(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588775
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】ジャッキ装置及びジャッキ方法
(51)【国際特許分類】
E02B 17/08 20060101AFI20191001BHJP
B63B 21/50 20060101ALI20191001BHJP
B63B 21/00 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
E02B17/08 A
B63B21/50 B
B63B21/00 E
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-175762(P2015-175762)
(22)【出願日】2015年9月7日
(65)【公開番号】特開2017-53095(P2017-53095A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】591043477
【氏名又は名称】寄神建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(72)【発明者】
【氏名】寄神 茂之
(72)【発明者】
【氏名】西原 直
【審査官】
湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭50−032702(JP,A)
【文献】
特開昭50−146090(JP,A)
【文献】
特公昭46−022377(JP,B1)
【文献】
特開昭51−055101(JP,A)
【文献】
特開平11−117277(JP,A)
【文献】
米国特許第04657438(US,A)
【文献】
特開昭48−051455(JP,A)
【文献】
実開昭59−163626(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 17/08
B63B 21/00
B63B 21/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上に躯体が設置され、前記躯体に貫通穴が形成され、前記貫通穴にスパッドが挿通され、前記スパッドの下端部が着底した状態で前記躯体を前記スパッドに対しアクチュエータによって相対移動させることで、前記躯体を上昇させるジャッキ装置において、
前記アクチュエータは、
前記スパッドと前記躯体とを結合し長ストロークで前記躯体を上昇させる第1の昇降シリンダと、
前記スパッドと前記躯体とを結合し短ストロークで前記躯体を上昇させる第2の昇降シリンダとを備え、
さらに、前記躯体上に対向して配置される1対の支持タワーと、
前記スパッドの外側に移動可能に嵌められ前記スパッドに結合解除可能に結合される環状の本体部と、前記支持タワーに結合解除可能に結合される結合突部を有する上側リング部材と、
前記スパッドの外側に移動可能に嵌められ前記スパッドに結合解除可能に結合される環状の本体部と、結合突部を有する下側リング部材とを備え、
前記第2の昇降シリンダは前記上側リング部材の本体部と前記下側リング部材との間に、前記第1の昇降シリンダは前記上側リング部材の本体部と前記躯体との間にそれぞれ設けられていることを特徴とするジャッキ装置。
【請求項2】
前記第1の昇降シリンダの長ストロークは、前記スパッドの下端部が着底した水上設置状態において波浪時に前記躯体を波浪の影響をほとんど受けない設定高さだけ移動させる大きさである請求項1記載のジャッキ装置。
【請求項3】
前記支持タワーは、前記第1の昇降シリンダの最大伸長時に前記上側リング部材の結合突部が結合される上側結合部と、前記第1の昇降シリンダの最大収縮時に前記上側リング部材の結合突部が結合される下側結合部とを有する、請求項1または2記載のジャッキ装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の昇降シリンダは、前記スパッドの回りに交互に配置されている、請求項1〜3のいずれか1つに記載のジャッキ装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の昇降シリンダと前記スパッドとの結合は、結合ピンの挿入による結合である、請求項1〜4のいずれか1つに記載のジャッキ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のジャッキ装置を用いるジャッキ方法であって、
