(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の帯状部材9は、突条部91と凹溝部92とが嵌め合わされることで、側縁部同士が隙間なく一体化されて管状体を構成するものとなされていた。また、突条部91と凹溝部92とを嵌め合わせると、止水部材96が密着されて、形成する管状体の管径を固定するものとなっていた。突条部91と凹溝部92とを嵌め合わせた後は、通常は、その管状体の管径を変更することができなかった。
【0007】
そのため、例えば、更生対象管路の内面に対して隙間なく張り付けるように更生管を形成する場合や、管路の内径が途中で変化する場合などには、更生管が所定の管径となるように帯状部材9を規制しながら巻回したうえで突条部91と凹溝部92とを嵌め合わせなければならなかった。しかしながら、このような施工工程は手間と時間とを要して容易な作業ではないことから、管状体を形成した後にも、その管状体の管径を適宜調整できる構成であることが望まれた。
【0008】
本発明はこのような問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、管状体とした後にその管径を調整することが可能な帯状部材と、その帯状部材を用いた更生管の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、螺旋状に巻回されて更生管となる帯状部材を前提とする。このような帯状部材として、側縁部同士が接合されて管状体を構成する平板部と、前記平板部の両側縁部に長手方向に沿って設けられ互いに接合可能な第1および第2掛結部とを備えて、前記第1掛結部には係合部が突設され、前記第2掛結部には前記係合部にかみ合う被係合部が突設されて、第1掛結部の係合部と第2掛結部の被係合部との少なくとも一方は、前記平板部の厚み方向に複数段に連なった状態で突設されてなることを特徴としている。
【0010】
この特定事項により、第1掛結部と第2掛結部とを嵌め合わせて帯状部材を確実に接合して更生管を形成することができる。このとき、第1掛結部の係合部と第2掛結部の被係合部との少なくとも一方は複数段に連なって形成されているので、係合部と被係合部とを段階的にかみ合わせて接合することが可能とされている。係合部と被係合部とを1段目でかみ合わせることで帯状部材を管状体に形成することができるとともに、第1掛結部と第2掛結部との間に隙間を保持した状態とすることができる。そのため、この1段目がかみ合った状態で管状体となった帯状部材を適宜、縮拡径させることが可能であり、管径を調整しつつ更生管を形成することが可能とされる。
【0011】
前記帯状部材のより具体的な構成として次のものが挙げられる。前記構成の帯状部材において、前記第1掛結部は、幅方向の一方の側縁部に長手方向に沿った凸状部を有し、前記第2掛結部は、幅方向の他方の端縁部に長手方向に沿うとともに前記凸状部が嵌り合う溝状部を有し、前記係合部は、前記凸状部に1段または2段で突設され、前記被係合部は、前記溝状部の内壁面に2段で突設されてなることが好ましい。
【0012】
これにより、凸状部と溝状部とを段階的に嵌め合わせて第1掛結部と第2掛結部とを接合することができ、係合部と被係合部とが1段目でかみ合うとき、形成された管状体の管径を変更することが可能とされる。
【0013】
また、前記第1掛結部と第2掛結部とは、反対向きに開口して互いに嵌り合う溝部をそれぞれ有するように構成されてもよい。
【0014】
この場合、前記第1掛結部は、帯状の第1基部と、第1基部の一面に突設された2以上の第1突条部と、これら第1基部および第1突条部で区画される1以上の第1の溝部とを有し、前記第2掛結部は、前記第1基部と略平行に延びる帯状の第2基部と、第2基部の他面に突設された2以上の第2突条部と、これら第2基部および第2突条部で区画される1以上の第2の溝部とを有し、前記係合部は、第2の溝部に嵌る第1突条部に2段で設けられ、前記被係合部は、第2の溝部を区画する少なくとも1つの第2突条部に2段で設けられてなることが好ましい。
【0015】
これによっても、第1突条部と第2突条部とを段階的に嵌め合わせて第1掛結部と第2掛結部とを接合することができ、係合部と被係合部とが1段目でかみ合うとき、管状体の管径を変更することができる。
【0016】
また、前記第1掛結部または第2掛結部の少なくとも一方には目印部が設けられ、前記目印部は、複数段に連なる係合部または被係合部の1段目を介してかみ合った状態のとき視認され、2段目以降を介してかみ合った状態のとき隠される構造を備えてなることが好ましい。
【0017】
これにより、第1掛結部と第2掛結部との接合状態を外観から容易に把握することが可能となる。
