(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588786
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】長尺材の折曲げ加工方法及び折曲げ加工品
(51)【国際特許分類】
B21D 7/00 20060101AFI20191001BHJP
B21D 7/06 20060101ALI20191001BHJP
B21D 39/03 20060101ALI20191001BHJP
B21D 47/01 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
B21D7/00 A
B21D7/00 E
B21D7/06 M
B21D7/06 A
B21D39/03 Z
B21D47/01 C
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-198185(P2015-198185)
(22)【出願日】2015年10月6日
(65)【公開番号】特開2017-70968(P2017-70968A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 稔之
【審査官】
石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−263737(JP,A)
【文献】
実開昭60−034323(JP,U)
【文献】
特開平06−154874(JP,A)
【文献】
特開2000−316651(JP,A)
【文献】
特開平08−309429(JP,A)
【文献】
特開昭54−122668(JP,A)
【文献】
特開2002−096113(JP,A)
【文献】
特開平09−253756(JP,A)
【文献】
特許第4457398(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 7/00
B21D 7/06
B21D 39/03
B21D 47/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交する2面を備えた長尺材の折曲げ加工方法であって、
(a)前記長尺材の一側面を曲げ加工面として、直交する他側面に、前記一側面を底部とするV形状の切欠部をレーザ加工によって形成する際、前記切欠部において互いに接合される一方の傾斜した接合面に係合凹部を形成し、前記切欠部において傾斜した他方の接合面に、折曲げ加工時に係合凹部に係合してかじり現象を生じる係合凸部を形成する工程、
(b)前記切欠部の底部を折曲げ部として、前記両接合面を接合すべく前記長尺材の一側面をV形状に折曲げる際に、折曲げ部における外側径を折曲げ線の全長に亘ってほぼ一定にするために、雄型と雌型の金型によって前記折曲げ部の折曲げ加工を行う際、前記両接合面によって雄型を挟み込むことのない角度に折曲げる工程、
(c)前記金型による折曲げ加工後に、前記他側面のV形状の切欠部における接合面の前記係合凹部と係合凸部とを係合すべく、前記長尺材を手作業によって再び折曲げ加工する工程、
の各工程を備えていることを特徴とする長尺材の折曲げ加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の長尺材の折曲げ加工方法において、前記金型による前記折曲げ部の折曲げ加工はボトミング加工であることを特徴とする長尺材の折曲げ加工方法。
【請求項3】
直交する2面を備えた長尺材の一側面を曲げ加工面とし、直交する他側面に形成したV形状の切欠部の底部を折曲げ部として折曲げた折曲げ加工品であって、前記折曲げ部の外R部分は折曲げ線に沿っての各所における外Rが等しい構成であり、前記切欠部の一方の接合面に備えた係合凹部との係合状態においてかじり現象を生じる係合凹部を、前記切欠部の他方の接合面に備えていることを特徴とする折曲げ加工品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば角パイプやアングル材等のごとく互に直交する2面を備えた長尺材の折曲げ加工方法及び折曲げ加工品に係り、さらに詳細には、前記長尺材の一側面を曲げ加工面として、直交する他側面に、前記一側面を底部とするV形状の切欠部を形成した後に、前記一側面を手作業によって折曲げるとき、折曲げ部の外Rを小さく抑制することができる折曲げ加工方法及び折曲げ加工品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直交する2面を備えた長尺材の一例としての角パイプの複数箇所にV形状の切欠部を形成し、前記切欠部の部分を手作業により折曲げて、例えば四角形状の枠体等を形成することが行われている(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−253756号公報
【特許文献2】特許第4457398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の
