【文献】
LIU,Li et al.,Graphene Oxidation: Thickness-Dependent Etching and Strong Chemical Doping,Nano Lett.,2008年,volume 8 (7),pp 1965-1970
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、水や他の溶液、あるいは気体からイオン等の微細な粒子を除去するためのフィルターとして、微細な通水孔を形成したグラフェンを採用したフィルター成形体が用いられるようになってきた(特許文献1)。
【0003】
一般にグラフェンは化学気相成長(CVD)法により銅箔等の表面上に形成される(特許文献2)ため、従来では、グラフェンをフィルター成形体として用いる際に望ましい支持体に移し取る転写と呼ばれる工程が必要であった(特許文献3)。
転写工程においては、銅箔上に形成されたグラフェンの露出した面にPMMAをスピンコートして薄い保護膜を形成して乾燥させた後、銅箔を下にして50℃に熱したCuエッチング液に浮かべ、銅箔を除去する。
次いで、PMMAとグラフェンとの薄膜を超純水で洗浄し、表面を親水化したシリコン基板に乗せるようにして掬い上げる。
その後、樹脂等からなる所望の支持体で上記薄膜を掬い上げて乾燥させ、アセトン浸漬とIPA浸漬とを交互に数回繰り返してPMMAの保護膜を除去する。
最後に支持体およびグラフェンを乾燥させることによって、グラフェンを支持体に転写することができた。
【0004】
このような従来の転写工程では、薬品等を消費するとともに手間がかかり、生産性が低かった。
また、グラフェンの層の表面にコーティングを形成したり除去したり、シリコン基板等で掬い上げたり離脱させたりする過程で、極めて薄いグラフェンを破損することがあった。
【0005】
また、従来では、グラフェンに通水孔を形成するために、300−500℃程度の高温の空気中かまたは酸素と不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム等)の混合気体中で加熱する方法が行われてきた(特許文献1)。
しかし、この方法ではグラフェンを支持しているフィルムレジストが熱で破損してしまうだけでなく、グラファイトの燃焼反応による穴あけのため、反応の制御が難しくグラフェンに開く通水孔の大きさも不均一であったため、均一な通水孔が必要になるフィルター成形体に用いるには不適当であった。
また、燃焼中に発生した樹脂等の支持体の燃えカスがグラフェンを汚染し、フィルター成形体の性能を低下させることがあった。
【0006】
また、グラフェンの他にカーボンナノチューブ(特許文献4)やカーボンナノホーン(特許文献5)を用いたイオン選択フィルターもあった。
カーボンナノ素材に通水孔を形成する他の方法としては、酸素供給手段として硝酸塩をカーボンナノ素材に付着させ、300℃の真空または不活性ガス中で加熱して孔を形成するものがあった(特許文献6)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、カーボンナノ素材に所望の大きさの孔を均一に形成することを課題とする。
また、所望の大きさの通水孔を有するグラフェンを用いたフィルター成形体を、容易な工程で製造することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明において、上記課題が解決される手段は以下の通りである。
第1の発明は、カーボンナノ素材に所望の大きさの孔を形成するカーボンナノ素材の穿孔方法であって、上記カーボンナノ素材を、160−250℃の酸素を含有する空気中で所定時間、低温加熱保持することを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、濾過材としてグラフェンの層を有するフィルター成形体の製造方法であって、グラフェン用初期基板上に形成されたグラフェンの層に、予め通水孔を穿設された支持体の層を貼り付ける工程と、上記グラフェンの層を160−250℃の酸素を含有する空気中で所定時間、低温加熱保持し通水孔を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、上記支持体がフィルムレジストであり、上記フィルムレジストを露光させ安定させる工程を含むことを特徴とする。