【0018】
また、前記目印部は、凹溝状もしくは突起状であり、または識別色が付与されてなることが好ましい。
【0019】
これにより前記目印部を帯状部材に容易に設けることができるとともに視認しやすいものとすることができる。
【0020】
また、前記第1掛結部または前記第2掛結部は、これら第1掛結部と第2掛結部との隙間を埋めるとともに粘弾性を有する止水部材を備えてなることが好ましい。
【0021】
これにより、第1掛結部と第2掛結部との間で止水部材を密着させて止水性を確保することができ、係合部と被係合部とをかみ合わせた状態に保持することが可能となる。
【0022】
また、前記止水部材は、前記平板部の長手方向には引張り変形し難い特性を有するとともに、軸直角方向には粘弾性を有する紐状止水部材であり、軸方向への変形量を調整可能な芯材と、前記芯材の表面を被覆し粘弾性を有する合成樹脂製の被覆体とを備えてなることが好ましい。
【0023】
これにより、紐状止水部材の伸長を抑えて第1掛結部と第2掛結部との間に紐状止水部材を安定的に配設することができ、確実に止水機能を発揮させることができる。
【0024】
前記の構成を有する帯状部材を用いた更生管の形成方法も本発明の技術的思想の範疇である。すなわち、管状体を構成する長尺帯状の平板部と、前記平板部の両側縁部に長手方向に沿って設けられ互いに接合可能な第1および第2掛結部とを有し、第1掛結部には係合部が突設され、第2掛結部には前記係合部にかみ合う被係合部が突設され、第1掛結部の係合部と第2掛結部の被係合部との少なくとも一方は、前記平板部の厚み方向に複数段に連なった状態で備えられた帯状部材を用いる更生管の形成方法であって、前記帯状部材を螺旋状に巻回して近接した第1掛結部と第2掛結部とに対し、前記係合部と前記被係合部とを、複数段に連なる係合部または被係合部の1段目を介してかみ合わせて、前記帯状部材を管状体にする仮接合工程と、前記係合部と前記被係合部とを長手方向に相対的に摺動させて、第1掛結部を第2掛結部に対して周方向にずらし、前記管状体の管径を変更する調整工程と、前記係合部と前記被係合部とを、複数段に連なる係合部または被係合部の2段目以降を介してかみ合わせ、第1掛結部と第2掛結部とを接合する本接合工程とを含む構成としている。
【0025】
これにより、前記仮接合工程を経て形成した管状体を、その後の調整工程にて更生対象管路に対応する所望の管径のものに変化させ、好適な管径を有する更生管として施工することが可能となる。従来のように帯状部材の曲げ形状を必要な管径に合わせて調整したり、作業中に帯状部材そのものの曲率を調整したりせずともよく、煩雑な作業を行うことなく円滑に製管作業を進めることができ、施工期間の短縮化を図ることも可能となる。
【0026】
また、前記仮接合工程では、前記帯状部材の平板部に接して回転するローラを前記帯状部材に押当て、前記ローラは大径部と小径部とを備え、これら大径部と小径部との間に、前記係合部および前記被係合部の1段目をかみ合わせるだけの押込み量に相当する段差部を有し、前記段差部を第1掛結部と第2掛結部との近接部に配置し、前記大径部を2周目の帯状部材に当接させるとともに前記小径部を1周目の帯状部材に当接させることが好ましい。
【0027】
これにより、第1掛結部の係合部と第2掛結部の被係合部とを段階的にかみ合わせ、容易に仮接合することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、管状体を形成した後にその管径を調整することが可能であり、しかも第1掛結部と第2掛結部とを確実に嵌め合わせて信頼性の高い管状体を形成することができるので、施工性および信頼性に優れた帯状部材および更生管の形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態に係る帯状部材およびこの帯状部材を用いた更生管の形成方法について、図面を参照しつつ説明する。なお、
図1、
図2、
図5〜
図12では、図中の右側を一方側とし、左側を他方側として説明する。また、帯状部材1は管状に形成されたとき、これらの図面における上側が径方向外側となり、下側が径方向内側となることから、図中上側を帯状部材1の外側、図中下側を帯状部材1の内側として説明する。
【0031】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る帯状部材1を模式的に示す断面図である。帯状部材1は、例えば埋設管内に施工する更生管を形成するためのものであり、螺旋状に巻き回されて側縁部が接合されることによって管状体となされる。
【0032】
