特許第6588580号(P6588580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588580
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】筆記具及び筆記具の排出ユニット
(51)【国際特許分類】
   B43K 8/03 20060101AFI20191001BHJP
   B05C 17/00 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   B43K8/03
   B05C17/00
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-6739(P2018-6739)
(22)【出願日】2018年1月18日
(65)【公開番号】特開2018-192782(P2018-192782A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2018年1月18日
(31)【優先権主張番号】106116658
(32)【優先日】2017年5月19日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】504213102
【氏名又は名称】順▲徳▼工業股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】陳 思宇
【審査官】 大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭47−003853(JP,Y1)
【文献】 実開平02−137973(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第00570866(EP,A1)
【文献】 特表2001−524896(JP,A)
【文献】 実開平04−038481(JP,U)
【文献】 実公昭37−004008(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00− 1/12
B43K 5/00− 8/24
B43K 17/00−17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ及び前記チューブの端部に取付けられたペン先を有する筆記ユニットと、
前記チューブ内に取付けられ、且つ前記ペン先と接触する毛細管部材と、
前記チューブ内に取付けられる排出ユニットであって、
少なくとも1つの切断用部分、第1連結部及び外部通路を有するインバウンド部であって、前記少なくとも1つの切断用部分が前記少なくとも1つの切断用部分の上部に形成された少なくとも1つの鋭い刃先を有し、前記第1連結部が前記少なくとも1つの切断用部分を取り囲み、前記外部通路が前記少なくとも1つの切断用部分及び前記第1連結部の間で画定されるインバウンド部、
前記毛細管部材と接触するアウトバウンド部、並びに
前記アウトバウンド部、前記インバウンド部及び前記外部通路と連通する排出通路を有する排出ユニットと、
前記チューブ内に取付けられ、且つ前記排出ユニットと連通する付け替え可能なインクカートリッジであって、
前記第1連結部に接続される第2連結部、
前記付け替え可能なインクカートリッジに収容されているインク、及び
前記インクの排出のために、前記少なくとも1つの刃先によって切断されるフィルムを有する付け替え可能なインクカートリッジとを備える筆記具。
【請求項2】
前記少なくとも1つの刃先が少なくとも1つの第1鋭利端及び少なくとも1つの第2鋭利端を備え、高さの差が前記少なくとも1つの第1鋭利端と前記少なくとも1つの第2鋭利端との間で規定される請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記第1連結部が、前記第1連結部の外周に環状に形成された当接縁部を備え、且つ前記当接縁部及び前記第1連結部の最上部側の間における軸方向距離である組立ストロークを規定し、前記組立ストロークが前記少なくとも1つの切断用部分の前記高さの差よりも大きい請求項2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記排出ユニットが、環状に配置され且つ互いに離間した少なくとも2つの前記切断用部分を備える請求項2の筆記具。
【請求項5】
前記少なくとも1つの刃先が、湾曲し、且つ前記少なくとも1つの第1鋭利端から前記少なくとも1つの第2鋭利端へと傾斜している請求項2に記載の筆記具。
