(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588812
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】機械式駐車装置とその動作制御方法
(51)【国際特許分類】
E04H 6/18 20060101AFI20191001BHJP
【FI】
E04H6/18 603
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-241414(P2015-241414)
(22)【出願日】2015年12月10日
(65)【公開番号】特開2017-106253(P2017-106253A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 宏之
(72)【発明者】
【氏名】尾城 創
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−173356(JP,A)
【文献】
特開平09−209596(JP,A)
【文献】
特開2000−073600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00 − 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数列・複数段の格納部を平面状に有し、一部の段が列方向に横行可能な横行段で、各列が段方向に昇降可能に構成され、自動車を搬器に入出庫させる入出庫部から、該搬器を横行及び昇降動作により前記格納部内に搬送、格納する機械式駐車装置であって、
前記列は、同一の該列における複数の搬器を一緒に昇降させる昇降駆動部を備え、
前記入出庫部は、前記搬器を該入出庫部から前記格納部に搬送する際に、該搬器に搭載している前記自動車の有無を検知する実車検知手段を備え、
前記昇降及び横行動作毎に、前記格納部それぞれの前記列の情報と該格納部における前記搬器の前記自動車の有無の情報を関連付けて記憶する記憶部と、
予め設定された、前記列における前記搬器に搭載されている前記自動車の数である実車数に対応する速度を記憶させた速度テーブルと、
前記昇降駆動部の動作速度を前記速度テーブルから設定する速度設定部と、
を有する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記記憶部に記憶された情報に基づいて、前記昇降駆動部で一緒に移動させる実車数を求め、該実車数に対応した前記昇降駆動部の動作速度を前記速度設定部で設定して前記昇降駆動部を動作させるように構成されている、ことを特徴とする機械式駐車装置。
【請求項2】
前記速度テーブルは、前記実車数が0のときに前記対応する速度が最も高速に設定され、前記実車数が一緒に昇降させる前記搬器の数と同一のときに最も低速に設定されている、請求項1に記載の機械式駐車装置。
【請求項3】
前記速度テーブルに記憶させられる前記速度の個数は、少なくとも一緒に昇降させる前記搬器の数より1つ多い個数に設定されている、請求項1又は2に記載の機械式駐車装置。
【請求項4】
前記速度設定部は、前記昇降動作を開始する前に、前記記憶部の情報から前記列の情報が該昇降動作させようとしている前記列と一致するものの前記自動車の有無の情報を読み取り、該有無の情報が有のとき前記実車数に1を加算する動作を繰り返すことにより該実車数を求め、前記速度テーブルからこの実車数と一致する速度を選択して設定するように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の機械式駐車装置。
【請求項5】
前記記憶部は、予め格納する前記自動車の重量が利用者の登録情報と関連付けて登録されており、
前記記憶部は、入庫の際、入庫操作を行った前記利用者の登録情報に基づいて、入庫した前記搬器の識別情報と関連付けて前記自動車の重量を記憶し、
前記速度設定部は、実車の前記搬器に格納された前記自動車の前記記憶部に登録されている重量に応じて前記速度テーブルの速度を選択するように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の機械式駐車装置。
【請求項6】
前記速度テーブルに記憶させられた前記速度は、対応する前記実車数と、実車の前記搬器の数に応じて設定された最大許容車重の比率との積で定められる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の機械式駐車装置。
【請求項7】