図1に示すように、帯状部材1は、長尺帯板状の平板部2と、平板部2の一方の側縁部に一体形成された第1掛結部3と、平板部2の他方の側縁部に一体形成された第2掛結部4と、第1掛結部3と第2掛結部4との隙間を埋めるための止水部材5とを備えている。
【0033】
平板部2は、帯状部材1の外側に相当する一側面に、複数条のリブ21を備えている。リブ21は、平板部2の長手方向に沿って連続的に立設され、断面略T字状に形成されている。
【0034】
帯状部材1は、平板部2、第1掛結部3、第2掛結部4、およびリブ21が、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂を単独または適宜混合したものを素材として、押し出し成形などの加工手段により形成されている。平板部2は、必要に応じてその表面や内部がガラス繊維等で補強されてもよい。
【0035】
この形態に係る帯状部材1は、第1掛結部3が、帯状部材1における外側に開口する第1溝部31を有し、第2掛結部4が、帯状部材1における内側に開口する第2溝部41を有する。
【0036】
第1掛結部3は、帯状の第1基部32と、第1基部32の外側の面に突設された2つの第1突条部33と、1つの中央第1突条部34とを有している。第1基部32の他方の辺縁部は、平板部2の一方の辺縁部に接続されている。平板部2に備えられたリブ21に隣接する第1突条部33は、先端縁がリブ21方向に屈曲され、鉤型の断面形状を有している。
【0037】
第1掛結部3には、第1突条部33と中央第1突条部34とにより区画された、2つの第1溝部31が形成されている。2つの第1突条部33には、対向方向の内側の面に、係合部として第1係合部301と第2係合部302が設けられている。これらの第1および第2係合部301、302は、各第1突条部33において、平板部2の厚み方向に2段に連なって設けられている。
【0038】
第1係合部301は、第1溝部31の開口寄りに対向して配設され、上窄まりの片矢印状の段部として形成されている。第2係合部302は、第1基部32寄りに対向して配設され、第1係合部301と同様の形状の段部として形成されている。2つの第1突条部33の間の中央第1突条部34には係合部は設けられず、第1突条部33よりも小さい突出量で形成されている。
【0039】
第2掛結部4は、帯状の第2基部42と、第2基部42の内側の面に、互いに対向するように突設された2つの第2突条部43と、接続部44とを有している。この第2掛結部4には、第2基部42、第2突条部43、および接続部44によって区画された、2つの第2溝部41が形成されている。
【0040】
帯状部材1において、第2基部42は、平板部2よりも外側に配設されている。接続部44は第2基部42から帯状部材1の内側方向に突設されるとともに、平板部2の他方端に接続されている。これにより、第2掛結部4は平板部2に一体に形成されている。また、第2溝部41は、帯状部材1の内側に開口して設けられている。第2基部42は、接続部44から一方側へ延出するように形成されている。
【0041】
第2突条部43、43には、対向方向の外側の面に、被係合部として2段に連なるように第1被係合部401と第2被係合部402が形成されている。これら2つの第2突条部43により区画された、他方側の第2溝部41には、止水部材として紐状止水部材51が備えられている。
【0042】
第1被係合部401は、第2溝部41の開口寄りに設けられ、第2被係合部402は、第2基部42寄りに設けられている。2つの第1被係合部401は、互いに反対向きに突設されており、断面が下窄まりの片矢印形状の段部として形成されている。2つの第2被係合部402にあっても同様に形成されている。
【0043】
第1掛結部3または第2掛結部4の少なくとも一方には目印部36が設けられている。例示の形態では目印部36は、第1掛結部3の一方側の第1突条部33と第1基部32との接続部に設けられている。この目印部36は、外観上、容易に視認されることが好ましく、第1突条部33の一方側の外面における凹溝状の窪みとして形成されている。目印部36は、凹溝状に形成されるに限らず、外面に突出する突起状であってもよい。また、目印部36は、かかる部位に識別色が付与されてなる、着色部であってもよい。目印部36は、帯状部材1の長手方向に連続して形成されている。
【0044】
紐状止水部材51は、2つの第2溝部41のうち、他方側に位置する第2溝部41内に、長手方向に沿って配設されている。この紐状止水部材51は、軸方向への変形量を調整可能な芯材511と、芯材511の表面を被覆し、粘弾性を有する合成樹脂製の被覆体512とを備えている。これにより、紐状止水部材51は、軸方向には引張
