(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記側面部分は、それぞれ前記回転軸を中心とする半径方向に垂直な方向に伸び、前記基板の厚さ方向に配列された、第3副側面部および第4副側面部を有し、第3副側面部および第4副側面部は、前記回転軸から遠ざかる方向に窪んだ溝を形成している請求項1に記載の試料分析用基板。
前記磁石は、前記第1主面に垂直な方向から見て、前記側面部分の両端における磁束密度が前記側面部分の前記両端以外の部分における磁束密度小さくなるように構成されている請求項3から8のいずれかに記載の試料分析用基板。
前記磁石は、前記第1主面に垂直な方向から見て、前記回転軸側に突出した弓形形状を有しており、前記回転軸側および回転軸と反対側にそれぞれ異なる磁極を有する請求項9に記載の試料分析用基板。
前記流路は、前記回転軸側に凸状の折れ曲がり構造を有し、前記折れ曲がり構造の頂点部分は、第1チャンバーに液体が入っている場合において、液体の液面位置よりも回転軸側に位置している請求項13に記載の試料分析用基板。
【発明を実施するための形態】
【0010】
尿や血液等の検体の成分の分析法には、分析対象物であるアナライトと、アナライトと特異的に結合するリガンドとの結合反応が用いられる場合がある。このような分析法には、例えば、免疫測定法や遺伝子診断法が挙げられる。
【0011】
免疫測定法の一例として、競合法および非競合法(サンドイッチイムノアッセイ法)が挙げられる。また、遺伝子診断法の一例として、ハイブリダイゼーションによる遺伝子検出法が挙げられる。これら免疫測定法や遺伝子検出法は、例えば、磁性粒子(「磁性ビーズ」、「磁気粒子」または「磁気ビーズ」等と称することもある。)が用いられる。これら分析法の一例として、磁性粒子を用いたサンドイッチイムノアッセイ法で具体的に説明する。
【0012】
図1に示すように、まず、磁性粒子302の表面に固定化された一次抗体304(以下、「磁性粒子固定化抗体305」と称する。)と測定対象物である抗原306とを抗原抗体反応とにより結合させる。次に標識物質307が結合された2次抗体(以下、「標識抗体308」と称する。)と抗原306とを抗原抗体反応により結合させる。これにより、抗原306に対して磁性粒子固定化抗体305及び標識抗体308が結合した複合体310が得られる。
【0013】
この複合体310に結合した標識抗体308の標識物質307に基づくシグナルを検出し、検出したシグナルの量に応じて抗原濃度を測定する。標識物質307には、例えば、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、ルシフェラーゼ等がある。)、化学発光物質、電気化学発光物質、蛍光物質等が挙げられ、それぞれの標識物質307に応じた色素、発光、蛍光等のシグナルを検出する。
【0014】
この一連の反応において、反応物である複合体310を得る上で、検体中の未反応物、磁性粒子等に非特異的に吸着した物質、複合体310の形成に関与しなかった標識抗体308等である未反応物とを分離する必要がある。この分離をB/F分離(Bound/Free Separation)と呼ぶ。競合法による免疫測定法やハイブリダイゼーションによる遺伝子検出法においても、同様に、B/F分離の工程が必要である。磁性粒子を用いない場合は、例えば、ポリスチレンやポリカーボネートといった素材で構成された固相に対し、物理吸着により固定化されたリガンド、化学結合により固相に固定化されたリガンド、金等で構成された金属基板表面へ固定化(たとえば、自己組織化単分子膜(SAM:self−Assembled Monolayer)を用いた固定化)されたリガンドを用いる場合等が挙げられる。このB/F分離を行うには、試料分析用基板において、溶液(検体溶液、反応溶液、洗浄液等)中の磁性粒子を磁石の磁力により確実に捕捉しつつ、溶液を除去しなければならない。
【0015】
本願発明者らは、特許文献1に開示された技術に基づき、試料分析用基板の回転制御及び流路・チャンバー設計により、B/F分離を行うことができる技術を詳細に検討した。その結果、磁性粒子を含む溶液に対してB/F分離を行う場である第1チャンバーと、第1チャンバー中から除去された溶液を収納する第2チャンバーと、第1チャンバーと第2チャンバーと連結し、毛細管流路からなる流路を備える試料分析用基板を用い、第1チャンバー中の磁性粒子を磁石で捕捉しつつ、試料分析用基板を回転させることにより、その回転力と流路の毛細管現象により、第1チャンバー内で磁性粒子を保持しつつ、溶液を第1チャンバーから第2チャンバーへ排出させる構成を想到した。また、磁石の配置を工夫することにより、より確実なB/F分離を行うことのできる試料分析用基板を想到した。本願の一態様に係る試料分析用基板、試料分析装置、試料分析システムおよび磁性粒子を含む液体から液体を取り除く方法の概要は以下の通りである。
【0016】
[項目1]
回転運動によって液体の移送を行う試料分析用基板であって、
回転軸を有する基板と、
前記基板内に位置し、液体および磁性粒子を保持するための第1空間を有する第1チャンバーと、
前記基板内に位置し、前記第1チャンバーから排出される前記液体を保持するための第2空間を有する第2チャンバーと、
前記基板内に位置し、前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーを接続する経路を有する流路と、
前記基板内において、前記基板の前記第1空間に近接して位置し、前記第1チャンバーにおいて前記磁性粒子を捕捉するための磁石と
を備える試料分析用基板。
[項目2]
前記流路は、毛管路である項目1に記載の試料分析用基板。
[項目3]
前記基板は、前記基板内において前記第1空間を規定する少なくとも1つの内面を有し、
前記少なくとも1つの内面は、前記回転軸から最も遠くに位置する側面部分を含み、前記磁石は、前記少なくとも1つの面の側面部分に近接し、かつ、前記側面部分より前記回転軸から遠くに位置する、項目1または2に記載の試料分析用基板。
[項目4]
前記基板は、第1主面および第2主面を有し、
前記基板の前記少なくとも1つの内面は、前記第1主面および前記第2主面に沿った上面部分および下面部分を含み、
前記流路の第1チャンバーにおける開口は、前記少なくとも1つの内面の前記下面部分と接している、項目1から3のいずれかに記載の試料分析用基板。
[項目5]
前記磁石は、前記流路の前記開口よりも前記上面部分側に位置している項目3に記載の試料分析用基板。
[項目6]
前記基板は、
前記第1主面および前記第2主面の間に位置する側面と、
前記第1主面、前記第2主面および前記側面の少なくともいずれかに開口を有し、前記基板内に位置する収納室と
をさらに備え、
前記磁石は前記収納室に収納されている項目3から5のいずれかに記載の試料分析用基板。
[項目7]
前記側面部分は、前記第1主面に垂直な方向から見て、一端に前記流路が接続されており、
前記回転軸側であって、任意の基準点と前記流路が接続された一端とを結ぶ線に垂直な基準直線をとり、
前記側面部分の前記一端から他端側へ任意の間隔で位置する複数の点a1、a2、a3、・・・ah、ah+1・・・・anをとり、
前記複数の点a1、a2、a3、・・・ah、ah+1・・・・anにおける前記基準点を中心とする接線をとり、
前記複数の点a1、a2、a3、・・・ah、ah+1・・・・anにおける、前記基準直線と接線とがなす角度をα1、α2、α3、・・・αh、αh+1・・・・αnとした場合、
α1≦α2≦α3≦・・・≦αh<αh+1≦・・・・≦αn
の関係を満たし、
前記基準点をどの位置に設定したとしても、前記基準点と点a1、a2、a3、・・・ah、ah+1・・・・anとのそれぞれの距離、d1、d2、d3、・・・dh、dh+1・・・・dnのうち、d1=d2=d3=・・・=dh=dh+1=・・・=dnとなる場合が存在しない項目4に記載の試料分析用基板。
[項目8]
前記側面部分は、前記回転軸を中心とする半径方向と平行であり、かつ、前記第1主面と垂直な断面において、一端に前記流路が接続されており、
前記第1空間内の任意の基準点と前記流路が接続された一端とを結ぶ線に垂直な基準直線をとり、
前記側面部分の前記一端から他端側へ任意の間隔で位置する複数の点a1、a2、a3、・・・ah、ah+1・・・・anをとり、
前記複数の点a1、a2、a3、・・・ah、ah+1・・・・anにおける前記基準点を中心とする接線をとり、
