(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係るカード印刷装置を、実施例の印刷装置91により説明する。印刷装置91は、インクリボン81のインクを転写フィルム82に熱転写して転写像を形成し、さらに転写フィルム82に形成した転写像を被印刷体であるカードCに再転写して印刷する装置である。カードCは、例えば、ICカードである。
【0012】
図1及び
図2を参照して、印刷装置91の全体概略構成を説明する。
図1は、印刷装置91の全体の構成を示す概略構成図であり、
図2は印刷装置91の構成を示すブロック図である。
図1において、カードCの符号は、搬送経路上の位置に対応してC1,C2,・・・,C7とし、以下の説明では適宜( )付きで示している。また、説明の便宜上、上下左右の各方向を
図1に矢印で規定する。前後方向は、
図1における紙面表裏方向であり表方向が前方向である。
【0013】
印刷装置91は、本体ケース91a,ホッパ部AR1,反転部AR2,姿勢矯正部AR3,再転写部AR4,排出部AR5,転写部AR6,及び制御部92を備える。
【0014】
ホッパ部AR1は本体ケース91aの上部に配置されており、複数のカードC(C1)を収容可能なカードホッパ1と、ピックアップローラ11及びクリーニングローラ組12とを有する。
ピックアップローラ11は、カードホッパ1の最右にある一枚を下方へ移送する。ピックアップローラ11により下方に移送されたカードC(C2)は、クリーニングローラ組12によって表裏面の塵埃などが除去されて、下方の反転部AR2に送出される。この例において、カードCは、カードホッパ1に、
図1の上下方向が短手かつ前後方向が長手となる姿勢で収容され、短手方向に搬送される。
【0015】
印刷装置91は、カードCの搬送経路として、反転部AR2から
図1の左方へ水平に延びる第1パスである排出パスPt1と、反転部AR2から
図1の左下方へ傾斜して延びる第2パスである再転写パスPt2とを有する。
反転部AR2は、第1反転ローラ組21及び第2反転ローラ組22を有する反転機2を備える。第1反転ローラ組21と第2反転ローラ組22とはカードC(C3)の短手方向の一端側と他端側の部位をそれぞれ挟むように離隔して配置されている。
【0016】
第1反転ローラ組21は、反転駆動ローラ21aと、反転駆動ローラ21aを押圧する反転従動ローラ21bとを有する。
第2反転ローラ組22は、反転駆動ローラ22aと、反転駆動ローラ22aを押圧する反転従動ローラ22bとを有する。
【0017】
第1反転ローラ組21及び第2反転ローラ組22は、反転駆動ローラ21a及び反転駆動ローラ22aが、それぞれモータM6及びモータM4(
図2参照)により駆動され、反転機2はモータM5(
図2及び
図4参照)によって軸線CL2(
図1及び
図4参照)まわりに回動する。
モータM4〜M6の回転動作及び回転方向は、制御部92により制御される。
これにより、反転部AR2は、反転機2がホッパ部AR1から送出されたカードC(C2)を受け入れると共に、受け入れた後に回動して、カードCの表裏を反転させることができる。また、反転部AR2は、受け入れたカードC(C3)を、排出パスPt1及び再転写パスPt2のいずれかに送出できる。
【0018】
反転機2の回動位置に応じて、第1反転ローラ組21及び第2反転ローラ組22のうちの姿勢矯正部AR3側に位置する一方が、姿勢矯正部AR3に共有される。
図1では、第2反転ローラ組22が姿勢矯正部AR3に含まれている。
図4に示されるように、第2反転ローラ組22は、搬送するカードCの前後方向の概ね中央部位を挟んで搬送する。
図4には示されていない第1反転ローラ組21も同じである。
【0019】
反転機2は、ホッパ部AR1から送出された未印刷の、又は一面のみに印刷されたカードC(C2)を受け入れて保持すると共に、回動してこれから印刷する印刷面Cbが
図1の下側となる向きにする。次いで、反転機2は、保持したカードC(C3)を再転写パスPt2に送出する。
再転写パスPt2は、反転部AR2側から順に、姿勢矯正部AR3と再転写部AR4とを有する。
姿勢矯正部AR3は、カードCに対し、搬送方向に直交する方向(幅方向)の位置決め動作となる姿勢矯正動作を実行し、姿勢矯正したカードCを再転写部AR4へ投入する。
【0020】
