(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
平歯車の端面に設けた凹部内にトルクリミッタを構成すると、内周側にトルクリミッタが配置されるスペースを確保しなければならない分、この平歯車を径方向で小さくすることが困難となる。
【0007】
ここで、凹部に外接する外接円と平歯車の歯先円の間を狭くすれば、平歯車の内周側にトルクリミッタを構成するスペースを確保しながら平歯車を径方向で小さくすることが可能となる。しかし、このようにした場合には、平歯車において凹部の外周側に位置する筒状部が、トルクリミッタを介して伝達される力によって損傷しやすくなるという問題がある。特に、トルクリミッタを、凹部の環状内周面に形成した内歯と、内歯に係止する係止爪を備えるトルクリミッタ部材から構成する場合には、凹部に外接する外接円と平歯車の外歯の歯先円との間を狭くすると、筒状部において外周側に外歯の歯底が位置し、かつ、内周側に内歯の歯底が位置する部分では、径方向の厚さが極端に薄くなる。また、この薄い部分は軸線方向に延びており、周方向に一定間隔で複数形成される。この結果、平歯車の強度が低下して、損傷しやすくなる。
【0008】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、歯車の端面に設けた凹部内にトルクリミッタを構成する際に、当該歯車の強度の低下を抑制しながら、当該歯車の小型化を図ることができる歯車機構を提供することにある。また、モータの回転を伝達する輪列中にトルクリ
ミッタを搭載する歯車機構を備える冷蔵庫の引き出し駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明
は、モータと、ラックと、前記ラックに噛合する出力歯車と、前記モータの回転を前記出力歯車に伝達する回転伝達機構とを有し、前記ラックの直動によって引き出しを移動させる冷蔵庫の引き出し駆動装置において、前記回転伝達機構は、第1歯車と、前記第1歯車と同軸に配置されて前記第1歯車側の端面に凹部を備える第2歯車と、前記第1歯車と前記第2歯車との間に設けられたトルクリミッタと
、を備えた歯車機構と、モータによって回転駆動されるウォームギヤと、を有し、前記ウォームギヤは前記第2歯車に噛合し、前記トルクリミッタは、前記凹部の環状内周面に設けられた内歯と、前記内歯に係止可能な係止爪を備え前記凹部内で前記第1歯車と一体に回転するトルクリミッタ部材と、を備え、前記第2歯車は、軸線に対して傾く歯底を備える傾歯歯車であり、前記凹部の底面から前記軸線の方向に延びる筒部を備え
、前記内歯の歯底は、前記軸線と平行に延びており、前記第2歯車の外周面に形成された歯底は、前記軸線に平行な方向の一方の端部分と他方の端部分が周方向にずれており、前記軸線の方向から見たときに重なっておらず、前記第2歯車を径方向から見たときに、前記第2歯車に形成した前記内歯の歯底と前記傾歯歯車の歯底とが重なった位置において、前記内歯の歯底に対して前記傾歯歯車の歯底とが交差して
おり、且つ、前記第2歯車を径方向から見たときに、前記内歯の歯底に対して前記傾歯歯車の歯先が交差するように重なっており、前記モータの回転は、前記ウォームギヤ、前記第2歯車および前記歯車機構の前記第1歯車をこの順番に伝達されることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、
モータの回転をラックに伝達する回転伝達機構がトルクリミッタを有する歯車機構を備えている。従って、モータの回転によってラックが直動移動して引き出しが開方向に移動しているときに、ユーザーによって強制的にその移動が阻止された場合でも、ユーザーによって引き出しに加えられた大きな力がトルクリミッタよりもモータ側まで伝達されることを防止できる。よって、引き出し側からの力によって回転伝達機構やモータが損傷することを防止できる。また、歯車機構を径方向で小型化することが容易なので、引き出し駆動装置を小型化することも容易となる。また、端面にトルクリミッタ用の凹部を備える第2歯車は傾歯歯車であり、凹部の外周側の筒状部に形成されている外歯の歯底は軸線に対して傾いた方向に延びている。したがって、トルクリミッタを、凹部の環状内周面に形成した内歯と、内歯に係止する係止爪を備えるトルクリミッタ部材から構成した場合でも、筒状部に軸線方向に延びる薄い部分が周方向に一定間隔で形成されることを防止或いは抑制できる。この結果、第2歯車の強度の低下を抑制できるので、第2歯車を平歯車とした場合と比較して端面の凹部に外接する外接円と歯先円の間を狭くすることが可能となり、第2歯車を径方向で小さくできる。また、第2歯車を小さくできるので、歯車機構を径方向で小型化することが容易となる。
【0011】
また、本発明によれば、前記第2歯車の外周面に形成された歯底は、前記軸線方向の一方の端部分と他方の端部分が周方向にずれており、前記軸線方向から見たときに重なっ
ておらず、前記第2歯車を径方向から見たときに、前記第2歯車に形成した前記内歯の歯底と前記傾歯歯車の歯底とが重なった位置において、前記内歯の歯底に対して前記傾歯歯車の歯底とが交差しているので、軸線方向に延びる薄い部分が筒状部に形成されることがない。更に、トルクリミッタを搭載する歯車機構の第2歯車と噛合する歯車をウォームギヤとしているので、傾歯歯車である第2歯車と噛合する歯車を傾歯歯車とする場合と比較して、加工の困難な傾歯歯車の点数を抑制できる。