前記複数の点a1、a2、a3、・・・ah、ah+1・・・・anにおける、前記基準直線と接線とがなす角度をα1、α2、α3、・・・αh、αh+1・・・・αnとした場合、
α1≦α2≦α3≦・・・≦αh<αh+1≦・・・・≦αn
の関係を満たしている項目4に記載の試料分析用基板。
[項目9]
前記側面部分は、前記回転軸を中心とする半径方向と平行であり、かつ、前記第1主面と垂直な断面において、前記回転軸から遠ざかる方向に窪んだ凹部を有している、項目1から5のいずれかに記載の試料分析用基板。
[項目10]
前記側面部分は、それぞれ前記回転軸を中心とする半径方向に垂直な方向に伸び、前記基板の厚さ方向に配列された、第3副側面部および第4副側面部を有し、第3副側面部および第4副側面部は、前記回転軸から遠ざかる方向に窪んだ溝を形成している項目1から5のいずれかに記載の試料分析用基板。
[項目11]
前記磁石は、前記第1主面に垂直な方向から見て、前記側面部分の両端における磁束密度が前記側面部分の前記両端以外の部分における磁束密度小さくなるように構成されている項目1から10のいずれかに記載の試料分析用基板。
[項目12]
前記側面部分を前記第1主面に垂直な方向から見た場合において、前記側面部分を任意の位置で2つに分割した場合に、
前記磁石は、一方の分割部分に対応する部分にN極を有し、他方の分割部分に対応する部分にS極を有する項目11に記載の試料分析用基板。
[項目13]
前記磁石は、前記第1主面に垂直な方向から見て、前記回転軸側に突出した弓形形状を有しており、前記回転軸側および回転軸と反対側にそれぞれ異なる磁極を有する項目11に記載の試料分析用基板。
[項目14]
前記基板内において、前記第2チャンバーは、前記第1チャンバーよりも前記回転軸から遠くに位置している項目1から11のいずれかに記載の試料分析用基板。
[項目15]
前記流路は、前記第1チャンバーよりも前記回転軸に近接する位置を経由して、前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーを接続する経路を有する項目1から12のいずれかに記載の試料分析用基板。
[項目16]
前記流路は、前記回転軸側に凸状の折れ曲がり構造を有し、前記折れ曲がり構造の頂点部分は、第1チャンバーに液体が入っている場合において、液体の液面位置よりも回転軸側に位置している項目15に記載の試料分析用基板。
[項目17]
項目1から14のいずれかに記載の試料分析用基板と、
前記回転軸を重力方向に対して0°以上90°以下の角度にした状態で、前記試料分析用基板を前記回転軸周りに回転させるモータ、
前記モータの回転軸の回転角度を検出する回転角度検出回路 、
前記回転角度検出回路の検出結果に基づき、前記モータの回転および停止時の回転角度を制御する駆動回路、および
演算器、メモリおよびメモリに記憶され、前記演算器に実行可能なように構成されたプログラムを含み、前記プログラムに基づき、前記モータ、前記回転角度検出回路、前記原点検出回路および前記駆動回路の動作を制御する制御回路
を有する試料分析装置と、
を備えた試料分析システムであって、
前記第1チャンバーに磁性粒子を含む液体が充填された試料分析用基板が前記試料分析装置に装填された場合において、
(a)前記試料分析用基板を、所定の回転角度で停止させることによって 、前記流路
は、毛細管現象によって、前記第1チャンバーの液体の一部により満たされ、
(b)前記試料分析用基板を前記流路に満たされた前記液体にかかる毛細管力よりも強い遠心力が働く速度で回転させることで、前記磁石で前記磁性粒子を前記第1チャンバー内で捕捉した状態で、前記第1チャンバー内の液体を、前記流路を通って前記第2チャンバーへ移動させる、
試料分析システム。
[項目18]
回転軸および所定の厚さを有する板形状を備えた基板と、前記基板内に位置し、液体および磁性粒子を保持するための第1空間を有する第1チャンバーと、前記基板内において、前記第1空間に近接して位置する収納室とを備え、回転運動によって液体の移送を行う試料分析用基板に適合した試料分析装置であって、
重力方向に対して0度以上90度以下の角度で前記回転軸を傾斜させた状態で、前記試料分析用基板を前記回転軸周りに回転させるモータと、
前記モータの回転軸の角度を検出する回転角度検出回路と、
前記角度検出器の検出結果に基づき、前記モータの回転および停止時の角度を制御する駆動回路と、
磁石と、
前記モータによる回転を停止した状態で、前記試料分析用基板の前記収納室に前記磁石を挿入し、前記収納室に位置する前記磁石を取り外す駆動機構と、
前記モータ、前記回転角度検出回路、前記駆動回路および駆動機構の動作を制御する制御器回路と
を備えた試料分析装置。
[項目19]
回転軸および所定の厚さを有する板形状を備えた基板と、前記基板内に位置し、液体および磁性粒子を保持するための第1空間を有する第1チャンバーと、前記基板内において、前記第1空間に近接して位置し、前記基板の主面に開口を有する収納室とを備え、回転運動によって液体の移送を行う試料分析用基板に適合した試料分析装置であって、
回転軸、前記試料分析用基板を支持する支持面、および、前記支持面から突出し、前記支持面に支持された前記試料分析用基板の前記収納室に挿入される位置に配置された磁石を有するターンテーブルと、
重力方向に対して0度以上90度以下の角度で前記ターンテーブルの回転軸を傾斜させた状態で、前記ターンテーブルを前記回転軸周りに回転させるモータと、
前記モータの回転軸の角度を検出する角度検出器と、
前記角度検出器の検出結果に基づき、前記モータの回転および停止時の角度を制御する駆動回路と、
前記モータ、前記角度検出器および前記駆動回路の動作を制御する制御回路と、
を備えた試料分析装置。
[項目20]
回転軸を有する基板と、前記基板内に位置する第1チャンバーと、前記基板内に位置する第2チャンバーと、前記基板内に位置し、前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーを接続する経路を有し、毛管路である流路とを備え、前記基板の前記第1空間に近接して磁石が配置された試料分析用基板を用意し、
前試料分析用基板の第1チャンバーに磁性粒子を含む液体を導入し、毛細管現象によって前記流路内に前記液体の一部を満たし、
前記試料分析用基板を前記回転軸周りに前記流路に満たされた前記液体にかかる毛細管力よりも強い遠心力が働く速度で回転させることによって、前記磁性粒子を前記第1チャンバー内で捕捉しながら、前記液体を前記第1チャンバーから前記第2チャンバーへ移送させる、磁性粒子を含む液体から液体を取り除く方法。
「[項目21]
前記第1チャンバーは、第1空間を有し、
前記基板は、前記第1空間を規定する少なくとも1つの内面を有し、
前記少なくとも1つの内面は、前記回転軸から最も遠くに位置する側面部分を含み、
前記磁石は、前記少なくとも1つの面の側面部分に近接し、かつ、前記側面部分より前記回転軸から遠くに位置 するよう配置される、項目20に記載の磁性粒子を含む液体から液体を取り除く方法。
【0017】
図2Aは、試料分析システム501の全体の構成を示す模式図である。試料分析システム501は、試料分析用基板100と試料分析装置200とを含む。
【0018】
(試料分析装置200の構成)
試料分析装置200は、モータ201と、原点検出器203と、回転角度検出回路204と、制御回路205と、駆動回路206と、光学測定ユニット207とを備える。
【0019】
モータ201は、ターンテーブル201aおよび重力方向に対して0°以上90°以下の角度θで重力方向から傾いた回転軸Aを有し、ターンテーブル201aに載置された試料分析用基板100を回転軸A周りに回転させる。回転軸Aを0°より大きく90°以下に傾けることにより、試料分析用基板100における液体の移送に、回転による遠心力に加え、重力による移送を利用することができる。回転軸Aの重力方向に対する傾斜角度は、5°以上であることが好ましく、10°以上45°以下であることがより好ましく、20°以上30°以下であることがさらに好ましい。モータ201は例えば、直流モータ、ブラシレスモータ、超音波モータ等であってよい。
【0020】
原点検出器203は、モータ201に取り付けられた試料分析用基板100の原点を検出する。例えば、