カードCへの印刷を行う印刷部として機能する再転写部AR4は、ヒータ41aを内蔵した再転写ヒートローラ41と、再転写ヒートローラ41を押圧しながら従動するバックローラ42を有する。
再転写ヒートローラ41は、モータM3の動作により回転する。モータM3及びヒータ41aの動作は、制御部92により制御される。
図1に示されるように、再転写部AR4は、再転写ヒートローラ41とバックローラ42との間に、転写フィルム82及びカードC(C4)を挟んで密着させつつ搬送する。そして、再転写部AR4は、搬送中のカードC(C4)の印刷面Cbに、転写フィルム82に形成されている転写像を、ヒータ41aの熱によってカードC(C4)の印刷面Cbに転写することで印刷する。転写フィルム82の転写像は、転写部AR6で予め形成される。
【0021】
転写部AR6は姿勢矯正部AR3の下方に配置されている。転写部AR6は、サーマルヘッド61及びサーマルヘッド61に対し圧着可能に離接するプラテンローラ62を有する。
転写部AR6は、サーマルヘッド61とプラテンローラ62との間にインクリボン81と転写フィルム82とを挟んで密着させつつ搬送する間に、再転写部AR4においてカードC(C4)に印刷する画像を、サーマルヘッド61の動作によりインクリボン81から転写フィルム82に熱転写する。
【0022】
インクリボン81は、サーマルヘッド61とプラテンローラ62との間を通してインク第1ボビン81aとインク第2ボビン81bとの間に掛け渡されている。
転写フィルム82は、サーマルヘッド61とプラテンローラ62との間を通してフィルム第1ボビン82aとフィルム第2ボビン82bとの間に掛け渡されている。転写フィルム82は、再転写部AR4の再転写ヒートローラ41とバックローラ42との間にも通されている。
【0023】
再転写部AR4において、転写像が転写によって印刷面Cbに印刷されたカードC(C4)は、再転写パスPt2を逆送されて反転機2に戻される。
カードCへの印刷が片面印刷の場合、反転機2に戻されたカードC(C5)は、反転機2により排出パスPt1に投入される。排出パスPt1に投入されたカードC(C6)は、排出パスPt1が有する複数の排出ローラ組51によって
図1の左方に搬送され、排出口91bから本体ケース91aの外部に片面印刷済みのカードC(C7)として排出される。
【0024】
カードCへの印刷が両面印刷の場合、反転機2に戻されたカードC(C5)は、反転機2により反転されて、再度、再転写パスPt2に投入される。そして、再転写部AR4において、すでに印刷された第1の面とは反対側の第2の面に転写により印刷された後、再び反転機2に戻される。
その後、反転機2に再び戻されたカードC(C5)は、反転機2によって排出パスPt1に投入され、排出口91bから両面印刷済みのカードC(C7)として排出される。
カードCの搬送のための各ローラ及び各ボビンの動作,転写のための再転写ヒートローラ41、並びに、サーマルヘッド61及びプラテンローラ62の動作は、制御部92により制御される。
各ローラは、カードCと接触する外周部がゴムなどの高い摩擦係数が得られる材質で形成されている。
【0025】
図2に示されるように、制御部92は、中央処理装置(CPU)921,記憶部922,及び入出力部923を有し、カード姿勢矯正装置3を含むカード印刷装置91の動作を制御する。以下、カード姿勢矯正装置3を単に姿勢矯正装置3と称する。
【0026】
上述の構成により、印刷装置91は、カードCに対し、その片面又は両面に転写によって印刷することができる。
次に、姿勢矯正部AR3の構成について、
図3〜
図7を主に参照して詳述する。
図3は、姿勢矯正部AR3が備える姿勢矯正装置3の主要部の斜視図であり、
図4は、姿勢矯正装置3の平面図である。
図3には、再転写部AR4における再転写ヒートローラ41及びバックローラ42も併せて示されている。
図4には、再転写部AR4における再転写ヒートローラ41及びバックローラ42に加えて、姿勢矯正部AR3に含まれる、反転機2における第2反転ローラ組22も併せて示されている。
図5〜
図7は、姿勢矯正装置3が有する間欠ローラ32aのそれぞれ第1〜第3の回転位置を示す模式的側面図である。
説明の便宜のため、上下左右前後の各方向を、
図3に矢印で示す方向に規定する。ここで左右方向は便宜的に再転写パスPt2の延在方向とし、上下方向はそれに直交する方向とする。
【0027】
