特許第6588897号(P6588897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6588897腹部の電気生理学的信号を検出するためのパッチ、読出装置、システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588897
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】腹部の電気生理学的信号を検出するためのパッチ、読出装置、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0408 20060101AFI20191001BHJP
   A61B 5/0492 20060101ALI20191001BHJP
   A61B 5/0478 20060101ALI20191001BHJP
   A61B 5/04 20060101ALI20191001BHJP
   A61B 5/0428 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   A61B5/04 300E
   A61B5/04 300J
   A61B5/04ZDM
   A61B5/04 310B
【請求項の数】20
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-524442(P2016-524442)
(86)(22)【出願日】2014年10月17日
(65)【公表番号】特表2016-537068(P2016-537068A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】GB2014053120
(87)【国際公開番号】WO2015056027
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2017年10月17日
(31)【優先権主張番号】1318413.0
(32)【優先日】2013年10月17日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512005612
【氏名又は名称】モニカ ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100115462
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100094651
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 晃
(72)【発明者】
【氏名】ヘイズ−ジル,バリー
(72)【発明者】
【氏名】ピエリ,ジャン フランソワ
【審査官】 門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−301358(JP,A)
【文献】 特表2011−514826(JP,A)
【文献】 特表2011−516110(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0177168(US,A1)
【文献】 実開平02−068803(JP,U)
【文献】 特開平06−038938(JP,A)
【文献】 特開2013−066526(JP,A)
【文献】 特開昭63−314473(JP,A)
【文献】 特表2012−519022(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/016151(WO,A1)
【文献】 特表2003−520094(JP,A)
【文献】 GRISS,PROCEEDINGS IEEE THIRTEENTH ANNUAL INTERNATIONAL CONFERENCE ON MICRO ELECTRO MECHANICAL SYSTEMS,2000年 1月23日,P323-328
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/04 − 5/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母体及び/又は胎児の電気生理学的信号を腹部で検出するための多電極のパッチであって、
前記パッチが、
複数の電極を相互接続する可撓性基板と、
母体及び/又は胎児の電気生理学的信号を前記電極から検出するための電子的な読出装置と取り外し可能に係合するためのモジュール・ユニットと、
前記パッチに関連付けられた認証コードを、前記読出装置に提供するセキュリティ装置であって、前記セキュリティ装置を含まないパッチ、又は、間違った前記認証コードを提供するパッチとともに前記読出装置を使用するのを防止するセキュリティ装置と、
を備え、
前記モジュール・ユニットが、
前記読出装置の筐体と取り外し可能に機械的に係合するための機械モジュール・ユニットと、
前記電極から前記読出装置に電気的に接続するための電気モジュール・ユニットと
を備え、
前記パッチの前記読出装置との係合が、前記機械モジュール・ユニット及び前記電気モジュール・ユニットの両方の係合を備える、
パッチ。
【請求項2】
請求項1のパッチにおいて、
前記機械モジュール・ユニットが、磁石又は強磁性材料を備える、
パッチ。
【請求項3】
請求項1又は2のパッチにおいて、
前記機械モジュール・ユニットが、前記筐体の少なくとも一部を受け台のなかへ摺動させることにより前記筐体と機械的に係合する受け台を備える、
パッチ。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかのパッチにおいて、
前記可撓性基板が、弓形の、蛇行した又は波形の部分を有する可撓性下部構造を備え、
前記電極が、表面に追従可能であり、少なくともいくつかの前記電極の前記表面上における互いに対する相対位置が、前記電極の移動及び前記可撓性下部構造の変形により調整できる、
パッチ。
【請求項5】
請求項4に記載のパッチにおいて、
前記電極が、共通電極と、複数の検知電極と、電圧を印加するための駆動電極とを備え、
前記検知電極が、前記共通電極から及び互いに離間している、
パッチ。
【請求項6】
請求項5のパッチにおいて、
前記可撓性下部構造が、前記共通電極と前記検知電極との間に配置され、前記表面上における前記共通電極の位置を前記検知電極に対して調整でき、
前記検知電極が、円弧に沿って配置され、第1の検知電極が前記円弧の一端にあり、第3の検知電極が前記円弧の他端にあり、第2の検知電極が前記円弧上で前記第1及び第3の検知電極の間にあり、
第1の可撓性下部構造が、前記第1及び第2の検知電極の間の前記表面に沿った距離が変化し得るよう配列され、第2の可撓性下部構造が、前記第3及び第2の検知電極の間の前記表面に沿った距離が変化し得るよう配列されている、
パッチ。
【請求項7】
請求項4乃至6いずれかのパッチにおいて、
前記可撓性基板が、更に、臍と位置合わせするための基準特徴部を備え、前記可撓性下部構造により、前記基準特徴部から少なくとも1つの電極までの前記表面に沿った距離を調整することができる、
パッチ。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれかのパッチにおいて、
前記可撓性基板が、複数の導電層及び絶縁層を備え、
前記複数の導電層が、
電気信号を前記電極から伝達するための信号層と、
前記信号層を電磁干渉から遮蔽するためのシールド層と
を備え、
前記シールド層が、前記絶縁層により前記信号層から分離されている、パッチ。
【請求項9】
請求項8のパッチにおいて、
前記シールド層が、前記信号層の第1の側に隣接して配置され、
前記複数の導電層が、前記信号層の第2の側に隣接して配置された更なるシールド層を備え、
前記更なるシールド層が、更なる絶縁層により前記信号層から分離されており、
外部絶縁層が、前記更なるシールド層の外へ向いた側に隣接して配置されている、
パッチ。
【請求項10】
請求項1乃至いずれかのパッチとともに使用して、前記パッチの前記電極からの少なくとも一つの信号を増幅してフィルタするための電子的な読出装置であって、
前記読出装置が、
電力を貯蔵して前記装置に供給するための電源と、
前記パッチの前記機械モジュール・ユニットと機械的に係合するための機械モジュール・ユニットを有する筐体と、
前記パッチの前記電気モジュール・ユニットと電気的に係合するための電気モジュール・ユニットと、