さらに、本発明によれば、第2歯車を径方向から見たときに、内歯の各歯底に対して第2歯車の外周面の歯先が必ず交差して重な
っているので、軸線方向に延びる薄い部分が筒状部に形成されることがない。
【0012】
本発明において、前記トルクリミッタ部材は、前記第1歯車と同軸に設けられた胴部と、前記胴部から外周側に突出して周方向に延びており、先端側部分が径方向に変位可能な腕部と、を備え、前記係止爪は、前記腕部の先端部分に設けられており、前記腕部は、前記軸線方向から見たときに前記第1歯車よりも外周側に位置しており、前記第1歯車および前記トルクリミッタ部材は、樹脂により一体成型されているものとすることができる。このような構成のトルクリミッタでは、トルクリミッタ部材を径方向で大きく形成することによりトルクのばらつきを抑制してトルクリミッタの動作を安定したものとすることができる。従って、トルクリミッタ部材を収納する第2歯車の凹部を径方向に大きく形成する必要性が生じるが、かかる場合でも、第2歯車が傾歯歯車とされているので、第2歯車の強度の低下を抑制しながら、径方向への拡大も抑制できる。
【0013】
本発明において
、前記筒部の中心孔は、前記第2歯車を貫通しており、当該第2歯車を回転可能に支持する支軸が挿入される軸受となっているものとすることができる。このような構成では、凹部内に筒部を備えることによってトルクリミッタ部材が径方向に大きくなり、第2歯車の凹部を径方向に大きく形成しなければならない場合が発生するが、かかる場合でも、第2歯車を傾歯歯車とされているので、第2歯車の強度の低下を抑制しながら、径方向への拡大も抑制できる。
【0016】
本発明において、前記第2歯車から前記ウォームギヤを回転させるために必要なトルクは、前記トルクリミッタが前記第2歯車から前記第1歯車へ回転を伝達することが可能な最大のトルクよりも小さいことが望ましい。このようにすれば、引き出しが小さな力で閉位置に向かって押し込まれたときに、ウォームギヤを回転させながら、引き出しを移動させることが可能となる。
【0017】
本発明において、前記歯車機構は、前記出力歯車の回転軸と平行で前記ラックの直動方向と直交する方向に前記軸線を向け、前記直動方向で前記モータと前記出力歯車の間に配置されていることが望ましい。このようにすれば、歯車機構を径方向で小さくすることにより、装置をラックの直動方向で小型化することができる。
【0018】
本発明において、前記歯車機構は、前記出力歯車の回転軸と平行で前記ラックの直動方向と直交する方向に前記軸線を向け、前記直動方向および前記軸線方向と直交する直交方向で前記ウォームギヤと前記ラックの間に配置されていることが望ましい。このようにすれば、歯車機構を径方向で小さくすることにより、装置を直交方向で小型化することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、
モータの回転をラックに伝達する回転伝達機構がトルクリミッタを有する歯車機構を備えている。従って、モータの回転によってラックが直動移動して引き出しが開方向に移動しているときに、ユーザーによって強制的にその移動が阻止された場合でも、ユーザーによって引き出しに加えられた大きな力がトルクリミッタよりもモータ側まで伝達されることを防止できる。よって、引き出し側からの力によって回転伝達機構やモータが損傷することを防止できる。また、歯車機構を径方向で小型化することが容易なので、引き出し駆動装置を小型化することも容易となる。また、端面にトルクリミッタ用の凹部を備える第2歯車は傾歯歯車であり、凹部の外周側の筒状部に形成されている外歯の歯底は軸線に対して傾いた方向に延びている。したがって、トルクリミッタを、凹部の環状内周面に形成した内歯と、内歯に係止する係止爪を備えるトルクリミッタ部材から構成した場合でも、筒状部に軸線方向に延びる薄い部分が周方向に一定間隔で形成されることを防止或いは抑制できる。よって、第2歯車の強度の低下を抑制しながら凹部に外接する外接円と歯先円の間を狭くすることが可能となり、第2歯車を径方向で小さくできる。また、第2歯車を小さくできるので、歯車機構を径方向で小型化することが容易となり、引き出し駆動装置を小型化することができる。更に、第2歯車を径方向から見たときに、内歯の歯底と傾歯歯車の歯底とが重なった位置において、内歯の歯底に対して傾歯歯車の歯底とが交差して
おり、且つ、第2歯車を径方向から見たときに、内歯の各歯底に対して第2歯車の外周面の歯先が必ず交差して重なっているので、軸線方向に延びる薄い部分が筒状部に形成されることがない。また、トルクリミッタを搭載する歯車機構の第2歯車と噛合する歯車をウォームギヤとしているので、傾歯歯車である第2歯車と噛合する歯車を傾歯歯車とする場合と比較して、加工の困難な傾歯歯車の点数を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(全体構成)
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態の引き出し駆動装置を説明する。