前記格納部は、複数列・複数段を平面状に有し、少なくとも1つの前記格納部が前記搬器のない空スペースで、他の前記格納部は前記自動車を格納する前記搬器を有しており、一部の段が横行可能な横行段で、各列が縦行可能に構成されており、前記段と列の少なくとも一方は同一駆動系で一緒に移動可能に構成され、
前記制御装置は、前記自動車を搭載している前記搬器を目的地に向けて移動させる際に、前記記憶部に記憶された情報に基づいて、前記同一駆動系で一緒に移動させる前記搬器の実車の数の少ない列又は段で前記空スペースを移動させる経路決定部を更に有している、請求項1〜6のいずれか1項に記載の機械式駐車装置。
【請求項8】
複数列・複数段の格納部を平面状に有し、一部の段が列方向に横行可能な横行段で、各列が段方向に昇降可能に構成され、自動車を搬器に入出庫させる入出庫部から、該搬器を横行及び昇降動作により前記格納部内に搬送、格納する機械式駐車装置の動作制御方法であって、
前記昇降及び横行動作毎に、前記格納部それぞれの前記列の情報と該格納部における前記搬器の前記自動車の有無の情報を関連付けて記憶し、
前記昇降駆動部で一緒に移動させる実車数を求め、該実車数に対応した前記昇降駆動部の動作速度を、予め設定された、前記列における前記搬器に搭載されている前記自動車の数である実車数に対応する速度を記憶させた速度テーブルから設定する、ことを特徴とする機械式駐車装置の動作制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の格納部に格納された自動車を載置した搬器を一緒に移動させる機械式駐車装置と、その動作制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の自動車を駐車させるための機械式駐車装置がマンション、ビジネス街等に設置され、スペースの有効利用が図られている。この機械式駐車装置としては、水平循環式、複数列多段式、平面パズル式等、種々の形式の駐車装置が設置条件等に応じて採用されている。例えば、複数列多段式の場合、左右方向の列数と上下方向の段数とを設定することで、限られた設置スペースに複数台の格納部を設けるとともに、1つまたは複数の格納部を、自動車を載置して搬送する搬器を配置しない空スペースとし、この空スペースに向けて搬器の横行、縦行を繰り返して循環させて、自動車を格納、搬出することができる。このような機械式駐車装置においては、入出庫時間の短縮が求められており、種々の方法が提案されている。
【0003】
例えば、この種の先行技術として、パレット上の車両の有無を判別する判別手段を設け、この判別手段の判別結果が空車状態のときには、実車状態のときよりも昇降速度を増加させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、他の先行技術として、車両が載置されたリフト搬送機を上昇させたときのモータのトルクや電流値で車両の重量を推定する重量推定手段を備え、その重量推定手段からの情報に基づいてリフト搬送機の加速度、減速度、最高速度を制御するものもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−73600号公報
【特許文献2】特開2014−156773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1では、パレット上の車両の有無をモータの負荷電流などで検出する必要があり、車両の有無を判別するために時間を要する場合がある。しかも、車両の有無のみで昇降速度を変化させているが、複数の自動車を一緒に移動させる場合については記載がない。
【0007】
また、上記特許文献2では、車重を推定するためにリフト搬送機を上昇させる必要があり、重量推定運転のために時間を要する。特に、昇降ストロークが短い場合、重量推定運転による時間の無駄が大きくなる。
【0008】
そこで、本発明は、自動車を載置した複数の搬器を空スペースに向けて横行、縦行させるときに、その動作の円滑性を向上させることができる機械式駐車装置とその動作制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る機械式駐車装置は、複数列・複数段の格納部を平面状に有し、一部の段が列方向に横行可能な横行段で、各列が段方向に昇降可能に構成され、自動車を搬器に入出庫させる入出庫部から、該搬器を横行及び昇降動作により前記格納部内に搬送、格納する機械式駐車装置であって、前記列は、同一の該列における複数の搬器を一緒に昇降させる昇降駆動部を備え、前記入出庫部は、前記搬器を該入出庫部から前記格納部に搬送する際に、該搬器に搭載している前記自動車の有無を検知する実車検知手段を備え、前記昇降及び横行動作毎に、前記格納部それぞれの前記列の情報と該格納部における前記搬器の前記自動車の有無の情報を関連付けて記憶する記憶部と、予め設定された、前記列における前記搬器に搭載されている前記自動車の数である実車数に対応する速度を記憶させた速度テーブルと、前記昇降駆動部の動作速度を前記速度テーブルから設定する速度設定部と、を有する制御装置を備え、前記制御装置は、前記記憶部に記憶された情報に基づいて、前記昇降駆動部で一緒に移動させる実車数を求め、該実車数に対応した前記昇降駆動部の動作速度を前記速度設定部で設定して前記昇降駆動部を動作させるように構成されている。