り変形し難く、軸直角方向には粘弾性を有している。
【0045】
被覆体512の材質としては、一般的にOリングとして用いられている、粘弾性特性を有する合成樹脂全般を採用することができ、ホットメルト系接着剤や溶剤系接着剤などの止水機能を発現する材料を用いることも可能である。粘弾性特性を有する合成樹脂としては、弾性変形領域では短期的にも長期的にも塑性変形を生じず、かつ、長期に亘って止水に必要な押圧力を保持する材質が好ましい。
【0046】
被覆体512の硬度は、例えば、タイプAデュロメーター硬度30〜100の範囲が好ましく、硬度50〜90の範囲がより好ましい。硬度30未満では、被覆体512の断面変形が容易となり、紐状止水部材51に押圧力を発現させるには、紐状止水部材51が配設される第2溝部41に高い寸法精度が要求されることになる。硬度100を超える場合には、被覆体512の断面変形量が小さくなり、第2溝部41が紐状止水部材51によって局所的に押圧されることになって、第2溝部41の寸法精度を高くしなければ、止水機能および押圧力を均一に発現させることが困難となる。このため、被覆体512の硬度は前記範囲とされることが好ましい。
【0047】
芯材511は、金属、ガラス繊維、合成樹脂材、またはこれらの複合素材からなることが好ましい。芯材511と被覆体512とは、熱融着または接着されていることが好ましいが、熱融着や接着が困難な場合には、例えば複数の芯材511を縒って組紐状とされてもよい。この場合、芯材511の表面に凹凸を形成して、芯材511と被覆体512との付着を強め、被覆体512の軸方向への変形を抑制することが好ましい。
【0048】
紐状止水部材51は、軸直角方向には粘弾性を有し、かつ、第2溝部41の形状に沿って弾性変形することが要求される。そのため、紐状止水部材51の総断面積に対する芯材511の占有断面積は、弾性変形が発現可能な範囲で決定されることが好ましい。例えば、紐状止水部材51の総断面積に対する芯材511の占有断面積は5〜70%の範囲であることが好ましく、10〜40%の範囲であればより好ましい。占有断面積が5%未満の場合には、芯材511の強度および被覆体512の界面接着の確保が困難となる。占有断面積が70%を超える場合には、被覆体512の断面変形量が小さくなり、被覆体512の硬度が100を超える場合と同様に、止水機能および押圧力を均一に発現させることが困難となる。
【0049】
例示の形態では、鋼製ワイヤーからなる断面円形の芯材511の表面に、合成樹脂材からなる被覆体512を被覆した断面円形状の紐状止水部材51を、第2溝部41内に連続的に配置している。このように、鋼製ワイヤーからなる芯材511を有する紐状止水部材51を用いることで、紐状止水部材51を第2溝部41に接着配置しなくとも、紐状止水部材51の特性自体で軸方向への伸長を抑えられ、紐状止水部材51の配置作業を容易に行うことができる。
【0050】
図2(a)〜
図2(c)は、帯状部材1の接合過程を順に示す説明図である。
図2(a)に示すように、螺旋状に巻回された長尺の帯状部材1は、一方の側縁部が、先行して巻回されている帯状部材1の他方の側縁部に重なり合うように配置される。紐状止水部材51が配設された第2掛結部4には、第1掛結部3が重なり合う。
【0051】
図2(b)に示すように、帯状部材1の第1掛結部3と第2掛結部4とが押圧されることにより、第1掛結部3の中央第1突条部34が、第2掛結部4の他方側の第2溝部41に嵌入する。これとともに、第1掛結部3の一方側の第1突条部33は、第2掛結部4の一方側の第2溝部41に嵌る。第2掛結部4の他方側の第2突条部43は、第1掛結部3の他方側の第1溝部31に嵌る。これによって、第1掛結部3の第1係合部301と、第2掛結部4の第1被係合部401とが互いに係合する。
【0052】
このとき、第1掛結部3に備えられた目印部36は、第2掛結部4の第2溝部41に入らず、一方側の第2溝部41の外に位置している。そのため、帯状部材1をその内側から見ると、目印部36を視認することができる。第1掛結部3と第2掛結部4との接合過程で、このように目印部36を視認できる状態であれば、1段目の第1掛結部3の第1係合部301と、第2掛結部4の第1被係合部401とが互いに係合した状態にあると判断することができる。
【0053】
また、
図2(b)に示す状態で、帯状部材1は第1掛結部3と第2掛結部4とが接合されて管状体となるものの、第1掛結部3と第2掛結部4との間には隙間があり、第1係合部301は、第1被係合部401に沿って軸方向に摺動し得る。すなわち、第1掛結部3は第2掛結部4の第2溝部41に沿って移動可能な状態にある。そのため、この段階で、帯状部材1からなる管状体の管径を適宜調整し、拡径または縮径させることが可能とされている。
