(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
これより、例示的実施形態について説明する。
【0023】
例えば携帯電話等のハンドヘルド製品のために、3D表面を有するカバーガラスが開発されている。しかしながら、例えば薄型LCDガラスから3Dパーツを形成するのは、曲率半径が小さい場合ほど困難になる。例えば10mmの曲率半径は、薄型LCDガラスによって容易に達成される。しかしながら、例えば5mm又は1若しくは2mm等、10mm未満の比較的小さい屈曲半径を有する3D皿状パーツは、既存の方法での製造がより困難である。というのは、既存の方法ではガラスは典型的には高温になり、これにより、良好な小さい(例えば2mm)のコーナ半径を達成するにあたって表面欠陥が発生するためである。更に、ガラスを鋳型の厳密な特徴部分に押し付けるために、真空及び圧力が必要となり得る。更に、製造サイズ及び容積をスケールアップするためには、典型的にはコスト効率のために大型に形成された薄型ガラスのシートが使用され、複数のパーツのアレイ上に厳密なコーナ半径を生成するのは、更に困難になり得る。本明細書で開示される実施形態は、
図1〜4Bと併せて更に説明されるように、曲率半径が小さい3D表面を有するガラスパーツの製造を促進できる。
【0024】
本出願は、強化ガラス又は非強化ガラスにおいて特に関心の的となっている、任意の形状の成形された3D薄型透明脆性基板の正確な形成のためのプロセスを提供する。一実施形態では、上記ガラスはGorilla(登録商標)ガラス(全コード、Corning,Inc.から入手可能)である。実施形態による方法はまた、後加工仕上げステップを必要とすることなく、1つ又は複数の3Dパーツ、即ち3D表面を有するパーツをその最終的なサイズに切断して抜き出すことができる。本方法は、強化された(例えば化学的にイオン交換された)又は強化されていない(原料ガラス)3Dパーツに適用できる。
【0025】
加工物、パーツ又は物品としては例えば、湾曲表面を有する電話用のガラスカバー、又は自動車用ガラスが挙げられる。本出願において開発されたレーザ法は、選択されたレーザ波長に対して略透過性(即ち材料の深さ1mmあたり約50%未満、及び10%未満、例えば約1%未満の吸収率)の材料に好適である。
【0026】
主要な原理は、例えばあるプロセスによって、及び「PROCESSING 3D SHAPED TRANSPARENT BRITTLE SUBSTRATE」という名称の2013年12月17日出願の同時係属出願である米国仮特許出願第61/917127号明細書に記載されているシステムを用いて、レーザ焦線を用いてガラスに孔を穿通して欠陥を生成することであり、上記特許出願は参照により本出願に援用される。レーザは、薄型ガラスシートに孔又は細長い損傷領域(欠陥線)を生成することによって穿通領域を形成するために、焦線を生成する。これらの穿通領域においてガラスは弱化され、これにより有利なことに、複雑な形状、及び/又は熱形成条件下での湾曲領域の形成が可能となる。通常の形成プロセスは、既存のガラス厚さを所与の動作パラメータとして使用するため、本明細書に記載のガラスシートの穿通孔は、より容易な成形又は形成のために好適な3D表面を生成する。穿通領域の使用による形成は、厳密な屈曲半径及び他の必要な特徴部分の細部といった、熱形成製品の細部の改善をもたらす。またこのアプローチにより、薄型ガラスの大型アレイシートを形成して、真空形成技術を用いて極めて微細な形成細部を達成できる。穿通孔領域を有するガラスシート又は素地の形成は同様に、他の方法によって達成することもできる。例えば約500℃〜約650℃の温度では、ガラスの粘性により塑性相が生成され、これにより所要の形状への垂れ下がりによる屈曲が可能となる。具体的な温度はガラスの組成による。穿通されたガラスは上記塑性相へと加熱され、加熱された鋳型表面へと自重によって垂れ下がって所望の形状となり、その後(例えば約150℃又は200℃まで)徐冷され、この時点においてガラスを加熱領域から取り外すことができ、室温まで冷却できる。
【0027】
いくつかの実施形態によると、大型の予備形成された切断ガラスシート1000を、ステップ1000Aにおいて穿通して、穿通孔1200A又は1400Aを生成する。より具体的には、ガラスをレーザビーム下に配置し、所望の線又は輪郭に沿ってレーザをトレースする(レーザ焦線を移動させる)ことにより、本明細書に記載の欠陥線をガラス上に生成する。次に、例えば加熱成形又は真空形成によって、穿通されたガラスシート1000を、穿通孔領域又は線(例えば穿通孔1400Aを有する領域)に沿って所望の形状へと屈曲させて、3D形状を形成する。屈曲半径は比較的大きくすることができ、又は小さくすることができ、例えば1mm〜20mm、及びいくつかの実施形態では1mm〜10mm、又は5mm以下、例えば1mm〜5mm又は2mm以下である。いくつかの実施形態によると、ガラスの厚さは3mm未満、例えば2mm(例えば1mm以下)である。いくつかの実施形態によると、屈曲させたガラスは、ガラスシート自体の厚さよりも大きい湾曲部(本明細書では弓状部又は屈曲部とも呼ぶ)をその中に備える。いくつかの実施形態によると、屈曲させたガラスの厚さは3mm未満、例えば2mm未満又は1mm未満である。いくつかの実施形態では、屈曲することになる(又は屈曲する)領域に配置される穿通孔間の例示的なピッチ(間隔)は、5〜50μm、又は7〜50μmである(即ち、分離を防止しつつ、単に有意な表面欠陥を形成することなく屈曲できるようにするための弱化点として作用するよう、切断ピッチより若干幅広い)。本明細書に記載の例示的実施形態によると、これらの穿通孔は直径が2μm以下であり、長さが上記直径より少なくとも20倍長く、ガラスの少なくともある程度の領域では1mm
2あたり少なくとも10個の穿通孔を有する。
【0028】
いくつかの実施形態によると、穿通孔は直径が2μm未満(例えば直径が1.5μm未満)であり、長さが上記直径より少なくとも50倍長い。例えば穿通孔1400Aの長さは少なくとも200μmである。いくつかの実施形態によると、穿通された領域の少なくともいくつかは、1mm
2あたり少なくとも25個の穿通孔を含む。いくつかの実施形態によると、穿通された領域の少なくともいくつかは、1mm
2あたり少なくとも50個の穿通孔を含む。いくつかの実施形態によると、穿通孔は、レーザ線状焦点を形成するレーザビームを用いて形成される。いくつかの実施形態によると、穿通孔はベッセルビームによって形成される。いくつかの実施形態によると、レーザは、レーザ出力が10W〜100W(例えば25W〜60W)のパルスレーザであり、このレーザは1バーストあたり少なくとも2〜25パルスのバーストパルスを生成し、穿通孔(欠陥線)間の距離は7〜100マイクロメートル(例えば10〜50マイクロメートル又は15〜50マイクロメートル)である。
【0029】
いくつかの実施形態によると、3Dガラス物品を形成する方法は:
(i)ガラスシート1000を形成するステップ;
(ii)レーザ焦線を用いて、線又は穿通された輪郭1200に沿ってガラスシート1000を穿通して、ガラス素地2000Aの生成のための穿通孔1200Aを生成するステップ(
図1B参照);
(iii)レーザ線状焦点を用いて、輪郭1400に沿ってガラスシート1000を穿通して(
図2参照)、穿通孔1400Aを形成するステップ。穿通孔1400Aは、屈曲点となる箇所に配置され、ガラス内の様々な深さに配置してよい。高密度穿通孔領域をコーナ若しくはコーナ付近に配置してよく、又は急峻な曲率半径が必要な、若しくは1つ若しくは複数の輪郭若しくは高さの変更が必要な他の領域に配置してよい;
(iv)ガラスパーツを個片化(又は分離)するステップ‐即ちガラス素地2000Aを互いから及び/又はガラスシート1000の1つ若しくは複数の他の領域から分離するステップ。これは、穿通された分離輪郭1200に沿って応力を印加することにより実施できる。この応力は例えば熱応力又は機械的応力であってよい(また例えば、圧力、又は真空による牽引によって生成してよい)。熱応力は例えば、CO
2レーザからの光を用いて、穿通された分離輪郭1200に沿ってガラスシート10を加熱することによって生成してよい;
(v)穿通孔1400Aが、ガラス素地2000Aを屈曲又は湾曲させることになる領域上に配置されるように(例えば
図3を参照)、1つ又は複数の個片化された素地2000Aを鋳型1300上に配置するステップ;
(vi)1つ若しくは複数のガラス素地2000Aに3D(湾曲した)輪郭を形成するステップ、又は例えばガラスを加熱することによって及び/若しくは従来の真空形成技術によって、元々平坦なガラス素地2000Aを3D形状に形成するステップ。ガラスの穿通孔1400Aにより、有意な表面欠陥を生成することのない、比較的容易かつ正確な3D形成が可能となり、これは有利なことに、屈曲領域における割れ形成に対して、従来の方法で作製された3Dガラス物品よりも良好な耐性を有する形状をもたらす
を有してなる。
【0030】
図1は、曲率半径が小さいガラスパーツの成形を促進するために、本発明に従ってレーザ穿通された、予備形成シートの図である。より具体的には、
図1は、それぞれが単一のガラス素地2000Aに対応する複数の事前切断又は事前加工済み領域(パーツ)2000に対応する複数のパーツを含む、予備形成シート、この場合は大型ガラスシート1000の上面図である。このシート1000は、実施形態による方法に従ってレーザ穿通され(欠陥線が生成され)、これにより、曲率半径が小さいガラスパーツの成形が促進される。特に、これまでに開示した方法に従って切り離し線12がレーザ穿通され、これにより個々のパーツ予備形成物2000の、個々のパーツ2000Aへの個片化が促進される。
図1の例示的実施形態では、ガラスシート1000は、穿通孔1200Aで取り囲まれた12個の領域2000を含む。パーツの外形1200Bもまたレーザ穿通され、これによりその後の、3D湾曲表面を有するようにガラスパーツ2000を成形する前又は後の、個片化された予備形成物からのパーツの取り外しが促進される。いくつかの実施形態では、成形は予備形成シート1000全体をそのままに保った状態で実施されることに留意されたい。
【0031】
図2は、
図1に示すシートから分離された1つの個片化された予備形成物の図である。より具体的には、
図2は、屈曲領域穿通孔1400Aを含む個片化されたガラス素地2000Aを示す。また
図2には、パーツのコーナ1400Bも示されており、これは複数回レーザ穿通され、これによって、
図3A〜
図4Bのコーナ断面図に関連して更に後述されるように、湾曲半径が小さいコーナの成形が促進される。
図4A及び4Bの側面断面図に関連して更に後述されるように、ガラスパーツ2000Aの表面上における更なる3D湾曲部の成形を促進する他のレーザ穿通孔は、