この明細書及び特許請求の範囲の書類中の「搬器」とは、平面や曲げ板または櫛歯状の部材などで構成された、所謂パレットなどの、自動車を載置するための部品である。
【0010】
この構成により、複数の格納部に格納された自動車のうち複数の自動車を昇降駆動部で一緒に移動させるときに、その昇降駆動部で一緒に移動させる実車数が減れば、その実車数に対応して昇降駆動部の動作速度を増すように速度テーブルから速度を設定して動作させる。これにより、複数の自動車を一緒に移動させるときに、その移動させる自動車の数に対応して動作速度を適切な速度に制御して動作の円滑性を向上させることができる。
【0011】
また、前記速度テーブルは、前記実車数が0のときに前記対応する速度が最も高速に設定され、前記実車数が一緒に昇降させる前記搬器の数と同一のときに最も低速に設定されていてもよい。このように構成すれば、予め実車の数と関連付けた速度テーブルを作成し、昇降駆動部で一緒に移動させる実車の数が少ないほど速い速度に設定される速度テーブルに基づいて搬器を移動させるようにでき、制御の簡素化を図ることができる。
【0012】
また、前記速度テーブルに記憶させられる前記速度の個数は、少なくとも一緒に昇降させる前記搬器の数より1つ多い個数に設定されていてもよい。このように構成すれば、全てが実車でない場合に、より速い速度で駆動するようにできる。
【0013】
また、前記速度設定部は、前記昇降動作を開始する前に、前記記憶部の情報から前記列の情報が該昇降動作させようとしている前記列と一致するものの前記自動車の有無の情報を読み取り、該有無の情報が有のとき前記実車数に1を加算する動作を繰り返すことにより該実車数を求め、前記速度テーブルからこの実車数と一致する速度を選択して設定するように構成されていてもよい。このように構成すれば、適切に速度を選択して設定することができる。
【0014】
また、前記記憶部は、予め格納する前記自動車の重量が利用者の登録情報と関連付けて登録されており、前記記憶部は、入庫の際、入庫操作を行った前記利用者の登録情報に基づいて、入庫した前記搬器の識別情報と関連付けて前記自動車の重量を記憶し、前記速度設定部は、実車の前記搬器に格納された前記自動車の前記記憶部に登録されている重量に応じて前記速度テーブルの速度を選択するように構成されていてもよい。このように構成すれば、記憶部に登録された重量から一緒に移動させる自動車の全体重量を正確に把握し、その全体重量に応じて速度テーブルの適した速度を選択するようにできる。
【0015】
また、前記速度テーブルに記憶させられた前記速度は、対応する前記実車数と、実車の前記搬器の数に応じて設定された最大許容車重の比率との積で定められてもよい。この「最大許容車重の比率」は、実車の数が少ないほど比率を小さくした可変比率をいう。このように構成すれば、実際に搭載される車重に適した速度を設定するようにできる。
【0016】
また、前記格納部は、複数列・複数段を平面状に有し、少なくとも1つの前記格納部が前記搬器のない空スペースで、他の前記格納部は前記自動車を格納する前記搬器を有しており、一部の段が横行可能な横行段で、各列が縦行可能に構成されており、前記段と列の少なくとも一方は同一駆動系で一緒に移動可能に構成され、前記制御装置は、前記自動車を搭載している前記搬器を目的地に向けて移動させる際に、前記記憶部に記憶された情報に基づいて、前記同一駆動系で一緒に移動させる前記搬器の実車の数の少ない列又は段で前記空スペースを移動させる経路決定部を更に有していてもよい。「空スペースを移動」とは、搬器を移動することにより、その移動方向前方にあった空スペースが塞がり、移動方向後方に新たな空スペースができることをいう。このように構成すれば、同一駆動系で一緒に移動させる実車の数が少ない経路を選択して空スペースを移動させて、より速い速度で搬器を移動するように制御し、複数の自動車を一緒に動作させるときの動作の円滑性を向上させることができる。
【0017】
