(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588883
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】太陽電池パネル取付架台の支持金具
(51)【国際特許分類】
E04D 13/18 20180101AFI20191001BHJP
H02S 20/23 20140101ALI20191001BHJP
【FI】
E04D13/18ETD
H02S20/23 A
H02S20/23 B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-233972(P2016-233972)
(22)【出願日】2016年12月1日
(65)【公開番号】特開2018-91009(P2018-91009A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2018年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】397052000
【氏名又は名称】株式会社栄信
(74)【代理人】
【識別番号】100073287
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 聞一
(72)【発明者】
【氏名】早野 宏一
【審査官】
兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−085011(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0161462(US,A1)
【文献】
特開2015−158101(JP,A)
【文献】
特開2015−221987(JP,A)
【文献】
特開2012−117246(JP,A)
【文献】
特開2012−007436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/00,13/18
H02S 20/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横葺屋根のハゼ部の下側に先端側が差し込み可能な基底部と、該基底部の上方に対向配置した上面が平坦な架台載置部と、該架台載置部に上下方向に貫通形成した螺子孔と、該螺子孔に昇降自在に貫通螺挿した螺子棒と、該螺子棒の下端に空転自在に取付けた前記ハゼ部の上面を押圧可能な押さえ部とから成り、該押さえ部は、両端に開設された開口部から前記螺子棒の下端に設けた頭部を挿入可能な断面略C形のリップ溝部を設けて成り、該リップ溝部の一対のリップ片間に形成されるスリットは前記頭部より幅小に設定され、前記スリットと各開口部を閉塞すると共に、螺子棒を挿通するコ字板のカバーで被冠したことを特徴とする太陽電池パネル取付架台の支持金具。
【請求項2】
押さえ部のリップ溝部は、その内底を球欠状に形成した頭部を遊嵌する断面円弧状に形成したことを特徴とする請求項1記載の太陽電池パネル取付架台の支持金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横葺屋根の上に太陽電池パネルを取付ける架台を設置するための太陽電池パネル取付架台の支持金具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、横葺屋根のハゼ部の上下を挟み込むクランプ式の支持金具が開示されている。
【0003】
この支持金具は、上記ハゼ部の下側に差し込まれる爪片を底部に突設し、上端面を第一架台載置面と成すと共に、該第一架台載置面より所定高さ下方に、抜け落ちが阻止されたボルトの螺子部が上方貫通突出された段部を隣接配置した主台座と、前記ハゼ部の上面を押さえ込む鉤爪片を垂設し、前記段部に載置可能にして、前記螺子部を貫通すると共に、該螺子部に螺着するナットの挿入孔を、第二架台載置面と成した上面の中央に開設した角パイプ状の従台座とから構成されている。
【0004】
