(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧力制御弁座に離着座して流路を開閉する圧力制御弁体と、開閉弁座に離着座して前記流路の前記圧力制御弁体で開閉する部分より下流を開閉する開閉弁体とを有する弁体部材と、
ばね受と前記弁体部材との間に介装されて、前記圧力制御弁体を前記圧力制御弁座から離間させるとともに、前記開閉弁体を前記開閉弁座へ接近させる方向へ前記弁体部材を附勢する弾性部材と、
前記弾性部材の附勢力に抗して、前記圧力制御弁体を前記圧力制御弁座へ接近させる方向へ前記弁体部材を駆動可能なソレノイドとを備え、
前記弾性部材が自然長になった状態で、前記開閉弁体と前記開閉弁座との間に隙間が形成されて、前記開閉弁体が前記開閉弁座に着座した状態では、前記開閉弁体が前記弾性部材を弾性変形させずに前記開閉弁座から離間可能となる
ことを特徴とする減衰弁。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。また、図面は符号の向きに見るとする。
【0018】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る減衰弁Vは、車両の車体と車軸との間に介装される緩衝器Aに利用されている。この緩衝器Aは、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されるピストン10と、一端がピストン10に連結されて他端がシリンダ1外に延びるロッド11と、上記シリンダ1の外周を覆う中間筒12と、この中間筒12の外周を覆う外筒13とを有して三重管構造となっている。
【0019】
シリンダ1内は、ピストン10でロッド11側のロッド側室L1と、ピストン10側のピストン側室L2の二つの部屋に区画されており、ロッド側室L1及びピストン側室L2には作動油等の液体が充填されている。また、シリンダ1と中間筒12との間の筒状の空間は、排出通路14であり、液体が充填されている。また、中間筒12と外筒13との間の筒状の空間は、リザーバRであり、液体と気体が充填されている。そして、ロッド側室L1とピストン側室L2がピストン10に設けたピストン通路15を介して連通されており、ピストン側室L2からロッド側室L1へ向かう液体の流れのみが許容されている。また、ロッド側室L1と排出通路14は、シリンダ1に設けた連通孔1aを介して連通される。また、排出通路14とリザーバRは、減衰通路16を介して連通され、当該減衰通路16の途中に液体の流れに抵抗を与える減衰弁Vが設けられている。また、リザーバRとピストン側室L2は、吸込通路17を介して連通されており、リザーバRからピストン側室L2へ向かう液体の流れのみが許容されている。
【0020】
上記構成によれば、ロッド11がシリンダ1内に進入して緩衝器Aが収縮作動する場合、ピストン10が
図1中下方へ移動してピストン側室L2が圧縮され、当該ピストン側室L2の液体がピストン通路15を通ってロッド側室L1へ移動する。この収縮作動時には、シリンダ1に進入したロッド体積分の液体がシリンダ1内で余剰になるので、この余剰分の液体が連通孔1a、排出通路14、減衰通路16をこの順に通ってロッド側室L1からリザーバRへ排出される。そして、上記緩衝器Aは、減衰通路16を通過する液体の流れに減衰弁Vで抵抗を与えてシリンダ1内の圧力を上昇させることにより圧側減衰力を発揮する。
【0021】
反対に、ロッド11がシリンダ1から退出して緩衝器Aが伸長作動する場合、ピストン10が
図1中上方へ移動してロッド側室L1が圧縮され、当該ロッド側室L1の液体が連通孔1a、排出通路14、減衰通路16をこの順に通ってリザーバRへ移動する。この伸長作動時には、ピストン10が
図1中上方へ移動してピストン側室L2の容積が拡大して、この拡大分に見合った液体が吸込通路17を通ってリザーバRからピストン側室L2へ移動する。そして、上記緩衝器Aは、減衰通路16を通過する液体の流れに減衰弁Vで抵抗を与えてロッド側室L1内の圧力を上昇させることにより伸側減衰力を発揮する。
【0022】
つまり、緩衝器Aが伸縮作動を呈すると、液体がピストン側室L2、ロッド側室L1、リザーバRをこの順に一方通行で循環するようになっており、緩衝器Aが圧縮作動と伸長作動の何れの作動を呈する場合にも、液体が減衰通路16を通過してシリンダ1内からリザーバRへ移動する。よって、緩衝器Aは、伸圧両側の減衰力を一つの減衰弁Vにより発生できる。
【0023】
上記減衰弁Vは、
図2に示すように、中間筒12と外筒13に形成される横孔12a,13aに対向させて設けたスリーブ12b,13bに取り付けられている。より詳しくは、中間筒12に設けた横孔12aの縁には、中間筒12から外方へ径方向に突出するスリーブ12bが固定されるとともに、外筒13に設けた横孔13aの縁にも、外筒13から外方へ径方向に突出するスリーブ13bが固定されている。これらスリーブ12b,13bは、筒状で且つ同軸上に設けられ、外筒13に設けたスリーブ13bの内径が中間筒12に設けたスリーブ12bの外径よりも大きい。このため、スリーブ12bの
図2中左端開口が排出通路14に対向するとともに、
図2中右端開口がスリーブ13bの内側に対向する。また、スリーブ13bの
図2中左端開口の中央部がスリーブ12bに対向するとともに、その外周側がリザーバRに対向する。さらに、このスリーブ13bの
