(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
以下の説明において、n
+、n、n
−及びp
+、p、p
−の表記は、各導電形における不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわち、n
+はnよりもn形の不純物濃度が相対的に高く、n
−はnよりもn形の不純物濃度が相対的に低いことを示す。また、p
+はpよりもp形の不純物濃度が相対的に高く、p
−はpよりもp形の不純物濃度が相対的に低いことを示す。
また、本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
以下で説明する各実施形態について、各半導体領域のn形とp形を反転させて実施することも可能である。
【0008】
(第1実施形態)
図1〜
図3を用いて、第1実施形態に係る半導体装置100について説明する。
図1は、第1実施形態に係る半導体装置100の断面図である。
図2は、第1実施形態に係る半導体装置100の平面図の一例である。
図3は、第1実施形態に係る半導体装置100の平面図の他の一例である。
【0009】
半導体装置100は、例えば、ダイオードである。
半導体装置100は、半導体層Sと、アノード電極8(第1電極)と、カソード電極9(第2電極)と、を備える。
半導体層Sは、ダイオードのカソードを構成する、n
−形(第1導電形)の半導体領域1(第1半導体領域)およびn
+形半導体領域5(第6半導体領域)と、ダイオードのアノードを構成する、p
−形(第2導電形)の半導体領域2(第2半導体領域)、p形半導体領域3(第3半導体領域)、およびp形半導体領域4(第4半導体領域)と、を有する。
【0010】
図1に表すように、半導体層Sは、表面S1と、裏面S2と、を有する。表面S1には、アノード電極8が設けられ、裏面S2には、カソード電極9が設けられている。
【0011】
n
+形半導体領域5は、半導体層S中の裏面S2側に形成されている。n
+形半導体領域5は、カソード電極9と電気的に接続されている。
n
−形半導体領域1は、n
+形半導体領域5の上に設けられている。n
−形半導体領域1は、n
+形半導体領域5の上に、一様に設けられている。
【0012】
p
−形半導体領域2は、n
−形半導体領域1の上に設けられ、半導体層S中の表面S1側に位置している。
p形半導体領域3はX方向において複数設けられている。
図1に表す例では、p形半導体領域3は、p
−形半導体領域2に囲まれている。あるいは、p形半導体領域3の一部がp
−形半導体領域2に囲まれ、p形半導体領域3の他の一部がn
−形半導体領域1に囲まれていてもよい。
【0013】
p形半導体領域4は、X方向において複数設けられている。p形半導体領域4は、p形半導体領域3と離間して設けられ、p
−形半導体領域2に囲まれている。または、p形半導体領域4の一部がp
−形半導体領域2に囲まれ、p形半導体領域4の他の一部がn
−形半導体領域1に囲まれていてもよい。p形半導体領域3とp形半導体領域4との間には、p
−形半導体領域2の一部(部分2a)が設けられている。
【0014】
p形半導体領域4の深さは、p形半導体領域3の深さよりも深い。すなわち、p
−形半導体領域2からn
−形半導体領域1に向かう第1方向(−Z方向)における、p形半導体領域4の第1端部は、p形半導体領域3の−Z方向における第2端部に対して、−Z方向側に設けられている。なお、第1端部が第2端部に対して−Z方向側に位置するとは、第2端部を含み−Z方向に直交する面からみて、第1端部が−Z方向に設けられていることを意味している。
他の表現によると、n
+形半導体領域5とp形半導体領域4との間のZ方向における距離は、n
+形半導体領域5とp形半導体領域3との間のZ方向における距離よりも短い。
【0015】
p形半導体領域4のp形不純物濃度は、p形半導体領域3のp形不純物濃度と等しくてもよいし、これより高くてもよい。
【0016】
p形半導体領域4のX方向の長さL1は、p形半導体領域3のX方向の長さL2よりも短い。ただし、p形半導体領域4の深さがp形半導体領域3の深さよりも深ければ、長さL1が長さL2と等しくても良いし、長さL2より長くても良い。
【0017】
p形半導体領域4は、例えば
図1に表すように、X方向において隣り合う2つのp形半導体領域3の間に設けられている。ただし、3つ以上のp形半導体領域3に対して1つのp形半導体領域4が設けられていてもよい。または、1つのp形半導体領域3に対して1つのp形半導体領域4が設けられていてもよい。
【0018】
