(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面に示したダイレータの寸法は、実施内容の理解を容易にするために示した寸法であり、実際の寸法に対応するものではない。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るダイレータ1の全体図である。
また、
図1において、図示左側が体内に挿入される先端側(遠位側)、右側が医師等の手技者によって操作される基端側(手元側、近位側)である。
【0014】
図1において、ダイレータ1は、複数の金属素線を巻回して中空状に形成された第1コイル3と、第1コイル3の外周面3Aに、第1コイル3(先端に向って左巻き)とは反対向き(先端に向って右巻き)に巻回された1本の金属素線からなる第2コイル5とから構成された多層体7と、多層体7の基端に接続された中空形状のコネクタ9とを備える。
【0015】
第1コイル3および第2コイル5を構成する素線は、例えば、ステンレス鋼およびニッケル−チタン等の超弾性合金等の金属素線、または、樹脂素線である。
【0016】
第1コイル3は、例えば10本のステンレス鋼からなる金属素線を巻回して形成されている。第1コイル3は、基端から先端へ貫通する内腔3Bが形成された中空状をなしている。第1コイル3は、基端部3Cと、テーパ部3Dと、先端部3Eとを有している。第1コイル3は、シャフトに相当する。
【0017】
基端部3Cは、ダイレータ1のうちの基端側に位置し、その基端にコネクタ9が接続されている。また、基端部3Cは、その基端から先端にわたって略一定の外径を有する。
【0018】
テーパ部3Dは、基端部3Cの先端側に位置し、基端部3Cの先端から先端側に延び、先端側に向かうにつれて外径が小さくなるように構成されている。
【0019】
先端部3Eは、テーパ部3Dの先端側に位置し、テーパ部3Dの先端から先端側に延びている。先端部3Eは、その基端から先端にわたって略一定の外径を有する。このように、シャフトである第1コイル3は、先端の外径が基端の外径よりも小さい中空形状をなしている。
【0020】
第2コイル5は、例えば1本の金属素線が第1コイル3の外周面3Aに、第1コイル3(先端に向って左巻き)とは反対向き(先端に向って右向き)に巻回されている。ここで、金属素線は、基端側において密着して巻回されており、基端部3Cの先端側、テーパ部3D、および先端部3Eにおいて離間して巻回されている。第2コイル5のうち離間して巻回されている部分により、第1コイル3の外周面3Aに、外部(ダイレータ1の最外面、最外部)に突出する螺旋状の凸部が設けられる。当該螺旋状の凸部は、第1コイル3の軸Aに沿って隣り合う部分(隣接する金属素線)に隙間を有する。当該螺旋状の凸部のネジ作用により、ダイレータ1の回転操作によってもダイレータ1を前進させることができる。
【0021】
また、テーパ部3Dに設けられた第2コイル5の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチは、基端部3Cおよび先端部3Eに設けられた第2コイル5の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチよりも大きく構成されている。すなわち、第2コイル5の軸Aに沿って隣り合う部分について、基端部3Cの先端側におけるピッチをL1、テーパ部3DにおけるピッチをL2、先端部3EにおけるピッチをL3とした場合に、L1、L3<L2となるように構成されている。なお、基端部3Cの先端側における各ピッチは、等しくてもよいし、異なっていてもよい。テーパ部3Dにおける各ピッチは、等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0022】
また、第2コイル5の金属素線は、隣接する金属素線間の離間量が、基端部3Cにおいてその基端側に向って徐々に減少している。この構成により、ダイレータ1(多層体7)の軸方向における剛性を徐変することができ、進入する経路が蛇行していたとしても、ダイレータ1を経路に容易に進入させることができる。
【0023】
本実施形態及びこれ以降に記載される他の実施形態におけるダイレータの長さは、例えば2000mm、好ましくは1600mm〜2500mmであり、先端部3Eの長さは、例えば10mm、好ましくは0〜100mmであり、テーパ部3Dの長さは、例えば30mm、好ましくは5〜100mmである。第1コイル3の先端における内径は、例えば0.7mm、好ましくは0.4〜1.0mmであり、第1コイル3の基端における内径は、例えば1.5mm、好ましくは1.0〜3.0mmである。第2コイル5の先端における外径は、例えば1.84mm、好ましくは0.8〜3.0mmであり、第2コイル5の基端における外径は、例えば2.64mm、好ましくは1.4mm〜5.0mmである。また、第1コイル3の金属素線の直径は、例えば0.21mm、好ましくは0.1〜0.5mmであり、第2コイル5の金属素線の直径は、例えば0.36mm、好ましくは0.1〜0.5mmである。