図2中右端開口が減衰弁Vにおける後述するソレノイドSで塞がれる。このため、排出通路14の液体は、横孔12a、スリーブ12bの内側、横孔13a、及びスリーブ13bの内側をこの順に通ってリザーバRへ移動でき、これらで減衰通路16(
図1)が構成される。
【0024】
つづいて、減衰弁Vは、スリーブ12bに嵌合し、スリーブ13bの内側へ延びる取付部材2と、スリーブ12bから突出する取付部材2の外周に装着される主弁体3及び副弁体30と、取付部材2の先端部に連結されるバルブハウジング4と、バルブハウジング4の外周に摺動自在に取り付けられるスプール40と、バルブハウジング4に収容される第一弁座部材5と、この第一弁座部材5に積層される第二弁座部材50と、第一弁座部材5及び第二弁座部材50に離着座する弁体部材6と、この弁体部材6を
図2中右方へ附勢する皿ばね60と、弁体部材6を
図2中左方へ駆動する上記ソレノイドSと、バルブハウジング4と第一弁座部材5との間に設けたフェール弁体7とを備える。
【0025】
そして、上記取付部材2は、スリーブ12bの内周に嵌合する挿入部2aと、この挿入部2aの
図2中右側に連なり、外径が挿入部2aの外径よりも大きい弁座部2bと、この弁座部2bの中央部から
図2中右方へ延びる取付軸2cとを有する。また、取付部材2には、当該取付部材2の中心部を軸方向に貫通する軸孔2dと、一端がこの軸孔2dに開口するとともに、他端が弁座部2bの
図2中右端であって、取付軸2cの外周に開口する複数のポート2eが形成されている。軸孔2dは、その一部が括れてオリフィス2fとなっており、ポート2eはこのオリフィス2fよりも
図2中左方に連通する。
【0026】
上記挿入部2aとスリーブ12bとの間は、環状のOリング20で塞がれるので、排出通路14からスリーブ12b内に流入する液体は、軸孔2dを必ず通ってスリーブ13bの内側に移動し、当該スリーブ13bの内側からリザーバRへ移動する。また、取付軸2cの先端部外周にはバルブハウジング4を螺合するための螺子溝が形成されている。この取付軸2cの外周であって、弁座部2bとバルブハウジング4との間には、スペーサ21が挟まれて固定されている。そして、このスペーサ21の外周に円板状の主弁体3が摺動自在に取り付けられる。
【0027】
主弁体3は、
図3に示すように、中心にスペーサ21の挿通を許容する取付孔を有して環状に形成されており、主弁体3の外周部に設けられて
図3中左方へ突出する環状突起3aと、主弁体3の外周部に設けられて
図3中右方へ突出する環状の弁座3bと、主弁体3を軸方向に貫通し、一端が環状突起3aの内周側に開口するとともに他端が弁座3bの内周側に開口する制限通路3cとを有する。環状突起3aは、弁座部2bにおけるポート2eの開口よりも外周側に離着座するので、ポート2eと制限通路3cは、常に連通されている。また、当該主弁体3の内周部の軸方向長さはスペーサ21の軸方向長さよりも短いので、主弁体3はスペーサ21の軸方向に移動できる。
【0028】
上記主弁体3の
図3中右方には、副弁体30が積層されている。この副弁体30は、リーフバルブが複数枚積層された積層リーフバルブであり、中心に取付軸2cの挿通を許容する取付孔を有する。また、副弁体30は、外周側の撓みが許容された状態で内周側をスペーサ21とバルブハウジング4との間に挟まれて固定され、その外周部が弁座3bに離着座可能となっている。そして、副弁体30は、主弁体3との間であって、弁座3bの内周側に、環状の弁体間室Cを形成する。前述のように主弁体3に設けた制限通路3cは、弁座3bの内周側に開口するので、弁体間室Cは制限通路3cを介してポート2eに常に連通される。さらに、副弁体30を構成するリーフバルブのうち、最も主弁体3側のリーフバルブは外周に切欠30aを有し、当該切欠30aにより周知のオリフィスを形成する。なお、当該オリフィスは、省略してもよい。
【0029】
また、主弁体3と副弁体30との間には、主弁体3を弁座部2b側へ附勢する皿ばね31が介装されている。この皿ばね31は、スペーサ21とバルブハウジング4との間に挟まれて固定される円環31aと、この円環31aの外周から径方向に延びて周方向に並ぶ複数の腕31bとを有し、当該腕31bがばねとして機能する。皿ばね31の腕31bと腕31bの間には隙間が空いており、弁体間室Cを区画しないようになっている。さらに、副弁体30の
図3中右側には、間座32、皿ばね33、間座34がこの順に積層されており、間座34の
図3中右端がバルブハウジング4で押さえられている。
【0030】
バルブハウジング4は、
図4に示すように、有底筒状に形成されており、環状の底部4aと、この底部4aの外周部から
図4中右方へ起立する筒部4bと、底部4aの内周部から
図4中左方へ突出する環状の突出部4cとを有する。底部4aの内周と筒部4bの外周には、それぞれ螺子溝が形成されており、突出部4cから挿入した取付軸2cを底部4aの内周に螺合するとともに、筒部4bの外周にソレノイドSを螺合できる。底部4aには、
図4中左方に開口する工具の差込穴4dが設けられ、バルブハウジング4をソレノイドSに螺合する際等に利用できる。さらに、底部4aには、
図4中右部に筒部4bの内周に連なるすり鉢状の凹部4eが形成されるとともに、当該凹部4eに開口して差込穴4dに通じる連通孔4fが形成される。そして、当該底部4aの外周に、スプール40が装着されている。
【0031】
スプール40は、
図3に示すように、底部4aの外周に摺接する筒状の摺動筒部40aと、この摺動筒部40aの
図3中左端から内周側に突出する環状のフランジ40bと、このフランジ40bから
