特許第6588612号(P6588612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588612
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】ズームレンズユニット
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/10 20060101AFI20191001BHJP
   G02B 7/02 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   G02B7/10 D
   G02B7/02 G
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-198900(P2018-198900)
(22)【出願日】2018年10月23日
(62)【分割の表示】特願2018-182039(P2018-182039)の分割
【原出願日】2014年5月21日
(65)【公開番号】特開2019-40197(P2019-40197A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2018年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227364
【氏名又は名称】株式会社nittoh
(74)【代理人】
【識別番号】100169188
【弁理士】
【氏名又は名称】寺岡 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】蔭山 琢也
【審査官】 井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−128374(JP,A)
【文献】 特開2007−298672(JP,A)
【文献】 実開昭53−011241(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/10
G02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者による回動の操作を受けて上記回動の量に応じて変化する焦点距離を示す目盛を備えた環状のズームリングを有するズームレンズユニットにおいて、
上記ズームリングの外周に周方向に沿って形成される溝と、
上記ズームリングの上記目盛の任意の値を指し示す目印を有し、上記溝に沿って嵌め込まれる環状を呈する目印部材と、
上記目印部材の上記溝に嵌められた部分と、上記溝との間に配置され、上記目印部材と上記ズームリングとの間に、両者の相対位置を固定可能な付勢力を生じさせる付勢部材、
を有し、
前記目印部材は、環状の周方向に複数に分割可能である、
ことを特徴とするズームレンズユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のズームレンズユニットにおいて、
上記付勢部材は、上記ズームレンズユニットの光軸を挟んで対称の位置に配置されている、
ことを特徴とするズームレンズユニット。
【請求項3】
請求項に記載のズームレンズユニットにおいて、
上記付勢部材は、分割された各上記目印部材の上記環状の周方向の中央に配置されている、
ことを特徴とするズームレンズユニット。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載のズームレンズユニットにおいて、
上記付勢部材は、上記目印部材または上記ズームリングのいずれか一方に固定され、上記付勢部材の上記目印部材または上記溝のいずれか一方側に、この一方側の上記目印部材または上記溝に当接する当接部を有する、
ことを特徴とするズームレンズユニット。
【請求項5】
請求項に記載のズームレンズユニットにおいて、
上記当接部は、球状部材または板状部材である、
ことを特徴とするズームレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
使用者による回動の操作を受けてその回動の量に応じて変化する焦点距離を示す目盛を備えたズームリングを有するズームレンズユニットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−298672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなズームレンズユニットは、ズームリングの回動で焦点距離が無断階で変化するのが通常である。そのため、目盛の線と線との間の焦点距離を一度合わせ、後にその焦点距離を再現することは困難である。
【0005】