前記読出装置が、前記パッチのセキュリティ装置から適切な認証を受信しない限り、前記読出装置がパッチとともに機能するのを防止するために配されたセキュリティ装置を備える、
を備える、読出装置。
【請求項11】
請求項10の読出装置において、
前記読出装置の前記電気モジュール・ユニットが、弾性変形可能な要素上に装着された少なくとも1つの接点を備える、
読出装置。
【請求項12】
請求項10又は11の読出装置において、
前記読出装置が、前記信号から得た情報を送信するための無線送信機を備え、
前記読出装置が、前記無線送信機を介して、出力を送信するよう動作可能であり、前記出力が、胎児心拍数、胎児ECG、母体心拍数、母体ECG及び子宮活動のうち少なくとも1つを備える、読出装置。
【請求項13】
請求項10乃至12いずれかの読出装置において、
前記読出装置が、受信機におけるビット誤り率及び前記受信機における信号強度のうち少なくとも1つに基づいて、前記無線送信機の出力を制御するよう構成されている、
読出装置。
【請求項14】
請求項10乃至13いずれかの読出装置において、
前記読出装置が、更に、母体の移動、母体の呼吸、母体収縮及び胎動のうち少なくとも1つを検出するよう構成されている慣性センサを備える、
読出装置。
【請求項15】
請求項10の読出装置において、
前記セキュリティ装置が、特定の患者に関連付けられたパッチ認証コードを記憶するよう動作可能であり、前記読出装置が、特定の患者に関連付けられた認証コードを有するパッチとともにのみ動作可能となる、
読出装置。
【請求項16】
請求項10乃至15いずれかの読出装置と、該読出装置から情報を受信するための受信端末とを含むシステムにおいて、
前記受信端末が、
胎児心拍数、胎児ECG、母体心拍数、母体ECG及び子宮活動のうち少なくとも1つを表示するための表示部と、
前記読出装置の前記筐体を受け入れるためのドック領域とを備え、
前記ドック領域が、前記読出装置の前記電源を充電するための充電器を備える、
受信端末。
【請求項17】
腹部の電気生理学的検出のためのシステムであって、
前記システムが、
請求項1乃至9いずれかのパッチと、
読出装置と
を備え、
防水シールが、前記モジュール・ユニットと前記読出装置との間の電気的接続のために設けられている、
システム。
【請求項18】
請求項17のシステムにおいて、
圧縮シールが設けられ、前記読出装置を前記モジュール・ユニットに機械的に係合することにより、前記シールが係合方向に圧縮される、
システム。
【請求項19】
腹部の電気生理学的信号を判定する方法であって、
請求項1乃至9いずれかのパッチを使用し、
前記パッチを妊娠者である対象者の腹部に付着し、
読出装置を使用して、前記パッチの前記電極を介して電気生理学的信号を検出する、
ステップを含み、
前記パッチが、前記パッチを着用者上に位置決めするための基準特徴部を備え、
接着領域が、前記基準特徴部に又は隣接して設けられており、
前記パッチを前記対象者の前記腹部に付着する際のステップとして、
前記基準特徴部を前記腹部に固定し、
続いて、前記パッチの前記電極を、それぞれ、順番に前記腹部に付着する、
ステップを含んでおり、
前記パッチの各電極を前記腹部に付着する際のステップとして、
前記電極を皮膚に付着し、
前記電極と前記皮膚との間の電気的接続のインピーダンスを検査し、
前記インピーダンスが所定値より高い場合に、
前記皮膚に付着され得る前記パッチの前記基準特徴部又は任意の他の電極を引き離すことなしに、前記電極を取り外し、
前記皮膚に下準備をして、前記インピーダンスを低減し、
前記電極を再び付着する、
ステップを含む、方法。
【請求項20】
請求項19の方法において、
導電媒体を、前記対象者の皮膚と少なくとも1つの前記電極との間に設け、
前記導電媒体が、電解質を少なくとも9重量%備える、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹部の電気生理学的信号を検出するための方法及び装置に関する。より具体的には、本発明は、母体心電図、胎児心電図、母体心拍数、胎児心拍数、及び子宮活動のうちの少なくとも一つを検出するための装置又は方法、好ましくは、上記のうち少なくとも二つ若しくは三つ又はすべてを検出するための方法又は装置に関する。
【背景技術】
【0002】
胎児に物理的に接触せず胎児心電図(fECG)を検出するために使用することができる医療装置が知られている。このような装置は、電気生理学的信号を検出するために母親の皮膚の上に配置される電極を使用する。母体心電図(mECG)もまた、その電極によって検出される傾向があり、mECGからfECGを分離することが困難であり得る。電極によって検出された電気信号は、加工して、胎児心拍数を(fECGから)、母体心拍数を(mECGから)判定することができる。母体収縮は、しばしば子宮活動(UA)と呼ばれ、子宮筋電図検査(子宮収縮による電位の変化)によって判定することができる。
【0003】
国際公開第2009/150440号(Monica Healthcare)は、胎児心拍数の監視に使用するための多電極のパッチを開示している。このパッチは、妊娠している対象者の皮膚に取り付け可能な可撓性基板を備える。三つの検知電極が、この可撓性下部構造の上に位置付けられ、妊娠している対象者の子宮底によって形成される円弧と実質的に同じ長さの円弧を近似する。接続口が設けられ、これにより、各検知電極を、電気信号を電極から受信して胎児心拍数をfECGから判定する胎児心拍数モニタに接続できる。検出されたfECG信号を増幅しフィルタするよう構成された集積回路を含む多電極のパッチが開示されている。
【0004】
欧州特許第1854403号(Meyer)は、fECG及びmECG信号を監視するための放射状電極アセンブリを開示している。このアセンブリは、中心焦点を画定する可撓性基板と、可撓性基板の周囲の上に、焦点から実質的に等しい一定の半径距離で配置された複数の電極とを備える。
【0005】
先行技術のなかで開示されたfECG検出のためのパッチは有望であるが、改善の余地がかなり残っている。
【0006】
パッチの配列を固定すると、電極の間の間隔を正確に固定できる。このように電極間隔を固定すると、測定の再現性のために有利である。しかし、電極配置の柔軟度が制限される。最適な電極の位置は、例えば、胎児及び/又は母親の大きさの関数として変化し得る。胎児の大きさは、明らかに、妊娠期間の関数として変化する。更に、パッチ配列の電極の間の距離を固定すると、リード線によって信号処理ユニットに接続された個々の電極ができるように(例えば、運動又は呼吸から生じる)対象者の動きを許容できない。
【0007】
電極から離れている読出回路を使用するfECGのための配列において、電極を読出回路に電気的に接続する電線又はリード線もまた、問題を生じ得る。このような問題の一つは、リード線からのノイズに関するものである。このようなノイズは、電磁干渉、ケーブルのマイクロフォニック現象及び摩擦帯電効果を含む多くの発生源から生じ得る。更に、リード線は一般に再利用され、交叉感染の問題の可能性を引き起こす。
【0008】
集積電子機器を有するfECGパッチは、ケーブルに関連する問題のいくつかに対処できるが、集積電子機器を含むfECGパッチに伴う更なる問題は、各パッチのコストを大幅に増加させることである。これにより、日常的な監視用途に使うには高価になり過ぎ、又は、読出器の電子機器の複雑化が制限されて、性能が犠牲になり得る。パッチは、1回使用の使い捨てパッチであることが多い。
【0009】
高品質な腹部の電気生理学的信号を得ることに伴うもう一つの問題は、対象者の皮膚に良好に電気的に接触させることである。これは、現在、抵抗性の高い角質層を擦り取って、下にある抵抗性の低い皮膚層に接触させることにより達成されている。このような皮膚の下準備は、対象者にとって不快であり得るし、装置の使用者の技術と時間を要する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、以上言及した問題のうち少なくともいくつかを改善又は克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一の態様によれば、腹部の電気生理学的検出のための多電極のパッチが提供される。パッチは、複数の電極を相互接続する可撓性基板と、可撓性下部構造とを備える。電極は、移動可能であり又は表面に追従可能であって、電極が移動しかつ可撓性下部構造が変形することにより、電極のうち少なくともいくつかの表面上における互いに対する相対位置が調整できる。
【0012】
