(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588692
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】メカニカルポンプなしのトランスファケース内の潤滑
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20191001BHJP
【FI】
F16H57/04 J
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-164419(P2014-164419)
(22)【出願日】2014年8月12日
(65)【公開番号】特開2015-45408(P2015-45408A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2017年5月1日
(31)【優先権主張番号】61/870,482
(32)【優先日】2013年8月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ジェイ・フランシス
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・エフ・ボイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ギャレット・ダブリュ・ゲイジ
(72)【発明者】
【氏名】ジョハン・ニルソン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・カンペ
【審査官】
高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−544903(JP,A)
【文献】
特表2008−507675(JP,A)
【文献】
特開平01−199063(JP,A)
【文献】
特開平10−138774(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/096065(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両トランスファケースであって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に回転可能に装着された一次シャフトと、
前記一次シャフトによって選択的に駆動される二次シャフトであって、前記ハウジングによって回転可能に装着される二次シャフトと、
前記一次シャフトと捩れ可能に固定されたハブと、
摩擦パックを介して前記ハブと選択的に捩れ可能に接続され、潤滑油の径方向の漏出を許容する一連の穴を有するクラッチハウジングと、
前記クラッチハウジングに対して捩れ可能に固定されかつ前記二次シャフトと、可撓性の捩れ力部材を介して、捩れ可能に接続された係合輪と、
前記クラッチハウジングを前記ハブと選択的に接続させるための摩擦パック係合装置と、
前記可撓性の捩れ力部材及び前記クラッチハウジングの動作の結果により活性化された、飛散される潤滑油を捕捉するために前記ハウジングに対して固定されたリザーバシステムであって、前記係合輪に隣接する部分を有し、前記摩擦パックに重なり合う軸方向に前記潤滑油を導いて、前記潤滑油を集合流体容器に送り、かつ前記リザーバシステムから前記一次シャフトに前記摩擦パックの半径方向内側に潤滑油を輸送するための前記ハウジングに形成された静止通路を有するリザーバシステムと、 を備える車両トランスファケース。
【請求項2】
前記ハブが前記摩擦パックの下に潤滑油通路を有する請求項1に記載のトランスファケース。
【請求項3】
前記ハブの潤滑油通路が、前記摩擦パックと係合する前記ハブの表面と交差する半径方向の穴と交差する請求項1又は2に記載のトランスファケース。
【請求項4】
前記ハウジングの前記静止通路がまた、前記ハウジングと前記一次シャフトとを装着する軸受と交差する請求項1〜3のいずれか一項に記載のトランスファケース。
【請求項5】
前記摩擦パック係合装置が、油圧作動されるピストンを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載のトランスファケース。
【請求項6】
前記集合流体容器がエアブリードを有する請求項1〜5のいずれか一項に記載のトランスファケース。
【請求項7】