【0024】
また、基端部3Cおよび先端部3Eにおける第2コイル5のピッチL1、L3は、例えば1.5mmであり、テーパ部3Dにおける第2コイル5のピッチL2は、例えば2mmであり、両者の比率(L1またはL3/L2)は、0.75である。なお、基端部3Cおよび先端部3Eにおける第2コイル5のピッチL1、L3は、好ましくは0.2〜4mmであり、テーパ部3Dにおける第2コイル5のピッチL2は、好ましくは0.25〜5mmであり、両者の比率の範囲は、0.04〜1である。
【0025】
把持部であるコネクタ9は、手技者がダイレータを体内に押し込んだり、回転操作を行う部位である。コネクタ9は、その先端が第1コイル3の基端及び第2コイル5の基端に接続されている。コネクタ9は樹脂からなり、第1コイル3の内腔3Bに連通する内腔を有する中空形状である。
【0026】
本実施形態のダイレータ1は、シャフトである第1コイル3の外周面3Aに外部に突出する螺旋状の凸部(第2コイル5)が設けられ、当該螺旋状の凸部は、第1コイル3の軸方向に沿って隣り合う部分に隙間を有する。かかる構成により、従来のようにダイレータを押し込み操作によって前進させるだけでなく、螺旋状の凸部により、回転操作によっても前進させることができる。
【0027】
また、テーパ部3Dに設けられた第2コイル5の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチは、基端部3Cおよび先端部3Eに設けられた第2コイル5の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチよりも大きく構成されている。これにより、ダイレータ1を回転させた際に、第1コイル3のテーパ部3Dにおいては、対象物(例、胃などの消化管、肝臓)との摩擦抵抗が基端部3Cおよび先端部3Eよりも小さくなる。この結果、消化管等の壁に形成された孔を容易に拡径することができ、対象物への食い込みによる対象物の損傷を抑制することができる。
【0028】
また、シャフトが、複数本の金属素線を中空形状に巻き回した第1コイル3からなるので、シャフトの柔軟性、および、第1コイル3によるトルクの伝達性を向上させることができる。また、螺旋状の凸部が、1本の金属素線を第1コイル3の外周面3Aに巻き回した第2コイル5からなるので、螺旋状の凸部を容易に形成することができ、第2コイル5の弾性により、ダイレータ1の先端の柔軟性を確保でき、トルク伝達性を向上させることができる。また、第1コイル3および第2コイル5の各素線が互いに反対向きに巻き回されているので、ダイレータ1を第1コイル3が開く方向へ回転させても、第2コイル5には閉じる方向へ力が加わるため、第1コイル3が開くのを抑制することができ、ダイレータ1のコネクタ9に加えられた力を先端側へ伝えることができる。
【0029】
次に、当該ダイレータの使用態様の一例について説明する。
【0030】
まず、導入針を用いて対象物を穿刺して孔を開ける。次いで、導入針の内腔にガイドワイヤを挿入した後、導入針を抜き取る。
【0031】
次に、ガイドワイヤの基端を当該ダイレータの内腔に差し入れ、ダイレータを挿入する。次いで、シャフトを回転させながらダイレータを押し進め、穿刺部の孔を拡張する。この際、シャフトの回転操作による螺旋状の凸部のネジ作用等によりテーパ部が前進するため、テーパ部による孔の拡張を円滑に行うことができる。
【0032】
<第2実施形態>
図2は、第2実施形態に係るダイレータ10の先端側部分を示す図である。
また、
図2において、図示左側が体内に挿入される先端側(遠位側)、右側が医師等の手技者によって操作される基端側(手元側、近位側)である。
【0033】
なお、本実施形態のダイレータ10は、第1実施形態のダイレータ1と基本的には同じ構造である為、同じ部材については同一番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0034】
図2において、ダイレータ10は、複数の金属素線を巻回して中空状に形成された第1コイル3と、その第1コイル3の外周面3Aに、第1コイル3(先端に向って左巻き)とは反対向き(先端に向って右巻き)に巻回された1本の金属素線からなる第2コイル5とから構成された多層体17と、その多層体17の基端に接続された中空形状のコネクタ9とを備える。しかし、ダイレータ10は、ダイレータ1の第1コイル3の先端部3Eに代えて、最先端部6を有する点において、ダイレータ1と相違する。本実施形態では、先端に最先端部6が設けられた第1コイル3がシャフトに相当する。
【0035】
最先端部6は、第1コイル3の先端にロウ材(銀錫ロウ材、金錫ロウ材等)を流し込んで形成されており、その形状は略円筒中空形状である。また、最先端部6の表面は、多層体7の先端のように表面が凸凹形状ではなく、平坦である。
【0036】