波浪時において、前記第1の昇降シリンダによって長ストローク対応する高さだけ前記躯体を一旦上昇させた後、前記第2の昇降シリンダによってさらに短ストロークに対応する高さずつ上昇させることを特徴とするジャッキ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2段アクションで躯体を上昇させ得るジャッキ装置及びジャッキ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SEP船などの作業船や、海洋構造物などの躯体を昇降させるジャッキ装置は、スパッドを利用して昇降させるのが一般的である。そして、そのようなジャッキ装置においては、前記躯体を、アクチュエータとして油圧シリンダを利用して昇降させるものが知られている(例えば,特許文献1参照)。
【0003】
そのようなジャッキ装置に求められる能力は、全体積載重量をリフトアップできることと、ある程度の波浪においても結合ピンなどの取り付け・取り外しをできることである。そして、波浪時に、波浪の影響を小さくして前記躯体を上昇させるには、最終の目標高さとなるまでの時間の短縮化が必要となる。
【0004】
そのような昇降を短時間に行うジャッキ装置として、従来のストッパ(結合ピン)で行う作業の一部をブレーキ装置で行うようにしたり、スパッド昇降手段をスパッド昇降方向において2段配置したりすることが提案されている(例えば,特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−204399号公報
【特許文献2】実開平5−22288号公報
【特許文献3】特公昭50−14041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、波浪時において波浪の影響を小さくして前記躯体を上昇させるには、特許文献2,3に記載のものでは、十分とは言えない。
【0007】
本発明は、波浪時において、最終の目標高さとなるまでの時間の短縮化を図り、波浪の影響を小さくできるジャッキ装置及びジャッキ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、躯体を上昇させるアクチュエータとして、長ストロークの昇降シリンダと短ストロークの昇降シリンダとを備える構成とし、波浪時において、前記長ストロークの昇降シリンダによって躯体を一旦大きく上昇させた後、短ストロークの昇降シリンダによって少しずつ安定して上昇させるという具合に2段アクションで躯体を上昇させるようにすることで、波浪時において最終の目標高さとなるまでの時間の短縮化を図り、波浪の影響を小さくすることができるものである。
【0009】
そのために、請求項1の発明は、水上に躯体が設置され、前記躯体に貫通穴が形成され、前記貫通穴にスパッドが挿通され、前記スパッドの下端部が着底した状態で前記躯体を前記スパッドに対しアクチュエータによって相対移動させることで、前記躯体を上昇させるジャッキ装置において、前記アクチュエータは、前記スパッドと前記躯体とを結合し長ストロークで前記躯体を上昇させる第1の昇降シリンダと、前記スパッドと前記躯体とを結合し短ストロークで前記躯体を上昇させる第2の昇降シリンダとを
備え、さらに、前記躯体上に対向して配置される1対の支持タワーと、 前記スパッドの外側に移動可能に嵌められ前記スパッドに結合解除可能に結合される環状の本体部と、前記支持タワーに結合解除可能に結合される結合突部を有する上側リング部材と、前記スパッドの外側に移動可能に嵌められ前記スパッドに結合解除可能に結合される環状の本体部と、結合突部を有する下側リング部材とを備え、前記第2の昇降シリンダは前記上側リング部材の本体部と前記下側リング部材との間に、前記第1の昇降シリンダは前記上側リング部材の本体部と前記躯体との間にそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0010】
このようにすれば、スパッドの下端部が着底した水上設置状態において、波浪時においては、長ストロークの第1の昇降シリンダを使用することで、通常時に使用される短ストロークの第2の昇降シリンダを使用する場合よりも躯体を大きく上昇させることができる。よって、躯体を大きく上昇させて、波浪の影響を比較的受けにくい状態としてから、短ストロークの第2の昇降シリンダで、通常時と同様に、躯体を安定して上昇させることができる。よって、通常時に使用される短ストロークの第2の昇降シリンダだけを使用して躯体を上昇させる場合に比べて、最終の目標高さとなるまでの時間の短縮化が図れ、波浪時において、波浪の影響を小さくすることができる。
【0012】
請求項
2に記載のように、前記第1の昇降シリンダの長ストロークは、前記スパッドの下端部が着底した水上設置状態において波浪時に前記躯体を波浪の影響をほとんど受けない設定高さだけ移動させる大きさである、ことが望ましい。ここで、波浪の影響をほとんど受けない設定高さは、今までの波浪時における波高を計測し蓄積したデータベースに基づき、経験的に設定される。
