特許第6588674号(P6588674)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6588674シール用接着剤組成物、及びプレススルーパック包装体
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  • 特許6588674-シール用接着剤組成物、及びプレススルーパック包装体 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588674
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】シール用接着剤組成物、及びプレススルーパック包装体
(51)【国際特許分類】
   C09J 127/06 20060101AFI20191001BHJP
   C09J 131/04 20060101ALI20191001BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20191001BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20191001BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20191001BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20191001BHJP
   C09J 127/22 20060101ALI20191001BHJP
   B65D 75/32 20060101ALI20191001BHJP
   B65D 83/04 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   C09J127/06
   C09J131/04
   C09J175/04
   C09J167/00
   C09J11/04
   C09J11/08
   C09J127/22
   B65D75/32
   B65D83/04 D
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-503574(P2019-503574)
(86)(22)【出願日】2018年6月12日
(86)【国際出願番号】JP2018022354
(87)【国際公開番号】WO2018230547
(87)【国際公開日】20181220
【審査請求日】2019年1月23日
(31)【優先権主張番号】特願2017-118638(P2017-118638)
(32)【優先日】2017年6月16日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】竹下 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 好樹
(72)【発明者】
【氏名】立花 真理
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−171947(JP,A)
【文献】 特開2012−001576(JP,A)
【文献】 特開2016−216063(JP,A)
【文献】 特開2000−044917(JP,A)
【文献】 特開2017−186468(JP,A)
【文献】 特開2014−069825(JP,A)
【文献】 特開昭57−073005(JP,A)
【文献】 特開2012−201839(JP,A)
【文献】 特開2018−058648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 127/06
B65D 75/32
B65D 83/04
C09J 127/22
C09J 131/04
C09J 167/00
C09J 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A)、フィラー(C)、ガラス転移温度(Tg)が−70〜20℃であるポリウレタン樹脂(D)及び/又はガラス転移温度(Tg)が−70〜20℃である結晶性ポリエステル樹脂(E)を含有することを特徴とするシール用接着剤組成物。
【請求項2】
前記フィラー(C)の平均粒子径が3〜15μmである請求項1に記載のシール用接着剤組成物。
【請求項3】
前記フィラー(C)がアクリル系架橋物、及び/又はシリカである請求項1又2に記載のシール用接着剤組成物。
【請求項4】
前記フィラー(C)が、球状フィラーである請求項1〜3の何れか1つに記載のシール用設着剤組成物。
【請求項5】
前記酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A)がマレイン酸変性塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、又はフマル酸変性塩化ビニル酢酸ビニル共重合体である請求項1〜の何れか1つに記載のシール用接着剤組成物。
【請求項6】
前記ポリウレタン樹脂(D)の多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が10以上である請求項1〜の何れか1つに記載のシール用接着剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜の何れか1つに記載のシール用接着剤組成物を、アルミ箔の少なくとも片面に塗布し、フィルムと貼りあわせたプレススルーパック包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品や食品等の包装形態であるアルミニウム箔を使用したプレススルーパック包装体(以下PTPという)において、蓋材であるアルミニウム箔と底材フィルムを接着させるヒートシールコート(熱接着剤層)向けシール用接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や食品等の包装形態の一つとして、底材と蓋材とを備えるPTP包装体が知られている。PTP包装体は、収納された内容物に対して底材の外側から蓋材の方向に力を加えて蓋材を破ることによって内容物を取り出すように構成されたものである。PTP包装体の蓋材は、蓋材フィルムとヒートシール層で構成される。蓋材フィルムは、現在、内容物を押し出すことによって容易に破れるという性質(プレススルー性)に優れた、アルミ箔、グラシン紙、熱可塑性樹脂の延伸フィルム等が用いられている(例えば、特許文献1)。