図3中左方へ突出する環状突起40cとを有する。そして、フランジ40bの
図3中右側面に皿ばね33の外周部が当接し、当該皿ばね33によってスプール4
0が副弁体30側へ附勢されて環状突起40cが副弁体30の
図3中右側面外周に押し付けられる。さらに、スプール40の内側であって、皿ばね33とバルブハウジング4との間の空間は、背圧室Pとされており、この背圧室Pは、差込穴4dと、連通孔4f(
図4)を介してバルブハウジング4の内部に連通されている。
【0032】
図2に示すように、バルブハウジング4の内部には、取付部材2の軸孔2dが開口しているので、ポート2eの上流側の液体が軸孔2d、バルブハウジング4の内部、連通孔4f及び差込穴4dを通って背圧室Pに導かれる。また、軸孔2dの途中にオリフィス2fが設けられているので、ポート2eの上流側の圧力は、オリフィス2fにより減圧されて背圧室Pに導入される。この背圧室Pの内部圧力は、皿ばね33の附勢力と同様に、副弁体30を主弁体3に押し付ける方向へ作用する。このため、主弁体3には、緩衝器Aが伸縮作動する際に、正面側からポート2eを介してロッド側室L1内の圧力が作用するとともに、背面側からは、副弁体30を介して背圧室Pの内部圧力、皿ばね33及び皿ばね31の附勢力が作用する。
【0033】
なお、
図3に示すスプール40の摺動筒部40aの内径断面積から間座34の外径断面積を減じた断面積に背圧室Pの圧力を乗じた力が副弁体30を主弁体3へ押し付ける方向に作用し、弁座3bの内径断面積からスペーサ21の外径断面積を減じた断面積に弁体間室Cの圧力を乗じた力が副弁体30を主弁体3から離座させる方向へ作用する。背圧室P内の圧力に対する副弁体30の開弁圧の比が副弁体30の増圧比となる。そして、ロッド側室L1内の圧力によって、弁体間室C内の圧力が高まり、副弁体30の外周を
図3中右方へ撓ませようとする力が、背圧室Pの内部圧力と皿ばね33による附勢力に打ち勝つと、副弁体30が撓んで弁座3bから離座する。よって、副弁体30と弁座3bとの間に隙間が形成されてポート2eが開放される。
【0034】
また、この実施の形態では、環状突起3aの内径よりも弁座3bの内径を大きくしていて、主弁体3がポート2e側の圧力を受ける受圧面積と、主弁体3が弁体間室C側の圧力を受ける受圧面積に差を持たせている。そして、制限通路3cによって生じる差圧が主弁体3を弁座部2bから離座させる開弁圧に達しないと、主弁体3は環状突起3aを弁座部2bに着座させたままとなる。これに対して、副弁体30が撓んで開弁状態にあり、制限通路3cによって生じる差圧が主弁体3を弁座部2bから離座させる開弁圧に達すると、主弁体3も弁座部2bから離座してポート2eを開放するようになる。つまり、弁体間室Cの圧力に対する主弁体3の開弁圧の比が主弁体3の増圧比であり、この主弁体3の増圧比よりも副弁体30の増圧比を小さく設定して、主弁体3が開弁する際のロッド側室L1内の圧力よりも副弁体30が開弁する際のロッド側室L1内の圧力が低くなるようになっている。即ち、主弁体3の開弁圧よりも副弁体30の開弁圧が低くなるように設定してある。このように、本実施の形態では、主弁体3及び副弁体30でポート2eを二段階に開放し、これらで主弁V1を構成する。
【0035】
つづいて、
図4に示すように、バルブハウジング4の筒部4b内には、
図4中左側から順にフェール弁体7と第一弁座部材5が収容され、この第一弁座部材5の
図4中右方に第二弁座部材50が積層されている。そして、第一弁座部材5及び第二弁座部材50にポペット弁である弁体部材6が離着座できるようになっている。この弁体部材6は、第一弁座部材5に支えられる皿ばね60で
図4中右方へ附勢されるとともに、ソレノイドSで
図4中左方へ駆動される。また、フェール弁体7は、複数枚のリーフバルブが積層された積層リーフバルブである。
【0036】
より詳細に説明すると、バルブハウジング4の筒部4bの内径は、
図4中右側が左側よりも大きくなっており、内径が変わる部分の境界に環状の段差4gが形成されている。この段差4gの内周部は、
図4中右方へ突出しており、当該環状の突出部4hと筒部4bにおける段差4gよりも
図4中右側部分の内周で第一弁座部材5を支えている。さらに、筒部4bには、その外周に軸方向に延びる溝4iが形成されるとともに、当該溝4iに開口して筒部4bの内側に通じる連通孔4jが形成されている。当該連通孔4jは、筒部4bにおける段差4gよりも
図4中右側に位置する。
【0037】
つづいて、第一弁座部材5は、筒部4bにおける段差4gよりも
図4中左方へ挿入されて、先端部が凹部4e内に挿入される有底筒状の小径部5aと、この小径部5aの開口側となる
図4中右端部から外周側に張り出す環状の鍔部5bと、この鍔部5bの外周部から
図4中右方へ突出する環状の支持部5cとを有する。小径部5aには、その開口側端部内周に周方向に沿って形成される環状溝5dと、当該環状溝5dから小径部5aの側方へ斜めに貫通する複数の連通孔5eが設けられる。さらに、小径部5aの開口側端面の内周縁部は環状の圧力制御弁座5fとされており、当該圧力制御弁座5fに弁体部材6の後述する圧力制御弁体6bが離着座する。
【0038】
また、第一弁座部材5の支持部5cの内径は、
図4中右端にかけて二段階に拡径されており、内径が変わる部分の境界にそれぞれ段差5g,5hが設けられる。当該段差5g,5hを
図4中左側から数えると、一段目の段差5gがばね受となって皿ばね60を支え、二段目の段差5hで第二弁座部材50を支える。
【0039】
また、鍔部5bには、当該鍔部5bの内周部から
