特許第6588676号(P6588676)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588676
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】ダイレータ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20191001BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   A61B17/34
   A61M25/06 550
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-507019(P2019-507019)
(86)(22)【出願日】2018年3月23日
(86)【国際出願番号】JP2018011671
(87)【国際公開番号】WO2018174240
(87)【国際公開日】20180927
【審査請求日】2019年2月15日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/012024
(32)【優先日】2017年3月24日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伏屋 友希弘
(72)【発明者】
【氏名】槇 英昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 乃基
(72)【発明者】
【氏名】澤井 陽
(72)【発明者】
【氏名】北井 麻里奈
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−177289(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0046357(US,A1)
【文献】 特表2014−524807(JP,A)
【文献】 特開2007−098120(JP,A)
【文献】 実開平04−090355(JP,U)
【文献】 特表2010−540072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/34
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端の外径が基端の外径よりも小さいテーパ部と先端が前記テーパ部の基端に位置し前記テーパ部の軸方向における基端側に向かって延設された本体部とを有する中空形状のシャフトを備えているダイレータであって、
前記テーパ部の外周面に、螺旋状の凸部が設けられ、
この螺旋状の凸部は、前記シャフトの軸方向に沿って隙間を有しており、
前記螺旋状の凸部の基端が、前記テーパ部の基端に位置しており、
前記シャフトは、素線を巻回したコイル体から形成され、かつ前記螺旋状の凸部、素線を前記シャフトの外周面に巻回することで形成されていることを特徴とするダイレータ。
【請求項2】
先端の外径が基端の外径よりも小さいテーパ部と先端が前記テーパ部の基端に位置し前記テーパ部の軸方向における基端側に向かって延設された本体部とを有する中空形状のシャフトを備えているダイレータであって、
前記テーパ部の外周面に、螺旋状の凸部が設けられ、
この螺旋状の凸部は、前記シャフトの軸方向に沿って隙間を有しており、
前記螺旋状の凸部の基端が、前記テーパ部の基端に位置しており、
前記シャフトは、素線をしたコイル体から形成され、かつ前記螺旋状の凸部は、素線を前記シャフトの外周面に巻回することで形成されており、
前記シャフトを構成する素線の巻回方向と前記螺旋状の凸部を構成する素線の巻回方向とが、互いに逆向きであることを特徴とするダイレータ。
【請求項3】
前記テーパ部と前記本体部とが略一直線状に延びた状態において、前記テーパ部の軸方向における前面視での前記螺旋状の凸部の外形が、前記テーパ部の軸方向における前面視での前記本体部の外形内に収まっている請求項1または請求項2に記載のダイレータ。
【請求項4】
前記螺旋状の凸部を構成する材料が、放射線不透過性材料を含んでいる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のダイレータ。
【請求項5】
前記シャフトは、基端が前記テーパ部の先端に位置し前記テーパ部の軸方向における先端側に向かって延設された先端部を備えている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のダイレータ。
【請求項6】