絶縁部10は、p形半導体領域4の上と、部分2aの少なくとも一部の上と、に設けられる。絶縁部10は、さらに、p形半導体領域4に隣り合う2つのp形半導体領域3の少なくともいずれかの上に、設けられていてもよい。
図1に表す例では、絶縁部10は、p形半導体領域4、p形不純物濃度3、および部分2aの上に設けられ、これらの領域に接している。
アノード電極8は、絶縁部10の上に設けられている。
【0019】
p
−形半導体領域2の一部はアノード電極8と接し、ショットキー接合を形成している。複数のp形半導体領域3のうち少なくとも一つは、アノード電極8と接し、オーミック接合を形成している。
【0020】
p形半導体領域3、p形半導体領域4、および絶縁部10は、例えば、
図2に表すように、Y方向に延びている。p形半導体領域3のY方向における長さは、p形半導体領域4のY方向における長さと等しくても良いし、異なっていても良い。
【0021】
あるいは、
図3に表すように、p形半導体領域4は、Y方向において複数設けられていてもよい。この場合、p形半導体領域4のY方向の長さは、p形半導体領域3のY方向の長さよりも短い。
図3に表す例では、複数のp形半導体領域4は、Y方向に並んで配列されているが、それぞれのp形半導体領域4のX方向における位置が互いに異なっていてもよい。
【0022】
次に、
図4を用いて第1実施形態に係る半導体装置100の製造方法について説明する。
図4は、第1実施形態に係る半導体装置100の製造工程を表す工程断面図である。
【0023】
まず、
図4(a)に表すように、n
+形の半導体領域5aと、n
−形の半導体領域1aと、を有する半導体層Saを用意する。半導体層Saの主成分は、例えば、Siである。半導体層Saは、例えば、n
+形の半導体基板上に、n形不純物を添加しながらSi層をエピタキシャル成長させることで形成される。n形不純物としては、例えば、リンまたはヒ素が用いられる。
【0024】
次に、基板Saの表面に、p
−形半導体領域2を形成するために、p形不純物をイオン注入する。続いて、基板Sa中に、p形半導体領域3とp形半導体領域4を形成するために、p形不純物をイオン注入する。p形半導体領域4が形成される領域には、例えば、p形半導体領域3が形成される領域よりも多くのp形不純物をイオン注入する。p形不純物としては、例えば、ボロンが用いられる。
【0025】
それぞれの領域を形成するためのp形不純物のイオン注入が行われた後に、基板Saに加熱処理を行うことで、
図4(b)に表すように、p
−形半導体領域2、p形半導体領域3、およびp形半導体領域4が形成される。なお、各半導体領域を形成するためのイオン注入を行う度に、基板Saに加熱処理を行ってもよい。
【0026】
次に、基板Sa上に、絶縁部10を形成する。絶縁部10は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて絶縁層を形成し、この絶縁層をフォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いて加工することで形成される。絶縁部10は、例えば、酸化シリコンを含む。
【0027】
次に、基板Sa上に、金属層を形成することで、アノード電極8を形成する。続いて、
図4(c)に表すように、半導体層Saの裏面を研磨し、半導体層Sを形成する。このとき、研削の終了点がn
+形の半導体領域5a中となるように、半導体層Saの研磨を行う。この工程により、
図1に表すn
+形半導体領域5が形成される。
【0028】
次に、
図4(d)に表すように、半導体層Sの裏面に金属層を形成することで、カソード電極9を形成する。
【0029】
以上の工程により、
図1に表す半導体装置100が得られる。
【0030】
ここで、本実施形態による作用および効果について説明する。
本実施形態によれば、インパクトイオン化によるアバランシェ降伏によって半導体装置の破壊が生じる可能性を低減できる。
これは、以下の理由による。
【0031】
半導体装置にサージ電圧が印加された際、アノードのp形半導体とカソードのn形半導体との接合近傍でインパクトイオン化が生じる場合がある。このインパクトイオン化によりキャリアが生成され、アバランシェ降伏が生じると、半導体装置が破壊される可能性がある。
これに対して、本実施形態に係る半導体装置100は、p形半導体領域3、p形半導体領域4、および絶縁部10を有する。p形半導体領域4は、その−Z方向における端部が、p形半導体領域3の−Z方向における端部に対して、−Z方向側に位置している。このため、半導体装置100にサージ電圧が印加された際にp形半導体領域4でインパクトイオン化が生じる可能性は、p形半導体領域3でインパクトイオン化が生じる可能性よりも高い。