図4中左方へ突出する環状突起5iと、鍔部5bの外周部から
図4中左方へ突出する環状のフェール弁座5jと、環状突起5iとフェール弁座5jとの間から段差5hにかけて貫通する連通孔5kが設けられている。当該連通孔5kは、
図4中右端が第二弁座部材50で塞がれないように、支持部5cの内周側にも開口している。そして、バルブハウジング4の突出部4hと第一弁座部材5の環状突起5iの間にフェール弁体7の内周側が挟まれて固定される。フェール弁体7は、突出部4hの外周にできる環状の空間により外周側の撓みが許容されており、外周部をフェール弁座5jに離着座させて上記連通孔5kを開閉する。
【0040】
つづいて、第二弁座部材50は、第一弁座部材5の段差5hに積層されて支持部5cの内周に嵌る環状の嵌合部50aと、この嵌合部50aから内周側に張り出す環状の開閉弁座50bと、第二弁座部材50の
図4中右部に内周端から外周端にかけて径方向に延びる溝50cと、当該溝50cに開口して開閉弁座50
bの
図4中左側に通じるオリフィス50dとを有する。そして、上記開閉弁座50bに弁体部材6の後述する開閉弁体6cが離着座する。
【0041】
上記弁体部材6は、第一弁座部材5の小径部5a内に摺動自在に挿入される摺動軸部6aと、小径部5aから突出する摺動軸部6aの
図4中右端から外周側に張り出す上記圧力制御弁体6bと、この圧力制御弁体6bの
図4中右方に連なり圧力制御弁体6bよりも外径が大きい上記開閉弁体6cと、この開閉弁体6cから
図4中右方へ突出する環状のソケット6dとを有する。摺動軸部6aの
図4中右端部外周には、周方向に沿う環状溝6eが形成される。そして、弁体部材6が第一弁座部材5及び第二弁座部材50に対して軸方向へ許容される範囲内で移動する際、常に、環状溝6eに連通孔5eの開口が対向し、弁体部材6で連通孔5eを閉塞することがないようになっている。そして、圧力制御弁体6bの外周に弾性部材である皿ばね60が装着されている。
【0042】
皿ばね60は、
図5に示すように、環状の外周環部60aと、この外周環部60aから中心へ向けて突出し、周方向に並べて配置される複数の舌部60bとを有し、当該舌部60bがばねとして機能する。そして、
図4に示すように、第一弁座部材5の段差5gで皿ばね60の外周環部60aを支えるとともに、舌部60bの
図4中左方への撓みを許容できるようになっている。また、圧力制御弁体6bと開閉弁
体6cとの境界部分の外周には、環状の段差6fが設けられており、圧力制御弁体6bが皿ばね60の中心部を貫通し、段差6fに舌部6
0bが当接可能とされている。
【0043】
ここで、圧力制御弁体6bにおける圧力制御弁座5fに着座する部分から開閉弁体6cにおける開閉弁座50bに着座する部分までの軸方向長さをM、圧力制御弁座5fから開閉弁座50bまでの軸方向距離をNとすると、MがNよりも短く設定されている(M<N)。また、皿ばね60が自然長(負荷がかかっていないときの皿ばね60の軸方向長さ)になった状態で、外周環部60aが第一弁座部材5の段差5gに当接するとともに舌部60bが弁体部材6の段差6fに当接したときの弁体部材6の位置を中立位置とすると、弁体部材6が中立位置にある状態では、圧力制御弁体6bと圧力制御弁座5fとの間、及び開閉弁体6cと開閉弁座50bとの間にそれぞれ隙間ができるように設定されている。
【0044】
このため、弁体部材6が中立位置から
図4中左方へ向けて前進し、圧力制御弁体6bが圧力制御弁座5fに当接(着座)すると、圧力制御弁座5fと圧力制御弁体6bとの間が塞がれる。このように、弁体部材6が中立位置よりも前進した位置にある状態では、舌部60bが弾性変形して弁体部材6を
図4中右方へ附勢する。反対に、弁体部材6が中立位置から
図4中右方へ後退し、開閉弁体6cが開閉弁座50bに当接(着座)すると、開閉弁座50bと開閉弁体6cとの間が塞がれる。このように弁体部材6が中立位置よりも後退した位置にある状態では、皿ばね60が自然長になって、皿ばね60による附勢力が弁体部材6にかからない。
【0045】
さらに、弁体部材6の中心部には、軸方向に貫通する軸孔6gが設けられ、その一部が括れてオリフィス6hとなっている。そして、上記軸孔6gにより、摺動軸部6aの先端と小径部5aの底部との間にできる空間Kが、弁体部材6の外側の空間に連通される。よって、弁体部材6が第一弁座部材5及び第二弁座部材50に対して
図4中左右に移動する際、空間Kがダッシュポットとして機能して、弁体部材6の急峻な変位を抑制するとともに、弁体部材6の振動的な動きを抑制できる。
【0046】
また、弁体部材6のソケット6d内には、第二弾性部材である皿ばね61が嵌り、弁体部材6は、当該皿ばね61を介してソレノイドSの推力を受ける。皿ばね61は、
図6に示すように、環状の外周環部61aと、この外周環部61aから中心へ向けて突出し、周方向に並べて配置される複数の舌部61bとを有し、当該舌部61bがばねとして機能する。また、
図4に示すように、ソケット6dの内周には、段差6iが形成されており、当該段差6iで皿ばね61の外周環部61aを支えるとともに、舌部61bの
図4中左方への撓みを許容できるようになっている。そして、ソレノイドSの後述するシャフト8の先端部に小径部8aが設けられ、当該小径部8aが皿ばね61の中心部を貫通し、小径部
8aの末端にできる段差8bに皿ばね61の舌部61bが当接可能とされる。
【0047】
このため、シャフト8が