図4,5,6には、長尺材としての角パイプの複数箇所に、折曲げを行う一側面を残してV形状の切欠部を形成している。そして、前記切欠部の底部を折曲げ線の位置として、手作業によって折曲げを行い、前記切欠部の離れていた接合面を合せた後、溶接を行って四角形状の枠体を形成している。上述のように、角パイプにV形状の切欠部を形成して折曲げ加工を行うとき、前記切欠部内に雄型を配置して折曲げ加工を行うと、前記切欠部の接合面によって前記雄型が強固に挟み込まれることがあるので、手作業によって折曲げているのが一般的である。
【0005】
前述のごとく、角パイプのV形状の切欠部を手作業によって折曲げると、折曲げ部における外Rが大きくなり、所望とする小さなRに曲げることが難しいものである。
【0006】
前記特許文献2においては、特許文献2の
図19,22に示されているように、角パイプに形成したV形状の切欠部の底部分の、折曲げを行う外側面にR状の凸部(膨らみ)を形成する。その後に、
図20,23に示されているように、折曲げ加工を行って、前記切欠部の接合面を合せた構成が記載されている。
【0007】
上記特許文献2に記載の構成によれば、切欠部の底部分に予め凸部を形成するものであるから、折曲げ部の外Rが大きくなることは抑制できる。しかし、前記凸部を形成するための格別な金型が必要となるものである。また、角パイプの曲げ加工を行った後には、折曲げ部の外側に前記凸部が突条として残り易いものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述したごとき問題に鑑みてなされたもので、直交する2面を備えた長尺材の折曲げ加工方法であって、
(a)前記長尺材の一側面を曲げ加工面として、直交する他側面に、前記一側面を底部とするV形状の切欠部を
レーザ加工によって形成する際、前記切欠部において互いに接合される一方の傾斜した接合面に係合凹部を形成し、前記切欠部において傾斜した他方の接合面に、折曲げ加工時に係合凹部に係合してかじり現象を生じる係合凸部を形成する工程、
(b)前記切欠部の底部を折曲げ部として、
前記両接合面を接合すべく前記長尺材の一側面をV形状に折曲げる際に、折曲げ部における外側径を折曲げ線の全長に亘ってほぼ一定にするために、雄型と雌
型の金型によって前記折曲げ部の折曲げ加工を行う
際、前記両接合面によって雄型を挟み込むことのない角度に折曲げる工程、
(c)前記金型による折曲げ加工後に、前記他側面のV形状の切欠部における接合面
の前記係合凹部と係合凸部とを係合すべく、前記長尺材を手作業によって再び折曲げ加工する工程、
の各工程を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記長尺材の折曲げ加工方法において、前記金型による前記曲げ部の折曲げ加工はボトミング加工であることを特徴とするものである。
【0010】
また、直交する2面を備えた長尺材の一側面を曲げ加工面とし、直交する他側面に形成したV形状の切欠部の底部を折曲げ部として折曲げた折曲げ加工品であって、前記折曲げ部の外R部分は折曲げ線に沿っての各所における外Rが等しい
構成であり、前記切欠部の一方の接合面に備えた係合凹部との係合状態においてかじり現象を生じる係合凹部を、前記切欠部の他方の接合面に備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、角パイプに形成したV形状の部分を手作業によって折曲げるとき、折曲げ部の外Rが大きくなることを抑制できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る折曲げ加工品の1例を概念的、概略的に示した平面説明図である。
【
図2】角パイプを手作業によって折曲げる説明図である。
【
図3】角パイプを、手作業によって折曲げる前に金型によって折曲げる加工を行う説明図である。
【
図4】V形状の切欠部の別形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照するに、本発明の実施形態に係る長尺の折曲げ加工品1の1例として、角パイプ3を四角形状に形成した枠体として例示してある。上記折曲げ加工品1の製造は、次のように行われるものである。すなわち、上記折曲げ加工品1の展開長と等しい長さの角パイプ3を用意する。そして、前記折曲げ加工品1の折曲げ部5に相当する部分に、
図2に示すように、角パイプ3の一側面3Aが曲げ加工面となるように、当該一側面3Aと直交する両側の直交側面3B及び前記一側面3Aと平行な平行側面3Cの3側面に亘ってV形状の切欠部7をレーザ加工によって切断加工する。すなわち、前記切欠部7は、折曲げを行う前記一側面3Aに折曲げ部5を残して、角パイプ3の3箇所に形成してある。そして、前記角パイプ3の両端部は前記切欠部7の傾斜面に傾斜を等しくしてレーザ加工によって切断してある。
【0015】
前述のように、複数箇所にV形状の切欠部7を形成した角パイプ3の折曲げ部5は、手作業によって容易に折曲げることができるものである。すなわち、