【請求項6】
前記少なくとも2つの切断用部分の前記刃先の各々が、湾曲し、且つ前記少なくとも1つの第1鋭利端から前記少なくとも1つの第2鋭利端へと傾斜している請求項4に記載の筆記具。
【請求項7】
前記排出通路が、前記少なくとも2つの切断用部分によって取り囲まれ且つ少なくとも2つのガイド空隙を介して前記外部通路と連通する内部通路を備える請求項4に記載の筆記具。
【請求項8】
前記インバウンド部の前記第1連結部が少なくとも1つの密封用リブ部を備え、前記少なくとも1つの密封用リブ部の外径が前記第2連結部の内径以上である請求項1に記載の筆記具。
【請求項9】
前記付け替え可能なインクカートリッジに被せられるキャップをさらに備え、前記キャップが、前記キャップの最下端部に環状に形成され且つ互いに離間する複数の押出用つまみ部を有し、前記第2連結部が、前記付け替え可能なインクカートリッジの外周に環状に形成され且つ互いに離間する複数の当接リブ部を有し、これにより前記キャップが、前記押出用つまみ部が各々前記当接リブ部に対して押し当てられるように、前記付け替え可能なインクカートリッジを回転可能に駆動して前記チューブに取付ける請求項1に記載の筆記具。
【請求項10】
筆記具の排出ユニットであって、前記筆記具が毛細管部材、チューブ及び付け替え可能なインクカートリッジを有し、前記排出ユニットが、前記チューブ内に取付けられ、且つ
前記毛細管部材と接触するアウトバウンド部と、
インバウンド部であって、
少なくとも1つの切断用部分の上部に形成された少なくとも1つの鋭い刃先を有する前記少なくとも1つの切断用部分、
前記少なくとも1つの切断用部分取り囲第1連結部、並びに
前記少なくとも1つの切断用部分及び前記第1連結部の間において画定される外部通路を有するインバウンド部と、
前記アウトバウンド部、前記インバウンド部及び前記外部通路を連通する排出通路とを備える筆記具の排出ユニット。
【請求項11】
前記少なくとも1つの刃先が少なくとも1つの第1鋭利端及び少なくとも1つの第2鋭利端を備え、高さの差が前記少なくとも1つの第1鋭利端と前記少なくとも1つの第2鋭利端との間で規定される請求項10に記載の筆記具の排出ユニット。
【請求項12】
前記第1連結部が、前記第1連結部の外周に環状に形成された当接縁部を備え、且つ前記当接縁部及び前記第1連結部の最上部側の間における軸上の距離である組立ストロークを規定し、前記組立ストロークが前記少なくとも1つの切断用部分の前記高さの差よりも大きい請求項11に記載の筆記具の排出ユニット。
【請求項13】
前記排出ユニットが、環状に配置され且つ互いに離間した少なくとも2つの前記切断用部分を備える請求項11に記載の筆記具の排出ユニット。
【請求項14】
前記少なくとも2つの切断用部分の前記刃先の各々が、湾曲し、且つ前記少なくとも1つの第1鋭利端から前記少なくとも1つの第2鋭利端へと傾斜している請求項13に記載の筆記具の排出ユニット。
【請求項15】
前記排出通路が前記少なくとも1つの切断用部分によって取り囲まれた内部通路を備え、前記内部通路が少なくとも1つのガイド空隙によって前記外部通路と連通する請求項10に記載の筆記具の排出ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記文具に関し、より詳細には筆記具及び筆記具の排出ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第0570866号は、交換可能なインクリフィルを有する筆記用具を開示する。当該筆記用具のインクリフィルは中綿にインクを貯蔵する。すなわちインクはインクリフィル内部に液状で直接保存されていない。先の尖った部材が、インクリフィル上のフィルムを突き刺すように、インク排出ユニットの一端に取付けられる。こうして、インクリフィル上のフィルムが先の尖った部材によって突き刺されて小さな開口を形成すると、インク排出ユニットは中綿と接続され、その小さな開口を介してインクリフィル内のインクが供給可能となる。開口はとても小さく、且つインクリフィル内のインクは中綿に保存されているため、インク排出ユニットのインク供給効率は高くなく、インクの一部はインクリフィル内に留まる傾向にある。
【0003】
台湾特許出願公開第201511981号は、付け替え可能なインクカートリッジを有する従来型筆記用具を開示する。インクカートリッジの下端に配置された栓が押圧されてインクカートリッジを開くと、インクカートリッジ内部のインクが排出可能となる。前記台湾特許出願公開の図4から図6に示されるように、当該従来型筆記道具の本体から突き出るように形成された突起部が栓を押圧し、次いでその栓が移動して付け替え可能なインクカートリッジの下端を開くと、付け替え可能なインクカートリッジから当該従来型筆記道具の本体へとインクが供給可能となることが、一実施形態に開示されている。