図4中左方へ前進してその段差8bが皿ばね61に突き当たり、皿ばね61がソケット6dの段差6iに突き当たると、ソレノイドSの推力が皿ばね61を介して弁体部材6に伝わる。反対に、シャフト8が
図4中右方へ後退して、その段差8bが皿ばね61から離れると、シャフト8に対して皿ばね61が軸方向に自由に動けるようになる。なお、このように、皿ばね61がシャフト8に対して軸方向に動ける状態であっても、皿ばね61が小径部8a及びソケット6dから外れないように配慮されている。具体的には、弁体部材6が中立位置又は中立位置よりも前進した位置にある状態で、且つ、シャフト8が最大限に後退した状態において、シャフト8の段差8bがソケット6dの開口端(
図4中右端)と軸方向の同じ位置か、それよりも
図4中左側に位置するように設定されている。
【0048】
つづいて、上記ソレノイドSは、
図2に示すように、巻線79が巻き回されるソレノイドボビン70と、このソレノイドボビン70の周囲を覆うモールド樹脂71と、ソレノイドボビン70の一端側内周に嵌合する有頂筒状の第一固定鉄心72と、ソレノイドボビン70の他端側の内周に嵌合する環状の嵌合部73bを有する第二固定鉄心73と、ソレノイドボビン70の内周に嵌合して第一固定鉄心72と第二固定鉄心73の嵌合部73bとの間に空隙を形成する非磁性体のフィラーリング74と、第一固定鉄心72の内側に挿入される筒状の可動鉄心80と、この可動鉄心80の内周に固定される上記シャフト8と、嵌合部73bの内周に嵌合する環状のガイド75と、第一固定鉄心72の頂部とガイド75の内周にそれぞれ嵌合してシャフト8を軸方向に移動自在に軸支する環状のブッシュ76,77とを備えている。可動鉄心80には、当該可動鉄心80を軸方向に貫く貫通孔80aが設けられており、可動鉄心80の軸方向の両側で圧力差が生じて可動鉄心80の円滑な移動が妨げられないようになっている。また、ガイド75にも軸方向に貫く貫通孔75aが設けられ、ガイド75の軸方向の両側で圧力差が生じないようになっている。
【0049】
上記ソレノイドSでは、磁路が第一固定鉄心72、可動鉄心80、及び第二固定鉄心73を通過するように形成されている。そして、巻線79が励磁されると、第一固定鉄心72よりに配置される可動鉄心80が第二固定鉄心73の嵌合部73b側に吸引されて、可動鉄心80に
図2中左方へ向かう推力が作用する。上記シャフト8は、可動鉄心80と一体となって移動するので、ソレノイドSの励磁時には、吸引される可動鉄心80を介して弁体部材6に
図2中左方へ向かう方向の推力を与えられる。
【0050】
また、第二固定鉄心73は、外筒13に設けたスリーブ13bの内周に嵌る有頂筒状のキャップ部73aと、このキャップ部73aの環状の頂部の内周部から
図2中右方へ起立してソレノイドボビン70の内周に嵌合する環状の上記嵌合部73bと、キャップ部73aの頂部の外周部から
図2中右方へ起立する筒状のケース部73cとを有する。そして、このケース部73c内にモールド樹脂71で覆われた巻線79付きのソレノイドボビン70、フィラーリング74、第一固定鉄心72を挿入してから蓋78を被せてケース部73cの先端を内周側に加締めると、これらを一体化できる。また、第二固定鉄心73の嵌合部73bにブッシュ77付きのガイド75を嵌めてキャップ部73aをバルブハウジング4の筒部4b外周に螺合するとともに、スリーブ13bの外周に設けたナット13cを第二固定鉄心73の外周に螺合すると、ナット13cはスリーブ13bに対して抜け止めされているので第二固定鉄心73をスリーブ13bに固定できるとともに、第二固定鉄心73に螺合するバルブハウジング4と、当該バルブハウジング4に螺合する取付部材2をスリーブ12bに固定でき、バルブハウジング4と第二固定鉄心73との間にフェール弁体7、第一弁座部材5、第二弁座部材50及びガイド75を挟んで固定できる。キャップ部73aとスリーブ13bとの間は、環状のOリング(符示せず)で塞がれるので、スリーブ13b内の液体が外気側に漏れないようになっている。
【0051】
また、ガイド75と第二弁座部材50との間には、第二弁座部材50に設けた溝50cにより隙間ができ、第二固定鉄心73と筒部4bとの間には、筒部4bに設けた溝4iにより隙間ができ、第一弁座部材5と第二固定鉄心73は直接接触しないようになっている。そして、取付部材2の軸孔2d、バルブハウジング4の内部、第一弁座部材5の連通孔5e、第一弁座部材5の内部、溝50cによりガイド75と第二弁座部材50との間にできる隙間、第一弁座部材5と第二固定鉄心73との間にできる隙間、溝4iにより第二固定鉄心73とバルブハウジング4との間にできる隙間によりパイロット通路18が構成されている。当該パイロット通路18におけるバルブハウジング4の内部は、バルブハウジング4の連通孔4f及び差込穴4dを介して背圧室Pに連通されている。
【0052】
また、弁体部材6の圧力制御弁体6bは、皿ばね60及びソレノイドSとともに圧力制御弁V2を構成し、圧力制御弁体6bを圧力制御弁座5f(
図4)に離着座させてパイロット通路18を開閉する。皿ばね60は、弁体部材6が中立位置よりも前進した位置にある場合、弁体部材6を
図2中右方へ附勢するので、皿ばね60による附勢力は圧力制御弁V2を開弁させる方向へ作用する。また、弁体部材6の開閉弁体6cは、皿ばね60とともに開閉弁V3を構成し、開閉弁体6cを開閉弁座50b(
図4)に離着座させてパイロット通路18における圧力制御弁V2よりも下流側を開閉する。つまり、上記減衰弁Vでは、パイロット通路18の途中に圧力制御弁V2を上流側にして当該圧力制御弁V2と開閉弁V3とを直列に設け、圧力制御弁V2の弁体である圧力制御弁体6bと、開閉弁V3の弁体である開閉弁体6cを弁体部材6として一体化させている。