図4に示されるように、姿勢矯正装置3は、本体ケース91aにおいて前後に離隔して対向するよう立設された一対のフレーム36によって支持されている。後側のフレーム36を後フレーム36aとし前側のフレーム36を前フレーム36bとする。
図3においてフレーム36は不図示である。
【0028】
図4に示されるように、姿勢矯正部AR3の姿勢矯正装置3は、再転写部AR4に近い側から、フレーム36a,36bに回転自在に支持された保持ローラ組31と間欠ローラ組32とを有する。また、姿勢矯正装置3は、反転部AR2における第2反転ローラ組22を含んでおり、第2反転ローラ組22は
図4の右方に示されている。すなわち、姿勢矯正部AR3は、第1及び第2反転ローラ組の一方(第1ローラ組とも称する),間欠ローラ組32(第2ローラ組とも称する),及び保持ローラ組31(第3ローラ組とも称する)を有する。
保持ローラ組31,間欠ローラ組32,及び第2反転ローラ組22は、左右方向である搬送方向に対して直交する前後方向に軸線が延びるシャフト31a1,32a1,22a1を有する。シャフト31a1,32a1,22a1は、それぞれモータM2,モータM1,及びM4によって回転駆動される。
【0029】
保持ローラ組31は、シャフト31a1を有する保持ローラ31aと、一対の従動ローラ31b,31bとを有する。
保持ローラ組31の保持ローラ31aは、カードCの前後方向となる長手の長さよりも長くカードCの長手範囲を全て含むように配置されたローラ部31a2を有する。
一対の従動ローラ31b,31bは、保持ローラ31aの上方に軸方向に離隔して配置されており、保持ローラ31aを押圧して従動的に回転する。一対の従動ローラ31b,31bは、カードCの長手方向である搬送方向に直交する幅方向の両縁部近傍を保持ローラ31aとの間で挟む。
【0030】
保持ローラ組31によって搬送中のカードCは、幅方向に離隔した複数の箇所を摩擦係数の高い材質の保持ローラ31a及び従動ローラ31b,31bに挟まれて搬送されている。これにより、カードCは、搬送中に旋回不能となり、保持ローラ組31に投入された姿勢を維持したまま保持ローラ組31から下流側へ送出される。
【0031】
間欠ローラ組32は、間欠ローラ32aと、間欠ローラ32aの上方に配置された従動ローラ32bとを有する。
図5に示されるように、間欠ローラ32aは軸方向視で円形ではなく軸線まわりに所定の角度だけ離隔した位置に、共通円D32の円弧となる外形を有する突出部32a2,32a3を有する。この例において所定の角度は180°である。突出部32a2,32a3以外の部分は、共通円D32よりも小さい外形で形成されている。
保持ローラ組31と間欠ローラ組32との間の搬送方向の距離は、カードCの搬送方向の長さよりも十分短くして、カードCをいずれかのローラ組により必ず搬送できるように設定する。
【0032】
図5に示されるように、間欠ローラ32aと従動ローラ32bとの間に進入したカードCの上面Ccには、従動ローラ32bが常に接触している。
一方で、下面である印刷面Cbは、間欠ローラ32aの回転に伴い、突出部32a2及び突出部32a3のいずれかが接触して従動ローラ32b側に押圧する接触状態と、いずれも接触していない非接触状態とが交互に生じる。
【0033】
図4に示されるように、後フレーム36aと前フレーム36bとの間には、ベース33が設けられている。ベース33は、後フレーム36aに固定された第1壁部331と、前フレーム36bに固定された第2壁部332とを有する。
【0034】
図3及び
図4に示されるように、第1壁部331の前方側には、カードCの搬送方向である左右方向に延びる第1ガイド壁である基準ガイド壁34が並行して配置されている。
基準ガイド壁34は、左部に形成された切り込み34dに第1壁部331に設けられたピン335が係合して左右方向に移動不能、かつ前後方向に移動可能とされている。
基準ガイド壁34と第1壁部331との間には、搬送方向に離隔して、付勢部材としてのコイルばね341,342が圧縮して介装されている。
基準ガイド壁34は、圧縮されたコイルばね341,342の前方へ向かう弾性反発力によってベース33に立設された第1支持壁333に突き当てられている。これにより、基準ガイド壁34の前後方向の位置が決められている。
図4に示されるように、基準ガイド壁34が第1支持壁333に突き当てられた状態での基準面34aの前後方向位置を、基準前後位置PRとする。
【0035】
