特許第6588739号(P6588739)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6588739コンクリート構造物の開口部のひび割れ防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588739
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の開口部のひび割れ防止方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/08 20060101AFI20191001BHJP
   E04B 1/22 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   E04C5/08
   E04B1/22
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-103376(P2015-103376)
(22)【出願日】2015年5月21日
(65)【公開番号】特開2016-217012(P2016-217012A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】川添 陽生
(72)【発明者】
【氏名】丸山 弘行
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−124623(JP,A)
【文献】 特開昭59−224755(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2008−0106736(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/08 − 5/12
E04B 1/22
E04C 3/26
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの打設前にコンクリート構造物の開口部の周囲となる位置に緊張材を配置してその一端を固定側定着部として定着プレートを有する定着部材を介して定着させておき、コンクリートの打設、硬化後、前記緊張材の他端を緊張側定着部として定着プレートを有する定着部材を介して緊張、定着させることにより、コンクリートにプレストレスを導入し、前記開口部の周囲に圧縮力を作用させて、前記開口部の周囲のひび割れを防止するコンクリート構造物の開口部のひび割れ防止方法において、
前記開口部の周囲に前記開口部全体を取り囲む断面略四角形又は断面略井桁状をなす4つの仮想面を設定し、前記4つの仮想面毎に、前記緊張材を前記各仮想において一方の他の前記仮想面と交差する交差部の一方の端部と他方の他の前記仮想面と交差する交差部の他方の端部との間に前記各仮想面に沿ってかつ相互に対向する各仮想面では互いに前記緊張材の前記固定側定着部と前記緊張側定着部を反対にして配置し、前記緊張材の前記緊張側定着部を引張り、保持することによりプレストレスを導入する、
ことを特徴とするコンクリート構造物の開口部のひび割れ防止方法。
【請求項2】
4つの仮想面は、相互に対向する一方の2面をそれぞれ水平方向に対して略平行の面とし、他方の2面をそれぞれ垂直方向に対して略平行の面とする、請求項1に記載のコンクリート構造物の開口部のひび割れ防止方法。
【請求項3】
4つの仮想面は、相互に対向する一方の2面をそれぞれ水平方向に対して斜めの面とし、他方の2面をそれぞれ垂直方向に対して斜めの面とする、請求項1に記載のコンクリート構造物の開口部のひび割れ防止方法。
【請求項4】
4つの仮想面の相互に対向する各2面間で各緊張材を交差状にして配置する、請求項1乃至3のいずれかに記載のコンクリート構造物の開口部のひび割れ防止方法。
【請求項5】
4つの仮想面の相互に対向する各面において複数の緊張材を当該各面に沿って略X形の配置で、相互に対向する各面間で対称的に配置する、請求項1乃至4のいずれかに記載のコンクリート構造物の開口部のひび割れ防止方法。
【請求項6】
各定着部材の定着プレートは各緊張材の端部に対して略直角に配置可能にコンクリートに設置する、請求項1乃至5のいずれかに記載のコンクリート構造物の開口部のひび割れ防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の開口部のひび割れ防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンクリート構造物に設けられる開口部には、コンクリート打設後の乾燥収縮、構造物の不同沈下、構造物に作用する地震などの外力によって引張力が作用し、ひび割れが発生しやすい。