図2には示されていない。
【0032】
図3A〜3Bは、レーザ穿通孔によって可能となった半径を有する3D表面の形成のそれぞれ前及び後における、
図2の個片化された予備形成物の側面断面図である。
図3Aは、個片化された予備形成物(パーツ2000A)の一部の表面に適用されることになる3D湾曲部を画定する3D湾曲表面を有する鋳型1300を示す。予備形成物2000Aは、表面欠陥を僅かしか又は全く誘起せずに予備形成物2000Aの屈曲を促進する、レーザ穿通孔1400Aを含む。
図3Bは、成形後の同一の鋳型1300及び予備形成物2000Aを示し、穿通孔1400Aがガラス中の屈曲応力を緩和することを確認できる。このようなレーザ穿通孔は、成形を完了するために予備形成物に対して真空又は圧力を印加する必要を削減又は排除できる。
【0033】
図3A〜3Bは、レーザ穿通孔(欠陥線)によって可能となった半径を有する3D表面の形成のそれぞれ前及び後における、
図2の個片化された予備形成物の側面断面図である。より具体的には、
図3A及び3Bは、型1300上に配置された、上記穿通された/個片化されたガラス素地2000Aの2つの図を示す。穿通孔1400Aは、ガラス素地2000Aが屈曲することになる領域上に配置される。高密度の穿通孔1400Aを含むガラス領域は、鋳型の、高さ及び傾斜が変化する領域の付近に配置される。これら高密度で穿通された領域は例えば、物品のコーナに対応してよいが、最終的なガラス物品の他の特徴部分に対応してよい。
【0034】
図4A及び4Bは、複数のレーザ穿通孔(欠陥線)によって可能となった小さなコーナ半径を有する表面の形成の前及び後における、
図2の個片化された予備形成物のコーナ断面図である。より具体的には、
図4A及び4Bは、型1300上に配置された、上記個片化された、及び穿通された/個片化されたガラス素地2000Aから形成された屈曲ガラス物品の2つの図を示す。穿通された/個片化されたガラス素地2000Aは鋳型1300上で屈曲し、ここで高い密度で穿通された領域は穿通孔1400Aを含み、鋳型の、高さ及び/又は傾斜がこれに対応して変化する領域上に直接配置される。より具体的には、
図4A〜4Bは、複数のレーザ穿通孔1400Aによって可能となった小さなコーナ半径を有する表面の形成の前及び後における、
図2の個片化された予備形成物のコーナ断面図である。
図4A〜4Bに示すように、複数の穿通孔によって、例えば5mm又は2mm以下といった特に小さい表面曲率半径を可能とすることができる。複数の又は高密度の穿通孔により、成形中の応力が緩和され、成形中に真空又は圧力を印加する必要が削減され、表面欠陥が減少する。
【0035】
少なくともいくつかの実施形態によると、本明細書に記載の1つ又は複数の方法によって形成されたガラス物品は、湾曲表面又は少なくとも1つの非平坦表面を備え、この物品は、上記湾曲表面又は上記少なくとも1つの非平坦表面内に少なくとも200マイクロメートル(例えば250マイクロメートル以上)延在する複数の欠陥線又は穿通孔を有し、各欠陥線の直径は約5マイクロメートル以下である。いくつかの実施形態によると、隣接する欠陥線の間隔は7マイクロメートル〜50マイクロメートルである。いくつかの実施形態によると、上記欠陥線の周辺のガラスは、約100マイクロメートル以下の深さまでの表面下損傷を有する。いくつかの実施形態によると、ガラス物品の厚さは約10マイクロメートル〜約5mmである。
【0036】
以下に記載のいくつかの実施形態によると、レーザを使用して、極めて僅かな(<75μm、場合によっては<50μmの)表面下損傷及び破片生成しか伴わずに、高度に制御された、材料を通した完全な又は部分的な穿通孔を(例えばシングルパスで)生成できる。表面下損傷は、深さ100μm以下又は深さ75μm以下又は深さ60μm以下又は深さ50μm以下に制限でき、切断は僅かな破片しか生成しないものとすることができる。この方法は、材料の穿通(例えばガラスの穿通)のために使用でき、これは、ガラスの厚さを完全に穿通するために複数回のパスが必要となる場合が多く、融除プロセスから多量の破片が形成され、より広範囲の表面下損傷(>100μm)及び縁部欠けが発生する、典型的なスポット集束レーザの使用による材料の融除とは対照的である。
【0037】
従って、本明細書に記載の方法を用いて、1つ若しくは複数の高エネルギパルス又は1つ若しくは複数の高エネルギパルスのバーストを用いて、透明材料に、微小な(即ち直径<2μm及び>100nm、並びにいくつかの実施形態では直径<0.5μm及び>100nmの)細長い欠陥線(本明細書では穿通孔、孔又は損傷トラックとも呼ばれる)を生成できる。欠陥線又は穿通孔又は断層線は、レーザによって改質された基板材料の領域を表す。レーザが誘起する改質は、基盤材料の構造を崩壊させ、機械的に弱い部位を構成する。構造的崩壊は、圧縮、溶融、材料の脱落、再構成及び結合切断を含む。穿通孔は基板材料内へと延在し、レーザの断面形状(通常は円形)と一致する断面形状を有する。穿通孔の平均直径は、0.1μm〜50μm、又は1μm〜20μm、又は2μm〜10μm、又は0.1μm〜5μmであってよい。いくつかの実施形態では、穿通孔は「貫通孔」であり、これは基板材料の上部から底部まで延在する孔又は開放チャネルである。いくつかの実施形態では、穿通孔は連続した開放チャネルでなくてよく、レーザによって材料から脱落した固体材料のセクションを含んでよい。脱落した材料は、穿通孔が画定する空間を塞ぐか、又は部分的に塞ぐ。脱落した材料のセクション間に、1つ又は複数の開放チャネル(非閉塞領域)が散乱していてよい。開放チャネルの直径は<1000nm、又は<500nm、又は<400nm、又は<400nm、又は10nm〜750nm、又は100nm〜500nmであってよい。上記孔を取り囲む、材料の崩壊した又は改質された(例えば圧縮された、溶融された又はその他の方法で変化した)領域は、好ましくは<50μm(例えば<10μm)の直径を有する。
【0038】
個々の穿通孔は、数百キロヘルツ(例えば1秒あたり数十万個の穿通孔)の速さで生成できる。従って、レーザ源と材料との間の相対運動により、これらの穿通孔を互いに隣接して配置でき、所望に応じて空間的間隔を1マイクロメートル未満から数マイクロメートル、又は数十マイクロメートルにまで変更できる。断層線の方向に沿った隣接する欠陥線の間の距離は、例えば0.25μm〜50μm、又は0.50μm〜20μm、又は0.50μm〜15μm、又は0.50μm〜10μm、又は0.50μm〜3.0μm、又は3.0μm〜10μmとすることができる。上記空間的間隔は、穿通された輪郭に沿ったガラスの弱化又は切断を促進できるように選択される。
【0039】
線形強度方式における基板材料の透過性に加えて、レーザ源の選択は更に、透明材料における多光子吸収(MPA)を誘起できる能力に基づく。MPAは、材料を比較的低いエネルギ状態(通常グランド状態)からより高いエネルギ状態(励起状態)へと励起するための、同一の又は異なる周波数の多数の光子の同時吸収である。励起状態は、励起された電子的状態又はイオン化状態であってよい。材料の高エネルギ状態と低エネルギ状態との間のエネルギ差は、上記2つ以上の光子のエネルギの合計に等しい。MPAは、一般には線形吸収よりも数段弱い大きさの非線形プロセスである。これは、MPAの強度が光の強度の二乗以上の力に依存し、これによってMPAが非線形光学プロセスとなる点で、線形吸収とは異なる。通常の光強度では、MPAは無視できる。レーザ源(特にパルスレーザ源)の集束領域等における光強度(エネルギ密度)が極めて高い場合、MPAは目に見えるものとなり、光源のエネルギ密度が十分に高い領域内の材料において測定可能な効果をもたらす。集束領域内においても、エネルギ密度は、イオン化が得られる程度に十分に高いものとなり得る。
【0040】
原子レベルにおいて、個々の原子のイオン化は、別個のエネルギ要件を有する。ガラス中に一般に使用される複数の元素(例えばSi、Na、K)は、イオン化エネルギが比較的低い(〜5eV)。MPAという現象を用いない場合、〜5eVにおける線形イオン化を生成するには約248nmの波長が必要となる。MPAを用いる場合、エネルギに関して〜5eVだけ分離した状態間のイオン化又は励起は、248nmより長い波長を用いて達成できる。例えば、波長532nmの光子は〜2.33eVのエネルギを有するため、波長532nmの2つの光子は、例えば2光子吸収(TPA)において、エネルギに関して〜4.66eVだけ分離した状態間の遷移を誘起できる。従って、レーザビームのエネルギ密度が、必要な励起エネルギの半分のエネルギを有するレーザ波長の非線形TPAを誘起するできる程度に十分に高い、材料の領域において、原子及び結合を選択的に励起又はイオン化できる。
【0041】
MPAにより、励起された原子又は結合の、隣接する原子又は結合からの局所的再構成及び分離をもたらすことができる。結合又は構成において得られるこのような改質により、MPAが起こる材料の領域からの、物質の非熱的融除及び除去をもたらすことができる。この物質の除去は構造的欠陥(以上では欠陥線、損傷線又は「穿通孔」と呼ばれている)を生成し、これは材料を機械的に弱化し、機械的又は熱的応力の印加時に割れ又は破砕を発生し易くする。穿通孔の配置を制御することによって、割れが発生する輪郭又は経路を正確に画定でき、材料の正確な微小機械加工を達成できる。一連の穿通孔によって画定された輪郭は、断層線と考えることができ、これは材料中の構造的に弱い領域に対応する。断層線は、屈曲のための、又は材料からのパーツの分離のための好ましい輪郭を画定し、分離されたパーツの形状を制御する。一実施形態では、微小機械加工は、レーザで加工された材料からのパーツの分離を含み、ここで上記パーツは、レーザが誘起したMPA効果によって形成された複数の穿通孔の閉じた輪郭を画定する断層線によって決定された、正確に画定された形状又は周縁を有する。一実施形態では、レーザによって加工されたガラス穿通済みパーツを、厳密な半径(例えば1mm〜5mm)へと屈曲させ、ここで上記パーツは、レーザが誘起したMPA効果によって形成された複数の穿通孔の閉じた輪郭によって決定された、正確に画定された形状又は周縁を有する。本明細書において使用される場合、用語「閉じた輪郭(closed contour)」は、レーザの線で形成された穿通孔経路を指し、ここでこの経路はいくつかの場所でそれ自体と交差する。内部輪郭は、得られる形状が材料の外側部分によって完全に取り囲まれている場所に形成される経路である。
【0042】
