【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の第1の態様によれば、患者の腸の通路に関する疾患を有する患者を治療する装置であって、患者に移植され、腸の少なくとも1つの選択された部分に対して動作可能であり、腸の通路を通って腸内容物を汲み出すポンプを備え、ポンプが、選択された部分を狭さくさせて、選択された部分に沿って腸の通路の体積を少なくともかなり低減させることと、選択された部分を解放して、選択された部分に沿って腸の通路の体積を増大させることを交互に行い、したがって、腸内容物が腸の通路を通って変位するように構成された狭さくデバイスを含む装置が提供される。
【0010】
腸の選択された部分が患者の肛門の所で終わる患者の場合、ポンプは、腸内容物を肛門を通って患者の体から汲み出すように構成される。この解決策は、本発明のポンプが患者の腸に作用し、すなわち、ポンプの狭さくデバイスが腸を狭さくさせて腸内容物を変位させる点で、上述の米国特許第6752754号による従来技術とは異なる。
【0011】
患者の腸がろう孔の所で終わるように外科的に修正される、回腸ろう造設術、空腸ろう造設術、結腸ろう造設術、または直腸ろう造設術の患者の場合、ポンプは、腸内容物をろう孔を通って患者の体から汲み出すように構成される。
【0012】
本発明の装置は、患者の腸に外科的に接合され、腸の一部を形成しかつ狭さくデバイスによって狭さくされる腸の選択された部分の少なくとも一部を形成するように構成された人工腸部材を含んでよい。狭さくデバイスは、人工腸部材にのみ作用して腸に損傷を与える可能性を最小限に抑えることができる。ポンプの非動作時には、狭さくデバイスは、人工腸部材をしっかりと狭さくさせ、腸の通路を完全に閉鎖することができる。あるいは、ポンプの非動作時に、人工腸部材に係合して腸の通路を閉鎖するか、または選択された部分を少なくとも部分的に狭さくさせ、かつポンプの動作時に、選択された部分を解放させて腸の通路を開放するように構成された移植可能で取り外し可能な少なくとも1つの閉鎖部材を設けることができる。
【0013】
人工腸部材は、患者の腸の両端間で患者の腸と一体化される。具体的には、人工腸部材は、患者の肛門に直接または間接的に接合することができ、それによって、ポンプは、腸内容物を肛門を通って患者の体から汲み出すことができる。この解決策は、本発明のポンプが人工腸部材に作用し、すなわち、ポンプの狭さくデバイスが人工腸部材を狭さくさせてその中の腸内容物を変位させる点で、上述の米国特許第6752754号とは異なる。
あるいは、人工腸部材は、ろう孔の所で終わるように構成することができ、それによって、ポンプは、腸内容物をろう孔を通って患者の体から汲み出すことができる。
【0014】
ポンプを患者の腹部の所望の位置に固定された状態に維持するには、腹壁のような患者の腹腔に関する組織にポンプを取り付けるように構成された係合デバイスをポンプに取り付けることができる。
【0015】
腸を外部から保護するには、腸の選択された部分を少なくとも部分的に覆う弾性保護チューブを設けることができ、それによって、ポンプの狭さくデバイスは保護チューブと選択された部分の両方を狭さくさせる。
【0016】
狭さくデバイスが腸の選択された部分を狭さくさせるときに腸の選択された部分を支持する移植可能な支持体を設けることができる。あるいは、狭さくデバイスは、選択された部分を患者の体の組織または骨に接触させて狭さくさせるように構成することができる。
【0017】
この装置は、選択された部分の狭さくと解放を交互に行うように狭さくデバイスを動作させ、したがって、腸内容物が腸の通路を通って移動するようにポンプを制御する制御デバイスをさらに備える。制御デバイスは、患者によって適切に操作することができ、好ましくは無線リモート・コントロールを含む。
【0018】
腸の電気刺激 腸の選択された部分の筋肉または神経組織を電気的に刺激して、選択された部分を少なくとも部分的に収縮させる電気刺激デバイスを設けることができる。このような刺激デバイスを狭さくデバイスの補助部材として使用すると、患者の腸を特に慎重に治療することができ、したがって、後述の本発明の実施形態から明らかなように、経時的に腸を損傷する可能性が最小限に抑えられる。
【0019】
刺激デバイスは、電気パルスによって腸組織の選択された部分の筋肉または神経組織を刺激するように構成された少なくとも1つの電極を含んでよい。好ましくは、刺激デバイスは、狭さくデバイスから分離されるかあるいは狭さくデバイスと一体化された複数の電極を含み、電極が腸の選択された部分に沿って一連の電極を形成する。電気パルスは、正および/または負であってよく、好ましくは正パルスと負パルスの組合せである。望ましい刺激効果は、パルス振幅、連続するパルス間のオフタイム周期、パルス持続時間、パルス反復周波数のような様々なパルスパラメータを変化させることによって実現される。約5mAのパルス振幅および約300μsのパルス持続時間が神経の刺激に適しており、一方、約20mAのパルス振幅および約30μsのパルス持続時間が筋肉の刺激に適している。パルス反復周波数は好適には約10Hzである。
【0020】
有利なことに、制御デバイスは、選択された部分に沿って電極を可変的に、たとえば事前に設定された方式に従って通電し、選択された部分上の電極の位置を経時的に変化させる選択された部分を部分的に収縮させ、それによって、腸の現在刺激されていない部分が、再び刺激される前にほぼ正常な血液循環を回復することができるように刺激デバイスを制御する。いくつかの電極または数群の電極を腸の上流側方向または下流側方向に徐々に通電することができる。あるいは、電極を一度に1つずつ順次通電するか、または数群の電極を無作為にもしくは所定のパターンに従って順次通電することができる。
【0021】
ポンプの構成 ポンプの考えられる様々な構成を含む本発明の実施形態について以下に説明する。
【0022】
本発明の簡素な実施形態によれば、ポンプの狭さくデバイスは、選択された部分をその上流側端部の所で狭さくさせたり解放したりする第1の狭さく部材と、選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせたり解放したりする第2の狭さく部材とを含む。この実施形態では、制御デバイスは、選択された部分の狭さくと解放を互いに独立して交互に行うように第1および第2の狭さく部材を制御する。