【0004】
前記台湾特許出願公開の図11に示される別の実施形態は、当該従来型筆記道具の本体から突き出るように形成された突起部が栓に押し当てられることを開示する。付け替え可能なインクカートリッジの栓は、容易に破壊されないよう硬質材料から形成される。それゆえ、栓が突起部によって押し出されると、栓が反転して付け替え可能なインクカートリッジを開き、インクがインクカートリッジから当該従来型筆記道具の本体へと供給可能となる。
【0005】
以上から推察されるとおり、栓が移動又は反転される際、この栓の動きが付け替え可能なインクカートリッジを偶発的に塞いでしまい、その結果、インクの供給が円滑でなくなるおそれがある。また、前記台湾特許出願公開の図11に示される実施形態を参照すると、突起部が付け替え可能なインクカートリッジの内周面に接近しすぎているため、インクカートリッジを当該従来型筆記道具に取付ける過程で、付け替え可能なインクカートリッジがその突起部に干渉しやすく、この過程が円滑でなくなるおそれがある。
【0006】
上述のインク交換可能な従来型筆記具においてインクカートリッジの付け替えが行われている時、インク排出ユニット又は筆記具の本体はフィルムを突き刺すか又は栓を押し出すことによってインクを供給するために用いられる。前者を例に取ると、フィルムに形成された開口は非常に小さく、インクの供給には有利でない。後者を例に取ると、移動又は反転された栓はインクの供給を塞ぐ場合がある。従っていずれの場合もインクの供給に不都合を生じるだろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0570866号
【特許文献2】台湾特許出願公開第201511981号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の筆記具の短所を克服するために、本発明は筆記具及び筆記具の排出ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
インク供給に不都合をもたらす交換可能なインクカートリッジを有する従来型筆記具の問題を解決するために、本発明は、高容量のインク供給及びインクの完全な流出を達成することができる筆記具及び筆記具の排出ユニットを提供する。それゆえ、本発明はインク供給に好ましい効果を有し、インクが残りにくい。
【0010】
当該筆記具はさらに筆記ユニット、毛細管部材、排出ユニット及び付け替え可能なインクカートリッジを備える。前記筆記ユニットはチューブ及び前記チューブの一端に取付けられたペン先を有する。前記毛細管部材、前記排出ユニット及び前記付け替え可能なインクカートリッジはチューブ内に取付けられる。前記毛細管部材の一端はペン先に当接する。前記排出ユニットは、インバウンド部と、アウトバウンド部と、前記インバウンド部及び前記アウトバウンド部に連通する排出通路とを有する。前記アウトバウンド部は前記毛細管部材と当接する。前記インバウンド部は、少なくとも1つの切断用部分、前記少なくとも1つの切断用部分を取り囲む第1連結部、並びに前記少なくとも1つの切断用部分及び前記第1連結部の間において画定される少なくとも1つの外部通路を有する。前記少なくとも1つの切断用部分は、前記少なくとも1つの切断用部分の上部において、少なくとも1つの鋭い刃先を有する。
【0011】
前記付け替え可能なインクカートリッジは、第2連結部、インク及びフィルムを有する。前記第2連結部は前記第1連結部と接続可能である。前記インクは前記インクカートリッジ内部に収容されている。前記フィルムは、前記切断用部分によって突き刺され、切断されて、インクの排出のための排出口を形成することができる。
【0012】
好ましくは、前記少なくとも1つの刃先が少なくとも1つの第1鋭利端及び少なくとも1つの第2鋭利端をさらに備え、高さの差が前記少なくとも1つの第1鋭利端及び前記少なくとも1つの第2鋭利端の間で垂直に規定される。
【0013】
好ましくは、前記第1連結部が、前記第1連結部の外周に環状に形成された当接縁部をさらに備え、組立ストロークが前記当接縁部と前記第1連結部の最上部側との間において規定される軸方向の距離であり、且つ前記組立ストロークが前記少なくとも1つの切断用部分の前記高さの差よりも大きい。
【0014】