好ましいレーザは、超短パルスレーザ(パルス持続時間が100ピコ秒以下のレベル)であり、パルスモード又はバーストモードで動作できる。パルスモードでは、公称では同一の一連の複数の単一パルスがレーザから放出されて加工物に向けられる。パルスモードでは、レーザの繰り返し数は、パルス間の時間的間隔によって決定される。バーストモードでは、パルスのバーストがレーザから放出され、ここで各バーストは(同一の又は異なる振幅の)2つ以上のパルスを含む。バーストモードでは、1つのバースト内のパルスは(バーストに関するパルス繰り返し数を画定する)第1の時間間隔によって分離され、バーストは(バースト繰り返し数を画定する)第2の時間間隔によって分離され、第2の時間間隔は典型的には第1の時間間隔よりも遥かに長い。(パルスモードの文脈であるかバーストモードの文脈であるかにかかわらず)本明細書において使用される場合、時間間隔は、パルス又はバーストの対応する部分間(例えば前縁部‐前縁部間、ピーク‐ピーク間、又は後縁部‐後縁部間)の時間差を指す。パルス及びバースト繰り返し数はレーザの設計によって制御され、典型的には、例えばレーザの動作条件を調整することにより、限度内で調整できる。典型的なパルス及びバースト繰り返し数は、kHz〜MHz範囲内である。
【0043】
(パルスモードにおける、又はバーストモードのバースト内のパルスに関する)レーザパルス持続時間は、10
‐10秒以下、又は10
‐11秒以下、又は10
‐12秒以下、又は10
‐13秒以下であってよい。本明細書に記載の例示的実施形態では、レーザパルス持続時間は10
‐15秒超である。
【0044】
実施形態のプロセスの1つの特徴は、超短パルスレーザによって生成された欠陥線の高いアスペクト比である。この高いアスペクト比により、基板材料の上面から底面へと延在する欠陥線を生成できる。本方法はまた、基板材料内の制御された深さまで延在する欠陥線を形成できる。欠陥線は単一のパルス、又は複数のパルスの単一のバーストによって生成でき、必要に応じて、影響を受ける領域の範囲(例えば深さ及び幅)を増大させるために、追加のパルス又はバーストを使用できる。
【0045】
ガウシアンレーザビームをアキシコンレンズに送ることによって、線状焦点の生成を実施でき、この場合、ガウス‐ベッセルビームとして知られているビームプロファイルが生成される。このようなビームは、ガウシアンビームよりも遥かにゆっくりと回折する(例えば数十マイクロメートル以下ではなく、数百マイクロメートル又はミリメートルの範囲の単一マイクロメートル(single micron)スポットサイズを維持できる)。従って、焦点の深さ又は材料との強い相互作用の長さは、ガウシアンビームのみを使用した場合より遥かに大きくなり得る。エアリービーム等、他の形態又はゆっくりと回折する若しくは回折しないビームも使用してよい。
【0046】
図5A〜5Cに示すように、1つ又は複数のガラスシートを穿通するための方法の例示的実施形態は、超短パルスレーザビーム140を用いて、基板材料130中に(例えば穿通孔1200Aに対応する)複数の垂直な欠陥線120で形成された断層線又は例示的な輪郭110(例えば1200)を生成することに基づくものである。
【0047】
図5Bは、複数の垂直な欠陥線120によって画定される輪郭又は断層線110に沿って加工物を分離した後の、加工物の縁部を示す。欠陥線を生成する誘起吸収は、分離された縁部又は表面上に、平均粒径が1マイクロメートル未満(例えば0.1マイクロメートル以下)の粒子を生成でき、これにより極めて清浄なプロセスが得られる。
図5Cは、
図5Aに図示された、これ以降で更に説明されるレーザプロセスを用いて、より大きなガラスシートから分離された、例示的なパーツ(例えば個片化されたガラス素地2000A)の縁部を示す写真である。
【0048】
ガラスシートに生成される複数の断層線は互いから異なっていてよく、例えば欠陥線120(又は孔)を、それに沿ってガラスを分離させることが望まれている輪郭においては比較的近接し、ガラスが屈曲することになる領域であるものの自発的な分離は回避したい領域においては更に離間して配置してよい。欠陥線又は穿通孔間の正確なピッチ又は間隔は、ガラス組成によって決定されるが、典型的には本明細書に記載の範囲内、例えば約1μm〜約25μmとなる。
【0049】
いくつかの例示的実施形態によると、屈曲又は湾曲することになる領域は、1mm
2あたり10個以上の孔(穿通孔)又は欠陥線、例えば1mm
2あたり10〜100個の孔、欠陥線又は穿通孔1400Aを有する。いくつかの例示的実施形態によると、屈曲することになる領域は、湾曲又は屈曲することになる1つ又は複数の領域に、領域1つあたり少なくとも10個、好ましくは20個以上の孔、例えば25個以上の孔、欠陥線又は穿通孔1400A(例えば25〜500個の孔、断層線若しくは穿通孔、又は50〜100個若しくは50〜200個の孔、断層線若しくは穿通孔)を有する。多数の孔により、屈曲が促進される。例えば屈曲させる必要があるガラス片の小さなコーナは、20〜50個以上の孔又は穿通孔を含んでよい。孔又は穿通孔の数は、屈曲又は湾曲することになるガラス領域のサイズに左右される。いくつかの例示的実施形態では、穿通孔又は孔は、7〜100マイクロメートルだけ離間しており(即ちピッチが7〜100マイクロメートル、例えば15〜100マイクロメートル、25〜100マイクロメートル又は25〜50マイクロメートルとなり得)、孔、断層線又は穿通孔1400Aの直径は5マイクロメートル未満、またいくつかの実施形態では直径3マイクロメートル以下、いくつかの例示的実施形態では直径2マイクロメートル以下(例えば0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、1μm、1.2μm、1.5μm又はこれらの間)である。いくつかの例示的実施形態では、これらの領域の穿通孔の数は例えば、領域1mm
2あたり10〜50又は10〜30個であってよい。好ましくは、断層線又は穿通孔は、パルスバーストレーザによって生成されたレーザビームによって形成され、ここでレーザ出力は10W〜100W(例えば25W〜60W)であり、バーストは少なくとも2つのパルス(例えば2〜25個のパルス)を含む。
【0050】
場合によっては、生成された断層線は、基板材料からパーツを自発的に分離させるには不十分であり、ガラスの分離のために(即ち大型シートからのパーツの個片化のために)副次的なステップが必要となる場合がある。例えば必要に応じて、第2のレーザを用いて熱応力を生成し、ガラスパーツを互いから分離できる。例えば、ニューヨーク州コーニングのCorning Incorporatedが製造している厚さ0.55mmの「Gorilla」2319ガラスの場合、ガラスの分離は、例えば機械的力の印加によって、又は熱源(例えば赤外レーザ、例えばCO
2レーザ)を用いて熱応力を生成し、断層線に沿った基板材料からのパーツの分離を推し進めることによって、欠陥線を生成した後に達成できる。別の選択肢は、赤外レーザを用いて分離を開始させ、ガラスパーツの分離を手動で完了することである。任意の赤外レーザによる分離は、デューティサイクルを制御することによって出力が調整された、10.6マイクロメートルで放出を行う集束連続波(cw)レーザを用いて達成できる。焦点変更(即ち集束スポットサイズまで、かつ集束スポットサイズを含む程度のデフォーカス)を用いて、スポットサイズを変更することによって、誘起される熱応力を変化させる。デフォーカスレーザビームは、レーザの波長のサイズと同等の最小の回折限界スポットサイズよりも大きいスポットサイズを生成するレーザビームを含む。例えばCO
2レーザに関して、2mm〜20mm、又は2mm〜12mm、又は約7mm、又は約2mm及び/又は約20mmのデフォーカススポットサイズ(1/e
2直径)を使用でき、上記CO
2レーザの回折限界スポットサイズは、放出波長が10.6マイクロメートルの場合、遥かに小さくなる。
【0051】
欠陥線を生成するための方法は複数存在する。焦線又は線状焦点を形成するための光学的方法はドーナツ状レーザビーム及び球面レンズ、アキシコンレンズ、回折素子を使用する複数の形態、又は高強度の線形領域を形成するための他の方法を取ることができる。基板又は加工物材料の集束領域における破壊を生成することにより、非線形光学的効果(例えば非線形吸収、多光子吸収)によって基板材料の破壊を生成するために十分な光学的強度に到達しさえすれば、レーザのタイプ(ピコ秒、フェムト秒等)及び波長のタイプ(IR、緑色、UV等)も変更できる。
【0052】
本出願では、高アスペクト比の垂直な欠陥線を、一貫した、制御可能かつ反復可能な方法で生成するために、超短パルスレーザを使用する。この垂直な欠陥線の生成を可能とする光学的設定の詳細については以下に記載され、また2014年1月14日出願の米国特許出願第14/154525号明細書に記載されている。上記特許出願の内容全体は、それが出願において完全に記載されているかのように、参照により本出願に援用される。このコンセプトの本質は、超短(ピコ秒又はフェムト秒の持続時間の)ベッセルビームを使用して高アスペクト比かつ傾斜のない微小チャネルを生成するために、光学レンズ組立体中にアキシコンレンズ素子を使用することである。換言すると、上記アキシコンは、レーザビームを、基板材料中の円筒形かつ高アスペクト比(長さが長く直径が小さい)の高強度領域に集光させる。集光されたレーザビームによって生成された高強度により、レーザ及び基板材料の電磁場の非線形相互作用が発生し、レーザエネルギが基板に伝達されて複数の欠陥の形成が発生し、これらが断層線の構成要素となる。しかしながら、レーザエネルギ強度が高くない基板の領域(例えば基板表面、中央収束線を取り囲む基板のガラス容積)において、基板はレーザに対して透過性であり、レーザから基板へとエネルギを伝達する機序が存在しないことを理解することが重要である。結果として、レーザ強度が非線形閾値未満であれば、基板には何も起こらない。
【0053】
図6A及び6Bに移ると、材料をレーザ加工する方法は、ビーム伝播方向に沿って見て、パルスレーザビーム2をレーザビーム焦線2bに集束させるステップを含む。レーザビーム焦線2bは、例えばベッセルビーム、エアリービーム、ウェーバービーム及びマチュービーム(即ち非回折ビーム)といった複数の方法で生成でき、これらのビームの場のプロファイルは典型的には、ガウス関数よりも横断方向(即ち伝播の方向)においてよりゆっくりと減衰する特別な関数によって与えられる。
図7Aに示すように、レーザ3(図示せず)はレーザビーム2を放出し、このレーザビーム2は、光学組立体6に入射する部分2aを有する。光学組立体6は入射したレーザビームの方向を、ビーム方向(焦線の長さl)に沿った所定の広がり範囲に亘って、出力側のレーザビーム焦線2bへと変化させる。平面状の基板1(加工されることになる材料)は、レーザビーム2のレーザビーム焦線2bと少なくとも部分的に重なるように、ビーム経路内に位置決めされる。参照符号1aは、平面状の基板の、光学組立体6又はレーザそれぞれに対面する表面を指し、参照符号1bは、基板1の反対側の(遠方の)表面を指す。基板の厚さ(平面1a及び1bに対して、即ち基板平面に対して垂直に測定される)は、dで標識する。