【0003】
このような開口部のひび割れを防止する方法として、従来は、開口部の回りにひび割れ補強鉄筋やひび割れ補強材(メッシュなど)を配置することが一般的に行われている。
【0004】
また、この種のひび割れ防止対策として、プレテンション方式、ポストテンション方式の緊張材を用いたひび割れ防止方法が特許文献1、2などにより提案されている。
特許文献1は、コンクリート構造物のひび割れ防止工法に関するもので、この工法では、コンクリート構造物における収縮ひび割れの発生の予測される個所に、プレストレスの導入された治具を予めセットしてコンクリートを打設し、このコンクリートの硬化後、治具に導入していたプレストレスを解除して、局部的にコンクリート内部に圧縮応力を導入する。このようにしてコンクリート構造物の任意の箇所に選択的に局部的な圧縮応力を導入して、収縮ひび割れを防止する。
特許文献2は、コンクリート躯体に形成される開口部の角部のひび割れを抑制するひび割れ抑制方法に関するもので、この方法では、構築すべきコンクリート躯体の開口部の外側に、管をその軸が角部を形成する開口部の両縁に対して傾斜するように設けるとともに、管に引張材をその両端部が管から突出するように挿通しておき、次に、コンクリート躯体を構築すべき部分に、コンクリートを打設することによって、引張材の一端部をコンクリート中に定着するとともに、引張材の他端部をコンクリートから突出させ、次に、コンクリートが硬化した後、引張材の他端部を引張り、この状態で定着する。このようにしてコンクリート硬化後に、乾燥収縮、不同沈下、地震等によって開口部の角部において管に沿う方向に引張力が発生した場合に、管周囲のコンクリートに引張力を作用させないで、コンクリート躯体の開口部の角部のひび割れを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭55−122969号公報
【特許文献2】特開2002−266471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のひび割れ防止方法では、次のような問題がある。
(1)従来のひび割れ補強鉄筋やひび割れ補強材を用いる方法では、ひび割れ補強鉄筋やひび割れ補強材それ自体にコンクリートをひび割れしないようにする作用がなく、ひび割れが生じた後に初めて効力を発揮するもので、ひび割れ幅を小さくすることに止まり、ひび割れを防止することはできない。
(2)特許文献1の工法はコンクリート構造物のひび割れ発生の予測される個所にプレテンション方式によりストレスを導入する方法であるが、この文献1の方法が適用できる部位は開口部の隅角部などに限られ、この方法では、コンクリート構造物の様々な位置にある様々な形状の開口部に適用することが難しい。
(3)特許文献2の方法は開口部の端部付近にポストテンション方式によりストレスを導入する方法であるが、この文献2の方法が適用できる部位は開口部の端部付近に限られ、この方法では、コンクリート構造物の様々な位置にある様々な形状の開口部に適用することが難しい。
【0007】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、この種のコンクリート構造物の開口部のひび割れ防止方法において、コンクリート構造物の様々な位置にある様々な形状の開口部に適用して、開口部のひび割れを防止できるようにすること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、
コンクリートの打設前にコンクリート構造物の開口部の周囲となる位置に緊張材を配置してその一端を固定側定着部として定着プレートを有する定着部材を介して定着させておき、コンクリートの打設、硬化後、前記緊張材の他端を緊張側定着部として定着プレートを有する定着部材を介して緊張、定着させることにより、コンクリートにプレストレスを導入し、前記開口部の周囲に圧縮力を作用させて、前記開口部の周囲のひび割れを防止するコンクリート構造物の開口部のひび割れ防止方法において、
前記開口部の周囲に前記開口部全体を取り囲む断面略四角形又は断面略井桁状をなす4つの仮想面を設定し、前記4つの仮想面毎に、前記緊張材を前記各仮想において一方の他の前記仮想面と交差する交差部の一方の端部と他方の他の前記仮想面と交差する交差部の他方の端部との間に前記各仮想面に沿ってかつ相互に対向する各仮想面では互いに前記緊張材の前記固定側定着部と前記緊張側定着部を反対にして配置し、前記緊張材の前記緊張側定着部を引張り、保持することによりプレストレスを導入する、