そこで本発明の目的は、一度合わせた焦点距離の再現を容易とするズームレンズユニットおよび目印部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のズームレンズユニットは、使用者による回動の操作を受けて回動の量に応じて変化する焦点距離を示す目盛を備えた環状のズームリングを有するズームレンズユニットにおいて、ズームリングの外周に周方向に沿って形成される溝と、ズームリングの目盛の任意の値を指し示す目印を有し、溝に沿って嵌め込まれる環状を呈する目印部材と、目印部材の上記溝に嵌められた部分と、溝との間に配置され、目印部材とズームリングとの間に、両者の相対位置を固定可能な付勢力を生じさせる付勢部材、を有し、目印部材は、環状の周方向に複数に分割可能である。
【0007】
ここで、目印部材は、環状の周方向に複数に分割可能であることとしても良い。
【0008】
また、付勢部材は、ズームレンズユニットの光軸を挟んで対称の位置に配置されている、こととしても良い。
【0009】
また、付勢部材は、分割された各目印部材の環状の周方向の中央に配置されている、こととしても良い。
【0010】
また、付勢部材は、目印部材またはズームリングのいずれか一方に固定され、付勢部材の目印部材または溝のいずれか一方側に、この一方側の目印部材または溝に当接する当接部を有する、こととしても良い。
【0011】
また、当接部は、球状部材または板状部材である、こととしても良い。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明のズームレンズユニットは、使用者による回動の操作を受けて回動の量に応じて変化する焦点距離を示す目盛を備えたズームリングを有し、目盛の任意の値を指し示す目印部材を有し、目印部材は、使用者の選択により、以下の(1)および(2)の双方の回動が可能である。
(1)ズームリングの回動に伴った回動
(2)ズームリングの回動に伴わない回動
【0013】
ここで、目印部材とズームリングとの間には付勢部材が介在し、付勢部材が目印部材とズームリングの双方を付勢し、その付勢力が、目印部材とズームリングとの相対位置を固定することで、(1)の回動を可能としても良い。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の目印部材は、使用者による回動の操作を受けて回動の量に応じて変化するズームレンズユニットの焦点距離を示す目盛を備えたズームリングに取り付けて、目盛の任意の値を指し示し、目印部材は、使用者の選択により、以下の(1)および(2)の双方の回動が可能である。
(1)ズームリングの回動に伴った回動
(2)ズームリングの回動に伴わない回動
【0015】
ここで、目印部材には、ズームリングを付勢する付勢部材が備えられ、その付勢力が、目印部材とズームリングとの相対位置を固定することで、(1)の回動を可能としても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、一度合わせた焦点距離の再現を容易とするズームレンズユニットおよび目印部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係るズームレンズユニットの正面図である。
図2図1の平面および背面および右側面側から見た、本発明の実施の形態に係るズームレンズユニットにおける目印部材を分解した分解斜視図である。
図3図1のA−A断面概要図であり、ズームリング、目印部材およびコイルばねだけを示す図である。
図4図1のB−B断面概要図であり、一組のズームリングおよび目印部材だけを示す図である。
図5図1に示す領域Cの概要図である。
図6】本発明の実施の形態に係るズームレンズユニットの変形例を示す図であり、ズームレンズユニットの図4に相当する部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(本発明の実施の形態に係るズームレンズユニットと目印部材の構成および動作)
以下、本発明の実施の形態に係るズームレンズユニットと目印部材について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るズームレンズユニットの正面図である。図2は、図1の平面および背面および右側面側から見た、本発明の実施の形態に係るズームレンズユニットにおける目印部材を分解した分解斜視図である。
【0019】
ズームレンズユニット1は、使用者による回動(図2に示す矢印R方向であり、ズームレンズユニット1の周方向の回動)の操作を受けて回動の量に応じて変化する焦点距離を示す目盛Sを備えた環状のズームリング2を有している。そしてズームレンズユニット1は、目盛Sの任意の値を指し示す環状の目印部材3を有している。
【0020】