【0054】
図6Aに示すように、基板1(例えばガラスシート1000)は、長手方向ビーム軸に対して略垂直に、及びこれに伴って、光学組立体6が生成した同一の焦線2bの後側に整列される(基板は図の平面に対して垂直である)。ビーム方向に沿って見ると、基板は焦線2bに対して、焦線2bが基板の表面1aの前で始まり、基板の表面1bの前で止まる、即ち焦線2bが基板内で終端し、表面1bを超えないように、位置決めされる。レーザビーム焦線2bと基板1の重複領域において、即ち焦線2bで被覆された基板材料において、レーザビーム焦線2bは、(レーザビーム焦線2bに沿った好適なレーザ強度(この強度は、長さlのセクション(即ち長さlの線状焦点)上にレーザビーム2が集束することを保証する)を想定した場合に)(長手方向のビーム方向に沿って整列された)セクション2cを画定し、上記セクション2cに沿って、非線形誘起吸収が基板材料中で生成される。誘起吸収は、セクション2cに沿った基板材料中での欠陥線の形成を誘起する。欠陥線の形成は局所的なものだけではなく、誘起吸収のセクション2cの全長に亘って延在する。セクション2cの長さ(これはレーザビーム焦線2bと基板1との重複の長さに対応する)は、参照符号Lで標識される。誘起吸収セクション2c(又は欠陥線の形成が実行される基板1の材料のセクション)の平均直径又は平均直径(範囲(例えば長さ若しくは他の関連する直線寸法))は、参照符号Dで標識される。この平均距離Dは基本的には、レーザビーム焦線2bの平均直径δ、即ち約0.1マイクロメートル〜約5マイクロメートルの平均スポット直径に対応する。
【0055】
図6Aに示すように、(レーザビーム2の波長λに対して透過性の)基板材料は、焦線2bに沿った誘起吸収により、局所的に加熱される。この波長は例えば1064、532、355又は266ナノメートルであってよい。誘起吸収は、焦線2b内のレーザビームの高い強度に関連する非線形効果(例えば2光子吸収、多光子吸収)に起因する。
図6Bは、加熱された基板材料が最終的に膨張することにより、これに対応して誘起張力が欠陥線の形成を引き起こし、上記張力は表面1aにおいて最高となり、また必要な場合には微小割れが分離に必要な所望の量となることを図示している。
【0056】
焦線2bを生成するために適用できる代表的な光学組立体6、及びこれらの光学組立体を適用できる代表的な光学的設定について、以下に記載する。全ての組立体又は設定はこれまでの記載に基づくものであり、従って、同一の構成部品若しくは特徴部分又は機能が同一の構成部品若しくは特徴部分に関しては同一の参照符号を用いる。従って差異のみを以下に記載する。
【0057】
分離されたパーツ(穿通孔又は分離はこれに沿って発生する)の表面の(破断強度、幾何学的精度、粗度及び再機械加工の必要の回避に関する)高い品質を保証するために、基板表面上に穿通孔、分離、又は取り外しの線(断層線)に沿って位置決めされた個々の断層線を、以下に記載の光学組立体(以下、この光学組立体は代替的にレーザ光学部品とも呼ばれる)を用いて生成する必要がある。分離の場合、分離された表面(又は切断縁部)の粗度は主に、断層線のスポットサイズ又はスポット直径から決定される。切断された(分離された)表面の粗度は例えば、ASME B46.1規格によって定義されたRa表面粗度パラメータによって特徴決定できる。ASME B46.1に記載されているように、Raは、評価長さ内で記録された、中心線からの表面プロファイルの高さ偏差の絶対値の算術平均である。別の言い方をすると、Raは、中心に対する表面の個々の特徴部分(山及び谷)の絶対高さ偏差の組の平均である。
【0058】
例えば0.5マイクロメートル〜2マイクロメートルという小さいスポットサイズ、又は基板1の材料と相互作用するレーザ3の所定の波長λを達成するために、通常、レーザ光学部品6の開口数に対して特定の要件を課す必要がある。これらの要件は、以下に記載のレーザ光学部品6によって満たされる。必要な開口数を達成するために、上記光学部品は、公知のアッベの式(開口数=nsinθ、n:加工される材料又は加工物の屈折率、θ:開口角度の1/2;及びθ=arctan(D
L/2f);D
L:開口の直径、f:焦点距離)に従って、所定の焦点距離に関して必要な開口を配置しなければならない。その一方でレーザビームは上記光学部品を、上記必要な開口まで照明しなければならず、これは典型的には、レーザと集束用光学部品との間の拡大用望遠鏡を用いたビームの拡大によって達成される。
【0059】
焦線に沿った均一な相互作用のために、スポットサイズは、あまり強く変化させ過ぎてはならない。これは例えば、ビーム開口、及びそれに伴って開口数のパーセンテージが僅かしか変化しないように、集束用光学部品を小さな円形領域においてのみ照明することによって保証できる。
【0060】
図7A(レーザ照射2のレーザビーム束の中央のビームの高さの、基板平面に対して垂直なセクション;ここではまた、レーザビーム2は(光学組立体6に入る前に)基板平面に垂直に入射し、即ち入射角θは0°であり、これにより焦線2b又は誘起吸収のセクション2cが基板の法線に対して平行となる)によると、レーザ3によって放出されたレーザ照射2aはまず、使用されるレーザ照射に対して完全に不透過性の円形開口8に向けられる。開口8は長手方向ビーム軸に対して垂直に配向され、図示されているビーム束2aの中央ビームに対してセンタリングされる。開口8の直径は、ビーム束2aの中央付近のビーム束又は中央ビーム(ここでは2aZで標識される)が開口に当たり、開口によって完全に吸収されるように選択される。開口サイズがビーム直径に比べて削減されているため、ビーム束2aの外側周縁範囲のビーム(辺縁光線、ここでは2aRで標識される)のみが吸収されず、開口8を横断方向に通過し、光学組立体6の集束用光学素子の辺縁領域に当たり、上記光学素子は、この実施形態では球面に切削された両凸面レンズ7として設計される。
【0061】
図7Aに示すように、レーザビーム焦線2bは、レーザビームのための単一の焦点であるだけでなく、レーザビーム中の異なる複数の光線のための一連の焦点である。上記一連の焦点は、レーザビーム焦線2bの長さlとして
図7Aに示す所定の長さの伸長した焦線を形成する。レンズ7は中央ビームに対してセンタリングされ、一般的な球面に切削されたレンズの形状の、非補正両凸面レンズとして設計される。このようなレンズの球面収差は有利となり得る。代替例として、理想的な焦点を形成しないものの、所定の長さの明確な伸長した焦線を形成する、理想的に補正された系から逸脱した非球面レンズ又は多レンズ系(即ち単一の焦点を有しないレンズ又は系)も使用できる。このように焦線2bに沿って集束するレンズの領域は、レンズの中央から離間している。ビーム方向に広がる開口8の直径は、(ビームの強度をピーク強度の1/e
2に低減させるために必要な距離によって定義される)ビーム束の直径のおよそ90%及び光学組立体6のレンズ7の直径のおよそ75%である。ビーム束を中央においてブロックする非収差補正球面レンズ7の焦線2bは、このように使用される。
図7Aは、中央ビームを通る1つの平面内のセクションを示し、図示されているビームが焦線2bの周りで回転する際、完全な3次元の束を確認できる。
【0062】
レンズ7及び
図7Aに示す系によって形成されるタイプの焦線の、1つの潜在的な欠点は、条件(スポットサイズ、レーザ強度)が焦線に沿って(及びこれに伴って材料の所望の深さに沿って)変化し得、従って所望のタイプの相互作用(非溶融、誘起吸収、割れ形成までの熱可塑性変形)が、焦線の選択された部分にしか発生できない場合がある点である。これは即ち、基板材料(例えばガラスシート1000)は入射レーザ光の一部しか所望の様式で吸収しない場合があることを意味する。このようにして、プロセスの効率(所望の分離速度に対して必要な平均レーザ出力)が損なわれる場合があり、レーザ光は望ましくない領域(例えば基板又は基板保持構造に付着したパーツ又は層)にも伝達され得、上記領域と望ましくない様式で相互作用し得る(例えば加熱、拡散、吸収、不必要な改質)。
【0063】
図7B‐1〜4は、(
図7Aの光学組立体に関してのみならず、他のいずれの応用可能な光学組立体6に関して)光学組立体6を基板1に対して好適に位置決めする及び/又は整列させることによって、並びに光学組立体6のパラメータを好適に選択することによって、レーザビーム焦線2bの位置を制御できることを示す。
図7B‐1に示すように、焦線2bの長さlは、これが基板厚さdを超える(ここでは2倍となる)ように調整できる。(長手方向ビーム方向に見て)基板1(例えばガラスシート1000)が焦線2bに対して中央に配置されると、誘起吸収のセクション2cが基板の厚さ全体に亘って生成される。レーザビーム焦線2bは、例えば約0.01mm〜約100mm、約0.1mm〜約10mm、又は約0.1mm〜1mmの長さlを有することができる。様々な実施形態は、例えば約0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.7mm、1mm、2mm、3mm又は5mmの長さlを有するように構成できる。
【0064】
図7B‐2に示されている場合においては、基板厚さdにある程度対応する長さlの焦線2bが生成される。基板1は線2bに対して、線2bが基板の外側の点において始まり、また誘起吸収の領域2cの(ここでは基板表面から所定の基板深さまで延在するものの、反対側の(遠方の)表面1bまでは延在しない)長さLが、焦線2bの長さlより小さくなるように位置決めされる。
図7B‐3は、(ビーム方向に対して垂直な方向に沿って見て)基板1が焦線2bの始点の上側に位置決めされ、これにより、線2bの長さlが基板1の誘起吸収のセクション2cの長さLより大きくなるような場合を示している。従って焦線は基板内で始まり、反対側の表面1bを超えて延在する。
図7B‐4は、焦線の長さlが基板厚さdより小さくなり、これによって、入射方向に見て焦線に対して基板が中央に位置決めされている場合、焦線が基板内の表面1aの近傍で始まって基板内の表面1bの近傍で終わる(例えばl=0.75・d)ような場合を示している。
【0065】
表面1a、1bのうちの少なくとも一方が焦線によって被覆され、誘起吸収のセクション2cが基板の少なくとも1つの表面上で始まるように、焦線2bを位置決めすると、特に有利である。このようにして、表面における融除、フェザリング及び微粒化を回避しながら殆ど理想的な切断を達成できる。
【0066】
図8は、適用可能な別の光学組立体6を示す。基本的な構成は
図7Aにおいて記載したものと同様であるため、差異のみを以下に記載する。図示されている光学組立体は、焦線2bを生成するための、所定の長さlの焦線が形成されるように成形された非球面自由表面を有する光学部品の使用に基づくものである。この目的のために、光学組立体6の光学素子として非球面を使用できる。