好ましくは、前記排出ユニットが、環状に配置され且つ互いに離間した2つ以上の前記切断用部分をさらに備える。
【0015】
好ましくは、前記切断用部分の刃先の各々が湾曲し、且つ前記少なくとも1つの第1鋭利端から前記少なくとも1つの第2鋭利端へと傾斜している。
【0016】
好ましくは、前記排出通路が、少なくとも1つの切断用部分によって取り囲まれ且つ少なくとも1つのガイド空隙を介して前記外部通路と連通する内部通路を備える。
【0017】
好ましくは、前記インバウンド部の前記第1連結部が少なくとも1つの密封用リブ部を備え、前記少なくとも1つの密封用リブ部の外径が前記第2連結部の内径以上である。
【0018】
好ましくは、前記筆記具が前記付け替え可能なインクカートリッジに被せられるキャップをさらに備え、前記キャップが前記付け替え可能なインクカートリッジを回転可能に駆動して前記チューブに取付ける。
【0019】
好ましくは、前記キャップが、前記キャップの最下端部に環状に形成され且つ互いに離間する複数の押出用つまみ部をさらに備え、前記第2連結部が、前記付け替え可能なインクカートリッジの外周に環状に形成され且つ互いに離間する複数の当接リブ部を備え、前記キャップが、前記押出用つまみ部が各々前記当接リブ部に対して押し当てられるように、前記付け替え可能なインクカートリッジを回転可能に駆動してチューブに取付ける。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る筆記具の第1実施形態の斜視図である。
図2図1に示される筆記具の部分分解斜視図である。
図3図1に示される筆記具の排出ユニットの断面図である。
図4図1に示される筆記具の排出ユニットの別の断面図である。
図5】作動中の筆記具の一部の概略図であり、キャップが、付け替え可能なインクカートリッジを回転可能に駆動して排出ユニットに取付けることを示す図である。
図6】作動中の筆記具の部分拡大断面図であり、付け替え可能なインクカートリッジを回転可能に排出ユニットに取付ける過程で、付け替え可能なインクカートリッジのフィルムが切断されようとしているところを示す図である。
図7】付け替え可能なインクカートリッジを回転可能に排出ユニットに取付ける過程で、付け替え可能なインクカートリッジのフィルムが切断されるところを示す図である。
図8】付け替え可能なインクカートリッジを排出ユニットに回転可能に取付ける過程で、フィルムが切断されたところを示す図である。
図9】付け替え可能なインクカートリッジの部分概略図であり、付け替え可能なインクカートリッジのフィルムの切断前後の状態を示す図である。
図10】筆記具の別の断面図であり、インクカートリッジが排出ユニットへと強く直接に押圧される前後の付け替え可能なインクカートリッジのフィルムの状態を示す図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る筆記具の排出ユニットの斜視図である。
図12】本発明の第3実施形態に係る筆記具の排出ユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、方向を示す参照語彙、例えば、「外側」、「内側」、「外部」、「内部」、「外方」、「内方」、「下方」、「上方」、「上部」、「下部」、「最上部」、「最下部」、「前側」等は、図面を参照することで本発明を読者に容易に理解させるための識別目的にて、慣習的な見方での図面の向きに基づいて用いられているのみであり、これらに関連する要素、特に本開示における配置、方向、又は使用を限定しない。また、本明細書の記載が、本発明の原理から逸脱することなく、配置、方向、及び向きを伝える他の語彙を含み得ることを当業者は理解すべきである。
【0022】
図1及び図2を参照すると、本発明の第1実施形態に従って構成された筆記具は、筆記ユニット10、毛細管部材20、排出ユニット30、付け替え可能なインクカートリッジ40及びキャップ50を備える。
【0023】
筆記ユニット10はチューブ11及びペン先12を備える。チューブ11は、円筒形であり、ヘッド部110、テール部111、及びヘッド部110とテール部111との間において内部に形成される組立スペース112を備える。テール部111の内周には、複数の雌ねじ山113が突設され、螺旋状に延びている。キャップ50を位置決めするために、切れ目114が雌ねじ山113の前側端部ごとに形成される。ペン先12は、筆記するためにインク(図示せず)を排出するためのチューブ11のヘッド部110に取付けられる。
【0024】