また、ヒートシール剤としてガラス転移温度が特定範囲のアクリル樹脂や、ポリエステル氏とフィラーから成るプレススルーパック包装体用蓋材に関する発明が成されている(例えば、特許文献2)。
また、アルミニウム箔に樹脂アンカー層を介して熱封かん性を付与する接着剤層を設けたPTP包装用蓋材に関する発明もなされている(例えば、特許文献3)。
【0003】
しかしながら、近年のPTP包装機の高速化に伴い、加工に十分な熱を付与できずに接着不良となるトラブルが散見される事から、接着性を重視するとライン処理スピードを低速にせざるを得なく、ラインの高速特性を生かせない事が問題点として挙げられる。
また、バーコード印刷や有効期限表示の視認性向上を目的とした白ベタ印刷仕様や、高機能を目的とした多層構造のフィルムの増加に伴い、熱伝導率が悪化する傾向にあり、接着不良に繋がりやすい事が挙げられる。
また、接着温度の低温化に伴い、低温度でのヒートシール適性を向上させる為にシール用接着剤成分を低Tg化した場合、保管等を目的にシール用接着剤を塗布した蓋材フィルムを一旦巻き取り、再度巻出したにブロキングの問題が生じ易く、従来技術を持っても十分な接着性と耐ブロキング性が両立できているとは決して言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−093727号公報
【特許文献2】特開2016−216063号公報
【特許文献3】特開2014−069825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、低温度でのヒートシール適性に優れ、耐ブロキング性に優れるシール用接着剤組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A)、フィラー(C)、ポリウレタン樹脂(D)及び/又はポリエステル樹脂(E)を含有することで前記課題を解決するに至った。
【0007】
即ち、本発明は酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A)、フィラー(C)、ポリウレタン樹脂(D)及び/又はポリエステル樹脂(E)を含有することを特徴とするシール用接着剤組成物に関する。
【0008】
また、本発明は更に前記酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A)より重量平均分子量が小さい塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(B)を含有するシール用接着剤組成物に関する。
【0009】
また、本発明は前記ポリウレタン樹脂(D)とポリエステル樹脂(E)のガラス転移温度(Tg)が−70〜20℃であるシール用接着剤組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、前記フィラー(C)の平均粒子径が3〜15μmであるシール用接着剤組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、前記フィラー(C)がアクリル系架橋物、及び/又はシリカであるシール用接着剤組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、前記塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(B)のISO1628−2により測定されるK値が、前記酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A)のK値より低いシール用接着剤組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、前記酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A)がマレイン酸変性塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、又はフマル酸変性塩化ビニル酢酸ビニル共重合体であるシール用接着剤組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、前記ポリウレタン樹脂(D)の多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が10以上であるシール用接着剤組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、前記ポリエステル樹脂(E)が結晶性を有するポリエステル樹脂であるシール用接着剤組成物に関する。
【0016】