一方、本発明に係る機械式駐車装置の動作制御方法は、複数列・複数段の格納部を平面状に有し、一部の段が列方向に横行可能な横行段で、各列が段方向に昇降可能に構成され、自動車を搬器に入出庫させる入出庫部から、該搬器を横行及び昇降動作により前記格納部内に搬送、格納する機械式駐車装置の動作制御方法であって、前記昇降及び横行動作毎に、前記格納部それぞれの前記列の情報と該格納部における前記搬器の前記自動車の有無の情報を関連付けて記憶し、前記昇降駆動部で一緒に移動させる実車数を求め、該実車数に対応した前記昇降駆動部の動作速度を、予め設定された、前記列における前記搬器に搭載されている前記自動車の数である実車数に対応する速度を記憶させた速度テーブルから設定する。
【0018】
この構成により、複数の自動車を昇降駆動部で一緒に移動させるときに、その昇降駆動部で一緒に移動させる自動車の数に応じて、昇降駆動部の動作速度を速度テーブルから設定して動作させる。これにより、複数の自動車を一緒に移動させるときに、その自動車の数が少ないときは昇降駆動部のより高い動作速度に設定するようにして、動作速度を適切な速度に制御して動作の円滑性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の自動車を昇降駆動部で一緒に移動させるときに、実車の搬器の数に応じて駆動部の動作速度を増減させて動作させるので、移動させる自動車の数に対応して動作速度を速く制御して動作の円滑性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る機械式駐車装置を示す正面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す機械式駐車装置における自動車の配置を示すレイアウト図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すレイアウト図における自動車を実空状態で示す実空レイアウト図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す機械式駐車装置の制御装置に予め設定される速度テーブルの図面である。
【
図5】
図5は、
図1に示す機械式駐車装置に備えられた制御装置の記憶部における指示動作終了毎の記憶の概念を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す機械式駐車装置における制御装置の動作制御方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、上下方向に3段、左右方向に4列の格納部20を平面状に備えた複数段・複数列の縦循環方式となった機械式駐車装置1を例に説明する。この機械式駐車装置1では、搬器として自動車Vを載置するパレット10を移動させる。この実施形態では、縦循環方式であるため、「縦行」を「昇降」と表現して説明する。また、以下に説明する縦循環方式では、段数の基準となる段を最下段として段数を下から上へ数えており、下側から上側への移動を「上昇」、その逆で上側から下側への移動を「下降」という。なお、水平循環方式の場合は、段数を手前側から奥側へ数えるのであれば、「上昇」は奥側への移動であり、「下降」はその逆で手前側への移動をいう。さらに、この明細書及び特許請求の範囲の書類中における上下左右方向の概念は、
図1に示す機械式駐車装置1に向かった状態における上下左右方向の概念と一致するものとする。
【0022】
[機械式駐車装置の説明]
図1に示すように、この実施形態の機械式駐車装置1は、地上乗入型で、前後位置で鉛直に設けられた柱材2と、この柱材2を前後方向に連結する前後梁材3と、左右方向に連結する左右梁材(図示略)とを有する枠体4を備えている。この機械式駐車装置1は、最下段の1段目F1から、2段目F2、3段目F3となっている。また、左端列の1列目L1から、2列目L2、3列目L3、4列目L4となっている。従って、3段×4列であり、12箇所の格納部20を備えている。そして、1箇所の格納部20が空スペース30となっており、自動車Vを格納するパレット10は1つ少ない11個が配置されており、11台の自動車Vが格納可能となっている。この実施形態では、最下段である1段目F1の4列目L4が、入出庫部(目的地)40となっている。この入出庫部40には、例えば赤外線やレーザー光などがパレット10を横断するように設けられた光学センサや、画像によるものなどの、図示しない公知の実車検知手段が備えられている。この実車検知手段により、自動車Vの入庫の際には、入出庫部40に配置されているパレット10の識別情報に関連付けて、少なくとも実車であることが判定できる情報(例えば、パレット10を呼び出したユーザーの契約ID等)が記憶され、出庫の際には、このパレット10に関連付けられた情報が削除され、空車であると判定して記憶される。なお、入出庫部40は、他の格納部20の位置などにあってもよい。
