(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1側面と前記第1流路との第1境界位置は、前記基板を前記任意の所定の基準角度から前記角度A1へ回転させる過程で、前記所定の厚さ方向におけるいずれかの位置において、前記第1液体が前記第3チャンバーへ最初に移動し始める時の前記第1液体の液面と前記第1流路または前記第1側面との境界で規定される、請求項2に記載の試料分析用基板。
前記第2側面と前記第2流路との第2境界位置は、前記基板を前記任意の所定の基準角度から前記角度A2へ回転させる過程で、前記所定の厚さ方向におけるいずれかの位置において、前記第2液体が前記第3チャンバーへ最初に移動し始める時の前記第2液体の液面と前記第2流路または前記第2側面との境界で規定される、請求項3に記載の試料分析用基板。
前記基板の前記回転軸が前記重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜するように前記基板を支持し、前記基板を前記任意の所定の基準角度で保持させた場合、
前記第3チャンバーは、前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーよりも重力方向の下方側に位置する、請求項9に記載の試料分析用基板。
【発明を実施するための形態】
【0009】
尿や血液等の検体の成分の分析法には、分析対象物であるアナライトと、アナライトと特異的に結合するリガンドとの結合反応が用いられる場合がある。このような分析法には、例えば、免疫測定法や遺伝子診断法が挙げられる。
【0010】
免疫測定法の一例として、競合法および非競合法(サンドイッチイムノアッセイ法)が挙げられる。また、遺伝子診断法の一例として、ハイブリダイゼーションによる遺伝子検出法が挙げられる。これら免疫測定法や遺伝子検出法には、例えば、磁性粒子(「磁性ビーズ」、「磁気粒子」または「磁気ビーズ」等と称することもある。)が用いられる。これら分析法の一例として、磁性粒子を用いたサンドイッチイムノアッセイ法で具体的に説明する。
【0011】
図1に示すように、まず、磁性粒子302の表面に固定化された一次抗体304(以下、「磁性粒子固定化抗体305」と称する。)と測定対象物である抗原306とを抗原抗体反応とにより結合させる。次に標識物質307が結合された2次抗体(以下、「標識抗体308」と称する。)と抗原306とを抗原抗体反応により結合させる。これにより、抗原306に対して磁性粒子固定化抗体305及び標識抗体308が結合した複合体310が得られる。
【0012】
この複合体310に結合した標識抗体308の標識物質307に基づくシグナルを検出し、検出したシグナルの量に応じて抗原濃度を測定する。標識物質307には、例えば、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、ルシフェラーゼ等がある。)、化学発光物質、電気化学発光物質、蛍光物質等が挙げられ、それぞれの標識物質307に応じた色素、発光、蛍光等のシグナルを検出する。
【0013】
この一連の反応において、反応物である複合体310を得る上で、検体中の未反応物、磁性粒子等に非特異的に吸着した物質、複合体310の形成に関与しなかった標識抗体308等である未反応物とを分離する必要がある。この分離をB/F分離(Bound/Free Separation)と呼ぶ。競合法による免疫測定法やハイブリダイゼーションによる遺伝子検出法においても、同様に、B/F分離の工程が必要である。磁性粒子を用いない場合は、例えば、ポリスチレンやポリカーボネートといった素材で構成された固相に対し、物理吸着により固定化されたリガンド、化学結合により固相に対し、物理吸着により固定化されたリガンド、化学結合により固相に固定化されたリガンド、金等で構成された金属基板表面へ固定化(たとえば、自己組織化単分子膜(SAM:self−Assembled Monolayer)を用いた固定化)されたリガンドを用いる場合等が挙げられる。
【0014】
B/F分離を十分に行うには、洗浄液で複合体310を含む磁性粒子を複数回洗浄することが好ましい。具体的には、まず、複合体310と、未反応の抗原306、標識抗体308等とを含む反応溶液において、磁石によって磁性粒子を含む複合体310を捕捉した状態で、反応溶液のみを除去する。その後、洗浄液を加えて複合体310を洗浄し、洗浄液を除去する。この洗浄を複数回繰り返し行うことによって、未反応物や非特異吸着物質が十分に除去されたB/F分離が達成され得る。
【0015】
従来、このような複数回洗浄を行う操作は、分析器具を用いて操作者が手動で行ったり、複雑な機構を有する大型の分析機器によって実現されていた。このため、より簡単に複数回洗浄を行う技術が求められていた。
【0016】
本願発明者らは、特許文献1に開示されるような試料分析用基板を用いて、複数回の洗浄工程を可能にする技術を詳細に検討し、新規な試料分析用基板、試料分析装置、試料分析システムおよび試料分析システム用プログラムを想到した。本願の一態様に係る試料分析用基板、試料分析装置、試料分析システムおよび試料分析システム用プログラムは、以下の通りである。
【0017】
[項目1]
回転運動によって液体の移送を行う試料分析用基板であって、
回転軸を有する基板と、
前記基板内に位置し、第1液体および第2液体を保持するための第1空間および第2空間をそれぞれ有する第1チャンバーおよび第2チャンバーと、
前記基板内に位置し、前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーから排出される前記液体を保持するための第3空間を有する第3チャンバーと、
前記基板内において、前記第1チャンバーおよび前記第3チャンバーを接続する経路を有し、前記第1液体を移送する第1流路と、
前記基板内において、前記第2チャンバーおよび前記第3チャンバーを接続する経路を有し、前記第2液体を移送する第2流路と、
を備え、
前記基板の前記回転軸が重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜するように前記基板を支持し、前記回転軸を中心として、前記基板を時計回りまたは反時計回りに回転させる場合、
前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーに保持された前記第1液体および前記第2液体が、それぞれ前記第1流路および前記第2流路を介して前記第3チャンバーに移送されない任意の所定の基準角度から角度A1で前記基板を回転させると、
前記第1チャンバーから第1所定量の第1液体が前記第3チャンバーに移動し、
前記第2チャンバーから第2所定量の第2液体が前記第3チャンバーに移動し、
さらに、前記角度A1から角度A2で前記基板を回転させると、
前記第1チャンバーから第3所定量の第1液体が前記第3チャンバーに移動し、
前記第2チャンバーから第4所定量の第2液体が前記第3チャンバーに移動する、
試料分析用基板。
[項目2]
前記基板は、
前記基板内において前記第1空間の一部を規定し、前記第1流路に隣接する第1側面および前記第1側面に隣接する第3側面と、
前記基板内において前記第2空間の一部を規定し、前記第2流路に隣接する第2側面および前記第2側面に隣接する第4側面と、
を有し、
前記基板の前記回転軸が重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜するように前記基板を支持し、前記基板を前記任意の所定の基準角度で保持させた場合、
前記第1チャンバーは、前記の第1液体を少なくとも前記第1側面および前記第3側面で保持し、
前記第2チャンバーは、前記第2液体を少なくとも第2側面および前記第4側面で保持する、
項目1に記載の試料分析用基板。
[項目3]
前記第1側面と前記第1流路との第1境界位置は、前記基板を前記任意の所定の基準角度から前記角度A1へ回転させる過程で、前記所定の厚さ方向におけるいずれかの位置において、前記第1液体が前記第3チャンバーへ最初に移動し始める時の前記第1洗浄液の液面と前記第1流路または前記第1側面との境界で規定される、項目2に記載の試料分析用基板。
[項目4]
前記第2側面と前記第2流路との第2境界位置は、前記基板を前記任意の所定の基準角度から前記角度A2へ回転させる過程で、前記所定の厚さ方向におけるいずれかの位置において、前記第2液体が前記第3チャンバーへ最初に移動し始める時の前記第2洗浄液の液面と前記第2流路または前記第2側面との境界で規定される、項目3に記載の試料分析用基板。
[項目5]
前記第1境界位置が前記第1側面よりも前記回転軸に近い側に位置し、前記第2境界位置が前記第2側面よりも前記回転軸に近い側に位置する場合であって、
または、
前記第1境界位置が前記第1側面よりも前記回転軸に遠い側に位置し、前記第2境界位置が前記第2側面よりも前記回転軸に遠い側に位置する場合であって、
前記基板の前記回転軸が重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜するように前記基板を支持し、前記基板を前記任意の所定の基準角度で保持させた状態で前記基板を前記回転軸に平行な方向からみた場合、前記第1境界位置および前記第2境界位置が、前記基板の左右方向のいずれか一方側に位置する場合、
前記任意の所定の基準角度から前記角度A1で前記基板を回転させる回転方向および前記角度A1から前記角度A2で前記基板を回転させる回転方向は、同一方向である、項目4に記載の試料分析用基板。
[項目6]
前記第1境界位置が前記第1側面よりも前記回転軸に近い側に位置し、前記第2境界位置が前記第2側面よりも前記回転軸に近い側に位置する場合であって、
または、
前記第1境界位置が前記第1側面よりも前記回転軸に遠い側に位置し、前記第2境界位置が前記第2側面よりも前記回転軸に遠い側に位置する場合であって、
前記基板の前記回転軸が重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜するように前記基板を支持し、前記基板を前記任意の所定の基準角度で保持させた状態で前記基板を前記回転軸に平行な方向からみた場合、前記第1境界位置および前記第2境界位置が、前記基板の左右方向の異なる方向側に位置する場合、
前記任意の所定の基準角度から前記角度A1で前記基板を回転させる回転方向および前記角度A1から前記角度A2で前記基板を回転させる回転方向は、逆方向である、項目4に記載の試料分析用基板。
[項目7]
前記第1境界位置が前記第1側面よりも前記回転軸に近い側に位置し、前記第2境界位置が前記第2側面よりも前記回転軸に遠い側に位置する場合であって、
または、
前記第1境界位置が前記第1側面よりも前記回転軸に遠い側に位置し、前記第2境界位置が前記第2側面よりも前記回転軸に近い側に位置する場合であって、
前記基板の前記回転軸が重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜するように前記基板を支持し、前記基板を前記任意の所定の基準角度で保持させた状態で前記基板を前記回転軸に平行な方向からみた場合、前記第1境界位置および前記第2境界位置が、前記基板の左右方向の異なる方向側に位置する場合、
前記任意の所定の基準角度から前記角度A1で前記基板を回転させる回転方向および前記角度A1から前記角度A2で前記基板を回転させる回転方向は、同一方向である、項目4に記載の試料分析用基板。
[項目8]
前記第1境界位置が前記第1側面よりも前記回転軸に近い側に位置し、前記第2境界位置が前記第2側面よりも前記回転軸に遠い側に位置する場合であって、
または、
前記第1境界位置が前記第1側面よりも前記回転軸に遠い側に位置し、前記第2境界位置が前記第2側面よりも前記回転軸に近い側に位置する場合であって、
前記基板の前記回転軸が重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜するように前記基板を支持し、前記基板を前記任意の所定の基準角度で保持させた状態で前記基板を前記回転軸に平行な方向からみた場合、前記第1境界位置および前記第2境界位置が、前記基板の左右方向のいずれか一方側に位置する場合、
前記任意の所定の基準角度から前記角度A1で前記基板を回転させる回転方向および前記角度A1から前記角度A2で前記基板を回転させる回転方向は、逆方向である、項目4に記載の試料分析用基板。
[項目9]
前記第1流路および前記第2流路は、それぞれ重力によって前記第1液体および前記第2液体を移送する項目1に記載の試料分析用基板。
[項目10]
前記基板の前記回転軸が前記重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜するように前記基板を支持し、前記基板を前記任意の所定の基準角度で保持させた場合、
前記第3チャンバーは、前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーよりも重力方向の下方側に位置する、項目9に記載の試料分析用基板。
[項目11]
前記第2所定量は、ゼロである、項目1に記載の試料分析用基板。
[項目12]
前記第4所定量は、前記第2チャンバーに保持された前記第2液体の全量である、項目11に記載の試料分析用基板。
[項目13]
前記第1所定量は、前記第1チャンバーに保持された前記第1液体の全量であり、前記第3所定量は、ゼロである、項目1に記載の試料分析用基板。
[項目14]
前記第1所定量は、前記第1チャンバーに保持された前記第1液体の全量であり、
前記第2所定量は、ゼロであり、
前記第3所定量は、ゼロであり、
前記第4所定量は、前記第2チャンバーに保持された前記第2液体の全量である、項目1に記載の試料分析用基板。
[項目15]
回転運動によって液体の移送を行う試料分析用基板であって、
回転軸を有する基板と、
前記基板内に位置し、第1液体および第2液体を保持するための第1空間および第2空間をそれぞれ有する第1チャンバーおよび第2チャンバーと、