前記螺旋状の凸部の先端が、前記テーパ部の先端、または前記先端部の外周面に位置している請求項5に記載のダイレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイレータに関する。
【背景技術】
【0002】
胃や肝臓などの臓器等の壁に開けた孔や、胆管や膵管などの体腔内の狭窄部等を拡張するための器具として、例えば、ダイレータが知られている。
【0003】
このようなダイレータは、通常、先行して開けられた孔を拡張するため、シャフトの一部に先端から基端に向かって漸次拡径するテーパ部を備えている。このため、手技中は、まず孔を開ける部位の近傍に内視鏡の先端を配置させ、この内視鏡の先端から針を進出させて臓器の壁などに孔を開けた後、この孔に針の内腔を通してガイドワイヤを挿入して針を抜き出す。次いで、ダイレータをガイドワイヤに沿って上記孔まで到達させ、この孔にダイレータを押し込むことで上記テーパ部によりその拡張が行われる。
【0004】
ここで、体内におけるダイレータの位置を把握する技術として、例えば、孔の拡張を行うテーパ部近傍に造影マーカーを設けるものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような技術によれば、X線画像を用いて造影マーカーの位置を視認することができ、手技中の体内におけるテーパ部のおよその位置を把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017−51328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したような従来のダイレータでは、手技中におけるテーパ部のおよその位置を把握することはできるものの、このテーパ部による孔の拡張完了時点を正確に把握することが難しく、結果としてダイレータの挿入不足により孔の拡張が不十分となったり、ダイレータの過度な押し込みが生じる虞がある。
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、対象物への孔の拡張が完了する際、この拡張の完了時点を正確に把握することが可能なダイレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のいくつかの態様は、
(1)先端の外径が基端の外径よりも小さいテーパ部と先端が前記テーパ部の基端に位置し前記テーパ部の軸方向における基端側に向かって延設された本体部とを有する中空形状のシャフトを備えているダイレータであって、
前記テーパ部の外周面に、螺旋状の凸部が設けられ、
この螺旋状の凸部は、前記シャフトの軸方向に沿って隙間を有しており、
前記螺旋状の凸部の基端が、前記テーパ部の基端に位置していることを特徴とするダイレータ、
(2)前記テーパ部と前記本体部とが略一直線状に延びた状態において、前記テーパ部の軸方向における前面視での前記螺旋状の凸部の外形が、前記テーパ部の軸方向における前面視での前記本体部の外形内に収まっている前記(1)に記載のダイレータ、
(3)前記螺旋状の凸部を構成する材料が、放射線不透過性材料を含んでいる前記(1)または(2)に記載のダイレータ、
(4)前記シャフトは、基端が前記テーパ部の先端に位置し前記テーパ部の軸方向における先端側に向かって延設された先端部を備えている前記(1)から(3)のいずれか1項に記載のダイレータ、
(5)前記螺旋状の凸部の先端が、前記テーパ部の先端、または前記先端部の外周面に位置している前記(4)に記載のダイレータ、
(6)前記シャフトが、素線を前記シャフトの軸周りへ巻回することで形成されている前記(1)から(5)のいずれか1項に記載のダイレータ、
(7)前記螺旋状の凸部が、素線を前記シャフトの外周面に巻回することで形成されている前記(1)から(6)のいずれか1項に記載のダイレータ、
(8)前記シャフトが素線を前記シャフトの軸周りへ巻回することで形成され、かつ前記螺旋状の凸部が素線を前記シャフトの外周面に巻回することで形成されており、
前記シャフトを構成する素線の巻回方向と前記螺旋状の凸部を構成する素線の巻回方向とが、互いに逆向きである前記(1)から(5)のいずれか1項に記載のダイレータ
である。
【0010】
なお、本明細書において、「先端側」とは、シャフトの軸方向に沿う方向であって、本体部に対してテーパ部が位置する方向を意味する。また、「基端側」とは、ダイレータの軸方向に沿う方向であって、先端側と反対側の方向を意味する。また、「先端」とは、任意の部材または部位における先端側の端部、「基端」とは、任意の部材または部位における基端側の端部をそれぞれ示す。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、対象物への孔の拡張が完了する際、この拡張の完了時点を正確に把握することが可能なダイレータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態の全体を示す一部切り欠き概略的側面図である。