【0023】
ポンプの動作に関して、制御デバイスは、
選択された部分を狭さくさせて選択された部分の上流側端部の所で腸の通路を閉鎖するように上流側の第1の狭さく部材を制御し、
選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせて、選択された部分に含まれる腸内容物が腸の通路内を下流側に移動するように制御するように構成される。
制御デバイスはさらに、
選択された部分を解放して、選択された部分の上流側の腸の通路内の腸内容物が選択された部分に進入するのを可能にするように第1および第2の狭さく部材を制御するように構成される。
【0024】
ポンプの非動作時には、上述の刺激デバイスを任意の狭さく部材と協働させて腸の通路を閉鎖する。したがって、第1および第2の狭さく部材は、少なくとも1つの狭さく部材が選択された部分を軽く狭さくさせて腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくする休止位置に維持されるように構成され、制御デバイスは、狭さく部材が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を刺激して腸の通路を閉鎖するように刺激デバイスを制御する。「選択された部分を軽く狭さくさせる」という句は、腸組織内の血液循環をほとんど損なわずに腸のこの部分を狭さくさせることであると理解されたい。休止位置によって、腸の選択された部分の血管内の十分な血液循環が可能になり、したがって、選択された部分の腸組織は、選択された部分を狭さくさせる狭さく部材に長時間さらされた後でその完全性を維持する。
【0025】
刺激デバイスは、ポンプの動作時に任意の狭さく部材と協働させることもできる。この場合、刺激デバイスは、少なくとも1つの電極を含む。好ましくは、刺激デバイスは、狭さくデバイスの少なくとも1つの狭さく部材の表面に沿って一連の電極を形成する複数の電極を含み、この表面が腸の選択された部分に接触する。電極は、第1の狭さく部材と第2の狭さく部材の一方が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分の筋肉または神経組織を電気パルスによって刺激する。
【0026】
狭さく部材と刺激デバイスが協働するポンプの動作に関して、制御デバイスは、
i.選択された部分を軽く狭さくさせて、選択された部分の上流側端部の所で腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくするように上流側の第1の狭さく部材を制御し、
ii.第1の狭さく部材が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を刺激して、選択された部分を収縮させ、選択された部分の上流側端部の所で腸の通路を閉鎖するように刺激デバイスを制御し、
iii.選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせて、選択された部分に含まれる腸内容物が腸の通路内を下流側に移動するように第2の狭さく部材を制御する。
任意に、刺激デバイスは、第2の狭さく部材が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を電気的に刺激して腸の通路の体積を低減させることによって第2の狭さく部材と協働することができる。具体的には、制御デバイスは、第2の狭さくデバイスが選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を連続的に刺激し、したがって、第2の狭さく部材によって狭さくされる選択された部分が徐々に収縮するように刺激デバイスを制御することができる。その結果、腸内容物は、腸の通路内を蠕動しながら変位する。
あるいは、狭さくデバイスは、細長い単一の狭さく部材のみを含んでよく、この場合、制御デバイスは、狭さく部材が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を連続的に刺激し、したがって、狭さく部材によって狭さくされる選択された部分は徐々に収縮し、それによって、腸内容物は、腸の通路内を蠕動しながら変位する。
【0027】
本発明のより高度な実施形態では、ポンプの狭さくデバイスは、選択された部分をその上流側端部で狭さくさせたり解放したりする第1の狭さく部材と、選択された部分をその下流側端部で狭さくさせたり解放したりする第2の狭さく部材と、選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせたり解放したりする第3の狭さく部材とを含む。この実施形態では、制御デバイスは、選択された部分の狭さくと解放を互いに独立して交互に行うように第1、第2、および第3の狭さく部材を制御する。
【0028】
ポンプの動作に関して、制御デバイスは、
選択された部分を狭さくさせて選択された部分の上流側端部の所で腸の通路を閉鎖するように上流側の第1の狭さく部材を制御し、
選択された部分を解放するように下流側の第2の狭さく部材を制御し、
選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせて、選択された部分に含まれる腸内容物が腸の通路内を下流側に移動するように第3の狭さく部材を制御するように構成される。
【0029】
制御デバイスは、
選択された部分を狭さくさせて選択された部分の下流側端部の所で腸の通路を閉鎖するように下流側の第2の狭さく部材を制御し、
選択された部分を解放するように上流側の第1の狭さく部材を制御し、
選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で解放して、選択された部分の上流側の腸の通路内の腸内容物が選択された部分に進入するのを可能にするように第3の狭さく部材を制御するようにも構成される。
【0030】
ポンプの非動作時には、本発明の簡素な実施形態に関連して上記に説明したように、上述の刺激デバイスを任意の狭さくデバイスと協働させて腸の通路を閉鎖する。したがって、第1、第2、および第3の狭さく部材は、少なくとも1つの狭さく部材が選択された部分を軽く狭さくさせて腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくする休止位置に維持されるように構成され、制御デバイスは、狭さく部材が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を刺激して腸の通路を閉鎖するように刺激デバイスを制御する。
