特許第6588586号(P6588586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6588586複合芯鞘型構造を有する表面改質ガラス繊維
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588586
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】複合芯鞘型構造を有する表面改質ガラス繊維
(51)【国際特許分類】
   C03C 25/68 20060101AFI20191001BHJP
   D01F 9/08 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   C03C25/68
   D01F9/08 Z
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-24974(P2018-24974)
(22)【出願日】2018年2月15日
(65)【公開番号】特開2018-150224(P2018-150224A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2018年5月25日
(31)【優先権主張番号】17156526.0
(32)【優先日】2017年2月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】315001028
【氏名又は名称】イソライト ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミハエル ノール
(72)【発明者】
【氏名】ダビデ ピコ
【審査官】 宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−206733(JP,A)
【文献】 特開平07−172876(JP,A)
【文献】 特開2010−168706(JP,A)
【文献】 特開平08−217496(JP,A)
【文献】 特表2006−524777(JP,A)
【文献】 特開平09−169548(JP,A)
【文献】 実開昭58−007645(JP,U)
【文献】 特開昭51−070457(JP,A)
【文献】 実開昭55−163132(JP,U)
【文献】 特開2013−155828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C25/00−25/70
B32B1/00−43/00
D01F9/08−9/32
D04H1/00−18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織繊維複合構造であって、
複数の表面改質ガラス繊維から成る第1不織繊維層と、
第2ガラス繊維材料から成る第2不織繊維層と、
第3不織繊維層と、を有し、
前記表面改質ガラス繊維のそれぞれは
第1ガラス繊維材料の芯と、
前記芯を鞘状の方法で完全に取り囲む表面層と、備え、
前記表面層は、前記芯と比較して高い二酸化ケイ素の割合及び高い多孔度を有し、
前記第2不織繊維層は、前記第1不織繊維層の上に積層され、
前記第2ガラス繊維材料は、Eガラス、水ガラス又はAガラスを備え、
前記第3不織繊維層は、前記第1不織繊維層と等しく、前記第1不織繊維層及び前記第3不織繊維層は、サンドイッチ状となるように前記第2不織繊維層を挟み囲む、不織繊維複合構造。
【請求項2】
請求項1に記載の不織繊維複合構造であって、
前記芯の前記第1ガラス繊維材料は、Eガラス、水ガラス又はAガラスを備える不織繊維複合構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の不織繊維複合構造であって、
前記表面改質ガラス繊維の前記芯は、少なくとも52%の二酸化ケイ素の割合を有する不織繊維複合構造。
【請求項4】
請求項1乃至3の少なくとも1項に記載の不織繊維複合構造であって、
前記表面改質ガラス繊維の前記表面層は、最大96%の二酸化ケイ素の割合を有する不織繊維複合構造。
【請求項5】
請求項1乃至3の少なくとも1項に記載の不織繊維複合構造であって、
前記表面改質ガラス繊維の前記芯は、少なくとも0.5μmの芯径を有し、前記表面改質ガラス繊維の前記表面層は、少なくとも0.5μmの厚さを有する不織繊維複合構造。
【請求項6】
不織繊維複合構造の製造方法であって、