図2】第1の実施形態の変形例を示す要部拡大一部切り欠き概略的側面図である。
図3図2の前面視の概略図である。
図4】第1の実施形態の変形例を示す要部拡大概略的側面図である。
図5】本発明の第2の実施形態の要部拡大概略的側面図である。
図6】第2の実施形態の変形例を示す要部拡大概略的側面図である。
図7】本発明の第3の実施形態の要部を示す一部切り欠き概略的側面図である。
図8】本発明の第4の実施形態の要部拡大概略的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
当該ダイレータは、先端の外径が基端の外径よりも小さいテーパ部と先端が上記テーパ部の基端に位置し上記テーパ部の軸方向における基端側に向かって延設された本体部とを有する中空形状のシャフトを備えているダイレータであって、上記テーパ部の外周面に、螺旋状の凸部が設けられ、この螺旋状の凸部は、上記シャフトの軸方向に沿って隙間を有しており、上記螺旋状の凸部の基端が、上記テーパ部の基端に位置していることを特徴とする。
【0014】
以下、本発明の第1〜第4の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施形態にのみ限定されるものではない。また、各図面に示したダイレータの寸法は、実施内容の理解を容易にするために示した寸法であり、実際の寸法に対応するものではない。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の全体を示す一部切り欠き概略的側面図である。当該ダイレータ1は、図1に示すように、概略的に、シャフト11と、螺旋状の凸部21と、基部31とにより構成されている。
【0016】
シャフト11は、中空形状の内腔11hを有する部材である。内腔11hは、例えばガイドワイヤ(不図示)等を挿通するものであり、これらが自由に挿通できるように、シャフト11の先端と基端との間を結ぶ連続した空間で構成されている。このシャフト11は、テーパ部111と本体部112とを有している。
【0017】
テーパ部111は、先端の外径が基端の外径よりも小さい部位である。このテーパ部111は、具体的には、後述する本体部112の先端に接続され、この先端から先端側に向かって延設されており、先端側に向かうにつれて先細る形状をなしている。
【0018】
本体部112は、先端がテーパ部111の基端111bに位置しテーパ部111の軸方向における基端側に向かって延設された部位である。この本体部112は、具体的には、例えば、先端が上述したテーパ部111の基端111bに連続すると共に、基端が後述する基部31に接続されている。本体部112は、その先端から基端に亘って略一定の外径を有している。なお、本体部112は、テーパ部111と一体または別体として形成することができる。本実施形態では、本体部112とテーパ部111とが鋳造等で一体的に形成されている。
【0019】
上述したテーパ部111および本体部112を構成する材料としては、体腔内に挿通されることから、抗血栓性、可撓性および生体適合性を有していることが好ましく、例えば、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などの樹脂材料;ステンレス鋼、超弾性合金(ニッケル−チタン合金)などの金属材料等を採用することができる。なお、テーパ部111および本体部112は、その表面の側に各種の被膜を有していてもよい。この被膜の例としては、テーパ部111および本体部112の表面の保護膜(代表例、めっき膜)や、テーパ部111および本体部112と螺旋状の凸部21との密着性を向上させるための下地膜などが挙げられる。
【0020】
螺旋状の凸部21は、テーパ部111の外周面111Aに設けられており、かつシャフト11の軸方向に沿って隙間21aを有している。この螺旋状の凸部21は、具体的には、例えば、テーパ部111の外周面111Aから半径方向外部(ダイレータ1の最外面、最外部)に突出しかつ軸方向に連続または断続した一条または多条の突起部として形成することができる。また、螺旋状の凸部21は、隣り合う凸部21どうしが軸方向に離間するように配置されている。これにより、シャフト11の回転操作による螺旋状の凸部21のネジ作用によりテーパ部111を先端側に前進させることができ、テーパ部111による孔の拡張を円滑に行うことができる。なお、螺旋状の凸部21は、シャフト11と一体または別体として形成することができる。本実施形態では、螺旋状の凸部21とシャフト11のテーパ部111とが鋳造等で一体的に形成されている。