図1は引き出し駆動装置の冷蔵庫への搭載状態の説明図である。
図2は本発明を適用した引き出し駆動装置の斜視図である。
図1に示すように、本例の引き出し駆動装置1は、冷蔵庫100に搭載され、引き出し101となっている冷蔵室、冷凍室、或いは、野菜室を開く。引き出し101は、冷蔵庫100を正面から見たときに、引き出し101を挟んだ幅方向の両側で前後方向に延びる1対のレール102上にスライド可能な状態で載せられている。
【0022】
引き出し101においてレール102上に位置する外枠部103にはローラー104が搭載されており、引き出し101はレール102に沿って円滑に移動する。引き出し101は、引き出し101の箱部105が冷蔵庫100内に収納された閉位置101Aと、箱部105が冷蔵庫100の外側に配置された開放位置101Bの間を移動する。
【0023】
本例の冷蔵庫100では、一対のレール102の後端部分に、後方に向かって下方に傾斜する傾斜レール部分102aが設けられている。引き出し101が閉位置101Aの近傍に配置されると、引き出し101は、後側のローラー104が傾斜レール部分102a上に配置された状態となり、引き出し101の自重によって後方に移動して、閉位置101Aに配置される。
【0024】
引き出し駆動装置1は、引き出し101と冷蔵庫100の一方の側壁(不図示)の間に配置されている。引き出し101を開けるためのスイッチ(不図示)が操作されると、冷蔵庫100の制御部106から引き出し駆動装置1に駆動信号が送信される。引き出し駆動装置1は、駆動信号によって動作して、箱部105が冷蔵庫100内に収納されている閉位置101Aにある引き出し101を閉位置101Aから所定距離だけ前方に離れた開位置101Cまで押し出す。開位置101Cは閉位置101Aと開放位置101Bの間であって、閉位置101Aに近い位置である。
【0025】
図2に示すように、引き出し駆動装置1は全体として直方体形状をしたケース2を有している。ケース2は引き出し駆動装置1の幅方向に配列された第1ケース3と第2ケース4を備えている。ケース2の前面2aの上側部分には開口部5が設けられている。開口部5からは引き出し101を前方に押し出すラック6の先端部分が外側に突出している。
図1に実線で示す状態は、ラック6が待機位置6Aに配置されている状態である。ラック6は引き出し101を押し出す際に、
図2において2点鎖線で示す突出位置6Bまで前進する。
【0026】
ラック6の先端側は、引き出し101に設けられた被操作部107(
図1参照)への当接部になっている。被操作部107は引き出し101の箱部105の側面から冷蔵庫100の幅方向を引き出し駆動装置1の側に向かって突出する突出部である。
図1に示すように、引き出し駆動装置1は、ラック6が待機位置6Aに配置された状態で、ラック6の先端側が、閉位置101Aにある引出しの被操作部107に後方から当接する設置位置に搭載される。
【0027】
ケース2からは後方に向かって配線8が引き出されている。引き出し101を開けるためのスイッチが操作されると配線8を介して冷蔵庫100の制御部106から引き出し駆動装置1に駆動信号が入力される。駆動信号が入力されると、モータ11(
図3参照)が駆動されてラック6が待機位置6Aから突出位置6Bに直進する。ラック6の移動によって引き出し101の被操作部107が前方に推されるので、引き出し101は閉位置101Aからラック6の移動距離分だけ前方に離れた開位置101Cに配置される。
【0028】
(内部構造)
図3は第2ケース4を取り外した場合の引き出し駆動装置1の側面図である。
図3(a)はラック6が待機位置6Aにある状態を示し、
図3(b)はラック6が突出位置6Bにある状態を示す。
図4は
図3(a)のA−A´線に沿った輪列展開図である。なお、以下の説明では、引き出し駆動装置1が冷蔵庫100に搭載された状態で冷蔵庫100の上下方向に対応する方向をX方向、冷蔵庫100の前後方向に対応する方向をY方向、冷蔵庫100の幅方向に対応する方向をZ方向とする。また、冷蔵庫100の上方(上側)、下方(下側)をそれぞれX方向の上方(上側)、下方(下側)、冷蔵庫100の前方(前側)、後方(後側)をそれぞれY方向の前方(前側)、後方(後側)として、引き出し駆動装置1を説明する。
【0029】
図3に示すように、第1ケース3におけるX方向の上側部分にはラック6が搭載されている。ラック6はY方向に長く延びており、その前端部分が第1ケース3の前板12よりも前方に突出している。
図3(a)に示すように、ラック6が待機位置6Aに配置されている状態では、ラック6の後端は、第1ケース3の後板13の近傍に位置している。ラック6は、第1ケース3の側板14からZ方向に突出して設けられた第1直動ガイド15(
図3(b)参照)、および、第2ケースの側板16からX方向に突出して設けられた第2直動ガイド17(
図4参照)などによってY方向にスライド可能な状態でケース2に支持されている。ラック6の下側には歯部18が設けられている。
【0030】