図2Bに示すように、原点検出器203は、光源203a、受光素子203bおよび原点検出回路203cを含み、光源203aと受光素子203bとの間に試料分析用基板100が位置するように配置される。例えば、光源203aは発光ダイオードであり、受光素子203bはフォトダイオードである。試料分析用基板100は特定の位置に設けられたマーカ210を有する。マーカ210は例えば、光源203aから出射する光の少なくとも一部を遮光する遮光性を有する。試料分析用基板100において、マーカ210の領域は透過率が小さく(例えば10%以下)、マーカ210以外の領域では透過率が大きい(例えば60%以上)。
【0021】
試料分析用基板100がモータ201によって回転すると、受光素子203bは、入射する光の光量に応じた検出信号を原点検出回路203cへ出力する。回転方向に応じて、マーカ210のエッジ210aおよびエッジ210bにおいて検出信号は増大または低下する。原点検出回路203cは、例えば、試料分析用基板100が矢印で示すように、時計回りに回転している場合において、検出光量の低下を検出し、原点信号として出力する。本明細書では、マーカ210のエッジ210aの位置を、試料分析用基板10の原点位置(試料分析用基板100の基準となる角度位置)として取り扱う。ただし、マーカ210のエッジ210aの位置から任意に定められる特定の角度の位置を原点として定めてもよい。また、マーカ210が扇形であり、その中心角が、試料分析に必要な角度の検出精度よりも小さい場合には、マーカ210自体を原点位置として定めてもよい。
【0022】
原点位置は、試料分析装置200が試料分析用基板100の回転角度の情報を取得するために利用される。原点検出器203は、他の構成を備えていてもよい。例えば、試料分析用基板100に原点検出用の磁石を備え、原点検出器203は、受光素子203bの代わりに、この磁石の磁気を検出する磁気検出素子を備えていてもよい。また、後述する磁性粒子を捕捉するための磁石を原点検出に用いてもよい。また、試料分析用基板100がターンテーブル201aに特定の回転角度でのみ取り付け可能である場合には、原点検出器203はなくてもよい。
【0023】
回転角度検出回路204は、モータ201の回転軸Aの回転角度を検出する。例えば、回転角度検出回路204は回転軸Aに取り付けられたロータリーエンコーダであってもよい。モータ201がブラシレスモータである場合には、回転角度検出回路204は、ブラシレスモータに備えられているホール素子およびホール素子の出力信号を受け取り、回転軸Aの角度を出力する検出回路を備えていてもよい。
【0024】
駆動回路206はモータ201を回転させる。具体的には、制御回路205からの指令に基づき、試料分析用基板100を時計方向または反時計方向に回転させる。また、回転角度検出回路204および原点検出器203の検出結果および試料分析用基板100を制御回路205からの指令に基づき、揺動および回転の停止を行う。
【0025】
光学測定ユニット207は、試料分析用基板100に保持された複合体310(
図1)に結合した標識抗体308の標識物質307に応じたシグナル(例えば、色素、発光、蛍光等)を検出する。
【0026】
制御回路205は、たとえば試料分析装置200に設けられたCPUである。制御回路205は、RAM(Random Access Memory;図示せず)に読み込まれたコンピュータプログラムを実行することにより、当該コンピュータプログラムの手順にしたがって他の回路に命令を送る。その命令を受けた各回路は、本明細書において説明されるように動作して、各回路の機能を実現する。制御回路205からの命令は、たとえば
図2Aに示されるように、駆動回路206、回転角度検出回路204、光学測定ユニット207等に送られる。コンピュータプログラムの手順は、添付の図面におけるフローチャートによって示されている。
【0027】
なお、コンピュータプログラムが読み込まれたRAM、換言すると、コンピュータプログラムを格納するRAMは、揮発性であってもよいし、不揮発性であってもよい。揮発性RAMは、電力を供給しなければ記憶している情報を保持できないRAMである。たとえば、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)は、典型的な揮発性RAMである。不揮発性RAMは、電力を供給しなくても情報を保持できるRAMである。たとえば、磁気抵抗RAM(MRAM)、抵抗変化型メモリ(ReRAM)、強誘電体メモリ (FeRAM)は、不揮発性RAMの例である。本実施の形態においては、不揮発性RAMが採用されることが好ましい。揮発性RAMおよび不揮発性RAMはいずれも、一時的でない(non-transitory)、コンピュータ読み取り可能な記録媒体の例である。また、ハードディスクのような磁気記録媒体や、光ディスクのような光学的記録媒体も一時的でない、コンピュータ読み取り可能な記録媒体の例である。すなわち本開示にかかるコンピュータプログラムは、コンピュータプログラムを電波信号として伝搬させる、大気などの媒体(一時的な媒体)以外の、一時的でない種々のコンピュータ読み取り可能な媒体に記録され得る。
【0028】
本明細書では、制御回路205は回転角度検出回路204および原点検出器203の原点検出回路203cと別個の構成要素として説明している。しかしながら、これらは共通のハードウェアによって実現されていてもよい。たとえば、試料分析装置200に設けられたCPU(コンピュータ)が、制御回路205として機能するコンピュータプログラム、回転角度検出回路204として機能するコンピュータプログラムおよび原点検出器203の原点検出回路203cとして機能するコンピュータプログラムを直列的、または並列的に実行してもよい。これにより、そのCPUを見かけ上、異なる構成要素として動作させることができる。
【0029】
(試料分析用基板100)
図3Aおよび
図3Bは、試料分析用基板100の平面図および分解斜視図である。試料分析用基板100は、回転軸101および回転軸に平行な方向に所定の厚さを有する板形状の基板100’を備える。本実施形態では、試料分析用基板100の基板100’は円形形状を有しているが、多角形形状、楕円形形状、扇形形状等を有していてもよい。基板100’は、2つの主面100c、100dを有している。本実施形態では、主面100cおよび主面100dは互いに平行であり、主面100cおよび主面100dの間隔で規定される基板100’の厚さは、基板100’のどの位置でも同じである。しかし、主面100c、100dは、平行でなくてもよい。例えば、2つの主面の一部分が非平行または平行であってもよいし、全体的に非平行であってもよい。また、基板100’の主面100c、100dの少なくとも一方に凹部または凸部を有する構造を備えていてもよい。試料分析用基板100は、基板100’内に位置する反応チャンバー102と、第1チャンバー103と、第2チャンバー107と、流路104と流路105とを有する。
【0030】
本実施形態では、試料分析用基板100の基板100’は、ベース基板100aとカバー基板100bによって構成されている。反応チャンバー102、第1チャンバー103および第2チャンバー107のそれぞれの空間はベース基板100a内に形成され、カバー基板100bでベース基板100aを覆うことにより、それぞれの空間の上部および下部が形成される。つまり、反応チャンバー102、第1チャンバー103および第2チャンバー107のそれぞれの空間は試料分析用基板100の少なくとも1つの内面によって規定されている。流路104および流路105もベース基板100aに形成されており、カバー基板100bでベース基板100aを覆うことにより、流路104および流路105の空間の上部および下部が形成される。このように、反応チャンバー102、第1チャンバー103、第2チャンバー107、流路104および流路105は基板100’に閉じ込められている。本実施形態では、ベース基板100aおよびカバー基板100bがそれぞれ上面および下面として使用される。基板100’は、例えば、アクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン等の樹脂によって生成され得る。
【0031】
反応チャンバー102は、