基準ガイド壁34は、自然状態で第1支持壁333に突き当てられており、第1支持壁333に当接して上下左右方向に延在する基準面34aと、基準面34aの右方側及び左方側に形成され端部に向かうに従って後方へ傾くそれぞれ順行ガイド面34b及び逆行ガイド面34cを有する。
【0036】
基準ガイド壁34は、コイルばね341,342の弾性反発合力に抗する力によって後方に移動可能である。また、基準ガイド壁34は、コイルばね341,342が左右に離隔して独立に配置されているため、それぞれの圧縮量を異ならせることで揺動も可能である。
【0037】
第2壁部332の後側には、カードCの搬送方向である左右方向に延びる第2ガイド壁である付勢ガイド壁35が並行して配置されている。
付勢ガイド壁35は、左部に形成された切り込み35dに第2壁部332に設けられたピン336が係合して左右方向に移動不能、かつ前後方向に移動可能とされている。
付勢ガイド壁35の右部には、第2壁部332との間に付勢部材としてのコイルばね351が圧縮して介装されている。
付勢ガイド壁35は、ピン336の位置P1を回動の概ね中心として
図3に示される矢印DRaのように回動可能である。また、付勢ガイド壁35は、コイルばね351の後方へ向かう弾性反発力によって
図4における反時計まわり方向に付勢されている。これにより、付勢ガイド壁35は、ベース33に立設された第2支持壁334に突き当てられ、前後方向の位置が決められている。
【0038】
付勢ガイド壁35は、自然状態で第2支持壁334に突き当てられており、第2支持壁334に当接して上下左右方向に延在する基準面35aと、基準面35aの右方側及び左方側に形成され端部に向うに従って後方に傾くそれぞれ順行ガイド面35b及び逆行ガイド面35cを有する。
【0039】
第1支持壁333及び第2支持壁334の上面は、カードCを支持すると共にカードCが搬送時に摺動する面としてそれぞれ第1摺動面333a及び第2摺動面334aとされている。
第1支持壁333に当接した基準ガイド壁34の基準面34aと、第2支持壁334に当接した付勢ガイド壁35の基準面35aとの間の前後方向距離は、カードCの前後方向の長さとなる長手の長さよりもわずかに小さい。
基準ガイド壁34を前方に付勢するコイルばね341の付勢力とコイルばね342の付勢力とを合わせた合力としての付勢力は、勢ガイド壁35を後方に付勢するコイルばね351の付勢力よりも十分に大きく設定されている。
換言するならば、基準ガイド壁34及び付勢ガイド壁35を、同じ距離だけそれぞれ前方及び後方に移動させるために必要な力は、付勢ガイド壁35の方が小さい。
【0040】
図4において、再転写部AR4におけるカードCへの転写動作では、カードCの印刷面Cbの搬送方向(左右方向)の転写位置は、センサ37によりカードCの搬送方向の位置を検出した時点からの保持ローラ組31の回転角度などに基づいて制御部92によって制御される。
一方、搬送方向に直交する方向の転写位置は、基準前後位置PRにカードCの幅方向の第1端部である後縁部Caが位置した状態を基準として設定されている。換言するならば、第1支持壁333に当接した基準ガイド壁34の基準面34aにカードCの後縁部Caが面当たりで当接するようにカードCの姿勢及び前後方向の位置を矯正する。そして、カードCを、矯正した姿勢及び前後方向の位置を維持したまま再転写部AR4に投入することで、搬送方向に直交する方向の転写位置を高精度に決めることができる。
【0041】
姿勢が矯正され前後方向位置が正規の位置に位置出しされたカードCを、以下、姿勢矯正済みのカードCと称し、適宜符号に(Ck)を付与して姿勢未矯正のカードCと区別する場合がある。
【0042】
図5に示されるように、姿勢矯正装置3は、カードCの搬送方向において、保持ローラ組31,間欠ローラ組32,及び反転機2の第2反転ローラ組22の相互間距離が、距離Lf,長さLc,距離Lh,及び距離Lmを用いて、次の(式1)及び(式2)で規定される所定の関係を有するように設定されている。
距離Lh<距離Lf−長さLc ・・・ (式1)
距離Lm<長さLc ・・・ (式2)
【0043】
距離Lfは、第2反転ローラ組22においてカードCを挟持可能な最も間欠ローラ組32側の位置と、保持ローラ組31においてカードCを挟持可能な最も間欠ローラ組32側の位置との間の搬送方向の距離であり、カード非保持距離とも称する。