第1ケース3におけるX方向の下側部分の後側にはモータ11が搭載されている。モータ11はそのモータ軸線L0がY方向に延びるように配置されている。すなわち、モータ11はそのモータ軸線L0がラック6の直動方向(Y方向)に平行となるように配置されている。モータ11の反出力側であるY方向の後方には、回路基板19が配置されている。回路基板19はX方向に延びており、回路基板19の前面の下端部分にモータ11が搭載されている。回路基板19の前面の上端部分にはタクトスイッチ20が搭載されている。
【0031】
第1ケース3におけるモータ11の前方の空間には、モータ11の回転を減速してラック6に伝達する回転伝達機構21が配置されている。回転伝達機構21は、モータ11の出力軸に取り付けられたウォームギヤ22、第1複合歯車(歯車機構)23、第2複合歯車24および出力歯車25を備えている。出力歯車25は第1ケース3の前端部分に配置されてラック6の歯部18と噛合している。
図3(a)に示す状態からモータ11が第1方向に駆動されて出力歯車25が時計周りCW方向に1回転すると、ラック6は、待機位置6Aから
図3(b)に示す突出位置6Bまで移動する。
図3(b)に示す状態からモータ11が第1方向とは逆の第2方向に駆動されて出力歯車25が反時計周りCCW方向に1回転すると、ラック6は、突出位置6Bから
図3(a)に示す待機位置6Aまで移動する。
【0032】
ウォームギヤ22はモータ11の出力軸に同軸に取り付けられている。ウォームギヤ22におけるモータ11とは反対側の端部分は第1ケース3に固定された軸受27によって回転自在に支持されている。
【0033】
第1複合歯車23は、
図4に示すように、ウォームギヤ22と噛合する第1大径歯車(第2歯車)31と、第1大径歯車31と同軸で当該第1大径歯車31よりも径の小さい第1小径歯車(第1歯車)32を備えている。第1大径歯車31は第1ケース3の側に位置し、第1小径歯車32が第2ケース4の側に位置している。第1大径歯車31と第1小径歯車32は別体であり、第1大径歯車31と第1小径歯車32の間には、これら第1大径歯車31と第1小径歯車32と同軸にトルクリミッタ33が構成されている。すなわち、
第1複合歯車23はトルクリミッタ33を搭載する歯車機構である。
【0034】
第1大径歯車31は、Z方向に貫通する第1中心孔34を備えている。第1中心孔34には第1ケース3の側板14から第2ケース4の側に向ってZ方向に突出する第1支軸35が挿入されている。より詳細には、第1支軸35は、Z方向の途中に円環状の段部36を備えており、第1複合歯車23は段部36において上方を向く環状端面36aに第1中心孔34の下端開口の開口縁が当接した状態で段部36よりも第2ケース4の側に支持されている。そして、第1中心孔34には、第1支軸35の段部36よりも上側部分が挿入されている。これにより、第1複合歯車23は第1支軸35の第1軸線L1(軸線)回りに回転可能に支持されている。また、第2ケース4において第1支軸35と対向する位置には、第2ケース4の側板14から第1ケース3の側に向かって突出する第1突部37が設けられており、第1突部37は第1支軸35の先端に設けられた第1凹部38に挿入されている。第1複合歯車23は第2ケース4の側板16と第1支軸35の段部36によってZ方向の移動が規制されている。
【0035】
第2複合歯車24は、第1複合歯車23の第1小径歯車32と噛合する第2大径歯車41と、第2大径歯車41と同軸で当該第2大径歯車41よりも径の小さい第2小径歯車42を備えている。第2小径歯車42は第1複合歯車23の第1大径歯車31よりも第1ケース3の側に位置し、第2大径歯車41は第1複合歯車23の第1大径歯車31よりも第2ケース4の側に位置している。第2複合歯車24は、第2大径歯車41と第2小径歯車42が一体に成型された樹脂成型品である。
【0036】
第2複合歯車24はZ方向に貫通する第2中心孔43を備えている。第2中心孔43には第1ケース3の側板14から第2ケース4の側に向ってZ方向に突出する第2支軸44が挿入されており、これにより、第2複合歯車24は第2支軸44の第2軸線L2回りに回転可能に支持されている。第2ケース4において第2支軸44と対向する位置には、第2ケース4の側板14から第1ケース3の側に向かって突出する第2突部45が設けられており、第2突部45は第2支軸44の先端に設けられた第2凹部46に挿入されている。第2複合歯車24は、第1ケース3の側板14と第2ケース4の側板16によって各Z方向の移動が規制されている。
【0037】
出力歯車25は、第2小径歯車42と噛合する大径歯車51と、当該大径歯車51よりも小径でラック6の歯部18と噛合する小径歯車52を備えている。大径歯車51が第1ケース3の側に位置し、小径歯車52が第2ケース4の側に位置している。小径歯車52は、ラック6が待機位置6Aに配置されている状態では、
図3(a)に示すように、ラック6の歯部18の先端部18aと噛合する。一方、ラック6が突出位置6Bに配置された場合には、
図3(b)に示すように、小径歯車52はラック6の歯部18の後端部18bに噛合する。小径歯車52の大径歯車51とは反対側の端面(第2ケース4側の端面)には大径歯車51および小径歯車52と同軸にカム53が設けられている。カム53は、