図2に示されるように、毛細管部材20はチューブ11の組立スペース112内に取付けられ、その一端がペン先12の遠位端と接触する。毛細管部材20、はインク(図示せず)を一時的に保管及び吸蔵するために、綿を主体とした材料から製造される。
【0025】
図2を考慮しつつ図3を参照すると、排出ユニット30は、チューブ11の組立スペース112内に取付けられ、毛細管部材20の一端に当接する。排出ユニット30は、アウトバウンド部31、インバウンド部32及びアウトバウンド部31とインバウンド部32とを連通する排出通路33を備える。分割プレート34は、インバウンド部32とアウトバウンド部31との間に形成され、これによりアウトバウンド部31及びインバウンド部32が排出通路33の2つの対向端部になる。アウトバウンド部31は、インクガイドチューブ311、外側環状部分312、複数のガイド出口313及び複数のバッフル314を有する。インクガイドチューブ311及び外側環状部分312はそれぞれ分割プレート34から下方に延びている。インクガイドチューブ311は、長手方向下方に延び、外側環状部分312を越えて延びている。外側環状部分312はインクガイドチューブ311を取り囲む。ガイド出口313は、インクガイドチューブ311の下端において環状又は放射状に形成され、インクガイドチューブ311からのインクを外側に向かって導く。バッフル314は、インクガイドチューブ311と外側環状部分312との間に形成され、等間隔に配置される。バッフル314の各々は、インクガイドチューブ311から突出し、インクガイドチューブ311に沿って軸方向に、分割プレート34から外側に向かって延び、外側環状部分312よりも軸方向に僅かに長い。バッフル314は毛細管部材20を押し付けるために用いられるものである。
【0026】
図2及び図3を考慮しつつ図4を参照すると、インバウンド部32は、2つの切断用部分321、第1連結部322、内部通路323、外部通路324及び2つのガイド空隙325を有する。切断用部分321の各々は、分割プレート34から上方に延びる。第1連結部322は切断用部分321の周囲に環状に形成される。2つの切断用部分321は、対向して配置され、断面視で、対称又は非対称に湾曲してよい。切断用部分321の各々は切断用部分321の最上部側に形成された刃先3210を有する。刃先3210の各々は、鋭く、長手方向に沿って連続的に延びている。刃先3210の各々は少なくとも1つの第1鋭利端及び少なくとも1つの第2鋭利端を有する。高さの差Hは、刃先3210の各々について、第1鋭利端及び第2鋭利端との間で垂直方向に規定される。
【0027】
本発明の第1実施形態において、切断用部分321の刃先3210の各々は、湾曲し、且つ刃先3210の第1鋭利端から第2鋭利端へと下方に時計回りで傾斜している。或いは切断用部分321の刃先3210の各々は、湾曲していてよく、且つ刃先3210の第1鋭利端から第2鋭利端へと下方に反時計回りで傾斜してもよい。切断用部分321の刃先3210の長さは、互いに等しくてもよく、又は等しくなくてもよい。本発明の第1実施形態では、切断用部分321の刃先3210の長さは、互いに等しくない。すなわち1つの前記切断用部分321の刃先3210は、他の刃先3210よりも長い。この構造により、刃先3210がインクカートリッジ(図示せず)のフィルム(図示せず)を環状に突き刺して切断した後、そのフィルムがインクカートリッジと切り離されないようにすることができる。
【0028】
図2及び図3に示されているように、内部通路323は、切断用部分321によって取り囲まれ、インクガイドチューブ311と連通する。外部通路324は切断用部分321と第1連結部322との間で画定される。2つのガイド空隙325の各々は、切断用部分321の隣接する側の間において形成され、内部通路323及び外部通路324と連通する。インク(図示せず)はガイド空隙325を介して導かれ供給されることができる。インバウンド部32の第1連結部322は当接縁部3220及び2つの密封用リブ部3221を有する。当接縁部3220は、第1連結部322の外周に環状に形成され、外側環状部分312に接続される。2つの密封用リブ部3221は第1連結部322の外周に環状に形成される。
【0029】
組立ストロークLは、当接縁部3220と第1連結部322の最上部端部との間で軸方向に規定される。組立ストロークLは、高さの差Hよりも大きい。排出ユニット30は、さらに、第1連結部322の外周に環状に形成され、且つ当接縁部3220と外側環状部分312との間に配置される複数の細長の係合凸状部35を有する。これらの係合凸状部35によって、排出ユニット30は、チューブ11と係合し、排出ユニット30がチューブ11から外れるのを防止できる。排出通路33は、インク(図示せず)を毛細管部材20に供給するために、アウトバウンド部31のインクガイドチューブ311の内部空間とインバウンド部32の内部通路323とを含むように画定される。