【0021】
ここで、螺旋状の凸部21の基端21bは、テーパ部111の基端111bに位置している。すなわち、本実施形態では、螺旋状の凸部21は、テーパ部111の外周面111Aに設けられている。
【0022】
なお、螺旋状の凸部21は、刃物を構成していない(生体組織を切断する形状ではない)ことが好ましい。すなわち、螺旋状の凸部21は、その断面(螺旋状の凸部の螺旋方向に直交する横断面)の形状において、シャフトの径方向外側の端部が、鋭角の角部ではないことが好ましい。このような端部としては、例えば、鈍角の角部、曲線(例、円や楕円の一部を含む曲線)を含む形状で構成された部位等が挙げられる。これにより、当該ダイレータ1は、孔内面の生体組織を損傷することなく、対象物(例、患者の胃等の消化管の壁)にあらかじめ形成された孔を拡張することができる。
【0023】
また、当該ダイレータは、テーパ部111と本体部112とが略一直線状に延びた状態において、テーパ部111の軸方向における前面視での螺旋状の凸部の外形が、テーパ部111の軸方向における前面視での本体部112の外形内に収まっていることが好ましい。すなわち、図2図3に示すように、シャフト11の軸前方から見たときの螺旋状の凸部21m1の外周面21Am1の形状(外形)が、本体部112の外周面112A(外形)を先端方向に延ばした仮想略円筒面s内の領域に収まっていることが好ましい(ダイレータ1m1参照)。
【0024】
このように、螺旋状の凸部21m1の外形が上記形状であることで、対象物への孔の拡張が完了する際、この完了前後でシャフト11のねじ込み抵抗をより減少(手技者に確実に感知)させることができ、孔拡張の完了時点をより正確に把握することができる。
【0025】
螺旋状の凸部21を構成する材料としては、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、超弾性合金(ニッケル−チタン合金)などの金属材料、あるいはポリアミド樹脂やフッ素樹脂などの生体適合性を有する樹脂材料等を用いることができるが、放射線不透過性材料を含んでいることが好ましい。上記放射線不透過性材料としては、例えば、金、白金、タングステン、またはこれらの元素を含む合金(例えば、白金ニッケル合金など)等が挙げられる。また、放射線不透過性材料は、放射線不透過性ではない材料の表面にコートされるものなど、当該放射線不透過性材料とこの材料以外の材料とを組み合わせたものであってもよい。
【0026】
このように、螺旋状の凸部21の材料が放射線不透過性材料を含んでいることで、放射線透過画像を用いて螺旋状の凸部21の位置を視認することができ、孔拡張の完了時点をより正確に把握することができる。
【0027】
ここで、上述したシャフトおよび/または螺旋状の凸部の外周は、図4に示すように、コーティング7を有していてもよい。このようなコーティングは、例えば、滑り性や生体組織の噛み込み防止性の向上などの目的で形成される。かかる場合、コーティング7を形成する材料としては、例えば、ポリアミド樹脂やフッ素樹脂などの生体適合性を有する樹脂材料、あるいは親水性のコーティング材料等を採用することができる。このコーティング7は、例えば、0.1μm〜300μmの厚さとすることができる。なお、シャフトおよび/または螺旋状の凸部がコーティング7を有する場合、コーティング7の外周面(外表面)がシャフト11m2の外周面(テーパ部111m2の外周面111Am2および本体部112m2の外周面112Am2)や、螺旋状の凸部21m2の外周面21Am2となる(ダイレータ1m2参照)。
【0028】
図1に示す基部31は、手技者がダイレータ1を体内に押し込んだり、回転操作を行う部位である。この基部31は、先端が本体部112の基端に接続されており、シャフト11の内腔11hに連通する内腔31hを有している。手技の際は、基部31の内腔31hを介してガイドワイヤなどが挿通される。
【0029】
ダイレータ1の各部における軸方向の長さは、通常、シャフト11全体が1,600mm〜2,500mm、テーパ部111が5mm〜100mmである。シャフト11の各部における外径は、通常、テーパ部111の先端が0.6mm〜2.3mmであり、テーパ部111の基端111bおよび本体部112が1.2mm〜4.0mmである。シャフト11の内腔11hの内径は、通常、0.4mm〜1.0mmである。
【0030】