図8では、例えば、アキシコンと呼ばれることも多い、所謂円錐プリズムが使用される。アキシコンは、光軸に沿った線上にスポット源を形成する(又はレーザビームをリングに変形させる)、円錐形に切削された特別なレンズである。このようなアキシコンの設計は当業者には一般的に知られており、本例での円錐角は10°である。ここでは参照符号9で標識されたアキシコンの頂点は、入射方向へと向けられており、ビームの中央に対してセンタリングされる。アキシコン9によって生成された焦線2bはアキシコン9の内部で始まるため、基板1(ここではビーム主軸に対して垂直に整列されている)を、アキシコン9のすぐ後側のビーム経路内に位置決めできる。
図8に示すように、アキシコンの光学特性によって、基板1を、焦線2bの範囲内にあるまま、ビーム方向に沿って変移させることもできる。従って、基板1の材料内の誘起吸収のセクション2cは、基板深さd全体に亘って延在する。
【0067】
しかしながら、図示した設計は以下の制約を受ける:アキシコン9が形成する焦線2bの領域はアキシコン9内で始まるため、アキシコン9と基板材料又は加工物との間が離間している状況では、レーザエネルギのかなりの部分が、材料内に位置する焦線2bの誘起吸収のセクション2cへと集束しない。更に、焦線2bの長さlは、アキシコン9の屈折率及び円錐角により、ビーム直径に関連する。これが、比較的薄い材料(数ミリメートル)の場合に焦線全体が基板の厚さより遥かに長くなる原因であり、これによりレーザエネルギの大半が材料に集束しない。
【0068】
このため、アキシコン及び集束用レンズの両方を含む光学組立体6を用いることが望ましい場合がある。
図9Aはこのような光学組立体6を示し、これは、レーザビーム焦線2bを形成するよう設計された非球面自由表面を有する第1の光学素子がレーザ3のビーム経路内に位置決めされる。
図9Aに示されている場合では、この第1の素子は、円錐角5°のアキシコン10であり、これはビーム方向に対して垂直に位置決めされ、レーザビーム3に対してセンタリングされる。アキシコンの頂点はビーム方向に向かって配向される。ここでは平凸レンズ11(その湾曲面はアキシコンに向かって配向される)である第2の集束用光学素子は、ビーム方向においてアキシコン10から距離Z1に位置決めされる。距離Z1はこの場合はおよそ300mmであり、これは、アキシコン10が形成するレーザ照射がレンズ11の外径部分に円形に入射するように選択される。レーザは出力側に、この場合は1.5mmの所定の長さの焦線2b上において、この場合はレンズ11からおよそ20mmである距離Z2に円形照射を集束させる。レンズ11の有効焦点距離は、この実施形態では25mmである。アキシコン10によるレーザビームの円形変形は、参照符号SRで標識される。
【0069】
図9Bは、
図9Aによる基板1の材料中の焦線2b又は誘起吸収のセクション2cの形成を詳細に示す。両素子10、11の光学特性及びこれらの位置決めは、ビーム方向の焦線2bの長さlが基板1の厚さdと完全に一致するように選択される。その結果、
図9Bに示すように、焦線2bが基板1の2つの表面1aと1bとの間に正確に位置決めされるような、ビーム方向に沿った基板1の正確な位置決めが必要となる。
【0070】
従って、焦線がレーザ光学部品からある一定の距離に形成され、またレーザ照射の大半が焦線の所望の端部に集束すれば有利である。上述のように、これは、一次集束用素子11(レンズ)を、特定の外径領域全体に亘って円形(環状)にのみ照明することによって達成でき、これは必要な開口数、及びこれに伴って必要なスポットサイズを実現する役割を果たすが、その一方で、スポットの中央の極めて短い距離に亘る必要な焦線2bが、基本的に円形のスポットとして形成された後で、拡散の円の強度が減少する。このようにして、欠陥線の形成は、必要な基板深さの短い距離内で停止される。アキシコン10と集束用レンズ11との組合せがこの要件を満たす。アキシコンは2つの異なる様式で作用する。即ちアキシコン10により、通常は丸みを帯びたレーザスポットがリングの形状で集束用レンズ11に送られ、またアキシコン10の非球面性は、焦面内の焦点の代わりにレンズの焦面を超えて焦線を形成する効果を有する。焦線2bの長さlは、アキシコン上のビーム直径によって調整できる。一方、焦線に沿った開口数は、距離Z1(アキシコン‐レンズ間の分離)によって、及びアキシコンの円錐角によって調整できる。このようにして、レーザエネルギ全体を焦線に集中させることができる。
【0071】
欠陥線の形成が基板の裏側まで続くよう構成する場合、円形(環状)照明は、(1)レーザ光の大半が焦線の必要な長さに集中したままとなるという意味でレーザ出力が最適に使用されるという点、並びに(2)円形に照明された領域と、他の光学機能を用いた所望の収差設定とを併せることで、焦線に沿った均一なスポットサイズ、及びこれに伴って焦線に沿った基板からのパーツの均一な分離を達成できるという点で、依然として有利である。
【0072】
図9Aに示す平凸レンズの代わりに、集束用メニスカスレンズ又は別のより高度に補正された集束用レンズ(非球面、多レンズ系)も使用できる。
【0073】
図9Aに示すアキシコン及びレンズの組合せを用いて、極めて短い焦線2bを生成するために、アキシコンに入射するレーザビームの極めて小さいビーム直径を選択する必要がある。これは、アキシコンの頂点に対するビームのセンタリングを極めて正確なものとする必要がある点、及び結果がレーザの方向の変動に対して極めて敏感である点(ビームドリフト安定性)という、実用上の欠点を有する。更に精密にコリメートされたレーザビームは発散性が高く、即ち光の偏向によってビーム束が短い距離に亘ってぼやけてしまう。
【0074】
図10に示すように、これら両方の効果は、光学組立体6に別のレンズ、即ちコリメートレンズ12を含めることによって回避できる。追加の正レンズ12は、集束用レンズ11の円形照明を極めて精密に調整する役割を果たす。コリメートレンズ12の焦点距離f’は、アキシコンからコリメートレンズ12までの距離Z1a(これはf’に等しい)から所望の円の直径drが得られるように選択される。リングの所望の幅brは、距離Z1b(コリメートレンズ12から集束用レンズ11まで)によって調整できる。完全に幾何学的な問題として、円形照明の幅が小さいと、焦線が短くなる。距離f’において最小値を達成できる。
【0075】
従って
図10に示す光学組立体6は、
図9Aに示す光学組立体6に基づき、従って差異についてのみ以下に記載する。ここでも(湾曲面がビーム方向に向けられた)平凸レンズとして設計されたコリメートレンズ12は更に、(頂点がビーム方向に向けられた)アキシコン10と平凸レンズ11との間のビーム経路内の中央に配置される。アキシコン10からのコリメートレンズ12の距離はZ1aで表され、(常にビーム方向に見た)コリメートレンズ12からの集束用レンズ11の距離はZ2で表される。
図10に示すように、アキシコン10で形成される円形照射SRは、コリメートレンズ12に円の直径drに発散して入射し、これは、集束用レンズ11において少なくともおよそ一定の円の直径drのために、距離Z1bに沿った必要な円の幅brに調整される。図示されている場合では、レンズ12におけるおよそ4mmの円の幅brが、レンズ12の集束特性によって、レンズ11においておよそ0.5mmへと削減されるように、極めて短い焦線2bを生成することが意図されている(この例では円の直径drが22mmである)。
【0076】
図示されている例では、典型的なレーザビーム直径2mm、焦点距離f=25mmを有する集束用レンズ11、焦点距離f’=150mmを有するコリメートレンズを用い、距離Z1a=Z1b=140mm及びZ2=15mmを選択して、0.5mm未満の焦線の長さlを達成できる。
【0077】
図11A〜11Cは、異なる複数のレーザ強度方式におけるレーザ‐物質間の相互作用を示す。
図11Aに示す第1の場合では、集束していないレーザビーム710は、透明基板720にいずれの改質も導入することなく、透明基板720を通過する。この特定の場合では、レーザエネルギ密度(又はビームが照明する単位面積あたりのレーザエネルギ)が非線形効果を誘起するために必要な閾値未満であるため、非線形効果が存在しない。エネルギ密度が高くなるほど、電磁場の強度が高くなる。従って
図11Bに示すように、レーザビームが球面レンズ730によってより小さなスポットサイズに集束されるとき、照明されている面積が削減され、エネルギ密度が上昇して、このような条件を満たす容積内においてのみ焦線の形成を可能とするように材料を改質する非線形効果がトリガされる。このようにして、集束したレーザのビームウエストが基板の表面に位置決めされた場合に、表面の改質が発生することになる。対照的に、集束したレーザのビームウエストが基板の表面の下側に位置決めされた場合には、エネルギ密度が非線形光学効果の閾値未満であれば表面には何も起こらない。しかしながら、基板720の体積内に位置決めされた焦点740において、レーザ強度は、多光子非線形効果をトリガすることによって材料に損傷を誘起できる程度に十分に高い。
【0078】
最終的には、
図11Cに示すように、アキシコンの場合、アキシコンレンズ750あるいはフレネルアキシコンの回折パターンは、ベッセル型強度分布(高強度の円筒760)を生成する干渉を生成し、また非線形吸収及び材料への改質を生成するために十分に高い強度が、上記容積内にのみ存在する。ベッセル型強度分布が、非線形吸収及び材料への改質を生成するために十分に高くなっている、円筒760の直径は、本明細書において記載されているように、レーザビーム焦線のスポット直径でもある。ベッセルビームのスポット直径Dは、D=(2.4048λ)/(2πB)として表すことができ、ここでλはレーザビームの波長であり、Bはアキシコン角度の関数である。計算又は測定されたスポット直径を平均でき、本明細書に記載の実施形態における平均スポット直径は、例えば約0.1マイクロメートル〜約5マイクロメートルとすることができる。
【0079】
レーザ及び光学系
ある代表的な実例において、3D成形された「Gorilla」ガラスパーツ又は他の3D加工物からパーツを切断して抜き出すために、一実施形態は、1064nmピコ秒パルスレーザを、線状焦点ビーム形成光学部品と併用して、「Gorilla」ガラス基板に損傷の線(本明細書では欠陥線、損傷トラック又は断層線とも呼ばれる)を生成する。
【0080】
図12A及び