更に、本発明はシール用接着剤組成物を、アルミ箔の少なくとも片面に塗布し、フィルムと貼りあわせたブリスターパック包装体に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、低温度でのヒートシール適性に優れ、耐ブロキング性に優れるシール用接着剤組成物を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ブリスターパック包装体の断面図を示すイラスト図である(破線楕円は錠剤を示す)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のシール用接着剤組成物は、酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A)、フィラー(C)、ポリウレタン樹脂(D)及び/又はポリエステル樹脂(E)を含有することを特徴とするものである。
【0020】
まず、本発明のシール用接着剤組成物で使用する酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(A)は、酸基含有とする事でアルミ製蓋材への接着性が向上する。
まず、低温ヒートシール条件下では、低Tgのポリウレタン樹脂(D)及び/又はポリエステル樹脂(E)が底材のポリ塩化ビニル(PVC)基材と接着し、また酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(A)はアルミ製蓋材と接着する。
一方で、高温ヒートシール条件下では、酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(A)と低Tgのポリウレタン樹脂(D)及び/又はポリエステル樹脂(E)いずれも底材のポリ塩化ビニル(PVC)基材と良く接着し、また酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(A)はアルミ製蓋材とよく接着する。
ブリスターパック包装体の断面図を示すイラスト図1を一例に説明すると、低温ヒートシール条件下(100℃以下)では、ポリ塩化ビニル(PVC)製底材3とヒートシールコート層2の3/2間の接着力よりも、ヒートシールコート層2とアルミ箔製蓋材1の2/1間の接着力が上回る傾向となり易い。
反対に高温ヒートシール条件下(120℃以上)では、ポリ塩化ビニル(PVC)製底材3とヒートシールコート(HS)層2の3/2間の接着力が、ヒートシールコート(HS)層2とアルミ箔製蓋材1の2/1間の接着力を上回る傾向となり易い。
低温ヒートシール時のPVC/HS剤間の接着力を(W)、低温ヒートシール時のHS剤/アルミ製蓋材間の接着力を(X)、高温ヒートシール時のPVC/HS剤間の接着力を(Y)、高温ヒートシール時のHS剤/アルミ製蓋材間の接着力を(Z)とすれば、本発明のシール用接着剤組成物により、W〜Zの接着力の関係は、(弱い)W<X<Z<Y(強い)の関係となる。
【0021】
また、更なる極低温度領域でのヒートシール性を付与する場合は、前記酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A)より重量平均分子量が小さい塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(B)を含有させることもできる。
実際の薬剤PTP包装機では、エンボス加工により蓋材側から底材側に基盤目状に押し出される状態となる。この様な加工では、薬剤PTPの十字線のエンボス部の底材である硬質塩化ビニル側への接着成分の流れ込みが重要であり、接着剤組成物を単純に柔らかくしただけでは流れ込みは不十分な場合がある。塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(B)の重量平均分子量が酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A)の重量平均分子量より小さい事で、低粘度化でき、薬剤PTPの十字線等エンボス部への流れ込みを促進させる事ができ、極低温度領域でのヒートシール適性を向上させる事ができる。
尚、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(B)のISO1628−2(プラスチック−毛細管形粘度計を用いたポリマー希釈溶液の粘度の求め方)により測定されるK値が、酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A)のK値より低いことがより好ましい。
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(B)のK値が、酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A)のK値より低い事で、より低粘度化でき、薬剤PTPの十字線等エンボス部への流れ込みを促進させる事ができ、極低温度領域でのヒートシール適性を向上させる事ができる。
また、酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A)に対する塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(B)の質量比率が〔(A)/(B)〕で100/0〜20/80の範囲で含有することが好ましい。塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(B)の質量比率が80質量%を上回ると特に高温時のアルミ蓋材との接着性を阻害してしまう傾向となり易い。
【0022】
本発明のシール用接着剤組成物で使用する酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(A)としては、重量平均分子量が5,000〜50,000のものを使用することが好ましい。尚、前記酸基としてはマレイン酸、もしくはフマル酸を使用したものがより好ましい。
また、このような酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A)を得るに際しては、酢酸ビニルモノマーを5〜40質量%配合することが好ましく、10〜20質量%であればより好ましい。