【0023】
この実施形態の機械式駐車装置1は、図示する格納部20の最下段である1段目F1と最上段である4段目F4では、各パレット10が個別に矢印Wで示すように空スペース30に向けて横行可能となっている。これら1段目F1と4段目F4が、「横行段」である。この横行段における各パレットの横行は、横行駆動部(図示略)によって各パレット10を各列L1〜L4の間で1ピッチ毎(1列毎)に列方向に横行させることが可能となっている。また、格納部20の各列(1列目L1〜4列目L4)では、各列毎に設けられた昇降駆動部5(同一駆動系)によって段方向に昇降可能となっており、横行段である1段目F1と4段目F4との間で、同一の列の複数のパレット(搬器)10を一緒(同時)に矢印Hで示すように空スペース30に向けて昇降させて移動させることが可能となっている。
【0024】
上記各パレット10を昇降及び横行させる動作は、制御装置6によって制御される。制御装置6には、上記空スペース30の位置と、上記各格納部20に格納されているパレット10の位置が、ある位置(この実施形態では、後述するように、1段目F1の1列目L1の位置)を基準とし、段の番号と列の番号の組合せによる座標で記憶されている。
入出庫部40でパレット10に入出庫させる自動車Vは、この横行駆動部による横行動作と、昇降駆動部5による昇降動作により、格納部20内に搬送、格納される。
【0025】
[レイアウト情報]
図2は、上記機械式駐車装置1における自動車の配置を示すレイアウト図である。
図1に示す機械式駐車装置1における自動車Vの配置レイアウトを示している。この実施形態の場合、基準の座標を(F1,L1)としており、入出庫部40の座標は(F1,L4)となっている。アルファベットの「A」〜「G」は異なる自動車Vを示し、空白部分は空車の格納部20を示している。「無」は空スペース30を示している。
【0026】
また、制御装置6では、パレット10の次動作方向の決定に、パレット10の座標位置と、空スペース30の座標位置、入出庫部(目的地)40の座標位置情報を用いている。制御装置6では、動作制御の際に、空スペース30の座標位置に応じた動作制御を行っている。また、制御装置6は、1列横行、1段昇降などの指示動作終了毎に、パレット10、空スペース30、入出庫部40の座標位置関係の情報を検知して記憶している。
【0027】
この制御装置6により、呼び出すパレット10の動作方向に空スペース30を配置し、その空スペース30を利用してパレット10を入出庫部40の方向に移動させる動作を繰り返して、パレット10を入出庫部(目的地)40に配置するように動作制御させる。
【0028】
なお、制御装置6において記憶するそれぞれのパレット10と座標の関係情報は、それぞれのパレット10に個別のパレット番号を付し、そのパレット番号に対して段・列のデータを関連付けたり、段・列に対してパレット番号を関連付けて記憶することができる。例えば、前者の場合、それぞれの動作(開始または完了)毎に、動作したパレット番号に対応する段・列の番号を加算・減算すればよい。後者の場合、それぞれの動作毎に段・列に対するパレット番号のデータを入替えればよい。また、空スペース30も、仮想パレットとして特定の番号を付与したり、パレット番号を空白(又は0)にして空スペース30とみなしてもよい。さらに、この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「検知」は、それぞれの座標をセンサなどの公知の手段によって検出することや、記憶した座標を記憶手段から読み出すことを含む。
【0029】
図3は、上記
図2に示すレイアウト図における自動車を実空状態で示す実空レイアウト図である。上記「A」〜「G」の自動車Vが格納されている格納部20は「実」で示し、実車の格納部25となる。空車の格納部20は、「空」で示している。この明細書及び特許請求の範囲の書類中の「実空状態」は、自動車Vが有る「実車」又は自動車Vが無い「空車」のいずれかの状態をいう。空スペース30は、空白となる。例えば、3列目L3の場合、2台の自動車Vが格納されており、実車の格納部25の数は「2」となる。4列目L4の場合、実車の格納部25の数は「1」である。このように、制御装置6では、格納部20のレイアウトをXY座標に変換してそれぞれの位置が実車か空車かのレイアウト情報として実車状態を管理している。
【0030】
[速度テーブル]
図4は、上記機械式駐車装置1の制御装置に予め設定される速度テーブルの図面である。この実施形態では、3段の機械式駐車装置1を例にしているため、1列において空スペース30に向けて上昇させるパレット10は、1つ又は2つとなる。そのため、パレット10のみで自動車Vを格納していない場合(実車0)、1台の自動車Vを移動させる場合(実車1)、2台の自動車Vを移動させる場合(実車2)の3通りとなる。