各電極の位置は、移動可能であり、各電極の位置を調整して表面に追従できるようにしてもよい。各電極は、実質的に硬くてもよい。表面は、非平面であってもよい。
【0013】
可撓性基板は、単体(単一の部品)であることが好ましい。可撓性基板は、回路を可撓性支持体の上に印刷することにより形成されていることが好ましい。
【0014】
細長い導体が、可撓性基板に沿って延び、かつ/又は、そのなかに埋め込まれていてもよく、電極から垂れ下がっていてもよい。導体は、パッチの共通又は中央コネクタ領域へ向かって延びていてもいなくてもよい。一つ又は複数のビアが、電装基板のなかに設けられ、例えば、可撓性基板の一方の側と反対側との間の、導体経路を画定してもよい。一つ又は複数のビアが、可撓性支持体及び/又は可撓性下部構造のなかに設けられてもよい。したがって、電気信号が、使用時に着用者の皮膚に隣接するパッチの一方の側の電極から、着用者から離れた方へ向いた反対側に伝達してもよい。
【0015】
可撓性基板の回路及び/又は導体は、銀を含んでもよい。銀含有インクを使用して、導体/回路を印刷してもよい。導電材料の特性を、ポリマーなどの適切な可撓性基板材料に適合させることは、パッチの使用中における導電材料の破損/断絶を防ぐ上で重要であることが分かっている。ポリエチレンテレフタレート(PET)基板層を使用してもよい。
【0016】
可撓性基板は、電極を備え、電極が可撓性基板と一体に形成されていてもよい。
【0017】
電極間の間隔が調整可能なので、二つの問題に対処できる。第一に、対象者の(例えば呼吸又は運動の結果としての)移動を許容することにより、パッチを対象者にとってもっと快適にすることができる。第二に、パッチを再構成して、検査されるべき特定の対象者に対して電極をもっと最適に配置することができる。
【0018】
可撓性下部構造は、弓形の、湾曲した、又は蛇行した細長い部分を備えてもよい。可撓性下部構造は、回旋状、折曲状、入れ子状、ジグザグ状、細長状、及び迂回状のうち少なくとも一つである特徴を備えてもよい。追従性が望まれる方向に対して角度をなす方向に延びる細長く狭い特徴を使用することが好ましい。これらは、一つ又は複数の電極を、基板の中央又は共通部分に対して位置付け直すことができる可撓性下部構造を提供するための簡便かつ実用的なやり方である。蛇行部分は、追従性の高い下部構造を提供するコンパクトなやり方であるという利点を有し、これは、比較的長い変位距離にわたって実質的に線形剛性を有するよう配列することができる。
【0019】
可撓性下部構造は、(使用時に、表面又は対象者の腹部に対してZ方向に)波形部分を備えてもよい。これにより、基板のレイアウトを(平面図内で)変更することによって形成される可撓性下部構造の有用な代替手段が提供される。
【0020】
パッチ又は少なくともその一部は、少なくともいくつかの電極の相対位置を調整するとき、表面に実質的に追従したまま残ってもよい。一つ又は複数の電極は、共通又は中央パッチ部分から垂れ下がり得るパッチの細長く又は腕状の部分の上に配列してもよい。ヒンジ、折り目、脆弱線、又はパッチの平面から離れて曲がりやすくする他の構造を、電極と共通/中央パッチ部分との間のパッチ又は基板のなかに設けてもよい。このような構造は、パッチの腕状の部分に設けてもよい。したがって、一つの電極を、パッチの残りの部分又は他の電極とは独立して持ち上げ、位置付け直すことができる。一例において、この構造は、接着剤が設けられていない線又は領域を備える。
【0021】
電極は、共通電極と、複数の検知電極とを備え、検知電極は、共通電極及び互いから離間していてもよい。
【0022】
パッチは、更に、電圧を印加するための駆動電極(他の電極は、電圧及び/又は電流を検知するための検知電極である)を備えてもよい。
【0023】
可撓性下部構造は、共通電極と検知電極との間に配置され、共通電極の表面上の位置を、検知電極に対して調整できるようにしてもよい。各検知電極は、対応する可撓性下部構造によって共通,電極に接続されてもよい。その代わりとして、一つ又は複数の検知電極を、共通電極に固定接続してもよい。
【0024】
可撓性下部構造は、少なくとも二つの検知電極の間に配置されてもよい。これにより、使用時にその間の距離を変更しながら位置付けることができ、それらの(対象者上における)取付点の相対移動を許容できる。
【0025】
少なくとも一つの更なる可撓性下部構造を、少なくとも二つの検知電極の間に設けてもよい。
【0026】
検知電極は円弧に沿って配置し、第一の検知電極が円弧の一端にあり、第三の検知電極が円弧の他端にあり、第二の検知電極が円弧上に第一及び第三のセンサの間にあり、第一の可撓性下部構造を、表面に沿った第一及び第二の検知電極の間の距離が変化できるよう配列し、第二の可撓性下部構造を、表面に沿った第三及び第二の検知電極の間の距離が変化できるよう配列してもよい。
【0027】
可撓性下部構造を各電極に関連付けて、各電極の位置を、対応する可撓性下部構造の変形により調整可能にしてもよい。
【0028】
可撓性基板は、更に、臍と位置合わせするための基準特徴部をさらに備えてもよく、可撓性下部構造によって、表面に沿った基準特徴部から少なくとも一つの電極までの距離を調整することができる。基準特徴部は、基板のなかの貫通穴若しくは部分的な透明領域、又は基板のレイアウトにおける移動止め若しくは点を備えてもよい。
【0029】
接着領域を、基準特徴部に隣接して、かつ/又はパッチの中央領域に設けてもよく、パッチ及び/又は基準特徴部が、接着領域により表面に固定できるようにしてもよい。各電極は、例えば電極自体に隣接し又はそれを取り囲む、接着領域を備えてもよい。
【0030】
可撓性基板は、導電層及び絶縁層並びに導電層と絶縁層との間のグラファイト層を備えてもよい。グラファイト層は、導電層と絶縁層との相互作用による摩擦帯電を低減するよう配列されてもよい。
【0031】
本発明の第二の態様によれば、腹部の電気生理学的検出のための多電極のパッチが提供される。パッチは、導電層及び絶縁層並びに導電層と絶縁層との間に配置されたグラファイト層を備える可撓性基板を備える。グラファイト層は、絶縁層と導電層との相互作用から生じる摩擦帯電効果を低減してもよい。
【0032】
パッチは、複数の導電層を備えてもよい。複数の導電層は、電気信号を電極から伝達するための信号層と、信号層を電磁干渉から遮蔽するためのシールド層とを備える。シールド層は、グラファイト層及び絶縁層によって信号層から分離してもよい。
【0033】
シールド層は、信号層の第一の側に隣接して配置してもよい。複数の導電層は、信号層の第二の側に隣接して配置された更なるシールド層を備えてもよい。更なるシールド層は、更なるグラファイト層及び更なる絶縁層によって信号層から分離してもよい。
【0034】
外部絶縁層を、シールド層及び更なるシールド層のうち少なくとも一つの(例えばパッチの使用時に)外へ向いた面の側に隣接して配置してもよい。
【0035】
少なくとも一つの電極が、複数の生体適合導電性ニードルを備えてもよく、各ニードルは、長さが10μm及び200μmの間である。生体適合性材料は、意図した使用の結果として、生体系に有毒又は有害な作用を及ぼさないものである。導性ニードルのための生体適合性材料の例には、ドープ・シリコン、及び、金被覆した、ポリカーボネートなどのプラスチック材料がある。
【0036】
本発明の第三の態様によれば、本発明の任意の他の態様にかかるパッチのための電極が提供される。電極は、長さが10μm及び200μmの間である複数の生体適合導電性ニードルを備える。好ましくは、電極は、ニードルを少なくとも1000本の備える。
【0037】
導電性生体適合ニードルを備える電極を使用することにより、電極を付着する前に入念な皮膚の下準備をする必要がなく、皮膚と良好に電気的に接触できる。皮膚の下準備は、皮膚を消毒又は抗菌拭取り材で簡単に拭くことを備えてもよく、又は、皮膚の下準備がなくてもよい。
【0038】
複数の生体適合性ニードルは、長さが20μm及び100μmの間であってもよい。この範囲の長さは、絶縁性の高い角質層の一般的な厚さを貫通して、下にあるもっと導電性が高い層と電気的に接触するのには十分長く、しかし、神経を刺激して痛みを引き起こすほどには長くない。
【0039】
複数の生体適合性ニードルは、それぞれ、平均径が10μm及び100μmの間であってもよい。この範囲の直径は、製造可能性、切れ味及び堅牢性がバランス良く歩み寄っている。ニードルは、(例えばシリコン結晶面に沿ったウェット・エッチングの結果として)先細りであってもよい。
【0040】
