオキシポリアルキレングリコール、例えば、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、アクリル酸エトキシポリエチレングリコール、アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール若しくはそれらの混合物、アクリル酸アミノアルキル、例えば、アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(ADAME)、フルオロアクリル酸エステル、シリル化アクリル酸エステル、リンを含むアクリル酸エステル、例えば、アルキレングリコールアクリレートホスフェート、アクリル酸グリシジル、又はアクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、メタクリル酸モノマー、例えば、メタクリル酸若しくはその塩、メタクリル酸アルキル、メタクリル酸シクロアルキル、メタクリル酸アルケニル、又はメタクリル酸アリール、例えば、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸フェニル、又はメタクリル酸ナフチル、メタクリル酸ヒドロキシアルキル、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、又はメタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸エーテルアルキル、例えば、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸アルコキシポリアルキレングリコール若しくはメタクリル酸アリールオキシポリアルキレングリコール、例えば、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール、メタクリル酸エトキシポリエチレングリコール、メタクリル酸メトキシポリプロピレングリコール、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール若しくはそれらの混合物、メタクリル酸アミノアルキル、例えば、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(MADAME)、フルオロメタクリル酸エステル、例えば、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、シリル化メタクリル酸エステル、例えば、3−メタクリロイルプロピルトリメチルシラン、リンを含むメタクリル酸エステル、例えば、アルキレングリコールメタクリレートホスフェート、ヒドロキシエチルイミダゾリドンメタクリレート、ヒドロキシエチルイミダゾリジノンメタクリレート、又は2−(2−オキソ−1−イミダゾリジニル)エチルメタクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミド若しくは置換されたアクリルアミド、4−アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、メタクリルアミド若しくは置換されたメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム(MAPTAC)、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、イタコン酸、マレイン酸若しくはその塩、無水マレイン酸、アルキル若しくはアルコキシ−若しくはアリールオキシポリアルキレングリコールマレイン酸エステル若しくは半マレイン酸エステル、ビニルピリジン、ビニルピロリジノン、(アルコキシ)ポリ(アルキレングリコール)ビニルエーテル若しくはジビニルエーテル、例えば、メトキシポリ(エチレングリコール)ビニルエーテル、又はポリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、オレフィンモノマー(中でも、エチレン、ブテン、ヘキセン、及び1−オクテンを挙げることができる)、ジエンモノマー(ブタジエン又はイソプレンが含まれる)、並びにフルオロオレフィンモノマー及びビニリデンモノマー(中でも、フッ化ビニリデンを挙げることができる)から、単独で、又は少なくとも2種の上述のモノマーの混合物として選択される。
【0024】
重合がアニオンで行われるとき、モノマーは、非限定的に、次のモノマーから、すなわち、少なくとも1種の、ビニル、ビニリデン、ジエン、オレフィン、アリル、又は(メタ)アクリル酸モノマーから選択されるものとする。