本実施形態においても、テーパ部3Dに設けられた第2コイル5の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチは、基端部3Cに設けられた第2コイル5の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチよりも大きく構成されている。すなわち、第2コイル5の軸Aに沿って隣り合う部分について、基端部3Cの先端側におけるピッチをL11、テーパ部3DにおけるピッチをL12とした場合に、L11<L12となるように構成されている。
【0037】
かかる構成のダイレータ10によれば、第1実施形態のダイレータ1と同様の効果を奏する。すなわち、ダイレータ10を回転させた際に、第1コイル3のテーパ部3Dにおいては、対象物(例、胃などの消化管、肝臓)との摩擦抵抗が基端部3Cよりも小さくなる。この結果、消化管等の壁に形成された孔を容易に拡径することができ、対象物への食い込みによる対象物の損傷を抑制することができる。また、多層体17の先端に、表面が平坦な最先端部6が接続されているので、穿刺部に対して、ダイレータを先ず押し、それから回転させながら押込みことにより、穿刺部への挿入性をさらに向上させることができる。
【0038】
<第3実施形態>
図3は、第3実施形態に係るダイレータ20の全体図である。
また、
図3において、図示左側が体内に挿入される先端側(遠位側)、右側が医師等の手技者によって操作される基端側(手元側、近位側)である。
【0039】
図3において、ダイレータ20は、シャフト21と、螺旋状の凸部22と、シャフト21の基端に接続されたコネクタ9とを備える。
【0040】
シャフト21は、基端から先端へ貫通する内腔21Aが形成された中空状をなしている。また、シャフト21は、基端部23と、テーパ部24と、先端部25とを有している。
【0041】
シャフト21および螺旋状の凸部22を構成する材料は、テーパ部24および先端部25の柔軟性を確保すると共に、生体適合性を有している限り特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、ニッケル−チタン合金等の超弾性合金材料、または、ポリ塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、およびフッ素樹脂等の合成樹脂により構成されている。
【0042】
基端部23は、ダイレータ20のうちの基端側に位置し、その基端にコネクタ9が接続されている。また、基端部23は、テーパ部24の基端側に設けられ基端側に延びている。基端部23は、その基端から先端にわたって略一定の外径を有する。
【0043】
テーパ部24は、基端部23の先端に接続され、当該先端から先端側に延び、先端側に向かうにつれて先細る形状をなしている。
【0044】
先端部25は、テーパ部24の先端に接続され、当該先端から先端側に延びている。先端部25は、その基端から先端にわたって略一定の外径を有する。このように、シャフト21は、先端の外径が基端の外径よりも小さい中空形状をなしている。
【0045】
螺旋状の凸部22は、シャフト21の外周面21Bに、外部(ダイレータ20の最外面、最外部)に突出するように設けられている。螺旋状の凸部22は、基端部23の先端側部分、テーパ部24、および先端部25に設けられ、シャフト21の軸方向に沿って隣り合う部分に隙間を有する。すなわち、螺旋状の凸部22の当該隣り合う部分は互いに離間している。螺旋状の凸部22は、シャフト21と鋳造等により一体に構成されている。
【0046】
テーパ部24に設けられた螺旋状の凸部22の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチは、基端部23および先端部25に設けられた螺旋状の凸部22の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチよりも大きく構成されている。すなわち、螺旋状の凸部22の軸Aに沿って隣り合う部分について、基端部23におけるピッチをL21、テーパ部24におけるピッチをL22、先端部25におけるピッチをL23とした場合に、L21、L23<L22となるように構成されている。なお、基端部23および先端部25における各ピッチは、等しくてもよいし、異なっていてもよい。テーパ部24における各ピッチは、等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0047】
本実施形態のダイレータ20は、シャフト21の外周面21Bに外部に突出する螺旋状の凸部22が設けられ、当該螺旋状の凸部22は、シャフト21の軸Aに沿って隣り合う部分に隙間を有する。かかる構成により、従来のようにダイレータを押し込み操作によって前進させるだけでなく、螺旋状の凸部22により、回転操作によっても前進させることができる。
【0048】
また、テーパ部24に設けられた螺旋状の凸部22の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチは、基端部23および先端部25に設けられた螺旋状の凸部22の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチよりも大きく構成されている。これにより、ダイレータ20を回転させた際に、シャフト21のテーパ部24においては、対象物(例、胃などの消化管、肝臓)との摩擦抵抗が基端部24および先端部25よりも小さくなる。この結果、消化管等の壁に形成された孔を容易に拡径することができ、対象物への食い込みによる対象物の損傷を抑制することができる。