【0032】
p形半導体領域4でインパクトイオン化が生じてアバランシェ降伏が発生すると、そのp形半導体領域4とアノード電極8との間に電流が流れる。このとき、p形半導体領域4の直上には絶縁部10が設けられているため、電流は、p
−形半導体領域2を通じてアノード電極8に流れる。一方で、p
−形半導体領域2のp形不純物濃度は、p形半導体領域4のp形不純物濃度よりも低い。すなわち、p
−形半導体領域2における電気抵抗は、p形半導体領域4における電気抵抗よりも高い。
【0033】
このため、電流がp
−形半導体領域2を流れることで電圧降下が生じ、p形半導体領域4における電位がアノード電極8における電位よりも低くなる。また、p形半導体領域4に流れる電流が大きいほど、p
−形半導体領域2を流れる電流も大きくなるため、その電圧降下も大きくなる。従って、p形半導体領域4に流れる電流が大きくなるほど、p形半導体領域4における電位の低下も大きくなる。
【0034】
p形半導体領域4における電位が低くなると、p形半導体領域4においてインパクトイオン化が発生する可能性が低くなる。このため、p形半導体領域4においてアバランシェ降伏が発生する可能性も低減され、p形半導体領域4を流れる電流は小さくなる。この結果、p形半導体領域3においてインパクトイオン化が発生する場合に比べて、半導体装置の破壊に至る大きな電流が、半導体装置100中を流れる可能性を低減することができ、半導体装置の破壊耐量を向上させることができる。
【0035】
ここで、p
−形半導体領域2とアノード電極8とは、ショットキー接合を形成している。ショットキー接合においては、温度が上昇すると、逆電圧印加時の漏れ電流が大きく増加する。p形半導体領域4、p形半導体領域3、および部分2aの上に、絶縁部10を設けることで、ショットキー接合を長くしても、漏れ電流の増加を防ぐことができる。この結果、p
−形半導体領域2における電流の経路を長くすることができる。p
−形半導体領域2における電流の経路を長くすることで、電流がp
−形半導体領域2を流れる際の、p
−形半導体領域2における電圧降下がより大きくなり、p形半導体領域4における電位をより低くすることが可能となる。この結果、半導体装置の破壊が生じる可能性をより一層低減できる。
【0036】
本実施形態によれば、上述したように、p形半導体領域4に流れる電流を低減することが可能となる。p形半導体領域4に流れる電流が低減されると、p形半導体領域4において発生する熱量も低減される。このためp
−形半導体領域2とアノード電極8のショットキー接合における温度の上昇が抑制され、漏れ電流の増大によって半導体装置の破壊が生じる可能性を低減することが可能となる。
【0037】
また、p形半導体領域4が複数設けられている場合は、複数のp形半導体領域4のうちの1つでインパクトイオン化が生じて電流が流れ、そのp形半導体領域4における電位が低下すると、他のp形半導体領域4でインパクトイオン化が発生する。このため、p形半導体領域3においてインパクトイオン化が生じる可能性をより低減し、半導体装置の破壊が生じる可能性をより一層低減することが可能となる。
【0038】
また、p形半導体領域4がY方向に延びている場合、Y方向において複数の箇所でインパクトイオン化が発生しうる。このため、1か所において集中的にインパクトイオン化が発生する場合に比べて、p形半導体領域4に電流が流れる際の電流密度を低減することが可能となる。また、Y方向における複数の箇所でインパクトイオン化が発生することで熱が分散して発生し、半導体装置の昇温を抑制することが可能となる。
【0039】
あるいは、p形半導体領域4がY方向において複数設けられている場合、それぞれのp形半導体領域4でインパクトイオン化が生じると、それぞれのp形半導体領域4が設けられた部分に電流が流れる。例えば、p形半導体領域4が特定の方向に延びて設けられており、そのp形半導体領域4内の複数の箇所でインパクトイオン化が発生した場合について考える。この場合、複数の箇所で発生したキャリアは、当該p形半導体領域4中のある1点に集中して局所的に大きな電流が流れる可能性がある。p形半導体領域4をY方向において複数設けることで、複数の箇所で発生したキャリアが集中して局所的に大きな電流が流れることが抑制される。
【0040】