距離Lcは、カードCの搬送方向の長さである。この例ではカードCの短手方向の幅であり、カード短手長とも称する。
距離Lhは、カードCを間欠ローラ32aの1つの突出部(例えば突出部32a2)の接触によって搬送方向に移動可能な最大距離である。すなわち、
図5に示される位置Rt1と位置Rt2との間の搬送方向の距離であり、間欠ローラ搬送距離とも称する。
距離Lmは、第2反転ローラ組22においてカードCを挟持可能な最も間欠ローラ組32側の位置と、位置Rt1との間の搬送方向距離であり、搬送可能化距離とも称する。
距離Lmは、カードCを第2反転ローラ組22及び間欠ローラ組32の一方で搬送した後に連続して他方で搬送可能とするために設定する距離である。この設定によって、姿勢矯正部AR3の一方側から供給されたカードCは、必ず他方側へ搬出される。
【0044】
図5及び
図6に示されるように、位置Rt1及び位置Rt2は次のように説明される。
すなわち、位置Rt1は、間欠ローラ32aが回転したときに、突出部32a2,32a3の一方(ここでは突出部32a2)がカードCの下面である印刷面Cbに対して接触を開始する位置と離脱する位置とのうちの最も第2反転ローラ組22側となる位置である。
位置Rt2は、上記の接触を開始する位置と離脱する位置とのうちの最も保持ローラ組31側となる位置である。
【0045】
(式1)により、第2反転ローラ組22と保持ローラ組31との間に搬送方向長さの全体が位置するカードCに対し、間欠ローラ組32の間欠ローラ32aが1回転する間にカードCが間欠ローラ組32によって搬送されない時間が確保される。
このように、第2反転ローラ組22と保持ローラ組31との間に搬送方向長さの全体が位置するカードCに対し、間欠ローラ組32によってカードCが搬送されない状態及び時間のことを、それぞれ搬送不能状態及び搬送不能時間と称し、搬送される状態及び時間のことを、それぞれ搬送可能状態及び搬送可能時間と称する。
(式2)により、姿勢矯正部AR3に対し一方側から供給されたカードCが、第2反転ローラ組22及び間欠ローラ組32によって必ず他方側へ搬出できるようになる。
【0046】
以上のように構成された姿勢矯正装置3によって、反転機2から送出されたカードCは、次の
図4及び
図8〜
図13を参照して説明する姿勢矯正動作により姿勢を矯正されて再転写部AR4に投入される。
姿勢矯正動作は、反転機2から姿勢矯正装置3に送出されるカードCの搬送方向に直交する前後方向の位置を、カードCの後縁部Caを基準前後位置PRにある基準面34aに面接触させることで位置出しする動作である。
図8〜
図13において、支持ローラ組31,間欠ローラ組32,第2反転ローラ組22のシャフトは、描画を簡単にするため、全部又は一部が適宜省略されている。
【0047】
まず、
図4に示されるように、反転機2から、カードCが、後縁部Caが基準前後位置PRよりも後方側に寄った姿勢で姿勢矯正装置3に送出される第1の動作態様の場合を説明する。
カードCは、反転機2において、モータM4により駆動される第2反転ローラ組22により、左方の姿勢矯正部AR3へ向け送出される(矢印DRb参照)。
カードCは、後方側に寄っているため、後縁部Caの左後角部Carが、基準ガイド壁34の順行ガイド面34bに当接する。
姿勢矯正装置3の間欠ローラ組32は、モータM1の動作によって、カードCを左方へ送る方向に回転を開始している(
図8:DRd1参照)。
【0048】
カードCが第2反転ローラ組22によってさらに左方へ搬送されると、コイルばね341,342の合力としての付勢力が比較的大きく設定されているため、カードCは基準ガイド壁34を前方に付勢する付勢力に抗することができず、左後角部Carが基準ガイド壁34の順行ガイド面34bを滑りながら搬送される。
ここで、
図8に示されるように、第2反転ローラ組22がカードCの前後方向の中央部のみを挟んでいるため、カードCは、搬送されながら旋回可能である。すなわち、カードCは、矢印DRb1に示されるように反時計まわり方向に旋回して姿勢を傾けることができる。そのため、カードCは、反時計まわり方向に傾きながら左方へ搬送され(矢印DRd参照)、カードCの左前角部Cafは、付勢ガイド壁35に当接する。
【0049】
さらに搬送が継続すると、付勢ガイド壁35が基準ガイド壁34よりも小さい力で付勢力に抗して移動可能であることから、