図12Bに示すように、本明細書に記載されている選択された実施形態によると、ピコ秒レーザはパルス500Aの「バースト」500を生成し、これは場合によっては「バーストパルス」とも呼ばれる。バースト生成は、パルスの生成が均一で安定したストリームでなく、パルスの密集であるような、レーザ動作のタイプである。各「バースト」500は、最高100psec(例えば0.1psec、5psec、10psec、15psec、18psec、20psec、22psec、25psec、30psec、50psec、75psec又はこれらの数値の間)という極めて短い持続時間T
dの複数のパルス500A(例えば2パルス、3パルス、4パルス、5パルス、10、15、20又はそれ以上)を含有してよい。パルス持続時間は一般に、約1psec〜約1000psec、又は約1psec〜約100psec、又は約2psec〜約50psec、又は約5psec〜約20psecである。単一のバースト500内のこれら個々のパルス500Aは、「サブパルス」とも呼ぶことができ、これは単に、これらがパルスの単一のバースト内で発生するという事実を示す。上記バースト内の各レーザパルス500Aのエネルギ又は強度は、バースト内の他のパルスのエネルギ又は強度と等しくなくてよく、バースト500内の複数のパルスの強度分布は、レーザの設計によって支配されている、時間による急激な減衰に追随できる。好ましくは、本明細書に記載の例示的実施形態のバースト500内の各パルス500Aは、バースト内の後続のパルスから、1nsec〜50nsec(例えば10〜50nsec、又は10〜40nsec、又は10〜30nsec)の期間T
pだけ時間的に離れており、上記時間はレーザキャビティの設計によって支配されることが多い。ある所定のレーザに関して、バースト500内の各パルス間の時間間隔T
p(パルス‐パルス間間隔)T
pは比較的均一である(±10%)。例えばいくつかの実施形態では、各パルスは後続のパルスから、およそ20nsec(50MHzパルス繰り返し周波数)だけ時間的に離れている。例えば、約20nsecのパルス‐パルス間間隔T
pを生成するレーザに関して、あるバースト内のパルス‐パルス間間隔T
pは約±10%内に維持され、又は約±2nsecである。各「バースト」間の時間(即ちバースト間の時間間隔T
b)は遥かに長くなる(例えば0.25≦T
b≦1000マイクロ秒、例えば1〜10マイクロ秒又は3〜8マイクロ秒)。例えば、本明細書に記載のレーザの例示的実施形態のうちのいくつかでは、これは約200kHzのレーザ繰り返し数又は周波数に関して約5マイクロ秒となる。レーザ繰り返し数はまた、本明細書ではバースト繰り返し周波数又はバースト繰り返し数とも呼ばれ、これはあるバーストの第1のパルスと、後続のバーストの第1のパルスとの間の時間として定義される。他の実施形態では、バースト繰り返し周波数は、約1kHz〜約4MHz、又は約1kHz〜約2MHz、又は約1kHz〜約650kHz、又は約10kHz〜約650kHzである。各バーストの第1のパルスと後続のバーストの第1のパルスとの間の時間T
bは、0.25マイクロ秒(4MHzのバースト繰り返し数)〜1000マイクロ秒(1kHzのバースト繰り返し数)、例えば0.5マイクロ秒(2MHzのバースト繰り返し数)〜40マイクロ秒(25kHzのバースト繰り返し数)、又は2マイクロ秒(500kHzのバースト繰り返し数)〜20マイクロ秒(50kHzバーストの繰り返し数)であってよい。正確なタイミング、パルス持続時間及び繰り返し数は、レーザの設計及びユーザが制御可能な動作パラメータに応じて変化できる。高強度の短いパルス(T
d<20psec及び好ましくはT
d≦15psec)は、動作が良好であることが示されている。
【0081】
材料を改質するために必要なエネルギについて、バーストエネルギ、即ちあるバースト内に含まれるエネルギ(各バースト500は一連の複数のパルス500Aを含む)に関して、又は単一のレーザパルス内に含まれるエネルギ(その多くはあるバーストを構成する)に関して説明できる。これらの応用に関して、(切断される材料1ミリメートルあたりの)バーストあたりのエネルギは、10〜2500μJ、又は20〜1500μJ、又は25〜750μJ、又は40〜2500μJ、又は100〜1500μJ、又は200〜1250μJ、又は250〜1500μJ、又は250〜750μJとすることができる。バースト内の個々のパルスのエネルギはより小さくなり、正確な個々のレーザパルスエネルギは、バースト500内のパルス500Aの数、並びに
図12A及び
図12Bに示すような時間によるレーザパルスの減衰率(例えば急激な減衰率)に左右されることになる。例えば一定のエネルギ/バーストのために、あるパルスバーストが10個の個々のレーザパルス500Aを含む場合、個々のレーザパルス500Aはそれぞれ、同一のバーストパルス500が2つの個々のレーザパルスしか有しない場合よりも小さいエネルギを含むことになる。
【0082】
このようなパルスバーストを生成できるレーザの使用は、透明材料、例えばガラス(例えばガラスシート1000)を切断、穿通又は改質するために有利である。単一パルスレーザの繰り返し数によって時間的に離れている複数の単一パルスの使用とは対照的に、レーザエネルギをバースト500内のパルスの迅速なシーケンス全体に亘って広げるバーストパルスシーケンスの使用により、単一パルスレーザを用いて可能な材料との高強度相互作用のタイムスケールを長くすることができる。単一パルスを時間的に拡大できる一方で、これが実施されると、エネルギの保存のために、パルス内強度をパルス幅に亘っておおよそ1だけ落とすことが要求される。従って、10psecの単一パルスが10nsecパルスに拡大される場合、強度はおおよそ3桁下がる。このような低減により、非線形吸収がもはや重要でなくなり、かつ光‐材料間相互作用が切断を可能とすることができるほどには強くなくなる点まで、光の強度を低下させることができる。対照的に、バーストパルスレーザを用いると、バースト500内の各パルス又はサブパルス500A中の強度は極めて高いままとすることができ、例えば、およそ10nsecの間隔T
pだけ時間的に離れている、パルス持続時間T
dが10psecの3つのパルス500Aは、各パルス内の強度を依然として単一の10psecパルスの強度のおおよそ3倍とすることができ、その一方でレーザを、3桁大きいタイムスケールに亘って材料と相互作用させることができる。従って、あるバースト内の複数のパルス500Aをこのように調整することにより、既存のプラズマプルームとの光のより強い又は弱い相互作用、初期又は過去のレーザパルスによって事前に励起された原子及び分子とのより強い又は弱い光‐材料間相互作用、及び欠陥線(穿通孔)の制御された成長を促進できる材料内のより強い又は弱い加熱効果を促進できるような方法で、レーザ‐材料間相互作用のタイムスケールを操作できる。材料を改質するために必要なバーストエネルギの量は、基板材料の組成、及び基板との相互作用に使用される線状焦点に左右されることになる。相互作用範囲が長いほど、エネルギはより広がり、また必要となるバーストエネルギが高くなる。
【0083】
複数のパルスの単一のバーストがガラス上の略同一の位置に当たる場合、欠陥線、穿通孔又は孔が材料内に形成される。即ち単一のバースト内の複数のレーザパルスは、ガラス内に、単一の欠陥線、穿通孔又は孔位置を生成できる。当然のことながら、ガラスが(例えば連続移動ステージによって)並進移動するか、又はビームがガラスに対して移動する場合、バースト内の個々のパルスは、ガラス上の正確に同一の空間的位置にあることはできない。しかしながら、これらは互いに1μmの範囲内にあり、即ちこれらは基本的に同一の位置でガラスに当たる。例えばこれらは、互いから間隔sp(ここで0<sp≦500nm)でガラスに当たることができる。例えば20個のパルスのバーストがあるガラス位置に当たる場合、このバースト内の個々のパルスは、互いに250nmの範囲内でガラスに当たる。従っていくつかの実施形態では、1nm<sp<250nmである。いくつかの実施形態では、1nm<sp<100nmである。
【0084】
一実施形態では、厚さ0.55mmの、Corningガラスコード2319の「Gorilla」ガラス基板1000を、光学系が生成する焦線の領域内となるように位置決めした。長さ約1mmの焦線、及びバースト繰り返し数又は周波数200kHz(材料において測定した場合に約200マイクロジュール/バースト)において約40W以上の出力を生成するピコ秒レーザを用いると、焦線領域における光強度(エネルギ密度)を、基板材料において非線形吸収を生成できる程度に高くすることは容易である。基板内の損傷、融除、気化又はその他の改質を受けた材料の領域は、高強度の線形領域に概ね続いて生成された。
【0085】
孔又は損傷トラックの形成:
これらの損傷トラックは概ね、約0.2マイクロメートル〜2マイクロメートル、例えば0.5〜1.5マイクロメートルの内側寸法(例えば直径)を有する孔又は穿通孔の形態を取る。好ましくは、孔又は欠陥線は寸法が極めて小さい(1マイクロメートル以下)。欠陥線、孔又は穿通孔は、材料の厚さ全体を穿通してもしなくてもよく、また材料の深さ全体に亘る連続した開口部であってもなくてもよい。
図5Cは、700マイクロメートル厚の「Gorilla」ガラス基板(又はガラスシート1000)の加工物の厚さ全体を穿通する、このようなトラック又は欠陥線の例を示す。穿通孔又は損傷トラックは、へき開縁部の側部を通して観察される。材料を通るトラックは、貫通孔である必要はない。孔を塞ぐガラスの領域が存在してよいが、上記領域は一般にサイズが小さく、例えば数マイクロメートルである。
【0086】
集束したレーザビームの下で基板が並進移動するため、欠陥線の間の横断方向間隔(ピッチ)は、レーザのパルス数によって決定される。完全な孔を形成するためには通常、単一のピコ秒レーザパルス又はバーストしか必要でないが、必要に応じて複数のパルス又はバーストを使用してよい。異なるピッチの複数の孔若しくは穿通孔又は欠陥線の間隔を形成するために、レーザを、より長い又は短い間隔で点灯するようにトリガできる。
【0087】
切断動作に関して、レーザのトリガは一般に、ビームの下での、ステージによって駆動される基板の運動と同期されるため、レーザパルスは例えば1マイクロメートル毎、3マイクロメートル毎又は5マイクロメートル毎といった固定間隔でトリガされる。切断又は分離に関して、隣接する欠陥線の間の正確な間隔は、基板内の応力レベルを考慮して、穿通孔から穿通孔への割れの伝播を促進する、材料の特性によって決定される。
【0088】
しかしながら、基板の切断とは対照的に、(例えば湾曲又は屈曲させる必要があるガラスの領域に関して)材料を穿通するためだけに同一の方法を用いることもできる。この場合、孔(又は損傷トラック又は穿通孔)を、より大きな間隔(例えば7マイクロメートルのピッチ、8マイクロメートルのピッチ、10マイクロメートルのピッチ、25マイクロメートルのピッチ、30マイクロメートルのピッチ、50マイクロメートルのピッチ又はそれ以上)で離すことができる。使用されるガラス(例えば非強化ガラス)に応じて、穿通孔に関するピッチは7マイクロメートル未満、又は更に5マイクロメートル未満としてよい。