図1を参照して説明したように、磁性粒子固定化抗体305と、抗原306を含む検体と、標識抗体308とを反応させて、複合体310を形成させる反応場である。反応チャンバー102の形状に特に制限はない。 本実施形態では、試料分析用基板100は、複合体310を形成させる反応場として、反応チャンバー102を備えている。磁性粒子固定化抗体305、抗原306を含む検体および標識抗体308の反応チャンバー102への移送には、種々の手段を採り得る。例えば、予め磁性粒子固定化抗体305、抗原306を含む検体および標識抗体308を混合させた混合溶液を量りとり、試料分析用基板100内の反応チャンバー102に混合溶液を注入してもよい。また、試料分析用基板100は、磁性粒子固定化抗体305、抗原306を含む検体および標識抗体308のそれぞれを保持するチャンバーと、それぞれのチャンバーと反応チャンバー102とが連結する流路(例えば、毛管路)を備えていてもよい。この場合、磁性粒子固定化抗体305、抗原306を含む検体および標識抗体308をそれぞれのチャンバーに量りとり、各チャンバーに注入された磁性粒子固定化抗体305、抗原306を含む検体および標識抗体308を反応チャンバー102に移送して反応チャンバー102中で混合し、複合体310を形成させてもよい。また、磁性粒子固定化抗体305や標識抗体308を乾燥させてもよい(以下、「ドライ化試薬」と称する。)。この場合、例えば、反応チャンバー102にドライ化試薬を保持させ、抗原306を含む検体溶液を含む液体で溶解させることで複合体310を形成させてもよい。また、測定時にあるチャンバーに保持されたドライ化試薬を所定の溶液で溶解させ、抗原306を含む検体溶液を反応チャンバー102中で混合させることで複合体310を形成させてもよい。
【0032】
反応チャンバー102の空間は、概ね、基板100’の内面である側面部分102a〜102d、上面部分および下面部分によって規定されている。側面部分103a、103bは、回転軸101を中心とする半径方向に位置する。側面部分103aは側面部分103bよりも回転軸101に近接して、側面部分103bは側面部分103aよりも回転軸101から離れて位置する。また、側面部分103c、103dは、
図3Aから理解されるように、側面部分103a、103bを繋いでいる。
【0033】
流路104は反応チャンバー102および第1チャンバー103を接続する経路と、端部104sおよび端部104eを有する。端部104sが反応チャンバー102に接続され、端部104eが第1チャンバー103に接続されている。端部104sは端部104eよりも回転軸101に近接して位置している。この構成によって、複合体310を含む溶液は、試料分析用基板100の回転による遠心力を受け、流路104を介して、第1チャンバー103へ移送される。また、端部104sは反応チャンバー102の側面部分のうち最も外周側(回転軸101から離れている)に位置する側面部分102bに設けられていることが好ましい。試料分析用基板100の回転による遠心力を受け、複合体310を含む溶液が側面部分102bに支持されるからである。端部104sは、側面部分102bに隣接する側面部分102cであって、側面部分102bに近接している位置に設けてもよい。特に、端部104sは、側面部分102cに設けられ、側面部分102b及び側面部分102cの接続部分を含む位置に設けられることが好ましい。
【0034】
第1チャンバー103において、複合体310を含む溶液のB/F分離が行われる。このために、試料分析用基板100は、磁石106を含む。磁石106は、基板100’内において、第1チャンバー103の空間に近接して位置している。
【0035】
より具体的には、第1チャンバー103の空間は、概ね、基板100’の内面である側面部分103a〜103d、上面部分103eおよび下面部分103fによって規定されている。側面部分103a、103bは、回転軸101を中心とする半径方向に位置する。また、側面部分103c、103dは、
図3Aから理解されるように、側面部分103a、103bを繋ぐ側面である。上面部分103eおよび下面部分103fは、基板100’の板形状の2つの主面100c、100dに概ね沿っている。側面部分103a〜103dは、上面部分103eおよび下面部分103fの間に位置している。
【0036】
反応チャンバー102の2つの側面部分のうち、回転軸101から離れて位置する側面部分102bは、第1チャンバー103の側面部分103bよりも回転軸101に近接して位置していることが好ましい。より好ましくは、反応チャンバー102の側面部分102bは、第1チャンバー103の側面部分103aよりも回転軸101に近接して位置していることが好ましい。この構成によって、反応チャンバー102内の複合体310を含む溶液が、保持されている量によらず第1チャンバー103へすべて移動し得る。
【0037】
第1チャンバー103の空間を規定する基板100’の内面は、隣接する2つの側面部分の境界、あるいは、側面部分と上面部分または下面部分との境界が明瞭な稜線によって分けられていなくてもよい。例えば、第1チャンバー103の空間の形状は扁平な球あるいは、回転楕円体であってもよい。この場合、回転軸101を中心とする半径方向に概ね垂直な一対の部分および平行な一対の部分を側面部分と呼び、基板100’の板形状の2つの主面100c、100dに概ね平行な一対の部分を上面部分及び下面部分と呼ぶ。反応チャンバー102および第2チャンバー107も同様である。
【0038】
磁石106は、これらの内面のうち、回転軸101から最も遠くに位置し、基板100’の厚さ方向に伸びる側面部分に近接して配置されている。本実施形態では、磁石106は、側面部分130bに近接して配置される。磁石106はB/F分離に応じて着脱可能に構成されていてもよいし、試料分析用基板に着脱不能に取り付けられていてもよい。磁石106を着脱可能に構成した場合には、例えば、基板100’は、磁石106を収納することができる収納室を備える。例えば、
図3Cに示すように、基板100’は、主面100cに開口120aを有する凹状の収納室120を備えていてもよい。収納室120は磁石106を収納可能な空間を有する。開口120aから収納室120に磁石106を挿入することにより、磁石106を基板100’に装填することができる。収納室120の開口120aは、主面100dに設けてもよいし、2つの主面100c、100dの間に位置する側面に設けてもよい。
【0039】
磁石106は、例えば、磁気粒子を用いた競合法による免疫測定法に一般的に用いられる磁石である。具体的には、フェライト磁石、ネオジム磁石等を用いることができる。特に、ネオジム磁石は磁力が強いため、好適に磁石106に用いることができる。
【0040】
図3Dは、第1チャンバー103および磁石106を含む断面(
図Aにおける3D-3D破線)を示している。
図3Dに示すように、流路105の第1チャンバー103における開口は、下面部分103fと接している。また、磁石106は、流路105の開口よりも上面部分103e側に位置している。
【0041】
図3Aに示すように、流路105は第1チャンバー103および第2チャンバー107を接続する経路と、端部105sおよび端部105eを有する。端部105sが第1チャンバー103に接続され、端部105eが第2チャンバー107に接続されている。端部105sは端部105eよりも回転軸101に近接して位置している。この構成によって、複合体310を含む溶液からB/F分離によって分離された液体が、試料分析用基板100の回転による遠心力を受け、流路105を介して第2チャンバー107へ移送される。
【0042】
端部105sは第1チャンバー103の側面部分のうち最も外周側(回転軸101から離れている)に位置する側面部分103bに設けられていることが好ましい。試料分析用基板100の回転による遠心力を受け、複合体310を含む溶液が側面部分103bに支持されるからである。しかし、側面部分103bに隣接する側面部分103dであって、側面部分103bに近接している位置に設けてもよい。特に、端部105sは、側面部分103bに設けられ、側面部分103b及び側面部分103dの接続部分を含む位置に設けられることが好ましい。
【0043】
第1チャンバー103の側面部分103bは、第2チャンバー107の空間を規定し、回転軸101を中心とする半径方向に位置する2つの側面部分のうち、回転軸101から離れて位置する側面部分107bよりも回転軸101に近接して位置していることが好ましい。より好ましくは、第1チャンバー103の側面部分103bは、第2チャンバー107の側面部分107aよりも回転軸101に近接して位置していることが好ましい。この構成によって、第1チャンバー103内の溶液がすべて第2チャンバー107へ移動し得る。