酢酸ビニルの配合量が多すぎると底材のポリ塩化ビニル(PVC)基材との接着性が劣り、またブロッキング現象が生じやすい。反対に酢酸ビニルの配合量が少なすぎると、Tgが高くなり硬い皮膜となる為、低温度でのヒートシール性が期待できない。
【0023】
本発明のシール用接着剤組成物では、ポリウレタン樹脂(D)及び/又はポリエステル樹脂(E)を必須とする。ポリウレタン樹脂(D)、ポリエステル樹脂(E)共に公知のものが使用できるが、共にガラス転移温度(Tg)が−70〜20℃の範囲であれば、より好ましい。ポリウレタン樹脂(D)、ポリエステル樹脂(E)は、前記酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A)に混合することで、溶融温度を下げ、低温条件下での接着性を向上することができる。
また、前記酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A)に前記酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A)より重量平均分子量が小さい塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(B)を併用することで、低粘度化でき、極低温域での接着性が向上する。
ポリウレタン樹脂(D)、ポリエステル樹脂(E)を其々添加してもよいし、両方添加しても同様の効果が得られる。
【0024】
次に、本発明のシール用接着剤組成物に使用されるポリウレタン樹脂(D)に関し説明する。
前記ポリウレタン樹脂(D)は、適度な柔軟性と接着強度を高める効果が得られる、ウレア結合を有さないポリウレタン樹脂であればより好ましい。
【0025】
前記ウレア結合を有さないポリウレタン樹脂は、例えば、ポリオール、ポリイソシアネート、及び必要に応じて水酸基を2個以上有する鎖伸長剤を反応させて得られるものを用いることができる。
【0026】
前記ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、水酸基を2個以上有する化合物と多塩基酸とを公知のエステル化反応により得られるものを用いることができる。
【0028】
前記水酸基を2個以上有する化合物は鎖伸長剤として用いるものであり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のグリコール;2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−イソプロピル−1,4−ブタンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、3,5−ヘプタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の分岐構造を有するグリコール;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の脂肪族ポリオール;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等の芳香族ポリオールなどの数平均分子量が50〜400の範囲の化合物を用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記多塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、これらの酸の無水物等を用いることができる。これらの多塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記ポリオールの数平均分子量としては、500〜8,000の範囲であることが好ましく、800〜5,000の範囲であることがより好ましく、900〜3,000の範囲であることが更に好ましい。なお、前記ポリエステルポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0031】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0032】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0033】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−2,6−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−2,5−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−2,6−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−3,5−フェニレンジイソシアネート、1−エチル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1−イソプロピル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1,3−ジメチル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1,3−ジメチル−4,6−フェニレンジイソシアネート、1,4−ジメチル−2,5−フェニレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、1−メチル−3,5−ジエチルベンゼンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ジエチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、1,3,5−トリエチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、1−メチル−ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート、ナフタレン−2,7−ジイソシアネート、1,1−ジナフチル−2,2’−ジイソシアネート、ビフェニル−2,4’−ジイソシアネート、ビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3−3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4−ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロペンチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、適度な柔軟性が得られる点から、脂肪族ポリイソシアネート及び/又は脂環式ポリイソシアネートを用いることが好ましく、更に優れた凝集力により接着強度が一層向上できる点から、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを用いることがより好ましい。
【0034】
前記ポリウレタン樹脂(D)の製造方法としては、例えば、公知の溶液重合、二軸押出機による押出成型等により製造する方法が挙げられる。
【0035】
前記溶液重合により製造する方法としては、例えば、前記ポリオール、後述する有機溶剤、及び必要に応じて前記水酸基を2個以上有する鎖伸長剤を仕込んで撹拌した後に、前記ポリイソシアネートを入れ、例えば40〜100℃の範囲で3〜10時間ウレタン化反応させる方法が挙げられる。
【0036】
前記二軸押出機による押出成型を行う方法としては、例えば、二軸押出機の別々のタンクに、前記ポリオール及び必要に応じて前記2個以上の水酸基を有する鎖伸長剤と、前記ポリイソシネートとをそれぞれ入れ、必要に応じて加温し、その後押出機にて両者を混練し、ダイスより押出されることにより、ペレット状又はシート状のポリウレタン樹脂(D)を得る方法が挙げられる。前記ペレット状のポリウレタン樹脂(D)を得る場合には、空気中でペレット状にする空中ホットカット方式や、水中でペレット状にする水中ホットカット方式等を採用することができる。
【0037】
前記ポリウレタン樹脂(D)を製造する際の水酸基(前記ポリオール及び前記鎖伸長剤に由来するもの。)とイソシアネート基(前記ポリイソシアネートに由来するもの。)とのモル比[NCO/OH]としては、いずれの製造方法においても、0.8〜1.2の範囲であることが好ましく、0.9〜1.1の範囲であることがより好ましい。また、前記ウレタン樹脂(B)の製造後には、残存するイソシアネート基を失活させる目的で、エタノール、メタノール、ブタノール等のアルコールを添加してもよい。
前記ポリウレタン樹脂(D)としては、公知汎用のものが使用できるが、好ましくはポリエーテル構造を含むポリウレタン樹脂であり、ポリエーテル構造の含有比率が、ポリエーテル構造含有ポリウレタン樹脂100質量部に対して、1〜30質量部の範囲である事が好ましい。更に、前記ポリエーテル構造となるポリエーテルポリオールの数平均分子量が100〜4000のものであることが好ましい。
前記ポリエーテルポリオールとしては、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体のポリエーテルポリオール類が挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど公知汎用のものでよい。ポリエーテルを上記の範囲で含有することにより、接着強度がよりいっそう高められる。
【0038】
以上の方法によって得られるポリウレタン樹脂(D)の重量平均分子量としては、柔軟性及び接着強度を高いレベルで維持できる観点から、10,000〜300,000の範囲であることが好ましく、30,000〜200,000の範囲であることがより好ましく、50,000〜150,000の範囲が更に好ましい。
なお、前記ポリウレタン樹脂(D)の重量平均分子量は、前記ポリオールの数平均分子量と同様に測定して得られた値を示す。
また前記ウレタン樹脂(D)の多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が10以上である事が好ましく、分子量分布を広くする事で、低分子量側は溶けやすく低温接着性が向上し、高分子量側は凝集力が増すことで接着力を向上させる事ができる。
従って、ポリウレタン樹脂(D)の数平均分子量としては、1,000〜10,000の範囲であることが好ましく、3,000〜9,000の範囲であることがより好ましく、5,000〜8,500の範囲が更に好ましい。
また、各々分子量の小さいポリウレタン樹脂と分子量の大きいポリウレタン樹脂を2種以上混合させる事で、多分散度が10以上である分子量分布を再現するものであってもよい。なお、前記ポリウレタン樹脂(D)の重量平均分子量、及び数平均分子量は、前記ポリオールの数平均分子量と同様に測定して得られた値を示す。
【0039】
本発明のシール用接着剤組成物で使用するポリウレタン樹脂(D)の接着剤における含有量は、フィルム基材への接着性を十分にする観点から、接着剤組成物の総質量に対して固形分比率で20〜80質量%の範囲が好ましく、より好ましくは30〜60質量%である。20質量%を下回ると低温接着性が低下する傾向にあり、反対に80質量%を上回るとブロッキング性が低下し、ブロッキング防止剤でも制御が困難となる傾向となる。
【0040】
また、前記ポリウレタン樹脂(D)のガラス転移温度(Tg)としては、高い接着強度を得られる点から、−70〜20℃の範囲であることが好ましく、−50〜−20℃の範囲であることがより好ましい。なお、前記ポリウレタン樹脂(D)のガラス転移温度(Tg)の測定は、示差雰囲気下、冷却装置を用い温度範囲−90〜450℃、昇温温度10℃/分の条件下、DMA法で実施した。