【0012】
第4の発明は、上記グラフェンの層を低温加熱保持し通水孔を形成する工程が、200−250℃の酸素を含有する空気中で行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明および第2の発明によれば、グラフェン等のカーボンナノ素材の層を160−250℃の酸素を含有する空気中で所定時間、低温加熱保持して孔を形成することにより、反応が穏やかで制御が容易となり、加熱時間の長短の制御によってカーボンナノ素材に所望の大きさの孔を均一に形成することができる。また、カーボンナノ素材を低温で加熱することにより、支持体の破損を防止することができるため、カーボンナノ素材の汚損も防止することができる。
【0014】
第2の発明によれば、予め通水孔を穿設された支持体を用いることにより、グラフェンが破損する原因となる転写工程を経ずにフィルター成形体を形成することができる。
また、実際にフィルターとして働くのは、グラフェンにおいて支持体の通水孔が形成された箇所であるところ、支持体に予め通水孔を穿設したことにより、この箇所ではグラフェンの層が支持体に触れることがないので、グラフェンが支持体の残滓によって汚損されるおそれがない。
【0015】
第3の発明によれば、上記支持体がフィルムレジストであり、上記フィルムレジストを露光させ安定させる工程を含むことにより、グラフェンを保護するために貼り付けるフィルムレジストをそのまま支持体として用いることができ、容易にフィルター成形体を形成することができる。
【0016】
第4の発明によれば、上記グラフェンの層を低温加熱保持し通水孔を形成する工程が、200−250℃の酸素を含有する空気中で行われることにより、比較的短時間で確実にグラフェンに通水孔を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係るフィルター成形体の製造方法について説明する。
このフィルター成形体には、フィルターとしてグラフェンを用いている。
図1(1)に示すように、グラフェンには、基板である銅箔2の上に成長させたグラフェン1を用いる。
グラフェン1としては単層グラフェンを用いるのが好ましいが、複層であってもよい。また、銅箔2の下にSi基板があるものであってもよく、その場合には試薬でSi基板を除去して用いることができる。さらに、グラフェンが銅箔2以外の材料からなるグラフェン用初期基板上に保持されているものでもよい。
グラフェン1は、単結晶のグラフェンで結晶サイズが大きいものであり、単層であることが望ましい。
この実施形態ではグラフェンプラットフォーム株式会社製の銅箔上に形成された単層グラフェンを用いた。
【0019】
図1(1)に示すように、フィルター成形体においてグラフェン1を保持する支持体には、フォトレジストからなるフィルムレジスト3を用いた。
ここで用いるフォトレジストに必要な性能は、支持体として使うことができるくらい丈夫であること、露光によって現像液への溶解性が低下するネガ型のフォトレジストであること、および、ポリイミドやエポキシ樹脂のように高い耐熱性を有する樹脂であることである。
この実施形態では、エポキシ樹脂製のソルダーレジストとしてプリント基板の絶縁膜などに用いられる、日立化成株式会社製のフィルムレジスト「レイテック」を用いる。
レイテックは、保護層4、レジスト層5、支持層6の3層構造を有しているフィルムレジストである。レジスト層5はエポキシ樹脂製のソルダーレジストからなる層である。支持層6はレジスト層5の一面の上に形成され、レジスト層5を保護している。保護層4はレジスト層5の反対面に貼り付けられ、グラフェン1に貼り付けるまでの間、レジスト層5を保護する役割がある。保護層4および支持層6は、それぞれ手で摘んでレジスト層5から剥がすことができる。
フィルムレジスト3は厚いほうがフィルターとして使いやすいため、なるべく厚いフィルムレジストを使うことが好ましい。この実施形態では、膜厚30μmのレイテック(型番FZ−2730GA)を用いる。
【0020】
図1(2)に示すように、フィルムレジスト3には、グラフェン1に貼り付ける前に、水を通すための通水孔を予め開けておく。