図9に示されるように、付勢ガイド壁35は、カードCの左前角部Cafによって前方に押されて時計まわり方向に回動する(矢印DRf参照)。すなわち、付勢ガイド壁35は、回動してカードCの矢印DRgで示される更なる左方搬送を許容する。
間欠ローラ組32の矢印DRg1で示される回転は継続している。
基準ガイド壁34の基準面34aの位置は、コイルばね351,352の前方への付勢力が十分大きいことから、基準前後位置PRにて維持されている。
【0050】
さらにカードCが左方に搬送されると、上述の(式2)の規定により、搬送の駆動源は第2反転ローラ組22から間欠ローラ組32に引き継がれる。
このとき、間欠ローラ組32の間欠ローラ32aが搬送不能状態にあれば、姿勢矯正装置3は姿勢矯正動作を実行し、搬送不能状態になければ、姿勢矯正装置3は間欠ローラ32aが若干回転して搬送可能時間が経過し搬送不能状態になった後、姿勢矯正動作を実行する。
ここでは間欠ローラ組32の回転によってカードCが若干の距離だけ搬送された後に
図10及び
図11に示される搬送不能状態になったとする。
【0051】
図11は、
図10におけるS11−S11位置での断面図であり、搬送不能状態のカードC及び間欠ローラ32aの上下方向の位置関係を示している。
図11に示されるように、間欠ローラ32aは、突出部32a2,32a3がカードCに接触しない回転位置にある。また、間欠ローラ組32の従動ローラ32bは、カードCに接触しているものの、実質的にカードCを下方へ付勢することはなく、従動ローラ32bとカードCとの間に生じる摩擦力は無視できる。
【0052】
すなわち、搬送不能状態になると、
図10及び
図11に示されるように、カードCは、第2反転ローラ組22及び間欠ローラ組32のいずれのローラ組によっても挟まれず、第1支持壁333の第1摺動面333a及び第2支持壁334の第2摺動面334aに自重で乗っているのみの実質的な自由状態になる。
これにより、カードCは、幅方向の第2端部である前縁部Cdが当接している付勢ガイド壁35からの矢印DRhで示される付勢力によって矢印DRjのように後方へ容易に移動し、後縁部Caの端面が基準ガイド壁34の基準面34aに沿って面当たりで当接する。
この当接により、カードCは、前後方向において後縁部Caが基準前後位置PRに面接触で位置だしされると共に搬送方向に平行になる姿勢とされ、姿勢矯正済みのカードC(Ck)となる。
付勢ガイド壁35がカードCを後方へ付勢するコイルばね351による付勢力(第1の付勢力)は、基準ガイド壁34を第1支持壁333に押し付けるコイルばね341,342の合力による付勢力(第2の付勢力)よりも小さい。これにより、付勢ガイド壁35がカードCを基準ガイド壁34へ第1の付勢力で付勢することで、カードCは、第1の付勢力よりも大きい第2の付勢力で第1支持壁333に押し付けられている基準ガイド壁34によって良好に位置だしされる。
【0053】
カードCの位置だしの動作、すなわち姿勢矯正動作は、間欠ローラ組32及びカードCが搬送不能状態になったら直ちに実行される。また、姿勢矯正動作は短時間で終了し、搬送不能時間を超えて実行されることはない。
【0054】
姿勢矯正動作後、間欠ローラ32aがさらに回転すると、突出部32a2,32a3のいずれかがカードC(Ck)の印刷面Cbに接触してカードCの左方への搬送が再開する。
カードC(Ck)が左方へ搬送されると、保持ローラ組31に挟まれる位置に達し、
図12に示されるように、保持ローラ組31によって左方への搬送が継続され(矢印DRm参照)、再転写部AR4へ投入される。
保持ローラ組31は、軸方向に離隔した一対の従動ローラ31bによって、カードC(Ck)を、幅方向の概ね両端部側を挟んで搬送する。そのため、予期せぬ外力がカードC(Ck)に加わったとしても、カードC(Ck)は姿勢や前後方向の位置が変わることなく維持されて再転写部AR4に投入される。
【0055】
再転写部AR4へ投入されたカードC(Ck)は、姿勢矯正部AR3において、後縁部Caが搬送方向に平行とされると共に、搬送方向に直交する方向(上下方向)において高精度に位置だしされているので、その印刷面Cbの所定の位置に、高い位置精度で転写フィルム82の転写像が確実に転写印刷される。
【0056】
以上説明した第1の動作態様に対し、反転機2からカードCが、その後縁部Caが基準前後位置PRよりも前方側に寄って姿勢矯正装置3に送出される第2の動作態様の場合も、同様に位置決め動作がなされる。