【0041】
また、前記ポリエステル樹脂(E)としては、重量平均分子量30,000〜200,000、且つガラス転移温度(Tg)−70〜20℃であればより好ましい。重量平均分子量30,000を下回ると凝集力の低下により接着性が低下する傾向が見られ、反対に重量平均分子量200,000を上回ると粘度が上昇し、塗工適性が低下する傾向がある。またガラス転移温度(Tg)が−70℃を下回ると耐熱性が低下したり、フィルム巻取り時にブロッキングする傾向が見られ、反対に20℃を上回ると溶融軟化し難くなり、低温接着性が低下する傾向がある。
【0042】
前記ポリエステル樹脂(E)としては、多塩基酸成分と多価アルコール成分とをエステル化反応させたものであればよい。
多塩基酸成分としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オルトフタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、などの1種以上の二塩基酸及び、これらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられ、必要に応じて、安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などが併用される。
【0043】
前記多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのニ価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、又は2種以上を混合して使用することが出来る。
【0044】
また、本発明のシール用接着剤組成物に用いるポリエステル樹脂(E)としては、非晶性ポリエステルよりも高温時のヒートシール性に優れる点から、結晶性ポリエステルがより好ましい。本発明のシール用接着剤組成物に好ましいガラス転移温度(Tg)−70〜20℃であり、融点(Tm)が90〜150℃の結晶性ポリエステル樹脂(E)としては、市販品として、東洋紡績(株)社製のバイロンGM350、同GM400、同GM415、同GM443、同GM900、同GM913、同GM920、同GM990、同GA3200、同GA5300、同GA5410、同GA6300、同GA6400、同30P、日本合成化学工業(株)社製のポリエスターSP−180、同SP−181、同SP−182、同SP−185、東亞合成(株)社製アロンメルトPES−120L、同PES−140H、同PES−111E、同PES126E、同PES310S30、ユニチカ(株)製エリーテルUE−3700、同UE−3800などが挙げられる。
前記ガラス転移温度(Tg)が−70℃を下回ると耐熱性が低下したり、フィルム巻取り時にブロッキングするする傾向が見られ、反対に20℃を上回ると溶融軟化し難くなり、低温接着性が低下する傾向がある。
【0045】
前記酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A)に対するポリウレタン樹脂(D)及び/又はポリエステル樹脂(E)の質量比率は〔(A)/(C)+(D)〕で80/20〜20/80質量%の範囲が好ましい。ポリウレタン樹脂(D)及びポリエステル樹脂(E)は低い溶融温度で粘着性を有する為、80質量%を上回るとシート巻き取りした際、ブロッキング現象が生じ易くなる。
尚、酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A)より重量平均分子量が小さい塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(B)を併用する場合の質量比率は〔(A)+(B)/(C)+(D)〕で95/5〜30/70質量%の範囲が好ましい。ポリウレタン樹脂(D)及びポリエステル樹脂(E)は低い溶融温度で粘着性を有する為、70質量%を上回るとシート巻き取りした際、ブロッキング現象が生じ易くなる。
【0046】
本発明のシール用接着剤組成物では、フィラー(C)を必須とする。
本発明のシール用接着剤組成物で使用する酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A)、溶融温度の低いポリウレタン樹脂(D)及び/又はポリエステル樹脂(E)の構成により、組成物全体が溶融しやすくなる事に伴い、粘着性が増す事から、前記フィラー(C)を耐ブロキング剤として必須とするものである。
具体的にはシリカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、タルク、ウレタンビーズ、ポリエチレンワックス(PEワックス)、アクリル系華僑物から成るアクリルビーズ、メラミンビーズ、シリコーンビーズ等の粒子系ブロッキング防止剤等を挙げる事ができる。尚、前記シリコーンビーズとしては、無機系シリカをも含む。前記ビーズ状の粒子系ブロッキング防止剤はヒートシール層表面に微細な凹凸を形成しヒートシール層面と背面の接触面積を減らすことでブロッキングを防止することが出来る。
【0047】
中でも、球状微粒子アクリル系架橋物から成るアクリルビーズ、球状多孔性微粉末シリカが好ましく、これらを単独で使用しても、複数組み合わせて使用してもよい。
特に球形とする事で、熱による変形、形状による影響が少なく、ブロッキング防止に効果的である。
前記フィラー(C)の平均粒子径は、安定して耐ブロッキング効果が得られる観点から3〜15μmが好ましく、より好ましくは5〜12μmの範囲である。平均粒子径3μmを下回ると、耐ブロッキング効果が低下する傾向にあり、平均粒子径が15μmを上回ると接着性が低下したり、接着剤膜からフィラーが欠落する傾向が生じ易い。