そして、ハゼ部を主台座の爪片と従台座の鉤爪片間に配置し、ナットを従台座の中空部内に配置させるまで締め付けることにより、主台座と従台座の爪片と鉤爪片でハゼ部を強固に挟み込むと共に、第一、第二架台載置面を同一平面上に一致させて、そこに太陽電池パネルが取付けられる架台を載置しており、この支持金具では、爪片と鉤爪片とでハゼ部を挟持して横葺屋根に固定するため、該屋根に穴を開けることがないから、雨漏りの発生する恐れがなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−44455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記構成の支持金具は、架台の載置面が第一架台載置面と第二架台載置面に二分割されており、屋根への固定の際に、ナットを締め付けても、必ずしも第一架台載置面に、第二架台載置面が合致して、両架台載置面を同一平面上に配置できるとは限らず、再度ナットを締め直したり、ハゼ部に対する支持金具の取付け位置を変更したりするなどの手間を有し、作業効率が悪いといった課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明の太陽電池パネル取付架台の支持金具は、横葺屋根のハゼ部の下側に先端側が差し込み可能な基底部と、該基底部の上方に対向配置した上面が平坦な架台載置部と、該架台載置部に上下方向に貫通形成した螺子孔と、該螺子孔に昇降自在に貫通螺挿した螺子棒と、該螺子棒の下端に空転自在に取付けた前記ハゼ部の上面を押圧可能な押さえ部とから成ることを特徴とする。
又、押さえ部は、両端に開設された開口部から上記螺子棒の下端に設けた頭部を挿入可能な断面略C形のリップ溝部を設けて成り、該リップ溝部の一対のリップ片間に形成されるスリットは上記頭部より幅小に設定され、前記スリットと各開口部を閉塞すると共に、螺子棒を挿通するコ字板状のカバーで被冠したことを特徴とする。
そして、押さえ部のリップ溝部は、その内底を球欠状に形成した頭部を遊嵌する断面円弧状に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
要するに本発明は、横葺屋根のハゼ部の下側に先端側が差し込み可能な基底部と、該基底部の上方に対向配置した上面が平坦な架台載置部と、該架台載置部に上下方向に貫通形成した螺子孔と、該螺子孔に昇降自在に貫通螺挿した螺子棒と、該螺子棒の下端に空転自在に取付けた前記ハゼ部の上面を押圧可能な押さえ部とから成るので、基底部を横葺屋根のハゼ部の下側に差し込み、螺子棒を下方へ螺進させることにより、押さえ部を降下させるだけで、該押さえ部で基底部上のハゼ部上面を押圧し、基底部と押さえ部間にハゼ部を簡単にして強固に挟持できる。
しかも、架台を載置可能な架台載置部の上面は常に一様な平坦面を成しているから、架台を安定的に載置でき、従来の様なボルトの締め直しや支持金具の取付け位置を変更する手間が一切なく、従来品に比しその取付け作業を効率的に行える。
【0009】
押さえ部は、両端に開設された開口部から上記螺子棒の下端に設けた頭部を挿入可能な断面略C形のリップ溝部を設けて成るから螺子棒に簡単に連結でき、又リップ溝部の一対のリップ片間に形成されるスリットは上記頭部より幅小に設定されるので、頭部はスリットを通してリップ溝部内に抜止め保持されると共に、押さえ部は、前記スリットと各開口部を閉塞すると共に、螺子棒を挿通するコ字板状のカバーで被冠したので、螺子棒に対してズレ動いたり、螺子棒から抜け落ちることがなく、屋根上での作業中の部品落下による危険を回避でき安全に作業できる。
【0010】
押さえ部のリップ溝部は、その内底を球欠状に形成した頭部を遊嵌する断面円弧状に形成したので、押さえ部はハゼ部上面の傾斜に対応可能に自在に傾倒させられると共に、押さえ部が螺子棒の下端に空転自在に取付けられて変向可能なことも相俟って、常に面でハゼ部上面を押さえ付けられ、基底部との挟持状態を確実にして安定的に保持できる等その実用的効果甚だ大である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】基底部をハゼ部の下側に差し込んだ状態を示す横葺屋根の断面図である。
【
図8】設置前の架台と支持金具設置後の横葺屋根の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明の実施の一形態例を図面に基づいて説明する。
本発明に係る太陽電池パネル取付け架台の支持金具1は、横葺屋根R(以下、屋根Rと称する。)の継ぎ目に設けたハゼ部R1に挟着して成るものにして台座2と、該台座2から昇降自在に設けた可動体3とから主に構成される。
【0013】
台座2は各部の奥行き(屋根R設置状態で桁行方向Xに対応)Dを同長と成した押し出し鍛造品から成り、屋根Rのハゼ部R1の下側に先端側(図において右側)が差し込み可能な平面視矩形状の基底部4を設け、該基底部4の後方(図において左方)寄り部位から下端側が直立し途中で前傾した支柱5を設け、該支柱5の前傾端部に上面が平坦な平面視矩形状の架台載置部6を前方へ突設し、該架台載置部6を基底部4の上方に対向配置している。