【0044】
流路を介したチャンバー間の液体の移送は、種々の方法で実現することが可能である。たとえば、重力による移送および毛細管力と回転による遠心力とによる移送を利用することができる。以下この2つの移送方法を概括的に説明する。
【0045】
たとえば、試料分析用基板100を回転軸Aが鉛直方向に対して0度より大きく90度以下の範囲で傾けて支持する。そして、試料分析用基板100の回転角度位置を変更することにより、液体が存在する移送元のチャンバーを、移送先のチャンバーよりも高い位置に配置させる。「高い」とは鉛直方向でより上にあることを言う。これにより、重力を利用して液体を他のチャンバーに移送し得る。この場合、チャンバー間を連結する流路は、毛管路ではない。「毛管路」は、毛細管現象により内部に液体を満たすことができる狭い空間を有する流路を指す。
【0046】
また、毛管路を利用し、液体を他のチャンバーに移送をすることもできる。毛管路の液体の移送について、毛細管空間ではないチャンバーAおよびチャンバーBと、チャンバーAとチャンバーBを接続する毛管路を有する構成を例に挙げて説明する。チャンバーAに保持された液体は、チャンバーAと毛管路と接続部分である開口に接触すると、液体は毛細管力により毛管路内に吸引され、その流路内部が液体で満たされる。しかしながら、流路内部の液体にかかる毛細管力以下の遠心力を流路内部の液体にかけることができる回転数(停止状態も含む)で試料分析用基板100を回転させると、毛管路内の液体は、チャンバーBへは移送されず、毛細管空間内に留まっている。このように毛細管現象により毛管路内部で液体を満たすには、チャンバーB側、すなわち、毛管路の出口側に空気孔(外部環境とチャンバーとの空気の通り道)を備えなければならない。また、チャンバーA、チャンバーBおよび毛管路といった閉鎖された空間内で毛細管現象による液体の移送を行うには、各チャンバーおよび流路内の気圧の関係から、チャンバーA側、すなわち毛管路の入口側にも空気孔を設けなければならない。そして、チャンバーBが、回転軸に対してチャンバーAよりも遠い位置に配置されていれば、この毛管路に液体が満たされている状態で、毛管路内部の液体にかかる毛細管力よりも大きい遠心力をかけることができる回転数で試料分析用基板100を回転させると、その遠心力によりチャンバーA中の液体をチャンバーBに移送することができる。
【0047】
液体を毛細管力および回転による遠心力によって移送する場合、例えば、直径60mmの試料分析用基板100を100rpmから8000rpmの範囲で回転させることができる。回転速度は各チャンバーおよび流路の形状、液体の物性、液体の移送や処理のタイミング等に応じて決定される。
【0048】
反応チャンバー102、第1チャンバー103および第2チャンバー107の空間の大きさは、例えば、10μl〜500μl程度である。流路104および流路105は、毛細管現象により反応チャンバー102および第1チャンバー103に保持された液体で満たすことができるようなサイズで構成されていることが好ましい。つまり、流路104および流路105は、毛管路(capillary channel)あるいは毛細管(capillary tube)であることが好ましい。例えば、流路104および流路105のそれぞれの伸びる方向に垂直な断面は、0.1mm〜5mmの幅および50μm〜300μmの深さ、を有していてもよく、50μ以上(好ましくは50μm〜300μm)の幅および0.1mm〜5mmの深さを有していてもよい。
【0049】
流路104および流路105が毛管路である場合、流路104および流路105を規定する基板100’の内面、ならびに、反応チャンバー102、第1チャンバー103および第2チャンバー107の流路104および流路105との接続部分近傍の内面は、親水処理が施されていてもよい。親水処理によって毛細管力が大きく働く。親水処理は、例えば、上述した内面に、非イオン系、カチオン系、アニオン系または両イオン系の界面活性剤を塗布したり、コロナ放電処理を行ったり、物理的な微細凹凸を設けるなどによって行うことができる(例えば、特開2007−3361号公報を参照。)。
【0050】
反応チャンバー102、第1チャンバー103および第2チャンバー107のそれぞれには少なくとも1つの空気孔108が設けられている。これにより、各チャンバー内が環境下の気圧に保たれ、毛細管現象およびサイフォンの原理によって流路104、105を液体が移動し得る。また、反応チャンバー102および第2チャンバー107には、検体溶液、反応溶液、洗浄液等などの液体を注入したり、排出するための開口109が設けられていてもよい。なお、ここでいうサイフォンの原理とは、試料分析用基板100の回転により液体にかかる遠心力と流路の毛細管力とのバランスで送液制御が行われることをいう。
【0051】
空気孔108および開口109は、反応チャンバー102、第1チャンバー103および第2チャンバー107において、上面部分であって、回転軸101に近接する側面部分側に配置されていることが好ましい。これにより、反応チャンバー102、第1チャンバー103および第2チャンバー107に液体が満たされた状態で試料分析用基板100が回転しても、空気孔108および開口109が液体と接し、液体が、空気孔108および開口109から試料分析用基板100の外部へ移動するのを抑制することができる。空気孔108および開口109は、各チャンバーの側面部分に設けてもよい。
【0052】
また、反応チャンバー102、第1チャンバー103および第2チャンバー107の空間は、回転軸101側に突出した凸状部分を有しており、凸状部分に空気孔108および開口109は位置していることが好ましい。この構成により、反応チャンバー102、第1チャンバー103および第2チャンバー107における空気孔108および開口109の位置を半径方向においてできるだけ回転軸101に近づけることができる。よって、試料分析用基板100が回転した状態において、空気孔108および開口109と接しないで、反応チャンバー102、第1チャンバー103および第2チャンバー107が保持し得る液体の量を増大させることができ、これらのチャンバーの空間のうち、液体の保持に利用できないデッドスペースを小さくすることができる。
【0053】
図4は、第1チャンバー103、第2チャンバー107および流路105の配置を示している。試料分析用基板100内において、第2チャンバー107は、第1チャンバー103よりも回転軸101から遠くに位置している。これによって、第1チャンバー103に保持された液体を第2チャンバー107へ、試料分析用基板100の回転による遠心力で移送し得る。また、第1チャンバー103と第2チャンバー107とを接続する流路105にサイフォンの構造および毛管路を用いることで、より厳密な液体の移送・停止制御が可能となる。以下において、詳細に説明するように、流路105におけるサイフォンの構造は、試料分析用基板100の回転による遠心力に対してサイフォンの原理が働く。具体的には、流路105は、2つの折れ曲がり部105aおよび105bを有する。折れ曲がり部105bは、第1チャンバー103との接続部分近傍に位置し、回転軸101より外側に向かう凸形状を有している。
【0054】
折れ曲がり部105aは、折れ曲がり部105bと第2チャンバー107との間に位置し、回転軸101側に向かう凸形状を有している。
【0055】
回転軸101と、第2チャンバー107の最も回転軸101に近い側面部分107aとの距離をR1とし、回転軸101から、折れ曲がり部105bの最も回転軸101から遠い側に位置する点までの距離をR2とした場合、R1>R2を満たすことが好ましい。
【0056】
また、第1チャンバー103に保持された液体110が、遠心力によって、側面部分103b側に偏っている場合において、回転軸101から液体110の液面110sまでの距離をR4とし、回転軸101から、折れ曲がり部105aの最も回転軸101に近い側に位置する点までの距離をR3とした場合、R4>R3を満たすことが好ましい。
【0057】
例えば、試料分析用基板100を回転により反応チャンバー102から第1チャンバー103へ移送し、その状態で、試料分析用基板100の回転が継続し、この回転による遠心力が流路105の毛細管力よりも大きい回転数である場合を考える。第1チャンバー103から第2チャンバー107へ複合体310を含む液体を移送したくない場合には、R4>R3を満たし、試料分析用基板100を継続的に回転させることにより、遠心力が液体に働き、第1チャンバー103中の液体が位置エネルギーの高い流路105の折れ曲がり部105bを超えて移送されないようにできる。