【0013】
請求項
3に記載のように、前記支持タワーは、前記第1の昇降シリンダの最大伸長時に前記上側リング部材の結合突部が結合される上側結合部と、前記第1の昇降シリンダの最大収縮時に前記上側リング部材の結合突部が結合される下側結合部とを有する、構成とすることができる。
【0014】
請求項
4に記載のように、前記第1及び第2の昇降シリンダは、前記スパッドの回りに交互に配置されている、構成とすることができる。
【0015】
請求項
5に記載のように、前記第1及び第2の昇降シリンダと前記スパッドとの結合は、結合ピンの挿入による結合である、構成とすることができる。
【0016】
請求項
6の発明は、請求項1〜
5のいずれか1つに記載のジャッキ装置を用いるジャッキ方法であって、波浪時において、前記第1の昇降シリンダによって長ストローク対応する高さだけ前記躯体を一旦上昇させた後、前記第2の昇降シリンダによってさらに短ストロークに対応する高さずつ上昇させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、長ストロークの第1の昇降シリンダと短ストロークの第2の昇降シリンダとを備えるので、波浪時に、躯体の上昇動作を2段アクションとして、最終の目標高さとなるまでの時間の短縮化を図り、波浪の影響を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るジャッキ装置を示す正面図である。
【
図4】前記ジャッキ装置で用いられる下側リンク部材を示し、(a)は
図1のB−B線における概略断面図,(b)は変形例についての
図4(a)と同様の図である。
【
図5】(a)〜(c)は第2の昇降シリンダの動作説明図である。
【
図6】(a)(b)は第1の昇降シリンダの動作説明図である。
【
図7】通常時の躯体上昇動作を示すフローチャート図である。
【
図8】波浪時の躯体上昇動作を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0020】
図1は本発明に係るジャッキ装置の概略構成を示す正面図、
図2は
図1のA−A線における断面図、
図3は前記ジャッキ装置を示す平面図である。
【0021】
図1〜
図3において、1はジャッキ装置で、水上に設置されている躯体2を、スパッド3を利用して、アクチュエータによって上昇させることができるもので、躯体2の大きさに応じて躯体2の複数箇所に設けられる。
【0022】
つまり、水上に設置される躯体2には貫通穴2aが形成され、貫通穴2aにスパッド3が挿通され、スパッド3の下端部が着底した状態で躯体2をスパッド3に対しアクチュエータによって相対移動させることで、躯体2を上昇させることを可能とするものである。
【0023】
ジャッキ装置1は、躯体2を上昇させるアクチュエータとして、長ストロークの第1の昇降シリンダ4と、短ストロークの第2の昇降シリンダ5とを備える。そのほか、1対の支持タワー6,6と、上側リング部材7と、下側リング部材8とを備える。
【0024】
スパッド3には、上側リング部材7や下側リング部材8をスパッド3に結合するための複数列の結合穴3aが軸線に沿って一定間隔でもって形成されている。
【0025】
昇降シリンダ4,5は、スパッド3の回りに周方向に交互に配置されており、スパッド3に対し躯体2を相対移動させるものである。つまり、スパッド3を着底させたり、スパッド3が着底した状態で、躯体2を上昇させたり下降させたりすることができるものである。昇降シリンダ4,5の軸線とスパッド3の軸線とは平行であり、上下方向に延びている。第1の昇降シリンダ4の長ストロークは、水上設置状態において、波浪時に躯体2を波浪の影響をほとんど受けない設定高さまで一気に移動させる大きさである。第2の昇降シリンダ5の短ストロークは、昇降シリンダ5に油圧を供給する油圧ポンプ12に負担がかからない大きさである。
【0026】
1対の支持タワー6,6は水平断面コの字形状で、上下方向に延びる係合溝6a,6aを有し、係合溝6a,6aが向き合うように、スパッド3を挟んで、躯体2上に対向して固定されている。各支持タワー6は、第1の昇降シリンダ4の最大伸長時に上側リング部材7が結合される上側結合穴6b(上側結合部)と、第1の昇降シリンダ4の最大収縮時に上側リング部材7が結合される下側結合穴6c(下側結合部)とを有する。これら上側及び下側結合穴6b,6cの間隔Hが、第1の昇降シリンダ4の長ストローク(最大ストローク)に相当する長さに対応している。なお、結合穴6b,6cは躯体2が動揺している状態でも結合ピン22の結合・結合解除が容易となるように上下方向に延びる長穴となっている。