【0031】
刺激デバイスは、ポンプの動作時に第1、第2、および第3の狭さく部材のいずれかと協働させることもできる。この場合、刺激デバイスは、狭さくデバイスの少なくとも1つの狭さく部材の表面に沿って一連の電極を形成する複数の電極を含み、この表面が腸の選択された部分に接触する。電極は、第1の狭さく部材と第2の狭さく部材の一方および/または第3の狭さく部材が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分の筋肉または神経組織を電気パルスによって刺激する。
【0032】
狭さく部材と刺激デバイスが協働するポンプの動作に関して、制御デバイスは、
選択された部分を軽く狭さくさせて、選択された部分の上流側端部の所で腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくするように上流側の第1の狭さく部材を制御し、
第1の狭さく部材が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を電気的に刺激して、選択された部分を収縮させ、選択された部分の上流側端部の所で腸の通路を閉鎖するように刺激デバイスを制御し、
選択された部分を解放するように下流側の第2の狭さく部材を制御し、
選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせて、選択された部分に含まれる腸内容物が腸の通路内を下流側に移動するように第3の狭さく部材を制御する。
【0033】
任意に、刺激デバイスは、第3の狭さく部材が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を電気的に刺激して腸の通路の体積を低減させることによって第3の狭さく部材と協働することができる。具体的には、制御デバイスは、第3の狭さくデバイスが選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を連続的に刺激し、したがって、第3の狭さく部材によって狭さくされる選択された部分が徐々に収縮するように刺激デバイスを制御することができる。その結果、腸内容物は、腸の通路内を蠕動しながら変位する。
【0034】
さらに、制御デバイスは、
選択された部分を軽く狭さくさせて、選択された部分の上流側端部の所で腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくするように下流側の第2の狭さく部材を制御し、
第2の狭さく部材が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を刺激して、選択された部分を収縮させ、選択された部分の上流側端部の所で腸の通路を閉鎖するように刺激デバイスを制御し、
選択された部分を解放するように上流側の第1の狭さく部材を制御し、
選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で解放して、選択された部分の上流側の腸の通路内の腸内容物が選択された部分に進入するのを可能にするように第3の狭さく部材を制御する。
【0035】
刺激デバイスを含む本発明の他の実施形態によれば、狭さくデバイスは、選択された部分をその上流側端部の所で狭さくさせたり解放したりする第1の狭さく部材と、選択された部分をその下流側端部の所で狭さくさせたり解放したりする第2の狭さく部材とを含み、前記制御デバイスは、選択された部分の狭さくと解放を互いに独立して交互に行うように前記第1および第2の狭さく部材を制御する。この実施形態では、刺激デバイスは、選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で電気的に刺激して選択された部分を収縮させ、腸の通路の体積を低減させるように構成される。
【0036】
ポンプの動作に関して、制御デバイスは、
選択された部分を狭さくさせて選択された部分の上流側端部の所で腸の通路を閉鎖するように上流側の第1の狭さく部材を制御し、
選択された部分を解放するように下流側の第2の狭さく部材を制御し、
選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で連続的に刺激して、選択された部分を徐々に収縮させ、したがって、腸内容物が腸の通路内を蠕動しながら変位するように刺激デバイスを制御する。
【0037】
任意に、制御デバイスは、選択された部分を軽く狭さくさせて、選択された部分の上流側端部の所で腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくするように上流側の第1の狭さく部材を制御し、かつ第1の狭さく部材が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を刺激して、選択された部分を収縮させ、選択された部分の上流側端部の所で腸の通路を閉鎖するように刺激デバイスを制御する。
【0038】
さらに、制御デバイスは、
選択された部分を狭さくさせて、選択された部分の下流側端部の所で腸の通路を閉鎖するように下流側の第2の狭さく部材を制御し、
選択された部分を解放するように上流側の第1の狭さく部材を制御し、
選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で刺激するのを停止し、選択された部分の上流側の腸の通路内の腸内容物が選択された部分に進入するのを可能にするように刺激デバイスを制御する。
【0039】
任意に、制御デバイスは、選択された部分を軽く狭さくさせて、選択された部分の下流側端部の所で腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくするように下流側の第2の狭さく部材を制御し、かつ第2の狭さく部材が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を刺激して、選択された部分を収縮させ、選択された部分の下流側端部の所で腸の通路を閉鎖するように刺激デバイスを制御する。
【0040】