前記基板内に位置し、前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーから排出される前記液体を保持するための第3空間を有する第3チャンバーと、
前記第1チャンバーおよび前記第3チャンバーを接続する経路を有し、前記第1液体を
移送する第1流路と、
前記第2チャンバーおよび前記第3チャンバーを接続する経路を有し、前記第2液体を移送する第2流路と、
を備え、
前記基板は、前記基板内において、前記第1空間および前記第2空間の一部をそれぞれ規定し、前記第1流路および前記第2流路に隣接する第1側面および第2側面と、前記第1側面と前記第2側面とのそれぞれに隣接する第3側面および第4側面と、を有し、
前記第1チャンバーは前記第1側面と前記第3側面とで凹部を形成し、
前記第2チャンバーは、前記第2側面と前記第4側面とで凹部を形成し、
前記第1チャンバーの凹部と前記第2チャンバーの凹部は、互いに同じ側に凹形状が形成されている、
前記回転軸に平行な方向からみて、第1側面と第2側面とは非平行である、
試料分析用基板。
[項目16]
前記回転軸に平行な方向からみて、第1側面と第2側面とは非平行である、
項目15に記載の試料分析用基板。
[項目17]
前記第1流路および前記第2流路は、それぞれ重力によって前記第1液体および前記第2液体を移送する項目15または16に記載の試料分析用基板。
[項目18]
前記基板の前記回転軸が前記重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜するように前記基板を支持し、前記基板を前記任意の所定の基準角度で保持させた場合、
前記第3チャンバーは、前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーよりも重力方向の下方側に位置する、項目17に記載の試料分析用基板。
[項目19]
前記第1流路および前記第2流路は、それぞれ毛細管現象によって前記第1液体および前記第2液体を移送する項目17に記載の試料分析用基板。
[項目20]
前記基板の前記回転軸が重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜するように前記基板を支持し、前記回転軸を中心として、前記基板を時計回りまたは反時計回りに回転させる場合、前記基板は、所定の基準回転角度において、前記第1側面と前記第3側面とで前記第1液体全てを保持可能であり、前記第2側面と前記第4側面とで前記第2液体全てを保持可能である、項目15から19のいずれかに記載の試料分析用基板。
[項目21]
前記基板内において、前記第3チャンバーよりも前記回転軸から遠くに位置し、前記第3チャンバーから排出される前記第1液体または第2液体の少なくとも一方を保持するための第4空間を有する第4チャンバーと、
前記基板内に位置しており、前記第3チャンバーおよび前記第4チャンバーを接続する経路を有し、毛細管現象により前記第3空間内に保持された液体で満たすことが可能な第3流路と、
をさらに備える項目20に記載の試料分析用基板。
[項目22]
前記第3流路は、前記回転軸と反対側に凸状の第1屈曲部および前記回転軸側に凸状の第2屈曲部とを含み、前記第1屈曲部は前記第2屈曲部と第3チャンバーとの間に位置し、
前記回転軸から前記第4チャンバーまでの距離は、前記回転軸から前記第1屈曲部の頂点までの距離より長く、
前記回転軸から前記第3チャンバーに保持された液体の、前記基板の回転による遠心力で形成される液面までの距離は、前記回転軸から前記第2屈曲部の頂点までの距離より長い項目21に記載の試料分析用基板。
[項目23]
前記第3チャンバーに近接して位置する磁石をさらに備える項目1から22のいずれかに記載の試料分析用基板。
[項目24]
項目1から20のいずれかに記載の試料分析用基板と、
重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で前記回転軸を傾斜させた状態で、前記試料分析用基板を前記回転軸周りに回転させるモータ、
前記モータの回転軸の角度を検出する角度検出回路、
前記角度検出回路の検出結果に基づき、前記モータの回転および停止時の角度を制御する駆動回路、および
演算器、メモリおよび前記メモリに記憶され、前記演算器に実行可能なように構成されたプログラムを含み、前記プログラムに基づき、前記モータ、前記角度検出回路、前記原点検出器および前記駆動回路の動作を制御する制御回路
を有する試料分析装置と、
を備えた試料分析システムであって、
前記プログラムは、
前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーに前記第1液体および前記第2液体がそれぞれ充填された試料分析用基板が前記試料分析装置のターンテーブルに載置された場合において、
(a) 前記試料分析用基板を、所定の第1角度で停止させることによって、前記第1チャンバーの第1液体を第1流路を通って第3チャンバーへ移送させ、
(b) 前記試料分析用基板を、所定の第2角度で停止させることによって、前記第2チャンバーの第2液体を第2流路を通って第3チャンバーへ移送させる、
試料分析システム。
[項目25]
前記試料分析用基板は、
前記基板内において、前記第3チャンバーよりも前記回転軸から遠くに位置し、前記第3チャンバーから排出される前記第1液体または第2液体の少なくとも一方を保持するための第4空間を有する第4チャンバーと、
前記基板内に位置しており、前記第3チャンバーおよび前記第4チャンバーを接続する経路を有し、毛細管現象により前記第3空間内に保持された液体で満たすことが可能な第3流路と、
をさらに備え、
前記プログラムは、前記工程(a)と(b)との間に、
(c) 前記基板の回転による遠心力で、前記第3流路に満たされた液体にかかる毛細管力よりも強い遠心力が働く速度で前記試料分析用基板を回転させ、前記第3チャンバーの前記第1液体を、前記第3流路を通って前記第4チャンバーへ移動させる、項目24に記載の試料分析システム。
[項目26]
前記プログラムは、前記工程(b)の後に、
(d) 前記基板の回転による遠心力で、前記第3流路に満たされた液体にかかる毛細管力よりも強い遠心力が働く速度で前記試料分析用基板を回転させ、前記第3チャンバーの前記第2液体を、前記第3流路を通って前記第4チャンバーへ移動させる、項目24または25に記載の試料分析システム。
[項目27]
重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で前記回転軸を傾斜させた状態で、項目1から19に記載の試料分析用基板を前記回転軸周りに回転させるモータ、
前記モータの回転軸の角度を検出する角度検出回路、
前記角度検出回路の検出結果に基づき、前記モータの回転および停止時の角度を制御する駆動回路、および
演算器、メモリおよび前記メモリに記憶され、前記演算器に実行可能なように構成されたプログラムを含み、前記プログラムに基づき、前記モータ、前記角度検出回路および前記駆動回路の動作を制御する制御回路
を備え、
前記プログラムは、
前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーに前記第1液体および前記第2液体がそれぞれ充填された試料分析用基板が前記試料分析装置のターンテーブルに載置された場合において、
(a) 前記試料分析用基板を、所定の第1角度で停止させることによって、前記第1チャンバーの第1液体を第1流路を通って第3チャンバーへ移送させ、
(b) 前記試料分析用基板を、所定の第2角度で停止させることによって、前記第2チャンバーの第2液体を第2流路を通って第3チャンバーへ移送さる、試料分析装置。
[項目28]
前記試料分析用基板は、
前記基板内において、前記第3チャンバーよりも前記回転軸から遠くに位置し、前記第3チャンバーから排出される前記第1液体または第2液体の少なくとも一方を保持するための第4空間を有する第4チャンバーと、
前記基板内に位置しており、前記第3チャンバーおよび前記第4チャンバーを接続する経路を有し、毛細管現象により前記第3空間内に保持された液体で満たすことが可能な第3流路と、
をさらに備え、
前記プログラムは、前記工程(a)と(b)との間に、
(c) 前記基板の回転による遠心力で、前記第3流路に満たされた液体にかかる毛細管力よりも強い遠心力が働く速度で前記試料分析用基板を回転させ、前記第3チャンバーの前記第1液体を、前記第3流路を通って前記第4チャンバーへ移動させる、項目27に記載の試料分析装置。
[項目29]
前記プログラムは、前記工程(b)の後に、
(d) 前記基板の回転による遠心力で、前記第3流路に満たされた液体にかかる毛細管力よりも強い遠心力が働く速度で前記試料分析用基板を回転させ、前記第3チャンバーの前記第2液体を、前記第3流路を通って前記第4チャンバーへ移動させる、項目27または28に記載の試料分析装置。
[項目30]
項目1から19のいずれかに記載の試料分析用基板と、
重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で前記回転軸を傾斜させた状態で、前記試料分析用基板を前記回転軸周りに回転させるモータ、
前記モータの回転軸の角度を検出する角度検出回路、
前記角度検出回路の検出結果に基づき、前記モータの回転および停止時の角度を制御する駆動回路、および
演算器、メモリおよび前記メモリに記憶され、前記演算器に実行可能なように構成されたプログラムを含み、前記プログラムに基づき、前記モータ、前記角度検出回路、前記原点検出器および前記駆動回路の動作を制御する制御回路
を有する試料分析装置と、
を備えた試料分析システム用プログラムであって、
前記プログラムは、
前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーに前記第1液体および前記第2液体がそれぞれ充填された試料分析用基板が前記試料分析装置のターンテーブルに載置された場合において、
(a) 前記試料分析用基板を、所定の第1角度で停止させることによって、前記第1チャンバーの第1液体を第1流路を通って第3チャンバーへ移送させ、
(b) 前記試料分析用基板を、所定の第2角度で停止させることによって、前記第2チャンバーの第2液体を第2流路を通って第3チャンバーへ移送させる、
試料分析システム用プログラム。
[項目31]
前記試料分析用基板は、
前記基板内において、前記第3チャンバーよりも前記回転軸から遠くに位置し、前記第3チャンバーから排出される前記第1液体または第2液体の少なくとも一方を保持するための第4空間を有する第4チャンバーと、
前記基板内に位置しており、前記第3チャンバーおよび前記第4チャンバーを接続する経路を有し、毛細管現象により前記第3空間内に保持された液体で満たすことが可能な第3流路と、
をさらに備え、
前記プログラムは、前記工程(a)と(b)との間に、
(c) 前記基板の回転による遠心力で、前記第3流路に満たされた液体にかかる毛細管力よりも強い遠心力が働く速度で前記試料分析用基板を回転させ、前記第3チャンバーの前記第1液体を、前記第3流路を通って前記第4チャンバーへ移動させる、項目30に記載の試料分析システム用プログラム。
[項目32]
前記プログラムは、前記工程(b)の後に、
(d) 前記基板の回転による遠心力で、前記第3流路に満たされた液体にかかる毛細管力よりも強い遠心力が働く速度で前記試料分析用基板を回転させ、前記第3チャンバーの前記第2液体を、前記第3流路を通って前記第4チャンバーへ移動させる、項目30または31に記載の試料分析システム用プログラム。
【0018】
以下、図面を参照しながら本実施形態の試料分析用基板、試料分析装置、試料分析システムおよび試料分析システム用プログラムを詳細に説明する。本実施形態の試料分析用基板、試料分析装置、試料分析システムおよび試料分析システム用プログラムは、2つ以上のチャンバーにそれぞれ保持されている液体を、異なるタイミングで同一のチャンバーへ移送することができる。実施形態では、液体が洗浄液であると説明するが、液体は洗浄液に限られず、試料分析に用いられる種々の液体であってもよい。
【0019】
図2は、試料分析システム501の全体の構成を示す模式図である。試料分析システム501は、試料分析用基板100と試料分析装置200とを含む。
【0020】
(試料分析装置200の構成)
試料分析装置200は、モータ201と、原点検出器203と、回転角度検出回路204と、制御回路205と、駆動回路206と、光学測定ユニット207とを備える。
【0021】
モータ201は、ターンテーブル201aおよび重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度θで重力方向から傾いた回転軸Aを有し、ターンテーブル201aに載置された試料分析用基板100を回転軸Aの周りに回転させる。回転軸Aが傾いていることにより、試料分析用基板100における液体の移送に、回転による遠心力に加え、重力による移送を利用することができる。回転軸Aの重力方向に対する傾斜角度は、5°以上であることが好ましく、10°以上45°以下であることがより好ましく、20°以上30°以下であることがさらに好ましい。モータ201は例えば、直流モータ、ブラシレスモータ、超音波モータ等であってよい。
【0022】
原点検出器203は、モータ201に取り付けられた試料分析用基板100の原点を検出する。例えば、原点検出器203は、光源203a、受光素子203bおよび原点検出回路203cを含み、光源203aと受光素子203bとの間に試料分析用基板100が位置するように配置される。例えば、光源203aは発光ダイオードであり、受光素子203bはフォトダイオードである。試料分析用基板100は特定の位置に設けられたマーカ210を有する。マーカ210は例えば、光源203aから出射する光の少なくとも一部を遮光する遮光性を有する。試料分析用基板100において、マーカ210の領域は透過率が小さく(例えば10%以下)、マーカ210以外の領域では透過率が大きい(例えば60%以上)。
【0023】