前記集合流体容器からの前記静止通路が、前記摩擦パック係合装置の半径方向内側に延びる請求項1〜6のいずれか一項に記載のトランスファケース。
【請求項8】
前記リザーバシステムが、前記リザーバシステムの前記集合流体容器に潤滑油を偏向させるために、前記ハウジングによって形成されたバッフルを含む請求項1〜7のいずれか一項に記載のトランスファケース。
【請求項9】
前記リザーバシステムの前記集合流体容器が、前記係合輪に露出されたハウジングの内側と反対側の前記ハウジングの外側に前記ハウジングによって形成される請求項1〜8のいずれか一項に記載のトランスファケース。
【請求項10】
前記集合流体容器が、前記係合輪に露出された前記ハウジングの内側と反対側の前記ハウジングの外側に形成され、かつ前記集合流体容器が、前記ハウジングに接続されたプレートとさらに境を接し、そして、前記ハウジングの前記外側側面に露出される請求項1〜9のいずれか一項に記載のトランスファケース。
【請求項11】
前記トランスファケースが、前記捩れ力伝達部材が前記二次シャフトと前記一次シャフトとの間で移動するときに前記捩れ力伝達部材内に潤滑油を保持するためのライナを有する請求項1〜10のいずれか一項に記載のトランスファケース。
【請求項12】
潤滑油用の通路を設けて、前記係合輪を前記一次シャフトに装着する軸受を潤滑するために、前記一次シャフトと前記ハブとの間に形成された潤滑油通路をさらに有する請求項1〜11のいずれか一項に記載のトランスファケース。
【請求項13】
通常は後輪駆動車両用の車両トランスファケースであって、
後部本体と前部面プレートとを有するハウジングと、
前記ハウジングにベアリングによって回転可能に装着された一次シャフトと、
車両の前部差動装置に動力を供給するための二次シャフトであって、前記一次シャフトによって選択的に駆動され、かつ前記ハウジング内に回転可能に装着される二次シャフトと、
前記一次シャフトと捩れ可能に貼り付けられたハブであって、概ね半径方向の潤滑穴によって交差された軸方向に延びる潤滑通路を有するハブと、
摩擦パックを介して前記ハブと選択的に捩れ可能に接続されたクラッチハウジングであって、潤滑油の半径方向の漏出を可能にするために一連の穴を有するクラッチハウジングと、
前記一次シャフトに回転可能に装着されかつ捩れ可能に前記クラッチハウジングと固定された一次スプロケットであって、チェーンと係合する一次スプロケットと、
前記摩擦パックに係合して、前記クラッチハウジングと前記ハブとを接続するための油圧作動のピストンと、
前記チェーン及びクラッチハウジングの動作の結果により活性化された、飛散される潤滑油を捕捉するために前記ハウジングに対して固定されたリザーバシステムであって、前記ハウジングによって形成され、かつ前記摩擦パック及び前記油圧作動のピストンに軸方向に重なり合う集合流体容器に潤滑油を送る前記チェーンに隣接する前記ハウジングによって形成されたバッフルを有し、前記集合流体容器から前記軸方向に延びる潤滑油通路に前記摩擦パックの半径方向内側に潤滑油を送るための前記ハウジングに形成された静止通路を有し、前記静止通路が概ね垂直の部分と、交差する水平の部分とを有し、前記静止通路も、前記一次シャフトを装着する前記ベアリングの一方に露出されるリザーバシステムと、
を備える車両トランスファケース。
【請求項14】
通常は後輪駆動車両用の車両トランスファケースであって、
後部本体と前部面プレートとを有するハウジングと、
前記ハウジングに回転可能に装着された一次シャフトと、
車両の前部差動装置に動力を供給するための二次シャフトであって、前記一次シャフトによって選択的に駆動され、かつ前記ハウジング内に回転可能に装着される二次シャフトと、
前記一次シャフトと捩れ可能に貼り付けられたハブであって、前記ハブは概ね半径方向の潤滑穴によって交差された軸方向に延びる潤滑通路を有し、前記一次シャフトにスプライン結合され、かつ潤滑油が前記ハブの後端から前記ハブの前端に流れることを可能にするために、前記ハブと前記一次シャフトとの間に内側の潤滑通路を有するハブと、
摩擦パックを介して前記ハブと選択的に捩れ可能に接続されたクラッチハウジングであって、潤滑油の半径方向の漏出を可能にするために一連の穴を有するクラッチハウジングと、