図3に示すように、周方向の一箇所に半径方向に突出する突部54を備えている。出力歯車25は、大径歯車51、小径歯車52およびカム53が一体に成型された樹脂成型品である。
【0038】
図4に示すように、出力歯車25はZ方向に貫通する中心孔55を備えている。中心孔55には第1ケース3の側板14から第2ケース4の側に向ってZ方向に突出する第3支軸56が挿入されており、これにより出力歯車25は第3支軸56の第3軸線L3回りに回転可能に支持されている。また、第2ケース4において第3支軸56と対向する位置には、第2ケース4の側板14から第1ケース3の側に向かって突出する第3突部57が設けられており、第3突部57は第3支軸56の先端に設けられた第3凹部58に挿入されている。出力歯車25は、第1ケース3の側板14と第2ケース4の側板16によって各
Z方向の移動が規制されている。
【0039】
ここで、回転伝達機構21をZ方向と直交する方向(第1〜第3軸線L1〜L3と直交する方向)から見た場合には、
図4に示すように、第1複合歯車23は、出力歯車25の小径歯車52およびカム53の側方に位置しており、出力歯車25の大径歯車51よりも第2ケース4の側に配置されている。また、回転伝達機構21をZ方向から見た場合には、
図3に示すように、第1複合歯車23はY方向(ラック6の移動方向およびモータ11のモータ軸線L0方向)において、モータ11と出力歯車25の間に配置されており、第1複合歯車23の第1大径歯車31と出力歯車25の大径歯車51が部分的に重なっている。また、第1複合歯車23はX方向(ラック6の移動方向およびモータ11のモータ軸線L0方向と直交する直交方向)において、ラック6とモータ11の間に配置されている。
【0040】
次に、
図3に示すように、回路基板19と出力歯車25のカム53の間にはスイッチ部材61が架け渡されている。スイッチ部材61はY方向に延びており、その前端部分にはカム53に摺動する摺動部62aと、Z方向に貫通した長穴63が設けられている。摺動部62aはスイッチ部材61の側板14の側の面に形成された凹部62の周壁面であり、長穴63はこの凹部62の底面を貫通している。凹部62にはZ方向からカム53が挿入されている。スイッチ部材61のY方向の後端部は回路基板19に搭載されたタクトスイッチ20を操作する操作部64となっている。また、スイッチ部材61において摺動部62aよりも操作部64に近い部分にはZ方向に貫通する矩形の貫通穴65が形成されている。貫通穴65内には、第1ケース3からZ方向の突出する係止部66と圧縮コイルバネ67が配置されている。圧縮コイルバネ67は、その軸線をY方向に向けた状態で係止部66の前方に配置されており、後端が係止部66に係止され、前端がスイッチ部材61に係止されている。これにより、圧縮コイルバネ67は、スイッチ部材61をタクトスイッチ20の側に向かって付勢している。
【0041】
ここで、出力歯車25が時計回りのCW方向に1回転する間にカム53もCW方向に1回転する。カム53が回転すると、カム53の突部54が摺動部62aを摺接して、スイッチ部材61をY方向に往復移動させる。すなわち、スイッチ部材61は、
図3(a)に示すようにスイッチ部材61の操作部64がタクトスイッチ20から離間した離間位置から、操作部64がタクトスイッチ20を押圧する押圧位置を経由し、再び、
図3(b)に示すように、スイッチ部材61の操作部64がタクトスイッチ20から離間する離間位置に戻る。従って、出力歯車25が1回転する間に、タクトスイッチ20は、オフの状態からオンの状態を径由し、再びオフの状態に戻る。タクトスイッチ20の状態に基づく信号は、配線8を介して冷蔵庫100の制御部106に入力される。冷蔵庫100の制御部106は、タクトスイッチ20がオフのときに、ラック6が待機位置6Aまたは突出位置6Bのいずれかに配置されていることを検出する。
【0042】
(第1複合歯車)
図5(a)は第1複合歯車23の軸方向から見た図であり、
図5(b)は第1複合歯車23を第2ケース4の側から見た場合の斜視図であり、
図5(c)は第1複合歯車23の分解斜視図である。
図6(a)は第1大径歯車31の軸方向から見た図であり、
図6(b)は第1大径歯車31の側面図であり、
図6(c)は第1大径歯車31を第2ケース4の側から見た場合の斜視図である。
図7(a)は第1小径歯車32およびトルクリミッタ部材の軸方向から見た図であり、
図7(b)は第1小径歯車32およびトルクリミッタ部材を第2ケース4の側から見た場合の斜視図であり、
図7(c)は第1小径歯車32およびトルクリミッタ部材を第1ケース3の側から見た場合の斜視図である。
【0043】
図5および
図6に示すように、第1複合歯車23の第1大径歯車31は外歯70が傾歯
となっている傾歯歯車である。
図6(a)、(c)に示すように、第1大径歯車31は第1小径歯車32側の端面71に凹部72を備えており、凹部72の外周側は筒状部73となっている。凹部72の中心には、凹部72の底面からZ方向を第1小径歯車32の側に延びる筒部74が設けられている。筒部74の中心孔は第1複合歯車23の第1中心孔34であり、凹部72の底面72aを第1軸線L1方向(Z方向)に貫通している。換言すれば、第1大径歯車31は外周面に傾歯が形成された筒状部73と、筒状部73の中心に筒状部73と同軸に設けられた筒部74と、筒部74および筒状部73の第1小径歯車32とは反対側の端部を連続させている環状の底部75を備えている。第1大径歯車31の第1ケース3の側の下端面76、すなわち、底部75の下端面76は第1軸線L1と直交する平坦面となっている。凹部72の環状内周面72bには内歯77が設けられている。内歯77の歯先77aおよび歯底77bは第1軸線L1と平行に延びている。第1大径歯車31は樹脂成型品である。