【0049】
<第4実施形態>
図4は、本発明の第4実施形態に係るダイレータ30の先端側部分の一部断面図である。
また、
図4において、図示左側が体内に挿入される先端側(遠位側)、右側が医師等の手技者によって操作される基端側(手元側、近位側)である。
【0050】
図4において、ダイレータ30は、シャフト31と、螺旋状の凸部32と、シャフト31の基端に接続されたコネクタ9(
図3参照)とを備える。シャフト31および螺旋状の凸部32を構成する材料は、第3実施形態のダイレータ20のシャフト21および螺旋状の凸部22を構成する材料と同じである。
【0051】
シャフト31は、基端から先端へ貫通する内腔31Aが形成された中空状をなしている。また、シャフト31は、基端部33と、テーパ部34とを有する。先端部を有しない点で、本実施形態のダイレータ30は、第3実施形態のダイレータ20と構成が相違する。
【0052】
基端部33およびテーパ部34の構成は、第3実施形態の基端部23およびテーパ部24と同じである。また、螺旋状の凸部32は、シャフト31の外周面31Bに、外部(ダイレータ30の最外面、最外部)に突出するように設けられている。螺旋状の凸部32は、基端部33の先端側部分、テーパ部34に設けられ、シャフト31の軸方向に沿って隣り合う部分に隙間を有する。すなわち、螺旋状の凸部32の当該隣り合う部分は互いに離間している。螺旋状の凸部32は、シャフト31と鋳造等により一体に構成されている。
【0053】
テーパ部34に設けられた螺旋状の凸部32の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチは、基端部33に設けられた螺旋状の凸部32の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチよりも大きく構成されている。すなわち、螺旋状の凸部32の軸Aに沿って隣り合う部分について、基端部33におけるピッチをL31、テーパ部34におけるピッチをL32とした場合に、L31<L32となるように構成されている。なお、基端部33における各ピッチは、等しくてもよいし、異なっていてもよい。テーパ部34における各ピッチは、等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
本実施形態のダイレータ30は、シャフト31の外周面31Bに外部に突出する螺旋状の凸部32が設けられ、当該螺旋状の凸部32は、シャフト31の軸Aに沿って隣り合う部分に隙間を有する。かかる構成により、従来のようにダイレータを押し込み操作によって前進させるだけでなく、螺旋状の凸部32により、回転操作によっても前進させることができる。
【0055】
また、テーパ部34に設けられた螺旋状の凸部32の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチは、基端部33に設けられた螺旋状の凸部32の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチよりも大きく構成されている。これにより、ダイレータ30を回転させた際に、シャフト31のテーパ部34においては、対象物(例、胃などの消化管、肝臓)との摩擦抵抗が基端部34よりも小さくなる。この結果、消化管等の壁に形成された孔を容易に拡径することができ、対象物への食い込みによる対象物の損傷を抑制することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について述べてきたが、本発明は、これらの実施形態に限られるものではなく、種々の変形が可能である。
【0057】
例えば、第1実施形態のダイレータ1は、
図5に示すように、第2コイル5が第1コイル3の軸方向に沿ってその基端まで隣り合う部分に隙間を有するダイレータ100であってもよい。
【0058】
また、
図3に示した第3実施形態のダイレータ20では、螺旋状の凸部22について、テーパ部24に設けられた螺旋状の凸部22の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチは、基端部23および先端部25に設けられた螺旋状の凸部22の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチよりも大きく構成した。しかし、