【0053】
つづいて、第一弁座部材5の連通孔5kと、バルブハウジング4と第一弁座部材5との間であって、環状
の突
出部4h(
図4)の外周にできる隙間と、連通孔4jによりフェール通路19が構成されている。前述のように連通孔5kは、支持部5cの内周側に開口しており、当該部分は圧力制御弁座5fと開閉弁座50bの間である。また、フェール通路19の連通孔4jは、溝4iにより第二固定鉄心73とバルブハウジング4との間にできる隙間に連通されている。つまり、上記フェール通路19は、パイロット通路18における圧力制御弁V2と開閉弁V3との間から分岐し、開閉弁V3を迂回して再びパイロット通路18に合流するようになっている。そして、第一弁座部材5とバルブハウジング4との間に挟まれるフェール弁体7を備えてフェール弁V4が構成され、当該フェール弁V4は、フェール弁体7をフェール弁座5jに離着座させてフェール通路19を開閉する。
【0054】
以下、本実施の形態の減衰弁Vの作動について説明する。
【0055】
緩衝器Aが伸縮してロッド側室L1内の圧力が高まると、当該圧力が排出通路14及びポート2eを介して主弁体3に作用するとともに、当該主弁体3の制限通路3c及び弁体間室Cを介して副弁体30に作用する。ピストン速度が低く、主弁体3及び副弁体30が開弁しない場合、液体は副弁体30の切欠30a(
図3)により形成されるオリフィスを通ってリザーバRへ移動する。また、前述のように、副弁体30の増圧比を主弁体3の増圧比よりも小さくして副弁体30の開弁圧を主弁体3の開弁圧よりも小さくしている。このため、ピストン速度が上昇を続けると、まず副弁体30が開弁し、続いて主弁体3が開弁する。副弁体30のみが開弁した状態では、
図2中右方へ撓んだ副弁体30の外周部と主弁体3の弁座3bとの間に隙間ができて、当該隙間を通って液体がリザーバRへ移動できる。また、主弁体3が開弁すると、主弁体3の環状突起3aと弁座部2bとの間に隙間ができて、当該隙間を通って液体がリザーバRへ移動できるようになる。このように、本実施の形態では、主弁V1がポート2eを段階的(二段階)に開放し、ポート2eとリザーバRとを連通する流路の流路面積を段階的に大きくする。よって、上記緩衝器Aの減衰特性(ピストン速度に対する減衰力の特性)は、
図7中実線Xで示すように、ピストン速度が上昇するにしたがって減衰係数(実線Xの傾き)が副弁体30と主弁体3の開弁を境に段階的に小さくなる特性となる。
【0056】
上記副弁体30がポート2eを開放する開弁圧は、副弁体30の背面に作用する背圧室Pの内部圧力の変更により調節できる。そして、当該背圧室Pの内部圧力は、ソレノイドSへの通電量の調節により圧力制御弁V2の開弁圧の調節をすることで制御できる。つまり、ソレノイドSへの通電量の調節により減衰力を大小調節できる。
【0057】
より詳細に説明すると、ソレノイドSへ電流供給を行い弁体部材6に推力を作用させて、弁体部材6の圧力制御弁体6bを皿ばね60の附勢力に抗して圧力制御弁座5fに押し付ける場合、ロッド側室L1の圧力がパイロット通路18を通じて弁体部材6に作用して、当該圧力による圧力制御弁体6bを圧力制御弁座5fから離座させる力と、皿ばね60の附勢力の合力がソレノイドSの推力を上回るようになると、圧力制御弁V2が開弁してパイロット通路18を開放する。このため、ソレノイドSへ供給する電流量の大小でソレノイドSの推力を調節すると、圧力制御弁V2の開弁圧を調節できる。そして、圧力制御弁V2が開弁すると、パイロット通路18の圧力制御弁V2よりも上流側の圧力が圧力制御弁V2の開弁圧に等しくなり、パイロット通路18の圧力制御弁V2より上流側の圧力が導入される背圧室Pの内部圧力も当該開弁圧に制御される。背圧室Pの内部圧力を低くした場合、副弁体30及び主弁体3の開弁圧を下げて減衰力を低くでき、背圧室Pの内部圧力を高くした場合、副弁体30及び主弁体3の開弁圧を上げて減衰力を高くできる。
【0058】
また、本実施の形態では、減衰力を最小にするフルソフト時においては、ピストン速度が零のときでも圧力制御弁V2が閉じ切らず、圧力制御弁座5fと圧力制御弁体6bとの間に初期隙間ができるように設定されている。よって、ピストン速度が極低速域にある場合、液体が比較的抵抗なく圧力制御弁V2を通過して、背圧室Pの内部圧力を低くできるので、フルソフト時における極低速域での減衰力を小さくできる。
【0059】
さらに、フルソフト時ではソレノイドSの推力が小さいので、弁体部材6が後退しやすい状態になるが、当該弁体部材6が中立位置よりも後退すると、皿ばね60が自然長になって弁体部材6が皿ばね60による附勢力を受けなくなる。つまり、弁体部材6は、圧力制御弁座5fに着座した位置から開閉弁座50bに着座する位置まで後退できるが、後退する弁体部材6に対して皿ばね60による附勢力が途中までしか作用しない構造になっている。よって、ばね定数の大きい皿ばね60を利用する等して、弁体部材6を
図4中右方へ附勢する皿ばね60の附勢力を大きくしたとしても、弁体部材6が開閉弁座50bに着座した状態では皿ばね60の附勢力の影響を受けない。このため、フルソフト時においてピストン速度が高くなり、ロッド側室L1の圧力による圧力制御弁体6bを圧力制御弁座5fから離座させる力と、皿ばね60の附勢力の合力が大きくなったとしても、弁体部材6が開閉弁座50bに着座して、開閉弁V3がパイロット通路18における圧