前記一次シャフトに回転可能に装着されかつ捩れ可能に前記クラッチハウジングと固定された一次スプロケットであって、前記一次スプロケットが、前記一次スプロケットと前記二次シャフトとを捩れ可能に接続するチェーンと係合し、前記一次スプロケットが軸受に回転可能に装着され、前記軸受が前記ハブと前記一次シャフトとの間に流れる潤滑油によって潤滑される一次スプロケットと、
前記摩擦パックに係合して、前記クラッチハウジングと前記ハブとを接続するための油圧作動のピストンと、
前記チェーン及びクラッチハウジングの動作の結果により活性化された、飛散される潤滑油を捕捉するために前記ハウジングに対して固定されたリザーバシステムであって、前記リザーバシステムが、前記ハウジングによって形成されかつ前記摩擦パック及び前記油圧作動のピストンに軸方向に重なり合う集合流体容器に潤滑油を送る前記チェーンに隣接する前記ハウジングによって形成されたバッフルを有し、前記集合流体容器が、前記一次スプロケットに露出された前記ハウジングの内側と概ね反対側の前記ハウジングの外側にあるリザーバシステムと、
前記集合流体容器から前記ハブの軸方向に延びる潤滑油通路に前記摩擦パックの半径方向内側に潤滑油を送るための前記ハウジングに形成された静止通路であって、概ね水平の部分を交差する概ね垂直に傾斜した部分を有し、同様に、前記一次シャフトを前記ハウジング内に装着する後部軸受に露出される静止通路と、
を備える車両トランスファケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年8月27日に出願された米国特許仮出願第61/870,482号明細書の利益を主張する。
【0002】
本発明は、自動車用のトランスファケースに関する。特に、本発明の分野は、長手方向に装着されたエンジンを有する通常の後輪駆動を有する車両用の特定の用途を有するオンデマンド四輪駆動車における選択的な自動車用のトランスファケースに関する。
【背景技術】
【0003】
全輪駆動車両として選択的に係合可能な大部分の後輪駆動車両は、トランスファケースを有する。トランスファケースは、典型的に、車両変速機の出力に接続される一次シャフトを有する。一次シャフトは、典型的に、チェーンと係合するスプロケットを回転可能に装着している。チェーンは、典型的に、二次シャフトと接続される他のスプロケットと係合する。二次シャフトは、トランスファケース内に回転可能に装着される。二次シャフトは、前部差動装置と捩れ可能に接続される前部駆動シャフトと捩れ可能に接続されて、車両の前輪に動力を供給する。車両の前輪に選択的に係合する機能を提供するために、典型的に、一次シャフトのスプロケットと一次シャフトと選択的に係合させて、一次シャフトへのトルクを二次シャフトに伝達し、これによって、車両の前輪に選択的に係合するためにクラッチ機構がある。理想的な舗装状態が存在する場合、典型的に、クラッチは係合しないので車両は後輪にのみ係合する。クラッチの係合を自動制御するために、車輪のスリップ状態を認識する制御器が典型的に提供される。ある実施形態では、クラッチはまた、運転者の要求の結果として係合されることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,753,173号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大部分のトランスファケースは、その関連の摩擦パック内のクラッチ用の潤滑を提供するためにあるタイプの潤滑油ポンプを有する。このポンプの動作は、車両ドライブトレインからの取出しによって動力供給されることによって機械的に車両エンジンに負荷をもたらすか、あるいは間接的に寄生電気負荷を発生することによりエンジンに対する負荷となる。トランスファケースを提供することが望ましく、この場合、クラッチの摩擦パック用に必要な潤滑は、トランスファケースの動作から大きく又は全体的に受動的に提供することができる。このようなトランスファケースの例は、Gratzerらへの(特許文献1)に提供されている。Gratzerらに代わるトランスファケースを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の要求を満たすために、かつ他の利点を提供するために、本発明の構想が提案される。本発明は、クラッチ機構を介して二次シャフトと選択的に係合可能である一次シャフトを有するトランスファケースを提供する。クラッチ機構は摩擦パックを含む。クラッチ機構のハブは、一次シャフトに接続され、クラッチハウジングは、一次シャフトに回転式に装着された一次スプロケットと捩れ可能に固定される。摩擦パックに重なり合う一次シャフトに軸方向に沿って飛散した油を送るためにリザーバシステムが設けられる。リザーバシステムは、静止通路を介してハブの摩擦パックの半径方向内側の潤滑通路と接続される集合流体容器を有する。