ことを要旨とする。
また、このコンクリート構造物の開口部のひび割れ防止方法は、次のように具体化することが好ましい。
(1)4つの仮想面は、相互に対向する一方の2面をそれぞれ水平方向に対して略平行の面とし、他方の2面をそれぞれ垂直方向に対して略平行の面とする。
(2)上記(1)に代えて、4つの仮想面は、相互に対向する一方の2面をそれぞれ水平方向に対して斜めの面とし、他方の2面をそれぞれ垂直方向に対して斜めの面としてもよい。
(3)上記(1)、(2)において、4つの仮想面の相互に対向する各2面間で各緊張材を交差状にして配置する。
(4)上記(1)−(3)において、4つの仮想面の相互に対向する各面において複数の緊張材を当該各面に沿って略X形の配置で、相互に対向する各面間で対称的に配置する。
(5)上記(1)−(4)において、各定着部材の定着プレートは各緊張材の端部に対して略直角に配置可能にコンクリートに設置する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコンクリート構造物の開口部のひび割れ防止方法では、上記のとおり、ポストテンション方式の緊張材を用い、開口部の周囲に開口部全体を取り囲む断面略四角形又は断面略井桁状をなす4つの仮想面を設定し、この4つの仮想面毎に、緊張材を各仮想において一方の他の仮想面と交差する交差部の一方の端部と他方の他の仮想面と交差する交差部の他方の端部との間に各仮想面に沿ってかつ相互に対向する各仮想面では互いに緊張材の固定側定着部と緊張側定着部を反対にして配置し、緊張材の緊張側定着部を引張り、保持することによりプレストレスを導入するようにしたので、各仮想面の緊張材により開口部周囲全体のコンクリートに圧縮力が作用して、開口部に引張り力が発生した場合に、開口部周囲全体のコンクリートに引張り力を作用させないで開口部のひび割れを確実に防止することができ、また、このような緊張材の配置方式により、コンクリート構造物の様々な位置にある様々な形状の開口部に適用して、開口部のひび割れを確実に防止することができる、という本発明独自の格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態によるコンクリート構造物の(四角形の)開口部のひび割れ防止方法を示す図((a)はコンクリート構造物の正面図(b)はコンクリート構造物の平面図)
図2】同ひび割れ防止方法において、コンクリートの打設、硬化後、緊張材に所定のプレストレス(緊張力)を付与した状態で、他端のねじにナットを締結し、ナットを定着プレートを介して締め付けて、緊張材を固定保持した状態を示す図
図3】同ひび割れ防止方法をコンクリート構造物の異なる形状(円形)の開口部に適用した場合を示す図
図4】本発明の他の実施の形態によるコンクリート構造物の開口部のひび割れ防止方法を示す図((a)はコンクリート構造物の開口部が四角形の場合(b)はコンクリート構造物の開口部が円形の場合)
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。図1にコンクリート構造物の開口部のひび割れ防止方法(以下、単にひび割れ防止方法という。)を示している。
図1に示すように、このひび割れ防止方法は、コンクリートの打設前にコンクリート構造物Cの開口部C1の周囲となる位置に緊張材2を配置してその一端を固定側定着部21として定着プレート310を有する定着部材31を介して定着させておき、コンクリートの打設、硬化後、緊張材2の他端を緊張側定着部22として定着プレート310を有する定着部材31を介して緊張、定着させることにより、コンクリートにプレストレスを導入し、開口部C1の周囲に圧縮力を作用させて、開口部C1の周囲のひび割れを防止するものである。
この場合、コンクリートの打設前に予め、コンクリート構造物Cの開口部C1の周囲となる位置にシース管1を設置し、このシース管1に緊張材(PC鋼材、PC鋼棒を含む。以下、同じ。)2を挿通してその一端を固定側定着部21として定着プレート310を有する定着部材31を介して定着させ、また併せて緊張材2の他端を緊張側定着部22として緊張材2の他端に定着部材31の定着プレート310を配置して、ポストテンション方式(ボンド工法)の緊張材2を埋設しておく。そして、コンクリートの打設後に、シース管1に挿通した緊張材2の他端(緊張側定着部22)を定着部材31の定着プレート310を介して引張り、定着させることにより、硬化後のコンクリートにプレストレスを導入し、開口部C1の周囲に圧縮力を作用させて、開口部C1の周囲のひび割れを防止する。