【0058】
また、第1チャンバー103から第2チャンバー107へ液体を移送したい場合は、試料分析用基板100の回転を、この回転より遠心力が毛細管力以下の回転数(回転停止も含む)で回転させることで、毛細管現象により流路105に液体が満たされる。その後、試料分析用基板100を毛細管力よりも遠心力が強くなる回転数で回転させることによって、その遠心力で液体を第2チャンバー107に移送することができる。このように、第1チャンバー103と第2チャンバー107とを接続する流路105に毛管路およびサイフォンの構造を用いることで、より厳密な液体の移送・停止制御が可能となる。例えば、反応チャンバー102から複合体310を含む溶液を第1チャンバー103へ遠心力によって移送させる場合に、第1チャンバー103へ移送された複合体310を含む溶液がそのまま第2チャンバー107へ移送されるのを防止し得る。
【0059】
一方、流路105がサイフォン構造を有しない毛管路である場合、試料分析用基板100の回転による遠心力で、反応チャンバー102から第1チャンバー103を介して第2チャンバー107へ液体を移送させる場合、第1チャンバー103へ移送された液体は、流路105の毛細管力により流路105内に液体が満たされる。この状態で、試料分析用基板100の回転が継続していると、液体は、第1チャンバー103中に保持されず、流路105を介して第2チャンバー107に移送されてしまう。ここでいう試料分析用基板100の回転は、流路105の毛細管力よりも強い遠心力をかけることができる回転数である。
【0060】
このように、前述の回転数で、反応チャンバー102から第1チャンバー103に液体を移送し、そのまま第2チャンバー107に液体を移送することなく、一旦、第1チャンバー103に液体を保持したい場合には、流路105をサイフォン構造で構成することが好ましい。
【0061】
本実施形態では、
図3Aに示すように、流路104もサイフォンの構造を備えている。しかし、流路104はサイフォンの構造を構成していなくてもよい。また、前述の液体制御が不要な場合であっても、サイフォン構造を採用してもよい。
【0062】
なお、本実施形態では、前述の通り、流路105がサイフォン構造を有する毛管路である例を説明したが、流路104および流路105は、サイフォン構造を有さない毛管路または、重力を利用した流路であってもよい。
【0063】
反応チャンバー102から第1チャンバー103を介して第2チャンバー107に液体を移送する過程において、流路105がサイフォン構造を有さない毛管路であって、第1チャンバー103に一旦、液体を保持するには、次のような構成であることが好ましい。まず、反応チャンバー102から第1チャンバー103へ液体を移送するにあたって、流路105中に液体が満たされた液体にかかる毛細管力以下の遠心力をかけることができる試料分析用基板100の回転数(停止状態も含む)で行わなければならない。この場合、流路104は、重力を利用した流路であることが好ましい。また、流路104が重力を利用した流路であることから、反応チャンバー102の側面部分102b(
図3Aに示す)は、試料分析用基板100を所定の角度で保持した場合に、側面部分102bで液体を保持できるように側面部分102bを凹形状となるように形成することが好ましい。この場合、反応チャンバー102から第1チャンバー103へ液体を移送するには、側面部分107bの凹部に保持された液体が、重力により第3流路112を介して移動するように試料分析用基板100の回転角度を変更することで行われる。
【0064】
一方、反応チャンバー102から第1チャンバー103を介して第2チャンバー107に液体を移送する過程において、流路105が重力を利用した流路であって、第1チャンバー103に一旦、液体を保持する場合には、次のような構成であることが好ましい。流路104は、毛管路(サイフォン構造を含む)であっても重力を利用した流路のいずれでもよいが、第1チャンバー103の側面部分103b(
図3Aに示す)は、試料分析用基板100を所定の角度で保持した場合に、側面部分103bで液体を保持できるように側面部分103bを凹形状となるように形成することが好ましい。この場合、第1チャンバー103から第2チャンバー107へ液体を移送するには、側面部分103bの凹部に保持された液体が、重力により流路105を介して移動するように試料分析用基板100の回転角度を変更することで行われる。
【0065】
以上のとおり、流路104および流路105の構成は、種々の方式を採用することができる。
【0066】
(試料分析システム501の動作)
図1、
図3A、
図5および
図6Aから
図6Dを参照しながら、試料分析システム501の動作を説明する。
図5は、試料分析システム501の動作を示すフローチャートである。
図6Aおよび
図6Cは、第1チャンバー103における複合体310の分布を示す平面図であり、
図6Bおよび
図6Dは、
図6Aおよび
図6Cの6B−6B線および6D−6D線における断面図である。
【0067】
まず、反応チャンバー102において、磁性粒子固定化抗体305と、抗原306を含む検体と、標識抗体308とを同時に反応させて、複合体310を形成させる。例えば、反応チャンバー102に磁性粒子固定化抗体305を含む液体が保持されており、試料分析用基板100に設けられた図示しないチャンバーが抗原306および標識抗体308を含む液体をそれぞれ別々に保持しており、試料分析用基板100の回転による遠心力でこれらが反応チャンバー102へ移送されてもよい。
【0068】
抗原抗体反応によって、複合体310が生成した後、まずステップS001に示すように、試料分析用基板100を回転させ、複合体310および未反応の磁性粒子固定化抗体305を含む溶液を第1チャンバー103へ移動させる。この際、試料分析用基板100が停止している状態で、流路104は、毛細管現象によって、反応チャンバー102の液体で満たされている。このため、反応チャンバー102の複合体310を含む溶液に、回転により流路104内の反応液にかかる毛細管力よりも強い遠心力が働くと、複合体310を含む溶液は第1チャンバー103へ移送される。第1チャンバー103へ移送された複合体310を含む溶液は、試料分析用基板100が回転している状態では、続いて第2チャンバー107へ移送されることはない。前述したように流路105はサイフォンを構成しているため、遠心力に逆らって、液体が、流路105を回転軸101に向かう方向へ移動しないからである。
【0069】
試料分析用基板100の回転速度は、回転による遠心力が生じることにより、反応液等の液体が重力によって移動せず、各毛管路の毛細管力よりも強い遠心力をかけられるような速度が設定される。以下、遠心力を利用する回転には、この回転速度が設定される。
【0070】
複合体310を含む溶液がすべて第1チャンバー103へ移送された後、ステップS002に示すように、所定の回転角度で試料分析用基板100を停止させる。
【0071】
複合体310および未反応の磁性粒子固定化抗体305を含む液体が、反応チャンバー102から第1チャンバー103に移送されると、複合体310および未反応の磁性粒子固定化抗体305(以下、これら両方を指す場合には、単に磁性粒子311と呼ぶ)が、磁石106の磁力によって側面部分103b側に引き寄せられる。
【0072】
試料分析用基板100の回転が停止した状態において、流路105は、毛細管現象により、第1チャンバー103内の液体で満たされる。
【0073】
ステップS003に示すように、試料分析用基板100を回転させると、回転にともない遠心力が発生し、第1チャンバー103内の液体および複合体310を含む磁性粒子に働く。この遠心力が働く方向は、磁性粒子311が磁石106から受ける吸引力の方向と一致する。このため、磁性粒子311は、強く側面部分103bに押し付けられる。
【0074】
遠心力を受けた液体は流路105から排出され、第2チャンバー107へ移送される。この時、移動する液体から、磁性粒子311は力を受け、液体とともに流路105へ移動しようとする。しかし、上述したように、遠心力および磁石の吸引力の和によって、磁性粒子311は側面部分103bに強く押し付けられている。このため、液体のみが流路105から排出され、磁性粒子311は第1チャンバー103にとどまる。また、