本発明の他の実施形態によれば、狭さくデバイスは、腸の一連の選択された部分のうちの任意の部分を狭さくさせて腸の通路を閉鎖するように構成され、制御デバイスは、一連の選択された部分のうちの選択された部分を連続的に狭さくさせて、腸内容物を腸の通路内を下流側に蠕動しながら移動するように狭さくデバイスを制御する。具体的には、狭さくデバイスは、各狭さく部材が、一連の選択された部分のうちの選択された部分を連続的に狭さくさせるように腸に沿って移動可能である複数の狭さく部材を含み、制御デバイスは、各狭さく部材を一連の選択された部分のうちの選択された部分に沿って次々と循環的に移動させるように狭さくデバイスを制御する。(あるいは、狭さくデバイスは単一の狭さく部材のみを含んでよい。)好ましくは、狭さくデバイスは、狭さく部材を保持するロータを含み、制御デバイスは、ロータが回転し、したがって、各狭さく部材が、一連の選択された部分のうちの選択された部分を循環的に狭さくさせるように制御する。各狭さく部材は好適には、腸で転動して腸の選択された部分を狭さくさせるローラを含む。
【0041】
任意に、上述の刺激デバイスを狭さくデバイスと協働させて一連の選択された部分のうちの選択された部分を連続的に狭さくさせ収縮させることができる。したがって、狭さくデバイスは、一連の選択された部分のうちの任意の部分を狭さくさせて、腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくし、刺激デバイスは、狭さくデバイスによって狭さくされる選択された部分を電気的に刺激して腸の通路を閉鎖する。制御デバイスは、一連の選択された部分のうちの選択された部分を連続的に狭さくさせて、腸内容物を腸の通路内を蠕動しながら移動するように狭さくデバイスを制御し、一方、選択された部分を連続的に刺激して、狭さくデバイスによって行われる選択された部分の連続的な狭さくに合わせて選択された部分を連続的に収縮させるように刺激デバイスを制御する。具体的には、刺激デバイスは、狭さくデバイスの狭さく部材上に位置し、電気パルスによって腸組織を刺激するように構成された1つまたは複数の電極を含む。複数のこのような電極を各狭さく部材に対して表面に沿って分散させることができ、この表面は、狭さく部材が選択された部分のうちのいずれか1つの狭さく部材を狭さくさせるときに腸に接触する。制御デバイスは、狭さく部材を一連の選択された部分のうちの選択された部分に沿って循環的に次々と移動させるように狭さくデバイスを制御し、一方、電極を通電するように刺激デバイスを制御する。
【0042】
本発明の他の実施形態によれば、狭さくデバイスは、腸に沿って延びる細長い少なくとも1つの狭さく部材、好ましくは腸の両側を腸に沿って延びる2つの細長い部材を含む。
制御デバイスは、細長い狭さく部材同士が互いに協働し、選択された部分を徐々に狭さくさせて腸内容物が腸の通路内を移動するように狭さくデバイスを制御する。細長い狭さく部材は、腸の選択された部分にその両側である長さにわたって接触するように寸法を定められた接触表面を備える。
【0043】
接触表面は好適には凸状であり、制御デバイスは、狭さく部材の凸状の接触表面が、腸の選択された部分上を転動し、腸の選択された部分を徐々に狭さくさせるように狭さくデバイスを制御する。各狭さく部材は、凸状表面が腸の選択された部分に沿って転動し腸の選択された部分を狭さくさせる狭さく状態と、凸状表面が腸の選択された部分から解放される解放状態との間で変化するように構成される。
【0044】
任意に、上述の刺激デバイスは、細長い狭さく部材と協働させることができる。したがって、制御デバイスは、細長い狭さく部材が選択された部分を徐々に狭さくさせるときに選択された部分を刺激するように刺激デバイスを制御することができる。刺激デバイスの電極は好適には、腸の選択された部分に接触する細長い狭さく部材の表面上の長手方向に分散し、制御デバイスは、電極を細長い狭さく部材に沿って連続的に通電して腸の選択された部分を徐々に狭さくさせるように刺激デバイスを制御する。
【0045】
本発明の他の実施形態によれば、前記狭さくデバイスは、腸の選択された部分の少なくとも一区間を半径方向に膨張させて、選択された部分に沿って腸の通路の膨張チャンバを形成し、かつ選択された部分の膨張区間を軸方向に狭さくさせてチャンバの体積を少なくともかなり低減させ、したがって、腸内容物が腸の通路を通って変位するように構成される。動作時には、制御デバイスは、選択された部分の膨張区間を軸方向に狭さくさせ解放し、したがって、腸内容物が腸の通路を通って変位するように狭さくデバイスを制御する。狭さくデバイスは、選択された部分のこの区間を膨張させない休止位置と、選択された部分のこの区間を膨張させる膨張位置との間で調整可能である。好適には、狭さくデバイスは、線維組織を成長させて膨張デバイスを外側で腸の選択された部分の壁に接合させる材料を備え、それによって、膨張デバイスは、その膨張位置にあるときに、選択された部分の壁を半径方向外側に引いて、選択された部分の膨張区間を形成する。
【0046】
任意に、上述の刺激デバイスを使用して、狭さくデバイスがその膨張位置にあるときに選択された部分の膨張区間を電気的に刺激して、選択された部分の膨張区間を軸方向に収縮させることができる。刺激デバイスの電極は好適には、腸の選択された部分の膨張区間の周りを延びる少なくとも一連の電極を形成する。
【0047】
別個の閉鎖部材 本発明の一実施形態では、腸の選択された部分に係合して腸の通路を閉鎖するか、あるいはポンプの非動作時に選択された部分を少なくとも部分的に狭さくさせ、かつポンプの動作時に選択された部分を解放して腸の通路を開放するように構成された移植可能で取り外し可能な少なくとも1つの閉鎖部材が設けられる。好ましくは、閉鎖部材は、ポンプの非動作時に、選択された部分を少なくとも部分的に狭さくさせて腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくし、上述の刺激デバイスは、腸の筋肉または神経組織を電気的に刺激し、閉鎖部材が腸を狭さくさせる場合に腸を収縮させて腸の通路を完全に閉鎖するように構成される。刺激デバイスの電極は、閉鎖部材から分離されるかあるいは閉鎖部材と一体化され、好適には、閉鎖部材の、腸に接触する表面に沿って分散される。制御デバイスは、閉鎖部材と刺激デバイスが協働して、狭さくした腸の血管内で血液を十分に循環させ、したがって、腸組織が、ポンプの非動作時に、閉鎖部材に長時間さらされた後でその完全性を維持するように閉鎖部材および刺激デバイスを制御する。ポンプが、上述のように刺激デバイスの電極を備えた細長い狭さく部材を含む場合、制御デバイスは、ポンプが動作する場合に、電極を可変的に通電して、狭さくした腸の血管内で血液を常に十分に循環させることができる。