【0027】
上側リング部材7は、スパッド3の外側に移動可能に嵌められている。そして、上側リング部材7は、結合ピン21にてスパッド3に結合解除可能に結合される環状の本体部7aと、本体部7aの外周部分から半径方向外方に突出する結合突部7b,7bを有する。本体部7aには、スパッド3に上側リング部材7を結合するための貫通穴7aaが形成されており、貫通穴7aaを通じて結合穴3aに結合ピン21を挿入することにより、スパッド3に上側リング部材7が結合解除可能に結合されるようになっている。よって、結合ピン21による、上側リング部材7とスパッド3との結合状態では、上側リング部材7とスパッド3とが一体となっている。
【0028】
また、結合突部7b,7bは、支持タワー6,6の係合溝6a,6aに移動可能に係合し、上側結合穴6bまたは下側結合穴6cに挿入される結合ピン22を、結合突部7bの貫通穴7baを貫通させることで、上側リング部材7が支持タワー6,6に結合解除可能に結合されるようになっている。
【0029】
下側リング部材8は、
図4(a)に示すように、スパッド3の外側に移動可能に嵌められ結合ピン23にてスパッド3に結合解除可能に結合される環状の本体部8aと、本体部8aの外周部分から半径方向外方に突出する結合突部8bを有する。本体部8aには、上側リング部材7と同様に、スパッド3に下側リング部材8を結合するための貫通穴8aaが形成されており、貫通穴8aaを通じて結合穴3aに結合ピン23を挿入することにより、スパッド3に下側リング部材8が結合解除可能に結合されるようになっている。よって、結合ピン23による、下側リング部材8とスパッド3との結合状態では、下側リング部材8とスパッド3とが一体となっている。なお、貫通穴8aaの周囲には、第1の昇降シリンダ4が貫通する貫通穴8cが形成されている。また、貫通穴8cに代えて、
図4(b)2示すように、第1の昇降シリンダ4に対応して、切り欠き8dを設けた下側リング部材8Aとすることも可能である。
【0030】
第1の昇降シリンダ4は、上側リング部材7の本体部7a下面側の取付部7cに一端が結合され、躯体2の上面側の取付部2bに他端が結合されている。このようにして、第1の昇降シリンダ4は、本体部7a(上側リング部材7)と躯体2との間に設けられている。そして、第1の昇降シリンダ4は、後述するように上側リング部材7を介してスパッド3に結合解除可能に結合されるようになっており、上側リング部材7が支持タワー6,6に結合されたうえでスパッド3に結合された状態で収縮動作することで、スパッド3に沿って躯体2を上昇させることができる。この第1の昇降シリンダ4の長ストローク(最大ストローク)が、躯体2を波浪の影響をほとんど受けない設定高さまで一気に移動させる大きさとなっている。
【0031】
また、第2の昇降シリンダ5は、上側リング部材7の本体部7a下面側の取付部7dに一端が結合され、下側リング部材8の本体部8a上面側の結合突部8bに他端が結合され、上側リング部材7の本体部7aと下側リング部材8との間に設けられている。
【0032】
そして、第2の昇降シリンダ5は、前述したように、上側リング部材7及び下側リング部材8を介してスパッド3に結合解除可能に結合され、上側リング部材7が支持タワー6,6に結合されたうえでスパッド3に結合された状態でスパッド3に対し躯体2を上昇させることができるようになっている。なお、このとき、上側リング部材7とスパッド3との、結合ピン21による結合は解除されている。
【0033】
これら昇降シリンダ4,5とはスパッド3の回りに交互に、6本ずつ同数が配置されている。なお、両昇降シリンダ4,5の数は、同数でなくてもよく、交互でなくてもよいのはもちろんであり、バランスよく昇降動作をさせることができればよい。
ところで、短ストロークの油圧シリンダだけを用いる従来のジャッキ装置では、波浪時のことを考慮して、ある程度のストロークと速度とを必要とするため、油圧ポンプの能力を下げることができない。一方、ジャッキ装置1の場合では、速度と長ストロークが要求される昇降シリンダ4は、昇降シリンダ5に比べて必要ポンプ油量が極端に大きくなるが、昇降シリンダ4の使用は、波浪時において、1回だけであるので、油圧アキュムレータを利用することで対応し、ジャッキ装置1の非稼働時に前記アキュムレータに蓄圧しておいて、昇降シリンダ4を使用する際にそれを利用するようにすれば、昇降シリンダ4,5を作動させるために用いる油圧ポンプの能力を下げることができる。よって、油圧アキュムレータの利用で、油圧ポンプによる無駄なエネルギーの消費を回避できるので、省エネ効果も期待できる。
【0034】
第1及び第2の昇降シリンダ4,5は、