本実施形態のダイレータ1の各部における軸方向の長さは、シャフト11全体が2,000mm、テーパ部111が30mmである。シャフト11の各部における外径は、テーパ部111の先端が1.1mm、テーパ部111の基端111bおよび本体部112が1.9mmである。シャフト11の内腔11hの内径は、0.7mmである。
【0031】
次に、当該ダイレータ1の使用態様の一例について説明する。
【0032】
まず、導入針を用いて対象物を穿刺して孔を開ける。次いで、導入針の内腔にガイドワイヤ(不図示)を挿入した後、導入針を抜き取る。
【0033】
次に、ガイドワイヤの基端を当該ダイレータ1の内腔11h、31hに差し入れ、ダイレータ1を挿入する。次いで、シャフト11を回転させながらダイレータ1を押し進め、穿刺部の孔を拡張する。この際、シャフト11の回転操作による螺旋状の凸部21のネジ作用等によりテーパ部111が先端側に前進するため、テーパ部111による孔の拡張を円滑に行うことができる。なお、対象物への孔の拡張が完了する際、穿刺部をテーパ部111の基端111bが通過すると、本体部112の外周面112Aには螺旋状の凸部111が設けられていないため、上記通過前後(穿刺部への孔の拡張が完了する前後)でシャフト11のねじ込み抵抗が急激に減少するため、手技者は孔拡張の完了時点を正確に把握することができる。
【0034】
以上のように、当該ダイレータ1は、上述した構成であるので、対象物への孔の拡張が完了する際、この完了前後でシャフト11のねじ込み抵抗を減少させることができ、手技者への感覚的な伝達により孔拡張の完了時点を正確に把握することができる。
【0035】
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態の要部拡大概略的側面図である。当該ダイレータは2、図5に示すように、概略的に、シャフト12と、螺旋状の凸部22と、基部31(図1参照)とにより構成されている。当該ダイレータ2は、シャフト12および螺旋状の凸部22の構成が第1の実施形態と異なっている。なお、シャフト12および螺旋状の凸部22以外の構成、およびダイレータ2の使用態様は、第1の実施形態のものと同様であるので、同一部位には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0036】
シャフト12は、中空形状の内腔12hを有する部材である。このシャフト12は、テーパ部121と本体部122とを有している。テーパ部121は、先端の外径が基端の外径よりも小さい部位である。本体部122は、先端がテーパ部121の基端121bに位置しテーパ部121の軸方向における基端側に向かって延設された部位である。
【0037】
本実施形態のシャフト12は、素線をこのシャフト12の軸周りへ巻回することで形成されている。このシャフト12は、具体的には、図5に示すように、例えば、1本の素線を用いて隣り合う素線どうしが軸方向に密着するように螺旋状に巻回されたコイル体12Cとして形成されている。コイル体12Cは、その外周面の形状に応じて上述したテーパ部121および本体部122となる。なお、図5ではコイル体12Cの共通内接線が点線で図示されており、この共通内接線で囲まれた領域に内腔12hが形成される。
【0038】
螺旋状の凸部22は、テーパ部121の外周面121Aに設けられており、かつシャフト12の軸方向に沿って隙間22aを有している。また、螺旋状の凸部22の基端22bは、テーパ部121の基端121bに位置している。
【0039】
本実施形態の螺旋状の凸部22は、素線をシャフト12の外周面(テーパ部121の外周面121A)に巻回することで形成されている。この螺旋状の凸部22は、具体的には、例えば、1本の素線を用いて隣り合う素線どうしが離間するように螺旋状に巻回されたコイル体22Cとして形成されている。このコイル体22Cの内周はコイル体12Cの外周に密着しており、両コイル体22Cとコイル体12Cとは、例えば、両者の端部をロウ付けする、溶接する、接着剤により固定する、あるいは被膜と溶着するなどして接合されている。
【0040】
シャフト12や螺旋状の凸部22に用いる素線の本数は、1本又は複数本であってよい。なお、シャフト12を構成する素線の巻回方向と螺旋状の凸部22を構成する素線の巻回方向とは、本実施形態のように、互いに逆向きであることが好ましい。すなわち、コイル体12Cとコイル体22Cとは、一方がS撚りで他方がZ撚りであることが好ましい。これにより、シャフト12を回転する際、シャフト12を構成する素線と螺旋状の凸部22を構成する素線とに加わる軸方向の力の向きを相対させることができ、シャフト12を構成する隣接する素線どうしの離間に起因するトルク伝達性やプッシャビリティの低下を抑制することができる。