【0054】
次いで、
図2(c)に示すように、第2掛結部4に対して第1掛結部3がさらに嵌め込まれて、第1掛結部3の中央第1突条部34は紐状止水部材51に圧着され、第2掛結部4との隙間が埋められる。第1係合部301は、第2被係合部402に係止するとともに、第2係合部302は第1被係合部401に係止する。これにより、第1掛結部3と第2掛結部4とは接合した状態で固定される。また、帯状部材1からなる管状体の管径が固定され、更生管が形成される。
【0055】
このとき、第1掛結部3に備えられた目印部36は、第2掛結部4の第2溝部41に入り込み、隠れる。すなわち、目印部36の外面には第2掛結部4の接続部44が覆い被さる。したがって、帯状部材1をその内側から見て、目印部36が視認されなければ、第1掛結部3と第2掛結部4とが完全に嵌り合い、接合された状態であると判断することができる。
【0056】
なお、目印部36は第1掛結部3と第2掛結部4との少なくとも一方に設けられていれば足り、例えば第2掛結部4に設けられて帯状部材1の外側から見て視認されるように設けられてもよい。また、帯状部材1には、更生管としての剛性を高めるため、リブ21の間、またはリブ21をまたがるように補強部材が備えられてもよい。また、リブ21は、断面形状が略T字状であるに限られず、例えば、先端部が一方向に屈曲された断面逆L字状であってもよい。
【0057】
(更生管の形成方法)
帯状部材1を用いた更生管の形成方法について説明する。
【0058】
帯状部材1は螺旋状に巻回して、第1掛結部3と第2掛結部4とを接合することにより管状体をなし、所望の管径の更生管100とすることができる。帯状部材1を巻回するには製管機を用いる。製管機には多様な構造のものを適用することができる。
【0059】
例えば
図3に模式的に示すように、駆動回転されるピンチローラ7と、帯状部材1を押圧する接合ローラ8とを備える製管機を用いて更生管100を形成することができる。この場合、更生対象の管路内面に向けて、ピンチローラ7に挟まれた帯状部材1が螺旋状に送り込まれる。送られた帯状部材1は、既に巻回されて管状体となった帯状部材1の側縁部に配置され、第1掛結部3と第2掛結部4とが重なり合う(
図2(a)参照)。
【0060】
図4は、接合ローラ8の一例を示す説明図である。接合ローラ8は、帯状部材1の内側に配設され、平板部2に接触しながら回転する。例示する帯状部材1には外側に補強部材6が装着されている。補強部材6は、金属製または合成樹脂製の帯板材を折曲して断面略W字状に形成されており、リブ21に係止され、またはリブ21をまたぐように配設されている。
【0061】
接合ローラ8は、外径の異なる複数のローラを備えて構成され、例示の形態では第1ローラ81と第2ローラ82とを備えている。第1ローラ81には、1周目の帯状部材1に接触して回転する小径部811と、2周目の帯状部材1に接触して回転する大径部812とが備えられ、小径部811と大径部812との間には周方向に段差部813が形成されている。段差部813は、小径部811と大径部812との外径の差に対応する段差を有し、
図2(b)に示した第1係合部301と第1被係合部401とをかみ合わせるための押込み量に相当する段差で設けられている。
【0062】
第1ローラ81は、小径部811と大径部812とを同じローラ軸83上に備えている。ローラ軸83の基部は、1周目の帯状部材1の他方側に配設され、片持ち状に支持されている。段差部813の外側には、断面溝形の押さえ部材84が配設されている。押さえ部材84によって、第1掛結部3と第2掛結部4をともに外側から支持することで、第1ローラ81の押圧力をより効果的に帯状部材1に伝えることができる。
【0063】
製管機には接合ローラ8としてさらに、2周目の帯状部材1の一方側を押圧する第2ローラ82が設けられている。第2ローラ82は、帯状部材1の第1掛結部3の第1基部32に接触するように設けられ、大径部812の外径と同等または大径部812より大きい外径を有する。この第2ローラ82は、
図4では第1ローラ81と同軸上に設けられているが、これに限らず、2周目の帯状部材1の一方側に対して配設されていれば、周方向の他の箇所に配置されてもよい。
【0064】
接合ローラ8は、管路の周方向に移動しながら、第1掛結部3と第2掛結部4とを内側から押圧することで、第1係合部301と第1被係合部401とを係止させる(仮接合工程:
図2(b)参照)。目印部36は外観上、視認されうる状態にある。
【0065】
仮接合工程を経た帯状部材1は、第1掛結部3と第2掛結部4とが接合されて管状体となっている。続いて、第1掛結部3と第2掛結部4とを周方向に相対的に滑らせて、管状体の内径を調整する(調整工程)。