【0044】
図6(b)に示すように、第1大径歯車31の外歯70、すなわち、筒状部73の外周面に形成されている傾歯は、その歯先70aが第1軸線L1に対して傾斜しており、歯底70bは第1軸線L1に対して傾斜している。また、歯底70bは第1大径歯車31の第1軸線L1方向の一方側(第1ケース3の側)の端部P1と他方側(第2ケース4の側)の端部P2が周方向で前後にずれており、第1軸線L1方向から見たときに重なっていない。すなわち、第1大径歯車31では、周方向のいずれの位置においても、歯底70bは、第1軸線L1と平行な方向で筒状部73の上端から下端まで連続していない。
【0045】
図7に示すように、第1小径歯車32は、第1大径歯車31の側にトルクリミッタ部材81を備えている。トルクリミッタ部材81は第1大径歯車31に設けられた内歯77とともにトルクリミッタ33を構成するものであり、第1小径歯車32と同軸に配置されている。第1小径歯車32とトルクリミッタ部材81とは一体に成型された樹脂成型品である。第1小径歯車32およびトルクリミッタ部材81の中心には第1軸線L1方向(Z方向)に貫通する貫通穴82が設けられている。
【0046】
トルクリミッタ部材81は、筒状の胴部83と、胴部83から外周側に突出して周方向(CW方向)に延びており、先端側部分が径方向に変位可能な腕部84を備えている。腕部84は胴部83の周方向に等間隔で6本設けられている。腕部84の先端部分には内歯77に係止可能な係止爪85が設けられている。胴部83の第1ケース3の側の下面における貫通穴82の開口縁部分には、
図7(c)に示すように、第1大径歯車31の側に向かって一定高さで突出する環状突出部86が設けられている。
【0047】
より詳細には、腕部84は胴部83の外周面から径方向を外側に突出する基部87と、基部87の外周側の端部から周方向の一方側に向って胴部83の外周面に沿って径方向に延びる円弧部88を備えている。円弧部88と胴部83の外周面との間には隙間が形成されている。係止爪85は円弧部88の先端部分から外周側に突出している。係止爪85はZ方向に延びる突条であり、Z方向から見た形状が山型をしている。ここで、胴部83の外径寸法は第1小径歯車32の歯先円の直径寸法よりも長い。従って、
図7(a)、(b)に示すように、Z方向から見た場合に、腕部84および係止爪85は第1小径歯車32よりも外周側に位置している。
【0048】
トルクリミッタ33は、
図5に示すように、第1小径歯車32と一体のトルクリミッタ部材81を第1大径歯車31の凹部72内に配置することにより構成される。すなわち、第1小径歯車32およびトルクリミッタ部材81を貫通する貫通穴82に第1大径歯車31の筒部74を挿入する。これにより、第1小径歯車32およびトルクリミッタ部材81が第1大径歯車31上で第1軸線L1回りに回転可能な状態とする。次に、トルクリミッタ部材81の係止爪85を第1大径歯車31の内歯77の歯底7
7bの内周側に位置させて、係止爪85と内歯77を係止させた状態とし、トルクリミッタ部材81を第1大径歯車31の凹部72内に挿入する。これにより、トルクリミッタ33が構成される。
【0049】
なお、本例では、トルクリミッタ部材81のZ方向の高さ寸法は第1大径歯車31の凹部72の深さ寸法よりも短く、トルクリミッタ部材81は凹部72内に完全に収納される。従って、トルクリミッタ部材81が第1大径歯車31の凹部72内に収納された状態では、Z方向と直交する方向から見た場合に、第1小径歯車32の歯部18と第1大径歯車31の歯部18がZ方向で隣接配置された第1複合歯車23が構成される。
【0050】
(引き出し駆動装置の動作)
図1、
図3を参照して引き出し駆動装置1が引き出し101を開く開動作を説明する。まず、引き出し101は、
図1に実線で示すように、閉位置101Aに配置されているものとする。また、引き出し駆動装置1は、
図3(a)に示すように、そのラック6が待機位置6Aに配置されているものとする。ラック6の先端側は、引き出し101に設けられた被操作部107に後方から当接している。
【0051】
この状態で引き出し101を開くためのスイッチが操作されると、冷蔵庫100の制御部106から配線8を介して駆動信号が入力される。これによりモータ11が第1方向に駆動される。モータ11の第1方向への回転は、ウォームギヤ22、第1複合歯車23、第2複合歯車24を介して減速されながら出力歯車25に伝達される。これにより出力歯車25が時計周りCW方向に1回転すると、出力歯車25の回転に伴ってラック6が待機位置6Aから
図3(b)に示す突出位置6Bまで移動する。ラック6の移動によって引き出し101は
図1に示す閉位置101Aから開位置101Cに押し出される。
【0052】