試料分析用基板100がモータ201によって回転すると、受光素子203bは、入射する光の光量に応じた検出信号を原点検出回路203cへ出力する。回転方向に応じて、マーカ210のエッジ210aおよびエッジ210bにおいて検出信号は増大または低下する。原点検出回路203cは、例えば、試料分析用基板100が矢印で示すように、時計回りに回転している場合において、検出光量の低下を検出し、原点信号として出力する。本明細書では、マーカ210のエッジ210aの位置を、試料分析用基板100の原点位置(試料分析用基板100の基準となる角度位置)として取り扱う。ただし、マーカ210のエッジ210aの位置から任意に定められる特定の角度の位置を原点として定めてもよい。また、マーカ210が扇形であり、その中心角が、試料分析に必要な角度の検出精度よりも小さい場合には、マーカ210自体を原点位置として定めてもよい。
【0024】
原点位置は、試料分析装置200が試料分析用基板100の回転角度の情報を取得するために利用される。
【0025】
原点検出器203は、他の構成を備えていてもよい。例えば、試料分析用基板100に原点検出用の磁石を備え、原点検出器203は、受光素子203bの代わりに、この磁石の磁気を検出する磁気検出素子を備えていてもよい。また、後述する磁性粒子を捕捉するための磁石を原点検出に用いてもよい。また、試料分析用基板100がターンテーブル201aに特定の角度でのみ取り付け可能である場合には、原点検出器203はなくてもよい。
【0026】
回転角度検出回路204は、モータ201の回転軸Aの角度を検出する。例えば、回転角度検出回路204は回転軸Aに取り付けられたロータリーエンコーダであってもよい。モータ201がブラシレスモータである場合には、回転角度検出回路204は、ブラシレスモータに備えられているホール素子およびホール素子の出力信号を受け取り、回転軸Aの角度を出力する検出回路を備えていてもよい。
【0027】
駆動回路206はモータ201を回転させる。具体的には、制御回路205からの指令に基づき、試料分析用基板100を時計方向または反時計方向に回転させる。また、回転角度検出回路204および原点検出器203の検出結果および試料分析用基板100を制御回路205からの指令に基づき、揺動および回転の停止を行う。
【0028】
光学測定ユニット207は、試料分析用基板100に保持された複合体310(
図1)に結合した標識抗体308の標識物質307に応じたシグナル(色素、発光、蛍光等)を検出する。
【0029】
制御回路205は、たとえば試料分析装置200に設けられたCPUである。制御回路205は、RAM(Random Access Memory;図示せず)に読み込まれたコンピュータプログラムを実行することにより、当該コンピュータプログラムの手順にしたがって他の回路に命令を送る。その命令を受けた各回路は、本明細書において説明されるように動作して、各回路の機能を実現する。制御回路205からの命令は、たとえば
図2Aに示されるように、駆動回路206、回転角度検出回路204、光学測定ユニット207等に送られる。コンピュータプログラムの手順は、添付の図面におけるフローチャートによって示されている。
【0030】
なお、コンピュータプログラムが読み込まれたRAM、換言すると、コンピュータプログラムを格納するRAMは、揮発性であってもよいし、不揮発性であってもよい。揮発性RAMは、電力を供給しなければ記憶している情報を保持できないRAMである。たとえば、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)は、典型的な揮発性RAMである。不揮発性RAMは、電力を供給しなくても情報を保持できるRAMである。たとえば、磁気抵抗RAM(MRAM)、抵抗変化型メモリ(ReRAM)、強誘電体メモリ (FeRAM)は、不揮発性RAMの例である。本実施の形態においては、不揮発性RAMが採用されることが好ましい。揮発性RAMおよび不揮発性RAMはいずれも、一時的でない(non-transitory)、コンピュータ読み取り可能な記録媒体の例である。また、ハードディスクのような磁気記録媒体や、光ディスクのような光学的記録媒体も一時的でない、コンピュータ読み取り可能な記録媒体の例である。すなわち本開示にかかるコンピュータプログラムは、コンピュータプログラムを電波信号として伝搬させる、大気などの媒体(一時的な媒体)以外の、一時的でない種々のコンピュータ読み取り可能な媒体に記録され得る。
【0031】
なお、本明細書では、制御回路205は回転角度検出回路204および原点検出器203の原点検出回路203cと別個の構成要素として説明している。しかしながら、これらは共通のハードウェアによって実現されていてもよい。たとえば、試料分析装置200に設けられたCPU(コンピュータ)が、制御回路205として機能するコンピュータプログラム、回転角度検出回路204として機能するコンピュータプログラムおよび原点検出器203の原点検出回路203cとして機能するコンピュータプログラムを直列的、または並列的に実行してもよい。これにより、そのCPUを見かけ上異なる構成要素として動作させることができる。
【0032】
(試料分析用基板100)
図3Aおよび
図3Bは、試料分析用基板100の平面図および分解斜視図である。試料分析用基板100は、回転軸101および回転軸101に平行な方向に所定の厚さを有する板形状の基板100’を備える。本実施形態では、試料分析用基板100の基板100’は円形形状を有しているが、多角形形状、楕円形状、扇形形状等を有していてもよい。基板100’は、2つの主面100c、100dを有している。本実施形態では、主面100cおよび主面100dは互いに平行であり、主面100cおよび主面100dの間隔で規定される基板100’の厚さは、基板100’のどの位置でも同じである。しかし、主面100c、100dは、平行でなくてもよい。例えば、2つの主面100c、100dの一部分が非平行または平行であってもよいし、全体的に非平行であってもよい。また、基板100’の主面100c、100dの少なくとも一方に凹部または凸部を有する構造を備えていてもよい。試料分析用基板100は、それぞれ基板100’内に位置する第1チャンバー102と、第2チャンバー103と、第3チャンバー104と、第4チャンバー105と、第1貯蔵チャンバー108と、第2貯蔵チャンバー109と、反応チャンバー107とを有する。各チャンバーの形状は、以下において特に言及しない限り、形状に制限はなく、任意の形状を有していてもよい。各チャンバーは、概ね、基板100’の2つの主面に平行な上面及び下面と、これらの間に位置する3つ以上の側面とによって規定された空間を有する。上面、下面および側面のうちの隣接する2つの面は、明瞭な稜線によって分けられていなくてもよい。例えば、各チャンバーの形状は扁平な球あるいは、回転楕円体であってもよい。
【0033】
試料分析用基板100は、更に、それぞれ基板100’内に位置する第1流路110と、第2流路111と、第3流路112と、第4流路113と、第5流路114と、第6流路115とを有する。第1流路110は第1チャンバー102と第3チャンバー104とを接続している。第2流路111は、第2チャンバー103と第3チャンバー104とを接続している。第3流路112は、反応チャンバー107と第3チャンバー104とを接続している。第4流路113は、第3チャンバー104と第4チャンバー105とを接続している。第5流路114は、第1貯蔵チャンバー108と第1チャンバー102とを接続している。第6流路115は、第2貯蔵チャンバー109と第2チャンバー103とを接続している。
【0034】
本実施形態では、試料分析用基板100の基板100’は、ベース基板100aとカバー基板100bによって構成されている。第1チャンバー102、第2チャンバー103、第3チャンバー104、第4チャンバー105、第1貯蔵チャンバー108、第2貯蔵チャンバー109および反応チャンバー107のそれぞれの空間はベース基板100a内に形成され、カバー基板100bでベース基板100aを覆うことにより、それぞれの空間の上部および下部が形成される。つまり、これらの空間は基板100’の内面によって規定されている。第1流路110、第2流路111、第3流路112、第4流路113、第5流路114および第6流路115もベース基板100aに形成されており、カバー基板100bでベース基板100aを覆うことにより、これらの流路の空間の上部および下部が形成される。本実施形態では、ベース基板100aおよびカバー基板100bがそれぞれ上面および下面として使用される。基板100’は、例えば、アクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン等の樹脂によって生成され得る。
【0035】
反応チャンバー107は、
図1を参照して説明したように、磁性粒子固定化抗体305と、抗原306を含む検体と、標識抗体308とを反応させて、複合体310を形成させる反応場である。反応チャンバー107の形状に特に制限はない。
【0036】
反応チャンバー107に接続された第3流路112の端部107sは反応チャンバー107の側面部分のうち最も外周側(回転軸101から離れている)に位置する側面部分107bに設けられていることが好ましい。試料分析用基板100の回転による遠心力を受け、複合体310を含む溶液が側面部分107bに支持されるため、側面部分107bに第3流路112の端部107sを設けることにより、複合体310を含む溶液が移送されずに残ってしまうのを抑制できるからである。しかし、側面部分107bに隣接する側面部分107aであって、側面部分107bに近接している位置に設けてもよい。端部107sを側面部分107aに設ける場合は、側面部分107aと側面部分107bとの接続位置を含む位置に設けられることが好ましい。
【0037】
本実施形態では、試料分析用基板100は、複合体310を形成させる反応場として、反応チャンバー107を備えている。磁性粒子固定化抗体305、抗原306を含む検体および標識抗体308の反応チャンバー107への移送には、種々の手段を採り得る。例えば、予め磁性粒子固定化抗体305、抗原306を含む検体および標識抗体308を混合させた混合溶液を量りとり、試料分析用基板100内の反応チャンバー107に混合溶液を注入してもよい。また、試料分析用基板100は、磁性粒子固定化抗体305、抗原306を含む検体および標識抗体308のそれぞれを保持するチャンバーと、それぞれのチャンバーと反応チャンバー107とが連結する流路(例えば、毛管路)を備えていてもよい。この場合、磁性粒子固定化抗体305、抗原306を含む検体および標識抗体308をそれぞれのチャンバーに量りとり、各チャンバーに注入された磁性粒子固定化抗体305、抗原306を含む検体および標識抗体308を反応チャンバー107に移送し、これらを反応チャンバー107中で混合し、複合体310を形成させてもよい。また、磁性粒子固定化抗体305や標識抗体308を乾燥させてもよい(以下、「ドライ化試薬」と称する。)。この場合、例えば、反応チャンバー107にドライ化試薬を保持させ、抗原306を含む検体溶液を含む液体で溶解させることで複合体310を形成させてもよい。また、測定時にあるチャンバーに保持されたドライ化試薬を所定の溶液で溶解させ、抗原306を含む検体溶液を反応チャンバー107中で混合させることで複合体310を形成させてもよい。
【0038】
複合体310を含む溶液は、第3流路112を介して、第3チャンバー104へ移送される。
【0039】
第3チャンバー104において、複合体310を含む溶液のB/F分離が行われる。このために、試料分析用基板100は、磁石106を含む。磁石106は、試料分析用基板100内において、第3チャンバー104の空間に近接して位置している。より具体的には、磁石106は、第3チャンバー104の4つの側面のうち、回転軸101から最も遠くに位置する側面部分104bに近接して配置されている。ただし、試料分析用基板100における磁石106の位置は、第3チャンバー104の側面部分104b以外の上面や下面に近接する位置に配置してもよい。すなわち、磁石106によって、第3チャンバー104の壁面に磁性粒子を捕捉できれば、その位置は特に限定されない。磁石106はB/F分離に応じて取外しできるように構成されていてもよいし、試料分析用基板100に着脱不能に取り付けられていてもよい。
【0040】
磁石106は試料分析装置200に設けてもよい。例えば、試料分析装置200のターンテーブル201aに磁石106を設けてもよい。この場合、ターンテーブル201aは特定の回転角度位置で試料分析用基板100を載置できるように、構成されていることが好ましい。使用者が試料分析用基板100をターンテーブル201aに所定の回転角度で配置すると、第3チャンバー104の壁面に磁性粒子を捕捉できる位置に磁石106が配置される。磁石106は、試料分析装置200のターンテーブル201aに着脱可能に配置されていてもよい。この場合、試料分析装置200は、ターンテーブル201aから磁石106を取り外すことによって、B/F分離が不要な分析あるいは、B/F分離が不要な試料分析用基板にも適合し得る。磁石106を着脱可能に構成した場合には、例えば、基板100’は、磁石106を収納することができる収納室を備える。例えば、
図3Cに示すように、基板100’は、主面100cに開口120aを有する凹状の収納室120を備えていてもよい。収納室120は磁石106を収納可能な空間を有する。開口120aから収納室120に磁石106を挿入することにより、磁石106を基板100’に装填することができる。収納室120の開口120aは、主面100dに設けてもよいし、2つの主面100c、100dの間に位置する側面に設けてもよい。
【0041】