ニードルの面密度は、1平方ミリメートル当たりニードル200本及び1000本の間、好ましくは1平方ミリメートル当たりニードル400本及び600本の間、であってもよい。
【0041】
ニードルは、妊娠者の腹部の角質層の厚さの中央値を貫通するよう構成してもよい。
【0042】
胎児心拍数を電極から検出するための電子的な読出装置と取り外し可能に係合するためのモジュール・ユニットを(本発明の任意の態様とともに)設けてもよい。モジュール・ユニットは、読出装置の筐体と取り外し可能に機械的に係合するための機械モジュール・ユニットと、電極から読出装置に電気的に接続するための電気モジュール・ユニットとを備える。パッチの読出装置との係合が、機械モジュール・ユニット及び電気モジュール・ユニットの両方の係合を備える。
【0043】
本発明の第四の態様によれば、腹部の電気生理学的検出のための多電極のパッチが提供される。パッチは、複数の電極を相互接続する可撓性基板と、母体及び/又は胎児の電気生理学的信号を電極から検出するための電子的な読出装置と取り外し可能に係合するためのモジュール・ユニットとを備える。モジュールは、読出装置の筐体と取り外し可能に機械的に係合するための機械モジュール・ユニットと、電極から読出装置に電気的に接続するための電気モジュール・ユニットとを備える。パッチの読出装置との係合が、機械モジュール・ユニット及び電気モジュール・ユニットの両方の係合を備える。
【0044】
このようなモジュールを有するパッチを使用することにより、取り外し可能な読出回路を使用することができる。これにより、集積読出回路のすべての利点が提供される。これは、ケーブル・ノイズの低減及びパッチ着用時の移動の自由の増加を含む。しかし、取り外し可能な読出回路が再利用できるので、欠点(例えばパッチのコストの増加、コストを制御するために必要な読出電子機器の妥協)の多くを伴わない。
【0045】
機械モジュール・ユニットは、磁石又は強磁性材料を含んでもよい。
【0046】
機械モジュール・ユニットは、可撓性基板に接続され、筐体の少なくとも一部を受け台のなかへ摺動させることにより筐体と機械的に係合する受け台を備えてもよい。
【0047】
モジュール・ユニットは、少なくとも二つの電極の間、好ましくはそれらから実質的に等距離に、配置されてもよい。このようなやり方で、この装置は、一般に可撓性構造の重心に位置付けられる。
【0048】
電気モジュール・ユニットは、複数の電気接点を可撓性基板の上に備えてもよい。
【0049】
モジュール・ユニットと読出装置との間の電気的接続は、パッチ基板、電気モジュール・ユニット又は読出装置のうち一つ又は複数の上に、一つ又は複数の弾性接点部材を備えてもよい。これは、一般に導体である。弾性接点部材は、ばね接点又は他の弾性変形可能な接点を備えてもよい。
【0050】
圧縮シールを、モジュール・ユニット又は読出装置の上に、例えばその筐体の上に、設けてもよい。シールは、例えば防水となるやり方で、この電気的接続を囲み、そうでなければ隔離してもよい。
【0051】
パッチは、パッチに関連付けられた認証コードを、胎児心拍数を電極から検出するための電子的な読出装置に提供して、セキュリティ装置を含まないパッチ、又は、間違った認証コードを提供するパッチとともに読出装置を使用するのを防止するためのセキュリティ装置を備えてもよい。更に、セキュリティ装置は、確実に、患者データが、病院、保健所、又は地域内の自宅で危険に晒され又は他の患者と混同されないようにする固有の患者IDを提供してもよい。その代わりとして、パッチに関連付けられた認証コードを固有の患者IDと結び付けて、患者IDをパッチの認証コードから特定できるようにしてもよい。
【0052】
本発明の第五の態様によれば、腹部の電気生理学的検出のための多電極のパッチが提供される。パッチは、複数の電極を相互接続する可撓性基板と、胎児心電図を電極から検出するための電子的な読出装置に対してパッチを電気的に認証して、セキュリティ装置を含まないパッチとともに読出装置を使用するのを防止するためのセキュリティ装置とを備える。
【0053】
パッチと読出回路との間の電子認証を使用することにより、粗悪なパッチを読出回路とともに使用するのを防ぎ、それによって、読出回路とパッチとを組み合わせたシステムの性能をより良好に制御できる(安全性の向上)。更に、互換性のあるパッチの供給を制御しやすくなり、電気生理学的監視のための装置の販売業者は、適切な品質の消耗品のみがシステム内で使用されることを確信することができる。
【0054】
本発明の第六の態様によれば、一実施形態にかかるパッチとともに使用して、パッチの電極からの少なくとも一つの信号を増幅してフィルタするための電子的な読出装置が提供される。読出装置は、電力を貯蔵して装置に供給するための電源と、パッチの機械モジュール・ユニットと機械的に係合するための機械モジュールを有する筐体と、パッチの電気モジュール・ユニットと電気的に係合するための電気モジュール・ユニットとを備える。
【0055】
このような読出装置は、パッチにケーブルを介して接続される読出装置よりも、かなり簡便であってもよく、リード線のノイズが実質的に低減されるという点で更に有利である。
【0056】
筐体の機械モジュール・ユニットは、磁石又は強磁性材料を含んでもよい。
【0057】
読出装置の電気モジュール・ユニットは、弾性変形可能な要素の上に装着された少なくとも一つの接点を備えてもよい。
【0058】
読出装置は、胎児心拍数、胎児ECG、母体心拍数、母体ECG及び子宮活動のうち少なくとも一つ、又はそれらのうち二つ若しくは三つ若しくは四つ若しくは五つすべてを判定するよう構成してもよい。
【0059】
読出装置は、信号から得た情報を送信するための無線送信機を備えてもよい。
【0060】
読出装置は、例えば無線送信機を介して、出力を送信するよう動作可能であり、出力は、胎児心拍数、胎児ECG、母体心拍数、母体ECG及び子宮活動のうち少なくとも一つを備えてもよい。
【0061】
読出装置は、受信機におけるビット誤り率及び受信機における信号強度のうち少なくとも一つに基づいて、無線送信機の出力を制御するよう構成してもよい。これにより、出力をはるかに効率的に使用することができ、その結果、読出装置の電池寿命を大幅に延ばすことができる。
【0062】
本発明の第七の態様によれば、腹部の電気生理学的検出のための多電極のパッチが提供される。これは、慣性センサを備える。
【0063】
読出装置は、慣性センサを備えてもよい。
【0064】
慣性センサは、加速度計又はジャイロスコープのうち少なくとも一つを備えてもよい。
【0065】
慣性センサは、母体の動き、母体の呼吸、母体収縮及び胎動のうち少なくとも一つを検出するよう構成してもよい。
【0066】
読出装置は、慣性センサからの情報を使用して、読出装置から出力された胎児心拍数及び胎児ECGのうち少なくとも一つにおけるアーチファクトを低減するよう構成してもよい。
【0067】
読出装置は、パッチの対応するセキュリティ装置から適切な認証コードを受信しない限り、読出装置がパッチとともに機能するのを防止するよう配列されたセキュリティ装置を備えてもよい。
【0068】
本発明の第八の態様によれば、一実施形態にかかるパッチとともに使用するための電子的な読出装置が提供される。これは、パッチの電極からの少なくとも一つの信号を増幅してフィルタする。読出装置は、パッチのセキュリティ装置から適切な認証を受信しない限り、読出装置がパッチとともに機能するのを防止するよう配列されたセキュリティ装置を備える。
【0069】
読出装置は、特定の患者に関連付けられたパッチ認証コードを記憶して、読出装置が特定の患者に関連付けられた認証コードを有するパッチとともにのみ動作可能になるようにするよう構成してもよい。
【0070】
読出装置は、電気生理学的信号をパッチの二つの検知電極の間の電圧から検出するよう構成してもよい。この二つの検知電極は、対象者の正中線の両側に、臍に隣接して横に配置されるよう意図されたものであってもよい。
【0071】
本発明の第九の態様によれば、一実施形態にかかる読出装置から情報を受信するための受信表示端末が提供される。受信表示端末は、胎児心拍数、胎児ECG、母体心拍数、母体ECG及び子宮活動のうち少なくとも一つを表示するための表示部と、読出装置の筐体を受け入れるためのドック領域とを備える。ドックは、読出装置の電源を充電するための誘導充電器を備える。
【0072】
表示部及びドックは、両方とも、単一の筐体エンクロージャのなかに収納されてもよい。
【0073】