図6に示すダイレータ40のように、テーパ部24および基端部23に設けられた螺旋状の凸部22の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチ(L21、L22)を、先端部25に設けられた螺旋状の凸部22の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチ(L23)よりも大きく構成してもよい。すなわち、L23<L21、L22となるように構成してもよい。なお、先端部25における各ピッチは、等しくてもよいし、異なっていてもよい。テーパ部24および基端部23における各ピッチは、等しくてもよいし、異なっていてもよい。これにより、ダイレータ40を回転させた際に、シャフト21のテーパ部24においては、先端部25よりも、対象物(例、胃などの消化管、肝臓)との摩擦抵抗が小さくなる。この結果、消化管等の壁に形成された孔を容易に拡径することができ、対象物への食い込みによる対象物の損傷を抑制することができる。
【0059】
また、
図7に示すダイレータ50のように、テーパ部24および先端部25に設けられた螺旋状の凸部22の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチ(L22、L23)を、基端部23に設けられた螺旋状の凸部22の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチ(L21)よりも大きく構成してもよい。すなわち、L21<L23、L22となるように構成してもよい。なお、基端部23における各ピッチは、等しくてもよいし、異なっていてもよい。テーパ部24および先端部25における各ピッチは、等しくてもよいし、異なっていてもよい。これにより、ダイレータ50を回転させた際に、シャフト21のテーパ部24においては、基端部23よりも、対象物(例、胃などの消化管、肝臓)との摩擦抵抗が小さくなる。この結果、消化管等の壁に形成された孔を容易に拡径することができ、対象物への食い込みによる対象物の損傷を抑制することができる。
【0060】
また、上述した第1実施形態では、シャフトおよび螺旋状の凸部の両方をコイルで構成したダイレータ1について説明し、第3、第4実施形態および第3実施形態の変形例では、シャフト21、31および螺旋状の凸部22、32を鋳造等により一体的に構成したダイレータ20、30、40、50について説明した。しかし、ダイレータは、シャフトのみをシャフト21、31と同様に鋳造等により形成し、螺旋状の凸部をコイルにより構成してもよい。すなわち、
図8に示すような、シャフト21および螺旋状の凸部(第2コイル5)により構成されたダイレータ200であってもよく、
図9に示すような、シャフト31および螺旋状の凸部(第2コイル5)により構成されたダイレータ300であってもよく、
図10に示すような、シャフト21および螺旋状の凸部(第2コイル5)により構成されたダイレータ400であってもよく、
図11に示すような、シャフト21および螺旋状の凸部(第2コイル5)により構成されたダイレータ500であってもよい。
【0061】
なお、螺旋状の凸部(第2コイル5)の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチは、
図8のダイレータ200において、L21、L23<L22となるように構成され、
図9のダイレータ300において、L31<L32となるように構成され、
図10のダイレータ400において、L23<L21、L22となるように構成され、
図11のダイレータ500において、L21<L22、L23となるように構成されている。
【0062】
また、
図12に示すように、ダイレータ1(
図1)、ダイレータ20(
図3)、ダイレータ200(
図8)において、テーパ部3D、24に設けられた第2コイル5および螺旋状の凸部22の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチは、基端部3C、23および先端部3E、25に設けられた第2コイル5および螺旋状の凸部22の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチよりも大きく構成した。すなわち、
図12に示すように、第2コイル5および螺旋状の凸部22の軸Aに沿って隣り合う部分について、先端部3E、25におけるピッチをLa、テーパ部3D、24におけるピッチをLb、基端部3C、23の先端側におけるピッチをLcとした場合に、La、Lc<Lbとなるように構成した。
【0063】
しかし、La<Lbの関係を満たしているのであれば、例えば、La<Lb=Lcであるダイレータ1A、20A、200A(
図13参照)、La<Lb<Lcであるダイレータ1B、20B、200B(
図14参照)であってもよい。また、Lc<Lbの関係を満たしているのであれば、例えば、Lc<Lb=Laであるダイレータ1C、20C、200C(
図15参照)、Lc<Lb<Laであるダイレータ1D、20D、200D(
図16参照)であってもよい。
【0064】
なお、ダイレータ1A、1B、1C、1Dは、
図1のダイレータと同様に、シャフトおよび螺旋状の凸部の両方をコイルで構成したダイレータの変形例であり、ダイレータ20A、20B、20C、20Dは、
図3のダイレータと同様に、シャフトおよび螺旋状の凸部の両方を鋳造等により一体的に構成したダイレータの変形例であり、そしてダイレータ200A、200B、200C、200Dは、