第3チャンバー104の形状に特に制限はない。反応チャンバー107よりも回転軸101から離れて位置していることが好ましい。また、第3チャンバー104に接続された第4流路113の端部104sは第3チャンバー104の側面部分のうち最も外周側(回転軸101から離れている)に位置する側面部分104bに設けられていることが好ましい。試料分析用基板100の回転による遠心力を受け、洗浄液等が側面部分104bに支持されるため、側面部分104bに第4流路113の端部104sを設けることにより、洗浄液が移送されずに残ってしまうのを抑制できるからである。しかし、側面部分104bに隣接する側面部分104aであって、側面部分104bに近接している位置に設けてもよい。端部104sを側面部分104bに設ける場合は、側面部分104bと側面部分104aとの接続位置を含む位置に設けられることが好ましい。
【0042】
また、第3チャンバー104に接続された第1流路110の端部104v、第2流路111の端部104tおよび第3流路112の端部104uは、第3チャンバー104の側面部分のうち最も内周側(回転軸101から最も近い)に位置する側面部分104cか、または、側面部分104cに隣接する側面部分104aまたは104dに近接している位置に設けられることが好ましい。
【0043】
本実施形態では、第1貯蔵チャンバー108および第2貯蔵チャンバー109は、B/F分離の際の洗浄に用いる洗浄液を貯留する。以下において詳細に説明するように、これらの洗浄液を異なるタイミングで第3チャンバー104へ移送させることによって、本実施形態の試料分析システム501では、B/F分離の際、複合体310を複数回洗浄することができる。第1貯蔵チャンバー108および第2貯蔵チャンバー109にそれぞれ貯留される液体を以下、第1洗浄液および第2洗浄液と呼ぶ。第1洗浄液および第2洗浄液は、同じ成分の洗浄液であってもよいし異なる成分の洗浄液であってもよい。また、第1貯蔵チャンバー108および第2貯蔵チャンバー109の空間の大きさも同じであってもよいし、異なっていてもよい。さらに、第1貯蔵チャンバー108および第2貯蔵チャンバー109にそれぞれ貯留される第1洗浄液および第2洗浄液の量も同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
試料分析システム501が使用される際、第1貯蔵チャンバー108および第2貯蔵チャンバー109にそれぞれ第1洗浄液および第2洗浄液が導入される。なお、本実施形態においては、第1貯蔵チャンバー108および第2貯蔵チャンバー109のそれぞれを設ける構成としたが、この2つの貯蔵チャンバーを1つで構成し、当該貯蔵チャンバーに第1チャンバー102および第2チャンバー103のそれぞれに接続する流路を構成し、毛細管現象および試料分析用基板100の回転によって、第1チャンバー102および第2チャンバー103に洗浄液を分配する構成であってもよい。
【0045】
第1チャンバー102および第2チャンバー103は、それぞれ第1貯蔵チャンバー108および第2貯蔵チャンバー109に貯留されていた第1洗浄液および第2洗浄液を保持する。第1貯蔵チャンバー108および第2貯蔵チャンバー109はそれぞれ、第1チャンバー102および第2チャンバー103よりも回転軸101に近い側に位置している。
【0046】
第1チャンバー102および第2チャンバー103は、それぞれ第1空間および第2空間を有する。第1空間および第2空間は、基板100’の内面によって規定される。
図3Aに示すように、基板100’は、基板内において、第1空間および前記第2空間の一部を規定する、第1側面102aおよび第2側面103aを有する。これらは、それぞれ第1流路110および第2流路111に隣接している。また、
図3Aに示される例では、前記回転軸101に平行な方向からみて、第1側面102aおよび第2側面103aは、第1空間および第2空間に対して互いに同じ側に位置している。
図3Aに示される例では、回転軸101に平行な方向からみて、第1側面102aと第2側面103aとは互いに非平行である。また、
図3Aに示される例では、第1側面102aおよび第2側面103aは、回転軸101に平行な平面である。
【0047】
また、基板100’は、基板100’内において、第1空間および前記第2空間の他の一部を規定する第3側面102bおよび第4側面103bを有する。第3側面102bおよび第4側面103bは第1側面102aおよび第4側面103bにそれぞれ隣接している。第1空間における第1側面102aおよび第3側面102bならびに第2空間における第2側面103aおよび第4側面103bは、複数の側面のうち、空間の形状を規定する主要な側面である。このため、第1側面102aと第3側面102bとの間に角(稜)を滑らかにするためのテーパー面、曲面等が設けられていてもよい。第2側面103aと第4側面103bとの間についても同様である。
【0048】
流路を介したチャンバー間の液体の移送は、種々の方法で実現することが可能である。たとえば、重力による移送および毛細管力と回転による遠心力とによる移送を利用することができる。以下この2つの移送方法を概括的に説明する。
【0049】
たとえば、試料分析用基板100を回転軸Aが鉛直方向に対して0度より大きく90度以下の範囲で傾けて支持する。そして、試料分析用基板100の回転角度位置を変更することにより、液体が存在する移送元のチャンバーを、移送先のチャンバーよりも高い位置に配置させる。「高い」とは鉛直方向でより上にあることを言う。これにより、重力を利用して液体を他のチャンバーに移送し得る。この場合、チャンバー間を連結する流路は、毛管路(capillary channel)ではない。「毛管路」は、毛細管現象により内部に液体を満たすことができる狭い空間を有する流路を指す。毛管路は毛細管(capillary tube)ともいう。
【0050】
また、毛管路を利用し、液体を他のチャンバーに移送をすることもできる。毛管路の液体の移送について、毛細管空間ではないチャンバーAおよびチャンバーBと、チャンバーAとチャンバーBを接続する毛管路を有する構成を例に挙げて説明する。チャンバーAに保持された液体は、チャンバーAと毛管路と接続部分である開口に接触すると、液体は毛細管力により毛管路内に吸引され、その流路内部が液体で満たされる。しかしながら、流路内部の液体にかかる毛細管力以下の遠心力を流路内部の液体にかけることができる回転数(停止状態も含む)で試料分析用基板100を回転させると、毛管路内の液体は、チャンバーBへは移送されず、毛細管空間内に留まっている。このように毛細管現象により毛管路内部で液体を満たすには、チャンバーB側、すなわち、毛管路の出口側に空気孔(外部環境とチャンバーとの空気の通り道)を備えなければならない。また、チャンバーA、チャンバーBおよび毛管路といった閉鎖された空間内で毛細管現象による液体の移送を行うには、各チャンバーおよび流路内の気圧の関係から、チャンバーA側、すなわち毛管路の入口側にも空気孔を設けなければならない。そして、チャンバーBが、回転軸に対してチャンバーAよりも遠い位置に配置されていれば、この毛管路に液体が満たされている状態で、毛管路内部の液体にかかる毛細管力よりも大きい遠心力をかけることができる回転数で試料分析用基板100を回転させると、その遠心力によりチャンバーA中の液体をチャンバーBに移送することができる。
【0051】
なお、毛細管力を高めるため、毛管路規定する基板100’の内面、ならびに、各チャンバーの毛管路との接続部分近傍の内面は、親水処理が施されていてもよい。親水処理は、例えば、上述した内面に、非イオン系、カチオン系、アニオン系または両イオン系の界面活性剤を塗布したり、コロナ放電処理を行ったり、物理的な微細凹凸を設けるなどによって行うことができる(例えば、特開2007−3361号公報を参照。)。
【0052】
液体を毛細管力および回転による遠心力によって移送する場合、例えば、直径60mmの試料分析用基板100を100rpmから8000rpmの範囲で回転させることができる。回転速度は各チャンバーおよび流路の形状、液体の物性、液体の移送や処理のタイミング等に応じて決定される。
【0053】
基板100’の回転軸101が重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜するように基板100’を支持し、第3チャンバー104が第1チャンバー102および第2チャンバー103よりも重力方向において下方となるように試料分析用基板100の基板100’を所定の回転角度で保持する。回転軸の重力方向に対する傾斜角度は、5°以上であることが好ましく、10°以上45°以下であることがより好ましく、20°以上30°以下であることがさらに好ましい。この場合、第1チャンバー102は、第1側面102aおよび第3側面102bによって第1凹部を形成し、第1洗浄液は第1凹部で保持される。同様に、第2チャンバー103は、第2側面103aおよび第4側面103bによって第2凹部を形成し、第2洗浄液は第2凹部で保持される。第1凹部および第2凹部は、
図3Aに示す状態において、基板100’の左右方向の同じ側、つまり、第3チャンバー104の中心と回転軸101とを結ぶ直線で分けられる2つの領域のいずれか一方側に位置する。つまり、第1凹部及び第2凹部の凹形状が向かう方向は、基板100’をある角度で保持した場合において、第1凹部及び第2凹部のいずれにも液体を保持することができる方向に向いている。すなわち、第1凹部と第2凹部の凹形状が向かう方向は、概ね同じ方向を向いていることになる。
【0054】
図3Aに示される例では、第3チャンバー104が第1チャンバー102および第2チャンバー103よりも重力方向において下方となるように試料分析用基板100の基板100’を所定の回転角度で保持した場合、第1チャンバー102の第1側面102aと第2チャンバー103の第2側面103aとが非平行であることによって、いずれか一方のチャンバーから保持されている洗浄液の全量が、重力によって第3チャンバー104へ移動しても、他方のチャンバーは洗浄液の少なくとも一部を保持し得る。このため、試料分析用基板100の回転角度を適切に選択することにより、第1チャンバー102および第2チャンバー103から、異なるタイミングで選択的に洗浄液を第3チャンバー104へ移送することができる。
【0055】
図3Aに示される例では、回転軸101に平行な方向から見て、第3チャンバー104の中心と回転軸101を結ぶ直線と、第1側面102aとがなす角度αは、第3チャンバー104の中心と回転軸101を結ぶ直線と、第2側面103aとがなす角度βよりも大きい。このため、第1チャンバー102および第2チャンバー103が重力方向において第3チャンバー104よりも下方に位置するような試料分析用基板100の回転角度(
図3Aに示すP1が6時の方向に一致する回転角度)から時計方向に試料分析用基板100を回転させた場合、先に第1側面102aが重力方向に直交する方向と平行(水平方向)になることによって、第1チャンバー102内の第1洗浄液の全量を選択的に第3チャンバー104へ移送させることができ、その後、第2チャンバー103に保持された第2洗浄液を選択的に第3チャンバー104へ移送させることができる。
【0056】
上述したように本実施形態では、所定の回転角度で、言い換えれば、試料分析用基板100を回転させない状態で、第1チャンバー102および第2チャンバー103から第1洗浄液および第2洗浄液を選択的に第3チャンバー104へ移送させる。このため、第1チャンバー102および第2チャンバー103と第3チャンバー104を接続する第1流路110および第2流路111は、毛細管現象および遠心力を利用した移送ではなく、重力を利用した移送に適合している。
【0057】
なお、重力を利用した移送を行う場合、液体の表面張力によって、第1流路110または第2流路111に各洗浄液が移送され難い場合がある。このような場合、基板100’を揺動、つまり、所定の角度範囲で時計回りおよび反時計回りに回転させることで、各洗浄液が移送され易くすることができる。
【0058】
具体的には、第1流路110および第2流路111は、毛細管現象によって、第1チャンバー102および第2チャンバー103の第1洗浄液および第2洗浄液でそれぞれの内部が満たされないような大きな断面積を有している。例えば、流路が伸びる方向に垂直な断面において、第1流路110および第2流路111は1mm程度以上の幅および1mm程度以上の深さを有しており、好ましくは、3mm程度以上の幅および3mm程度以上の深さを有している。
【0059】
図3Aに示す例では、第1流路110および第2流路111はそれぞれ屈曲部110bおよび111bを備えているが、これらの屈曲部を備えていなくてもよい。好ましくは、第1流路110および第2流路111は第3チャンバー104の中心と回転軸101とを結ぶ直線(
図3Aにおいて破線で示す)と概ね平行な側面部分110gおよび111gを有していることが好ましい。この側面部分110g、111gは、第3チャンバー104の中心と回転軸101とを結ぶ直線で分けられる2つの領域のうち、第1チャンバー102および第2チャンバー103と同じ領域に位置する。
【0060】
第1チャンバー102の第1側面102a上または第1流路110を構成している側面上のいずれかに第1境界位置116が存在し、第2チャンバー103の第2側面103a上または第2流路111を構成している側面上のいずれかに第2境界位置117が存在している。より具体的には、第1境界位置116および第2境界位置117は、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持された液体の表面張力の影響を考慮しない条件において、以下のように規定される。まず、基板100’の回転軸101が重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜するように基板100’を支持し、第3チャンバー104が第1チャンバー102および第2チャンバー103よりも重力方向において下方となるように試料分析用基板100の基板100’を所定の回転角度で保持する。第1境界位置116は、基板100’を一方向(
図3Aに示される例では時計回り)に回転角度を変更させていった際に、所定の厚さ方向におけるいずれかの位置において、第1チャンバー102中の第1洗浄液が、第3チャンバー104へ最初に移動し始める時の第1洗浄液の液面と第1流路110または第1チャンバー102の第1側面102aとの境界で規定される。第2境界位置117は、基板100’を一方向(