力制御弁V2の下流側を閉塞するのを防止できる。
【0060】
つづいて、ソレノイドSの非励磁時には、ソレノイドSによる推力が失われる。このため、皿ばね60の附勢力により弁体部材6が圧力制御弁座5fから離座して圧力制御弁V2が開弁する。中立位置よりも前進した弁体部材6が中立位置まで後退する過程では、皿ばね60の附勢力を受けて弁体部材6が後退するが、弁体部材6が中立位置に達すると、
図8(a)に示すように、皿ばね60が自然長になる。そして、ピストン速度が極低速域にあって流量が少ない場合、弁体部材6が開閉弁座50bに着座するまで後退しないので、液体が開閉弁体6cと開閉弁座50bとの間にできる隙間とオリフィス50dを通ってリザーバRへ移動する。これに対して、ピストン速度が上昇して流量が多くなると、パイロット通路18における開閉弁V3よりも上流側の圧力が高くなる。すると、当該圧力を受けて弁体部材6が後退し、開閉弁体6cが開閉弁座50bに着座する。このように開閉弁V3がパイロット通路18を閉じた状態では、フェール弁V4が開弁するまでの間、液体は第二弁座部材50のオリフィス50dを通ってリザーバRへ移動する。また、パイロット通路18の圧力がフェール弁V4の開弁圧に達すると、
図8(b)に示すように、フェール弁体7の外周部が
図2中左方へ撓んでフェール弁座5jから離れ、液体がフェール弁体7とフェール弁座5jとの間にできる隙間を通ってリザーバRへ移動する。
【0061】
つまり、上記減衰弁Vでは、ソレノイドSへの電流供給が断たれるフェール時であっても、ピストン速度が極低速である場合には、開閉弁V3が開いた状態となり、開閉弁V3の上流側と下流側を連通する流路の流路面積を大きくできる。よって、フェール時における極低速域での減衰力を小さくできる。また、フェール時においてピストン速度が高くなると、開閉弁V3が閉じるとともにフェール弁V4が開弁するので、フェール弁V4が液体の流れに対して抵抗となる。よって、緩衝器Aはフェール時において、パッシブな緩衝器として機能する。また、弁体部材6が中立位置にあるときの開閉弁体6cと開閉弁座50bとの間にできる隙間、オリフィス50d、及びフェール弁V4の開弁圧の設定によって、緩衝器Aのフェール時における減衰特性を予め任意に設定できる。
【0062】
以下、本実施の形態の減衰弁V、及び減衰弁Vを備える緩衝器Aの作用効果について説明する。
【0063】
本実施の形態において、緩衝器Aは、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動可能に挿入されて前記シリンダ1内をロッド側室(二つの部屋の内の一方)L1とピストン側室(二つの部屋の内の他方)L2に区画するピストン10と、上記減衰弁Vとを備える。そして、この減衰弁Vは、ピストン10の摺動時にロッド側室(一方の部屋)L1からピストン10で押し出される液体の流れに抵抗を与える。このような上記減衰弁Vを備える緩衝器Aによれば、フルソフト時に圧力制御弁V2の閉じ切りが防止され、初期隙間を設けられるので、フルソフト時における微低速域での減衰力を小さくできる。また、フルソフト時には、フェール時のように開閉弁V3を閉じることがないので、緩衝器Aが所望の減衰力を発揮できる。よって、上記緩衝器Aによれば車両の乗り心地を良好にできる。なお、緩衝器Aの構成は図示する限りではなく、適宜変更できる。さらに、上記減衰弁Vは、車両に搭載される緩衝器A以外に利用されてもよい。
【0064】
また、本実施の形態において、減衰弁Vは、ポート2eと、このポート2eを開閉する主弁V1とを備える。そして、パイロット通路18は、ポート2eの主弁V1よりも上流側の圧力を主弁V1の背圧として導くとともに、圧力制御弁体6bの開閉度合の調整で上記背圧を制御する。上記開閉度合とは、圧力制御弁V2の開弁圧、初期隙間等、圧力制御弁V2の予め開いた状態も含む開き易さの度合いをいうものである。上記構成によれば、ポート2eの上流側の圧力を利用して主弁V1の開弁圧を設定できる。さらに、上記構成によれば、主弁V1の背圧、即ち、背圧室Pの内部圧力を制御して主弁V1の開弁圧を調節するため、パイロット通路18を流れる流量に依存せずに上記背圧を狙い通りに調節し、減衰力のバラツキを小さくできる。
【0065】
なお、上記パイロット通路18の途中にはオリフィス2fが設けられ、ポート2eの上流側の圧力を背圧室Pに減圧して導くようになっている。しかし、ポート2eの上流側の圧力を減圧して背圧室Pへ導くための構成は、オリフィス2fに限らず、チョーク等の他の弁に替えてもよい。また、上記主弁V1は、主弁体3と副弁体30とを備え、ポート2eを二段階に開放するので、フルソフト時における減衰力を小さくして、減衰力の可変幅を大きくできるが、主弁V1の構成も適宜変更できる。さらに、パイロット通路18以外の流路に本発明が適用されるとしてもよい。
【0066】
また、本実施の形態において、ソレノイドSのシャフト8がその先端部に小径部8aを有するとともに、弁体部材6がその端部にソケット6dを有する。さらに、上記減衰弁Vは、内周(一端)が小径部8aの外周に嵌るとともに、外周(他端)がソケット6dの内周に嵌る皿ばね(第二弾性部材)61を備える。このため、弁体部材6が皿ばね(弾性部材)60の附勢力を受けず、且つ、ソレノイドSの推力も受けない状態になったとしても、皿ばね61が弁体部材6から外れるのを防止できる。
【0067】