インパクトイオン化は、先端の曲率が大きい半導体領域において発生する。先端の曲率が大きいと、当該先端近傍で電界の集中が生じるためである。従って、p形半導体領域4のX方向の長さを、p形半導体領域3のX方向の長さよりも短くすることが効果的である。X方向の長さが短くなるように半導体領域を形成することで、当該半導体領域の先端の曲率が大きくなるためである。p形半導体領域4のX方向の長さを、p形半導体領域3のX方向の長さよりも短くすることで、p形半導体領域3においてインパクトイオン化が生じる可能性を低減しつつ、p形半導体領域4でインパクトイオン化が生じる可能性を高めることができる。この結果、半導体装置の破壊耐量をより一層向上させることが可能となる。
【0041】
(第2実施形態)
図5を用いて、第2実施形態に係る半導体装置200について説明する。
図5は、第2実施形態に係る半導体装置200の断面図である。
【0042】
半導体装置200は、半導体装置100との比較において、例えば、p
−形半導体領域2に差異を有する。半導体装置200のp
−形半導体領域2以外の構造については、例えば、半導体装置100と同様の構造を採用可能である。
【0043】
p
−形半導体領域2は、第1部分21と、第2部分22と、を有する。第2部分22のp形不純物濃度は、第1部分21のp形不純物濃度よりも低い。第1部分21と第2部分22は、例えば、X方向において交互に設けられている。第1部分21のX方向の長さは、例えば、第1部分22のX方向の長さよりも長い。
【0044】
p形半導体領域3の少なくとも一部は、第1部分21に囲まれている。p形半導体領域4の少なくとも一部は、第2部分22に囲まれている。
【0045】
第2部分22におけるp形不純物濃度は、第1部分21のp形不純物濃度よりも低いため、第2部分22における電気抵抗は、第1部分21における電気抵抗よりも高い。p形半導体領域4とアノード電極8の間に電流が流れる際に、電流は、この第2部分22を通る。従って、p
−形半導体領域2が第2部分22を有することで、第1実施形態に比べて、電流がp
−形半導体領域2を流れる際の電圧降下を、より大きくすることが可能となる。電圧降下が大きくなることで、p形半導体領域4における電位をより一層低下させることができる。この結果、第1実施形態に比べて、半導体装置の破壊が生じる可能性をさらに低減することが可能となる。
【0046】
(第3実施形態)
図6を用いて、第3実施形態に係る半導体装置300について説明する。
図6は、第3実施形態に係る半導体装置300の断面図である。
【0047】
半導体装置300は、例えば、FRD(Fast Recovery Diode)領域310およびIGBT(Insulated Gate Bipola Transistor)領域320を有する、RC−IGBTである。
【0048】
半導体装置300は、半導体層と、コレクタ電極40(第1電極)と、エミッタ電極41(第2電極)と、を有する。
半導体層は、n
−形(第1導電形)の半導体領域1(第1半導体領域)と、p
−形(第2導電形)の半導体領域2(第2半導体領域)と、p形半導体領域3(第3半導体領域)と、p形半導体領域4(第4半導体領域)と、n
+形半導体領域5と、p
+形コレクタ領域31と、n形バッファ領域32と、p形ベース領域36と、p
+形コンタクト領域37と、n
+形エミッタ領域38と、ゲート電極33と、ゲート絶縁層34と、絶縁層39と、を有する。
【0049】
FRD領域310は、n
+形半導体領域5、n形バッファ領域32の一部、n
−形半導体領域1の一部、p
−形半導体領域2、p形半導体領域3、p形半導体領域4、および絶縁部10を有する。FRD領域310におけるp
−形半導体領域2、p形半導体領域3、p形半導体領域4、および絶縁部10は、例えば、第1実施形態に係る半導体装置100と同様の構造を有する。
【0050】
IGBT領域320は、p
+形コレクタ領域31、n形バッファ領域32の一部、n
−形半導体領域1の一部、ゲート電極33、ゲート絶縁層34、p形ベース領域36、p
+形コンタクト領域37、およびn
+形エミッタ領域38を有する。
【0051】
p
+形コレクタ領域31は、半導体層S中の裏面S2側に設けられ、コレクタ電極40と電気的に接続されている。p
+形コレクタ領域31の上およびn
+形半導体領域5の上には、n形バッファ領域32が設けられている。
【0052】
p形ベース領域36は、n
−形半導体領域1の上に設けられ、半導体層S中の表面S1側に位置している。p形ベース領域36は、例えば、p
−形半導体領域2と、X方向において離間している。また、p形ベース領域36とp
−形半導体領域2を電気的に分離するために、p形ベース領域36の端部、p
−形半導体領域2の端部、およびこれらの間のn
−形半導体領域1を覆うように、絶縁部39が形成されている。
【0053】
n
+形エミッタ領域38は、p形ベース領域36の上に選択的に設けられ、エミッタ電極41に電気的に接続されている。p