表面改質ガラス繊維構造製造する方法を備える方法であって、前記表面改質ガラス繊維構造は、前駆体繊維又は縫われた前駆体繊維から成る不織繊維層であって、前記表面改質ガラス繊維構造は、Eガラス、水ガラス又はAガラスを備える第1ガラス繊維材料から成表面改質ガラス繊維構造の第1不織繊維層を製造する方法を有し、
所定の時間、所定の周辺温度、及び所定の酸濃度で所定の酸性溶液による処理を経て、記所定の酸性溶液に浸すことにより、前記表面改質ガラス繊維構造を浸出させる工程と、
第2ガラス繊維材料は、Eガラス、水ガラス又はAガラスであって、前記第2ガラス繊維材料から成る第2不織繊維層を前記第1不織繊維層上に貼り付ける工程と、
第3不織繊維層は前記第1不織繊維層と等しく、前記第1不織繊維層及び前記第3不織繊維層がサンドイッチ状となるように前記第2不織繊維層を挟むような方法により、前記第3不織繊維層を前記第2不織繊維層上に貼り付ける工程と、を備える不織繊維複合構造の製造方法。
【請求項7】
請求項に記載の不織繊維複合構造の製造方法であって、
前記所定の酸性溶液は、ギ酸又は塩酸又は硫酸の水溶液を備える不織繊維複合構造の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の不織繊維複合構造の製造方法であって、
前記酸性溶液の前記温度は、周辺温度と100℃との間である不織繊維複合構造の製造方法。
【請求項9】
請求項乃至の少なくとも1項に記載の不織繊維複合構造の製造方法であって、
前記所定の時間は、3分乃至3時間である不織繊維複合構造の製造方法。
【請求項10】
請求項乃至の少なくとも1項に記載の不織繊維複合構造の製造方法であって、
前記酸性溶液の前記酸濃度は、1モルと3モルの間である不織繊維複合構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合芯鞘型構造を有する表面改質ガラス繊維及び当該タイプの繊維の製造方法に関する。
【0002】
(先行技術)
防音及び断熱の分野において、様々な繊維タイプが知られている。以下、いくつかの例を示す。
【0003】
(ガラス繊維)
ガラス繊維は、非晶構造を有し、分子配向を持たない無機繊維である。その構造のため、ガラス繊維は等方性特性を有する。ケイ素と酸素間の共有結合のため、ガラス繊維は高い硬度を有する。その組成によって、ガラス繊維は、様々なタイプに分類される。少し例を挙げるだけでも、Eガラス、Rガラス、S−2ガラス、Cガラス、Dガラス及びARガラスがある。これらのガラスタイプの各々は、特別な特性により特徴付けられる。Eガラス繊維は、典型的に、最も安価な繊維タイプであり、市場シェアの約90%を占める最も広く普及しているガラス繊維タイプでもある。年間の世界生産は、約5百万トンに達する。ガラス繊維の引張強度は、約3.4GPaで、弾性係数、すなわちe係数は、約75GPaに達する。
【0004】
(シリケート繊維)
シリケート繊維は、非晶質繊維である。シリケート繊維は、主として二酸化ケイ素、SiO2で構成される。シリケート繊維は、2つの異なる処理(ゾルゲル乾式法又は浸出)を用いて作られる。ゾルゲル法は、乾式紡糸処理であり、繊維はゲルのフィラメント内で直接紡がれ、乾燥させられる。ゲルは、概ね、オルガノシラン(例えば、TEOS)の重合を経て得られる。シリケート繊維は、ガラス繊維前駆体から浸出法を経て得られる。SiO2の割合は、ガラス繊維前駆体の52%及び70%から増加し、処理の終了時にはガラスの他の酸化物の浸出に起因して93%を超える。シリケート繊維は、多様な特性を有して市場に提供される。最も手頃な繊維の価格は、10ユーロ/kg未満である。シリケート繊維は、非常に低い硬度を有し、最大1000℃までの温度域で利用される。シリケート繊維は、ガラス繊維よりも高いSiO2含有量と非晶構造を有する。シリケート繊維は、少なくとも93%のSiO2から成り、そのため1050℃までのより高い熱安定性を有する。セラミック繊維、バサルト繊維、石英繊維、ガラス繊維及び他の無機繊維のような他の繊維と比較して、シリケート繊維は、約0.35GPaのより低い引張強度を有する。
【0005】
(セラミック繊維)