表示端末は、胎児心拍数、胎児ECG、母体心拍数、母体ECG及び子宮活動のうち少なくとも一つを、胎児心拍陣痛図表示装置などの更なる監視又は表示端末に送信するよう構成してもよい。これにより、既存のインフラストラクチャを使用して、パッチが検出した電気生理学的信号から得た情報を表示することができる。
【0074】
本発明の第十の態様によれば、腹部の電気生理学的検出のためのシステムが提供される。これは、本発明の一実施形態にかかるパッチと、パッチと共に使用するための読出装置とを備える。読出装置は、胎児心拍数、胎児ECG、母体心拍数、母体ECG及び子宮活動のうち少なくとも一つを判定するよう動作可能である。
【0075】
このシステムは、更に、読出装置から受信する情報を受信して表示する受信端末を備えてもよい。この情報は、胎児心拍数、胎児ECG、母体心拍数、母体ECG及び子宮活動のうち少なくとも一つを備える。
【0076】
本発明の第十一の態様によれば、腹部の電気生理学的検出キットが提供される。これは、複数のパッチを備え、パッチを使用するための取扱説明書と、パッチを無菌マルチ・パッチ・パックのなかに包装した少なくとも一つのパッケージとのうち一つ又は複数を省略可能に備える。パッチ及び/又は読出装置は、本発明の任意の他の態様に従ってもよい。
【0077】
本発明の第十二の態様によれば、人の腹部の電気生理学的信号を判定する方法が提供される。これは、本発明の一実施形態にかかるパッチを使用することを備える。これは、パッチを妊娠者である対象者の腹部に付着し、読出回路を使用してパッチの電極を介して電気生理学的信号を検出し、好ましくは前記信号から得た出力を表示することを備える。
【0078】
この方法は、更に、電気生理学的信号を使用して、胎児心拍数、胎児ECG、母体心拍数、母体ECG及び子宮活動のうち少なくとも一つを判定することを備えてもよい。このような生理学的信号を表示してもよい。
【0079】
パッチを対象者の腹部に付着することは、
基準特徴部を腹部に固定し、
続いて、パッチの各電極を順に腹部に付着する
工程を備えてもよい。
【0080】
パッチの各電極を腹部に付着することは、
電極を皮膚に付着し、
電極と皮膚との間の電気的接続のインピーダンスを検査し、
インピーダンスが所定値より高い場合は、
パッチの基準特徴部又は任意の他の電極を皮膚から引き離すことなく、その電極を取り外し、
皮膚に下準備をして、そのインピーダンスを低減し、
電極を再び付着する
工程を備えてもよい。
【0081】
この方法は、検知電極と共通電極との間の電圧差から電気生理学的信号を検出し、一対の検知電極の間の電圧差から更なる電気生理学的信号を検出することを備えてもよい。
【0082】
一対の検知電極は、腹部に、対象者の正中線の両側離間して、臍に隣接して付着してもよい。
【0083】
この方法は、検知電極の対から得られた電気生理学的信号を考慮して、子宮活動、fECG、mECGのうち少なくとも一つを判定することを備えてもよい。
【0084】
この方法は、(例えば電極が複数のニードルを備える)角質層の領域を除去することによる皮膚の下準備を最初にすることなく、パッチ電極を対象者の腹部に付着することを備えてもよい。
【0085】
この方法は、読出装置の機械的及び電気的インタフェース・ユニットを、パッチのインタフェース・ユニットと係合することを備えてもよい。
【0086】
この方法は、読出回路を使用して、パッチのセキュリティ装置及び読出装置のセキュリティ装置を使用して、パッチを電子的に認証することを備えてもよい。
【0087】
この方法は、パッチの認証コードに基づいて、少なくとも一つの読出装置を、特定のパッチとともに動作するよう構成することを備えてもよい。この方法は、パッチの認証コードに基づいて、二つ以上の読出装置を、特定のパッチとともに動作するよう構成することを備えてもよい。これにより、パッチの上で使用中の一つの読出装置と、使用準備が整った少なくとも一つの更なる読出装置とで、読出装置の間の素早い切り替えを達成してもよい。使用準備が整った少なくとも一つの読出装置は、例えば、受信端末の上で充電しておいてもよい。
【0088】
多くの必須の又は好ましい特徴を、簡潔のために本発明の特定の態様に関連して以上定義したことが理解されるだろう。しかし、本発明の特定の前述の態様及び実施形態のそれぞれの省略可能な特徴は、実行可能であれば適宜、本発明の他の態様と組み合わせることができる。
【0089】
ここで、本発明は、純粋に例として、添付図面を参照しつつ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1】本発明の一実施形態にかかるパッチのレイアウト図である。
図2図1の実施形態のオーバーラミネート層のレイアウト図である。
図3】本発明の一実施形態にかかるパッチ及び読出装置の斜視図である。
図4】本発明の一実施形態にかかる読出装置の三つの異なる実施形態を伴う、本発明の一実施形態にかかる受信端末の斜視図である。
図5】本発明の一実施形態にかかる読出装置の概略図である。
図6】本発明の一実施形態にかかる電極の概略断面図である。
図7】本発明の一実施形態にかかる読出装置のブロック図である。
図8】検査対象者と、対象者の上で使用している本発明の一実施形態にかかるパッチの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
図1を参照すると、一実施形態におけるパッチ150が示されている。これは、可撓性基板100を備え、使用時に腹部に対向すべき側から見られている。可撓性基板100は、複数の層6〜12を備える。層6〜12は、基板100の形状を画定し、かつ電極1〜5を形成するようにパターンニングされる。各電極1〜5は、導電性トラック15を介して電気モジュール・ユニット16に接続されている。これは、電極1〜5を読出装置(不図示)に電気的に接続するためものである。
【0092】
電極1〜5及び/又は導電性トラック15は、信号層12から形成されている。これは、銀を含む。例えば、使用される導電膜は、生理食塩水系電極ゲルに化学量論的によく適合する塩化銀であってもよい。銀含有インクを使用して、特に、導電性トラック15及び/又は信号層12を印刷してもよい。
【0093】
絶縁誘電体層11a、11bが信号層12の対応する各側面上に配列されている。絶縁誘電体層11a、11bは、信号層12の導電性トラック15と同様のパターンを有する。絶縁層11a、11bは、実質的に導電性トラック15を覆い、それと比べて相対的に大きい。絶縁層11a、11bは、電極1〜5及び電気モジュール・ユニット16の間の導電性トラックを完全に覆っている一方、電極及び電気モジュール・ユニット16の領域内では、信号層12を露出させている。
【0094】
グラファイト層10a、10bが、対応する各誘電体層11a、11bに接触している。グラファイト層11a、11bは、対応する絶縁層11a、11bを実質的に覆い、それと比べて相対的に大きい。
【0095】
第一の導電性シールド層9aがグラファイト層10aに接触し、第二の導電性シールド層9bが、省略可能なグラファイト層10bに接触している。第一及び第二の導電性シールド層9a,9bは、対応するグラファイト層11a,11bの形状に実質的に一致している。グラファイト層10a、10bは、対応するシールド層9a、9bの摩擦帯電を低減し得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、グラファイト層10a,10bを省略してもよい。
【0097】
更なる絶縁誘電体層8が第一の導電性シールド層9aに接触し、絶縁オーバーラミネート6aがこの層8に接触している。また、絶縁基層6bが第二の導電性シールド層9bに接触している。オーバーラミネート6a及び基層6bは、電極1〜5の領域を除き、基板の他の層を実質的にカプセル化するよう構成されている。電極の領域では、電極1〜5が下地表面と接触できるよう、信号層12が露出している。絶縁オーバーラミネート6a及び基層6bは、ポリエステルなどのプラスチック材料を含んでもよい。絶縁誘電体層8、11a、11bは、ポリエステル又はポリイミドなどのプラスチック材料を含んでもよい。
【0098】
基層6bは、可撓性基板100の外部形状を画定し、各電極1〜5に対応する円形領域を含む。電極1〜5は実質的に矩形であり、対応する各円形領域21〜25に囲まれている。他の実施形態では、電極1〜5が、円形、正方形又は矩形などの任意の適切な形状であってもよいことが理解されるだろう。円形領域21〜25は、周囲に接着膜を設けて、各円形領域が対象者の皮膚に接着できるようにしてもよい。(ECGゲルなど)導電媒体を各電極1〜5と対象者の皮膚との間に配置して、それにより、各電極1〜5を対象者の皮膚に確実に結合させることが好ましい。