+形コンタクト領域37も同様に、p形ベース領域36の上に選択的に設けられ、エミッタ電極41に電気的に接続されている。
【0054】
ゲート電極33は、少なくともp形ベース領域36と、ゲート絶縁層34を介して対面している。
【0055】
図6に表す例において、隣り合うゲート電極33の間に2つのn
+形エミッタ領域38が設けられ、それら2つのn
+形エミッタ領域38の間にp
+形コンタクト領域37が設けられている。この構造に代えて、半導体装置300は、隣り合うゲート電極33の間において、p
+形コンタクト領域37とn
+形エミッタ領域38が、Y方向において交互に設けられた構造を有していてもよい。
【0056】
一般的な電力変換回路では、このRC−IGBTを複数用いてブリッジ回路を形成する。1つのRC−IGBTでゲート電極33に閾値以上の電圧が印加されると、p形ベース領域36のうちゲート絶縁層34との界面付近の領域にチャネル(反転領域)が形成される。コレクタ電極40に、エミッタ電極41に対して、正の電圧が印加された状態でチャネルを形成することで、IGBTがオン状態となる。このとき、電子は、チャネルを通して、n
+形エミッタ領域38からn
−形半導体領域1に注入され、正孔は、p
+形コレクタ領域31からn
−形半導体領域1に注入され、RC−IGBTは導通状態となり、負荷に電流が流れる。負荷は、典型的にはインダクタンスである。
その後、ゲート電極33における電圧が閾値電圧以下になると、p形ベース領域36におけるチャネルが消滅し、IGBTがオフ状態となる。
【0057】
IGBTがオフ状態となった際に、インダクタンス負荷に流れていた電流は、インダクタンス負荷と並列接続されている別のRC−IGBTのエミッタ電極41からコレクタ電極40に向けて、FRD領域310に電流が流れる。そして、再度先ほどターンオフしたRC−IGBTをオン状態にした際に、FRD領域310において空乏層が広がり、p形半導体領域4でインパクトイオン化が発生しうる。
【0058】
本実施形態では、半導体装置300が、FRD領域310において、p形半導体領域4および絶縁部10を有する。このため、FRD領域310においてインパクトイオン化が発生した場合でも、p形半導体領域4に流れる電流を低減することができる。この結果、半導体装置の破壊が生じる可能性を低減することが可能となる。
【0059】
なお、
図6に表す半導体装置300は、ゲート電極33が、半導体層Sに形成されたトレンチ内に設けられた、いわゆるトレンチ型ゲート構造を有しているが、半導体装置300は、ゲート電極33が表面S1の上に設けられた、いわゆるプレーナ型ゲート構造を有していてもよい。
【0060】
(第4実施形態)
図7を用いて、第4実施形態に係る半導体装置400について説明する。
図7は、第4実施形態に係る半導体装置400の断面図である。
【0061】
半導体装置400は、例えば、IGBTである。
半導体装置400は、半導体装置300との比較において、例えば、n
+形半導体領域5を有しておらず、p形ベース領域36中にp形半導体領域3およびp形半導体領域4が設けられている点で異なる。
【0062】
半導体装置400において、半導体層Sの裏面S2側には、p
+形コレクタ領域31が設けられている。p
+形コレクタ領域31上には、n形バッファ領域32、n
−形半導体領域1、およびp形ベース領域36が設けられている。
【0063】
p形半導体領域3の少なくとも一部およびp形半導体領域4の少なくとも一部は、p形ベース領域36中に設けられている。p形半導体領域3およびp形半導体領域4は、隣り合うゲート電極33の間に設けられている。p形半導体領域3のp形不純物濃度およびp形半導体領域4のp形不純物濃度は、例えば、p形ベース領域36のp形不純物濃度よりも高い。また、p形半導体領域4の−Z方向の深さは、ゲート絶縁層34の−Z方向の深さよりも深い。
【0064】
絶縁部10は、p形半導体領域4上、部分36a上、およびp形半導体領域3の一部上に設けられている。部分36aは、p形ベース領域36のうち、p形半導体領域3とp形半導体領域4との間に位置する部分である。
【0065】
半導体装置400が、p形半導体領域4および絶縁部10を有することで、n
−形半導体領域1とp形ベース領域36との間に逆方向電圧が印加された際に、インパクトイオン化の発生によって半導体装置400に流れる電流を抑制することができる。この結果、半導体装置において破壊が生じる可能性を低減することが可能となる。
【0066】
(第5実施形態)
図8〜
図10を用いて、第5実施形態に係る半導体装置500について説明する。
図8は、第5実施形態に係る半導体装置500の断面図である。