【0030】
図2及び図6に示されるように、付け替え可能なインクカートリッジ40は、組立スペース112及びキャップ50内に取付けられ、排出ユニット30と連通する。付け替え可能なインクカートリッジ40は、管状で、その中に貯蔵されているインク(図示せず)、第2連結部41及びフィルム42を有する。第2連結部41は付け替え可能なインクカートリッジ40の一端に形成される。付け替え可能なインクカートリッジ40は、第2連結部41が第1連結部322に被せられるようにして排出ユニット30と接続される。第2連結部41の外径及び内径は付け替え可能なインクカートリッジ40の他の部分の外径及び内径よりも大きい。上述の密封用リブ部3221の各々の外径は、第2連結部41の内径よりも大きくてもよく、又は等しくてもよい。好ましくは、上述の密封用リブ部3221の各々の外径は第2連結部41の内径よりも大きい。第2連結部41は、複数の当接リブ部410及び1つの段差縁部411を有する。当接リブ部410は、付け替え可能なインクカートリッジ40の外周に等間隔で環状に配置され、第2連結部41の最上部端部から上側に延びている。段差縁部411は第2連結部41の内周に環状に形成されている。挿込ストロークL1は段差縁部411と第2連結部41の最下部端部との間で規定される。挿込ストロークL1は、組立ストロークLと実質的に同じ長さである。図2及び図6を再び参照すると、フィルム42は軟質材料から製造され、熱融着によって第2連結部41の段差縁部411に取付けられる。好ましくは、フィルム42はポリエチレン(PE)及びアルミニウム箔から製造され、フィルム42は、付け替え可能なインクカートリッジ40に好適に接着されることができ、且つ顕著な拡張性を有する。インクはフィルム42によって付け替え可能なインクカートリッジ40の内部に密封される。フィルム42が排出ユニット30の切断用部分321のうちのいずれかによって突き刺され、切断されると、インクが第2連結部41から外側に向かって流出して排出ユニット30へと導かれることができ、その結果、排出通路33と付け替え可能なインクカートリッジ40とは互いに連通する。
【0031】
図1及び図2を再び参照すると、キャップ50は、付け替え可能なインクカートリッジ40に被せられ、チューブ11の組立スペース112にねじ止めされる。キャップ50は、中空で、組立てセグメント51、複数の雄ねじ山52、複数の係合リブ部53及び複数の押出用つまみ部54を有する。組立てセグメント51は、管状で、組立スペース112の形状に対応する形状を有する。雄ねじ山52は、組立てセグメント51に螺旋状に形成され、雌ねじ山113にそれぞれ対応する。係合リブ部53は雄ねじ山52の最上部端部に形成され、且つ環状に配置され、それぞれ切れ目114の位置に対応する。押出用つまみ部54は、組立てセグメント51の最下部端部に形成され、等間隔で環状に配置され、それぞれ当接リブ部410の位置に対応する。
【0032】
本発明の第1実施形態は、ネジ式接続により付け替え可能なインクカートリッジ40を取付ける過程を図示する図5から図9に示されるように操作される。筆記具の付け替え可能なインクカートリッジ40のインク(図示せず)が切れた場合、付け替え可能なインクカートリッジ40は、以下で記載されるように、筆記具から取り外され、別の新しい付け替え可能なインクカートリッジ(図示せず)に取り替えられることができる。
【0033】
まず、チューブ11の組立スペース112に付け替え可能なインクカートリッジ40を入れ、キャップ50を付け替え可能なインクカートリッジ40に被せる。次いで、キャップ50の雄ねじ山52がチューブ11の雌ねじ山113と係合するようにキャップ50をチューブ11に徐々にねじって止める。付け替え可能なインクカートリッジ40の当接リブ部410が組立てセグメント51の最下部側と接触するように移動した後、当接リブ部410は押出用つまみ部54をそれぞれ押出すことで、付け替え可能なインクカートリッジ40を、キャップ50に沿って下方に螺旋状に移動させることができる。
【0034】