【0031】
そして、1枚のパレット10に乗せることが可能な最大の実車重量(パレット式の場合、パレット自重を含む)をあらかじめ設定しておき、その実車重量×実車数で総重量を計算し、計算した総重量を昇降させることができる最大の速度を予め計算する。この速度を計算して設定する速度設定部は制御装置6に備えられており、この例の場合、実車数0〜2に対応して、昇降駆動部5による速度がv0〜v3の3通りとなった速度テーブル7を作成している。速度v0に対し、速度v1、速度v2は徐々に遅くなっている。つまり、実車0の場合は昇降駆動部5を最も高速の速度v0で駆動され、実車2の場合は最も低速の速度v2で駆動される。すなわち、速度テーブル7に記憶させられる速度の個数を、一緒に昇降させるパレット10の数(この例では「2」)より1つ多い個数(この例では「3」)とすることで、全てが実車でない場合には、より速い速度で駆動するようにしている。
【0032】
また、実車重量は、最大許容車重として計算することができる。さらに、実車重量は、最大許容車重の比率掛けとし、実車数に応じて比率を可変とすることができる。例えば、実車数が1台の場合は100%、2台の場合は85%、3台の場合は70%、と台数の増加に伴って比率を小さくすることができる。この場合、実車数毎に上記計算を行い、それぞれに対する速度をテーブル分けしておく。これにより、通常、最大許容車重に近い大型車両のみではなく普通車や軽自動車などを混載させるため、実車重量を実際の自動車の重量に近づけることができる。
【0033】
さらに、機械式駐車装置1が契約者のみが利用する装置の場合、予め利用者の自動車Vの重量を、利用者の登録情報と関連付けて登録しておくことができる。このようにすれば、利用者が入庫操作を行った際に、利用者の登録情報と予め登録された自動車Vの重量と格納するパレット10の識別情報と関連付けて記憶し、速度設定部がそのパレット10に格納されている自動車Vの重量に応じて速度テーブル7の適した速度を選択するようにでき、一緒に移動させる自動車の重量をより正確に管理することができる。
【0034】
このような速度テーブルに応じた昇降駆動部5の速度制御は、昇降駆動部5(駆動モータ)をインバータ制御とし、このインバータの周波数を変更することで容易に変更することができる。
【0035】
[レイアウト情報の更新]
図5は、
図1に示す機械式駐車装置に備えられた制御装置の記憶部における指示動作終了毎の記憶の概念を示すブロック図である。制御装置6の記憶部では、各格納部20の自動車Vを移動させるために1列横行、1段昇降などの機械動作(S1)をした場合、その動作毎に変化するレイアウト情報が更新(S2)される。これにより、動作後に各自動車Vがどの座標に位置しているかの情報が指示動作終了毎に更新されて記憶される。
【0036】
[動作制御方法]
図6は、
図1に示す機械式駐車装置における制御装置の動作制御方法を示すブロック図である。この図に基づいて、上記機械式駐車装置1の動作制御を説明する。このブロック図では、
図2に示す1段目F1の3列目L3に格納されている「E」の自動車Vを搭載したパレット10(指定パレット)を上昇させる場合を例に説明する。
【0037】
まず、3列目L3に対して上昇の列昇降指令(S10)が出される。これにより、昇降動作をさせる前に昇降させる列の実車数が制御装置6に記憶されているレイアウト情報から判別(実車数検知)される(S11)。この時、速度設定部は、昇降動作を開始する前に、記憶部の情報から座標位置が3列目L3と一致するものの自動車Vの有無の情報を読み取る。有無の情報が有のときは、実車数に1を加算する動作を繰り返すことにより実車数を求め、速度テーブルからこの実車数と一致する速度を選択して設定する。この例では、上昇させる自動車Vが2台と判別される。
【0038】
そして、判別した台数を速度テーブル(
図4)と照らし合せ、実車数2台に応じた速度「v2」が選択される(S12)。最も遅い速度である。そして、その速度v2で3列目L3に配置されている2台のパレット10が昇降駆動部5によって上昇(昇降)させられる(S13)。
【0039】
なお、設定した実車重量で運転した際、昇降駆動部5の電流値が所定の闇値を超えた時点で、速度テーブルを一つ上げるようにしてもよい。これにより、上記したように実車重量を最大許容車重の比率掛けとして設定した場合、2台が共に最大許容重量に近い場合などに生じる昇降駆動部5の負荷を検知して自動的に速度を遅くできる。
【0040】