【0066】
前記のとおり帯状部材1は、第1掛結部3と第2掛結部4とが係止しているものの、第1係合部301と第1被係合部401とは互いに摺動し得て、周方向に移動することが可能な状態にある。帯状部材1は長尺帯状で剛性を有する部材であるので、螺旋状に曲げられた状態では、曲げ形状を伸張させようとする弾性反発力を有している。そのため、製管機が回転して接合ローラ8の位置が周方向に移動し、当該第1掛結部3および第2掛結部4への接合ローラ8の押圧がなくなると、帯状部材1は管路の内面に張り付くように拡がり、第1掛結部3と第2掛結部4との間に摺動が起こる。これにより、形成した管状体の管径は、自ずと更生対象管路の管径に対応する大きさに調整される。また、例えば、更生対象管路の内面に円弧状のガイド部材を設けておけば、この調整工程によって、ガイド部材に沿った曲率の更生管100を形成することができる。
【0067】
次いで、管径が調整された状態の第1掛結部3と第2掛結部4とを、接合ローラ8の第2ローラ82によって、さらに押圧する(本接合工程:
図2(c)参照)。これにより、第1係合部301は第2被係合部402に係止し、第2係合部302は第1被係合部401に係止して、第1掛結部3と第2掛結部4とが完全に接合される。螺旋状に巻回された帯状部材1は管状体となり更生管100を形成する。
【0068】
なお、接合ローラ8には、ローラ軸83の基部に、1周目の帯状部材1の他方側を保持する位置決め部材85が備えられることが好ましい。
図4に示すように、位置決め部材85は、断面鉤型に形成されて第2掛結部4の第2基部42を押さえるとともに平板部2に重ねられた補強部材6に係止して帯状部材1の位置ずれを防止する。
【0069】
(実施形態2)
実施形態2に係る帯状部材1は、第1掛結部3における係合部と、第2掛結部4における被係合部の構成が、前記実施形態1と異なるものである。実施形態2に係る帯状部材1については、これらの実施形態1とは異なる構成を中心に説明する。
【0070】
図5は、実施形態2に係る帯状部材1を示す断面図である。この形態の帯状部材1では、第1掛結部3において、第1係合部301は前記実施形態1と同様に設けられているが、第2係合部302は、対向する第1突条部33の他方側の第1突条部33にだけ設けられている。この第2係合部302は、第1溝部31に面して、第1基部32寄りに突設され、上窄まりの片矢印状の段部として形成されている。これにより、他方側の第1突条部33には、第1係合部301と第2係合部302とが、平板部2の厚み方向に2段に連なるように設けられている。
【0071】
第2掛結部4においては、第1被係合部401は前記実施形態1と同様に設けられている。これに対して、第2被係合部402は、3つの第2突条部43のうち真ん中の第2突条部43にだけ設けられている。第2被係合部402は、この第2突条部43の一方側の面に、第2基部寄りで突設され、断面が下窄まりの片矢印形状の段部として形成されている。これにより、真ん中の第2突条部43には、平板部2の厚み方向に2段に連なって、第1被係合部401と第2被係合部402が形成されている。紐状止水部材51は、前記実施形態1と同様に、他方側の第2溝部41に備えられている。
【0072】
図6(a)に示すように、帯状部材1は巻回されて第2掛結部4と第1掛結部3とが重なり合う。次いで、
図6(b)に示すように、第1掛結部3の第1係合部301と、第2掛結部4の第1被係合部401とが互いに係合する。この状態で、帯状部材1は第1掛結部3と第2掛結部4とが接合され管状体となるとともに、第1掛結部3は第2掛結部4の第2溝部41に沿って移動することが可能であり、管状体の管径を適宜調整することができる。
【0073】
次いで、
図6(c)に示すように、一方側の第1突条部33に設けられた第1係合部301は、第2掛結部4の真ん中の第2突条部43に設けられた第2被係合部402に係止する。他方側の第1突条部33に設けられた第2係合部302は、他方側の第2突条部43に設けられた第1被係合部401に係止する。第1掛結部3の中央第1突条部34は、紐状止水部材51に圧着され、第2掛結部4との間を埋める。これにより、第1掛結部3と第2掛結部4とが接合した状態で固定され、帯状部材1による管状体としての管径が固定される。
【0074】
このように、帯状部材1は、第1掛結部3に備える第1係合部301および第2係合部302を、複数の第1突条部33のすべてに対して設けられずともよく、いずれかの第1突条部33において2段に連ねて設けられた構成であってもよい。同様に、第2掛結部4に備える第1被係合部401および第2被係合部402を、複数の第2突条部43のすべてに対して設けられずともよく、いずれかの第2突条部43に2段に連ねて設けられてもよい。