【0048】
ポンプによる患者の腸の通路の閉鎖 上述の別個の閉鎖部材を設ける代わりに、ポンプの非動作時に、ポンプの狭さくデバイスが選択された部分を少なくとも部分的に狭さくした状態に維持する休止位置に、狭さくデバイスを維持することができる。狭さくデバイスは、この休止位置にあるとき、狭さくした腸の血管内で血液を十分に循環させる程度に選択された部分を狭さくさせ、したがって、腸組織は、狭さくデバイスに長時間さらされた後でその完全性を維持する。さらに、狭さくデバイスは、休止位置にあるときに、腸を狭さくさせて腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくし、上述の刺激デバイスは、狭さくデバイスが腸を狭さくさせる場合に腸を電気的に刺激し、腸を収縮させて腸の通路を完全に閉鎖するように構成される。好ましくは、制御デバイスは、刺激デバイスの電極を選択された部分に沿って可変的に通電して、選択された部分上の電極の位置を経時的に変化させる選択された部分の部分的な収縮を生じさせるように刺激デバイスを制御し、それによって、腸の、現在刺激されていない部分は、それが再び刺激される前にほぼ正常な血液循環を回復することができる。
【0049】
人工腸部材 本発明の実施形態では、人工腸部材が、患者の腸に外科的に接合され、腸の通路の一部を形成し、かつ狭さくデバイスによって狭さくされる腸の選択された部分の少なくとも一部を形成する。この実施形態の顕著な利点は、上述の様々なポンプ構成の狭さくデバイスを使用して人工腸部材だけでなく傷つきやすい腸にも作用することができることである。
ポンプの非動作時に、狭さくデバイスは、人工腸部材を狭さくさせて腸の通路を完全に閉鎖することができる。
【0050】
人工腸部材は、たとえば、癌のために直腸の一部を除去した場合に、患者の腸とその両端部間で一体化することができる。あるいは、人工腸部材を直接または間接的に患者の肛門に接合することができる。
【0051】
人工腸部材を回腸ろう造設術、空腸ろう造設術、結腸ろう造設術、または直腸ろう造設術の患者に移植した場合、狭さくデバイスは、人工腸部材を狭さくさせて、人工腸部材の下流側に配置されたろう孔を通って腸内容物を排出する。あるいは、人工腸部材は、このようなろう孔の所で終わってもよい。
【0052】
手動ポンプ ポンプの狭さくデバイスに動作可能に連結された皮下移植可能なアクチュエータを設けることができ、この場合、アクチュエータは、狭さくデバイスを操作するように手動で作動可能である。
【0053】
本発明の一実施形態では、狭さくデバイスは油圧動作可能であり、アクチュエータは、油圧動作可能な狭さくデバイスに油圧式に連結される。アクチュエータは、狭さくデバイスを操作するのに使用される油圧流体用の手動圧縮可能な弾性リザーバを含むことが好ましい。
【0054】
好適には、リザーバと油圧動作可能な狭さくデバイスを油圧式に相互に連結する反転サーボが設けられる。語「反転サーボ」は、短いストロークを有する可動部材に作用する強い力を、長いストロークを有する他の可動部材に作用する弱い力に変換する機構、すなわち、通常のサーボ機構の逆の機能と理解されたい。したがって、この場合はアクチュエータ弾性リザーバに油圧式に連結することのできるより小さなリザーバ内の流体の量のわずかな変化を、反転サーボによって、この場合は狭さくデバイスに油圧式に連結することのできるより大きなリザーバ内の流体の量の顕著な変化に変換することができる。反転サーボは、その手動操作に特に適している。
【0055】
リザーバは、油圧動作可能な狭さくデバイスに油圧式に連結され、したがって、リザーバが手動で圧縮されると、狭さくデバイスは、選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせて、選択された部分に含まれる腸内容物を腸の通路内を下流側に移動させる。弾性リザーバが手動で解放されその非圧縮形状を回復すると、狭さくデバイスは、選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で解放し、選択された部分の上流側の腸の通路内の腸内容物が選択された部分に進入するのを可能にする。
【0056】
油圧動作可能な狭さくデバイスは、狭さく部材と、膨張時に、選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせるように狭さく部材を動作させる油圧蛇腹デバイスとを含む。圧縮可能な弾性リザーバは、蛇腹デバイスに油圧式に連結され、したがって、蛇腹デバイスは、リザーバが手動で圧縮されたときに膨張し、リザーバが手動で解放されその非圧縮状態を回復したときに引き込まれる。したがって、蛇腹デバイスは、引き込まれたときに、選択された部分を上流側端部と下流側端部との間で解放するように狭さく部材を動作させる。
【0057】
本発明の特定の実施形態によれば、油圧動作可能な狭さくデバイスは、選択された部分をその上流側端部の所で狭さくさせたり解放したりする油圧動作可能な第1のサブデバイスと、選択された部分をその下流側端部の所で狭さくさせたり解放したりする油圧動作可能な第2のサブデバイスと、選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせたり解放したりする油圧動作可能な第3のサブデバイスとを含む。リザーバは、第1、第2、および第3のサブデバイスに油圧式に連結され、したがって、リザーバが手動で圧縮されると、上流側の第1のサブデバイスが、選択された部分を狭さくさせて選択された部分の上流側端部の所で腸の通路を閉鎖し、下流側の第2のサブデバイスが、選択された部分を解放し、第3のサブデバイスが、選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせて、選択された部分に含まれる腸内容物を腸の通路内を下流側に移動させる。弾性リザーバが手動で解放されその非圧縮形状を回復すると、下流側の第2のサブデバイスが、選択された部分を狭さくさせて選択された部分の下流側端部の所で腸の通路を閉鎖し、上流側の第2のサブデバイスが、選択された部分を解放し、第3のサブデバイスが、選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で解放して、選択された部分の上流側の腸の通路内の腸内容物が選択された部分に進入するのを可能にする。