図2に矢印Aで示すように、前記折曲げ部5を中心として角パイプ3の一部を回動することにより、角パイプ3は折曲げ部5において折曲げることができる。そして、
図2に想像線で示すように、切欠部7の接合面9A,9Bを接合した後、前記接合面9Aと接合面9Bとを接合した状態に、例えば溶接を行うことにより、
図1に示した折曲げ加工品1を製造することができるものである。
【0016】
ところで、前述したように、折曲げ部5の折曲げを手作業によって行うと、前記折曲げ部5の外面における外R(外側径)が大きくなる傾向にある。折曲げ部5の外Rが大きくなると、折曲げ部5の内面における内R(内側の径)が大きくなる傾向にあり、場合によっては、前記接合面9A,9Bが互いに接合した位置と前記折曲げ部5との間に、僅かな間隙を生じることがある。したがって、前記接合面9A,9Bのレーザ溶接を行う際には、前記間隙が無いことが望ましいものである。
【0017】
そこで、本実施形態においては、折曲げ部5における外Rをより小さく抑制するために、角パイプ3における前記折曲げ部5を手作業によって折曲げる前に、金型11(
図3参照)を用いてプレスブレーキによる折曲げを行うものである。前記金型11は、V溝13Vを備えた雌型(ダイ)13と、角パイプ3の前記折曲げ部5を前記V溝13V内へ押圧加圧する雄型(パンチ)15とを備えた構成である。したがって、ダイ13上に角パイプ3の切欠部7を位置決めした後、上記角パイプ3の折曲げ部5をパンチ15によって押圧加圧することにより、前記折曲げ部5の折曲げ加工を行うことができるものである。
【0018】
上述のように、パンチ15とダイ13によって角パイプ3における折曲げ部5の折曲げ加工を行う際は、パーシャルベンデング(エアーベンディング)でも可能である。しかし、折曲げ部5における外Rを小さく抑制し、かつ曲げ精度の向上を図るにはボトミング(底突き)による曲げ加工が望ましいものである。上述のように、パンチ15、ダイ13によって折曲げ部5の折曲げ加工を行った後、再度手作業によって前記接合面9A,9Bを接合すべく折曲げる。そして、前記接合面9A,9Bを接合した状態に仮止めした後、前記接合面9A,9Bの溶接を行うものである。
【0019】
ところで、前述したごとく、金型11によって折曲げ部5の折曲げを行うと、パンチ15は接合面9A,9Bに挟み込まれる傾向にある。したがって、前記ダイ13におけるV溝13V及びパンチ15の先端部の角度は、接合面9A,9Bがパンチ15を強固に挟み込むことのない所望の角とすることが望ましいものである。
【0020】
以上のごとき説明から理解されるように、本実施形態によれば、角パイプ3にV形状の切欠部7を形成し、当該切欠部7の底部における折曲げ部5を手作業によって折曲げる前に、パンチ15、ダイ13によって前記折曲げ部5の折曲げ加工を行うものである。したがって、前記折曲げ部5は、パンチ5、ダイ13によって規制された状態によって折曲げられることになる。よって、前記折曲げ部5の外Rは、最初から手作業によって折曲げる場合の外Rよりも小さくなるものである。
【0021】
すなわち、本実施形態によれば、パンチ15、ダイ13を利用して折曲げ部5の折曲げを行った後に、手作業によって前記折曲げ部5を再度折曲げて、切欠部7における接合面9A,9Bの接合を行うものであるから、折曲げ部5のふくらみを小さく抑制することができ、製品としての外観の向上を図ることができるものである。
【0022】
なお、本発明は、前述した実施形態に限ることなく、適宜の変更を行うことにより、その他の形態でもって実施可能である。すなわち、前記実施形態においては、長尺材として角パイプの場合について例示した。しかし、角パイプに代えて、アングル材やチャンネル材に適用することも可能である。
【0023】
また、V形状の切欠部7をレーザ加工によって形成するときに、
図4に示すように、接合面9A,9Bの一方に適宜形状の係合凹部17Aを形成し、接合面9A,9Bの他方に、前記係合凹部17Aに係合する係合凸部17Bを形成する。この際、折曲げ部5の折曲げを行って、接合面9A,9Bを接合し、前記係合凹部17Aと係合凸部17Bとを係合したときに、折曲げ部5のスプリングバックに抗して、前記係合凹部17Aと係合凸部17Bとの係合が維持されることが望ましいものである。
【0024】
すなわち、前記接合面9A,9Bを接合したときに、係合凹部17Aと係合凸部17Bとの間にかじり現象が生じるように、前記係合凹部17Aの開口部19Aの寸法よりも,前記係合凸部17Bにおける基部19Bの寸法を僅かに大きくする。このような構成とすることにより、前記係合凹部17Aと係合凸部17Bとの係合が、折曲げ部5のスプリングバックによっては外れない程度に固い(きつい)係合にすることができる。したがって、接合面9A,9Bを接合した後の、仮り止めの溶接作業を省略することが可能となり、作業能率向上を図ることができるものである。
【符号の説明】
【0025】
1 折曲げ加工品
3 角パイプ
5 折曲げ部
7 切欠部
9A,9B 接合面
13 ダイ
15 パンチ
17A 接合凹部
17B 係合凸部