【0007】
本発明は、詳細な説明及び添付図面からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明による好ましい実施形態のトランスファケースの断面図である。
【
図2】
図1に示したトランスファケースの背面立面図である。
【
図3】前部カバープレートを取り除いた
図1及び
図2に示したトランスファケースの前部斜視図である。
【
図4】
図1〜
図3に仮想で示したトランスファケースの部分を有する背面斜視図である。
【
図5】
図1〜
図4に示したトランスファケースのハブと一次シャフトの間に延びる潤滑経路を示す部分断面図である。
【
図6】本発明による好ましい実施形態の代わりのトランスファケースの背面斜視図である。
【
図7】
図6に示したトランスファケースの拡大した部分側面断面図である。
【
図8】説明のために前部カバーの大部分を取り除いた
図6に示したトランスファケースの側面断面斜視図である。
【
図9】
図6に示したトランスファケースの他の側面断面部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1つ又は複数の好ましい実施形態の次の説明は、本質的に単に例示的なものに過ぎず、本発明、その適用、又は用途を限定するようには決して意図されない。
【0010】
図1〜
図5を参照すると、本発明によるトランスファケース7が設けられる。トランスファケース7はハウジング10を有する。ハウジング10は、本体14にボルト止め可能に接続される前部カバープレート12を有する。一次シャフト16は、トランスファケースハウジング10内に回転可能に装着される。一次シャフト16は、車両の変速機の出力シャフト(図示せず)と接続するように適合された前端18を有する。典型的に、車両は、エンジンが長手方向に装着された後輪駆動車両であろう。車両用のドライブトレインは、前部車軸によって共有されるべく動力を後部車軸から選択的に方向転換して、車両に全輪駆動能力を設けることできるように構成される。一次シャフトは、前部軸受20によって前部カバープレート12に装着される。主車軸16の後方部分は、後部軸受22によってハウジング本体14内に回転可能に装着される。一次シャフトの後端24は、座金30を捕捉するナット28によってヨーク26と接続される。ヨーク26は、車両の後部差動装置及び車軸(図示せず)に延びる駆動ラインと接続される。
【0011】
より低い高さで、トランスファケース7はまた、二次シャフト34を回転可能に装着する。二次シャフト34は、その内径にスプライン歯36を有するように構成され、二次シャフト34が、直接に又は自在型継手を介して、車両の前輪用の差動装置と捩れ可能に接続される前部駆動ラインのシャフト(図示せず)に動力供給することを可能にする。二次シャフトの外側は、一連のスプロケット歯39が設けられた接続されるスプロケット38である。スプロケット歯39は、マルチリンクのチェーンが典型的に設けられる可撓性の捩れ力伝達部材又はベルト40(概略的に図示)に係合する。ベルト40は、係合輪又は一次スプロケット44に設けられたスプロケット歯42と係合する。一次スプロケット44は、ニードル軸受46によって一次シャフト16に回転可能に装着される。他の実施形態では(図示せず)、一次スプロケットは、代わりに、二次シャフトと直接又は間接にギヤ接続するギヤであることができる。
【0012】
一次シャフト16が二次シャフト34に選択的に捩れ可能に係合することを可能にするために、クラッチ50が設けられる。クラッチ50はクラッチハウジング52を含む。クラッチハウジング52は、一次シャフトのスプロケット44と固定可能に捩れ可能に接続される。クラッチハウジング52は、一連の半径方向折り目54を有し、これらの折り目は、摩擦ディスク56の対応して形成された半径方向縁部と係合する半径方向内側に突出する歯を提供する。摩擦ディスク56は、対応する摩擦プレート58と交じり合う。摩擦プレート58は、それらの内径に沿ってギヤ歯タイプの形状を有し、摩擦プレート58と、半径方向外側の対応する折り目を有するハブ62とを捩れ可能に接続することを可能にする。ハブ62は、溶接、スプライン又は締まり嵌め構成によって一次シャフト16と捩れ可能に貼り付けられる。バッキングプレート64も設けられる。バッキングプレート64、ならびに摩擦プレート58及び摩擦ディスク56は、クラッチハウジング52とクラッチハブ62との選択的な接続を可能にするために摩擦パックを形成し、これによって、スプロケット44と一次シャフト16とを接合する。