図6Bに示すように、磁石106が流路105の開口よりも上側に設けられているため、磁性粒子311が流路105の開口近傍に集まりにくい。このため、磁性粒子311のとどまる位置の点でも、磁性粒子311は、流路105から流出しにくい。
【0075】
液体が第2チャンバー107へすべて移動した後、試料分析用基板100の回転を停止させる。これにより、B/F分離が完了し、第1チャンバー103の液体および磁性粒子311が分離される。具体的には、液体は、第1チャンバー103から第2チャンバー107へ移動し、磁性粒子311は第1チャンバー103にとどまる。
図6Aに示すように、試料分析用基板100の回転が停止しても磁石106から受ける吸引力により、磁性粒子311は、側面部分103bに集まったままの状態を維持し得る。
【0076】
その後、光学測定ユニット207を用いて、磁性粒子311に含まれる複合体310に結合した標識抗体308の標識物質307に応じた色素、発光、蛍光等のシグナルを検出する。これにより、抗原306の検出、抗原306の濃度の定量等を行うことができる。また、上述したように、複合体310が側面部分103bに集まっているため、発光強度等を効率的に検出することができ、検出感度も高めることが可能となる。
【0077】
図6Cは、磁石106を第1チャンバー103の下面部分103fに配置し、試料分析用基板100を回転させた場合の磁性粒子311の分布を模式的に示す平面図であり、
図6Dは
図6Cの6D−6D線における断面図である。磁石106’を第1チャンバー103の下面部分103fに配置した場合、磁性粒子311は下面部分103f側に引き寄せられる。一方、遠心力は、側面部分103b側に磁性粒子311を移動させるように働く。このため、2つの力は直交し、大きな合力は得られない。その結果、磁性粒子311を捕捉する力は、磁石が側面部分103bに近接している場合に比べて弱くなる。
【0078】
また、磁性粒子311は、側面部分103bと下面部分103fとの境界近傍に集められる。この位置には、流路105の開口が位置しているため、溶液の移動にしたがって複合体310も流路105へ流出しやすくなる。
【0079】
このように本実施形態の試料分析用基板、試料分析装置及び試料分析システムによれば、磁性粒子を含む溶液に対してB/F分離を行う場である第1チャンバーと、第1チャンバー中から除去された溶液を収納する第2チャンバーと、第1チャンバーと第2チャンバーと連結し、毛細管流路からなる流路を備える試料分析用基板を用い、第1チャンバー中の磁性粒子を磁石で捕捉しつつ、試料分析用基板を回転させることにより、その回転力と流路の毛細管現象により、第1チャンバー内で磁性粒子を保持しつつ、溶液を第1チャンバーから第2チャンバーへ排出させることができる。このため、検体を含む溶液や試薬の移送、分配、混合などをより複雑に制御することが可能である。また、磁石を第1チャンバーの回転軸から最も遠い側面部分近傍に配置することにより、より確実なB/F分離を行うことができる。さらに、B/F分離後、複合体の分布密度が高いため、分光学分析によって高い感度で複合体の標識物質を検出することができる。
【0080】
(第1チャンバー103の側面部分103bの変形例)
以下、第1チャンバー103の側面部分103bの変形例を説明する。
【0081】
図7Aおよび
図7Bは、回転軸101に平行、つまり、試料分析用基板100の主面100mに垂直な方向から見た、第1チャンバー103の側面部分103bが有する形状を概括的に示している。側面部分103bの一端E1に流路105が接続されている。この場合において、試料分析用基板100の回転軸101側に任意の基準点Bをとり、基準点Bと、流路105が接続された側面部分103bの一端E1とを結ぶ直線に垂直な基準直線LSをとる。側面部分103bの一端E1から他端E2側へ任意の間隔で位置する複数の点a
1、a
2、a
3、・・・a
h、a
h+1・・・・a
nをとる。また、点a
1、a
2、a
3、・・・a
h、a
h+1・・・・a
nにおける基準点Bを中心とする接線LTをとり、点a
1、a
2、a
3、・・・a
h、a
h+1・・・・a
nにおける、基準直線LSと接線LTとがなす角度をα
1、α
2、α
3、・・・α
h、α
h+1・・・・α
nとする。点a
1、a
2、a
3、・・・a
hが位置する部分を第1副側面部分103b1と呼び、点α
h+1・・・・α
nが位置する部分を第2副側面部分103b2と呼ぶ。
【0082】
この場合、角度α
1、α
2、α
3、・・・α
h、α
h+1・・・・α
nは、以下の関係式(1)を満たしている。
α
1≦α
2≦α
3≦・・・≦α
h<α
h+1≦・・・・≦α
n (1)
ただし、基準点Bをどの位置に設定したとしても、基準点Bと点a
1、a
2、a
3、・・・a
h、a
h+1・・・・a
nとのそれぞれの距離、d
1、d
2、d
3、・・・d
h、d
h+1・・・・d
nのうち、d
1=d
2=d
3=・・・=d
h=d
h+1=・・・・d
nとなる場合が存在しない。
【0083】
図7Aおよび
図7Bは、α
1、α
2、α
3、・・・α
h、α
h+1・・・・α
nの変化量が大きい場合および小さい場合の側面部分103bの形状を示している。このような形状の側面部分103bを有することによって、磁性粒子311を含む溶液に働く遠心力によって溶液が端部E1の流路105から排出されやすくするとともに、磁性粒子311が側面部分103bの端部E1よりも中央寄りに集まり易くし、磁性粒子311が流路105から排出されるのを抑制することができる。
【0084】
式(1)において、α
1=α
2=α
3=・・・=α
h<α
h+1=・・・・=α
nである場合、
図8に示すように、側面部分103bは、基準直線LSに対して、α
1=α
2=α
3=・・・=α
hの角度をなす第1副側面部分103b1および基準直線LSに対して、α
h+1=・・・・=α
nの角度をなす第2副側面部分103b2を有する。
【0085】
回転軸101を中心とする半径方向と平行であり、かつ、主面100mと垂直な断面における、側面部分103bの形状についても、同様に構成することができる。
図9は、回転軸101を中心とする半径方向と平行であり、かつ、主面100mと垂直な断面における側面部分103bの形状を概括的に示している。側面部分103bの一端E1に流路105が接続されている。この場合において、第1チャンバー103の空間内に任意の基準点Bをとり、基準点Bと、流路105が接続された側面部分103bの一端E1とを結ぶ直線に垂直な基準直線LSをとる。側面部分103bの一端E1から他端E2側へ任意の間隔で位置する複数の点a
1、a
2、a
3、・・・a
h、a
h+1・・・・a
nをとる。また、点a
1、a
2、a
3、・・・a
h、a
h+1・・・・a
nにおける基準点Bを中心とする接線LTをとり、点a
1、a
2、a
3、・・・a
h、a
h+1・・・・a
nにおける、基準直線LSと接線LTとがなす角度をα
1、α
2、α
3、・・・α
h、α
h+1・・・・α
nとする。点a
1、a
2、a
3、・・・a
hが位置する部分を第3副側面部分103b3と呼び、点α
h+1・・・・α
nが位置する部分を第4副側面部分103b4と呼ぶ。
【0086】
この場合、角度α
1、α
2、α
3、・・・α
h、α
h+1・・・・α
nは、以下の関係式(1)を満たしている。
α
1≦α
2≦α
3≦・・・≦α
h<α
h+1≦・・・・≦α
n (1)
【0087】
このような形状の側面部分103bを有することによって、回転軸101を中心とする半径方向と平行であり、かつ、主面100mと垂直な断面においても、側面部分103bは、磁性粒子311を含む溶液に働く遠心力によって溶液が端部E1の流路105から排出されやすくするとともに、磁性粒子311が側面部分103bの端部E1よりも上面部分側に集まり易くし、磁性粒子311が流路105から排出されるのを抑制することができる。
【0088】
図10Aから
図10Cは、側面部分103bの回転軸101を中心とする半径方向と平行であり、かつ、主面100mと垂直な断面形状のバリエーションを示している。
【0089】
図10Aは、第3副側面部分103b3において、α
1=α
2=α
3=・・・=α