図3Aに示される例では時計回り)に回転角度を変更させていった際に、所定の厚さ方向におけるいずれかの位置において、第2チャンバー103中の第2洗浄液が、第3チャンバー104へ最初に移動し始める時の第2洗浄液の液面と第2流路111または第2チャンバー103の第2側面103aとの境界で規定される。
【0061】
以下、図面を参照してより具体的に説明する。
図3Dおよび
図3Eは、第1チャンバー102の第1側面102aおよび第3側面102bが回転軸101と平行であり、基板100’の回転軸101が重力方向に対して50°の傾きで保持されている場合に第1洗浄液51を保持した状態の一例を示す斜視図である。第1洗浄液51は、第1側面102aおよび第3側面102bで保持されている。この状態から
図3Dにおいて矢印で示すように、基板100’を回転させると、第1洗浄液51は液面51aが重力方向に対して垂直を維持するように第1洗浄液51が第1チャンバー102内で移動する。このため第1洗浄液51の液面51aと第1側面102aとの境界51bの位置は第1側面102a上において移動する。
図3Dに示すように、基板100’を回転が進むと、第1洗浄液51の液面51aと第1側面102aとの境界51bが第1流路110の開口に達し、第1洗浄液51が第1流路110から第3チャンバー104へ最初に移動し始める。この時の境界51bの位置が、第1境界位置116である。
図3Dおよび
図3Eにおいて、括弧内の参照番号で示すように。第2チャンバー103内の第2洗浄液52についても同様に、第2境界位置117が定義される。
図3Fおよび
図3Gは、同様に、第1チャンバー102の第1側面102aが回転軸101と30°の角度をなし、第3側面102bが回転軸101と平行であり、基板100’の回転軸101が重力方向に対して50°の傾きで保持されている場合における、第1洗浄液51を保持した状態の一例を示す斜視図である。
同様に、第1境界位置116および第2境界位置117が定義される。第1側面102aおよび第2側面103aの回転軸101に対する傾きおよび第1洗浄液51と第2洗浄液の量が異なるため、
図3Dと
図3Gとにおいて、第1境界位置116および第2境界位置117は異なっている。しかし、第1境界位置116および第2境界位置117に第1洗浄液51および第2洗浄液52が到達する時の基板100’の回転角度は一義的に決定できる。
【0062】
したがって、基板100’を回転させる上で、第1チャンバー102中の第1洗浄液が第1境界位置116に到達する回転角度γ1と、第2チャンバー103中の第2洗浄液が第2境界位置117に到達する回転角度γ2とを、異ならせるように第1チャンバー102および第2チャンバー103を構成すれば、各洗浄液を異なるタイミングで第3チャンバー104へ移送し得る。
【0063】
図3Aに示される試料分析用基板100は一例であり、第1チャンバー102、第2チャンバー103、第1流路110および第2流路111の配置を変更しても、第1チャンバー102中の第1洗浄液と、第2チャンバー中の第2洗浄液とを異なるタイミングで第3チャンバー104へ移送することができる。試料分析用基板100の他の形態の例は、以下において詳述する。
【0064】
第3チャンバー104は、B/F分離を行う場を提供する。反応チャンバー107から遠心力によって、第3流路112を通って、複合体310および未反応物を含む液体(以下反応液と呼ぶ)が、第3チャンバー104へ移送される。このため、第3チャンバー104、反応チャンバー107よりも回転軸101から遠くに位置している。また、第1流路110および第2流路111が、基板100’の回転軸101が重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜するように基板100’を支持し、試料分析用基板100の基板100’を所定の回転角度で保持した場合、第3チャンバー104は、第1チャンバー102(第1境界位置116)および/または第2チャンバー103(第2境界位置117)よりも下方側に位置するように配置する必要がある。反応液が第3チャンバー104に移送されると、反応液中の複合体310および未反応の磁性粒子固定化抗体305(以下、これら両方を指す場合には、単に磁性粒子311と呼ぶ)は、側面部分104bに近接して配置された磁石106の磁力により、側面部分104b部分に捕捉される。そして、試料分析用基板100を回転させると、遠心力によって、反応液(磁石106によって側面104部分に捕捉された複合体310を含む磁性粒子を除く)は、第4流路113を通って、第4チャンバー105へ移送される。
【0065】
第4チャンバー105は、遠心力によって、第4流路113を通って第3チャンバー104から排出される液体を貯蔵する。このために、第4チャンバー105は、第3チャンバー104よりも回転軸101から遠くに位置している。
【0066】
また、第4チャンバー105に接続された第4流路113の端部105sは、第4チャンバー105の側面部分のうち、最も内周側(回転軸101から最も近い)に位置する側面部分105cか、または、側面部分105cに隣接する側面部分105aまたは105dに近接している位置に設けられることが好ましい。
【0067】
第1チャンバー102、第2チャンバー103、第3チャンバー104、第4チャンバー105、第1貯蔵チャンバー108、第2貯蔵チャンバー109および反応チャンバー107のそれぞれには少なくとも1つの空気孔118が設けられている。これにより、各チャンバー内が環境下の気圧に保たれ、毛細管現象およびサイフォンの原理によって各流路が液体の移動・停止を制御し得る。第1貯蔵チャンバー108、第2貯蔵チャンバー109および反応チャンバー107には、検体溶液、反応溶液、洗浄液等などの液体を注入したり、排出するための開口119が設けられていてもよい。
【0068】
空気孔118および開口119は、各チャンバーにおいて、上面であって、回転軸101に近接する側面側に配置されていることが好ましい。これにより、各チャンバーに液体が満たされた状態で試料分析用基板100が回転しても、空気孔118および開口119が液体と接し、液体が、空気孔118および開口119から試料分析用基板100の外部へ移動するのを抑制することができる。空気孔118および開口119は、各チャンバーの側面部分に設けてもよい。
【0069】
また、各チャンバーの空間は、回転軸101側に突出した凸状部分を有しており、凸状部分に空気孔118および開口119が位置していることが好ましい。この構成により、各チャンバーにおける空気孔118および開口119の位置を半径方向においてできるだけ回転軸101に近づけることができる。よって、試料分析用基板100が回転した状態において、空気孔108および開口109と接しないで、各チャンバーが保持し得る液体の量を増大させることができ、これらのチャンバーの空間のうち、液体の保持に利用できないデッドスペースを小さくすることができる。
【0070】
次に
図4を参照しながら第1流路110および第2流路111以外の流路を説明する。第3流路112、第4流路113、第5流路114および第6流路115は、毛細管現象によって内部を液体で満たすことが可能である。具体的には、第3流路112、第4流路113、第5流路114および第6流路115は、それぞれ、毛細管現象により、反応チャンバー107、第3チャンバー104、第1貯蔵チャンバー108および第2貯蔵チャンバー109に保持された液体で内部を満たすことができる。これらの流路は、例えば、流路が伸びる方向に垂直な断面において、5mm以下の幅および50μm〜300μmの深さをそれぞれ有している。
【0071】
また、第3流路112、第4流路113、第5流路114および第6流路115はサイフォンの原理によって、液体の移動を制御し得ることが好ましい。このために、第3流路112、第4流路113および第6流路115はそれぞれ第1屈曲部および第2屈曲部を有している。第1屈曲部は回転軸101と反対側に凸形状を有し、第2屈曲部は回転軸101側に凸形状を有する。第1屈曲部は、流路が接続する2つチャンバーのうち、回転軸101に近い側に位置するチャンバーと、第2屈曲部との間に位置している。
【0072】
図4に示すように、回転軸101と、回転軸101から遠くに位置するチャンバーの最も回転軸に近い側面との距離をR1とし、回転軸101から、第1屈曲部の最も回転軸101から遠い側に位置する点までの距離をR2とした場合、R1>R2を満たすことが好ましい。
【0073】
また、回転軸101と、回転軸101に近くに位置するチャンバーに保持された液体が、遠心力によって、側面に偏って保持されている場合において、回転軸から液体の液面までの距離をR4とし、回転軸101から、第2屈曲部の最も回転軸101に近い側に位置する点までの距離をR3とした場合、R4>R3を満たすことが好ましい。
【0074】
図4では、第4流路113を例に挙げたが、他の流路も同様の関係を満たしている。
【0075】
第4流路113が上述の条件を満たしていることによって、反応チャンバー107から反応液を第3チャンバー104へ遠心力によって移送させる場合に、第3チャンバー104へ移送された反応液がそのまま第4チャンバー105へ移送されるのを防止し得る。この点を、以下に具体的に説明する。
【0076】
ここでいうサイフォンの原理とは、試料分析用基板100の回転により液体にかかる遠心力と流路の毛細管力とのバランスで送液制御が行われることをいう。具体的に、反応チャンバー107から第3チャンバー104に液体が移送され、さらに第4チャンバー104へ液体が移送される例で説明する。
【0077】
例えば、第4流路113がサイフォン構造を有しない毛管路である場合、試料分析用基板100の回転による遠心力で、反応チャンバー107から、第3流路112を介して第3チャンバー104へ移送される過程において、第3チャンバー104へ移送された液体は、第4流路113の毛細管力により第4流路113内に液体が満たされる。この状態で、試料分析用基板100の回転が継続していると、液体は、第3チャンバー104中に保持されず、第4流路113を介して第4チャンバー105に移送されてしまう。ここでいう試料分析用基板100の回転は、第4流路113の毛細管力よりも強い遠心力をかけることができる回転数である。
【0078】
一方、第4流路113がサイフォン構造を有していれば、試料分析用基板100の回転により、反応チャンバー107から第3チャンバー104へ移送された液体は、第4流路113の毛細管力により、第4流路113中に液体が引き込まれる。しかしながら、試料分析用基板100の回転が継続して回転し、第4流路113の毛細管力よりも強い遠心力をかけることができる回転数で回転していれば、液体にかかる毛細管力よりも遠心力の方が強いため、第4流路113内全てを液体で満たされることはない。すなわち、第4流路113には、回転軸101に対して第3チャンバー104に存する液体の液面の距離と同じ高さまでしか液体が満たされない。そして、第3チャンバー104中の液体を第4チャンバー105へ移送したい場合には、試料分析用基板100の回転を、第4流路113の毛細管力よりも弱い遠心力をかけることができる回転数(回転停止も含む)にすることで、毛細管力により第4流路113内全てに液体が満たされる。その後、第4流路113の毛細管力よりも強い遠心力をかけることができる回転数で試料分析用基板100を回転させると、第3チャンバー104内の液体を、第4チャンバー105へ移送させることができる。
【0079】
したがって、上述の回転数で反応チャンバー107から第3チャンバー104に液体を移送し、そのまま第4チャンバー105に液体を移送することなく、一旦、第3チャンバー104に液体を保持したい場合には、第4流路113をサイフォン構造で構成することが好ましい。第3流路112、第5流路114および第6流路115についても同様であるが、上述の液体制御が不要な場合であってもサイフォン構造を採用してもよい。
【0080】
また、第4流路113の例で説明すると、第4流路113は、サイフォン構造を有さない毛管路または、第1流路110および第2流路111のような重力を利用した流路であってもよい。
【0081】
反応チャンバー107から第3チャンバー104を介して第4チャンバー105に液体を移送する過程において、第4流路113がサイフォン構造を有さない毛管路であって、第3チャンバー104に一旦、液体を保持する場合には、次のような構成であることが好ましい。まず、反応チャンバー107から第3チャンバー104へ液体を移送するにあたって、第4流路113中に液体が満たされた液体にかかる毛細管力以下の遠心力をかけることができる試料分析用基板100の回転数(停止状態も含む)で行わなければならない。この場合、第3流路112は、重力を利用した流路であることが好ましい。また、第3流路112が重力を利用した流路であることから、反応チャンバー107の側面部分107bは、第1チャンバー102および第2チャンバー103のような凹部を設けることが好ましい。この場合、反応チャンバー107から第3チャンバー104へ液体を移送するには、側面部分107bの凹部に保持された液体が、重力により第3流路112を介して移動するように試料分析用基板100の回転角度を変更することで行われる。
【0082】
一方、反応チャンバー107から第3チャンバー104を介して第4チャンバー105に液体を移送する過程において、第4流路113が重力を利用した流路であって、第3チャンバー104に一旦、液体を保持する場合には、次のような構成であることが好ましい。第3流路112は、毛管路(サイフォン構造を含む)であっても重力を利用した流路のいずれでもよいが、第3流路112が重力を利用した流路である場合には、第3チャンバー104の側面部分104bは、第1チャンバー102および第2チャンバー103のような凹部を設けることが好ましい。この場合、第3チャンバー104から第4チャンバー105へ液体を移送するには、第1チャンバー102(第2チャンバー103)から第3チャンバー104へ液体を移送する場合と同じく、試料分析用基板100の回転角度を変更することで行われる。