なお、本実施の形態では、第二弾性部材が皿ばね61であり、外周環部61aと舌部61bとを有しているが、これ以外の皿ばねであってもよい。また、第二弾性部材は、皿ばね以外のばね(例えば、コイルばね等)又は、ゴムでもよい。また、第二弾性部材を外れ止めするための構成は、ソケット6d及び小径部8aに限らず、適宜変更できる。例えば、上記皿ばね61は、ソケット6dの段差6iとシャフト8の段差8bの両方に対して離間できるので組付性を良好にできるが、第二弾性部材を弁体部材6とシャフト8の一方に連結し、弁体部材6とシャフト8の一方と一体的に動くようにしてもよい。そして、このような変更は、パイロット通路18以外の流路に本発明が適用される場合であっても可能である。
【0068】
また、本実施の形態において、減衰弁Vは、一端が圧力制御弁座5fと開閉弁座50bとの間に開口し、パイロット通路(流路)18から分岐するフェール通路19と、このフェール通路19に設けたフェール弁V4とを備える。このため、ソレノイドSへの電流供給が断たれた場合、緩衝器Aがパッシブな緩衝器として機能できる。さらに、上記減衰弁Vでは、ソレノイドSへの電流供給が断たれたときに、弁体部材6が皿ばね60により開閉弁座50b側へ押し戻されても、皿ばね60の附勢力によっては開閉弁体6cが開閉弁座50bへ着座せず、皿ばね60を弾性変形させずに後退できる。よって、フェール時における微低速域で開閉弁体6cと開閉弁座50bとの間を液体が通過できるので、減衰力を小さくできる。すると、緩衝器Aが車両に搭載される場合、車両の制御にて車速が低いときなどに緩衝器Aに電流を流さないような制御をする場合があるが、このような場合でも非通電時における微低速域での減衰力を小さくして車両の乗り心地を良好にできる。
【0069】
なお、本実施の形態において、フェール弁V4は、積層リーフバルブであるフェール弁体7を備えて構成されるが、フェール弁V4の構成は適宜変更できる。また、フェール通路19及びフェール弁V4を備えていない減衰弁に本発明が適用されるとしてもよい。そして、このような変更は、第二弾性部材を外れ止めするための構成によらず可能であるとともに、パイロット通路18以外の流路に本発明が適用される場合であっても可能である。
【0070】
また、本実施の形態において、減衰弁Vは、圧力制御弁座5fに離着座してパイロット通路(流路)18を開閉する圧力制御弁体6bと、開閉弁座50bに離着座してパイロット通路18の上記圧力制御弁体6bで開閉する部分より下流を開閉する開閉弁体6cとを有する弁体部材6と、段差(ばね受)5gと弁体部材6との間に介装されて、圧力制御弁体6bを圧力制御弁座5fから離間させるとともに、開閉弁体6cを開閉弁座50bへ接近させる方向へ弁体部材6を附勢する皿ばね(弾性部材)60と、この皿ばね60の附勢力に抗して圧力制御弁体6
bを圧力制御弁座5fへ接近させる方向へ弁体部材6を駆動可能なソレノイドSとを備える。そして、皿ばね60が自然長になった状態で、開閉弁体6cと開閉弁座50bとの間に隙間が形成される。
【0071】
上記構成によれば、ソレノイドS、圧力制御弁体6b及び皿ばね60とで圧力制御弁V2を構成し、ソレノイドSへの供給電流量の調整で圧力制御弁V2の初期隙間及び開弁圧(開閉度合)を調整できる。また、開閉弁体6cと皿ばね60とで開閉弁V3を構成し、パイロット通路18における圧力制御弁V2の下流を開閉できる。さらに、圧力制御弁V2の弁体である圧力制御弁体6bと、開閉弁V3の弁体である開閉弁体6cが弁体部材6として一体化されており、圧力制御弁V2と開閉弁V3が皿ばね60を共有する。このため、パイロット
通路18に圧力制御弁V2と開閉弁V
3を直列に設ける場合であっても、部品数を少なくして減衰弁Vの構成を簡易にできる。
【0072】
さらに、上記構成によれば、開閉弁体6cが開閉弁座50bに着座した開閉弁V3の閉弁状態においては、皿ばね60の附勢力が開閉弁体6cに作用せず、開閉弁体6cが皿ばね60を弾性変形させずに後退可能な状態となっている。よって、製品毎のバラツキを考慮した上で、フルソフト時に圧力制御弁V2を開弁した状態に維持できるように皿ばね60のばね定数を大きくしたとしても、開閉弁V3の閉じ切りに皿ばね60の附勢力が関与しないので、開閉弁体6cがパイロット通路18を閉塞するのを防止できる。
【0073】
つまり、上記減衰弁Vによれば、圧力制御弁体6bと開閉弁体6cとを有する弁体部材6を備える場合であっても、フルソフト時に圧力制御弁体6bがパイロット通路18を閉じ切らない設定にすることと、フルソフト時にパイロット通路18が開閉弁体6cで閉塞されるのを防止することを両立できる。また、皿ばね60のばね定数を下げる分には問題ないので、上記構成によれば、皿ばね60の設計自由度が向上する。
【0074】
なお、本実施の形態において、弾性部材が皿ばね60であり、外周環部60aと舌部60bとを有しているが、これ以外の皿ばねであってもよい。また、弾性部材は、皿ばね以外のばね(例えば、コイルばね等)又は、ゴムでもよい。また、上記皿ばね60は、弁体部材6の段差6fと第一弁座部材5の段差5gの両方に対して離間できるので組付性を良好にできるが、弾性部材を弁体部材6とばね受の一方に連結してもよい。そして、このような変更は、弾性部材を外れ止めするための構成によらず可能であるとともに、パイロット通路18以外の流路に本発明が適用される場合、又はフェール弁V4を備えていない減衰弁に本発明が適用される場合であっても可能である。
【0075】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形および変更が可能である。