【0041】
上述したコイル体12Cを構成する素線の材料としては、例えば、第1の実施形態においてテーパ部および本体部を構成する材料として挙げた材料と同様のものを例示することができ、上述したコイル体22Cを構成する素線の材料としては、例えば、第1の実施形態において螺旋状の凸部を構成する材料として挙げた材料と同様のものを例示することができる。
【0042】
以上のように、当該ダイレータ2は、シャフト12および螺旋状の凸部22がそれぞれコイル体12C、22Cで形成されているので、シャフト12および螺旋状の凸部22の柔軟性およびトルク伝達性を向上することができる。
【0043】
なお、シャフト12の先端部には、図6に示すように、表面がコイル体12Cの外周面(素線による凹凸面)よりも平坦な表面41Aを有し、かつシャフト12の内腔12hに連通する内腔41hを備えた略円筒中空形状の最先端部41が取り付けられていてもよい。この最先端部41は、例えば、コイル体12Cの先端部に銀錫ロウ、金錫ロウなどのロウ材等を用いて表面を平坦に成形することで形成することができる。これにより、導入針により穿設された孔へのシャフトの挿入性を向上させることができ、円滑に手技を進めることができる(ダイレータ2m1参照)。
【0044】
[第3の実施形態]
図7は、本発明の第3の実施形態の要部を示す一部切り欠き概略的側面図である。当該ダイレータ3は、図7に示すように、概略的に、シャフト13と、螺旋状の凸部23と、基部31(図1参照)とにより構成されている。当該ダイレータ3は、シャフト13および螺旋状の凸部23の構成が第1の実施形態と異なっている。なお、シャフト13および螺旋状の凸部23以外の構成、およびダイレータ3の使用態様は、第1の実施形態のものと同様であるので、同一部位には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0045】
シャフト13は、中空形状の内腔13hを有する部材である。このシャフト13は、テーパ部131と、本体部132と、先端部133とを有している。なお、テーパ部131および本体部132の構成は、第1の実施形態の構成と同じであるので、その説明を援用する。
【0046】
先端部133は、シャフト13中、基端がテーパ部131の先端131fに位置しテーパ部131の軸方向における先端側に向かって延設された部位である。この先端部133は、具体的には、図7に示すように、例えば、その先端から基端に亘って略一定の外径を有している。なお、先端部133は、テーパ部131と一体または別体として形成することができる。本実施形態では、先端部133とテーパ部131とが鋳造等で一体的に形成されている。
【0047】
先端部133を構成する材料としては、例えば、第1の実施形態においてテーパ部および本体部を構成する材料として挙げた材料と同様のものを例示することができる。
【0048】
螺旋状の凸部23は、先端部133およびテーパ部131の外周面133A、131Aに設けられており、かつシャフト13の軸方向に沿って隙間23aを有している。なお、本実施形態では、連続した一条の螺旋状の凸部23として形成されている。また、螺旋状の凸部23は、先端部133およびテーパ部131と鋳造等で一体的に形成されている。
【0049】
ここで、螺旋状の凸部23の先端が、テーパ部131の先端、または先端部133の外周面133Aに位置していることが好ましい。本実施形態では、螺旋状の凸部23の先端が先端部133の先端に位置しかつ基端がテーパ部131の基端に位置している。これにより、シャフト13の回転により螺旋状の凸部23による大きな推進力を得ることができ、より確実に孔を拡張することができる。
【0050】
以上のように、当該ダイレータ3は、先端部133を備えているので、テーパ部131による孔の拡張に先立って先端部133をあらかじめ上記孔に通すことができ、テーパ部131による孔の拡張を安定かつ確実に行うことができる。
【0051】
[第4の実施形態]
図8は、本発明の第4の実施形態の要部拡大概略的側面図である。当該ダイレータ4は、図8に示すように、概略的に、シャフト14と、螺旋状の凸部24と、基部31(図1参照)とにより構成されている。当該ダイレータ4は、シャフト14および螺旋状の凸部24の構成が第3の実施形態と異なっている。なお、シャフト14および螺旋状の凸部24以外の構成、およびダイレータ4の使用態様は、第1の実施形態のものと同様であるので、同一部位には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0052】