また、この様なフィラーは、高温、高圧条件下でも接着剤成分が流れ出て、厚みが異常に薄くなる事を予防する効果もある。
尚、前記フィラー(C)の平均粒子径と、フィラー(C)を含まずに塗布し硬化した接着剤塗膜の膜厚の関係は重要であり、フィラー(C)を含まずに塗布し硬化した接着剤塗膜の膜厚は1〜10μmである事が好ましい。耐ブロッキング効果が得られるフィラー(C)の平均粒子径が3〜15μmであり、フィラー(C)の一部が2〜10μm程度、膜厚から飛び出し凹凸を作る状態が理想的となる。
また、シリカの吸油量は100ml/100g以上であることが好ましく、より好ましくは200ml/100g以上、350g以下である。吸油量が350ml/100gを越えた場合、組成物の構造粘性であるチキソ性が高くなる傾向にあり、組成物塗工時の塗工ムラを引き起こす懸念が生じ易い。吸油量が100ml/100gを下回ると接着剤中の併用する樹脂との馴染みが悪くなり、接着剤膜から容易に欠落し易くなる。
また、フィラー(C)の割合は、樹脂分(A+B+D+E)100に対して0.1〜10質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜5質量部の範囲である。割合が0.1質量部を下回ると耐ブロッキング性の効果が薄れる一方、10質量部を超えると接着し難くなる傾向となる。
【0048】
必要に応じて上記以外の例えば、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、高級脂肪酸等の有機化合物系ブロッキング防止剤を使用することが好ましい。これら有機化合物系ブロッキング防止剤は、ヒートシール層表面にブリードアウトすることでブロッキングを防止する。そのため、粒子系ブロッキング防止剤と有機化合物系ブロッキング防止剤を併用してもよい。有機化合物系ブロッキング防止剤は多量に配合すると接着性を阻害し、接着不良を起こし易いので、少量添加に留めることが好ましい。
【0049】
実際に本発明のシール用接着剤組成物を蓋材に塗布するに当っては、その塗布性能を上げるべく酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A)、前記酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A)より重量平均分子量が小さい塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(B)、フィラー(C)、ポリウレタン樹脂(D)及び/又はポリエステル樹脂(E)の混合物を各種有機溶剤で固形分20%質量となる様に溶解して使用する。
【0050】
使用できる希釈溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系、溶解性の良好な有機溶剤として、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤の各種有機溶剤が挙げられる。これらのうち通常は乾燥速度が速いトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチルや、これらの混合物を使用するのが好ましい。
【0051】
蓋材への塗工法としては、例えば、バーコーター、グラビアコート法、ロールコート法、ナイフコート法、キスコート法、その他等の方法で塗工することができる。硬質アルミ箔への塗膜量としては1〜10g/mが好ましく、乾燥条件は120〜200℃で5〜100秒の範囲が好ましい。次に乾燥した蓋材を硬質塩ビのPVCシートに90〜200℃、0.3MPaの圧力で1秒間接着させる。
接着させる底材としては、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、硬質塩化ビニルフィルム(PVC)等種々挙げられるが、中でもPVC(硬質塩ビ)フィルムシートへの接着性が格段に優れる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例にて具体的に説明する。例中「部」及び「%」は、「質量部」、「質量%」を各々表わす。
尚、本発明におけるGPCによる数平均分子量、及び重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR−Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0重量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
また、ガラス転移温度(Tg)の測定は、示差雰囲気下、冷却装置を用い温度範囲−80〜450℃、昇温温度10℃/分の条件下、DMA法で実施した。
平均粒子径測定法としては、日立製作所製操作型電子顕微鏡S−3400Nを用いて測定した度数分布の状況から算出した。
【0053】
(ポリウレタン樹脂Pの合成例)
撹拌機、還流管、及び窒素導入管を備えた反応四つ口フラスコに、ポリエステルポリオール−1(ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール及びアジピン酸を反応させたポリエステルポリオール、数平均分子量;2,000)を20.0質量部、及びポリエステルポリオール−2(1,4−ブタンジオール及びアジピン酸を反応させたポリエステルポリオール、数平均分子量;2,000)を80.0質量部、及び酢酸ノルマルプロピルを435.3質量部仕込み、撹拌した後、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを8.82質量部、及びオクチル酸錫を100ppm加えて、80℃で3時間反応させることで、ポリウレタン樹脂Pの酢酸ノルマルプロピル溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液Pは、樹脂固形分濃度20.0質量%、ガラス転移温度(Tg)=−45℃、樹脂固形分の多分散度=17.1(Mwは106,000/Mnは6200)であった。