これらのモノマーは、より具体的には、ビニル芳香族モノマー、例えば、スチレン若しくは置換されたスチレン、特にα−メチルスチレン、アクリル酸モノマー、例えば、アクリル酸アルキル、アクリル酸シクロアルキル、又はアクリル酸アリール、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、又はアクリル酸フェニル、アクリル酸エーテルアルキル、例えば、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコール若しくはアクリル酸アリールオキシポリアルキレングリコール、例えば、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、アクリル酸エトキシポリエチレングリコール、アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール若しくはそれらの混合物、アクリル酸アミノアルキル、例えば、アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(ADAME)、フルオロアクリル酸エステル、シリル化アクリル酸エステル、リンを含むアクリル酸エステル、例えば、アルキレングリコールアクリレートホスフェート、アクリル酸グリシジル、又はアクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、メタクリル酸アルキル、メタクリル酸シクロアルキル、メタクリル酸アルケニル、又はメタクリル酸アリール、例えば、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸フェニル、又はメタクリル酸ナフチル、メタクリル酸エーテルアルキル、例えば、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸アルコキシポリアルキレングリコール若しくはメタクリル酸アリールオキシポリアルキレングリコール、例えば、メタクリル酸メトキシポリエチレン、メタクリル酸エトキシポリエチレングリコール、メタクリル酸メトキシポリプロピレングリコール、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール若しくはそれらの混合物、メタクリル酸アミノアルキル、例えば、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(MADAME)、フルオロメタクリル酸エステル、例えば、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、シリル化メタクリル酸エステル、例えば、3−メタクリロイルプロピルトリメチルシラン、リンを含むメタクリル酸エステル、例えば、アルキレングリコールメタクリレートホスフェート、ヒドロキシエチルイミダゾリドンメタクリレート、ヒドロキシエチルイミダゾリジノンメタクリレート、又は2−(2−オキソ−1−イミダゾリジニル)エチルメタクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミド若しくは置換されたアクリルアミド、4−アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、メタクリルアミド若しくは置換されたメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム(MAPTAC)、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、無水マレイン酸、アルキル若しくはアルコキシ−若しくはアリールオキシポリアルキレングリコールマレイン酸エステル若しくは半マレイン酸エステル、ビニルピリジン、ビニルピロリジノン、(アルコキシ)ポリ(アルキレングリコール)ビニルエーテル若しくはジビニルエーテル、例えば、メトキシポリ(エチレングリコール)ビニルエーテル、又はポリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、オレフィンモノマー(中でも、エチレン、ブテン、ヘキセン、及び1−オクテンを挙げることができる)、ジエンモノマー(ブタジエン又はイソプレンが含まれる)、並びにフルオロオレフィンモノマー及びビニリデンモノマー(中でも、フッ化ビニリデンを挙げることができる)から、単独で、又は少なくとも2種の上述のモノマーの混合物として選択される。
【0025】
好ましくは、秩序−無秩序転移温度を有するブロックコポリマー(複数)は、ブロックのうち一方がスチレンモノマーを含み、他方のブロックがメタクリル酸モノマーを含むブロックコポリマーから構成され、より好ましくは、ブロックコポリマー(複数)は、ブロックのうち一方がスチレンを含み、他方のブロックがメタクリル酸メチルを含むブロックコポリマーから構成される。
【0026】
秩序−無秩序転移温度を有さない化合物は、上で定義した通りのブロックコポリマーだけでなく、ランダムコポリマー、ホモポリマー、及びグラジエントコポリマーからも選択されるものとする。一つの好ましい変形形態によると、該化合物はホモポリマー又はランダムコポリマーであり、TODTを有するブロックコポリマーのブロックの1種と同一のモノマー組成を有する。
【0027】
より好ましい形によれば、ホモポリマー又はランダムコポリマーは、スチレンモノマー又はメタクリル酸モノマーを含む。さらに好ましい形によれば、ホモポリマー又はランダムコポリマーは、スチレン又はメタクリル酸メチルを含む。
【0028】
秩序−無秩序転移温度を有さない化合物は、可塑剤からも選択されるものとし、中でも、非限定的に、分枝又は線状フタル酸エステル、例えば、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸2−エチルヘキシル、フタル酸ジエチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ベンジルブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジメチル、線状フタル酸ジウンデシル及び線状フタル酸ジトリデシル、塩素化パラフィン、分枝又は線状トリメリット酸エステル、特にトリメリット酸ジエチルヘキシル、脂肪族エステル又はポリマーエステル、エポキシド、アジピン酸エステル、クエン酸エステル、並びに安息香酸エステルを挙げることができる。