【0013】
ハブ62は、複数の一連の軸方向に延びる潤滑通路70を有する。軸方向通路70は、摩擦パックに潤滑油を送る半径方向外側に突出する潤滑穴通路72と交差する。摩擦パックに選択的に係合するために、ピストン74が設けられる。ピストン74は、半径方向内側のシール76及び半径方向外側のシール78を有する。ピストン74の軸方向背後に、通路(図示せず)によって加圧流体源(図示せず)と接続される加圧可能なチャンバ79がある。作動されると、ピストン74は、バッキングプレート64に隣接する軸受82に係合して、この摩擦パックに係合し、これによって、ハブ62及び一次シャフト16と、スプロケット44、ベルト40及び二次シャフト34とを捩れ可能に接続して、車両の前輪に捩れ可能に動力を供給する。
【0014】
前輪が係合するとき、潤滑油をクラッチパックに送る必要がある。潤滑油はまた、クーラントとして添加してもよい。潤滑油はまた、ベルト40及びスプロケット44にまた二次シャフト34に送られる。
【0015】
チェーンが移動するとき、潤滑油が飛散される。油の多くは、一次スプロケット44に概ね隣接する入口92を有する収集バッフル90を含むリザーバシステム内に飛散される。潤滑油の運動量により、潤滑油は、一次シャフト16の上方に軸方向に、かつピストン74、クラッチ50及びその関連の摩擦パックに軸方向に上方に重なり合って輸送される。次に、潤滑油は、集合流体容器96に収集される。流体容器96は、ハウジングの本体14に形成される。流体容器96は静止しており、油内に捕捉された空気の除去を可能にするエアブリードを有する。油の収集により圧力水頭が発生され、これが静止ハウジングの垂直通路98に入る。垂直通路98は後部軸受22と交差して、当該軸受を潤滑する。静止ハウジングの概ね軸方向の通路100は、垂直通路98を交差する。したがって、油の流れは摩擦パックのさらに半径方向内側にある。軸方向通路100は、リザーバによって供給された圧力水頭の下で、油が概ね前方方向に流れて、ハブに設けられた軸方向に延びる潤滑通路70内に軸方向に移動するのを可能にする。本発明によって提供される潤滑の性能を強化する1つの要因は、潤滑油が通路98を通して垂直に内側方向に輸送されているとき、潤滑油が通過しなければならない回転部材がないことである。軸方向の潤滑通路70に入る油は、次に回転によって、潤滑穴72を通して半径方向外側で付勢されて、摩擦パックを潤滑する。
【0016】
潤滑通路100の半径方向内側に、内側潤滑通路101がある。内側潤滑通路101は、ディスク状の空間103と交差する。ディスク状の空間103には、シール112が隣接し、このシールによって、潤滑油がピストンに74に向かって押圧されることが防止される。一次シャフト24は、ハブの半径方向内側に延びる歯118と相互作用する一連の半径方向外側に延びる歯116によって、ハブ62にスプライン結合される。歯116又は118の1つ以上が、ハブの境界面と一次シャフトとの間に延びる潤滑通路114を提供するために取り除かれ、潤滑油がハブの後部からハブの前部に流れ、これによって、一次スプロケット44を一次シャフトに回転式に装着するニードル軸受46に到達することを可能にする。
【0017】
図6〜
図9を参照すると、本発明による代わりの好ましい実施形態のトランスファケース207が設けられる。トランスファケース207は、前部カバー212と本体214とを有するハウジング210を有する。トランスファケース207は、前部軸受220によって前部カバープレート212に回転式に装着された一次シャフト216を有する。一次シャフト216に、ハブ262がスプライン接続され、このハブは、前述したように一次シャフト216に接続され、同様に、軸方向に延びる潤滑通路を有し、前述したように通路114と同様の潤滑通路を有する一次シャフト216と連結される。
【0018】