このような制御は、下降時も同様にできる。また、横行時も昇降時のように一緒に複数枚のパレットを同一駆動系で動作させる場合には同様である。このように、上記機械式駐車装置1によれば、自動車Vを上昇させる場合も下降させる場合も、その動作開始時に予め速度テーブル7から速度を選択し、円滑な動作を行うことができる。
【0041】
また、制御装置6に、格納部20に格納された自動車Vを移動させるときに、各格納部20に関連付けられた実空情報(パレット番号を介在させる場合を含む)から、各列に含まれる格納部20の実車台数をカウントして最軽量列で空スペース30を移動させる昇降経路(縦行経路)を選択するような経路決定部を備えさせてもよい。具体的には、予め格納部20における自動車Vの実空状態について座標管理し、どの座標に自動車Vが格納されているのかを1列横行、1段昇降などの指示動作終了毎に記憶(管理)し、その情報を用いることで、昇降又は横行させる総重量が軽い列又は段を空スペース30の移動経路として動作制御するようにできる。
【0042】
このようにすれば、複数の自動車Vを昇降駆動部5で一緒に移動させるときに、実車の数が少ない列で速く移動するように制御して、複数の車を一緒に動作させるときの動作の円滑性を更に向上させることができる。従って、自動車を移動させるための動力の低減と、動作速度の向上を図ることができる。
【0043】
[総括]
以上のように、上記機械式駐車装置1によれば、複数の格納部20に格納した自動車Vのうち複数の自動車Vを昇降駆動部5で一緒に移動させるときに、記憶部に記憶された情報に基づいて、その昇降駆動部5で一緒に移動させる自動車Vの数によって動作速度を適切な速度に制御して動作の円滑性を向上させることが可能となる。
【0044】
しかも、自動車Vのレイアウト情報から移動重量を範囲で決めることができるため、機械式駐車装置1の動きから動作後の次のレイアウトを予測し、測定時間無しで総重量を計算して、次の速度を選択することも、新たに装置を設置することなく可能となる。
【0045】
その上、特に、循環方式の機械式駐車装置1のように、格納した自動車Vが複雑なパズル動作をする機械式駐車装置1においては、パレット10を呼び出すのではなく、個々の自動車Vを呼び出すため、制御装置6において実車の格納部25のレイアウト情報を把握している。そのため、そのレイアウト情報を利用し、昇降させる列の実車の数に応じた適切な速度で昇降駆動部5を動作制御できる。従って、機械式駐車装置1に付加する構成のコストを抑えつつ、円滑性の向上を図ることが可能となる。そして、円滑性を向上させることで、自動車Vの入出庫に要する待ち時間を短くすることが可能となる。
【0046】
しかも、上記した機械式駐車装置1の場合、複数の格納部20における自動車Vの有無情報を1列横行、1段昇降などの指示動作終了毎に管理しているため、その管理情報に基づいて動作重量を得ることができる。そのため、新たなセンサなどを必要とすることなく、動作荷重が小さく、動作速度を速くできる空スペース30の移動経路を適切に選択することが可能である。
【0047】
なお、上記した機械式駐車装置1以外の場合も、予め入出庫時にパレット10上の自動車Vの有無を検知させてレイアウト情報として管理し、動作毎にレイアウト情報を更新して管理させることで、動作させる列の実車数を容易に把握することができる。
【0048】
また、上記した実施形態では、4列、3段の縦型循環方式の機械式駐車装置1を例にしたが、平面状に格納部を備えた機械式駐車装置の他、機械式格納庫であれば適用できる。また、2列、2段以上を有していれば効果を発揮することができ、特に3段以上であれば、実車の格納部25の数によって昇降させる重量差が大きくなり、特に効果を発揮することができるが、列数、段数は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0049】
さらに、上記した昇降駆動部5に代えて、横行駆動部が同一駆動系で複数の搬器を一緒に移動させるものに適用することができる。
【0050】
また、上記した実施形態は循環方式の機械式駐車装置を一例として示したが、複数台を一緒に昇降させる単純昇降式等にも適用可能であり、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の構成を変更してもよく、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
1 機械式駐車装置
4 枠体
5 昇降駆動部
6 制御装置(記憶部、速度設定部、経路決定部)
7 速度テーブル
10 パレット
20 格納部
25 実車の格納部
30 空スペース
40 入出庫部(目的地)
v0、v1、v2 速度