【0058】
狭さく装置の第1のサブデバイスは、第1の狭さく部材と、膨張時に、選択された部分を上流側端部の所で狭さくさせるように第1の狭さく部材を動作させる第1の油圧蛇腹デバイスとを含み、狭さく装置の第2のサブデバイスは、第2の狭さく部材と、膨張時に、選択された部分を下流側端部の所で解放するように第2の狭さく部材を動作させる第2の油圧蛇腹デバイスとを含み、狭さく装置の第3のサブデバイスは、第3の狭さく部材と、膨張時に、選択された部分を上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせるように第3の狭さく部材を動作させる第3の油圧蛇腹デバイスとを含む。圧縮可能な弾性リザーバは、第1、第2、および第3の蛇腹デバイスに油圧式に連結され、したがって、蛇腹デバイスは、リザーバが手動で圧縮されたときに膨張し、リザーバが手動で解放されその非圧縮形状を回復したときに引き込まれる。したがって、第1の蛇腹デバイスは、引き込まれたときに、選択された部分を上流側端部の所で解放するように第1の狭さく部材を動作させ、第2の蛇腹デバイスは、引き込まれたときに、選択された部分を下流側端部の所で狭さくさせるように第2の狭さく部材を動作させ、第3の蛇腹デバイスは、引き込まれたときに、選択された部分を上流側端部と下流側端部との間で解放するように第3の狭さく部材を動作させる。必要に応じて、上述の油圧手段を使用することによって、本明細書に開示されている実施形態のポンプを手動で操作することができる。
【0059】
動力ポンプ 本発明の一実施形態では、ポンプは動力を供給される。制御デバイスは、動力ポンプを始動させ停止する手動操作可能なスイッチを含んでよく、このスイッチが、患者に皮下移植できるように構成される。あるいは、制御デバイスは、好適には無線リモート・コントロールを保持する患者によって、ポンプを制御し、すなわち始動させ停止するように操作される無線リモート・コントロールを含んでよい。
【0060】
無線エネルギーを患者の体外から患者の体内に伝送してポンプを駆動する無線エネルギー送信器を設けることができる。このエネルギー送信器は、無線エネルギーが伝送されているときにポンプが直接駆動されるように無線エネルギーを伝送することができる。特に、無線エネルギーは、ポンプを直接駆動するための電界、電磁界、磁界や、それらの組合せや、電磁波などの電磁エネルギーを含んでよい。たとえば、ポンプが電気ポンプを含む場合、磁界または電磁界の形をした無線エネルギーを使用して電気ポンプを直接駆動することができる。
【0061】
したがって、電気ポンプは、無線エネルギーの伝送時に直接動作する。これは、a)患者に移植されたエネルギー変換デバイスを使用して無線エネルギーを異なる形態のエネルギー、好ましくは電気エネルギーに変換し、変換後のエネルギーでポンプを駆動するか、あるいはb)無線で伝送されたエネルギーを使用してポンプを直接駆動するという2つの異なる方法で実現することができる。電磁界または磁界の形をした無線エネルギーを使用して、ポンプの特定の構成部材に直接影響を与えて運動エネルギーを生じさせることが好ましい。このような構成部材は、ポンプ内にまとめられたコイルを含んでよい。
【0062】
あるいは、エネルギー伝送デバイスによって生成された電気エネルギーを蓄積する、コンデンサや再充電可能な電池などのアキュムレータを設けることができ、制御デバイスは、エネルギーを放出してポンプを駆動するようにこのアキュムレータを制御する。アキュムレータの電荷を測定する移植可能な電荷計を設けることができ、制御デバイスは、この電荷計に応答して表示を生成することができる。
【0063】
センサ 本発明の一実施形態では、患者の物理的パラメータまたは装置の機能的パラメータを直接または間接的に検知する移植可能なセンサが設けられる。物理的パラメータに関して、制御デバイスは、ポンプの非動作時に、センサが物理的パラメータの値がしきい値を超えたことを検知したことに応答して音声信号や表示情報などの表示を生成することができる。物理的パラメータは、腸の選択された部分における腸内容物の体積、腸壁の寸法、または腸の選択された部分における圧力であってよい。
【0064】
装置の機能パラメータに関して、制御デバイスは、ポンプの動作時に、センサが機能パラメータの値がしきい値を超えたことを検知したことに応答してアラーム、音声信号、表示情報などの表示を生成することができる。
【0065】
通信 本発明の上記の実施形態のいずれかでは、患者の体外に位置するように構成された外部データ通報器と、患者に移植可能であり外部通報器と通信する内部データ通報器とを設けることができる。内部データ通報器は、患者に関する情報を外部データ通報器にフィードバックし、かつ/あるいは外部データ通報器は内部データ通報器にデータを送る。
【0066】
発明の方法 本発明の第2の態様によれば、腸の通路に関する疾患を有する患者を治療する方法が提供される。この方法は、
a)患者の腸の選択された部分を狭さくさせて、選択された部分に沿って腸の通路の体積を少なくともかなり低減させ、したがって、腸内容物が腸の通路を通ってその下流側方向に変位するステップと、
b)選択された部分を解放して選択された部分に沿って腸の通路の体積を増大させ、したがって、選択された部分の上流側の腸の通路内の腸内容物が選択された部分に進入するステップと、
c)ステップ(a)およびステップ(b)を任意の回数だけ繰り返すステップとを含む。
【0067】
腸の選択された部分が患者の肛門の所で終わる場合、この方法は、ステップ(a)およびステップ(b)を実行して腸内容物を肛門を通って排出することをさらに含む。あるいは、この方法は、患者の腸をろう孔の所で終わるように外科的に修正し、ステップ(a)およびステップ(b)を実行して腸内容物をろう孔を通って排出することをさらに含む。
【0068】
この方法のステップ(a)およびステップ(b)は、以下に説明するようにいくつかの代替手順に従って実行することができる。
【0069】
代替手順1.ステップ(a)は、最初、選択された部分を狭さくさせて選択された部分の上流側端部の所で腸の通路を閉鎖し、次に、選択された部分全体を狭さくさせることによって実行され、ステップ(b)は、最初、選択された部分をその下流側端部の所を除いて完全に解放し、次に、選択された部分を下流側端部の所で解放することによって実行される。