ここで、出力歯車25がCW方向に1回転する間にスイッチ部材61はY方向に往復移動し、タクトスイッチ20を、オフの状態からオンの状態を径由して再びオフの状態に変化させる。冷蔵庫100の制御装置は、タクトスイッチ20がオフの状態に戻ると、ラック6が突出位置6Bに到達したものと判断して、モータ11を第1方向とは反対の第2方向に駆動する。
【0053】
モータ11の第2方向への回転は、ウォームギヤ22、第1複合歯車23、第2複合歯車24を介して減速されながら出力歯車25に伝達される。これにより出力歯車25が反時計周りCCW方向に1回転すると、出力歯車25の回転に伴ってラック6が突出位置6Bから
図3(a)に示す待機位置6Aに戻る。
【0054】
ここで、出力歯車25がCCW方向に1回転する間にスイッチ部材61はY方向に往復移動し、タクトスイッチ20を、オフの状態からオンの状態を径由して再びオフの状態に変化させる。冷蔵庫100の制御装置は、タクトスイッチ20がオフの状態に戻ると、ラック6が待機位置6Aに到達したものと判断して、モータ11を停止させる。
【0055】
ラック6が待機位置6Aに配置された後に、ユーザーが引き出し101を冷蔵庫100の側に向かって押し込めば、引き出し101はラック6と干渉することなく、閉位置101Aまで移動する。従って、ユーザーは軽い力で引き出し101を閉じることができる。
【0056】
ここで、例えば、モータ11が第1方向に駆動されてラック6がY方向を前方に移動している間に、ユーザーによって引き出し101の移動が阻止されると、ユーザーによって引き出し101に加えられた大きな力がラック6から回転伝達機構21を介してモータ11の側に向かう。
【0057】
このような力はトルクリミッタ33の最大伝達トルク(トルクリミッタ33が第1大径
歯車31と第1小径歯車32との間で回転を伝達することが可能な最大のトルク)を超える程に大きな力となる。従って、この場合には、トルクリミッタ部材81の係止爪85と第1大径歯車31の内歯77との間の係止が解除される。この結果、第1複合歯車23を構成している第1大径歯車31と第1小径歯車32が相対回転し、ラック6からモータ11に向かう回転の伝達経路が遮断される。従って、引き出し101側からの力によって回転伝達機構21を構成する部材やモータ11を損傷させてしまうことを防止できる。
【0058】
また、モータ11が第2方向に駆動されてラック6がY方向の後方に移動している間に、停電が発生すると、ラック6が待機位置6Aまで戻らずに、突出位置6Bと待機位置6Aの間で停止することがある。このようなときにユーザーによって引き出し101が押し込まれた場合にも、ユーザーによって引き出し101に加えられた力はラック6から回転伝達機構21を介してモータ11の側に向かう。
【0059】
ここで、ラック6からモータ11の側に向かう力がトルクリミッタ33の最大伝達トルクを超える程に大きな力の場合には、トルクリミッタ部材81の係止爪85と第1大径歯車31の内歯77との間の係止が解除される。この結果、第1複合歯車23を構成している第1大径歯車31と第1小径歯車32が相対回転し、ラック6からモータ11に向かう回転伝達機構21が遮断される。従って、引き出し101側からの力によって回転伝達機構21を構成する部材やモータ11を損傷させてしまうことを防止できる。
【0060】
一方、ラック6からモータ11の側に向かう力がトルクリミッタ33の最大伝達トルク以下の場合には、その力はモータ11まで伝達される。すなわち、本例では、回転伝達機構21において、第1大径歯車31を回転させてウォームギヤ22を回転させるために必要なトルクが、トルクリミッタ33の最大伝達トルクよりも小さく設定されている。従って、ラック6からモータ11の側に向かう力がトルクリミッタ33の最大伝達トルク以下の場合には、ラック6が待機位置6Aに向かって移動する間に、第1大径歯車31によってウォームギヤ22が回転させられ、モータ11も第2方向に回転する。
【0061】
なお、本例では、一対のレール102の後端部分には、後方に向かって下方に傾斜する傾斜レール部分102aが設けられている。そして、引き出し101が閉位置101Aの近傍に配置されると、引き出し101の後端部分が傾斜レール部分102a上に配置された状態となり、引き出し101は自重によって閉位置101Aまで移動する。また、閉位置101Aに移動した引き出し101は、引き出し駆動装置1が駆動されるまで、或いは、ユーザーによって引き出されるまで、自重によって閉位置101Aに配置された閉状態が維持されるようになっている。
【0062】
ここで、停電の発生によってラック6が待機位置6Aまで戻らずに、突出位置6Bと待機位置6Aの間で停止しているときに、引き出し101が閉位置101Aの近傍に配置されると、引き出し101は、その自重でラック6を待機位置6Aの方向に押し込みながら、閉位置101Aに移動する。ここで、本例では、引き出し101の自重によってラック6からモータ11の側に向かう力は、トルクリミッタ33の最大伝達トルク以下である。また、本例では、回転伝達機構21において第1大径歯車31を回転させてウォームギヤ22を回転させるために必要なトルクは、トルクリミッタ33の最大伝達トルクよりも小さく設定されている。従って、引き出し101が自重によって閉位置101Aの近傍から閉位置101Aに向かって移動し、これに伴いラック6が待機位置6Aに向かって移動する間に、第1大径歯車31によってウォームギヤ22が回転し、モータ11が第2方向に回転する。