【0089】
レーザ出力及びレンズ焦点距離(これは焦線の長さ、及びこれに伴って出力密度を決定する)は、ガラスを完全に貫通することと、表面及び表面下損傷が小さいこととを保証するために、特に重要なパラメータである。
【0090】
一般に、利用可能なレーザ出力が高いほど、上述のプロセスを用いて材料をより迅速に穿通又は切断できる。本明細書で開示される1つ又は複数のプロセスは、穿通又は切断速度0.25m/sec以上でガラスを切断する。穿通速度又は切断速度は、複数の欠陥線の孔を生成しながら基板材料(例えばガラス)の表面に対してレーザビームが移動する速さである。製造のための資本投資を最小化するため、及び設備利用率を最適化するために、例えば350mm/sec、400mm/sec、500mm/sec、750mm/sec、1m/sec、1.2m/sec、1.5m/sec若しくは2m/sec、又は更に3.4m/sec〜4m/secといった高い速度が望ましいことが多い。レーザ出力は、レーザのバーストエネルギとバースト繰り返し周波数(数)との積に等しい。一般に、高い速度でガラス材料を穿通又は切断するために、欠陥線は典型的には1〜25μmだけ離間し、いくつかの実施形態ではこの間隔は好ましくは3μm以上、例えば3〜12μm、又は例えば5〜10μmである。
【0091】
例えば、300mm/secの直線穿通又は切断速度を達成するために、3μmの孔ピッチは、少なくとも100kHzのバースト繰り返し数を有するパルスバーストレーザに対応する。600mm/secの穿通又は切断速度に関して、3μmのピッチは、少なくとも200kHzのバースト繰り返し数を有するバーストパルスレーザに対応する。200kHzにおいて少なくとも40μJ/バーストを生成し、切断速度600mm/sで穿通及び/又は切断を行うパルスバーストレーザは、少なくとも8ワットのレーザ出力を有する必要がある。穿通速度又は切断速度が高くなると、これに伴って高いレーザ出力が必要となる。
【0092】
例えば3μmピッチ及び40μJ/バーストにおいて0.4m/secの穿通又は切断速度には、少なくとも5Wのレーザが必要となる。同様に、3μmピッチ及び40μJ/バーストにおいて0.5m/secの穿通又は切断速度には、少なくとも6Wのレーザが必要となる。従って好ましくは、パルスバーストピコ秒レーザのレーザ出力は6W以上、より好ましくは少なくとも8W以上、及び更に好ましくは少なくとも10W以上である。例えば、4μmピッチ(欠陥線の間隔、又は損傷トラックの間隔)及び100μJ/バーストにおいて0.4m/secの穿通又は切断速度を達成するためには、少なくとも10Wのレーザが必要であり、4μmピッチ及び100μJ/バーストにおいて0.5m/secの穿通/切断速度を達成するためには、少なくとも12Wのレーザが必要である。例えば、3μmピッチ及び40μJ/バーストにおいて1m/secの穿通/切断速度を達成するためには、少なくとも13Wのレーザが必要である。また例えば、4μmピッチ及び400μJ/バーストにおいて1m/secの穿通/切断速度は、少なくとも100Wのレーザが必要となる。
【0093】
欠陥線(損傷トラック)間の最適なピッチ及び正確なバーストエネルギは材料に左右され、経験的に決定できる。しかしながら、切断又はガラス分離の場合、レーザパルスエネルギが上昇する、又は損傷トラックをより小さいピッチで作製するのは、常に基板材料の分離をより良好なものとする、又は縁部品質を改善する条件ではないことに留意されたい。欠陥線(損傷トラック)間の小さ過ぎる(例えば<0.1マイクロメートル、又はいくつかの例示的実施形態では<1μm、又は他の実施形態では<2μmの)ピッチは、場合により、近隣の後続の欠陥線(損傷トラック)の形成を阻害し得、また穿通された輪郭を巡る材料の分離を阻害し得る。ピッチが小さ過ぎる場合、ガラス内の望ましくない微小割れの増大も引き起こされ得る。長過ぎる(例えば>50μm、及びいくつかのガラスでは>25μm又は>20μmでさえある)ピッチは、「非制御下の微小割れ」を引き起こし得る。即ちこの場合、意図した輪郭に沿った欠陥線から欠陥線への伝播の代わりに、微小割れが異なる経路に沿って伝播し、意図した輪郭とは離れた異なる(望ましくない)方向のガラスの割れを引き起こす。これは最終的には、分離されたパーツの強度を低下させ得る。というのは残留する微小割れは、ガラスを弱化させるきずを構成するためである。欠陥線を形成するための高過ぎる(例えば>2500μJ/バースト、及びいくつかの実施形態では>500μJ/バーストの)バーストエネルギは、既に形成された欠陥線の「治癒(healing)」又は再溶融を引き起こし得、これはガラスの分離を阻害し得る。従って、バーストエネルギが<2500μJ/バースト、例えば≦500μJ/バーストであることが好ましい。また、高過ぎるバーストエネルギの使用は微小割れの形成を引き起こし得、これは極めて大きく、分離後のパーツの縁部強度を低減し得る構造的不完全性を生成する。低過ぎる(例えば<40μJ/バーストの)バーストエネルギは、ガラス内に目に見える欠陥線を形成できず、従って特に高い分離力が必要となり得、又は穿通された輪郭に沿った分離を完全に不可能としてしまい得る。
【0094】
このプロセスが可能な典型的な穿通速度又は切断速度の例は、例えば0.25m/sec以上である。いくつかの実施形態では、穿通速度又は切断速度は少なくとも300mm/secである。いくつかの実施形態では、切断速度は少なくとも400m/sec、例えば500mm/sec〜2000mm/sec以上である。いくつかの実施形態では、ピコ秒(ps)レーザはパルスバーストを利用して、0.5μm〜13μm、例えば0.5〜3μmの周期で欠陥線を生成する。いくつかの実施形態では、パルスレーザは10W〜100Wのレーザ出力を有し、材料(例えばガラスシート1000)及び/又はレーザビームは互いに対して、少なくとも0.25m/sec;例えば0.25/msec〜0.35m/sec、又は0.4m/sec〜5m/secの速度で並進移動する。好ましくは、パルスレーザビームの各パルスバーストは、加工物(例えばガラスシート1000等)において測定した場合に、加工物の厚さ1mmあたり40μJ/バースト超の平均レーザエネルギを有する。好ましくは、パルスレーザビームの各パルスバーストは、加工物において測定した場合に、加工物の厚さ1mmあたり2500μJ/バースト未満、及び好ましくは加工物の厚さ1mmあたり約2000μJ/バースト未満、及びいくつかの実施形態では加工物の厚さ1mmあたり1500μJ/バースト未満、例えば加工物の厚さ1mmあたり500μJ/バースト以下の平均レーザエネルギを有する。
【0095】
本発明者らは、アルカリ含有量が低いか又はゼロのアルカリ土類ボロアルミノシリケートガラスを穿通するためには、遥かに高い(5〜10倍高い)容積パルスエネルギ密度(μJ/μm
3)が必要となることを発見した。これは例えば、好ましくは少なくとも1バーストあたり2パルスを有するパルスバーストレーザを利用し、約0.05μJ/μm
3以上、例えば少なくとも0.1μJ/μm
3、例えば0.1〜0.5μJ/μm
3の、上記アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス中の容積エネルギ密度を提供することによって、達成できる。
【0096】
従って、レーザが、1バーストあたり少なくとも2パルスを有するパルスバーストを生成することが好ましい。例えばいくつかの実施形態では、パルスレーザは10W〜150W(例えば10W〜100W)の出力を有し、1バーストあたり少なくとも2パルス(例えば1バーストあたり2〜25パルス)を有するパルスバーストを生成する。いくつかの実施形態では、パルスレーザは25W〜60Wの出力を有し、1バーストあたり少なくとも2〜25パルスを有するパルスバーストを生成し、このレーザバーストが生成する隣接する欠陥線間の周期又は距離は2〜10μmである。いくつかの実施形態では、パルスレーザは10W〜100Wの出力を有し、1バーストあたり少なくとも2パルスを有するパルスバーストを生成し、加工物及びレーザビームは互いに対して、少なくとも0.25m/secの速度で並進移動する。いくつかの実施形態では、加工物及び/又はレーザビームは互いに対して、少なくとも0.4m/secの速度で並進移動する。
【0097】
例えば、厚さ0.7mmの非イオン交換Corningコード2319又はコード2320「Gorilla」ガラスを切断するために、約150〜250μJ/バーストのパルスバーストエネルギ及び2〜15のバーストパルス数を伴う3〜7μmのピッチ、また好ましくは3〜5μmのピッチ及び2〜5のバーストパルス数(1バーストあたりのパルスの数)が、良好に作用できることが観察されている。
【0098】
1m/secの穿通速度(又は切断速度)において、EagleXG(登録商標)ガラス又は2320「Gorilla」ガラスの穿通及び/又は切断は典型的には、15〜84Wのレーザ出力の利用が必要となり、30〜45Wで十分である場合が多い。一般に、広範なガラス及び他の透明材料に亘って、出願人らは、0.2〜1m/secの穿通及び/又は切断速度を達成するために10W〜100Wのレーザ出力が好ましく、多くのガラスに関しては25〜60Wのレーザ出力で十分である(又はこれが最適である)ことを発見した。0.4m/sec〜5m/secの穿通及び/又は切断速度に関して、レーザ出力は好ましくは、40〜750μJ/バーストのバーストエネルギ、(切断される材料に応じて)1バーストあたり2〜25パルス、及び3〜15μm又は3〜10μmの欠陥線間隔(ピッチ)を伴う10W〜150Wとするべきである。これらの切断速度のためには、ピコ秒パルスバーストレーザの使用が好ましい。というのは、上記ピコ秒パルスバーストレーザは高い出力と、必要な1バーストあたりのパルス数とを生成するためである。従っていくつかの例示的実施形態によると、パルスレーザは10W〜100W、例えば25W〜60Wの出力を生成し、また1バーストあたり少なくとも2〜25パルスのパルスバーストを生成し、欠陥線間の間隔は2〜15μmとなる。そしてレーザビーム及び/又は加工物は互いに対して、少なくとも0.25m/sec、いくつかの実施形態では少なくとも0.4m/sec、例えば0.5 m/sec〜5m/sec以上の速度で並進移動する。
【0099】
本明細書に記載のいくつかの実施形態によるレーザ穿通孔又は欠陥(孔)形成は、強化ガラス及び非強化ガラスの両方に対して実施された。
【0100】