セラミック繊維は、多結晶の無機材料から成る繊維である。セラミック繊維の熱安定性は、1600℃に達する。セラミック繊維は、酸化物及び非酸化物グループに分けられる。酸化物繊維は、主として酸化アルミニウムから成る。SiO2又はZrO2は、添加剤として利用される。炭化ケイ素は、非酸化物繊維の基本材料である。添加剤は、酸素、チタニウム、ジルコニウム及びアルミニウムである。酸化物繊維のe係数が150GPaと370GPaの間であるのに対して、非酸化物繊維のe係数は180GPaと420GPaの間である。酸化物繊維の引張強度が1.7GPaと3.5GPaの間である一方、非酸化物繊維は2.5GPaと4.0GPaの間である。セラミック繊維は1600℃まで安定しているが、非常に高価である。加えて、セラミック繊維は、熱応力及び機械的応力が小さい場合である1000℃未満の温度では利用されない。さらに、この繊維は健康を害すると見なされており、EU化学物質規則REACH(化学物質の登録、評価、認可及び制限に関する規則)の付属書XIV(認可の対象となる物質)に含まれる候補リストに含まれている。
【0006】
(バサルト繊維)
バサルト繊維は、玄武岩の細い繊維で構成される。バサルト繊維は、約1400(+/−50)℃の液体溶融バサルト塊から成る。その成分は、SiO2、Al23、CaO、MgO及び他の酸化物である。バサルト繊維は、良好な化学安定性及び90〜110GPaの係数で3.7GPaの引張強度を有する。熱安定性は、約700℃である。この繊維の価格は、2.5ユーロ/kgと4ユーロ/kgの間である。
【0007】
(石英繊維)
石英繊維は、99.99%、非晶質SiO2で構成される。石英繊維は、シリケート繊維より高い耐熱性及び耐酸性を有する。石英繊維は、3.2〜3.6GPaの引張強度及び76〜78GPaのe係数を有する。その価格(kg当たり800ユーロ)は、シリケート繊維の価格に比べ、極めて高い。長期的な温度安定性は、約1200℃である。
【0008】
繊維の種類は、通常、所望の温度安定性に応じて選択及び/又は製造される。Eガラス繊維は、600℃までの温度に対して典型的に選択される。その他に、ECRガラス繊維は550℃までの温度に対して選択され、シリケート繊維は1000℃までの温度に対して、セラミック繊維はこの範囲を越えて、1600℃までの温度に対して選択される。
【0009】
(先行技術の問題点)
しかし、上述された繊維の種類は、それぞれ異なる問題点を有する。この問題点は、繊維の一般的な環境特性により、処理の状況により、又は経済的側面により生じ得る。
【0010】
セラミック繊維は、結晶性であり、そのため生分解性ではない。従って、明白な発がん性はないとしても、潜在的に健康に害がある。
【0011】
シリケート繊維及び/又は石英繊維は、溶融紡糸を経て製造できる。この方法では、単一フィラメント毎に、少しも気泡や結晶中心等がない超高純度SiO2の傷のないバーが必要である。個々のバーは、直接加熱されなければならない。この理由から、処理は極めて高価で複雑である。これらの繊維は、レードーム及び光学的な光伝達にのみ利用される。
【0012】
シリケート繊維の乾式紡糸/ゾルゲル法の処理においては、有害なオルトケイ酸テトラエチル、TEOS、が利用される。加えて、制御された方法で、重縮合を実行しなければならない。利用される化学物質のため、方法は複雑で非常に高価である。価格は明らかに10ユーロ/kgを超える。得られる繊維は平均的の機械特性を有する。
【0013】
浸出法によるシリケート繊維は、ガラス繊維前駆体から得られる。ガラス繊維は、最初は52%と70%の間のSiO2重量パーセントを有し、処理の最後にはそのSiO2の割合は93%より高くなる。繊維は、その本来の硬度の大部分を失い(3.4GPaから約0.35GPaまで)、価格はその特性の割には非常に高い(10ユーロ/kgを超える)。
【0014】
(発明の目的)
上記で説明された技術水準における課題を考慮し、本発明の目的は、説明された繊維の代わりに、市場で入手できる同質の繊維製品より優れた機械特性を有する一方、熱安定性が700〜1000℃の間で調整可能な繊維製品及び繊維製品の製造方法を提供することである。これに関連して、より単純な製造工程を実現し、説明された既存の先行技術による問題点を最小限まで減らされるであろう。さらに、このような断熱製品の製造費も、大幅に低減されるべきである。
発明の説明
【0015】
本発明は、表面改質ガラス繊維を提供する。表面改質ガラス繊維は、第1ガラス繊維材料から成る芯と、芯を鞘状の方法で完全に囲む表面層とを備える。表面層は、芯と比較して高い二酸化ケイ素の割合及び高い多孔度を有する。
【0016】
これに関連して、芯の第1ガラス繊維材料は、Eガラス、水ガラス又はAガラスを備え得る。
【0017】
芯は、約52%の二酸化ケイ素の割合を有し得る。
【0018】
表面層は、最大96%の二酸化ケイ素の割合を有し得る。
【0019】