【0054】
〔シール用接着剤の作製〕
実施例1として、マレイン酸変性塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体(マレイン酸1/塩化ビニル84/酢酸ビニル15wt%、ガラス転移点(Tg)=74℃、K値=48)を80部、ポリウレタン樹脂Pを20部、平均粒子径10μmのアクリルフィラー(平均粒子径10μm 屈折率1.51、真比重1.2)を0.1部使用し、固形分総計20部に対し溶剤分が80部となる様トルエンを200部、メチルエチルケトンを200部の混合比率にて、分散攪拌機を用いて25℃の温度下、3000rmpの回転数で撹拌しながら溶剤中に固形分を少しずつ投入し、10分間撹拌してシール用接着剤を作製した。
【0055】
表1〜4に示す組成の実施例、比較例についても同様にシール用接着剤を作製した。尚、酸基を含む塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体よりK値が10以上小さい塩化ビニル酢酸ビニル共重合物(B)としては、塩化ビニル86/酢酸ビニル14wt%、ガラス転移点(Tg)=69℃、K値=35を使用した。使用した各ポリエステル樹脂の詳細については、表4の次に記載した。
【0056】
〔蓋材への塗装〕
汎用の硬質アルミ箔(製品名、膜厚25μ)へバーコーターを使用し、各々のシール用接着剤を塗工量3g/mで塗工し、乾燥条件は180℃、10秒とした。
【0057】
〔ヒートシール加工〕
上記で塗装、乾燥した蓋材を住友ベークライト株式会社製硬質塩ビのPVCシート(製品名VSS−1202、膜厚250μ)に、エンボス加工用のヒートシール部を有するヒートシールテスターを用い、各々90℃、120℃、及び150℃(何れも0.3MPa1秒)でヒートシールし、テストピースを作製した。
【0058】
〔評価基準1:ブロッキング性〕
8cm×8cm四方の接着剤の塗工試験片を用意し、面と未塗工の硬質アルミ光沢面を40℃の雰囲気下、0.2MPa(2.0kgf/cm)の圧力で24時間重ね合わせた後、剥離したときのブロッキングの状態を手で剥離したときの感触で評価する。テストは各々3回行い評価した。

○:全くブロッキングしていない。
△:ややブロッキングしている。
×:強力にブロッキングしている。
【0059】
〔評価基準2:剥離試験による接着性〕
作製したテストピースを(株)島津製作所製小型卓上試験機EZ testを用い、剥離速度100mm/分、剥離方向180度剥離、剥離幅15mmにおける接着力の測定を90℃、120℃、及び150℃でヒートシールした各々のテストピースで行った。数値は15mm幅における接着力(N/1.5cm)を示す。

10以上 :接着性が十分である。
6以上10未満:保管条件によっては剥離し、気密性が保てない恐れがある。
5未満 :接着性が不十分である。
0 :全く接着しない
【0060】
表1〜4は、各組成の固形分重量比率と、評価結果である。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
・酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(A):
マレイン酸変性塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体:マレイン酸1/塩化ビニル84/酢酸ビニル15wt%、重量平均分子量74,300、ガラス転移点(Tg)=74℃、ISO1628−2により測定されるK値=48
・塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(B):
塩化ビニル酢酸ビニル共重合物:塩化ビニル86/酢酸ビニル14wt%、重量平均分子量35,000、ガラス転移点(Tg)=69℃、ISO1628−2により測定されるK値=35
・ポリエステル樹脂(E1):
結晶性ポリエステル樹脂、東洋紡(株)製バイロンGA−6400、重量平均分子量52,000、ガラス転移点(Tg)=−20℃、融点96℃
・ポリエステル樹脂(E2):
結晶性ポリエステル樹脂、東洋紡(株)製バイロンGM−920、重量平均分子量69,900、ガラス転移点(Tg)=−60℃、融点107℃
・ポリエステル樹脂(E3):
結晶性ポリエステル樹脂、日本合成化学工業(株)製ポリエスターSP−170、重量平均分子量71,800、ガラス転移点(Tg)=−20℃、融点85℃
・ポリエステル樹脂(E4):
結晶性ポリエステル樹脂、東亞合成(株)製アロンメルトPES310S30、重量平均分子量90,000、ガラス転移点(Tg)=8℃、R&B軟化点120℃
・ポリエステル樹脂(E5):
結晶性ポリエステル樹脂、ユニチカ(株)製エリーテルUE−3410、重量平均分子量56,020、ガラス転移点(Tg)=−25℃、軟化点70℃
・フィラー(C1):球状微粒子アクリル系華僑物、平均粒子径10μm 屈折率1.51、真比重1.2
・フィラー(C2):球状多孔性微粉末シリカ、平均粒子径10μm、吸油量250ml/100g
【0065】
本発明のシール用接着剤組成物は、ヒートシール加工温度90〜150℃まで幅広い温度範囲にて安定した接着性を保持しつつ、耐ブロキング性にも優れる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のシール用接着剤組成物では、PTP包材向け接着剤に限定される事なく、イージーピール対応の食品包装・サニタリー・コスメ・各種電子部品等工業製品向け用途に幅広く展開され得る。
【符号の説明】
【0067】
1 アルミ箔製蓋材
2 ヒートシールコート層
3 ポリ塩化ビニル(PVC)製底材
図1