その後、付け替え可能なインクカートリッジ40の第2連結部41は、まず、排出ユニット30の第1連結部322に被せられ、他方で上述の各々の切断用部分321の第1鋭利端がフィルム42に対して押し当てられ、第2連結部41は最上部の密封用リブ部3221と係合し、第2連結部41及び第1連結部322を密封する。こうして第2連結部41と第1連結部322との間に空隙は形成されない。このようにして、フィルム42が誤って突き刺されたときでも、インクが第2連結部41又は第1連結部322から漏れ出ることを防ぐことができる。キャップ50によって付け替え可能なインクカートリッジ40がさらに駆動され下方に移動された場合、第2連結部41は2つの密封用リブ部3221を乗り越えて、最終的に段差縁部411は当接縁部3220に当接する。他方で、図5を考慮しつつ図2を再び参照すると、キャップ50の係合リブ部53は切れ目114と係合し、こうしてキャップ50とチューブ11とが互いに固定して接続される。
【0035】
図6から図8に示されるように、付け替え可能なインクカートリッジ40がキャップ50により駆動され下方に移動すると、付け替え可能なインクカートリッジ40のフィルム42は、刃先3210の第1鋭利端の一方又は両方がフィルム42を突き刺し、切断するまで、上述の切断用部分321の各々の刃先3210へと徐々に移動される。
【0036】
図8及び図9に示されるように、キャップ50のストロークはチューブ11の雌ねじ山113によって制限され、付け替え可能なインクカートリッジ40が約180度の角度で回転された場合、付け替え可能なインクカートリッジ40のフィルム42は、2つの切断用部分321の刃先3210によって切断され、2つの湾曲した出口部420をそれぞれ形成する。しかしながら、2つの湾曲した出口部420のいずれかの2つの端部は他方の出口部の端部と完全には重ならず、フィルム42全体は段差縁部411上に残り続け、排出ユニット30の内部通路323及び外部通路324のどちらも塞がない。このようにして、インクは付け替え可能なインクカートリッジ40から排出ユニット30の排出通路33へと流れる。図1から図3に示されるように、インクはアウトバウンド部31を介して毛細管部材20及びペン先12へと導かれ、こうしてインクは、円滑な筆記のために澱みなく排出されることができる。インクの一部は外部通路324へと流れる場合もあるが、外部通路324へと流れるインクはガイド空隙325を介して内部通路323に戻ることができる。このようにして、インクはインバウンド部32内で停滞しない。
【0037】
別法として、本発明の第1実施形態は、押圧により、付け替え可能なインクカートリッジ40を取付ける過程を図示する図10図2、及び図5に示されるように操作される。筆記具の付け替え可能なインクカートリッジ40のインクが切れた場合、付け替え可能なインクカートリッジ40は、以下で記載されるように、筆記具から取外され、別の付け替え可能なインクカートリッジ(図示せず)に取り替えられることができる。
【0038】
図10を参照すると、付け替え可能なインクカートリッジ40は、インバウンド部32の2つの切断用部分321に向かって直接、下方に押圧される一方で、フィルム42は切断用部分321の第1鋭利端の一方又は両方によって突き刺され、切断されることができる。その後、インクは付け替え可能なインクカートリッジ40から排出ユニット30の排出通路33へと流れ、次いでアウトバウンド部31を介して毛細管部材20及びペン先12に導かれることができる。このようにしてインクは円滑な筆記のために澱みなく排出されることができる。図5を参照すると、キャップ50は最後にチューブ11にネジ止めされ、こうして筆記具の組立てが完了する。
【0039】
図11を参照すると、本発明の第2実施形態は、本発明の第1実施形態に類似し、且つ以下の相違点を有する。インバウンド部32Aは1つの上述の切断用部分321のみを有し、この形状は実質的に第1実施形態の切断用部分321の一方の形状と同じである。内部通路323は切断用部分321によって取り囲まれている。外部通路324は切断用部分321を取り囲む。内部通路323は外部通路324と連通しており、従って外部通路324は排出通路33と連通する。第2実施形態の他の構造的特徴は本発明の第1実施形態と構造的特徴と同じであるので、その詳細な説明は省略する。
【0040】
図12を参照すると、本発明の第3の実施形態は本発明の第1実施形態に類似し、且つ以下の相違点を有する。排出ユニット30Bは3つの上述の切断用部分321を有するが、その形状は実質的に第1実施形態の切断用部分321の形状と同じである。内部通路323は切断用部分321間で画定され、すなわち内部通路323は切断用部分321によって取り囲まれている。外部通路324は、切断用部分321を取り囲み、切断用部分321と第1連結部322との間に位置する。3つの上述のガイド空隙325が形成され、内部通路323と外部通路324とを連通する。他の構造的特徴は本発明の第1実施形態と同一であるので、その詳細な説明は省略する。