その結果、芯は、少なくとも0.5μmの芯径を有し得る。表面層も、少なくとも0.5μmの厚さを有し得る。
【0020】
本発明は、表面改質ガラス繊維構造の製造方法を提供する。ガラス繊維構造は、前駆体繊維又は縫われた前駆体繊維から成る不織繊維層である。ガラス繊維構造は、Eガラス、水ガラス又はAガラスを備える第1ガラス繊維材料から成る。方法は、所定の時間、所定の周辺温度、及び所定の酸濃度で所定の酸性溶液による処理を経て、特に所定の酸性溶液に浸すことにより、ガラス繊維構造を浸出させる工程を備える。
【0021】
前述の方法が用いられことで、表面改質ガラス繊維構造が、未処理のガラス繊維構造、すなわち前駆体繊維又は不織繊維層に由来するのは明白である。従って、前駆体繊維及び/又は編まれた前駆体繊維から成る不織繊維層は、それぞれ方法に対する根源となる要素である。
【0022】
この方法における原要素である、前駆体繊維又は前駆体繊維から成る不織繊維層/不織繊維パッドは、概ねこの方法の一部と同様に処理される。これは、以下の工程の説明が、前駆体繊維と同様に、あらかじめすでに不織繊維層へ編まれた複数の前駆体繊維との、両者に適用できるためである。市販の繊維、例えば、広く普及し費用対効果の高いEガラス繊維だけでなく、より希少な水ガラス又はAガラス繊維も、前駆体繊維として利用され得る。この方法の一部では、前駆体繊維の表面、すなわち原繊維の表面及び/又は不織繊維層の前駆体繊維の表面は、不完全浸出を経て改質される。この方法を用いて得られる表面が変化した繊維の表面層、すなわち表面は、大部分、二酸化ケイ素SiO2から成る。ただし、不完全浸出処理によって、前駆体繊維の芯又は内側領域を未変化のままである。これは、芯が基本的に非浸出/未処理の本来の原料、すなわち例えば、未改質のEガラス繊維材料又は未変化の水ガラス又はAガラス繊維材料から成るためである。当該方法で形成された表面改質繊維は、二成分繊維又は複合繊維とも呼ぶことができる。芯は、第1の内側成分であり、芯を完全に囲む改質された鞘状の表面層は、第2の外側成分である。
【0023】
繊維の芯は、上述の方法で浸出されない。そのため、結果として、表面改質ガラス繊維は、より良好な機械特性を有することになる。さらに、繊維の芯は、浸出がなく密なままで、多孔質にはならない。それ故、結果として生じる複合繊維の温度暴露の場合の縮小をかなり制限することができる。
【0024】
一方、鞘層又は鞘とも呼ばれ得る芯を完全に囲む改質表面層は、前記芯と比較してしっかりと浸出される。SiO2のかなりの多くの割合が当該層に存在する。変化表面層は、浸出されるため多孔質となる。改質表面層のこれらの孔は、熱応力の衝撃下でのみ閉じ得るため、芯に対する熱保護が実現される。
【0025】
表面改質ガラス繊維の更なる利点は、より低い熱抵抗を有する酸化物が浸出中に鞘層から除去されるため、原料に関し、これら繊維のガラス転移温度が上昇することである。これは、繊維の熱安定性又はガラス転移温度を減少させる特定の酸化物が、それ故、鞘層から除去され得ることを意味している。例としては、B23、CaO、MgO、K2O、Na2O等である。
【0026】
この方法において、所定の酸性溶液は、ギ酸又は塩酸又は硫酸の水溶液を含み得る。
【0027】
一般に、SiO2が化学的耐性を示す酸、例えばシュウ酸、硝酸、リン酸、酢酸も浸出に利用できる。所望の浸出程度で浸出されることにより、その結果、SiO2の割合の値を52%まで最高で約96%まで増加させる。
【0028】
この方法のパラメータは、原料の所望の繊維の種類及び所望の浸出程度によって調整され得る。特にこの方法に対する酸性溶液の温度は、大気温度と100℃との間となり得る。さらに高い温度も還流によって実現され得る。このような場合には、水の気化と再液化がなされる。H2SO4の濃度勾配が浸出タンク内で生じる。これに関連して、浸出の反応時間、すなわち所定の時間は、この方法において3分乃至3時間となり得る。同様に、この方法における酸性溶液の酸濃度は、0.5モルと6モルの間、特に1モルと3モルの間となり得る。
【0029】
加えて、編まれた化合物構造の巻回物の浸出は、コーティングを使用しないで可能である。不織繊維材料に関しては、特に個々の繊維が不織繊維材料に成る前に浸出されるのではなく、浸出に先立つ形成及び製造条件においてすでに所望の最終製品に近いものとなっている不織繊維材料が直接浸出されるという点でさらに有利である。
【0030】