【0014】
架台載置部6は、その中央に螺子孔7を上下方向に貫通形成しており、該螺子孔7は、架台載置部6の中央に設けた螺子棒挿通孔6aと、該螺子棒挿通孔6aに連通するナット8の雌ねじ部8aとから成り、ナット8は架台載置部6の下部に設けた断面略C形のリップ溝9内に配置される。
【0015】
ナット8はリップ溝9の奥行きD方向の両端に開設された開口部9aの一方からスライド挿入され、その雌ねじ部8aを螺子棒挿通孔6aに連通する様にリップ溝9内に配置される。
リップ溝9は、架台載置部6の下方に前後に対向配置される一対のリップ片9b間に形成されるスリット9cの幅を後述する螺子棒10の外径より若干広く設定している。
【0016】
可動体3は、螺子孔7に昇降自在に貫通螺挿する螺子棒10と、該螺子棒10の下端に空転自在に取付けたハゼ部R1の上面を押圧可能な押さえ部11とから構成されている。
【0017】
螺子棒10は、その頭部10aを球欠状に形成した丸頭ボルトの螺子部であって、その先端面(図において上端面)には、螺子棒10を回転させるために工具の先端に設けたネジ回しや棒スパナを差し込む図示例のすりわり、又は図示しない十字穴や六角穴などの凹部10bを刻設している。
【0018】
押さえ部11は、台座2と同様に、各部の奥行きDを同長と成した押し出し鍛造品から成り、ハゼ部R1上面を圧接する様に底部が平坦に形成された圧接面部12を設けると共に、該圧接面部12上に奥行きD方向の両端に開設された開口部13aの一方から螺子棒10の下端に設けた頭部10aをスライド挿入可能な断面略C形のリップ溝部13を設けている。
【0019】
又、リップ溝部13は、その内底を頭部10aを遊嵌する断面円弧状に形成され、上部には一条のスリット13bを介して一対のリップ片13cを対向配置しており、スリット13bの幅は頭部10aの外径より幅小で螺子棒10の外径より若干幅広に設定される。
【0020】
これにより、頭部10aはスリット13bを通してリップ溝部13内に抜止め保持され、押さえ部11は螺子棒10に対し空転自在に取付けられ、頭部10aを中心に回転及び上下に屈曲自在と成している。
【0021】
又、押さえ部11には、螺子棒10との分離防止用のコ字板のカバー14を被冠している。
このカバー14は、薄肉帯状鋼板をコ字状に屈曲形成したものであり、その各面でスリット13bと各開口部13aを閉塞すると共に、スリット閉塞面部14aの中央に螺子棒10を挿通する透孔15を穿設している。
尚、カバー14は、
図1、2、8以外では説明の都合上、二点鎖線で示している。
【0022】
上記の様に構成された支持金具1にあっては、
図4に示す様に、屋根R上で基底部4の先端をハゼ部R1に指向させ、基底部4の先端側をハゼ部R1下側に差し込む(
図5参照)。
【0023】
次いで、工具を用いて螺子棒10を回して押さえ部11を降下させ、その底部の圧接面部12でハゼ部R1上面を押圧する(
図6参照)。
【0024】
押さえ部11は螺子棒10に対し自在に屈曲するため、圧接面部12はハゼ部R1の傾斜に対応する様に面接触してハゼ部R1上面を圧接でき、支持金具1はハゼ部R1を上下の基底部4と押さえ部11で強固に挟持して屋根Rに固定でき、この様にして支持金具1は屋根R上の縦横に適宜間隔を以て点在される。
【0025】
図7、8に示す様に、太陽電池パネル取付架台を構成する縦杆材16は、架台載置部6上に底部16aが載置される凹溝状に形成され、その長手方向(流れ方向Yに同じ)に長い底部16aの軸線上には所定間隔置きに架台載置部6より上方突出する螺子棒10を挿通する長穴16bを設けている。
【0026】
そして、縦杆材16を屋根Rの流れ方向Yに並ぶ架台載置部6の各列群上に配置する。
即ち、縦杆材16の底部16aを架台載置部6上に載置すると共に、該架台載置部6上より上方突出した螺子棒10を底部16aの長穴16bに挿通し、該長穴16bより上方突出した螺子棒10にワッシャ17とバネ座金18を挿通してナット19を螺着する。
【0027】
この様に、屋根R上に固定した支持金具1を介して複数の縦杆材16を屋根Rの桁行方向Xで平行に配置することにより図示しない太陽電池パネルを設置する架台(縦杆材16)が構成される。
【符号の説明】
【0028】
4 基底部
6 架台載置部
7 螺子孔
10 螺子棒
10a 頭部
11 押さえ部
13 リップ溝部
13a 開口部
13b スリット
13c リップ片
14 カバー
R 横葺屋根
R1 ハゼ部