シャフト14は、中空形状の内腔14hを有する部材である。このシャフト14は、テーパ部141と、本体部142と、先端部143とを有している。テーパ部141は、先端の外径が基端の外径よりも小さい部位である。本体部142は、先端がテーパ部141の基端141bに位置しテーパ部141の軸方向における基端側に向かって延設された部位である。先端部143は、シャフト14中、基端がテーパ部141の先端141fに位置しテーパ部141の軸方向における先端側に向かって延設された部位である。
【0053】
本実施形態のシャフト14は、素線をこのシャフト14の軸周りへ巻回することで形成されている。このシャフト14は、具体的には、コイル体14Cで形成されており、その外周面の形状に応じて上述したテーパ部141、本体部142および先端部143となる。なお、図8ではコイル体14Cの共通内接線が点線で図示されており、この共通内接線で囲まれた領域に内腔14hが形成される。
【0054】
螺旋状の凸部24は、先端部143およびテーパ部141の外周面143A、141Aに設けられており、かつシャフト14の軸方向に沿って隙間24aを有している。また、螺旋状の凸部24の基端24bは、テーパ部141の基端141bに位置している。
【0055】
本実施形態の螺旋状の凸部24は、素線をシャフト14の外周面(先端部143の外周面143Aおよびテーパ部141の外周面141A)に巻回することで形成されている。この螺旋状の凸部24は、具体的には、例えば、1本の素線を用いて隣り合う素線どうしが離間するように螺旋状に巻回されたコイル体24Cとして形成されている。
【0056】
なお、コイル体24Cとコイル体14Cとの接合方法、各コイル体の素線の材料等は、第2の実施形態のものと同様であるので、その説明を援用する。
【0057】
以上のように、当該ダイレータ4は、シャフト14および螺旋状の凸部24がそれぞれコイル体14C、24Cで形成されているので、シャフト14および螺旋状の凸部24の柔軟性およびトルク伝達性を向上することができる。また、当該ダイレータ4は、先端部143を備えているので、テーパ部141による孔の拡張に先立って先端部143をあらかじめ上記孔に通すことで、テーパ部141による孔の拡張を安定かつ確実に行うことができる。
【0058】
なお、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0059】
例えば、上述した第1および第2の実施形態では螺旋状の凸部21、22の先端がテーパ部111、121の先端に位置し、第3および第4の実施形態では螺旋状の凸部23、24の先端が先端部133、143の先端に位置しているダイレータ1〜4について説明したが、先端部を有するダイレータでは、螺旋状の凸部の先端が先端部の先端とテーパ部の基端との間の部位、先端部を有さないダイレータでは、螺旋状の凸部の先端がテーパ部の先端と基端との間の部位に位置しているダイレータであってもよい。
【0060】
また、上述した第2の実施形態では、シャフト12および螺旋状の凸部22のそれぞれがコイル体12C、22Cで形成されているダイレータ2、上述した第4の実施形態では、シャフト14および螺旋状の凸部24のそれぞれがコイル体14C、24Cで形成されているダイレータ4について説明したが、コイル体を用いてダイレータを形成する場合、シャフトおよび螺旋状の凸部のうちのいずれか一方のみがコイル体で形成されたダイレータであってもよい。
【0061】
また、上述した第2の実施形態では、コイル体12Cおよびコイル体22Cが連続した一条の素線で形成されているダイレータ2、上述した第4の実施形態では、コイル体14Cおよびコイル体24Cが連続した一条の素線で形成されているダイレータ4について説明したが、各コイル体は複数の素線で形成された多条コイルを備えたダイレータであってもよく、断続的に巻回したコイル体を備えたダイレータであってもよい。
【0062】
また、上述した実施形態では、シャフト11〜14の表面に被膜を有しないダイレータ1〜4を図示したが(図1図8参照)、シャフトの表面(シャフトと螺旋状の凸部との間の部位を含む)の側に各種の被膜を有するダイレータであってもよい。上記被膜としては、例えば、シャフトの表面の保護膜(代表例、めっき膜)、シャフトと螺旋状の凸部との密着性を向上させるための下地膜などが挙げられる。
【符号の説明】
【0063】
1〜4 ダイレータ
11〜14 シャフト
21〜24 螺旋状の凸部
111、121、131、141 テーパ部
112、122、132、142 本体部
133、143 先端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8