図9は、
図8のA−A´線を含む平面図の一例である。
図10は、
図8のA−A´線を含む平面図の他の一例である。
【0067】
本実施形態に係る半導体装置500は、半導体装置100との比較において、例えば、p
−形半導体領域6(第5半導体領域)をさらに有する点で異なる。
p
−形半導体領域6は、p
−形半導体領域2およびp形半導体領域3よりも−Z方向側に設けられ、n
−形半導体領域1に囲まれている。また、p
−形半導体領域6は、p形半導体領域4と接している。p
−形半導体領域6の一部は、Z方向において、部分2aとn
+形半導体領域5との間に位置している。
【0068】
図9に表す例では、複数のp
−形半導体領域6が、X方向において互いに離間して設けられている。それぞれのp
−形半導体領域6は、X−Y面に沿ってn
−形半導体領域1に囲まれている。
【0069】
図10に表す例では、p
−形半導体領域6はX−Y面に沿って広がっており、複数のp形不純物濃度4と接続されている。n
−形半導体領域1の一部は、X−Y面に沿ってp
−形半導体領域6によって囲まれている。
【0070】
図9および
図10のいずれの例においても、X−Y面に沿ったp
−形半導体領域6の面積は、p形半導体領域4の面積よりも大きい。
【0071】
n
−形半導体領域1に囲まれたp
−形半導体領域6を設けることで、インパクトイオン化は、p
−形半導体領域6で発生しやすくなる。p
−形半導体領域6でインパクトイオン化が生じると、電流はp形半導体領域4およびp
−形半導体領域2を通じてアノード電極8に流れる。このとき、p
−形半導体領域6の面積を、p形半導体領域4よりも大きくすることで、他の実施形態に比べてインパクトイオン化が発生するポイントをより多くすることができる。
このため、本実施形態によれば、第1実施形態に比べて、半導体装置の破壊耐量をより一層向上させることが可能となる。
【0072】
また、
図9に表すように、複数のp
−形半導体領域6を互いに分離して設けることで、それぞれのp
−形半導体領域6で発生したインパクトイオン化による電流を、各p形半導体領域4を通してアノード電極8に流すことができる。このため、インパクトイオン化が発生した際に、p
−形半導体領域6に局所的に大きな電流が流れる可能性を低減することができる。
【0073】
あるいは、
図10に表すように、X−Y面に沿って広がるp
−形半導体領域6を設けることで、インパクトイオン化が発生するポイントをより多くすることができる。このため、p
−形半導体領域6を電流が流れる際の電流密度を低減することができる。また、より多くの箇所でインパクトイオン化が分散して発生することで、インパクトイオン化によって生じる熱を分散し、半導体装置の昇温を抑制することが可能となる。
【0074】
(第6実施形態)
図11を用いて、第6実施形態に係る半導体装置600について説明する。
図11は、第6実施形態に係る半導体装置600の断面図である。
【0075】
本実施形態に係る半導体装置600は、半導体装置500との比較において、例えば、p形半導体領域4の−Z方向における端部が、p
−形半導体領域6よりも−Z方向側に設けられている。すなわち、n
+形半導体領域5とp形半導体領域4との間のZ方向における距離は、n
+形半導体領域5とp
−形半導体領域6との間のZ方向における距離よりも短い。
【0076】
p形半導体領域4の端部を、p
−形半導体領域6よりも−Z方向側に設けことで、インパクトイオン化が、p形半導体領域4の端部で発生しやすくなる。このとき、インパクトイオン化による電流は、主に、
図11において破線で表される2つの経路を流れる。
すなわち、本実施形態によれば、インパクトイオン化が生じた際の電流を複数の経路に分散して流すことができ、電流密度を低減することが可能となる。このため、本実施形態によれば、第1実施形態に比べて、半導体装置の破壊耐量をより一層向上させることが可能となる。
【0077】
以上で説明した各実施形態における、各半導体領域の間の不純物濃度の相対的な高低については、例えば、SCM(走査型静電容量顕微鏡)を用いて確認することが可能である。なお、各半導体領域におけるキャリア濃度は、各半導体領域において活性化している不純物濃度と等しいものとみなすことができる。従って、各半導体領域の間のキャリア濃度の相対的な高低についても、SCMを用いて確認することができる。
また、各半導体領域における不純物濃度については、例えば、SIMS(二次イオン質量分析法)により測定することが可能である。
【0078】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。