図8に示すように、電磁切替弁11を介して油圧ポンプ12に接続され、通常時には第2の昇降シリンダ5に接続され、波浪時には第1の昇降シリンダ4に接続された後第2の油圧シリンダ4に接続されるようになっている。なお、波浪時に、第1の昇降シリンダ4に接続される油圧ポンプ12の能力をアシストするために油圧アキュムレータ13を設けている。
【0035】
続いて、水面上に浮遊状態にある躯体2を、ジャッキ装置1を用いて上昇させる手順について説明する。
(通常時)
浮遊状態にある躯体2を上昇させるには、
図5(a)〜(c)及び
図7に示すように、まず、上側リング部材7とスパッド3とを結合する結合ピン21は、上側リング部材7とスパッド3とを結合する結合状態ではなく、上側リング部材7とスパッド3との結合を解除する状態とする。
【0036】
また、下側リング部材8とスパッド3とを結合する結合ピン22は、下側リング部材8とスパッド3とを結合する結合状態であり、上側リング部材7と支持タワー6とを結合する結合ピン23は、常時、上側リング部材7と支持タワー6とを結合する結合状態とされる(ステップS11)。
【0037】
その状態で、第2の昇降シリンダ5を伸長動作させ、スパッド3を躯体2に対し相対的に下降させる(ステップS12)。
【0038】
そして、昇降シリンダ5が最大ストロークとなり伸長限度に達すると、結合ピン21にて上側リング部材7とスパッド3とを結合する結合状態とする(ステップS13)。
【0039】
それから、結合ピン22を、下側リング部材8とスパッド3との結合が解除される状態とし、その状態で昇降シリンダ5を収縮動作させる(ステップS14)。
【0040】
収縮終了後、その収縮状態で結合ピン22を、下側リング部材8とスパッド3とを結合する結合状態とする一方、結合ピン21を、上側リング部材7とスパッド3との結合を解除する状態とし、昇降シリンダ5を再び伸長動作させることで、スパッド3を再び躯体2に対し相対的に下降させる(ステップS15)。これにより、スパッド3が一定ピッチ、つまり結合穴3aの配列ピッチに対応する長さだけ,躯体2に対しスパッド3が下降することになる。
【0041】
このような昇降シリンダ5による伸長動作・収縮動作を繰り返し、一定ピッチずつスパッド3を下降させ、最終的にスパッド3を水底に着底させる。着底後、躯体2の荷重を支持するようになるまで,このような動作は繰り返し行われる(ステップS16)。
【0042】
そして、必要に応じて、躯体2が水面と離れ、スパッド3で支持された状態とすることができる。
【0043】
躯体2を下降させる場合には、前述した手順と逆の手順で、一定ピッチずつスパッド3を上昇させ、水面上に浮遊させることができる。
(波浪時)
浮遊状態にある躯体2を上昇させる際には、
図6(a)(b)及び
図8に示すように、躯体2は,積載荷重により浮体として波浪の影響があるので、波浪の影響をほとんど受けない位置まで躯体2を一気に上昇させることが望ましい。
【0044】
そこで、まず、結合ピン21にて上側リング部材7とスパッド3とを結合する結合状態とする一方、結合ピン22,23による、支持タワー6と上側リング部材7との結合やスパッド3と下側リング部材23との結合は、解除されている状態とする(ステップS31)。
【0045】
それから、第1の昇降シリンダ4を収縮方向に動作させることで、躯体2を、着底しているスパッド3に対し上昇させ、躯体2を、波浪の影響をほとんど受けない設定高さだけ一気に上昇させる(ステップS32)。
【0046】
その後、昇降シリンダ4の収縮限度になると、結合ピン22にて上側リング部材7と支持タワー6(下側結合穴6c)とを結合する結合状態とする(ステップS33)。
【0047】
この昇降シリンダ4の収縮状態では、波浪の影響をほとんど受けない状態となっているので、前述した通常時における昇降動作の場合と同様に、結合ピン23にてスパッド3と下側リング部材8とを結合する結合状態とし、第2の昇降シリンダ5による、躯体2の、前記一定ピッチずつの伸長動作・収縮動作を繰り返す(ステップS34)。つまり、波浪の影響をほとんど受けない設定高さに相当する長ストロークのシリンダ伸長動作を、通常時の躯体2の上昇動作に先だって、1回だけ実施することで、波浪の影響を最小限にすることができる。
【0048】
よって、波浪時においては、上昇動作を2段アクションとすることで、最終の目標高さとなるまでの時間の短縮化が図れ、波浪の影響を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 ジャッキ装置
2 躯体
2a 貫通穴
3 スパッド
4 第1の昇降シリンダ
5 第2の昇降シリンダ
6 支持タワー
6a,6a 係合溝
7 上側リング部材
7a 本体部
7b 結合突部
8,8A 下側リング部材
8a 本体部
8b 結合突部
8c 貫通穴
8d 切り欠き