そして、図2に示す、目印部材3を分解した状態の一方の分解目印部材3Aの端部3A1,3A2は、もう一方の分解目印部材3Bの端部3B1,3B2と、それぞれネジ3Dによって固定される。詳述すると、分解目印部材3Aの端部3A1は、分解目印部材3Bの端部3B1と固定され、分解目印部材3Aの端部3A2は、分解目印部材3Bの端部3B2と固定される。その結果、図1および図3に示す環状の目印部材3となる。なお、図2に示す目盛Sの文字の向きは、図1に示す目盛Sの文字の向きとは反対になっている。これは、図2がズームレンズユニット1を背面側から見た図であり、図1のズームレンズユニット1の正面側から見た目盛Sが見えない角度から見た図だからである。同様に図1からは図2に示した目盛Sの部分が見えない。図1および図2に示す目盛Sは、いずれも同一のズームリング2に備えられたものなので、同一の符号であるSを付している。
【0021】
図3は、図1のA−A断面概要図であり、ズームリング2、目印部材3および後述するコイルばね4だけを示す図である。図4は、図1のB−B断面概要図であり、一組のズームリング2および目印部材3だけを示す図である。
【0022】
目印部材3は、ズームリング2に形成され、図1におけるズームレンズユニット1の周方向に設けられている溝2Aに嵌入されている。なお、図4に示すズームリング2の断面形状のみでは溝2Aを「溝」と表現するのは適切ではないとも言える。しかし、図4に示すズームリング2と隣接して配置される部材Yの断面高さ寸法がズームリング2の断面高さ寸法(最大値)と同等である。そのため、そのズームリング2の断面高さ寸法(最大値)よりも断面高さ寸法が小さい部分(溝2A)を、部材Yの壁面Y1と一緒に見て「溝」と表現している。
【0023】
目印部材3とズームリング2との間には、付勢部材であるコイルばね4が図3における上下2箇所に介在している。コイルばね4の一端4Aは、目印部材3の側に固定するように取り付けられている。コイルばね4の一端4Aとは反対側の他端4Bは、溝2Aと当接しつつ摺動可能な、図示を省略する球状部材が取り付けられている。ここで、コイルばね4は、図2に示す分解目印部材3A,3Bのそれぞれの長さ方向の中央に1つずつ固定されている。
【0024】
そして、コイルばね4が目印部材3と溝2Aとの間で圧縮され、目印部材3とズームリング2の双方を付勢している。そのコイルばね4の付勢力によって、目印部材3とズームリング2との相対位置を固定している。なお、図3および図4において溝2Aと目印部材3との間に隙間Xがあるのは、溝2Aと目印部材3との間にコイルばね4および図示を省略した球状部材が介在している分の隙間Xが生じるためである。
【0025】
目印部材3とズームリング2との相対位置が固定された状態では、ズームリング2を矢印Rに沿って回動させると、ズームリング2の回動に伴って目印部材3も一緒に回動する。また、ズームリング2を矢印Rに沿って回動させないように固定しつつ、目印部材3を矢印Rに沿ってズームリング2から独立して回動させることもできる。目印部材3が矢印Rに沿ってズームリング2から独立して回動する際には、上述の球状部材がズームリング2と摺動している。
【0026】
すなわち、この目印部材3は、ズームレンズユニット1の使用者の選択により、(1)ズームリング2の回動に伴った回動と、(2)ズームリング2の回動に伴わない回動の双方が可能である。そして、コイルばね4の付勢力が(1)の回動を可能としている。
【0027】
図5は、図1に示す領域Cの概要図である。使用者により、矢印R方向に沿ったズームリング2の回動の操作を受けると、回動の量に応じて変化する焦点距離が変化する。図5(A)は、使用者が気に入った焦点距離が決まった状態を示している。その状態では、指標線5(ズームリング2の回動によっても位置が変わらず固定されている線)が目盛Sにおける10と11の間を指し示している。使用者は、その状態のズームリング2が回動しないように固定しながら、目印部材3の目印3Cの位置を指標線5の位置に合わせるように目印部材3のみを矢印R方向に沿って回動させる(図5(B))。その後は、コイルばね4の付勢力によって、目印部材3とズームリング2との相対位置を固定した状態を保つ。すると、その後ズームリング2を使用者が気に入った焦点距離とは別の焦点距離に合わせるように回動しても、もう一度図5(B)に示すように目印3Cの位置を指標線5の位置に合わせることで、使用者の好みの焦点距離を容易に再現することができる。
【0028】
(本発明の実施の形態によって得られる主な効果)
上述のように、本発明の実施の形態に係るズームレンズユニット1は、一度合わせた焦点距離の再現が容易である。同様に、本発明の実施の形態に係る目印部材3も、ズームレンズユニット1の使用の際に、一度合わせた焦点距離の再現を容易にする。
【0029】
また、コイルばね4の他端4Bには、溝2Aと当接しつつ摺動可能な、図示を省略する球状部材が取り付けられている。その球状部材を用いているため、他端4Bと溝2Aの摺動が非常に滑らかに行われ、使用者の操作性が良好である。