【0099】
導電媒体は、塩化ナトリウム又は塩化カリウムなどの電解質を少なくとも9(質量)%含むことが好ましい。導電媒体(又はゲル)は、パッチを付着するとき使用者(例えば看護師又は医師)が対象者の腹部に塗布してもよいし、パッケージ(不図示)から取り出したときパッチ上に予め存在していてもよい。導電媒体は、スポンジ要素(不図示)によって電極と接触した状態に保ってもよい。各円形領域21〜25は、接着膜や導電媒体が実質的にないローブ又はフラップを備える。これは、円形領域21〜25の縁部から突出している。各電極1〜5は、これにより、円形領域21〜25を対象者からローブによって剥がし、対象者から引き離すことができる。
【0100】
上述したポリマー層についてはいずれも、PET材料を使用してもよい。これは、有用な特性すなわち弾力性を提供することが分かっていて、使用時にパッチを曲げている間に信号層12が破損しないようにするためのものである。ポリマー/PET層の材料厚は、信号伝導層12の特性に適合させて、信号層12における破損を招きやすいようなトラックの変形を防いでもよい。
【0101】
図に明示していないが、信号がパッチのいずれかの外面まで/から通過できるようにするため、複数のビアを、上述した層の一つ又は複数を貫いて設けてもよい。したがって、中間層を貫いて通るビアの形成により、電気信号が電極から信号層12まで通過してもよく、信号層12かたパッチ基板の外部上のモジュール・ユニット16まで通過してもよい。
【0102】
基板100は、基準特徴部17を備える。これは、対象者の臍又は他の適切に認識可能な特徴部と整列するためのものである。この場合では、基準特徴部17を、可撓性基板100のなかの開口によって画定している。他の実施形態では、基準特徴部17を、可撓性基板100のなかに生じる頂点、ポインタ又は透明領域であってもよい。基準特徴部17は、隣接する接着領域に関連付けられてもよい。これにより、例えば臍に隣接して基準特徴部17を対象者に固定することができる。
【0103】
この構造は、簡単な付着方法に適している。例えば、基準特徴部17は、関連付けられた接着領域を使用して、患者の基準点に固定されてもよい。続いて、電極1〜5を腹部から離して、皮膚の下準備をすることもできる。例えば、各電極1〜5を、その後、必要であれば適切な下準備として皮膚を擦り取り、腹部の周りに順に配置することもできる。皮膚の下準備をし、それに続いて一つの電極1〜5を配置し終わったいずれかの時点で、その電極1〜5と患者との間の接続インピーダンスを電子的な読出装置200(図7に示す)で測定してもよい。インピーダンスが所望の値より高い場合は、更に皮膚の下準備を実行して、インピーダンスを所望の値未満に低減してもよい。所望の値は、例えば5キロオームであってもよい。インピーダンスが所望の値より低いときは、次の電極のための皮膚領域を、皮膚と、電極に続いて付着する電極とを擦り付けることにより下準備してもよく、インピーダンスをテストしてもよい。この方法を、すべての電極がうまく付着するまで繰り返してもよい。
【0104】
電極1〜5は、第一の検知電極1、第二の検知電極2及び第三の検知電極3、駆動電極4並びに共通電極5を備える。第一、第二及び第三の検知電極1,2,3並びに駆動電極は、それぞれ、パッチの基準特徴部17の周りに、この実施形態では基準特徴部17からほぼ同じ距離で等角度に離間して、配列されている。具体的には、図1に示す向きにおいて、第一及び第三の検知電極1,3は、それぞれ、基準特徴部の左及び右にあり、第二の検知電極2及び駆動電極4は、それぞれ、基準特徴部の上及び下にある。各電極1〜4をモジュール16に接続するトラック15の長さは、これにより最小になり、ノイズ(これは電磁干渉、摩擦帯電効果などから生じ得る)のいかなる可能性も減少する。
【0105】
この実施形態において、第一及び第三の検知電極1,3にそれぞれ関連付けられた円形領域21,23は、基準特徴部17の中心を通り抜ける水平線上に対称に配列されている。第二の検知電極2及び駆動電極4にそれぞれ関連付けられた円形領域22,24は、基準特徴部17の中心を通り抜ける垂直線上に配列されている。
【0106】
共通電極5に関連付けられた円形領域は、基準特徴部17を通り抜ける垂直線上に、駆動電極4の下に配列されている。駆動電極は、腹部のいずれか他の部分上に配置することもできる。
【0107】
第一及び第三の検知電極1,3並びに共通電極5は、それぞれ、対応する可撓性下部構造13a、13b、13cにより、基準特徴部17を担持する基板100の領域に取り付けられている。各可撓性下部構造13a〜13cは、基準特徴部17を担持する基板100の一部に第一端が、円形領域21、23、25に第二端が、取り付けられている。各可撓性下部構造は、基板を(腹部などの)表面に一致させたとき、変形して、各可撓性下部構造の第一及び第二端の相対位置を調整し、これにより、電極1,3,5の、相互、他の電極2,4及び基準特徴部17のうち少なくとも一つ対する相対的な位置を変更できるよう、配列されている。他の実施形態では、同様の可撓性下部構造を使用して、電極2及び4を、基準特徴部17を担持する基板100の一部に接続することもできる。このような配列は、皮膚の横(水平)伸縮を許容し得る。
【0108】
この配列では、可撓性下部構造13a及び13bにより、第一の検知電極1及び基準特徴部17の間の距離並びに第三の検知電極3及び基準特徴部17の間の距離を調整することができる。基板がこれらの電極の位置の調整を許容できるので、パッチがより快適になる。対象者の皮膚の自然な動き(例えば、呼吸の結果として)を可撓性下部構造13a及び13bが許容できるからである。同様の構造を電極2及び4に関して使用してもよい。更に、パッチは、広範囲の対象者に単一のパッチを使用できるよう、腹部の大きさが異なる対象者に適合するよう構成されてもよい。
【0109】
この実施形態の各可撓性下部構造13a〜13cは、蛇行配列を備える。これは、少なくとも一つの折り曲げられた細長い部材が、下部構造が許容すべき動きの方向から実質的に横に配置されている。このような部材の堅さは、長さの三乗に実質的に比例する。各方向における下部構造の追従性は、長さ又は蛇行下部構造内の折り目の数(各折り目は、追従性を更に高める)を調整することにより、容易に適合させ得る。各下部構造13a〜13cは、それらに関連付けられた電極の導電性トラック15を担持する。
【0110】
可撓性下部構造13a及び13bは同様であり、これらは、基準特徴部17の中心に対して回転対称であり、実質的に垂直方向に延び、一回折れ曲がった(外へ向かう区間と戻り区間とを有する)細長い部材を有する。第一及び第三の検知電極1,3の間の水平方向の相対移動が、これにより許容される。
【0111】
共通電極5を、基準特徴部17を担持する基板の一部に接続する下部構造13cは異なり、二つの折れ曲がった細長い部材31,32を有する。それぞれは、実質的に水平方向に延びている。この下部構造13cは、共通,電極が、妊娠期間の範囲で、及び、様々な大きさの対象者に対して恥骨けつごへ向けて位置付けられるよう、他の下部構造13a、13bより大きい度合いの相対移動を許容するよう構成されている。「水平」及び「垂直」という用語は、相対的な用語として理解されるだろう。外部基準系の「水平」及び「垂直」方向の参照を意図するものではない。
【0112】
図2は、オーバーラミネート層6aの形状を示し、基板100の形状に実質的に一致するが、円形領域21〜25は省略されている。
【0113】
図3は、一実施形態にかかる更なるパッチを示す。これは、図1に示したのと同じ可撓性基板100を備え、機械モジュール・ユニット19が電気モジュール・ユニット16に隣接して基板100に固定されている。パッチ150は、パッチの電極1〜5から電気生理学的信号を検出するための別の電子的な読出装置200と共に示されている。
【0114】
電子的な読出装置200は、実質的に立方形状の読出装置筐体201を備える。これは、実質的に正方形の上面202を有する。上面202は、各読出電極に関連付けられた円形領域21〜25のうち一つと同様の広さである。上面202に垂直な方向における筐体201の厚さは、上面202の辺長の半分より小さく、読出装置200は、コンパクトかつ低い外形を有する。
【0115】