上述の実証のために使用されたレーザ条件及び材料穿通速度を、参考のために以下にまとめる。例えばいくつかの実施形態では、個片化されたパーツをガラスマトリクスから分離するために、切り離し線に力を手動で印加した。この力は、穿通線(欠陥線)における破断と、断層線に沿った割れの伝播とを引き起こし、これにより最終的にガラスマトリクスから上記形状が分離された。
アキシコンレンズへの入力ビーム直径〜2mm
アキシコン角度=10°
初期コリメートレンズ焦点距離=125mm
最終対物レンズ焦点距離=40mm
入射ビーム方位角=12.75°
焦点は0〜10mmに設定され、各トレースにおいて200マイクロメートル刻みで変化
レーザ出力は全出力の75%(〜30ワット)
レーザのパルス繰り返し数=200kHz
3パルス/バースト
ピッチ=6マイクロメートル
同一トレースの複数のパス
可動ステージ速度=12m/min=200mm/s
【0101】
上述のプロセスの代替例として、デフォーカスCO
2レーザを利用して(パーツ分離/個片化のために)パーツの切り離しを補助する別の実施形態が実証されている。デフォーカスCO
2レーザは、ピコ秒レーザが所望の輪郭(断層線)をトレースして、周りを取り囲む基板マトリクスからのパーツの分離を実施するに従って、ピコ秒レーザに追従する。デフォーカスCO
2レーザが誘起した熱応力は、割れを開始及び伝播させるために十分であり、これは、断層線によって画定された上記所望の輪郭に沿ったパーツの分離を引き起こし、これによって基板パネルから成形されたパーツが切り離される。このために、以下の光学部品及びレーザパラメータに関して最良の結果が見られた:
ピコ秒レーザ
アキシコンレンズへの入力ビーム直径〜2mm
アキシコン角度=10°
初期コリメートレンズ焦点距離=125mm
最終対物レンズ焦点距離=40mm
入射ビーム方位角=12.75°
焦点は0〜10mmに設定され、各トレースにおいて200マイクロメートル刻みで変化
レーザ出力は全出力の75%(〜30ワット)
レーザのパルス繰り返し数=200kHz
3パルス/バースト
ピッチ=6マイクロメートル
同一トレースの複数のレーザ焦線パス
可動ステージ速度=12m/min=200mm/s
CO
2レーザ
レーザ並進移動速度:130mm/s
レーザ出力=100%
パルス持続時間13マイクロ秒(95%デューティサイクル)
レーザ変調周波数20kHz
レーザビームのデフォーカスは21mmである
シングルパス
【0102】
そうでないことが明記されていない限り、本明細書に記載のいずれの方法が、そのステップをある具体的な順序で実施する必要があるものとして解釈されることは、全く意図されていない。従って、ある方法クレームが、そのステップが従うべき順序を実際に列挙していない場合、又は上記ステップがある具体的な順序に制限されていることに、他の方法で具体的に言及されていない場合、いずれの特定の順序を推断することは全く意図されていない。
【0103】
本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変形を実施できることは、当業者には明らかであろう。当業者は、本発明の精神及び実態が組み込まれた本開示の実施形態の修正、組合せ、部分的組合せ及び変形を想起し得るため、本発明は、添付の請求項及びその均等物の範囲内の全てを含むものとして解釈されるものとする。
【0104】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0105】
実施形態1
非平坦部分を有するガラス物品を作製する方法であって、上記方法は:
(i)レーザを用いて、輪郭に沿ってガラス素地を穿通し、ガラス素地に複数の穿通孔を形成するステップ;
(ii)ガラスが湾曲するように、穿通孔を含む少なくとも1つの領域に沿ってガラス素地を屈曲させて、非平坦部分を有するガラス物品を形成するステップ
を有してなる、非平坦部分を有するガラス物品を作製する方法。
【0106】
実施形態2
非平坦部分を有するガラス物品を作製する方法であって、上記方法は:
(i)レーザを用いて、輪郭に沿ってガラス素地を穿通し、ガラス素地の少なくとも1つの領域に複数の穿通孔を形成するステップであって、上記穿通孔は直径が5μm未満であり、長さが上記直径の少なくとも20倍長い、ステップ;
(ii)穿通孔を含む上記少なくとも1つの領域に沿ってガラス素地を屈曲させることにより、非平坦部分を形成するステップ
を有してなる、非平坦部分を有するガラス物品を作製する方法。
【0107】
実施形態3
上記穿通孔は直径2μm未満であり、長さが上記直径より少なくとも50倍長い、実施形態1又は2に記載の非平坦部分を有するガラス物品を作製する方法。
【0108】
実施形態4
上記穿通孔は直径2μm未満であり、長さが少なくとも200μmである、実施形態1〜3のいずれか1つに記載の非平坦部分を有するガラス物品を作製する方法。
【0109】
実施形態5
上記穿通孔を含む少なくとも1つの領域は、1mm
2あたり少なくとも10個の穿通孔を含む、実施形態1〜4のいずれか1つに記載の非平坦部分を有するガラス物品を作製する方法。
【0110】
実施形態6
上記穿通孔を含む少なくとも1つの領域は、1mm
2あたり少なくとも50個の穿通孔を含む、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の非平坦部分を有するガラス物品を作製する方法。
【0111】
実施形態7
上記穿通ステップは、レーザ線状焦点を用いて実施される、実施形態1〜6のいずれか1つに記載の非平坦部分を有するガラス物品を作製する方法。
【0112】
実施形態8
上記屈曲ステップは、上記穿通孔を有する上記ガラス素地を加熱するステップを含む、実施形態1〜7のいずれか1つに記載の非平坦部分を有するガラス物品を作製する方法。
【0113】
実施形態9
上記屈曲ステップは、上記素地の少なくとも穿通された領域に真空を印加するステップを含む、実施形態1〜8のいずれか1つに記載の非平坦部分を有するガラス物品を作製する方法。
【0114】
実施形態10
上記ガラス素地の厚さは0.1mm〜5mmである、実施形態1〜9のいずれか1つに記載の非平坦部分を有するガラス物品を作製する方法。
【0115】
実施形態11
上記屈曲ステップは、上記ガラス素地を1mm〜10mmの曲率半径まで屈曲させるステップを含む、実施形態1〜10のいずれか1つに記載の非平坦部分を有するガラス物品を作製する方法。
【0116】
実施形態12
上記屈曲ステップは、上記ガラス素地を5mm以下の曲率半径まで屈曲させるステップを含む、実施形態1〜11のいずれか1つに記載の非平坦部分を有するガラス物品を作製する方法。
【0117】
実施形態13
上記屈曲ステップは、上記ガラス素地を2mm以下の曲率半径まで屈曲させるステップを含む、実施形態1〜12のいずれか1つに記載の非平坦部分を有するガラス物品を作製する方法。
【0118】
実施形態14
上記レーザはパルスレーザであり、
上記レーザは、レーザ出力が10W〜100Wであり、1バーストあたり少なくとも2パルスのバーストパルスを生成する、実施形態1〜13のいずれか1つに記載の非平坦部分を有するガラス物品を作製する方法。
【0119】
実施形態15
上記バーストパルスは、1バーストあたり2〜25パルスを含む、実施形態1〜14のいずれか1つに記載の非平坦部分を有するガラス物品を作製する方法。
【0120】
実施形態16
上記パルスレーザは、レーザ出力が25W〜60Wであり、1バーストあたり少なくとも2〜25パルスのバーストパルスを生成し、
欠陥線間の距離は7〜100マイクロメートルである、実施形態15に記載の方法。
【0121】
実施形態17
上記穿通ステップは、レーザ線状焦点をレーザ形成して穿通孔を形成するステップを含み、
各穿通孔は、ガラスの構造を改質するために十分な強度のレーザビームによって形成され、
少なくとも1つの領域は、1mm
2あたり少なくとも10個の穿通孔を有し、
上記方法は:
(A)レーザ線状焦点を用いて、ガラス素地に対応する複数の領域を有するガラスシートを穿通して、少なくとも1つのガラス素地を生成するための少なくとも1つの穿通された分離輪郭を生成するステップ;
(B)穿通された分離輪郭に沿って、少なくとも1つのガラス素地をガラスシートから分離することにより、少なくとも1つの個片化されたガラス素地を生成するステップ
を更に含む、実施形態2の非平坦部分を有するガラス物品を作製する方法。
【0122】
実施形態18
上記ガラス物品を屈曲させるステップは:
(A)上記穿通孔を含む上記少なくとも1つの領域が、高さ、厚さ又は傾斜の変化を有する鋳型の領域上に配置されるように、上記個片化された素地を鋳型上に配置するステップ;
(B)上記鋳型上の、上記穿通孔を含む上記少なくとも1つの領域に沿って、ガラス素地を屈曲させることによって、上記ガラス素地を、少なくとも1つの非平坦部分を有するガラス物品へと形成するステップ
を含む、実施形態18に記載の非平坦部分を有するガラス物品を作製する方法。
【0123】
実施形態19
非平坦部分を有する複数のガラス物品を作製する方法であって、上記方法は:
(i)レーザ線状焦点を用いてガラスシートを穿通して、複数のガラス素地を生成するための複数の穿通された分離輪郭を生成するステップ;
(ii)レーザ線状焦点を用いてガラスシートを他の輪郭に沿って穿通して、複数の屈曲領域穿通孔を形成するステップ;
(iii)穿通された分離輪郭に沿って上記複数のガラス素地をガラスシートから及び互いから分離することにより、それぞれが屈曲領域穿通孔を含む複数の個片化されたガラス素地を生成するステップ;
(iv)個片化された素地を鋳型上に配置し、屈曲領域穿通孔を含む領域に沿って、ガラスが湾曲するように上記個片化されたガラス素地を屈曲させるステップ
を有してなる、非平坦部分を有する複数のガラス物品を作製する方法。
【0124】
実施形態20
上記パルスレーザは、レーザ出力が10W〜100Wであり、
加工物及びレーザビームは互いに対して少なくとも0.4m/secの速さで並進移動する、実施形態19の方法。
【0125】
実施形態21
実施形態1又は2に記載の方法によって調製されたガラス物品。
【0126】
実施形態22
湾曲表面又は少なくとも1つの非平坦表面を備えるガラス物品であって、
上記物品は、上記湾曲表面又は上記少なくとも1つの非平坦表面内に少なくとも200マイクロメートル延在する複数の欠陥線を有し、
上記欠陥線はそれぞれ、約5マイクロメートル以下の直径を有する、ガラス物品。
【0127】
実施形態23
隣接する欠陥線間の間隔は7マイクロメートル〜50マイクロメートルである、実施形態22に記載のガラス物品。
【0128】
実施形態24
上記縁部は、約100マイクロメートル以下の深さまでの表面下損傷を有する、実施形態21、22又は23に記載のガラス物品。
【0129】
実施形態25
上記ガラス物品の厚さは約10マイクロメートル〜約5mmである、実施形態21、22、23又は24に記載のガラス物品。