【0029】
秩序−無秩序転移温度を有さない化合物は、充填剤からも選択されるものとし、中でも、無機充填剤、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、又は非カーボンナノチューブ、繊維(粉砕されていてもされていなくてもよい)、安定剤(光安定剤、特にUV安定剤、及び熱安定剤)、染料、及び無機又は有機感光色素、例えばポルフィリン、光開始剤、すなわち、照射下でラジカルを生成することができる化合物を挙げることができる。
【0030】
秩序−無秩序転移温度を有さない化合物は、ポリマーの又は非ポリマーのイオン性化合物からも選択されるものとする。
【0031】
言及した化合物の組み合わせ、例えば、TODTを有さないブロックコポリマーとTODTを有さないランダムコポリマー又はホモポリマーとの組み合わせなども、本発明に関連して使用されてもよい。例えば、TODTを有するブロックコポリマーと、TODTを有さないブロックコポリマーと、充填剤、ホモポリマー又はランダムコポリマー(例えばTODTを有さないもの)とを混合することが可能であるものとする。
【0032】
したがって、本発明はまた、TODTを有する少なくとも1種のブロックコポリマーと少なくとも1種の化合物とを含む組成物であって、これ又はこれらの化合物(一又は複数)がTODTを有さない組成物に関する。
【0033】
本発明の主題である混合物のTODTは、組織化されたブロックコポリマー単独のTODTより低くなければならないものとするが、最大のTg(ガラス転移温度、DSC(示差走査熱量測定)によって測定される)を有するブロックのTgよりも上でなければならないものとする。
【0034】
自己組織化の間の混合物の形態的挙動という点では、これは、秩序−無秩序転移温度を有するブロックコポリマーと秩序−無秩序転移温度を有さない少なくとも1種の化合物とを含む組成物が、ブロックコポリマー単独のものより低い温度で自己組織化を呈するものとすることを意味している。
【0035】
本発明によって得られた秩序膜は、TODTを有する1種又は複数のブロックコポリマーを用いて得られた秩序膜と比較して、欠陥の数の低減を呈する。
【0036】
自己組織化を可能にする硬化温度は、最大のTg(ガラス転移温度、DSC(示差走査熱量測定)によって測定される)を有するブロックのTgと、混合物のTODTとの間であるものとし、好ましくは混合物のTODTより1−50℃低く、好ましくは混合物のTODTより10−30℃低く、より好ましくは混合物のTODTより10−20℃低いものとする。
【0037】
本発明の方法は、シリコン(このシリコンは自然酸化層又は熱酸化層を呈する)、ゲルマニウム、白金、タングステン、金、窒化チタン、グラフェン、BARC(底部反射防止膜)、又はリソグラフィーに使用される任意の他の反射防止層などの表面上に秩序膜を成膜することができる。時には、表面を調製する必要がある場合もある。公知の可能性の中では、成膜しようとするブロックコポリマー及び/又は化合物の組成物に使用されるモノマーと完全に又は部分的に同一であり得るモノマーを含むランダムコポリマーが表面上に成膜される。先駆的な論文に、Manskyらによってこの技術は明記されており(Science, vol 275 p1458-1460, 1997)、現在、当業者に周知である。
【0038】
本発明の変形形態によると、表面は、「フリー」(組織分布的観点及び化学的観点の両方から平坦で均一な表面)と言うことができるか、又はブロックコポリマーの「パターン」をガイドするための構造を呈することができ、このガイドは、化学ガイドタイプのもの(「化学エピタクシーによるガイド」として知られる)であるか物理的/組織分布的ガイドタイプのもの(「グラフォエピタクシーによるガイド」として知られる)であるかに関わらない。
【0039】
秩序膜を製造するために、当業者に公知の技法、例えば、スピンコーティング、ドクターブレード、ナイフシステム、又はスロットダイシステム技法などに従って、ブロックコポリマー組成物の溶液を表面上に成膜し、次いで溶媒を蒸発させるが、乾式成膜、すなわち、事前溶解を伴わない成膜などの任意の他の技法を使用することができる。
【0040】
熱処理若しくは溶媒蒸気による処理、2つの処理の組み合わせ、又は、ブロックコポリマー組成物がナノ構造化すると同時に正しく組織化することを可能にし、それによって秩序膜を確立することを可能にする、当業者に公知の任意の他の処理を引き続いて行う。本発明の好ましい状況によれば、硬化は、TODTを呈するブロックコポリマーのTODTより高い温度で熱的に行われる。
【0041】
本発明の方法によって処理されて表面上に成膜される、TODTを有するブロックコポリマーと化合物との混合物のナノ構造化は、ヘルマン−モーガンの記号による円柱状(六方対称(基本六方格子対称「6mm」))、又は正方対称(基本正方格子対称「4mm」)、球状(六方対称(基本六方格子対称「6mm」又は「6/mmm」))、又は正方対称(基本正方格子対称「4mm」)、又は立方対称(格子対称m1/3m)、層状、又はらせん状などの形を取ることができる。好ましくは、ナノ構造化が取る好ましい形は、六角円柱状タイプのものである。