【0041】
本発明の排出ユニット30は、少なくとも1つの切断用部分321を形成し、この少なくとも1つの切断用部分321は、突き刺し及び切断のために、少なくとも1つの鋭い刃先3210を形成する。付け替え可能なインクカートリッジ40は軟質のフィルム42でインクを密封する。付け替え可能なインクカートリッジ40が排出ユニット30に取付けられると、フィルム42は排出ユニット30の少なくとも1つの切断用部分321によって突き刺され、切断されることができ、こうしてインクが付け替え可能なインクカートリッジ40から毛細管部材20及び筆記ユニット10へと円滑に排出されることができる。それゆえ、ユーザがインク切れの付け替え可能なインクカートリッジ40を付け替える必要がある場合、残インクはほぼなく、ユーザの手を汚さない。少なくとも1つの切断用部分321の数、形状及び他の構造的特徴は、なんら制限なく状況に応じて変更可能である。
【0042】
付け替え可能なインクカートリッジ40は完全に排出ユニット30を覆うことができる。さらに、第1連結部322は2つの密封用リブ部3221を形成し、密封用リブ部3221の外径の各々は第2連結部41の内径よりも僅かに大きい。従って第2連結部41は、組立ての過程において、密封用リブ部3221を乗り越えるため僅かに力を加えられる必要がある。このようにして、組立ての過程、又は付け替え可能なインクカートリッジ40の付け替えにおいて、排出ユニット30からのインクの漏出を防ぐことができる。
【0043】
付け替え可能なインクカートリッジ40は、ネジ止めによる接続又は押圧によって排出ユニット30と共に組立てられることができる。付け替え可能なインクカートリッジ40のフィルム42が排出ユニット30によって突き刺され、切断された後、フィルム42は付け替え可能なインクカートリッジ40の段差縁部411に残り続けることができる。これにより、残インクで汚れたフィルム42が付け替え可能なインクカートリッジ40から落ちて外れてしまうことを防ぐことができ、付け替え可能なインクカートリッジ40が付け替えられているときに、ユーザの手又は任意の近くにある物を汚してしまうことを回避することができる。残インクを有するフィルム42は、付け替え可能なインクカートリッジ40と共に処分又はリサイクル可能である。
【0044】
加えて、付け替え可能なインクカートリッジ40が排出ユニット30に取付けられる場合、排出ユニット30は、インクを導くために、少なくとも1つの切断用部分321と第1連結部322との間に外部通路324を有し、その少なくとも1つの切断用部分321の位置は第1連結部322とは離れており、それにより、組立ての過程で、その少なくとも1つの切断用部分321が、付け替え可能なインクカートリッジ40の段差縁部411と干渉することを防ぐことができ、これにより、その少なくとも1つの切断用部分321が損傷することを防ぐ。
【0045】
本発明の多くの特徴及び利点が上述の記載において本発明の構造及び機能の詳細と共に記載されているが、本出願における開示はあくまで例示的なものである。様々な変更が詳細になされてよい。とりわけ形状、大きさ及び様々な部品の構成については、添付の特許請求の範囲が表現する語彙の広い一般的な意味合いにより示される最も広い範囲の程度まで、本発明の原理内で変更がなされてよい。
【符号の説明】
【0046】
10 筆記ユニット
11 チューブ
12 ペン先
110 ヘッド部
111 テール部
112 組立スペース
113 雌ねじ山
50 キャップ
114 切れ目
20 毛細管部材
30、30B 排出ユニット
31 アウトバウンド部
32 インバウンド部
33 排出通路
34 分割プレート
311 インクガイドチューブ
312 外側環状部分
313 ガイド出口
314 バッフル
321 切断用部分
322 第1連結部
323 内部通路
324 外部通路
325 ガイド空隙
3210 刃先
3220 当接縁部
3221 密封用リブ部
L 組立ストローク
35 係合凸状部
40 付け替え可能なインクカートリッジ
41 第2連結部
42 フィルム
410 当接リブ部
411 段差縁部
L1 挿込ストローク
51 組立てセグメント
52 雄ねじ山
53 係合リブ部
54 押出用つまみ部
420 出口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12