孔開けには、穿孔器として生検トレパンを用いる。
例として、直径1mmの生検トレパンを使用してフィルムレジスト3に通水孔を開けていく。間隔は、例えば3mm間隔で格子状などにすることができる。
この作業は、フィルムレジスト3の感光を防止するためにイエロールームで行う。
【0021】
図1(3)に示すように、グラフェン1とフィルムレジスト3とからフィルター成形体を形成するためには、まず、フィルムレジスト3をグラフェン1に貼り付ける。
フィルムレジスト3とグラフェン1との間の空気を抜いてしっかり圧着するため、貼り付けには、真空ラミネーターを用いる。例えば、株式会社名機製作所のMVLP−600などの半導体プロセス用のラミネーターが最適であるが、家庭用のラミネーターや簡易型のラミネーターを用いてもよい。
フィルムレジスト3の保護層4を手で剥がし、銅箔2上に形成されたグラフェン1の層にレジスト層5が密着するように載せて、ラミネーターフィルムの中に入れ、真空ラミネーターで−50kPaで20秒真空圧着する。
この工程も、フィルムレジスト3の感光を防止するためにイエロールームで行う。
【0022】
次いで、
図1(4)に示すように、グラフェン1およびフィルムレジスト3をラミネーターフィルムから取り出して、80℃に加熱したホットプレートの上で60秒加熱し、その後室温まで自然冷却させる。この工程で、レジスト層5がグラフェン1に接着する。
その後、25℃で15分静置する。ここでフィルムレジスト3(レジスト層5)を落ち着かせることにより、後述する露光を均一に行うことができる。
次いで、フィルムレジスト3の支持層を手で剥がして、レジスト層5を露出させる。
これらの工程も、フィルムレジスト3の感光を防止するためにイエロールームで行う。
【0023】
次いで、フィルムレジスト3を露光することにより、フィルムレジスト3のレジスト層5を安定させ、溶媒に溶けないようにする。
露光の工程では、高圧水銀灯を用いてi線を180mJ/cm
2照射する。
例えば、マスクアライナーにマスクをセットしないで照射したり、石英板をダミーのマスクとしてセットして照射すればよい。
露光後には、25℃で30分ほど静置する。
【0024】
次いで、
図1(5)に示すように、グラフェン1上の銅箔2を除去する。
機械的に剥がすとグラフェン1が破壊されてしまうため、エッチングで銅箔2を溶かして除去する。
0.5mol/l塩酸・0.5mol/l塩化鉄(III)混合水溶液、50℃のCuエッチング溶液に、銅箔2の面を下にして、グラフェン1およびフィルムレジスト3を浮かべる。1時間静置して、銅箔2が残っていないか目視で確認し、エッチングが不十分であればさらに10分エッチングして目視で確認することを繰り返す。
【0025】
銅箔2が完全に除去できたことを確認したら、グラフェン1の面を下に向けて、グラフェン1およびフィルムレジスト3を超純水に浮かべる。
その後、超純水を入れ換えて同じ洗浄を2回行い、エッチング液を除去する。
次いで、グラフェン1およびフィルムレジスト3をIPAでリンスし、予め160℃にしておいたクリーンオーブンに入れて1時間加熱する。加熱の工程によって、レジスト層5の重合が進み、フィルムレジスト3が硬化する。
【0026】
次に、
図1(6)のように、グラフェン1に水を通過させるための通水孔を形成する。この通水孔は、水は通過できるが、不純物やイオンが通過できない大きさである必要がある。
銅箔2を除去した後にグラフェン1の孔開けを行うのは、銅箔2が残っていると触媒となり、加熱時にグラフェン1を燃焼させてしまうからである。
【0027】
孔開けは、160−250℃の空気中で所定時間加熱することで行う。
本明細書において空気中とは、O
2約20%、N
2約80%の混合気体には限られず、O
2を1%以上含むものであれば、その他の含有気体については限定されず、希ガスやその他の気体を含む混合気体が広く許容される。
【0028】
従来、300℃未満の低温では、グラフェンの穿孔は生じないと考えられていた。
しかし、160−250℃の低温ではフィルムレジスト3が破損せず、またグラフェン1に徐々にゆっくりと孔が開いて拡がっていくため、加熱時間の長短によって通水孔の大きさを制御することができる。また、200−250℃空気中で通水孔を開けると、燃えカスが発生しないためきれいな表面を保ったまま通水孔を開けることができる。
160℃未満では長時間加熱をしても、グラフェンにほとんど孔を形成することできない。また、250℃以上では反応が急激になり孔を所望の大きさにコントロールすることが難しく、また孔の大きさが不均一になってしまう。
また、低温加熱の温度は、特に200−250℃に設定するのが望ましい。
たとえば、200℃の空気中に20時間置いて通水孔を形成すると、このように製造したフィルター成形体は、海水から塩分を除去して真水にすることができる。
【0029】
また、所定時間とは、160−250℃の雰囲気を保持した状態で、グラフェンに孔を形成する効果をもたらす時間をいう。
【0030】
なお、上記実施例では支持体としてフィルムレジストを用いたが、支持体は上記のグラフェン1の低温加熱処理に影響を及ぼさず、かつ、フィルターとしてグラフェンを支持し得る素材であればよく、例えば、グラフェン1に対し粘着性を有する樹脂その他の素材を支持体として用いたり、樹脂その他の支持体と耐熱性の粘着剤を併用する等してもよい。
【0031】
このようにして製造したフィルター成形体は、
図6に示すように、メンブレンフィルターを用いた浄水装置のフィルターとして用いることができる。
たとえば、クラフトパンチ(カール事務器株式会社製など)を使ってフィルター成形体を1/2インチの円形に切り取る。このフィルター成形体のレジスト層5を上流に向け、グラフェン1の層を下流に向けて、1/2インチのメンブレンフィルターの下流に取り付け、メンブレンフィルターホルダー7にセットする。
メンブレンフィルターとしては、例えばポリカーボネート製メンブレンフィルターであるメルク株式会社製の「アイソポアGTTP」(孔径0.2μm)を使用することができる。
メンブレンフィルターホルダー7としては、例えばメルク株式会社製の「スウィネックス」を用いることができる。
このような浄水装置を用いて溶液の濾過を行うには、シリンジ8に濾過する溶液(例えば海水など)を入れて、フィルターホルダーに接続し、シリンジ8を押して溶液を濾過することにより、不純物やイオンを除去した水を得ることができる。
【0032】
<試験>
本発明の効果を測定するために試験を行った。
測定試験のため、単層ナノホーン(SWNH)を用いる。SWNHは、基本的な構造はグラフェンと同じであるが、円錐形状に形成されている。
この試験では、カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン合同会社の吸着測定装置、Autosorb-iQ を用いて、77Kでの窒素の吸着量を測定した。SWNHの外側に窒素ガスを供給し、所定時間後に窒素ガスの量を測定する。SWNHの周面に窒素が通過できる孔が存在する場合には、窒素がSWNHの内部に入り込み内壁に吸着するため、供給した窒素の量と試験後のSWNH外部の窒素の量との差によって窒素吸着量がわかり、孔の径および数の大小が把握できる。
【0033】
図2(a)では、処理をしていないSWNH、SWNHを250℃の空気中で20時間処理したもの、SWNHを250℃の空気中で70時間処理したものを用意し、それぞれについて、相対気圧を変えて窒素を供給し、窒素吸着量を測定した。
20時間処理したSWNHは、処理をしていないSWNHに比べて、低圧下から高圧下にかけて窒素吸着量が大きく増えており、窒素が通過する孔が形成されたことがわかる。
また、70時間処理したSWNHは、20時間処理したSWNHに比べて吸着量が増えており、これは、孔が開いたSWNHの数が増えたことを意味する。つまり、形成された孔の数が増え結果的に孔の開いたSWNHの割合が増えることで吸着量が大きくなったためである。したがって、孔の数が増えたことがわかる。
【0034】
図2(b)では、処理をしていないSWNH、SWNHを200℃の空気中で20時間処理したもの、SWNHを200℃の空気中で70時間処理したもの、SWNHを200℃の空気中で100時間処理したもの、SWNHを200℃の空気中で150時間処理したものを用意し、それぞれについて、相対気圧を変えて窒素を供給し、窒素吸着量を測定した。
SNWHを200℃で処理すると、250℃で処理したときほどではないが、処理時間を長くするにつれて炭素吸着量が大きくなっている。すなわち、処理時間を長くするほど孔の数が増えたことがわかる。