機械モジュール19は、読出装置200の読出装置筐体201を受け入れるための受け台を備える。筐体201は、受け台内に取り外し可能に受け入れられて保持され、これにより、筐体201が挿入/取り外し方向にのみ移動できる。受け台は、止め具を備え、読出装置200は、筐体201が止め具に接触しているとき、機械モジュール・ユニット19と完全に係合する。機械モジュール19は、ラッチ又はキャッチを更に備え、止め具に接触した読出装置筐体201を保持する。本実施形態において、ラッチ又はキャッチは、磁気キャッチを備える。永久磁石を、機械モジュール19及び筐体201の一方(又は両方)の上に設ける。これは、機械モジュール19又は筐体201の他方の上にある対応する磁石(又は強磁性要素)を引き付ける。代替的な実施形態では、鉤輪配列(例えばVelcro)を使用して、読出装置200をパッチ150に固定してもよい。
【0116】
読出装置筐体201が機械モジュール19と完全に係合したとき、読出装置200の電気モジュール204(図5に示す)が、パッチ150の電気モジュール16と電気的に係合している。読出装置200の電気モジュール204は、利便のため、弾性変形可能な部材(例えば、ばね負荷されたコンタクト・ピン)上に装着された複数の接点を備えてもよい。
【0117】
モジュールに形成された電気接点の品質及び信頼性は、電気生理学的信号(これは一般にマイクロボルト未満である)を検出するとき、及び、病院環境に関連する厳重な洗浄手順を読出装置200に実施できることを確実にするために、重要になるかもしれない。読出装置200上の平面状の接続部及びパッチ150上の弾性的に付勢された接続部を使用してもよい。この配列により、読出装置200を容易に洗浄することができる。パッチ150は、各使用後に処分されてもよい。したがって、洗浄を必要としないので、弾性的に付勢された接続部を洗浄する難しさが生じ得ない。その代わりとして、(読出装置200又はパッチ150の)電気モジュール204,16のいずれかが、各コンタクト・ピンがチューブの内部に存在してチューブとコンタクト・ピンとの間が確実に封止された弾性的に付勢された接点を備えてもよい。ピン及び対応するチューブは、洗浄できるよう十分な距離をとって互いに分離しているてもよい。このように、読出装置200に、容易に洗浄し得る弾性的に付勢された接点を設けてもよい。
【0118】
いくつかの状況では、接続された電気モジュール204,16を封止して、例えば、水中分娩中における水又は他の流体の浸入を防ぐことが有利かもしれない。これを達成する一つのやり方は、(Oリング・シールなどの)封止要素を電気モジュール204,16の周りに使用することである。封止要素は、パッチ150又は読出装置200のいずれかの上に設けてもよい。封止要素は、読出装置200が機械モジュール19と係合するときに圧縮されてもよい。機械モジュール19は、封止要素を押圧してパッチ150及び/又は読出装置200と(例えば磁力によって)封止係合するように構成してもよい。
【0119】
セキュリティ装置101がパッチ150の上に設けられる。これは、パッチ150を電気読出装置200に対して認証するためのものである。この実施形態において、セキュリティ装置101は受け台内に設けられる。パッチ150及び読出装置200の対応する電気モジュール16,204が係合したとき、読出装置200は、パッチを検査して本物であるか否かを判定する(すなわち、パッチが無許可のコピー品であるか否かを検査する)。認証は、読出器200のセキュリティ装置203とパッチの対応するセキュリティ装置101との間の伝達(例えば、電気的、光学的、無線式)によって達成される。セキュリティ装置101,203は、暗号及び/又はハッシュ関数を使用するよう構成してもよい。
【0120】
各電気モジュール16、204は、9つの接続部を備えてもよい。三つの接続部を、三つの検知電極のそれぞれに対して設けてもよく、共通及び駆動接続部を共通及び駆動電極に対してそれぞれ設けてもよい。一つの接続部を、パッチの少なくとも一つの導電性シールド層に接続するために設けてもよい。更に三つの接続部を、パッチ150のセキュリティ装置又はチップ101と接続するために設けてもよい。
【0121】
読出装置200は、胎児心拍数、胎児ECG、母体心拍数、母体ECG又は子宮活動のうち少なくとも一つを判定して出力するよう構成することが好ましい。読出装置は、上記のうち任意の二つ、三つ、四つ又は五つすべてを出力するよう構成されることが好ましい。読出装置は、監視することができるように、出力を送信するよう構成されることが好ましい。読出装置200は、(例えばBluetooth規格に準拠した)無線送信機を備えることが好ましい。これは、読出装置200の出力を送信するよう動作可能である。
【0122】
いくつかの実施形態において、読出装置200は、胎児心拍数、胎児ECG、母体心拍数、母体ECG又は子宮活動のいずれも判定しない。その代わりに、電極からの生の又は部分的に加工した電圧及び/又は電流データを送信する。これは、更なる装置によって、(胎児心拍数、胎児ECG、母体心拍数、母体ECG又は子宮活動のうち一つ、二つ、三つ、四つ又はそれ以上などの)適切な出力に加工するためのものである。
【0123】
図7を参照すると、一実施形態における読出装置200のブロック図が示されている。読出装置200は、電気モジュール・ユニット204、アナログ回路213、デジタル処理装置212、無線送信機211、セキュリティ装置203、電池210及び誘導コイル214を備える。
【0124】
アナログ回路213は、アナログ−デジタル変換器を備え、電気信号を電極から受信して、デジタル化した変形を出力する。これは、デジタル信号処理装置によって加工するためのものである。いくつかの実施形態では、アナログ回路213が、増幅器及び/又はフィルタを備えてもよい。
【0125】
処理装置212は、既に説明したように、デジタル化された信号をアナログ回路213から受信し、好ましくは処理して出力を判定する。処理装置212は、続いて、更に先へ向けて、例えば本発明の一実施形態にかかる受信表示端末300に対して送信する無線送信機211に対して、信号を出力する。
【0126】
取り外し可能な電子装置の電池寿命を最大化するため、信号強度指数及び/又はビット誤り率に基づいて無線送信機の出力を制御するよう構成してもよい。これにより、一回の電池充電でもたらすことができる監視期間を大幅に延ばし得る。
【0127】
いくつかの実施形態において、装置200の一つ又は複数の構成要素を、例えばマルチチップ・モジュール又はシステム・オン・チップのなかで、組み合わせてもよい。例えば、処理装置212は、アナログ回路213、セキュリティ装置203及び無線送信機211の任意の組合せを備えてもよい。
【0128】
読出装置200の電子部品は、電源から動力を得る。これは、本実施形態では電池210である。他の実施形態では、電源はコンデンサを備えてもよい。誘導コイル214は、電池210を充電するよう動作する。これは、処理装置210の制御に従うものでもよい。
【0129】
読出装置200は、単に検知電極と共通電極との間ではなく、一対の検知電極の間の電気生理学的信号を検出するよう構成してもよい。例えば、読出装置200は、検知電極1及び3の間の(すなわち、使用時に腹部を水平に横切る)電気生理学的信号を検出するよう構成してもよい。これにより、UA及び胎児ECGの更なるチャネルを設けることができる。UAのための利点は、電極1及び3の間の距離が比較的一定なので、収縮強度を示す可能性があることである。更に、このような(検知電極1及び3の間で測定された)水平fECGチャネルにより、骨盤位及び横位をより注意深く監視することができる。さらに、このチャネルを設けることにより、mECGの除去に使用できる更なる母体ECGチャネルを生成することができ、mECG及びfECGの間の混同が更に減る。このような混同は、ドップラー超音波検査に関するよくある問題であるが、腹部のfECGを用いれば、混同時間比率がかなり低減される。もう一つの(例えば、検知電極1及び3の間で測定された)mECGチャネルの使用は、mECGを精度よく除去するために改良されたテンプレートを提供することにより、この混同を更に減らすことができる。
【0130】
読出装置200は、センサ215を備えてもよい。これは、加速度計及び/又はジャイロスコープなどの慣性センサを備えてもよい。好ましくは、センサ215は、一、二若しくは三軸の加速度計、及び/又は一、二若しくは三軸のジャイロスコープを備える。センサ215は、MEMS(マイクロ電子機械システム)装置であってもよい。読出装置200は、慣性計測ユニットを備えてもよい。加速度計及びジャイロスコープは、読出装置200の動きを追跡するために使用して、これにより、胎児ECG及び子宮筋電図アルゴリズムの両方が、母体/胎児の動きと真の収縮と胎児ECG信号とを区別できるようにしてもよい。ジャイロスコープは、加速度計が提供できない有用な付加的回転情報を提供することができ、これにより、取得したデータから胎動を更に分離することができる。この胎動は、胎児の健康状態を更に示す非常に有用な指標である。その上、この一対の装置を使用することにより、母体の健康を更に示す母体の呼吸信号を分離することができる。