同様に、不織繊維複合構造の製造方法が提供される。この方法は上述のようの第1不織繊維層を製造し、第2ガラス繊維材料から成る第2不織繊維層を第1不織繊維層上に貼り付ける工程を備える。第2ガラス繊維材料は、Eガラス、水ガラス又はAガラスを備える。
【0031】
従って、少なくとも2つの不織繊維層/不織布材料パッドからなる少なくとも部分的な処理がなされた不織繊維複合構造が形成される。これら2つの内、他の1つが未処理であるのに対し、1つの不織繊維層は先に浸出される。
【0032】
さらに、不織繊維複合構造の製造方法は、第2不織繊維層及び第3不織繊維層がサンドイッチ状に第1不織繊維層を挟むような方法で、第3不織繊維層を第1不織繊維層上に貼り付ける工程を備え得る。第3不織繊維層は、第2不織繊維層と同一である。
【0033】
これにより、高温の不織繊維の製造中における製造工程を少なくすることができる。不織繊維複合構造は、芯及び鞘層で構成される構造を有し得る。芯及び鞘層は、例えば、複合不織繊維層/市販の繊維から成る不織布材料パッド/複合不織繊維層からなる3層のサンドイッチ状の方法、又は、その厚さの半分まで複合繊維を備えるのみのどちらかで、それぞれ系統的に浸出されて形成される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】表面改質繊維の模式図を示す。
図2】浸出された表面改質Eガラス繊維及び図1の表面改質繊維の模式図を示す。
図3】サンドイッチ構造の表面改質繊維を有する不織繊維複合構造の模式図を示す。
図4】表面改質繊維を有する不織繊維複合構造の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明に係る表面改質繊維1の模式図を示す。前駆体ガラス繊維構造(ここでは、たとえばEガラス繊維、水ガラス繊維、又は、Aガラス繊維などのガラス繊維)に基づき、表面改質繊維1は不完全浸出を用いて形成された。これに関連して、表面改質繊維1は、2つの成分、すなわち、改質表面層5、及び、未処理で非浸出の原繊維と関連する不可欠な未変化の芯3を備える。繊維の不完全浸出も当該処理において実施される。この結果、しっかりと浸出される繊維の表面層5と浸出されないその芯3の間の浸出勾配が実現され得る。
【0036】
浸出のために、ガラス繊維は酸性溶液で処理、すなわち、通常は前記溶液に浸される。ギ酸、塩酸又は硫酸が、それぞれこの目的のための水溶液で利用できる。
【0037】
前駆体ガラス繊維は、選択された酸性溶液に定義された方法で浸される。酸性溶液の温度は、そのため、大気温度と100℃との間で適切に設定されうる。さらに、当該処理における反応時間は、3分と3時間の間で変更しうる。温度、酸性タイプ、酸濃度、例えば1モルと3モルの間、及び反応時間に基づき、浸出処理の進行が制御される。浸出処理のゴールは、すでに示したように、芯と鞘層の間の二酸化ケイ素勾配を実現することである。芯と鞘層の間の最大勾配は、ベース繊維が52%のSiO2の割合を有し、最大限浸出された繊維が約96%のSiO2の割合を有するように、42%±3%の最大量を有し得る。
【0038】
図2は、本発明に係る繊維の芯鞘型構造の例を示す。図2は、不完全な、すなわち部分的な浸出処理にさらされた、すなわち、定義された方法で酸性溶液に浸された複数のEガラス繊維を示す。典型的な値は、例えば、50℃の温度、24時間を超える3モルのH2SO4である。Eガラス繊維は、参照符号7で表示される。個々の処理繊維7間の差異はここでは考慮されない。従って、個々の処理繊維7は、概して等しく見なされる。個々の処理された、すなわち表面改質された繊維7は、9μmの平均径D‘を有する。説明のため、図2の中央には、図1で示された繊維1がその芯3及びその鞘層5と共に含まれている。繊維1は、写真のように表示された処理繊維7の平均径D‘に対応する径Dを有する。処理繊維の2つ成分、すなわち芯と各鞘層、すなわち原料の浸出が生じた領域と、の間の区別は、繊維7の精密な図で明確に理解できる。
【0039】
芯3が前駆体繊維1の本来の特性を維持するのに対して、鞘層5は、高いケイ素の割合及び同時に、より高い多孔度を有する。これに関連して、芯3は、密で通気性のない構造を特徴とする。繊維の多孔度は、浸出に起因するその重量の減少に同等に作用する。
【0040】
従って、繊維の多孔度は、浸出された酸化物の質量の減少と同等である。
【0041】