【0083】
以上のとおり、第3流路112、第4流路113、第5流路114および第6流路115の構成は、種々の方式を採用することができる。
【0084】
本実施形態では、第3流路112、第4流路113、第5流路114および第6流路115は、毛管路であるものと示しているが、第5流路114はサイフォンを構成していない。しかし、第5流路114はサイフォンを構成していてもよい。また、第3流路112および第6流路115は、サイフォンを構成していなくてもよい。
【0085】
(試料分析システム501の動作)
試料分析システム501の動作を説明する。
図5は、試料分析システム501の動作を示すフローチャートである。以下の工程に先立ち、試料分析用基板100を試料分析装置200に装填し、試料分析用基板100の原点を検出する。
【0086】
[ステップS1]
まず、
図6に示すように、第1洗浄液および第2洗浄液を試料分析用基板100の第1貯蔵チャンバー108および第2貯蔵チャンバー109に導入する。また、反応チャンバー107に、磁性粒子固定化抗体305と、抗原306を含む検体と、標識抗体308を導入する。例えば、反応チャンバー107に磁性粒子固定化抗体305を含む液体が保持されており、試料分析用基板100に設けられた図示しないチャンバーが抗原306および標識抗体308を含む液体をそれぞれ別々に保持しており、試料分析用基板100の回転による遠心力でこれらが反応チャンバー107へ移送されてもよい。反応チャンバー107において、磁性粒子固定化抗体305と、抗原306を含む検体と、標識抗体308とを抗原抗体反応により、同時に反応させて複合体310を形成させる。この時点で第3流路112、第5流路114および第6流路115は、毛細管現象によって、それぞれ、反応液、第1洗浄液および第2洗浄液で満たされている。
【0087】
[ステップS2]
複合体310が生成した後、試料分析用基板100を回転させ、複合体310を含む反応液を第3チャンバー104へ移動させる。この際、第3流路112は、毛細管現象によって、反応液で満たされている。このため、反応チャンバー107の複合体310を含む反応に、回転により、第3流路112内の反応液にかかる毛細管力よりも強い遠心力が働くと、反応液は第3チャンバー104へ移送される。第3チャンバー104へ移送された反応液は、試料分析用基板100が回転している状態では、続いて第4チャンバー105へ移送されることはない。前述したように第4流路113がサイフォンを構成しているため、遠心力に逆らって、液体が、第4流路113を回転軸101に向かう方向へ移動しないからである。
【0088】
試料分析用基板100の回転速度は、回転による遠心力が生じることにより、反応液等の液体が重力によって移動せず、各毛管路の毛細管力よりも強い遠心力をかけられるような速度が設定される。以下、遠心力を利用する回転には、この回転速度が設定される。
【0089】
反応液の移動と同時に、第1洗浄液および第2洗浄液が第1貯蔵チャンバー108および第2貯蔵チャンバー109から第5流路114および第6流路115を通って、第1チャンバー102および第2チャンバー103へ移送される。
【0090】
反応液および洗浄液をそれぞれすべて第2チャンバー103および第1チャンバー102へ移送させた後、所定の角度で試料分析用基板100を停止させる。
図7に示すように、例えば、所定の角度とは、第1チャンバー102および第2チャンバー103から第1洗浄液および第2洗浄液が流れださない角度Aである。角度Aは第1チャンバー102中の第1洗浄液が第1境界位置116に到達する回転角度γ1よりも小さい。以下、分かりやすさのため、
図7に示すように、回転軸101が重力方向から角度θで傾斜して保持される試料分析用基板100において、回転軸101の鉛直方向を基準として、試料分析用基板100の角度を示す。この時点で第4流路113は、毛細管現象によって、反応液で満たされている。
【0091】
[ステップS3]
第3チャンバー104内に磁性粒子311を含む反応液が移送されると、反応液中の複合体310を含む磁性粒子311は、磁石106により側面部分104b部分に捕捉される。その後、試料分析用基板100を回転させる。回転にともない遠心力が発生し、この遠心力は、
図7に示すように、液体及び磁性粒子311に対して第3チャンバー104の側面部分104b側に働く。遠心力が働く方向は、磁性粒子311が磁石106から受ける吸引力の方向と一致する。このため、磁性粒子311は、強く側面部分104bに押し付けられる。
【0092】
遠心力を受けた反応液は第4流路113から排出され、第4チャンバー105へ移送される。遠心力および磁石106の吸引力の和によって、磁性粒子311は側面部分104bに強く押し付けられ、捕捉される。このため、反応液のみが第2流路111から排出され、磁性粒子311は第3チャンバー104にとどまる。
【0093】
一方、試料分析用基板100の回転中において、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持された第1洗浄液および第2洗浄液は、遠心力によりそれぞれ第3側面102bおよび第4側面103bを含む回転軸101よりも遠い側に位置する側面部分に移動する。すなわち、第1洗浄液および第2洗浄液は、遠心力により回転軸101に遠い側の側面部分へ移動する。したがって、ステップS3における基板100’の回転にともなう第1洗浄液および第2洗浄液の第3チャンバーへの移送は実質的には生じない。
【0094】
図8に示すように、液体が第4チャンバー105へすべて移動した後、例えば、角度Bで試料分析用基板100の回転を停止させる。角度Bは、第1チャンバー102中の第1洗浄液が第1境界位置116に到達する回転角度γ1よりも小さい。これにより、反応液と磁性粒子311とが分離される。具体的には、反応液は、第4チャンバー105へ移動し、磁性粒子311は第3チャンバー104にとどまる。角度Bは第1チャンバー102および第2チャンバー103から第1洗浄液および第2洗浄液が流れださない角度である。角度Bは角度Aと同じであってもよいし、異なっていてもよい。なお、第1チャンバー102および第2チャンバー103から第1洗浄液および第2洗浄液が流れださない角度は、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持される第1洗浄液および第2洗浄液の量にも依存する。
【0095】
図8に示すように、この状態では、第1チャンバー102は、第1側面102aと第3側面102bとで第1洗浄液の全量を保持している。同様に、第2チャンバー103は、第2側面103aと第4側面103bとで第2洗浄液の全量を保持している。
【0096】
以下、第1チャンバー102および第2チャンバー103から第1洗浄液および第2洗浄液を移送させるための試料分析用基板100の回転角度を説明するため、この状態における試料分析用基板100の回転角度を基準角度と呼ぶ。
【0097】
[ステップS4(工程(a))]
図9に示すように、試料分析用基板100を、基準角度からA1の回転角度で時計回りに回転させ、角度C(第1角度)で停止させる。これにより、第1チャンバー102の第1洗浄液が第1流路110をとおって第3チャンバー104へ、重力によって移送される。角度Cは第1チャンバー102中の第1洗浄液が第1境界位置116に到達する回転角度γ1よりも大きく、第2チャンバー103中の第2洗浄液が第2境界位置117に到達する回転角度γ2より小さい。この時、第2チャンバー103の第2洗浄液は第2チャンバー103に保持されたままである。
【0098】
この時、第1チャンバー102に保持された第1洗浄液の全量が第3チャンバー104へ移送される。第2チャンバー103から第3チャンバー104へ移送される第2洗浄液の量はゼロである。また、第3チャンバー104の第1洗浄液の一部が毛細管現象によって第4流路113に移動する。
【0099】
第1洗浄液の全量を確実に第3チャンバー104へ移送するため、角度Cを中心として、時計回りおよび反時計回りに交互に数度程度回転させる、つまり揺動させてもよい。角度Cは、重力によって第1洗浄液を第1チャンバー102から第3チャンバー104へ移送させ、第2チャンバー103からは第2洗浄液が第3チャンバー104へ移送されない角度であればよい。
【0100】
[ステップS5(工程(c))]
第1洗浄液が第3チャンバー104内に移送されても、磁性粒子311は、磁石106により側面部分104bに捕捉されたままである。その後、試料分析用基板100を回転させる。回転にともない遠心力が発生し、第3チャンバー104内の第1洗浄液が第4流路113を通って第4チャンバー105へ移送される。遠心力および磁石106の吸引力の和によって、磁性粒子311は側面部分104bに強く押し付けられ、捕捉される。このため、
図10に示すように、第1洗浄液のみが第3チャンバー104から排出され、磁性粒子311は第3チャンバー104にとどまる。
【0101】
一方、基板100’の回転中において、第2チャンバー103に保持された第2洗浄液は、遠心力により第4側面103bを含む回転軸101よりも遠い側の側面部分に移動する。したがって、ステップS5における基板100’の回転にともなう第2洗浄液の第3チャンバーへの移送は実質的には生じない。
【0102】
[ステップS6(工程(b))]
図11に示すように、試料分析用基板100を、角度D(第2角度)で停止させる。この角度Dは、基準角度からA1の回転角度で基板を時計回りに回転させ、更にA2の回転角度で基板を時計回りに回転させた角度である。角度Dは、第2チャンバー103中の第2洗浄液が第2境界位置117に到達する回転角度γ2よりも大きい。
【0103】
なお、ステップS5における回転状態から、回転速度を低下させ、試料分析用基板100を直接角度D(第2角度)で停止させる場合、第2チャンバー103に保持されている第2洗浄液の液面が乱れ、第2洗浄液の移送に適さないこともあり得る。この場合には、ステップS5の回転状態から、回転速度を低下させ、試料分析用基板100を角度C(第2角度)で一端停止させ、その後、試料分析用基板100をA2の回転角度で時計回りに回転させ、角度Dで停止させてもよい。
【0104】
これにより、第2チャンバー103の第2洗浄液が第2流路111をとおって第3チャンバー104へ、重力によって移送される。この時、第1チャンバー102には第1洗浄液が残っていないため、第1チャンバー102から第3チャンバー104への液体の移動はない。
【0105】
この時、第2チャンバー103に保持された第2洗浄液の全量が第3チャンバー104へ移送される。第1チャンバー102から第3チャンバー104へ移送される第1洗浄液の量はゼロである。また、第3チャンバー104の第2洗浄液の一部が毛細管現象によって第4流路113に移動する。
【0106】
第2洗浄液の全量を確実に第3チャンバー104へ移送するため、角度Dを中心として、時計回りおよび反時計回りに交互に数度程度回転させる、つまり揺動させてもよい。角度Dは、重力によって第2洗浄液を第2チャンバー103から第3チャンバー104へ移送させることができる角度であればよい。
【0107】
[ステップS7(工程(b))]
第2洗浄液が第3チャンバー104内に移送されても、磁性粒子311は、磁石106により側面部分104b部分に捕捉されたままである。その後、試料分析用基板100を回転させる。回転にともない遠心力が発生し、第3チャンバー104内の第2洗浄液が第4流路113を通って第4チャンバー105へ移送される。遠心力および磁石106の吸引力の和によって、磁性粒子311は側面部分104bに強く押し付けられ、捕捉される。このため、
図12に示すように、第2洗浄液のみが第3チャンバー104から排出され、磁性粒子311は第3チャンバー104にとどまる。つまりB/F分離が行われる。
【0108】
以上の工程によって、B/F分離、具体的には、磁性粒子311と種々の未反応物とが分離される。
【0109】
その後、第3チャンバー104にシグナル検出用試薬を導入し、光学測定ユニット207を用いて、磁性粒子311に含まれる複合体310に結合した標識抗体308の標識物質307に応じた色素、発光、蛍光等のシグナルを検出する。これにより、抗原306の検出、抗原306の濃度の定量等を行うことができる。
【0110】
このように本実施形態の試料分析用基板、試料分析装置、試料分析システムおよび試料分析用プログラムによれば、異なる複数のチャンバーに保持された液体を異なるタイミングで別のチャンバーに導入することができる。このため、試料分析用基板を用いてB/F分離をする場合、複数回の洗浄を行うことにより、十分な洗浄効果を得ることができる。また、この動作は、試料分析用基板の回転および停止の制御と、停止時の角度の制御によって、実現し得る。このため、大型の分析機器を用いたり、操作者が手動で操作することなく、B/F分離を含む複雑な反応ステップを介して検体中の成分の分析が行われる分析法に好適に適用可能である。
【0111】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態では、B/F分離の洗浄の例を説明したが、本実施形態の試料分析用基板、試料分析装置、試料分析システムおよび試料分析用プログラムは、洗浄液以外の溶液を、上述したように複数回に分けて同じチャンバーへ導入する種々の試料分析方法へ適用可能である。また、上記実施形態では、液体のチャンバーへの導入を続けて行っているが、試料分析用基板の回転および停止の制御と、停止時の角度の制御を適切に行うことにより、間に他の工程を含めることも可能である。
【0112】