【0070】
代替手順2.ステップ(a)は、
選択された部分を部分的に狭さくさせて、選択された部分の上流側端部の所で腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくし、
狭さくした選択された部分の筋肉または神経組織を上流側端部の所で電気的に刺激し、狭さくした選択された部分を収縮させて選択された部分の上流側端部の所で腸の通路を閉鎖し、
次に、選択された部分全体を狭さくさせることによって実行される。
【0071】
ステップ(b)は、最初、選択された部分をその下流側端部の所を除いて完全に解放し、次に、選択された部分を下流側端部の所で解放することによって実行される。
【0072】
代替手順3.ステップ(a)は、
選択された部分を部分的に狭さくさせて、選択された部分の上流側端部の所で腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくし、
狭さくした選択された部分の筋肉または神経組織を上流側端部の所で電気的に刺激し、狭さくした選択された部分を収縮させて選択された部分の上流側端部の所で腸の通路を閉鎖し、
選択された部分全体を少なくとも部分的に狭さくさせ、
次に、選択された部分をその上流側端部から下流側端部まで連続的に刺激して選択された部分を徐々に収縮させ、したがって、腸内容物を腸の通路内を蠕動させながら変位させることによって実行される。
【0073】
ステップ(b)は、最初、選択された部分を刺激することを停止し、選択された部分をその下流側端部の所を除いて完全に解放し、次に、選択された部分を下流側端部の所で解放することによって実行される。
【0074】
代替手順4.ステップ(a)は、
選択された部分を部分的に狭さくさせて、選択された部分全体に沿って腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくし、
狭さくした部分をその上流側端部から下流側端部まで連続的に刺激して、選択された部分を徐々に収縮させ、したがって、腸内容物を腸の通路内を蠕動させながら変位させることによって実行される。
【0075】
代替手順5.ステップ(a)は、腸の一連の選択された部分の一部を連続的に狭さくさせ、したがって、腸内容物を腸の通路内を下流側に蠕動させながら変位させることによって実行される。
【0076】
代替手順6.ステップ(a)は、
腸の一連の選択された部分の一部を連続的に狭さくさせ、したがって、各狭さく部に、腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくさせ、
各狭さく部を電気的に刺激し、腸の狭さくした部分を収縮させて腸の通路を閉鎖し、それによって、腸内容物を腸の通路内を下流側に蠕動させながら変位させることによって実行される。
【0077】
代替手順7.ステップ(a)は、選択された部分を徐々に狭さくさせ、したがって、腸内容物を腸の通路内を下流側に蠕動させながら変位させることによって実行される。
【0078】
代替手順8.ステップ(a)は、
選択された部分を電気的に刺激して選択された部分を収縮させ、
収縮した選択された部分を徐々に狭さくさせ、したがって、腸内容物を腸の通路内を下流側に蠕動させながら変位させることによって実行される。
【0079】
本発明は、腸の通路に関する疾患を有する患者を治療する他の方法も提供する。この方法は、
腸の選択された部分に係合して選択された部分を狭さくさせたり解放したりする狭さくデバイスを含むポンプを設けるステップと、
選択された部分を狭さくさせて選択された部分に沿って腸の通路の体積を少なくともかなり低減させることと、選択された部分を解放して選択された部分に沿って腸の通路の体積を増大させることを交互に行い、したがって、腸内容物が腸の通路を通って変位するように狭さくデバイスを動作させるようにポンプを制御するステップとを含む。
【0080】
この方法は、患者の腸に係合する取り外し可能な少なくとも1つの閉鎖部材を設けることと、閉鎖部材を使用して、ポンプの非動作時に腸の通路を少なくともほぼ閉鎖し、ポンプの動作時に腸を解放することとをさらに含む。閉鎖部材を使用して腸を狭さくさせて腸の通路を閉鎖することができる。
【0081】
あるいは、閉鎖部材を使用して腸を狭さくさせて腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくすることができ、この方法は、腸の筋肉または神経組織を電気的に刺激し、閉鎖部材が腸を狭さくさせる場合に腸を収縮させて腸の通路を閉鎖することをさらに含む。この場合、この方法は好適には、狭さくした腸の血管内で血液を十分に循環させ、したがって、ポンプの非動作時に、腸組織が、閉鎖部材に長時間さらされた後でその完全性を維持するように、閉鎖部材の動作と腸の電気刺激との調和を図ることを含む。
【0082】
本発明は、上述の装置を使用して腸の通路に関する疾患を有する患者を治療する方法(I)も提供する。この方法(I)は、
上述の装置を設けるステップと、
チューブ状の針を患者の体の腹部に挿入するステップと、
チューブを通ってガスを供給して腹部をガスで満たし、それによって腹腔を膨張させるステップと、
少なくとも2つの腹腔鏡トロカールを患者の体内に配置するステップと、
一方のトロカールを通って腹部にカメラを挿入するステップと、
患者の腸の一部を選択するステップと、
一方のトロカールを通って切開器具を挿入し、選択された部分におけるある領域を切開するステップと、
装置のポンプを腸の選択された部分に動作可能に係合するように切開した領域に配置するステップと、
ポンプを使用して腸内容物を腸の通路を通って汲み出すステップとを含む。方法(I)は、患者の皮膚および腹壁を切開して開口部を設け、ろう孔を形成する開口部に患者の腸を通し、患者の腸の、ろう孔の近傍の部分を選択することをさらに含んでよく、この場合、ポンプを使用して腸内容物がろう孔を通って排出される。
【0083】
本発明は、上述の装置を使用して、腸の通路に関する疾患を有する患者を治療する他の方法(II)を提供する。この方法(II)は、
上述の装置を設けるステップと、
患者の皮膚および腹壁を切開して開口部を設けるステップと、
患者の腸の一部を選択するステップと、
開口部を通って切開器具を挿入し、選択された部分におけるある領域を切開するステップと、