芯3は、その結果、従来どおり、例えばE係数、引張強度、など、原繊維の優れた機械特性を有する。これに関連して、原料、すなわち繊維の処理中に改質されていない芯3と同様に前駆体繊維は、当然、低い熱安定性を有し得る。ただし、芯3は、鞘層5により保護されている。当該鞘層5は、処理のためより高い温度安定性を有する。それ故に、改質繊維構造1全体も、芯3、すなわち原繊維も含まれる、よりも高い温度耐性を有する。熱抵抗及び機械特性は、鞘の厚さと芯の径の間の割合次第である。
【0042】
当該芯鞘型構造は、図3及び図4に示されているような不織繊維複合構造にも拡張できる。すでに示されているように、不織繊維層の処理は、個々の繊維の処理と同様な方法で行われる。当該処理において、不織繊維層全体がその後、定義された処理パラメータで定義された酸性溶液に浸されるよりも先に、まず、個々の繊維が不織繊維層/不織布材料パッドに編まれる。
【0043】
図3は、処理複合繊維21から成る第1温度安定外側不織繊維層及び処理複合繊維23から成る第2温度安定外側不織繊維層によるサンドイッチ構造20を示す。典型的に、2つの不織繊維層21及び23は、等しく、そして、図1及び図2に基づいて示されたような等しい処理複合繊維によってそれぞれ構成される。説明の目的のためのみに存在する拡大図において、すでに図1及び図2に基づき説明された繊維1は、不織布材料パッドを示すための図3の右側において互いに隣り合うように示されている。従って、図3の不織繊維層23及び不織繊維層21もまた、繊維1から成るから不織布材料パッドに相当し得る。図3で例示的に示された構造において、2つの不織繊維層21及び23は、更なる不織繊維層22を直接挟む。ただし、不織繊維層22は、未処理の繊維を備えるのみ、すなわち1つの成分のみである。内層22は、例えば、基本的に未処理のEガラスから成る。当該内層22は、例えば、最大600乃至700℃の温度安定性を有し得る。一方、それぞれ処理複合繊維から成る2つの不織繊維層21及び23は、内層22より高い温度安定性を有する。前記温度安定性は、典型的には700〜1000℃であり得る。従って、図3に示されるサンドイッチ構造の外層21及び23により、より高い温度安定性が提供できる。同時に、その構造により、内層22の繊維の良好な機械的硬度特性が保持される。層21及び23の厚さは、浸出期間及び未処理の繊維径に基づき選択できる。それらの厚さは、典型的には同一であり得る。内層22を外層の厚さと著しく異なる厚さとなるように構成することが同様に可能であることは明白である。
【0044】
基本的に熱応力が絶縁構造の一面にのみ生じる絶縁領域において頻繁に貼付される。このような「一面の」熱応力の場合、図4に示すように、残り部分を未処理のまま、不織布材料製品の、すなわち絶縁構造の半分のみに700〜1000℃の温度安定性を備えることも同様に可能である。図4は、2つの層を備える絶縁構造/不織布材料製品30を示す。これは、処理繊維の不織繊維層25及び前記不織繊維層とは異なる未処理の不織繊維層27である。図3と同様、複合不織繊維層25は、図1及び図2に基づいて説明されているような処理複合繊維から形成される。これに関連して、不織繊維層25は、また、典型的に図3の不織繊維層21及び23と一致する。従って、不織繊維層25は、700〜1000℃の温度安定性を有し得る。図4に表示されているように、不織繊維層27は、長手方向に切断される図3のサンドイッチ構造と同様な方法で、不織繊維層25の上に設けられる。不織繊維層27は、図3の不織繊維層22と同一の温度特性を有し得る。そのため、処理複合不織繊維層25を備える構造30の面が絶縁される対象物に面するように配置される一方、未処理の繊維から成る不織繊維層27を有する構造30の面は、絶縁される対象物から離れた面に配置されることは明白である。
【0045】
本発明により提供される表面改質繊維及び/又は不織繊維層は、貼付強度に応じて、約700℃から1000℃までの高温域における断熱に特に適している。定義された引張力及び定義された弾性係数、又は一般に繊維製品のより高い硬度及び/又は安定性が要求される。高温領域、特に自動車産業、航空宇宙産業の分野において、熱音響システムの分野における特殊な要求と同様に流体エンジニアリングにおいて、潜在的使用が見られる。自動車産業におけるコモンレールディーゼルへの適用は、800〜900℃の温度域にある。750℃の温度耐性を有するECRガラス繊維は、この適用構成においては、過小寸法で、1000℃の温度耐性を有するシリケート繊維は、過大寸法で高価過ぎる。ここで、本発明に記載されている製品は、最適な解決手段を提供する。加えて、同時に繊維、特にガラス繊維の製造者である必要はなく、非常に温度的に安定した繊維及び製品を提供できる利点を併せ持つ。
図1
図2
図3
図4