【実施例】
【0042】
実施例1
動的機械分析(dynamical mechanical analysis)による秩序−無秩序転移温度分析
2種の異なる分子量のブロックコポリマーPS−b−PMMAは、従来からのアニオンによる方法によって合成するか、又は市販製品を使用することができる。生成物の特性評価を表1に示す。
【0043】
これらの2種のポリマーを、動的機械分析(DMA)によって同じ条件で分析する。DMAによって、材料の貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”を測定し、G”/G’として定義される比tanΔを求めることができる。
【0044】
測定は、25mm−PLANジオメトリーをセットしたARES粘弾性計で実現する。空隙を100℃に設定し、試料をジオメトリー中に100℃で据えた後、通常の力を加えて、試料とジオメトリーとの間の接触を確認する。温度掃引は1Hzで実現する。0.1%の初期変形を試料に加える。次いで、それを、プローブの感度限界(0.2cm.g)より上のままであるように自動調整する。
【0045】
温度は、100から260℃までのステップモードに設定し、測定は、30秒の平衡時間で2℃毎に行う。
【0046】
両方のポリマーについて、幾つかの転移が観察される。すなわち、tanΔの最初の極大によって特徴付けられるガラス転移(Tg)の後、ポリマーは、弾性プラトー(elastomeric plateau)(G’がG”より高い)に達する。自己組織化するブロックコポリマーの場合、ブロックコポリマーは、弾性プラトーで構造化される。
【0047】
コポリマー1の弾性プラトーの後、G’はG”より低くなり、これによって、コポリマーはもはや構造化されていないことが示される。秩序−無秩序転移に達し、Todtは、G’とG”の最初の交点として定義される。
【0048】
コポリマー2の場合、G’は常にG”より高いので、Todtは観察されない。このブロックコポリマーは、その分解温度より低いTodtは何も示さない。
【0049】
AMDの結果を表2に示し、関連するグラフを図1に示す。
【0050】
実施例2
ブロックコポリマーの誘導自己組織化に関する厚さ及び欠陥率:
2.5×2.5cmのシリコン基板を、例えばピラニア溶液のような公知の技術によって適切に清浄化し、次いで蒸留水で洗浄した後に使用した。
【0051】
次いで、例えば国際公開第2013083919号に記載されるようなランダムPS−r−PMMAの溶液(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)中2%)、又はポリマー供給源から市販されており、ブロックコポリマーが次に自己組織化するのに適切なエネルギーを持つものとして当技術分野から公知の適切な組成物としてのランダムPS−r−PMMAの溶液を、シリコン基板の表面上にスピンコーティングによって成膜する。こうした成膜のための他の技術も使用することができる。標的とする膜厚は70nmであった。次いで、コポリマーの単一層を表面上にグラフトするために、220℃で10分間アニーリングを行った。グラフトされていない過剰なコポリマーを、PGMEAでリンスによって除去した。次いで溶液中のブロックコポリマー(一又は複数)の溶液(1%PGMEA)をシリコンで処理した基板上にスピンコーティングによって成膜して、標的とする厚さを得た。次いで、ブロックコポリマー(一又は複数)が自己組織化できるように、膜を例えば230℃で5分間アニールした。実施しようとする分析(走査型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡)に応じて、ナノ構造のコントラストを、酢酸を使用して処理した後に蒸留水リンス、若しくは穏やかな酸素プラズマ、又は両方の処理の組み合わせによって強化することが可能であった。
【0052】
3種の異なる分子量のブロックコポリマーPS−b−PMMAは、従来からのアニオンによる方法によって合成するか、又は市販製品を使用することが可能であった。生成物の特性評価を表3に示す。
a) SEC(サイズ排除クロマトグラフィー、ポリスチレン標準)によって決定される場合
b) 1H NMRによって決定される
c) DMA(実施例1に記載するような動的機械分析)によって決定される。コポリマー3及び4のTODTは存在しない。
【0053】
次いで、コポリマー4及び5を80/20の重量比、すなわちコポリマー4を80%でブレンドし(ドライブレンド又は溶液ブレンド)、コポリマー3を、比較として参照するために試験した。目的は、4と5とをブレンドしたコポリマーでコポリマー3と同じピリオドを得ることである。
【0054】
図2は、ブレンドした組成物(4及び5)及びブレンドしていないコポリマー3の様々な厚さのSEM写真を示す。ブレンドした組成物は、厚さが増してもより少ない配位数欠陥率を呈することが見て分かる。
【0055】
SEM写真は、Hitachi製の走査型電子顕微鏡「CD−SEM H9300」を100,000倍で使用して得た。各写真は、1349×1349nmの寸法である。
【0056】
適当な公知のソフトウェアを用いて得た数値は、表4に見ることができる。配位数欠陥を測定する詳細な方法は、例えば国際公開第2015032890号に記載されており、図3は、対応する典型的なパターンを示す。
図1
図2
図3