【0063】
(作用効果)
本例では、端面71にトルクリミッタ33用の凹部72を備える第1大径歯車31は傾
歯歯車であり、歯底70bが第1軸線L1に対して傾いている。したがって、凹部72の環状内周面72bに歯底77bが第1軸線L1と平行に延びる内歯77を設けた場合でも、第1大径歯車31の強度の低下を抑制でき、第1大径歯車31を径方向で小さくすることができる。
【0064】
すなわち、第1大径歯車31が平歯車の場合には、筒状部73の外周面に設けられる外歯の歯底が第1軸線L1と平行に形成されてしまうので、筒状部73において外歯の各歯底が位置し、且つ、内歯77の歯底77bが位置している部分では、径方向の厚さが極端に薄くなる。また、この薄い部分は、第1軸線L1方向に延びており、周方向に一定間隔で複数形成されてしまう。従って、第1大径歯車31の強度が低下し、損傷しやすくなるという問題がある。
【0065】
これに対して、本例では、第1大径歯車31が傾歯歯車となっており、周方向のいずれの角度位置においても歯底70bが第1軸線L1と平行な方向で筒状部73の上端から下端まで連続していない。従って、周方向で内歯77の歯底77bと外歯70の歯底70bが一致した場合でも、径方向から見たときに、内歯77の各歯底7
7bに対して第1大径歯車31の歯先70aが交差するように重なる。この結果、Z方向に延びる薄い部分が筒状部73の周方向で現われることを防止でき、第1大径歯車31の強度の低下を抑制できる。よって、第1大径歯車31を平歯車とした場合と比較して、端面71の凹部72に外接する外接円と歯先円の間を狭くすることが可能であり、第1大径歯車31を径方向で小さくできる。
【0066】
なお、本例の場合には、第1大径歯車31の筒状部73において周方向で内歯77の歯底77bと外歯70の歯底70bが一致する最も薄い部分は1.6mmとなるが、第1大径歯車31が傾歯歯車となっており、周方向のいずれの角度位置においても歯底70bが第1軸線L1と平行な方向で筒状部73の上端から下端まで連続しておらず、径方向から見たときに、内歯77の各歯底7
7bに対して第1大径歯車31の歯先70aが交差するように重なるので、第1大径歯車31の強度を確保できる。
【0067】
また、本例では、第1大径歯車31の凹部72の中心に設けられた筒部74は第1大径歯車31を回転可能に支持する第1支軸35が挿入される軸受となっている。さらに、第1大径歯車31の凹部72内に配置されるトルクリミッタ部材81は、胴部83から外周側に突出して周方向に延びる腕部84を備えている。このような構成では、第1大径歯車31の凹部72を径方向に大きく形成して、トルクリミッタ部材81を収納するためのスペースを確保しなければならないが、第1大径歯車31が傾歯歯車とされているので、第1大径歯車31の強度の低下を抑制しながら、第1大径歯車31が径方向へ大きくなることを抑制できる。
【0068】
さらに、本例では、第1複合歯車23は、ラック6の直動方向(Y方向)でモータ11と出力歯車25の間に配置されているので、第1複合歯車23を径方向で小さくすることにより、装置をラック6の直動方向で小型化することができる。また、第1複合歯車23は、ラック6の直動方向と交差する直交方向(X方向)でウォームギヤ22とラック6の間に配置されているので、第1複合歯車23を径方向で小さくすることにより、引き出し駆動装置1を直交方向で小型化することができる。
【0069】
また、本例では、第1複合歯車23の第1大径歯車31と噛合する歯車をウォームギヤ22としているので、傾歯歯車である第1大径歯車31と噛合する歯車を傾歯歯車とする場合と比較して、加工の困難な傾歯歯車の数を抑制できる。
【0070】
さらに、本例では、第1大径歯車31の端面71に設けた凹部72内にトルクリミッタ
33を構成しているので、トルクリミッタ33を搭載する第1複合歯車23を出力歯車25の軸線L3方向(Z方向)で小型化できる。従って、引き出し駆動装置1が出力歯車25の軸線L3方向(Z方向)で薄く構成されている。
【0071】
なお、上記の例では、一対のレール102の後端部分に傾斜レール部分102aが設け、閉位置101Aの近傍に配置された引き出し101を自重によって閉位置101Aに配置しているが、引き出し101と冷蔵庫100に互いに吸引し合う磁石を搭載することにより、閉位置101Aの近傍に配置された引き出し101をこれらの磁気吸引力によって閉位置101Aに配置してもよい。この場合にも、回転伝達機構21において第1大径歯車31を回転させてウォームギヤ22を回転させるために必要なトルクをトルクリミッタ33の最大伝達トルクよりも小さく設定し、引き出し101が磁気吸引力によって閉位置101Aの近傍から閉位置101Aに向かって移動する際に、ラック6が待機位置6Aに配置されていない場合には、引き出し101が閉位置101A向かって移動する間に、第1大径歯車31によってウォームギヤ22が回転し、モータ11が第2方向に回転するように構成できる。