【0075】
図7に示すように、第2係合部302は、2つの第1突条部33の一方側にだけ設けられてもよい。また、第2被係合部402は、2つの第2突条部43の他方側にだけ設けられてもよい。この場合にも、
図8(a)〜
図8(c)に示すように、帯状部材1の第1掛結部3と第2掛結部4とを2段階で接合することができ、
図8(b)に示す状態で管状体の管径を調整した後、
図8(c)に示す完全な接合状態とすることができる。
【0076】
(実施形態3)
実施形態3に係る帯状部材1は、第1掛結部3と第2掛結部4が前記実施形態1、2のものとは異なる。実施形態3に係る帯状部材1については、第1掛結部3と第2掛結部4の構成を中心に説明する。
【0077】
図9に示すように、帯状部材1の第1掛結部3は、平板部2の外側の面に、リブ21と同じ方向に突設され、長手方向に沿って凸状に連続する凸状部35を有している。凸状部35の先端部には、係合部353が備えられている。この係合部353は、凸状部35における一方の面と他方の面との両面に突出して形成され、凸状部35の先端部に略三角形の断面形状を構成するように設けられている。
【0078】
第2掛結部4は、第1掛結部3が内部に嵌入しうる凹溝状の溝状部45を備えている。溝状部45は、帯状部材1の内側方向に開口されている。溝状部45は、係合部353が係合する被係合部として、第1被係合部451と第2被係合部452とを備えている。第1被係合部451は溝状部45の開口寄りに設けられ、溝内面に対向して突設されている。第2被係合部452は溝状部45の奥部寄りに設けられ、溝内面に対向して突設されている。これらの第1被係合部451および第2被係合部452は、どちらも溝状部45の長手方向に沿って平行に配設されている。
【0079】
これにより、溝状部45には、溝の深さ方向に(
図9における図中上方向に)第1被係合部451と第2被係合部452とが2段に連なって形成されている。溝状部45の溝内面は、係合部353の断面形状に対応する溝形状に形成されている。
【0080】
第2掛結部4の溝状部45には、止水部材5が設けられている。例示の形態では、止水部材5は溝状部45の奥部に配設されている。この止水部材5は、帯状部材1の長手方向に沿って配設され、粘弾性を有する合成樹脂材からなり、例えば、一般的にシール材やOリングなどに用いられている材料からなることが好ましい。また、ホットメルト系接着剤や溶剤系接着剤などの止水機能を発現する材料により止水部材5が形成されてもよい。
【0081】
図10(a)に示すように、螺旋状に巻回された帯状部材1は、一方の側縁部が、先行して巻回されている帯状部材1の他方の側縁部に重なり合うように配置され、第1掛結部3は先行する帯状部材1の第2掛結部4にあてがわれる。
【0082】
図10(b)に示すように、帯状部材1が外側方向に押圧されることで、第1掛結部3の凸状部35は、第2掛結部4の溝状部45に押圧されて嵌入する。嵌入した凸状部35は、係合部353が、溝状部45の開口側に位置する1段目の第1被係合部451に係止する。係合部353が第1被係合部451に係止することで、第1掛結部3と第2掛結部4とが接合されて繋がり、帯状部材1は連続する管状体となる。
【0083】
この状態で、帯状部材1は管状体をなすものの、第1掛結部3は第2掛結部4に対して移動しうる状態にある。すなわち、この状態で凸状部35の係合部353は、溝状部45の第1被係合部451に沿って摺動し得るので、第1掛結部3は第2掛結部4の溝状部45に沿って移動することが可能である。このため、帯状部材1からなる管状体の管径を適宜調整し、拡径または縮径させることが可能とされている。
【0084】
次いで、第2掛結部4の溝状部45に対して、第1掛結部3の凸状部35がさらに押圧される。
図10(c)に示すように、凸状部35は溝状部45の内部に押し込まれて、係合部353が、溝状部45の開口側から2段目に位置する第2被係合部452に係止する。凸状部35の先端部は、止水部材5に押圧され密着する。これにより、係合部353は溝状部45内で移動不能となり、第1掛結部3と第2掛結部4とが接合した状態で固定される。また、帯状部材1による管状体として管径が固定される。
【0085】
この形態に係る帯状部材1では、第1掛結部3の凸状部35の断面形状が略矢印形状に形成され、上窄み形状をなす一方、第2掛結部4の溝状部45は第1および第2被係合部451、452が2段に連なって略裾広がり形状の溝断面をなす。このため、第1掛結部3の凸状部35を、第2掛結部4の溝状部45に容易に嵌め込むことができる。第1掛結部3が第2掛結部4に嵌め込まれると、凸状部35の係合部351は、溝状部45の第1被係合部451または第2被係合部452に両側から挟まれて互いに係止するので、溝状部45から抜け止めされる。