また、本実施形態では、ステップS4において、第1チャンバー102に保持された第1洗浄液の全量が第3チャンバー104に移送され、第2チャンバー103に保持された第2洗浄液は第3チャンバー104へ移送されない。また、ステップS6において、第2チャンバー103に保持された第2洗浄液の全量が第3チャンバー104へ移送される。しかし本開示の試料分析用基板、試料分析装置、試料分析システムおよび試料分析用プログラムはこの形態に限られない。例えば、ステップS4において、第1チャンバー102に保持された第1所定量の第1洗浄液および2チャンバー103に保持された第2所定量の第2洗浄液が第3チャンバー104へ移送され、ステップS6において、第1チャンバー102に保持された第3所定量の第1洗浄液および第2チャンバー103に保持された第4所定量の第2洗浄液が第3チャンバー104へ移送されてもよい。つまり、ステップS4および/またはステップS6において、第1洗浄液および第2洗浄液が、所定量ずつ、第3チャンバー104へ移送されてもよい。
【0113】
また、上記実施形態では試料分析用基板は、洗浄液を保持する2つのチャンバーを備えていたが、3つ以上のチャンバーを備えていてもよい。
図13は、洗浄液を保持する3つのチャンバーを備えた試料分析用基板の一例を示している。
図13Aに示すように、試料分析用基板は、
図3に示す構成に加えて、第3貯蔵チャンバー121、第5チャンバー123、第7流路122および第8流路124を備えている。第7流路122は第3貯蔵チャンバー121と第5チャンバー123とを接続し、第8流路124は、第5チャンバー123と第3チャンバー104とを接続している。第7流路122は、第6流路115と同様、毛細管現象によって液体を移送可能であり、また、サイフォンを構成している。第7流路122は第1流路110と同様、重力で液体を移送可能に構成されている。第3貯蔵チャンバー121には第3洗浄液が保持される。
【0114】
図13Aに示す試料分析用基板を用いる場合も、上述したような手順によって操作することができる。まず上述のステップS1において、更に第3洗浄液を第3貯蔵チャンバー121に導入する。第3貯蔵チャンバー121の第3洗浄液は、ステップS2において、他の洗浄液と同様、第5チャンバー123へ移送される。
【0115】
その後、ステップS3〜ステップS7を実行し、
図13Aおよび
図13Bに示すように、角度Cおよび角度Dで第1洗浄液および第2洗浄液をそれぞれ第1チャンバー102および第2チャンバー103から第3チャンバー104へ移動させる。
【0116】
ステップS7の後、
図13Cに示すように、試料分析用基板100を、角度E(第3の角度)で停止させる。この角度Eは、基準角度からA1およびA2の回転角度で基板を時計回りに回転させ、更にA3の回転角度で基板を時計回りに回転させた角度である。
【0117】
これにより、第5チャンバー123の第3洗浄液が第8流路124をとおって第3チャンバー104へ、重力によって移送される。この時、第1チャンバー102、第2チャンバー103には第1洗浄液および第2洗浄液が残っていないため、第1チャンバー102および第2チャンバー103から第3チャンバー104への液体の移動はない。
【0118】
これにより、第5チャンバー123に保持された第3洗浄液の全量が第3チャンバー104へ移送される。第1チャンバー102および第2チャンバー103から第3チャンバー104へ移送される第1洗浄液および第2洗浄液の量はそれぞれゼロである。この時、第3チャンバー104の第3洗浄液の一部が毛細管現象によって第4流路113に移動する。
【0119】
第3洗浄液が第3チャンバー104内に移送されても、磁性粒子311は、磁石106により側面部分104bに捕捉されたままである。その後、試料分析用基板100を回転させる。回転にともない遠心力が発生し、第3チャンバー104内の第3洗浄液が第4流路113を通って第4チャンバー105へ移送される。遠心力および磁石106の吸引力の和によって、磁性粒子311は側面部分104bに強く押し付けられ、捕捉される。このため、
図12に示すように、第2洗浄液のみが第3チャンバー104から排出され、磁性粒子311は第3チャンバー104にとどまる。
【0120】
また、
図13Aに示す試料分析用基板を用いて、洗浄液以外の液体を第1チャンバー102、第2チャンバー103および第5チャンバー123のいずれかに保持してもよい。例えば、第1チャンバー102および第2チャンバー103にそれぞれ第1洗浄液および第2洗浄液を保持させ、第5チャンバー123に発色、発光試薬等のシグナル検出用試薬溶液を保持させてもよい。この場合、上述した手順を用いて、第1洗浄液および第2洗浄液による2回の洗浄が終わった後に、第5チャンバー123に保持されたシグナル検出用試薬溶液を第3チャンバー104に移送させ、第3チャンバー104中で生じた標識抗体からのシグナルを検出することが可能である。
【0121】
また、本実施形態では、磁性粒子を用いて試料の分析を行う例を説明したが、本開示の試料分析用基板、試料分析装置、試料分析システムおよび試料分析システム用プログラムは、磁性粒子を用いた試料の分析に限られない。例えば、1次抗体が固定化される対象は、磁性粒子ではなく、チャンバー内の壁面であってもよい。
【0122】
具体的には、チャンバーがポリスチレンやポリカーボネートといった素材で構成されている場合、チャンバー内の壁面に物理吸着により1次抗体を固定させることができる。また、チャンバー壁面にアミノ基やカルボキシル基といった官能基を持たせ、チャンバー内の壁面に化学結合により1次抗体を固定させることができる。このため、チャンバー内で抗原や標識抗体とのサンドイッチ型の結合反応を行わせることができる。また、チャンバー内の壁面に金属基板を設け、SAMを用いて1次抗体を金属基板に結合させることにより、1次抗体を固定させることができる。これにより、チャンバー内で抗原や標識抗体とのサンドイッチ型の結合反応を行わせることができる。
【0123】
一次抗体をチャンバーの壁面に物理吸着で固定させる形態は、例えば、色素、化学発光または蛍光のシグナルを検出する測定系に使用することができる。一方、一次抗体を金属基板に固定させる形態は、シグナルとして、主に電気化学的シグナル(例えば、電流)、電気化学発光のシグナルを検出する測定系に使用することができる。
【0124】
これらの場合、
図3に示した磁石106は不要である。また、複合体310形成の反応場は反応チャンバー107ではなく、第3チャンバー104である。したがって、一次抗体は、第3チャンバー104の壁面に固定される。また、本開示の試料分析用基板、試料分析装置、試料分析システムおよび試料分析システム用プログラムは、非競合法(サンドイッチイムノアッセイ法)だけでなく、競合法、ハイブリダイゼーションによる遺伝子検出法にも適用可能である。
【0125】
(試料分析用基板100の他の形態例)
以下、試料分析用基板100の他の形態の例を説明する。
図14A、14B、14Cから
図18A、18B、18Cは、試料分析用基板100の第1チャンバー102、第2チャンバー103、第1流路110および第2流路111の他の構成例を示している。これらの図は、分かりやすさのため、試料分析用基板100の基板100’における、回転軸101、第1チャンバー102、第2チャンバー103、第3チャンバー104、第1流路110および第2流路111のみを示している。
【0126】
第1例は、第1チャンバー102において、第1境界位置116が第1側面102aよりも回転軸101に近接して位置し、第2チャンバー103において、第2境界位置117が第2側面103aよりも回転軸101に近接して位置している。基板100’は、回転軸101が重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜するように支持され、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持された第1洗浄液および第2洗浄液が、それぞれ第1流路110および第2流路111を介して第3チャンバー104に移送されない任意の所定の基準角度で保持されている。この状態で基板100’を回転軸101に平行な方向からみた場合、第1例では、第1境界位置116および第2境界位置117が、基板100’の左右方向、つまり、第3チャンバー104の中心近傍と回転軸101とを結ぶ直線で分けられる2つの領域のいずれか一方側に位置する。
図3Aで示した基板100’は、第1例の類型に含まれる。
【0127】
第1例の一例を、
図14Aから
図14Cを用いて説明する。
図14Aの例では、第1境界位置116および第2境界位置117が、基板100’における、第3チャンバー104の中心と回転軸101とを結ぶ直線(破線で示す)で分けられる2つの領域の左側に位置する。基板100’を、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持された第1洗浄液および第2洗浄液が、それぞれ第1流路110および第2流路111を介して第3チャンバーに移送されない任意の所定の基準角度で保持した状態(
図14A)から時計回りに回転させ、第1角度まで回転角度を変えることで第1チャンバー102から第1洗浄液を第3チャンバー104へ移送することができる(
図14B)。
【0128】
また、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持された第1洗浄液および第2洗浄液が、それぞれ第1流路110および第2流路111を介して第3チャンバーに移送されない任意の所定の基準角度で基板100’を保持した状態(
図14A)から時計回りに基板100’を回転させ、第1角度より絶対値が大きい第2角度まで回転角度を変えることで第2チャンバー103から第2洗浄液を第3チャンバー104へ移送することができる(
図14C)。
【0129】
このように、第1例においては、基板100’を同一方向に回転させる(
図14Aの例では時計回り)ことによって、第1チャンバー102の第1洗浄液および第2チャンバー103の第2洗浄液を異なるタイミングで第3チャンバー104へ移送させることができる。
【0130】
第2例は、第1チャンバー102において、第1境界位置116が第1側面102aよりも回転軸101から離れて位置し、第2チャンバー103において、第2境界位置117が第2側面103aよりも回転軸101から離れて位置している。基板100’は、回転軸101が重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜するように支持され、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持された第1洗浄液および第2洗浄液が、それぞれ第1流路110および第2流路111を介して第3チャンバーに移送されない任意の所定の基準角度で保持されている。この状態で基板100’を回転軸101に平行な方向からみた場合、第1境界位置116および第2境界位置117が、基板100’の左右方向、つまり、第3チャンバー104の中心と回転軸101とを結ぶ直線で分けられる2つの領域のいずれか一方側に位置する。
【0131】
第2例の一例を、
図15Aから
図15Cを用いて説明する。
図15Aの例では、第1境界位置116および第2境界位置117が、基板100’における、第3チャンバー104の中心と回転軸101とを結ぶ直線(破線で示す)で分けられる2つの領域の左側に位置する。基板100’を、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持された第1洗浄液および第2洗浄液が、それぞれ第1流路110および第2流路111を介して第3チャンバーに移送されない任意の所定の基準角度で保持した状態(
図15A)から反時計回りに回転させ、第1角度まで回転角度を変えることで第1チャンバー102から第1洗浄液を第3チャンバー104へ移送することができる(
図15B)。
【0132】
また、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持された第1洗浄液および第2洗浄液が、それぞれ第1流路110および第2流路111を介して第3チャンバーに移送されない任意の所定の基準角度で基板100’を保持した状態(
図15A)から反時計回りに回転させ、第1角度より絶対値が大きい第2角度まで回転角度を変えることで第2チャンバー103から第2洗浄液を第3チャンバー104へ移送することができる(
図15C)。
【0133】
このように、第2例においては、基板100’を同一方向に回転させる(
図15Aの例では反時計回り)ことによって、第1チャンバー102の第1洗浄液および第2チャンバー103の第2洗浄液を異なるタイミングで第3チャンバー104へ移送させることができる。
【0134】
第3例は、第1チャンバー102において、第1境界位置116が第1側面102aよりも回転軸101に近接して位置し、第2チャンバー103において、第2境界位置117が第2側面103aよりも回転軸101に近接して位置している。基板100’は、回転軸101が重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜するように支持され、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持された第1洗浄液および第2洗浄液が、それぞれ第1流路110および第2流路111を介して第3チャンバーに移送されない任意の所定の基準角度で保持されている。この状態で基板100’を回転軸101に平行な方向からみた場合、第1境界位置116および第2境界位置117が、基板100’の左右方向の異なる方向側に位置する、つまり、第3チャンバー104の中心と回転軸101とを結ぶ直線で分けられる2つの領域にそれぞれ位置する。
【0135】
第3例の一例を、
図16Aから
図16Cを用いて説明する。
図16Aの例では、第1境界位置116が、基板100’における、第3チャンバー104の中心と回転軸101とを結ぶ直線(破線で示す)で分けられる2つの領域の左側に位置し、第2境界位置117が右側に位置する。基板100’を、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持された第1洗浄液および第2洗浄液が、それぞれ第1流路110および第2流路111を介して第3チャンバーに移送されない任意の所定の基準角度で保持した状態(