図13は、第2の動作態様において、カードCの搬送駆動源が、第2反転ローラ組22から間欠ローラ組32へ移行される状態を示す図であり、第1の動作態様における
図9の状態に概ね対応する図である。
【0057】
図13に示されるように、カードCは、反転機2側から、正規の位置よりも前方に寄った位置(一点鎖線で記載)で姿勢矯正装置3に投入される。そのため、カードCは、左前角部Cafが付勢ガイド壁35の順行ガイド面35bに当接する。その後、カードCの搬送に伴い、付勢ガイド壁35は、位置P1を中心にコイルばね351の付勢力に抗して
図13の時計まわり方向に回動させる。また、カードC自体も、第2反転ローラ組22がカードCの前後方向の中央部分のみを挟んでいることから、
図13の時計まわり方向に回動しつつ搬送される(矢印DR2参照)。
【0058】
基準ガイド壁34は、既述のようにコイルばね341,342の合力としての付勢力が大きいことから、カードCによって後方に押されながらも第1支持壁333に当接した状態で維持される。
カードCの搬送駆動源が第2反転ローラ組22から間欠ローラ組32に受け渡された後は、カードCは、既述の第1の動作状態と同様に、搬送不能状態において直ちに姿勢矯正される。このように、第2の動作態様においても、カードCの姿勢矯正動作は安定して確実に実行される。
【0059】
姿勢矯正部AR3は、再転写部AR4において転写像が転写されたカードCを、反転部AR2に向けて戻し搬送する第3の動作態様でも、反転機2へのカードCの投入姿勢及び投入位置が所定の姿勢及び位置となるように矯正する。以下、カードCの再転写部AR4から反転部AR2に向けた搬送を、便宜的に逆送と称する。
図14〜
図17は、姿勢矯正部AR3におけるカードCの逆送における動作を説明する動作図である。ここでは、カードCが、再転写部AR4から、予期せぬ理由で後方側に寄った姿勢で姿勢矯正部AR3に送出された場合を説明する。
【0060】
図14に示されるように、カードCは、保持ローラ組31によって、
図14の右方に搬送され、右後角部Car2が基準ガイド壁34の逆行ガイド面35cに当接する。
保持ローラ組31は、既述のように、カードCの前後方向の両端部側を挟み、
図14の右方に搬送している(矢印DR4参照)。従って、カードCは、搬送姿勢が旋回などにより変わることはなく、コイルばね341,342の付勢力に抗してそのまま姿勢を維持して搬送される。
すなわち、
図15に示されるように、基準ガイド壁34の左方側が回動中心P2を中心として
図15における時計まわりに回動し(矢印DR5)、それと共に基準ガイド壁34全体も後方に退避するように移動する(矢印DR6)。カードCの右方への移動は姿勢を維持したまま継続する(矢印DR7参照)。
この状態において、カードCは後方に寄ったままであることから、カードCの前縁部Cdと付勢ガイド壁35の基準面35aとの間には、距離Lj2の隙間が生じている。
【0061】
図16に示されるように、カードCは、さらに右方への移動を継続する。基準ガイド壁34はカードCに押されて後方に移動し、第1支持壁333との間に前後方向の距離Lj3の隙間が生じている。また、カードCの前縁部Cdと付勢ガイド壁35の基準面35aとの間の距離Lj2の隙間も維持される。
【0062】
さらにカードCの右方への移動が進行すると、カードCは、保持ローラ組31によって挟まれる搬送から開放され、間欠ローラ組32による搬送に移行する。
既述のように、間欠ローラ組32によるカードCの搬送において、間欠ローラ32aの回動位置によってカードCが実質的に自由状態となる搬送不能時間が必ず生じる。
図17に示されるように、第3の動作態様においても、搬送不能時間において姿勢矯正動作が実行される。
【0063】
すなわち、カードCが、搬送可能時間が経過して搬送不能時間に入り搬送から開放されることで、ばね341,342によって前方に付勢されている基準ガイド壁34は、カードCを前方に押して第1支持壁333に当接する。これによりカードCは、基準ガイド壁34の基準面34aに矢印DR15のように押され前方に移動する。
前方に移動したカードCの前縁部Cdは、付勢ガイド壁35から上方に付勢され、カードCは、後縁部Caが基準ガイド壁34の基準面34aに面当てして当接し、基準前後位置PRに位置する。