図8のダイレータと同様に、シャフトを鋳造等により形成し、螺旋状の凸部をコイルで構成したダイレータの変形例である。
【0065】
また、
図3のダイレータと同様に、シャフトおよび螺旋状の凸部の両方を鋳造等により一体的に構成したダイレータにおいては、螺旋状の凸部がシャフトの基端まで設けられていてもよい。また、他の図に示された何れのダイレータにおいても、シャフトの周囲に設けられる第2コイルは、シャフトの軸方向に沿ってその基端まで隣り合う部分に隙間を有していてもよいし、隙間を有していなくてもよい。
【0066】
また、上述の実施形態では、第1コイル3を10本の素線から構成された中空コイル体として説明したが、素線の本数は、10本に限られるものではなく、1本又は複数本であって良い。また、上述の実施形態では、第2コイル5を1本の素線から構成された中空コイル体として説明したが、素線の本数は、1本に限られるものではなく、1本又は複数本であって良い。
【0067】
また、第2実施形態の最先端部6は、多層体17の先端にロウ材を流し込んで形成されるものとしたが、多層体17の先端部近傍の第2コイル5および/または第1コイル3の外周を研磨して表面が平坦な最先端部6を形成するようにしてもよい。
【0068】
さらに、
図2に示す第2実施形態の最先端部6は、多層体17の先端に固着するものとしたが、最先端部6は、第3実施形態のシャフト21の先端、および第4実施形態のシャフト31の先端など、他の図に示されたいずれのダイレータの先端に固着してもよい。
【0069】
また、ダイレータ1、10、100の多層体7、17、ダイレータ20、30、40、50、200、300、400、500の螺旋状の凸部22、32の外周を樹脂によりコーティングしてもよい。例えば、
図17に示すように、第3実施形態のダイレータ20のシャフト21および螺旋状の凸部22の外周を樹脂26によりコーティングしてもよい。当該樹脂26により、滑り性を向上させることができる。また、このコーティングにより、シャフトを第1コイルから構成する実施形態において、第1コイルの素線間(シャフトを構成する第1コイルのシャフト軸に沿って隣り合う部分)における生体組織の噛み込みを抑制したり、あるいは螺旋状の凸部を第2コイルから構成する実施形態において、第2コイルとシャフトの間における生体組織の噛み込みを抑制したりすることができる。シャフト21の外周を樹脂26によりコーティングした場合、基端部23、テーパ部24、および先端部25を樹脂26によりコーティングした部分が、シャフト21に相当し、当該シャフト21の外周面21Bから外部に突出する部分が螺旋状の凸部22に相当する。樹脂26としては、例えば、ポリアミド樹脂やフッ素樹脂等の生体適合性を有する樹脂材料、あるいは親水性のコーティング材料等が挙げられ、厚さは、例えば、0.1〜300μmである。また、シャフト21、31と、螺旋状凸部22、32とを一体に構成したが、それらを別体に構成してもよい。
【0070】
図1〜
図17に示す実施形態において、シャフトの表面に被膜を有しないダイレータを示した。しかし、シャフトは、その表面(シャフトと螺旋状の凸部との間の部位を含む)の側に各種の被膜を有していてもよい。当該被膜としては、例えば、シャフトの表面の保護膜(代表例、めっき膜)、シャフトと螺旋状の凸部との密着性を向上させるための下地膜などが挙げられる。
【0071】
図1〜
図17に示す実施形態において、螺旋状の凸部は、刃物を構成していないことが好ましい。本実施形態のダイレータは、対象物(例、患者の胃等の消化管の壁)に予め形成された孔を拡張するものである。従って、螺旋状の凸部が、刃物を構成していると、孔の内面の生体組織を損傷させるからである。
【0072】
従って、螺旋状の凸部は、その断面形状(例えば、
図3に示す螺旋状の凸部の螺旋方向に直交する断面の形状)の、シャフトの径方向外側の端部に、鋭角の角部を有しないことが好ましい。すなわち、当該端部は、例えば、鈍角の角部、あるいは曲線(例、円や楕円の一部を含む曲線)を含む形状で構成された部位を有していることが好ましい。
ダイレータ20のシャフト21は、先端の外径が基端の外径よりも小さいテーパ部24と、テーパ部24の先端側に設けられた先端部25およびテーパ部24の基端側に設けられた基端部23と、または、前記先端部を有さずに、テーパ部24の基端側に設けられた基端部23とを有する。シャフト21が先端部を有さず基端部23を有する場合、テーパ部24に設けられた螺旋状の凸部22の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチは、基端部23に設けられた螺旋状の凸部22の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチよりも小さく、シャフト21が基端部23および先端部25を有する場合、テーパ部24に設けられた螺旋状の凸部22の軸に沿って隣り合う部分のピッチは、先端部25または基端部23に設けられた螺旋状の凸部22の軸Aに沿って隣り合う部分のピッチよりも大きい。