【0012】
そして、このひび割れ防止方法では、特に、開口部C1の周囲に開口部C1全体を取り囲む断面略四角形又は断面略井桁状をなす4つの仮想面P1、P2、P3、P4を設定し、この4つの仮想面P1、P2、P3、P4毎に、シース管1及び緊張材2を各面間の一方の交差部側の端部と他方の交差部側の端部との間に各面に沿ってかつ相互に対向する各面では互いに緊張材2の固定側定着部21と緊張側定着部22を反対にして配置し(相互に対向する各面に複数の緊張材2を配置する場合は、各面間で緊張材2の固定側定着部21と緊張側定着部22を交互に反対にして配置し)、緊張材2の緊張側定着部22を引張り、保持することによりプレストレスを導入する。
【0013】
この場合、コンクリート構造物Cの開口部C1は、正面視四角形で上下の各面を水平方向に対して略平行(つまり、水平面)とし、左右の各面を垂直方向に対して略平行(つまり、垂直面)とする。これに対して、4つの仮想面P1、P2、P3、P4は、相互に対向する一方の2面P1、P2をそれぞれ水平方向に対して略平行の面とし、すなわち開口部C1の上下の各面の外側で各面に対して平行(つまり、水平面)にし、他方の2面P3、P4をそれぞれ垂直方向に対して略平行の面とし、すなわち開口部C1の左右の各面の外側で各面に対して平行(つまり、垂直面)にする。
【0014】
また、この場合、4つの仮想面P1、P2、P3、P4の相互に対向する各2面P1,P2間、P3,P4間で、各シース管1を交差状に配置して緊張材2を各シース管1に通し、各緊張材2を交差状にして配置する。ここでは、特に、4つの仮想面P1、P2、P3、P4の相互に対向する各面P1、P2、相互に対向する各面P3、P4において複数のシース管1を当該各面に沿って略X形に並列の配置にして、緊張材2を各シース管1に通し各シース管1の両端から突出させ、複数の緊張材2を当該各面に沿って略X形の並列の配置とし、相互に対向する各面P1,P2間、P3,P4間で対称的に配置する。なお、これらのシース管1はこの構造物に配筋する図示されない鉄筋に結束線により緊結する。
【0015】
そして、各緊張材2の一端に定着部材31を取り付ける。この場合、主要部品として定着プレート310とナット311とを備えてなる定着部材31を採用する。この定着部材31の定着プレート310には断面略L字形の鉄板、所謂アングルプレートを用い、その片側半面の平板の略中心に緊張材2を挿通可能に穴を穿つ。また、緊張材2は少なくとも両端部の所定の範囲にねじを切り、このねじにナット311を締結可能にしてある。このようにして各緊張材2の一端を定着プレート310の片側半面の平板に対して略直角にこの平板の穴に通し、その一端のねじにナット311を螺合して、各緊張材2の一端に定着プレート310を略直角に交わるように配置固定する。なお、この緊張材2と定着プレート310は、ねじ締結に代えて、溶接により固着してもよい。この場合でも、各緊張材2の一端に定着プレート310を略直角に交わるように配置固定する。
また併せて、各緊張材2の他端に定着部材31の定着プレート310を配置する。この場合、定着部材31は一端の定着部材31と同様で、各緊張材2の他端を定着プレート310の片側半面の平板に対して略直角にこの平板の穴に通し、各緊張材2の他端に定着プレート310を略直角に交わるように配置する。
【0016】
このようにコンクリートの打設前にコンクリート構造物Cの開口部C1の周囲となる位置に複数のシース管1を既述のレイアウトにより設置して、各シース管1に緊張材2を挿通し緊張材2の一端を定着部材31を介して定着し、緊張材2の他端に定着プレート310を配置して、型枠を組み立て、コンクリートを打設する。コンクリートの打設後、所定の期間養生を行い、コンクリートを硬化させる。
【0017】
そして、コンクリートが硬化すると、コンクリートの表面で各緊張材2の両端の周囲に、定着部材31の定着プレート310が緊張材2の端部に対して略直角に設置されてこの定着プレート310により溝又は切り欠きが形成される。このコンクリートの硬化後、各緊張材2の他端を定着プレート310を介して引張り、固定保持する。この場合、各緊張材2の他端をジャッキなどにより引張り、緊張材2に所定のプレストレス(緊張力)を付与した状態で、他端のねじにナット311を締結し、このナット311を定着プレート310を介して締め付けることにより、緊張材2を固定保持する(図2参照)。なお、この引張り後の緊張材2の固定保持は、緊張材2とナット311とのねじ締結に代えて、緊張材2の他端に穴を設け、これにくさびを差すようにしてもよく、種々に変更可能である。