この姿勢矯正動作後、回転する間欠ローラ32aの突出部32a2,32a3のいずれかがカードCの下面に接触して右方への搬送が再開する(矢印DR13参照)。
【0064】
このように、姿勢矯正装置3は、カードCの前後方向の位置決めである姿勢矯正を、カードCの順行時のみならず逆行時にも行ってカードCを反転機2に投入する。これにより、印刷装置91は、カードCに印刷した転写像の印刷位置及び印刷姿勢が高精度に決められると共に、カードCの搬送が全体的に良好に実行され搬送の不具合が生じにくい。
【0065】
上述のように、姿勢矯正装置3及びそれを備えた印刷装置91は、カードCの搬送方向に直交する方向の位置決めを、カードCを搬送するローラ組に間欠ローラを用いてカードCが実質的に自由状態となる搬送不能状態が所定の時間だけ搬送不能時間として生じるようになっている。そして、搬送不能時間内に、付勢ガイド壁によってカードCを搬送方向に直交する方向に移動させて基準ガイド壁に面当てすることで姿勢矯正を行うようになっている。
【0066】
すなわち、カードCに対し外部から摩擦力が実質的に与えられない状態を所定時間作り、その状態下でカードCの搬送方向に直交する移動を実行して姿勢矯正するようになっている。これにより、姿勢矯正装置3及びそれを備えたカード印刷装置91は、カードの材質,厚さ,表面粗さ,表面処理の状態などの種類によらず、カードの姿勢矯正を安定して良好に行うことができる。
【0067】
上述のように、姿勢矯正装置3におけるカードCの姿勢矯正動作は、カードの種類に応じて調整位置を変えたり付勢力を変えるなどの機構的な調整が不要である。従って、制御部92の記憶部922には基本的な動作プログラムが記憶されているのみである。これにより、カード印刷装置91は、大容量の記憶素子や高性能のCPUを用いることなく制御部92が構成できるのでコストアップが抑制される。
【0068】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0069】
(式1)において、距離Lhが短いほど、搬送不能状態から脱出するための間欠ローラ組32の回転角度が大きくなり、カードCを搬送するために要する時間が長くなる。例えば、搬送不能状態から脱出するために間欠ローラ32aが2回転以上必要になる場合もあり得る。
そこで、距離Lhについて、
距離Lh<(距離Lf−長さLc)<距離Lh×2 ・・・ (式3)
と規定する。
これにより、間欠ローラ32aの1回転の間に、必ず搬送不能時間を生じさせて姿勢矯正動作を実行しつつ、搬送の動力源を保持ローラ組31又は第2反転ローラ組22に確実に移行して搬送不能状態から脱出できるようになり、カードCの搬送効率が向上する。
【0070】
実施例における第1反転ローラ組21及び第2反転ローラ組は、それぞれ別のモータM6及びモータM4で駆動するものに限らず、一つのモータで駆動するものであってもよい。また、モータM1〜M4,M6はいずれかを共用する、或いは一つのモータで駆動できるように駆動系を構成してもよい。
また、印刷装置91は、カードCに対し片面印刷のみ行うものであってもよい。この場合、モータM5は不要である。
【0071】
上述の姿勢矯正装置3は、カード印刷装置への適用に限定されるものではなく、カードリーダライタなどの他のカード搬送機構を有する装置に適用可能である。
姿勢矯正装置3としてカードCを短手方向に搬送する例を説明したが、長手方向に搬送するものであってもよい。
保持ローラ組31の従動ローラ31bは、幅方向に離隔したものに限定されず、幅方向に一体的に延びるものであってもよい。
【解決手段】カード(C)を搬送方向に直交する幅方向中央部位を挟んで搬送する第1ローラ組(22)と、第1ローラ組(22)に対し搬送方向一方向側に離隔配置され1回転間にカード(C)を接触搬送する搬送可能時間と非接触の搬送不能時間とを生じる間欠ローラ(32a)を有する第2ローラ組(32)と、第2ローラ組(32)に対し一方向側に離隔配置されカード(C)を挟み搬送する第3ローラ組(31)と、カード(C)の幅方向の第1端部(Ca)が当接してカード(C)を幅方向に位置決めする基準ガイド壁(34)と、第2端部(Ce)を基準ガイド壁(34)に付勢する付勢ガイド壁(35)とを備える。カード(C)は第2ローラ組(32)で搬送可能な位置にあるときの搬送不能時間に第1及び第3ローラ組(22)(31)で搬送不能かつ付勢ガイド壁(35)で付勢され基準ガイド壁(34)に当接して姿勢及び位置が矯正される。