【0035】
図3では、処理をしていないSWNH、SWNHを180℃の空気中で50時間処理したもの、SWNHを180℃の空気中で70時間処理したものを用意し、それぞれについて、相対気圧を変えて窒素を供給し、窒素吸着量を測定した。
50時間処理したSNWHは、処理していないSNWHに比べて、低圧下から高圧下にかけて窒素吸着量が増えており、窒素が通過する孔が形成されたことがわかる。
他方、70時間処理したSNWHは、50時間処理したSNWHに比べて窒素吸着量がほぼ増えていない。そのため、180℃では処理時間を増やしても孔の数がほとんど増大しないことがわかった。
【0036】
次に、孔を形成したグラフェンについて、イオン選択性を測定する。
カチオンの水和イオン半径は、Li
+>Na
+>K
+>Rb
+>Cs
+であるため、それぞれのイオンの透過度によってグラフェンを用いたフィルターのイオン選択性を測定する。
試験は、20μmol/LのLi,Na,K,Rb,Cs混合溶液6mLに24mgのSWNHを入れて、30℃で24時間静置した後、溶液のイオン濃度をイオンクロマトグラフで測定した。カチオンがSWNHに開いた孔を通ってSWNHの内部に付着すれば、測定されるイオン濃度は小さくなる。
図4(a)(b)は、その濃度変化から、孔を透過したイオンの量を測定したものである。
【0037】
図4(a)では、SWNHを250℃の空気中で20時間処理したもの、SWNHを250℃の空気中で70時間処理したもの、SWNHを250℃の空気中で100時間処理したものを用意し、混合溶液に入れた。
この結果、処理時間の長短に関係なく、全てのカチオンが透過していることがわかる。そのため、250℃で20時間以上処理すると、SWNHに形成される孔が大きくなりイオン選択性を有しないことがわかった。
【0038】
図4(b)では、SWNHを200℃の空気中で20時間処理したもの、SWNHを200℃の空気中で50時間処理したもの、SWNHを200℃の空気中で70時間処理したもの、SWNHを200℃の空気中で100時間処理したもの、SWNHを200℃の空気中で150時間処理したものを用意し、混合溶液に入れた。
この結果、20時間処理したSWNHでは、LiやNaのように水和イオン半径が大きいイオンはほとんど透過せず、K,Rb,Csのように水和イオン半径が小さいイオンが透過していることがわかった。
他方、50時間以上処理したSWNHでは、孔が大きくなり全てのイオンが透過していることがわかった。
【0039】
図5は、処理時間を20時間に統一して、加熱温度ごとのイオン選択性を比較したものである。
SWNHを140℃の空気中で20時間処理したもの、SWNHを160℃の空気中で20時間処理したもの、SWNHを180℃の空気中で20時間処理したもの、SWNHを200℃の空気中で20時間処理したもの、SWNHを250℃の空気中で20時間処理したものを用意し、混合溶液に入れた。
140℃で処理したSWNHでは、孔がほとんど開かず、イオンがほとんど透過していないことがわかる。
160℃で処理したSWNHおよび180℃で処理したSWNHでは、孔が小さく少量のイオンしか通過していないことがわかる。また、K,Rb,Csの透過量も小さく、イオン選択性を有しないことがわかる。
200℃で処理したSWNHは、Li,Naの透過量が小さく、K,Rb,Csの透過量が大きいため、イオン選択性を有することがわかる。
250℃で処理したSWNHは、全てのイオンの透過量が大きくなっていることがわかる。
【0040】
また、
図7では、
図6のように、上述したようにグラフェン1をメンブレンフィルターホルダー7にセットし、シリンジ8から20μmol/LのLi,Na,K,Rb,Cs混合溶液を透過させて、透過液のイオン濃度を測定した。
グラフェンは、160℃で20時間処理したもの、200℃で20時間処理したもの、250℃で20時間処理したものを用意した。
【0041】
この結果、
図7のように、160℃で処理したグラフェンは孔が小さく、各イオンをほとんど透過させなかった。
200℃で処理したグラフェンは、Li,Naをほとんど透過させず、K,Rb,Csを透過させることがわかった。
250℃で処理したグラフェンは孔が大きく、全てのイオンを透過させることがわかった。