なお、この場合、緊張力が過度に大きいと、それによってコンクリートにひび割れが発生してしまうので、コンクリート強度をテストピースで測定するか、積算温度で推定するなどして、緊張力を調整することが望ましい。また、温度下降時は、コンクリートが収縮し、緊張力が抜けてしまうので、水和熱や環境温度によるコンクリートの温度変化を測定し、緊張力を調整することが望ましい。
これにより、各緊張材2の一端と他端との間のコンクリート、すなわち、各緊張材2の固定側定着部21の定着プレート310と緊張側定着部22の定着プレート310との間のコンクリートに、各緊張材2に沿って圧縮力が作用するので、開口部C1の周囲に引張力が発生した場合に、開口部C1周囲全体のコンクリートに引張力が作用せず、開口部C1の四隅角部その他の各部にひび割れの発生が防止される。
また、このひび割れ防止方法では、特に、4つの仮想面P1、P2、P3、P4の相互に対向する各面P1、P2、各面P3、P4において複数のシース管1を当該各面に沿って略X形に並列の配置にして、緊張材2を各シース管1に通し各シース管1の両端から突出させ、複数の緊張材2を当該各面に沿って略X形の並列の配置とし、相互に対向する各面P1、P2間、各面P3、P4間で対称的に配置しているので、コンクリートの内部に力のねじれが生じることなく、開口部C1周囲全体に各緊張材2に沿って双方向に圧縮力が作用して、これまでに様々な対策を講じても防止できなかった開口部C1のひび割れが確実に防止される。
【0018】
以上説明したように、このひび割れ防止方法では、ポストテンション方式の緊張材2を用い、コンクリート構造物Cの開口部C1の周囲に開口部C1全体を取り囲む断面略四角形又は断面略井桁状をなす4つの仮想面を設定し、これら4つの仮想面毎に、緊張材2を各面間の一方の交差部側の端部と他方の交差部側の端部との間に各面に沿ってかつ相互に対向する各面では互いに緊張材2の固定側定着部21と緊張側定着部22を反対にして配置し、緊張材2の緊張側定着部21を引張り、保持することによりプレストレスを導入するようにしたので、開口部C1周囲全体のコンクリートに圧縮力が作用して、開口部C1に引張り力が発生した場合でも、開口部C1周囲全体のコンクリートに引張り力が作用せず、開口部C1のひび割れを防止することができる。
また、このような緊張材2の配置形式により、すなわち、開口部C1の周囲に設定した開口部C1全体を取り囲む断面略四角形又は断面略井桁状をなす4つの仮想面にそれぞれ、緊張材2を当該各面に沿ってかつ相互に対向する各面では互いに緊張材2の固定側定着部と緊張側定着部を反対にして配置する形式により、緊張材2の適用の位置に制限が少なく、コンクリート構造物の様々な位置にある、図1図3に示すような矩形状の開口部や円形状の開口部など様々な形状の開口部に適用することができ、コンクリート構造物において様々な位置で様々な形状の開口部のひび割れを確実に防止することができる。
【0019】
なお、この実施の形態では、緊張材2をコンクリート内にポストテンション方式の特にボンド工法により埋設したが、被覆緊張材を用いるアンボンド工法により埋設してもよい。
また、この実施の形態では、定着部材31として定着プレート(アングルプレート)310とナット311を使用したが、この種の定着部材には定着プレート(キャスティングプレート)とナットを一体的に備えた各種の定着具(例えば、緊張材を楔等で定着するためのキャスティングプレート、キャスティングプレートを型枠に固定するための支持棒およびナット、キャスティングプレートと型枠との間に、緊張用のジャッキの先端をセットするための凹部を形成するポケットフォーマなどから構成される定着具など。)が汎用品として提供されており、このような各種の定着具から任意のものを採用してもよい。
さらに、この実施の形態では、4つの仮想面P1、P2、P3、P4は、相互に対向する一方の2面P1、P2をそれぞれ水平方向に対して略平行の面とし、他方の2面P3、P4をそれぞれ垂直方向に対して略平行の面としたが、これらの仮想面P1、P2、P3、P4は、図4に示すように、相互に対向する一方の2面P1、P2をそれぞれ水平方向に対して角度を付けて斜めの面とし、他方の2面P3、P4をそれぞれ垂直方向に対して角度を付けて斜めの面としてもよい。
このようにしても上記実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0020】
C コンクリート構造物
C1 開口部
P1、P2、P3、P4 仮想面
1 シース管
2 緊張材
21 固定側定着部
22 緊張側定着部
31 定着部材
310 定着プレート
311 ナット
図1
図2
図3
図4