装置のポンプを腸の選択された部分に動作可能に係合するように切開した領域に配置するステップと、
ポンプを使用して腸内容物を腸の通路を通って汲み出すステップとを含む。
【0084】
本発明は、上述の装置を使用して、腸の通路に関する疾患を有する患者を治療する他の方法(III)を提供する。この方法(III)は、
患者の皮膚および腹壁を切開して開口部を設け、ろう孔を形成する開口部に患者の腸の一部を通すステップと、
腸を切開して、腸の、ろう孔を形成する短い部分を腸の残りの部分から分離し、一方、腸の短い部分に連結された腸間膜の血管を維持して腸の短い部分への血液の供給を確保するステップと、
腸の短い部分の所の領域を切開するステップと、
切開した領域内に人工腸部材を配置し、腸の短い部分および腸の残りの部分に人工腸部材を外科的に接合して、腸の残りの部分、人工腸部材、および腸の短い部分を通る腸の連続的な通路を形成し、人工腸部材が、患者の腸の選択された部分を形成するステップと、
上述の装置を設けるステップと、
装置のポンプを人工腸部材に動作可能に係合するように配置するステップと、
ポンプを使用して腸内容物を腸の通路を通ってろう孔から汲み出すステップとを含む。
【0085】
上記の方法(I)、方法(II)、方法(III)は、ポンプを始動させ停止する手動操作可能なスイッチを皮下移植することをさらに含んでよい。
【0086】
上記の方法(I)、方法(II)、方法(III)によれば、ポンプの狭さくデバイスは、腸の選択された部分と動作可能に係合され、ポンプは、選択された部分を狭さくさせて選択された部分に沿って腸の通路の体積を少なくともかなり小さくすることと、選択された部分を解放して選択された部分に沿って腸の通路の体積を増大させることを交互に行い、したがって、腸内容物が腸の通路を通って変位するように狭さくデバイスを動作させるように制御される。
【0087】
方法(I)、方法(II)、方法(III)は、取り外し可能な少なくとも1つの閉鎖部材を腸の選択された部分に動作可能に係合するように移植することと、取り外し可能な閉鎖部材を使用して、ポンプの非動作時に腸の通路を閉鎖し、ポンプの動作時に腸を解放することをさらに含む。
【0088】
方法(I)、方法(II)、方法(III)は、取り外し可能な閉鎖部材を動作させる、電気モータなどの駆動操作デバイスを移植することをさらに含む。あるいは、操作デバイスは、油圧動作デバイスを含む。
【0089】
方法(I)、方法(II)、方法(III)は、操作デバイスを駆動する無線エネルギーを伝送することと、腸の通路を通って腸内容物を汲み出すことが望ましいときに、伝送されたエネルギーによって操作デバイスを駆動して、腸の選択された部分を解放するように閉鎖部材を動作させることをさらに含む。
【0090】
方法(I)、方法(II)、方法(III)は、エネルギー源を患者に移植することと、外部エネルギー源を設けることと、無線エネルギーを放出するように外部エネルギー源を制御することと、無線エネルギーを蓄積可能なエネルギーに変換することと、移植されたエネルギー源に変換されたエネルギーを非侵襲的に充填することと、ポンプおよび/または取り外し可能な閉鎖部材の動作に関連して使用されるエネルギーを放出するように移植されたエネルギー源を患者の体外から制御することとをさらに含む。患者の腸は、ろう孔の所で終わるように外科的に修正することができ、患者の体から腸内容物を排出するのが望ましいときに、移植されたエネルギー源が、腸の選択された部分を一時的に解放するように取り外し可能な閉鎖部材を動作させるエネルギーを供給するように制御され、かつポンプを使用して腸の通路内の腸内容物がろう孔を通って体から汲み出される。無線エネルギーは、無線エネルギーとは異なる、電気エネルギーのような蓄積可能なエネルギーに変換することができ、蓄積可能なエネルギーは、ポンプおよび/または取り外し可能な閉鎖部材を動作させるのに使用される。
【0091】
あるいは、方法(I)、方法(II)、方法(III)は、エネルギー源を患者の体外に設けることと、無線エネルギーを放出するように患者の体外から外部エネルギー源を制御することと、放出された無線エネルギーを使用してポンプおよび/または取り外し可能な閉鎖部材を動作させることとをさらに含む。たとえば、外部エネルギー源は、ポンプおよび/または取り外し可能な閉鎖部材を直接動作させる無線エネルギーを放出するように制御することができる。外部エネルギー源は、非磁気無線エネルギーを放出するように制御することができ、放出された非磁気無線エネルギーは、ポンプおよび/または取り外し可能な閉鎖部材を動作させるのに使用される。あるいは、電磁無線エネルギーを放出するように外部エネルギー源を制御することができ、放出された電磁無線エネルギーは、ポンプおよび/または取り外し可能な閉鎖部材を動作させるのに使用される。
【0092】
無線エネルギーは、移植されたエネルギー変換デバイスによって患者の体内で電気エネルギーに変換することができ、電気エネルギーは、ポンプおよび取り外し可能な閉鎖部材の動作に関連して使用される。電気エネルギーは、ポンプおよび/または取り外し可能な閉鎖部材の動作に関連して直接使用することができる。たとえば、ポンプおよび/または取り外し可能な閉鎖部材は、エネルギー変換デバイスが無線エネルギーから変換した電気エネルギーによって直接動作させることができる。
【0093】
方法(I)、方法(II)、方法(III)は、
選択された部分における腸の通路を少なくとも部分的に制限して腸内容物が通過するのを防止するか、あるいは 腸を解放し、ポンプを使用することによって腸内容物を汲み出すのを可能にするように取り外し可能な閉鎖部材を制御することをさらに含む。
【0094】
ステップ(a)は、選択された部分における腸の通路を少なくとも部分的に制限するように取り外し可能な閉鎖部材を制御し、かつ腸の選択された部分を電気的に刺激し、選択された部分を収縮させて腸の通路をさらに制限し、腸内容物が通過するのを防止することによって実行される。
【0095】
本発明は、上述の装置を使用して腸の通路に関する疾患を有する患者を治療する他の方法をさらに提供する。この方法は、
患者の体外からポンプを制御するように構成された無線リモート・コントロールを設けることと、
患者が排便を望むときに、患者によって無線リモート・コントロールを操作してポンプを始動させ、患者が排便を終了したときにポンプを停止させることとを含む。