一次スプロケット244は、ニードル軸受246によって一次シャフト216に回転可能に装着される。一次スプロケット244は、クラッチハウジング252と固定可能に接続される。クラッチハウジング252は、ピストン274によって選択的に係合することができる摩擦パックによって、前述したように一次シャフト216及びハブ262と選択的に係合することができる。前部プレートカバー212は、それに接続されたバッフル215を有する。バッフル215は、一次スプロケット244と二次スプロケット238との間でトルクを伝達するチェーン240に概ね隣接して配置される。トランスファケース207はまた、下方の緩み調整装置263を有し、この装置は、そこから延びる2つの潤滑油保持器235を有する。潤滑油保持器235は、チェーン240が下方の二次スプロケット238から一次スプロケット244に移動するときに、潤滑油をチェーン240内に保持するのを補助するように機能する。通常の使用の潤滑油は、ハウジング210の底部に貯められる。クラッチハウジング252はまた、一連の軸方向に離間した穴253を有し、クラッチハウジングを越える摩擦パック内の潤滑油の漏出を可能にする。穴253は、典型的に、クラッチハウジングの半径方向折り目254の頂部に存在する。
【0019】
チェーン240が回転するとき、油がチェーン240から漏出し、バッフル装置215によって方向転換され、リザーバシステム229の隣接する入口の油も穴253から漏出し、リザーバシステム229に達する。集合流体容器261は、ハウジング210によって、クラッチハウジング252に露出された側面の反対側のハウジングの側面231に形成される。流体容器261用のカバーは、プレート233によって設けられる。流体容器261は、垂直に横たわる静止流体通路271によって遮断される。静止通路271は、一次シャフト216の底部半部に隣接する領域に潤滑油を運んで、後部軸受222及び軸方向ニードル軸受273を潤滑する。軸方向ニードル軸受273は、スラスト座金275と277に隣接しており、これらにより、ハウジングが、クラッチハウジング252及びハブ262によって行われるクラッチの係合によって引き起こされる軸方向力を吸収することが可能である。潤滑通路271は、概ね軸方向の潤滑通路281によって交差され、次に、潤滑通路281が、圧力下で、集合容器261に確立された油圧ヘッドから概ね前述したようなハブ及びニードル軸受246に油を運ぶ。トランスファケース207の重要な特徴の1つは、ハブが摩擦パック259によってクラッチハウジング252と係合するかどうかにかかわらず、油がトランスファケースを循環することである。
【0020】
本発明の説明は、本質的に例示的なものに過ぎず、したがって、本発明の主旨から逸脱しない変形形態は本発明の範囲内に含まれるように意図される。このような変形形態は、本発明の精神と範囲からの逸脱とは見なされない。
【符号の説明】
【0021】
7 トランスファケース
10 ハウジング
12 前部カバープレート
14 本体
16 一次シャフト
18 前端
20 前部軸受
22 後部軸受
24 後端
26 ヨーク
28 ナット
30 座金
34 二次シャフト
36 スプライン歯
38 スプロケット
39 スプロケット歯
40 ベルト
42 スプロケット歯
44 一次スプロケット
46 ニードル軸受
50 クラッチ
52 クラッチハウジング
54 半径方向折り目
56 摩擦ディスク
58 摩擦プレート
62 ハブ
64 バッキングプレート
70 潤滑通路
72 潤滑穴通路
74 ピストン
76 半径方向内側のシール
78 半径方向外側のシール
79 チャンバ
82 軸受
90 収集バッフル
92 入口
96 集合流体容器
98 垂直通路
100 通路
101 内側潤滑通路
103 空間
112 シール
114 潤滑通路
116 半径方向外側に延びる歯
118 半径方向内側に延びる歯
207 トランスファケース
210 ハウジング
212 前部カバー
214 本体
215 バッフル
216 一次シャフト
220 前部軸受
222 後部軸受
229 リザーバシステム
231 ハウジングの側面
233 プレート
235 潤滑油保持器
238 二次スプロケット
240 チェーン
244 一次スプロケット
246 ニードル軸受
252 クラッチハウジング
253 軸方向に離間した穴
254 半径方向折り目
259 摩擦パック
261 集合流体容器
262 ハブ
263 緩み調整装置
271 静止流体通路
273 軸方向ニードル軸受
274 ピストン
275、277 スラスト座金
281 潤滑通路