【0030】
また、目印部材3は、ズームリング2が有する、ズームレンズユニット1の周方向に形成されている溝2Aに嵌り込んでいる。そのため、コイルばね4の他端4Bと溝2Aとが当接しつつ摺動した場合に、溝2Aが目印部材3のガイドとなって、位置ずれ等が生じにくい。
【0031】
(他の形態)
上述した本発明の実施の形態に係るズームレンズユニット1および目印部材3は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々の変形実施が可能である。
【0032】
たとえば、コイルばね4の他端4Bには、溝2Aと当接しつつ摺動可能な、図示を省略する球状部材が取り付けられている。しかし、その球状部材は必須の構成部材ではないため、省略することができる。また、その球状部材に代えて板状部材等をコイルばね4の他端4Bに固定し、その板状部材の板面等で溝2Aと当接しつつ摺動するようにしても良い。
【0033】
さらには、付勢部材であるコイルばね4も必須の構成部材ではないため、省略することができる。また、コイルばね4等の付勢部材は、コイルばね4の一端4A側がズームリング2に固定するように取り付けられており、コイルばね4の他端4B側が目印部材3と当接しつつ摺動するようにしても良い。また、付勢部材はコイルばね4に限定されず、板ばね等とすることができる。
【0034】
また、ズームレンズユニット1は、指標線5を有している。しかし、指標線5は、ズームレンズユニット1の必須の構成要素ではないため、設けないこととしてもよい。目印部材3の目印3Cの位置は、指標線5ではなく、ズームレンズユニット1の他の構成部材の部分に位置を合わせる等することで、一度合わせた焦点距離の再現は可能である。
【0035】
また、目印部材3は、分解目印部材3Aと分解目印部材3Bとに分解できる構成である。しかし、このような構成は採用せず、分解目印部材を3つ以上で構成してそれらを組み立てて目印部材3としたり、円環状の1つの部材等で目印部材3を構成してもよい。また、コイルばね4は、分解目印部材3A,3Bのそれぞれの長さ方向の中央に1つずつ固定されている。しかし、コイルばね4を固定する数、配置位置等は適宜設定できる。
【0036】
また、図3および図4に示すように、コイルばね4は、図1におけるズームレンズユニット1の径方向にズームリング2と目印部材3を付勢している。しかし、コイルばね4等の付勢部材は、その方向以外の方向でズームリング2と目印部材3を付勢しても良い。
【0037】
たとえば、図6は、本発明の実施の形態に係るズームレンズユニット1の変形例を示す図であり、ズームレンズユニット1の図4に相当する部分を示す図である。ここで、本発明の実施の形態に係るズームレンズユニット1の変形例に係るズームレンズユニット11は、その長さ方向(図1における縦方向)にズームリング2と目印部材3を付勢している。
【0038】
図6では、ズームレンズユニット11について、ズームレンズユニット1におけるものと同様の構成部材等にはズームレンズユニット1における符号を付している。そして、ズームレンズユニット1とズームレンズユニット11とで共通する構成部材等については説明を省略する。
【0039】
図6において、コイルばね4は、ズームレンズユニット11の長さ方向(図1における縦方向または上下方向)にズームリング2と目印部材3の間に介在し、それらを付勢している。そのため、溝2Aと目印部材3との間に隙間Xは無く、隙間Xは、ズームレンズユニット11の長さ方向におけるズームリング2と目印部材3の間にある。
【0040】
このズームレンズユニット11における目印部材3も、ズームレンズユニット1と同様に、その使用者の選択により、(1)ズームリング2の回動に伴った回動と、(2)ズームリング2の回動に伴わない回動の双方が可能である。そして、コイルばね4の付勢力が(1)の回動を可能としていることもズームレンズユニット1の場合と同様である。
【0041】
また、目印部材3は、ズームリング2が有する、ズームレンズユニット1の周方向に形成されている溝2Aに嵌り込んでいる。しかしながら、この溝2Aは、ズームレンズユニット1の必須の構成要素ではないため、設けないこととしてもよい。そして本発明の実施の形態では、ズームリング2と部材Yとを合わせて溝2Aが構成されることとしているが、ズームリング2単体で溝2Aと同等の溝を設けるようにしても良い。さらに、ズームレンズユニット11の溝2Aについても、ズームリング2単体で溝2Aと同等の溝を設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0042】
1,11 ズームレンズユニット
2 ズームリング
3 目印部材
4 コイルばね(付勢部材)
S 目盛
図1
図2
図3
図4
図5
図6