【0086】
また、止水部材5は、溝状部45内において、凸状部35の先端部によって
図10(c)における図中上方へ押圧され、溝状部45と凸状部35との間に保持されながら粘弾性特性を発現する。これにより、第1掛結部3と第2掛結部4との隙間を埋め、これらの接合状態を強固に保ちつつ止水性が確保される。
【0087】
(実施形態4)
実施形態4に係る帯状部材1は、第1掛結部3の凸状部35における係合部、および第2掛結部4の溝状部45における被係合部が、前記実施形態3のものとは異なるので、これらの実施形態3とは異なる構成を中心に説明する。
【0088】
図11に示すように、この帯状部材1は第1掛結部3の凸状部35に、係合部として第1係合部351と第2係合部352とを備えている。第1係合部351は、凸状部35の先端部の両面に設けられている。第2係合部352は、凸状部35の他方側の面に、リブ21に対向して、断面略片矢印形状に突設されている。これにより、第1掛結部3には、凸状部35の他方の面には、平板部2の厚み方向に2段に連なるように、第1係合部351と第2係合部352とが設けられている。
【0089】
第2掛結部4は、溝状部45の内面に第1被係合部451と第2被係合部452とが突設されている。第1被係合部451は、溝状部45の開口寄りの内面に、互いに対向して突設されている。第2被係合部452は、溝状部45の対向する内面のうち、一方の面(リブ21寄りの面)に突状に設けられ、他方の面には設けられていない。止水部材5は、実施形態1と同様に、溝状部45の奥部に配設されている。
【0090】
かかる帯状部材1では、螺旋状に巻回されたとき、
図12(a)に示すように、第1掛結部3の凸状部35が第2掛結部4の溝状部45に重なり合うように配置される。
図12(b)に示すように、帯状部材1が内側から押圧されることで、第1掛結部3の凸状部35は、第2掛結部4の溝状部45に押圧されて嵌入する。凸状部35は、第1係合部351が、溝状部45の開口側に位置する1段目の第1被係合部451に係止する。第1係合部351が第1被係合部451に係止することで、第1掛結部3と第2掛結部4とが接合されて繋がり、帯状部材1は連続する管状体となる。
【0091】
次いで、第2掛結部4の溝状部45に対して、第1掛結部3の凸状部35がさらに押圧される。
図12(c)に示すように、凸状部35は溝状部45の内部に押し込まれて、第1係合部351が、溝状部45の開口側から2段目に位置する第2被係合部452に係止するとともに、第2係合部352が、溝状部45の開口側に位置する第1被係合部451に係止する。凸状部35の先端部は、止水部材5に押圧され密着する。これにより、凸状部35は溝状部45内で移動不能となり、第1掛結部3と第2掛結部4とが接合した状態で固定される。また、帯状部材1による管状体として管径が固定される。
【0092】
この形態に係る帯状部材1にあっても、
図12(b)に示す状態で、第1掛結部3は第2掛結部4の溝状部45に沿って移動することが可能であり、帯状部材1によって形成した管状体の管径を適宜変更することができる。
【0093】
以上説明したように、本発明によれば、管状体を形成した後にその管径を変更することが可能であるので施工性が向上するとともに、第1掛結部3と第2掛結部4とが確実に嵌め合わされて信頼性の高い更生管100を形成することができる。
【0094】
本発明は、前記実施形態に限定されず、その精神または主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。前記実施形態では、帯状部材1の係合部と被係合部との少なくとも一方を2段に連ねて設けた例を示したが、これに限られず、係合部と被係合部との少なくとも一方を3段以上に連ねて設けてもよい。また、帯状部材1にリブ21を設ける例を示したが、これに限らず、リブ21を備えない平坦状の平板部2により構成されてもよい。また、止水部材5は第2溝部41、溝状部45内に設けるだけでなく、例えば中央第1突条部34、凸状部35の先端部に熱融着または接着した構成であってもよい。さらに、更生管100を形成するための製管機は、前述の構成を有するものに限られず、仮接合工程、調整工程、および本接合工程を行い得る製管機であればどのような構成であってもよい。
【0095】
前記の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。