h=0である場合の例を示している。
図10Bおよび
図10Cは、式(1)において、α
1=α
2=α
3=・・・=α
h<α
h+1=・・・・=α
nである場合の例を示している。特に
図10Bでは、α
1=α
2=α
3=・・・=α
h=0である。
【0090】
また、回転軸101を中心とする半径方向と平行であり、かつ、主面100mと垂直な断面における、側面部分103bはさらに他の形状を有していてもよい。
図11Aおよび
図11Bに示すように、側面部分103bは、回転軸101を中心とする半径方向と平行であり、かつ、主面100mと垂直な断面において、回転軸101から遠ざかる方向に窪んだ凹部、言い換えれば、磁石106側に突出した凸部を有していてもよい。
図11Aに示す側面部分103bの第3副側面部分103b3および第4副側面部分103b4は、回転軸101を中心とする半径方向と平行であり、かつ、主面100mと垂直な断面において、一体的に円弧形状を有している。
図11Bに示す側面部分103bの第3副側面部分103b3および第4副側面部分103b4は、回転軸101側から見てV字形状を有している。
【0091】
(磁石106の構成および変形例)
以下、磁石106の構成および変形例を説明する。上述したように、磁石106によって磁性粒子311を捕捉するため、磁石106は流路105の開口と近接していないことが好ましい。本実施形態では、
図12に示すように、試料分析用基板100の主面100mに垂直な面から見て、流路105は側面部分103bの一端E1に設けられている。この場合、磁石106の幅W2は、側面部分103bの幅W1よりも短いことが好ましい。また、磁石106は、少なくとも流路105が設けられた側面部分103bの一端E1から離れていることが好ましい。これにより、磁石106に吸引される磁性粒子311は、側面部分103bの両端E1、E2を除き、両端E1、E2の間の領域において捕捉され得る。
【0092】
図13Aに示すように、磁石106は、例えば、試料分析用基板100の主面100mに垂直な面から見て、回転軸101を中心とする半径方向に異なる磁極を有していてもよい。この場合、
図13Aに示すように、磁石106の両端E3、E4近傍において、磁束密度が高くなり、磁力が大きくなる。このため、
図13Bに示すように、磁性粒子311は、側面部分103bの中央103bcから両端E3、E4側に離れた領域において捕捉される。この場合でも、磁石106の幅W2が側面部分103bの幅W1よりも短い場合には、捕捉された磁性粒子311は流路105の開口から比較的離れている。このため、磁石106に捕捉された磁性粒子311が流路105へ流れ込む可能性は少ない。
【0093】
側面部分103bの中央で磁性粒子311を捕捉するためには、
図14Aに示すように、主面100mに垂直な方向から見て、側面部分103bの両端E3、E4における磁束密度が側面部分103bの前記両端E3、E4以外の部分における磁束密度より小さくなるように磁石106を構成すればよい。
【0094】
たとえば、側面部分103bを主面100mに垂直な方向から見た場合において、側面部分103bを任意の位置103iで2つに分割した場合に、磁石106は、一方の分割部分103gに対応する部分にN極を有し、他方の分割部分103hに対応する部分にS極を有する。このように2つの磁極を配置することによって、
図14Aに示すように、分割した位置103i近傍で磁束密度が高くなる。よって、
図14Bに示すように、位置103i近傍において多くの磁性粒子311が集められる。また、磁路長が短くなるため、外部へ磁束が漏れるのを抑制できる。
【0095】
また、
図15に示すように、主面100mに垂直な方向から見て、回転軸101側に突出した弓形形状を有する磁石106’を側面部分103bに近接して配置してもよい。磁石106’は、半径方向において、異なる磁極を有している。磁石106’が弓形形状を有しているため、磁石106’の中央における側面部分103bまでの距離d3よりも磁石106’の両端における側面部分103bまでの距離d4は長い。このため、側面部分103bの中央部分に比べ、端部における磁束密度が小さくなり、中央部分近傍において多くの磁性粒子311が集められる。
【0096】
(試料分析用基板100および試料分析装置の他の例)
本実施形態では、試料分析用基板100は、基板100’内に挿入された磁石106を備えていた。しかし、磁石は試料分析装置200に設けられていてもよい。試料分析装置200が磁石106を備える場合、例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0097】
試料分析装置200が磁石106を備える第1例を説明する。例えば、試料分析用基板100の基板100’は、
図3Cを参照して説明したように収納室120を備える。一方、試料分析装置200は、ターンテーブル201aに載置された試料分析用基板100の収納室120に磁石160を挿入し、磁石160を試料分析用基板100から取り外す駆動機構を備える。駆動機構は例えばロボットアームである。
【0098】
駆動機構は、
図2Aに示す制御回路205の制御によって、ターンテーブル201aに載置された試料分析用基板100の回転を停止した状態で、磁石106を収納室120内に挿入し、また、収納室120にある磁石106を取り外す。
【0099】
試料分析装置200が磁石106を備える第2例を説明する。第2の例では、磁石106は試料分析用基板100を支持するターンテーブルに取り付けられている。
図16Aは、試料分析用基板150の斜視図である。
図16Aに示す試料分析用基板150は基板100’を有する。基板100’は、基板100’内において、第1チャンバー103に近接して位置する収納室120を備えている。
図16Aに示す例では、収納室120は第1チャンバー103よりも回転軸101から遠くに位置している。収納室120は主面100dに開口120aを有している。また、基板100’は、主面100dに開口を有する2つの係合孔121を備えている。
【0100】
図16Bは、
図2Aに示す試料分析装置200のターンテーブル201aに取り付けられる補助テーブル220の斜視図である。補助テーブル220は、ターンテーブル201aに取り付けられることにより、補助テーブル220およびターンテーブル201aが一体的にターンテーブルとして機能する。補助テーブル220は、試料分析用基板100を支持する支持面220aと、支持面220aから突出した磁石160とを備える。また、支持面220aから突出した2つの係合ピン212を備えている。係合ピン212および磁石160は、支持面220a上において、補助テーブル220が試料分析用基板150を支持した状態において、係合孔121および収納室120にそれぞれ挿入される位置に配置されている。支持面220aにおいて位置している。
【0101】
ターンテーブル201aに取り付けられた補助テーブル220の支持面220aと試料分析用基板150の主面100dとを対向させ、係合孔121および収納室120にそれぞれ係合ピン212および磁石106一致させて、試料分析用基板150を補助テーブル220、つまりターンテーブルに取り付ける。これにより、係合孔121および収納室120にそれぞれ係合ピン212および磁石106が挿入され、
図16Cに示すように、補助テーブル220に試料分析用基板150が載置される。この状態では、
図3Aに示すように、試料分析用基板100において、第1チャンバー103の第1空間を規定する内面のうち、回転軸101から最も遠くに位置する側面部分側に配置されることになる。これにより、回転軸101から最も遠くに位置する側面部分103bに近接して磁石106が配置され、側面部分103bで磁性粒子を捕捉することができる。
【0102】
なお、
図16Aから
図16Cに示す収納室120および磁石106の位置は一例であり、第1チャンバー103の位置に応じて、これらの位置も変更し得る。また、例えば、第1チャンバーが試料分析用基板150の外周近傍に位置している場合には、試料分析用基板150よりも大きい補助テーブル220を用い、補助テーブル220に配置した試料分析用基板150の側面に磁石106が位置するように、磁石106を補助テーブル220に設けてもよい。この場合、試料分析用基板150は収納室120を備えていなくてもよい。また、補助テーブル220およびターンテーブル201aを一体的に形成し、磁石160として電磁石を用いてもよい。