【0131】
図4には、信号受信表示端末300が示されている。これは、スクリーン302及び二つのドック領域301を備える。受信端末は、読出装置200から出力信号を受信し、スクリーン302上に表示するよう動作可能である。ドック領域301は、読出装置200の筐体201の一部を受け入れることよう配列され、ドック領域301内に配置された読出装置200を充電するよう動作可能な無線充電装置が設けられている。無線充電装置は、コイルを使用して、読出装置200の導体中に電流を誘導することにより動作することが好ましい。読出装置200のたくさんの代替実施形態200a、200b、200cが受信端末の前に示されている。それぞれは、筐体201の設計がわずかに異なる。筐体200は、防水であることが好ましく、IP57等級であることが好ましい。
【0132】
受信表示端末300は、二つの重要な機能を有し得る。第一は、一式の胎児及び母体のパラメータ(すなわち、FHR、MHR、UA、胎動など)を、臨床ケアチーム又は地域の助産婦に表示することである。第二の重要な機能は、既存の設置済CTG(胎児心拍陣痛図)機械に接続するインタフェース装置のものである。この後者の機能により、病院/医療ユニットは、設備を冗長化することなく、既存の資源を効率的に使用して、腹部の電気生理学的監視による利点、すなわち、FHR精度の向上、BMIに伴うFHR/UAの信頼性の向上、母体の可動性、FHR/MHR混同の低減などから利益を得ることができる。
【0133】
少なくとも二つの読出装置200を一人の患者に割り当てることが好ましい。一つの読出装置200がパッチ150に接続されたとき、パッチの固有IDを受信表示端末300に送信することにより、読出装置200が最終的に交換されたとき、第二の読出装置200が同じパッチ150にのみ接続できるようにする。読出装置は、電池が空になったとき、又は、日常の保守が必要なときに、交換してもよい。各患者、パッチ又は受信表示端末300に関連付けられた読出装置200の数は、分娩又は母体出産前の記録期間がかなりの時間、例えば数時間から数週間に及び得るので、(図4に示したような)二又は三に限定されない。
【0134】
少なくとも二つの読出装置200を使用することにより、途切れなく、読出装置200を交換できる。次の読出装置200は、適切なパッチIDをローカル・メモリ内にあらかじめロードしておき、セット・アップ時間を短くしてもよい。
【0135】
図6を参照すると、電極400が示されている。電極400は、本発明の一実施形態におけるパッチの電極として使用するためのものであり、基板402を備える。これから、複数の導電性ニードル401が延びている。ニードルは、(ドープ・シリコンなどの)生体適合性材料から形成され、角質層を貫通して、導電性の高い下地層に電気的に接続するが、神経を刺激して痛みを引き起こすほどには貫通しないよう構成する。したがって、ニードルは、20μm〜200μmの間、好ましくは、50μm〜100μmの間の長さを有する。ニードルは、シリコンを反応性イオン・エッチング又はウェット・エッチングして形成してもよく、又は、任意の他の適切な処理により、任意の他の適切な材料から形成してもよい。電極400は、一発明にかかるパッチの各電極として使用してもよい。このような電極400を備えるパッチ150により、十分に低いインピーダンスで対象者に接触するために通常必要な入念な下準備を皮膚にする必要がなくなる。ニードルが角質層を貫いて接触するのを容易にするからである。
【0136】
図8を参照すると、使用時における本発明の一実施形態にかかるパッチ150が示されている。これは、妊娠者である対象者500の腹部に付着されている。皮膚は、下準備をして、各電極と皮膚とを確実に良好に接触させることが好ましく、ゲルを塗布して、電極を皮膚に電気的に結合させることが好ましい。パッチの基準特徴部17は、対象者500の臍501と位置合わせし、第一の検知電極1及び駆動電極4は、対象者の正中面上の腹部上に配列する。共通電極5は、必要であれば可撓性下部構造13cを伸長することにより、恥骨結合に対向して配置される。パッチ150は、快適かつ低い外形であり、(例えば、呼吸及び運動の結果としての)電極の相対移動を許容する。
【0137】
読出装置200は、パッチ150のモジュールと係合して、対応する電気モジュール16,204が接続される。読出装置がパッチ150と共に動作して任意の有用な出力を提供するため、パッチは、対応するセキュリティ装置101,203を使用して、最初に読出装置によって認証されることが好ましい。
【0138】
パッチ150が認証されると、読出装置200は、検知電極1〜3によって検出された電気生理学的信号を増幅してフィルタし、胎児ECG、胎児心拍数、母体ECG、母体心拍数及び子宮活動のすべてを決定して出力する。より具体的には、検知電極及び共通電極の間の電圧差を検知し、読出装置が処理して、読出装置200からの出力信号を生成する。三つの検知電極1〜3の同相モード電圧は、パッチ150のシールド層9a,9bに印加され、シールド層への漏れ電流を最小化する。同相モード電圧の逆が駆動電極4に印加され、同相モード電圧ノイズを最小化する。「同相モード」という用語は、二つ以上の導体によって共有される信号の従来の意味で使用されている。
【0139】
読出回路200とパッチ150とを一体化することにより、リード線について心配する必要なく、対象者が自由に動くことができ、リード線が曲げられたとき摩擦帯電効果によって生じ得る有害なケーブル・ノイズがすべて最小化する。更に、読出回路への接続の長さが短いので、他のノイズ発生源の可能性が最小化する。
【0140】
読出装置200は、無線送信機(不図示)を備え、出力を表示するよう動作可能な監視端末に対して、無線送信機を介して実質的にリアルタイムで出力を無線送信するよう動作可能であることが好ましい。読出装置200は、多数の監視端末と互換性があるが、本発明の実施形態にかかる受信表示端末300と共に使用することが好ましい。
【0141】
腹部電気生理学的信号を監視する必要がなくなったときは、読出装置200をパッチ150から取り外し、パッチを処分することができる。読出装置200は、続いて、好ましくは読出装置200を(例えば殺菌流体に浸漬することにより)殺菌したのち、異なるパッチ150と共に再利用することができる。したがって、パッチ150は、比較的安価に作られてもよく、読出装置200は、システムを使用するコストを犠牲にすることなく、比較的複雑化した電子機器を含んでもよい。読出装置200をパッチ150と共に使用しないときは、受信表示端末300のドッキング領域301上に配置し、充電して次の使用に備えることが好ましい。各監視端末300に関連付けられた読出装置200が二つ以上存在し、一つの読出装置200を常に充電する一方、それ以外を使用して、これにより、使用に備えて充電された装置が確実に常にあるようにしてもよい。
【0142】
パッチ、読出器、監視装置、及びこれらの組合せを備えるシステムによって、先行技術の装置に伴う多くの問題が対処されることが理解されるだろう。
【0143】
各可撓性下部構造が蛇行屈曲を備えるパッチの実施形態を説明してきたが、任意の適切な配列を使用してもよい。例えば、いくつかの実施形態において、可撓性下部構造は、基板の平面に平行な移動を許容する基板の波形領域を備え得る。また、他の追従する平面配列を使用してもよい。例えば、電極が、パッチの残りの部分にリング状要素を介して結合してもよい。リングは、基板の平面内における移動を許容するよう選択された幾何形状(例えば、大きな直径、狭い幅)を有する。
【0144】
本発明の任意の例において、パッチに、パッチを着用者の腹部に取り付けるためのパッチ接着領域を露出させるため(例えば剥離により)取り外し可能な裏当て材層を設けてもよい。別の又は個々の裏当てシートを、パッチの異なる電極/部分に付着し、必要に応じて個々の部分を接着及び/又は交換できるようにしてもよい。
【0145】
添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲から逸脱することなく、他の多くの修正及び変更がなされ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8