図16A)から時計回りに回転させ、第1角度まで回転角度を変えることで第1チャンバー102から第1洗浄液を第3チャンバー104へ移送することができる(
図16B)。
【0136】
また、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持された第1洗浄液および第2洗浄液が、それぞれ第1流路110および第2流路111を介して第3チャンバーに移送されない任意の所定の基準角度で基板100’を保持した状態(
図16A)から反時計回りに回転させ、第2角度まで回転角度を変えることで第2チャンバー103から第2洗浄液を第3チャンバー104へ移送することができる(
図16C)。
【0137】
このように、第3例においては、基板100’を逆方向に回転させることによって(
図16Aの例では第1チャンバー102は時計回り、第2チャンバー103は反時計回り)、第1チャンバー102および第2チャンバー103の第1洗浄液および第2洗浄液を異なるタイミングで第3チャンバー104へ移送させることができる。
【0138】
第4例は、第1チャンバー102において、第1境界位置116が第1側面102aよりも回転軸101から離れて位置し、第2チャンバー103において、第2境界位置117が第2側面103aよりも回転軸101から離れて位置する。基板100’は、回転軸101が重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜するように支持され、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持された第1洗浄液および第2洗浄液が、それぞれ第1流路110および第2流路111を介して第3チャンバーに移送されない任意の所定の基準角度で保持されている。この状態で、基板100’を回転軸101に平行な方向からみた場合、第1境界位置116および第2境界位置117が、基板100’の左右方向の異なる方向側に位置する、つまり、第3チャンバー104の中心と回転軸101とを結ぶ直線で分けられる2つの領域にそれぞれ位置する。
【0139】
第4例における第1洗浄液および第2洗浄液の移動方法は第3例と同様である。つまり、第3例と同様、基板100’を逆方向に回転させることによって、第1チャンバー102および第2チャンバー103の第1洗浄液および第2洗浄液を異なるタイミングで第3チャンバー104へ移送させることができる。
【0140】
第5例は、第1チャンバー102において、第1境界位置116が第1側面102aよりも回転軸101に近接して位置し、第2チャンバー103において、第2境界位置117が第2側面103aよりも回転軸101から離れて位置している。基板100’は、回転軸101が重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜するように支持され、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持された第1洗浄液および第2洗浄液が、それぞれ第1流路110および第2流路111を介して第3チャンバーに移送されない任意の所定の基準角度で保持されている。この状態で基板100’を回転軸101に平行な方向からみた場合、第1境界位置116および第2境界位置117が、基板100’の左右方向の異なる方向側に位置する、つまり、第3チャンバー104の中心と回転軸101とを結ぶ直線で分けられる2つの領域にそれぞれ位置する。
【0141】
第5例の一例を、
図17Aから
図17Cを用いて説明する。
図17Aの例では、第1境界位置116が、基板100’における、第3チャンバー104の中心と回転軸101とを結ぶ直線(破線で示す)で分けられる2つの領域の左側に位置し、第2境界位置117が右側に位置する。基板100’を、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持された第1洗浄液および第2洗浄液が、それぞれ第1流路110および第2流路111を介して第3チャンバーに移送されない任意の所定の基準角度で保持した状態(
図17A)から時計回りに回転させ、第1角度まで回転角度を変えることで第1チャンバー102から第1洗浄液を第3チャンバー104へ移送することができる(
図17B)。
【0142】
また、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持された第1洗浄液および第2洗浄液が、それぞれ第1流路110および第2流路111を介して第3チャンバーに移送されない任意の所定の基準角度で基板100’を保持した状態(
図17A)から時計回りに回転させ、第1角度より絶対値が大きい第2角度まで回転角度を変えることで第2チャンバー103から第2洗浄液を第3チャンバー104へ移送することができる(
図17C)。
【0143】
このように、第5例においては、基板100’を同一方向に回転させる(
図17Aの例では時計回り)ことによって、第1チャンバー102の第1洗浄液および第2チャンバー103の第2洗浄液を異なるタイミングで第3チャンバー104へ移送させることができる。
【0144】
第6例は、第1チャンバー102において、第1境界位置116が第1側面102aよりも回転軸101から離れて位置し、第2チャンバー103において、第2境界位置117が第2側面103aよりも回転軸101に近接して位置している。基板100’は、回転軸101が重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜するように支持され、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持された第1洗浄液および第2洗浄液が、それぞれ第1流路110および第2流路111を介して第3チャンバーに移送されない任意の所定の基準角度で保持されている。この状態で基板100’を回転軸101に平行な方向からみた場合、第1境界位置116および第2境界位置117が、基板100’の左右方向の異なる方向側に位置する、つまり、第3チャンバー104の中心と回転軸101とを結ぶ直線で分けられる2つの領域にそれぞれ位置する。
【0145】
第6例における第1洗浄液および第2洗浄液の移動方法は第5例と同様である。
【0146】
つまり、第5例と同様、基板100’を同一方向に回転させることによって、第1チャンバー102および第2チャンバー103の第1洗浄液および第2洗浄液を異なるタイミングで第3チャンバー104へ移送させることができる。
【0147】
第7例は、第1チャンバー102において、第1境界位置116が第1側面102aよりも回転軸101に近い側に位置し、第2チャンバー103において、第2境界位置117が第2側面103aよりも回転軸から離れて位置している。基板100’は、回転軸101が重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜するように支持され、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持された第1洗浄液および第2洗浄液が、それぞれ第1流路110および第2流路111を介して第3チャンバーに移送されない任意の所定の基準角度で保持されている。この状態で基板100’を回転軸101に平行な方向からみた場合、第1境界位置116および第2境界位置117が、基板100’の左右方向、つまり、第3チャンバー104の中心と回転軸101とを結ぶ直線で分けられる2つの領域のいずれか一方側に位置する。
【0148】
第7例の一例を、
図18Aから
図18Cを用いて説明する。
図18Aの例では、第1境界位置116および第2境界位置117が、基板100’における、第3チャンバー104の中心と回転軸101とを結ぶ直線(破線で示す)で分けられる2つの領域の左側に位置する。基板100’を、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持された第1洗浄液および第2洗浄液が、それぞれ第1流路110および第2流路111を介して第3チャンバーに移送されない任意の所定の基準角度で保持した状態(
図18A)から時計回りに回転させ、第1角度まで回転角度を変えることで第1チャンバー102から第1洗浄液を第3チャンバー104へ移送することができる(
図18B)。
【0149】
また、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持された第1洗浄液および第2洗浄液が、それぞれ第1流路110および第2流路111を介して第3チャンバーに移送されない任意の所定の基準角度で基板100’を保持した状態(
図18A)から反時計回りに回転させ、第2角度まで回転角度を変えることで第2チャンバー103から第2洗浄液を第3チャンバー104へ移送することができる(
図18C)。
【0150】
このように、第7例においては、基板100’を同一方向に回転させる(
図18Aの例では反時計回り)ことによって、第1チャンバー102の第1洗浄液および第2チャンバー103の第2洗浄液を異なるタイミングで第3チャンバー104へ移送させることができる。
【0151】
第8例は、第1チャンバー102において、第1境界位置116が第1側面102aよりも回転軸101から離れて位置し、第2チャンバー103において、第2境界位置117が第2側面103aよりも回転軸に近接して位置している。基板100’は、回転軸101が重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜するように支持され、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持された第1洗浄液および第2洗浄液が、それぞれ第1流路110および第2流路111を介して第3チャンバーに移送されない任意の所定の基準角度で保持されている。この状態で基板100’を回転軸101に平行な方向からみた場合、第1境界位置116および第2境界位置117が、基板100’の左右方向、つまり、第3チャンバー104の中心と回転軸101とを結ぶ直線で分けられる2つの領域のいずれか一方側に位置する。
【0152】
第8例における第1洗浄液および第2洗浄液の移動方法は第7例と同様である。つまり、第7例と同様、第1チャンバー102および第2チャンバー103の第1洗浄液および第2洗浄液を異なるタイミングで第3チャンバー104へ移送させるためには、基板100’を逆方向に回転させることで行うことができる。
【0153】
第1〜第8例で示した液体の移送は一例であって、第1洗浄液および第2洗浄液の第3チャンバー104への移送のタイミングは、第1チャンバー102の第1側面102aおよび第2チャンバー103の第2側面103aの形状によって制御することができる。
【0154】
また、第1洗浄液および第2洗浄液の第3チャンバー104への移送のタイミングは、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持させる第1洗浄液の量(すなわち、第1貯蔵チャンバー108中の第1洗浄液の量)および第2洗浄液の量(すなわち、第2貯蔵チャンバー109中の第2洗浄液の量)によって制御することができる。例えば、第1チャンバー102の第1側面102aおよび第2チャンバー103の第2側面103aの形状以外の構造が同じである2つの試料分析用基板100において、第1側面102aおよび第2側面103aの形状を異ならせることにより、第1洗浄液を最初に第3チャンバー104へ移送させることもできるし、第2洗浄液を最初に第3チャンバー104へ移送させることができる。また、例えば、試料分析用基板100が同じ構造を有し、かつ。試料分析用基板100の回転制御が同じ場合であっても、第1チャンバー102および第2チャンバー103に保持させる第1洗浄液の量および第2洗浄液の量によっては、第1洗浄液を最初に第3チャンバー104へ移送させることもできるし、第2洗浄液を最初に第3チャンバー104へ移送させることができる。
【0155】
なお、第1チャンバー102および第2チャンバー103の少なくともいずれか一方に洗浄液が保持された状態で、他の液体を試料分析用基板100の回転(遠心力による)で移送させる場合、意図しないタイミングで洗浄液が、第3チャンバー104へ移送される可能性がある。このような意図しないタイミングで洗浄液が第3チャンバー104への移送されるのを抑制するために、第1チャンバー102における第1境界位置116は、第1側面102aよりも回転軸101に近接している方が好ましい。また、第2チャンバー103における第2境界位置117は、第2側面103aよりも回転軸101に近接している方が好ましい。他の液体を遠心力によって移送させるために、試料分析用基板100を回転させると、第1チャンバー102の第1洗浄液および第2チャンバー103の大2洗浄液にも遠心力が働き、それぞれ第1境界位置116および第2境界位置117よりも回転軸101から遠くに位置する第3側面102bおよび第4側面13bで保持されるようになり、第1流路110および第2流路111の開口から第1洗浄液および第2洗浄液の液面が遠ざかるからである。
【0156】
また、試料分析用基板100の回転方向も意図しないタイミングによる洗浄液の第3チャンバー104へ移送に影響し得る。例えば、第1例の
図14Aに示される形態を試料分析用基板100が備えている場合、
図14Aに示される状態から、反時計回りの方向で試料分析用基板100を回転させ、
図14Bに示す第1角度に試料分析用基板100の回転角度を変更することにより、回転中に第1洗浄液および第2洗浄液が第3チャンバー104へ移送されてしまう可能性がある。したがって、基板100’の回転角度を第1角度および第2角度に変更させる場合、回転の方向も考慮することが好ましい。